JPH11267525A - 多孔質担体触媒の製造方法 - Google Patents

多孔質担体触媒の製造方法

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JPH11267525A
JPH11267525A JP7880498A JP7880498A JPH11267525A JP H11267525 A JPH11267525 A JP H11267525A JP 7880498 A JP7880498 A JP 7880498A JP 7880498 A JP7880498 A JP 7880498A JP H11267525 A JPH11267525 A JP H11267525A
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JP
Japan
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catalyst
catalyst component
porous carrier
component
support layer
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JP7880498A
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Yoshinobu Sakakibara
吉延 榊原
Takayuki Suzuki
孝幸 鈴木
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Cataler Corp
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Cataler Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】触媒活性金属の内部分散型担持層を有する多孔
質担体触媒を製造するに当たり、担持終了後の乾燥時に
おける毛管現象による担持層の表層移動を防止する。 【構成】浸漬液/含浸液に、一定温度以上で触媒活性金
属と不溶性の塩を形成する昇温固定化剤を含ませ、触媒
活性金属の担持処理終了後、乾燥前に、高湿度下で触媒
活性金属の昇温固定化処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多孔質担体触媒の製
造方法に関し、更に詳しくは、浸漬液/含浸液を用いて
触媒成分の内部担持層を有する多孔質担体触媒を製造す
る方法であって、特に担持終了後の乾燥工程における触
媒成分の担体表層部への移動集積を防止する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自動車用の排ガス浄化触媒等の多孔質担
体触媒において、例えば、球状触媒のようなペレット触
媒における担体表層部の振動磨耗対策として、あるい
は、モノリス触媒も含めて一般的な触媒成分被毒対策と
して、触媒成分を多孔質担体の表層部ではなく(あるい
は表層部だけではなく)、ある程度の担持深度あるいは
層厚を以て多孔質担体内部に担持させようとする場合が
ある。
【0003】このような場合に通常は、硝酸,塩酸,フ
ッ化水素等の無機酸や、クエン酸,酒石酸,シュウ酸等
の有機2塩基酸、あるいはモノエタノールアミン,塩化
アンモニウム等が競争吸着剤として利用されている。
【0004】即ち、いわゆる浸漬法又は含浸法によって
多孔質担体に触媒成分を担持させるに当たり、その浸漬
液/含浸液に触媒成分の可溶性塩と共にこれらの競争吸
着剤を所定量併用し、多孔質担体の表層部の吸着点に競
争吸着剤を優先的に吸着させれば、触媒成分イオンはや
むを得ず多孔質担体内部まで浸透してから吸着・担持さ
れると考えられている。
【0005】競争吸着剤の作用については、競争吸着剤
によって発現されるpHが低いほど深層担持がなされる
が、しかし競争吸着剤が強酸であり過ぎると多孔質担体
の構造が阻害され易いとか、無機酸の競争吸着剤を使用
すると触媒成分の内部担持密度は表層部から連続して低
下するパターンになる一方、有機2塩基酸の競争吸着剤
を使用すると触媒成分の担持密度が内部にピークをもつ
パターンになるとか言った、幾つかの知見が得られてお
り、これらの点を種々配慮して触媒成分の内部担持層形
成のプロセス設計がなされているのが現状である。
【0006】かかる従来技術の1例として、特公昭52
−23920号公報に係る「白金族元素の担持深度制御
法」の発明を挙げることができる。この発明において
は、白金族元素である白金(Pt),パラジウム(Pd),
ロジウム(Rh)の1種以上の含塩素化合物の水溶液を、
塩酸の存在下に触媒担体に付着させることにより、白金
族元素の担持深度を制御することができる、としてい
る。
【0007】従来技術の他の1例として、特公昭52−
30475号公報に係る「酸化複合触媒の製造方法」の
発明を挙げることができる。この発明においては、ペレ
ット状の多孔質アルミナ担体に、いったんアルカリ土類
金属を担持させた後、これに活性金属(Pt)可溶性塩及
び所定量のシュウ酸,マロン酸,コハク酸等の有機2塩
基酸を含む溶液を含浸させることにより、アルカリ土類
金属を担持させると共に活性金属を希望する内部担持密
度のパターンで担持させることができる、としている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した競
争吸着剤に関する一般的な知見は技術的に納得できるも
のであるにも関わらず、本願発明者が上記従来技術の手
法を追試した処、少なくとも完成した多孔質担体触媒の
断面顕微鏡観察において、触媒成分は期待したような内
部担持層を形成していない場合が多く、しばしば表層担
持に近い状態にある、と言う一見不可解な結果を得るに
到った。
【0009】又、多孔質担体がペレットの集合体である
場合、上部(乾燥表面側)のペレットには触媒成分が高
密度に担持され、下部のペレットにおける担持密度がか
なり低い、と言う担持密度のアンバランスも起こること
が判明した。
【0010】これらの不具合を伴う多孔質担体触媒は、
当然ながら前記の振動磨耗対策や触媒成分被毒対策とし
ての効果を充分に発揮することができない。そこで本発
明は、このような不具合が生ずる理由を解明し、かつ、
解明した理由に基づいてその不具合を解消する技術的手
段を提供することを、解決すべき課題とする。
【0011】
【着眼点】本願発明者は、上記従来技術のようなプロセ
スにおいて、少なくとも浸漬/含浸処理の際には触媒成
分がやはり期待通りに内部担持層を形成すると考えるべ
きであり、よって問題はその後の処理に潜在しているに
違いない、と言う事に気付いた。
【0012】即ち、触媒成分溶液の浸漬/含浸処理の後
には多孔質担体中に吸収された水分を乾燥蒸発させる
が、水分が多孔質担体の表面から順次蒸発して行くた
め、内部の水分は毛管現象によって多孔質担体表層部へ
吸い出される。そしてこの時、イオンとして担体内部に
吸着されていた触媒成分も水分と共に担体表層部へ移動
して、そこで集積するのである。
【0013】このような現象は、乾燥土壌における塩析
現象(土壌粒子に吸着された土壌水中の金属イオンが、
土壌の乾燥時に毛管現象によって土壌水と共に地表に吸
い出され、集積する現象)と同様に理解されるものであ
り、ペレット状多孔質担体の集合体における前記の担持
密度のアンバランスも、この理由が分かれば容易に了解
することができる。
【0014】以上の理解に基づき、本願発明者は、触媒
成分担持処理の終了後、乾燥前に、多孔質担体内部に吸
着された触媒成分のイオンを一定の固定化剤と反応させ
ることにより、不溶性化合物として細孔内で沈着させれ
ば、上記の不具合を回避できること、この固定化剤との
反応は触媒成分の内部担持層形成後に生起させなければ
いけないこと、等に想到し、本発明を完成した。
【0015】
【課題を解決するための手段】(第1発明の構成)上記
課題を解決するための本願第1発明(請求項1に記載の
発明)の構成は、多孔質担体に触媒成分の内部担持層を
形成させる多孔質担体触媒の製造方法であって、前記多
孔質担体に少なくとも下記(A)〜(C)の成分を含む
水溶液を吸水させて触媒成分の内部担持層を形成させた
後、高湿度下で触媒成分の昇温固定化処理を行い、次い
で乾燥及び触媒活性化処理を行う多孔質担体触媒の製造
方法である。 (A)触媒成分の可溶性塩。 (B)触媒成分を多孔質担体の内部に担持させるための
競争吸着剤。 (C)一定の昇温域で触媒成分と不溶性の塩を形成する
昇温固定化剤。
【0016】(第2発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第2発明(請求項2に記載の発明)の構成は、
多孔質担体に触媒成分の内部担持層を形成させる多孔質
担体触媒の製造方法であって、前記多孔質担体に、少な
くとも触媒成分の可溶性塩と、触媒成分を多孔質担体の
内部に担持させるための競争吸着剤とを含む水溶液を吸
水させて触媒成分の内部担持層を形成させた後触媒成分
との間で常温下でも不溶性の塩を形成する常温固定化剤
の溶液を投与して触媒成分の常温固定化処理を行い次い
で乾燥及び触媒活性化処理を行う多孔質担体触媒の製造
方法である。
【0017】(第3発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第3発明(請求項3に記載の発明)の構成は、
第1発明又は第2発明における前記多孔質担体が球状あ
るいはペレット状である、多孔質担体触媒の製造方法で
ある。
【0018】(第4発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第4発明(請求項4に記載の発明)の構成は、
第1発明〜第3発明のいずれかにおける前記触媒成分が
貴金属元素である、多孔質担体触媒の製造方法である。
【0019】(第5発明の構成)上記課題を解決するた
めの本願第5発明(請求項5に記載の発明)の構成は、
第1発明〜第4発明のいずれかにおける前記競争吸着剤
の種類及び/又は使用量を選択することにより、触媒成
分の内部担持層の担持深度あるいは層厚を任意に調整す
る、多孔質担体触媒の製造方法である。
【0020】
【発明の作用・効果】(第1発明の作用・効果)第1発
明において、多孔質担体に(A)〜(C)の成分を含む
水溶液を吸水させると、(B)成分である競争吸着剤の
種類及び使用量に基づく吸着競合作用の差に対応して、
所定の担持深度や層厚を持つ触媒成分の内部担持層が多
孔質担体中に形成される。未だ昇温されていないため、
(C)成分である昇温固定化剤は触媒成分に対して作用
しない。
【0021】この時点では、触媒成分は水溶液中のイオ
ンの形態で多孔質担体内部細孔の吸着点に吸着されてい
るため、若し水溶液が例えば毛管現象により細孔中を移
動して排除されれば、これに伴って触媒成分も移動し得
る状態にある。
【0022】しかし、続いて高湿度下で触媒成分の昇温
固定化処理が行われる。この処理により、昇温固定化剤
が触媒成分イオンと反応し、不溶性の塩を形成して、多
孔質担体内部の細孔中に沈着する。又、昇温固定化処理
は高湿度下で行われるため、昇温下にも関わらず多孔質
担体の表面からの水分蒸発は全くあるいは実質的に起こ
らない。従って、不溶性の塩が形成されて沈着するまで
の間、多孔質担体内部細孔の水分は毛管現象による表層
部への吸い出しを受けないから、触媒成分の内部担持層
の表層部への移動も起こらない。
【0023】そして上記の昇温固定化処理によって触媒
成分が不溶性塩として沈着した後に乾燥処理が行われ
る。この際には多孔質担体の表面から水分が蒸発し、多
孔質担体内部細孔の水分は毛管現象による表層部への吸
い出しを受けるが、これに伴う触媒成分不溶性塩の表層
部への移動は起こらない。同じ理由から、ペレット触媒
の集合体において乾燥表面側のペレットに触媒成分が高
密度に集積されると言う担持密度のアンバランスも起こ
らない。
【0024】そして、最後に空気焼成、水素ガス還元等
の触媒活性化処理を完了したとき、触媒成分が活性な吸
着態に復帰し、触媒成分の内部担持層が設計通りに形成
されている。その結果、本発明の多孔質担体触媒は、ペ
レット触媒である場合の振動磨耗(触媒表層部の磨耗)
によっても触媒成分の脱落が少なく、又、モノリス触媒
である場合も含めて触媒成分の排ガス等による被毒劣化
も回避され易く、耐久性の優れた触媒となる。
【0025】なお、上記触媒成分の不溶性塩は通常の触
媒活性化処理によって分解され、触媒成分のイオンが多
孔質担体内部細孔に吸着された状態に復帰しているが、
触媒成分の不溶性塩が比較的分解し難い化合物である場
合には、その分解を確保するに足る触媒活性化処理を適
宜に検討・採用すれば良い。
【0026】(第2発明の作用・効果)第2発明におい
ては、触媒成分の可溶性塩と競争吸着剤とを含む水溶液
を吸水させて触媒成分の内部担持層を形成させ、次に触
媒成分との間で常温下でも不溶性の塩を形成する常温固
定化剤の溶液が投与される。そして常温固定化剤が多孔
質担体の内部細孔に浸透し、そこで触媒成分のイオンと
反応して不溶性塩を形成する。
【0027】従って、第2発明においては、第1発明に
比較して、水溶液の2段階投与と言うプロセスの複雑化
を要する反面、必ずしも第1発明のような昇温固定化型
の固定化剤を使用する必要がなく、常温固定化型の固定
化剤を用いることができ、かつ高湿度下の昇温を行わな
いままで触媒成分を固定化処理できると言う選択の自由
度の大きさがある。なお、常温固定化剤の水溶液が後か
ら投与されるため、常温固定化剤の種類及び使用の態様
によっては、それが多孔質担体の内部細孔に浸透し易く
なるように、一定の工夫を要する場合もある。
【0028】上記以外の点の作用・効果は、第1発明と
同様である。
【0029】(第3発明の作用・効果)第3発明におい
ては、多孔質担体が球状あるいはペレット状であるた
め、特に発明の効果が顕著に発現される。
【0030】すなわち、一般的にモノリス触媒において
触媒成分の内部担持層の形成が図られる場合(触媒成分
の被毒回避、場合によっては耐熱性の向上を理由とする
場合が多い)においては、その担持深度あるいは層厚は
せいぜい数十μm程度であるのに対して、振動磨耗の防
止を主たる理由として触媒成分の内部担持層の形成が図
られるペレット触媒(触媒成分の被毒回避等を理由とす
る場合もある)においては、その担持深度あるいは層厚
は数mmのオーダーを要求される場合があるため、本発
明が特に適しているからである。
【0031】(第4発明の作用・効果)第4発明におい
ては、触媒成分が極めて一般的に利用されている貴金属
元素であるため、本発明を適用することの技術的価値が
特に高い。
【0032】(第5発明の作用・効果)第5発明におい
ては、競争吸着剤の種類及び/又は使用量を選択するこ
とにより、触媒成分の内部担持層の担持深度あるいは層
厚を、例えば上記モノリス触媒における数十μm程度か
ら上記ペレット触媒における数mmのオーダーに至るま
で、任意に調整することができるので、発明の適用範囲
が著しく拡張される。
【0033】
【発明の実施の形態】次に第1発明〜第5発明の実施の
形態について説明する。以下において、単に「本発明」
と言うときは第1発明〜第5発明を一括して指してい
る。
【0034】(多孔質担体触媒)本発明によって製造さ
れる多孔質担体触媒は、その用途に限定がない。自動車
用の排ガス浄化触媒が代表的なものであるが、産業排ガ
ス浄化用や電力−熱供給システム等に用いられる燃焼用
触媒その他の多種多用な用途がある。本発明のメリット
が最大限に活かされるのは、振動磨耗が懸念される環境
においてガス浄化,燃焼,臭気成分分解その他の目的に
使用されるペレット触媒である。
【0035】(多孔質担体)本発明に用いる多孔質担体
の種類,形状及び使用形態には限定がない。自動車排ガ
ス浄化触媒の分野に限って言えば、代表的な多孔質担体
の例として、多孔質の活性アルミナからなる球状,円柱
状等の粒子形状のペレット担体、コージェライト,アル
ミニウムチタネート,ジルコン系又は耐熱合金等からな
る種々の外形のハニカム状基体上にに多孔質活性アルミ
ナのコート層を形成したハニカム担体等を挙げることが
できる。
【0036】(触媒成分及びその可溶性塩)触媒成分と
は、所定の触媒活性を示す、通常は金属元素であって、
特定の基質分子に対する酸化作用,還元作用,分解作用
等の使用目的や使用環境における耐久性等を考慮して、
公知の任意のものが適宜に選択して使用される。2種類
以上の触媒成分を組み合わせて使用しても良い。
【0037】自動車用の排ガス浄化触媒を製造する場合
には、貴金属元素、特に白金族元素であるPt,Pd,Rhの
1種以上を使用したり、これに助触媒又は耐久性向上剤
あるいは特定ガス成分の貯蔵剤等として卑金属元素であ
る鉄(Fe),コバルト(Co),バリウム(Ba),銅(C
u)等や、稀土類元素であるセリウム(Ce),ランタン
(La)等を組み合わせて使用する場合が多い。
【0038】貴金属元素とそれ以外の金属元素を組み合
わせて使用する場合において、両者を本発明の方法によ
って同時に多孔質担体に内部担持させても良く、あるい
は、後者を従来の通常の担持法によって担持させるプロ
セスと、前者を本発明の方法によって担持させるプロセ
スとを区別して行っても良い。
【0039】触媒成分の可溶性塩としては、既に利用さ
れている公知の種々の水溶性化合物を適宜に選択して使
用することができる。同じ触媒成分でも、その可溶性塩
の種類によって多孔質担体に対する吸着反応の速いもの
と遅いものとがあり得るので、多孔質担体の内部担持層
の担持深度や担持層厚の設計上、この点を後述する競争
吸着剤の種類及び使用量との対応関係で検討した方が良
い場合がある。
【0040】(競争吸着剤)競争吸着剤も、既に利用さ
れている公知の種々のものから適宜に選択して使用する
ことができる。その内の代表的なものとして、硝酸,塩
酸,フッ化水素等の無機酸や、クエン酸,酒石酸,シュ
ウ酸等の有機2塩基酸、あるいはモノエタノールアミ
ン,塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0041】前記した競争吸着剤に関する従来の知見か
らも分かるように、競争吸着剤の種類及び/又は使用量
が、多孔質担体の内部担持層の担持深度や担持層厚の設
計に最も大きく影響し、言い換えればその選択によって
内部担持層の担持深度や担持層厚を任意に調整すること
ができる。
【0042】(固定化剤)第1発明で使用する昇温固定
化剤とは、少なくとも通常の触媒成分担持のための浸漬
処理/含浸処理が行われる温度域(例えば常温程度、あ
るいは30°C以下の温度域)においては浸漬液/含浸
液中の触媒成分可溶性塩あるいは触媒成分イオンと反応
せず、温度管理上前記の温度域とは明瞭に区別できる昇
温域(例えば50°C以上、あるいは70°C以上)に
おいて触媒成分と反応して不溶性の塩を形成する化合物
である。
【0043】上記の要求を満たす限りにおいて、昇温固
定化剤の種類は限定されないが、上記不溶性の塩が、通
常の酸化焼成や還元焼成等の触媒活性化処理により、容
易に分解して触媒成分を触媒活性態に復帰させ易いもの
であることが、更に望ましい。
【0044】好ましい昇温固定化剤の2,3の例とし
て、チオール基を有する化合物(特にチオール基を有す
るアルコール、とりわけチオグリコール),炭素−イオ
ウ二重結合を有する化合物(特にチオ尿素),還元剤
(特に1塩基性有機酸、とりわけギ酸)などを挙げるこ
とができる。
【0045】上記のチオール基を有する化合物や炭素−
イオウ二重結合を有する化合物の場合は、触媒成分と反
応すると不溶性の触媒成分硫化物を生成し、触媒活性化
処理においては例えば還元雰囲気下の焼成処理で分解し
て、活性な触媒成分を再生することができる。又、還元
剤、例えばギ酸の場合は、触媒成分と反応すると不溶性
の触媒成分ギ酸塩を生成し、触媒活性化処理においては
例えば酸化雰囲気下の焼成処理で分解して、活性な触媒
成分を再生することができる。
【0046】第2発明で使用する常温固定化剤とは、常
温程度の温度域においても浸漬液/含浸液中の触媒成分
可溶性塩あるいは触媒成分イオンと反応し、不溶性の塩
を形成する化合物である。この要求を満たす限りにおい
て常温固定化剤の種類は限定されない。なお、この不溶
性の塩が、通常の触媒活性化処理により分解して触媒成
分を触媒活性態に復帰させるものであることが、更に望
ましい。
【0047】好ましい常温固定化剤の2,3の例とし
て、(イ)NH4Cl、(ロ)Na2S、(ハ)H2S等
を挙げることができる。
【0048】(水溶液の吸水)第1発明において多孔質
担体に少なくとも前記(A)〜(C)の成分を含む水溶
液を吸水させる処理、及び、第2発明において多孔質担
体に少なくとも触媒成分の可溶性塩と競争吸着剤とを含
む水溶液を吸水させる処理は、周知の浸漬法あるいは含
浸法により行うことができる。
【0049】浸漬法は、所定成分濃度の過剰量の水溶液
中に多孔質担体をディッピングして細孔内に水溶液を充
分に吸水させる処理であり、含浸法は、予め測定された
多孔質担体の細孔容積に相当する量の所定成分濃度の水
溶液を多孔質担体に含浸させる方法である。
【0050】なお、担体への吸着性が悪い水溶性塩は、
担体奥まで分布すると言う理由と、所定量の成分を担持
できるという理由から、含浸法が好ましい。
【0051】(固定化処理、乾燥、触媒活性化処理)第
1発明における昇温固定化処理は、多孔質担体に水溶液
を吸水させて触媒成分を内部担持させた後、これを水溶
液から引き上げて高湿度下に置き、必要な温度域まで加
熱昇温させることによって昇温固定化剤と触媒成分を反
応させる処理である。浸漬法を採用する場合において
は、多孔質担体を浸漬した水溶液をそのまま加熱昇温さ
せることも可能である。昇温させるべき温度域は、昇温
固定化剤の種類により異なるので、一律に限定すること
はできない。加圧下に100°C以上に昇温させること
も可能である。又、「高湿度下」とは、昇温による多孔
質担体表面からの水分蒸発が、実質的に第1発明の作用
・効果を阻害しない程度に抑制される湿度環境を言い、
必ずしも湿度100%である必要はない。
【0052】第2発明における常温固定化処理は、多孔
質担体に上記水溶液を吸水させて触媒成分を内部担持さ
せた後、更に常温固定化剤の溶液を投与して常温固定化
剤と触媒成分を反応させる処理である。その際、加熱昇
温は要しない。含浸法を採用する場合においては、触媒
成分等を含む最初の水溶液の含浸量をやや少な目にし
て、常温固定化剤の溶液を含浸可能とする配慮が望まし
く、水溶液の成分濃度もこの点を予め考慮して決定する
ことが望ましい。
【0053】第1発明、第2発明における固定化処理後
の乾燥は常法に従って行えば良く、又、触媒活性化処理
は、固定化剤と触媒成分との反応による不溶性の塩が分
解され得る処理を選択して、例えば酸化雰囲気又は還元
雰囲気下における300°C〜500°C程度での焼成
等を行う。
【0054】
【実施例】以下に本発明の実施例及び比較例について説
明する。
【0055】〔実施例1〕純水100ccに対し、Pt換
算で2gに相当する量の塩化白金酸(H2PtCl6)とチオ
グリコール酸1gとを溶解したものを4例(試料No.
A1〜A4)準備し、かつ、試料No.A1はそのまま
で、試料No.A2〜A4に対してはそれぞれ濃硝酸を
1,2,及び5cc加えて、更に純水を加えることによ
り、各例の液量をいずれも360ccとした。
【0056】次に、住友化学(株)製の活性アルミナ触
媒用担体「KHA 24」(直径が3〜4mmの球状ペ
レット、比表面積162m 2/g、吸水率360cc/
リットル)の各1リットルに対して上記各例の水溶液3
60ccをムラなく吸水させた後、これらを試作の昇温
固定化処理装置へ移した。
【0057】昇温固定化処理装置は、深形SUSバット
に水を張り、その上に前記ペレットを脱落させないメッ
シュの金網で棚を作ったものである。この棚の上にそれ
ぞれ試料No.A1〜A4に係るPt担持ペレットを載
せ、バットに覆蓋してアルミ箔テープで密封した後、バ
ットの内部を70°Cに加熱昇温させて、この温度を5
時間保持した。
【0058】その後、バットを開蓋して試料No.1〜
4に係るPt担持ペレットを取り出し、120°Cで乾燥
させた後、3%の水素ガスを含む窒素ガス中で300°
Cにて1時間焼成することにより、Ptが活性化された試
料No.A1〜A4に係るPt/アルミナ触媒を得た。
【0059】〔実施例2〕塩化白金酸の水溶液に代えて
Pt換算で同量のジニトロジアンミン白金の硝酸溶解液を
用いた点、及び、チオグリコール酸1gに代えてギ酸5
gを加えた点以外は実施例1と同様にして、試料No.
B1〜B4に係るPt担持ペレットを得た。
【0060】そしてこれらを、昇温域が100°Cであ
る点以外は実施例1と同様にして昇温固定化処理を行
い、次いで空気中で500°Cにて1時間焼成すること
により、Ptが活性化された試料No.B1〜B4に係る
Pt/アルミナ触媒を得た。
【0061】〔比較例1〕チオグリコール酸を使用しな
い点、及び昇温固定化処理を行わない点以外は実施例1
と同様の処理を行って、試料No.C1〜C4に係るPt
/アルミナ触媒を得た。
【0062】〔比較例2〕ギ酸を使用しない点、及び昇
温固定化処理を行わない点以外は実施例2と同様の処理
を行って、試料No.D1〜D4に係るPt/アルミナ触
媒を得た。
【0063】〔Pt担持層厚の観察〕試料No.A1〜D
4に係るPt/アルミナ触媒につき、それぞれペレットを
二つ割りにして、顕微鏡によりPt内部担持層のペレット
表面からの層厚を観察した処、表1に示す結果が得られ
た。表1中、担持層厚は平均値で表され、その単位は
μmである。
【0064】この結果から、実施例触媒である試料N
o.A1〜A4は対応する比較例触媒である試料No.
C1〜C4に比較して、又、実施例触媒である試料N
o.B1〜B4は対応する比較例触媒である試料No.
D1〜D4に比較して、それぞれ顕著に担持層厚が大き
いことが分かる。
【0065】なお、実施例触媒間でも試料No.A1〜
A4が試料No.B1〜B4に比較してかなり担持層厚
が大きいのは、両実施例における〔昇温固定化剤である
チオグリコール酸とギ酸とのPt固定化作用の強弱差?
出発物質であるPt化合物のアルミナに対する吸着速度の
差?〕に起因するものと思われる。また、一般論として
競争吸着剤の使用量を選択すれば担持層厚を任意に調整
できるが、そのような効果が本発明の実施例においては
特に顕著に発現することが理解できる。
【0066】〔振動磨耗試験〕試料No.A1〜D4に
係るPt/アルミナ触媒につき、それぞれ200ccのペ
レットを振動磨耗試験用SUS容器(内径80mm×長
さ50mm、内容積が250cc)に収納し、密閉して
30Hz、15Gにて上下振動を24時間加えた後、こ
れを取り出して、Pt担持量分析する方法によりペレット
から脱落していないPtの残存担持量を測定した処、表1
に残存率(%)で示す結果が得られた。
【0067】その結果より、平均担持層厚の大きいもの
程残存率も大きく、振動磨耗によるペレット触媒の活性
低下に関して耐久性が優れていることが分かる。
【0068】〔触媒性能評価〕試料No.A1〜D4の
アトリションテスト後に係るPt/アルミナ触媒につき、
エチレン 1,000ppm/Air バランスのモデルガスを用
い、空間速度(SV)60,000Hr -1 の条件で、エチレン
浄化性能を指標とする触媒性能評価試験を行った。各試
験においては、エチレン浄化率が50%に到った時の温
度T 50 (°C)と、300°Cにおけるエチレン浄化
率(%)とを測定し、その結果を表1に示した。
【0069】表1の結果より、実施例触媒である試料N
o.A1〜A4は対応する比較例触媒である試料No.
C1〜C4に比較して、又、実施例触媒である試料N
o.B1〜B4は対応する比較例触媒である試料No.
D1〜D4に比較して、低温浄化性能においても、30
0°Cでの浄化性能においても、それぞれ顕著に優れて
いた。又、全触媒を通じて、その浄化性能は前記Pt残存
担持量にほぼ比例するものであった。
【0070】
【表1】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質担体に触媒成分の内部担持層を形
    成させる多孔質担体触媒の製造方法であって、 前記多孔質担体に少なくとも下記(A)〜(C)の成分
    を含む水溶液を吸水させて触媒成分の内部担持層を形成
    させた後、高湿度下で触媒成分の昇温固定化処理を行
    い、次いで乾燥及び触媒活性化処理を行うことを特徴と
    する多孔質担体触媒の製造方法。 (A)触媒成分の可溶性塩。 (B)触媒成分を多孔質担体の内部に担持させるための
    競争吸着剤。 (C)一定の昇温域で触媒成分と不溶性の塩を形成する
    昇温固定化剤。
  2. 【請求項2】 多孔質担体に触媒成分の内部担持層を形
    成させる多孔質担体触媒の製造方法であって、 前記多孔質担体に、少なくとも触媒成分の可溶性塩と、
    触媒成分を多孔質担体の内部に担持させるための競争吸
    着剤とを含む水溶液を吸水させて触媒成分の内部担持層
    を形成させた後、触媒成分との間で常温下でも不溶性の
    塩を形成する常温固定化剤の溶液を投与して触媒成分の
    常温固定化処理を行い、次いで乾燥及び触媒活性化処理
    を行うことを特徴とする多孔質担体触媒の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記多孔質担体がペレット状であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質担体触媒の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 前記触媒成分が貴金属元素であることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質担体
    触媒の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記競争吸着剤の種類及び/又は使用量
    を選択することにより、触媒成分の内部担持層の担持深
    度あるいは層厚を任意に調整することを特徴とする請求
    項1〜4のいずれかに記載の多孔質担体触媒の製造方
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007045756A (ja) * 2005-08-10 2007-02-22 New Japan Chem Co Ltd 隔膜型水素化触媒を用いた水素化方法、水素化反応装置及び隔膜型水素化触媒
JP2007268472A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 排ガス浄化用触媒の製造方法及び排ガス浄化用触媒
CN106492799A (zh) * 2016-11-14 2017-03-15 中国海洋石油总公司 晶粒分布可控的乙烯氧化制环氧乙烷银催化剂的制备方法
JP2020528350A (ja) * 2017-07-28 2020-09-24 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 不均一触媒の調製方法

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