JP2007039408A - 微粉化クレアチンとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体への吸収性にすぐれ、かつ、水溶解性の大きいクレアチンとその容易な製造方法を提供し、従来のクレアチンの使用対象者や使用範囲を広げる。
【解決手段】平均粒子径が2μm以下である微粉化クレアチン。同時に、皮膚から吸収させることが可能であり、及び/又は、水溶解性が品温10℃において2重量%以上である微粉化クレアチン。クレアチンを非水系溶媒に分散させた後、ビーズサイズ1mm以下のビーズミルにかけて粉砕し、平均粒子径2μm以下の微粉化クレアチンを製造する方法。【選択図】 なし

Description

本発明は微粉化クレアチン及びその製造方法に関する。本発明に係る微粉化クレアチンは、生体への吸収性がすぐれていると共に水溶解性が大きいので、きわめて使いやすい。
本発明において、クレアチンとは、クレアチンモノハイドレート(CHNOHO) のことをいう。クレアチンは、チッ素を含む有機物で、アルギニンに似た構造を有するアミノ酸の一種である。生体内では、アルギニン、グリシン、メチオニンの3種のアミノ酸から合成され、エネルギー源として使用され、筋肉を増強する効果のあることが知られている。一方、クレアチンは、分解されてもアミノ酸のような尿素にはならず、クレアチニンとなって尿中に排出される。
このように、クレアチンは、生体内で合成されているため、通常の食生活において不足することはない。しかし、高強度の運動を行なうスポーツ選手や病気或いは怪我などで十分な栄養が摂れないままリハビリを行なう患者などには、クレアチンが不足する傾向が見られる。クレアチンの不足は、運動による身体能力の向上やリハビリによる回復などを遅くする原因となる。さらに、高齢になれば、生体内におけるクレアチンの合成効率が低下する。これらの事情を考慮すると、クレアチンを効率よく日常的に摂取する方法、さらには、食欲がない病中・病後でもクレアチンを容易に摂取できる方法の開発が必要である。すでに、クレアチン含有のタブレットやクレアチン含有飲料など幾つかの製品が販売されているが、その原料であるクレアチンには、以下の問題があり、これらは、現在市販の製品では解決されていない。
(1)生体内への吸収性がよくない。
(2)水溶解性があまりよくない。最大溶解濃度は10℃で0.9%程度である。
(3)水に溶解することで、クレアチニンに変化しやすくなるため、長期間の保存に適していない。
すなわち、現在クレアチンは、スポーツジムなどを中心に比較的強い運動を行なう人達にタブレットや粉体の状態で摂取されていて、特にボデイビルダーらに好まれている。喫食するときは、タブレット状のものは口中で噛み砕いて嚥下するが、粉末状のものは、添付された匙などで計量しつつ、水やスポーツドリンクなどと一緒に摂取することが多い。しかし、現在使用されているクレアチンは生体への吸収性が低いので、その実効性については疑問がある。また、クレアチン含有飲料も市販されているが、クレアチンの添加量が240mL当たり25mgと極微量であり、申し訳の程度に添加しているにすぎず、その効果を期待できるものではない。
本発明者らは、上記の事情に鑑み、クレアチンを使いやすいように改質して、その使用範囲を広げ、さまざまな立場の人達がより快適な生活を送るのに寄与すべく、まず、特許文献を調査した。
特開平7−236460号公報 特開平8−2264073号公報 特開2001−321134号公報 特開2000−245396号公報
特許文献1、2及び3には、弱アルカリ性に調整した水を加温し、この温水100ccに対してクレアチンの結晶粉末を1〜3gの割合になるように投入し、攪拌しながら溶解してクレアチン水溶液とし、この水溶液に栄養又は味覚用添加剤を加えてクレアチン飲料を製造する方法について開示されている。これら特許文献の方法によれば、3%濃度までクレアチンの溶解度を高めることが可能であるが、得られた飲料製品を冷却するとクレアチンが析出する上、酸性側では時間の経過と共にクレアチンが分解してクレアチニンに変化するので酸性飲料にすることができない。すなわち、これら特許文献に記載の方法は、クレアチンの物性を改良したわけでないので、クレアチンの体内吸収性や水溶解性に関する根本的な問題を解決したことになっていない。
また、特許文献4には、粒子径5μmないし200μmのクレアチンを含有させることにより、高用量でもザラツキがなく、かつ、歯付きの少ない、顆粒及び圧縮成型した錠剤形態の食品又は医薬品を製造する方法が開示されている。しかし、特許文献4には、生体への吸収性にすぐれ、かつ水溶解性の高いクレアチンやその製造方法に関しては何ら開示されていない。
上記の状況に鑑み、本発明者らは、使いやすいクレアチンの開発を志向し、まず、生体への吸収性にすぐれ、かつ、水溶解性の大きいクレアチンを開発することとし、種々試験を行なった。その結果、クレアチンを粉砕して微粉化することによってこの課題を解決できることを見いだし、さらに研究を続け、本発明を完成するに至った。
本発明は、生体への吸収性にすぐれ、かつ、水溶解性の大きいクレアチンとその容易な製造方法を提供し、もって、従来のクレアチンの使用対象者や使用範囲を広げることを課題とする。
上記課題を解決するための本発明のうち特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、平均粒子径が2μm以下である微粉化クレアチンである。
また、同請求項2に記載する発明は、平均粒子径が2μm以下であると共に、皮膚から吸収させることが可能な微粉化クレアチンである。
また、同請求項3に記載する発明は、平均粒子径が2μm以下であると共に、水溶解性が品温10℃において2重量%以上である微粉化クレアチンである。
また、同請求項4に記載する発明は、クレアチンを非水系溶媒に分散させた後、ビーズサイズ1mm以下のビーズミルにかけて粉砕し、平均粒子径2μm以下の微粉化クレアチンを製造する方法である。
本発明によって、生体への吸収性にすぐれたクレアチンとその容易な製造方法を提供できる。すなわち、本発明に係る微粉化クレアチンは、生体への吸収性がすぐれている。そのため、本発明に係る微粉化クレアチンは、経口投与に限らず、舌下吸収や皮膚から吸収させることが可能である。したがって、従来品に比べて、病人や高齢者なども対象にすることができ、使用範囲を拡大することができる。
また、本発明に係る微粉化クレアチンは、タブレット状に成型するか又は粉末状のまま経口投与しても、体内への吸収性がすぐれているので、すみやかに吸収され、また、長時間維持できる。よって、本発明に係る微粉化クレアチンは、従来市販のクレアチンに比べて、筋力増強効果が大きい。
また、本発明によって、水溶解性の大きいクレアチンとその容易な製造方法を提供できる。すなわち、本発明に係る微粉化クレアチンは、水への溶解度が大きく、しかも、その溶解度を長期間にわたって持続できる。その上、酸性域においてもクレアチンが析出しない。そのため、本発明によれば、体内への吸収性がよく、かつ、より高濃度にクレアチンを含有し、しかも保存性にすぐれた酸性飲料を容易に作ることができる。
本発明に係る微粉化クレアチンを用いた酸性乳飲料のその他のメリットをまとめると、以下のとおりである。
(1)10℃以下で流通するケースが多い飲料製品なのでクレアチンの変性が遅くなる。よって、10℃で2週間保存したときの残存率を75%程度に留めることができる。
(2)溶解させずに分散状態で添加しても、舌が認識できる最小粒子径である2μm以下に微粉化してあるので、ざらつき感がなくなる。
(3)スポーツ選手から高齢者まで、従来から酸性乳飲料は幅広く喫食されているので、食欲がないときでも継続的に飲用することができる。
また、本発明に係る微粉化クレアチン(平均粒子径2μmまで微細化した粉末状クレアチン)のメリットをまとめると、以下のとおりである。
(1)口中での舌触りが改善されていること
(2)舌下吸収性が促進されていること
(3)皮膚表面の汗線や毛穴からの皮膚吸収が可能であること
(4)溶解性が向上していること
よって、本発明の微粉化クレアチンは、スポーツ選手は勿論、一般生活者や、高齢者や病中・病後の方々など社会的弱者に対してもその用途を拡大でき、好適なクレアチン含有飲料やクレアチンを主材とする栄養補助食品や医薬品を提供できる。
本発明に係る微粉化クレアチンは、従来から市販されているクレアチンを、平均粒子径が2μm以下、好ましくは1μm以下に微細化した粉体である。平均粒子径が2μmよりも大きいクレアチンでは、本発明の課題を解決することができない。
また、本発明に係る微粉化クレアチンは、最大粒子径5μm以上のものの含量が20重量%以下であることが好ましい。なお、微粉化クレアチンの最小粒子径については、特に制限はない。本発明者らの知見によれば、クレアチンは微粉化すればするほど、水溶解性がよくなると共に、生体への吸収性も向上する。しかし、あまり細かく粉砕すると扱い難くなるので、実用的には最小粒子径を0.01μm以上に抑えることが好ましい。なお、本発明に係る微粉化クレアチンの摂取方法は、経口摂取に限るものではなく、舌下吸収や皮膚吸収の場合を含む。
本発明において「水溶解性」という意味は、クレアチンの粉末が清水に溶解する程度のことであり、重量割合で表す。また「生体への吸収性」とは、ヒトの体内へクレアチンが吸収されたときの吸収の速さや持続の度合い、また運動機能が増強される程度を意味し、クレアチン血中濃度はその有用な指標である。
また、本発明において、「残存率」とは、クレアチンがクレアチニンに変化しないで、クレアチンとして残存している程度を示すもので、クレアチン量又はクレアチニン量の割合で評価する。クレアチンは粉砕処理や過熱により、また水へ溶解することで、クレアチニンに変化するが、この反応は通常体内でも行なわれている。体内では再合成されてクレアチニンはクレアチンに戻る。
クレアチンの吸収効果を発現させるには、血流にのせる必要がある。通常、機能性成分や薬効成分を摂取する手段として経口投与が行なわていれるが、各種成分を経口投与した場合、胃腸や肝臓での代謝によって血流にのる量が低下することが知られている。経口投与による薬剤の効果を高めるには、初回通過効果(first pass effect:消化管から血液に入る量が減少すること)を抑制する必要がある。そのため、クレアチンの生体内への吸収性を高めるには、経口摂取のみならず、皮膚吸収、舌下吸収が可能な性状のクレアチンを開発する必要がある。本発明の微粉化クレアチンは、この要望に応えて開発されたものである。
すなわち、皮膚吸収や舌下吸収では、消化管の関門を通過することなく、直接血流にのせることができる。その際、皮膚や舌を通じて吸収するためには、クレアチンを非常に微細な大きさにする必要がある。例えば、舌の表面には味蕾と呼ばれる味を感じる受容体がある。味蕾には味孔と呼ばれる隙間が空いており、クレアチンがこの隙間を通過できなければ舌下での吸収が難しくなる。本発明者らの知見によれば、この味孔のサイズが数μmから十数μm程度の大きさであるため、必然的に舌下吸収を期待する場合、クレアチンの粒子サイズを数μm以下にする必要がある。
また、皮膚は多層構造を有し、外界と面する皮膚表面は角質層となっていて、非常に固く真皮層以下を保護している。角質層には毛穴や汗線など角質層を通って真皮まで達している器官が存在する。これらの器官は10μm程度の直径で、内部へ行くほど細くなり、最終的には2μm程度になっている。毛孔には汗線や分泌器官から水分を放出する場所があるので、毛孔の内部にクレアチンを到達させることができれば、そこから分泌される水分で溶解し、毛孔に張り巡らされている毛細血管内部に浸潤されるものと考えられる。
本発明に係る微粉化クレアチンの製造方法は、ビーズミルを用いた湿式粉砕法を採る。すなわち、本発明に係る微粉化クレアチンの製造方法では、溶媒としてエタノールやイソプロピルアルコールなどの非水系溶媒を用い、その溶媒中にクレアチンとビーズを共存させてビーズに衝突させ、クレアチンをビーズで擦り潰すことによって微粉化するものである。ビーズミルを用いて湿式粉砕することによって、水溶化に伴うクレアチンの有効成分の減少を抑え、所期サイズの微細な粒子径のクレアチンを容易に製造できる。なお、粉砕に用いる溶媒は、非水系であって、粉砕対象のクレアチンの成分が易溶でなければ何を用いてもよいが、安全性に問題のない程度の残存量にできるものが好ましい。
本発明においてクレアチンの微粉化に用いるビーズは、衝突や溶媒によって壊れない強度を有する材質であれば、どのようなものでも用いて差し支えないが、粒径0.01〜1mm程度の大きさのものが好ましい。また、ビーズは、クレアチンの微粉化後、フィルターによって完全に取り除くことができるので、食品専用のものである必要はないが、食用に供しても差し支えないものであることが好ましい。好ましい材質の具体例として、ナイロン、セラミック、ジルコニアなどを挙げることができる。また、本発明において、ビーズミルは、どのような機種のものを用いても差し支えない。
また、粉砕対象のクレアチンと溶媒の量の割合は、特に限定されないが、クレアチンの量が過剰な場合、得られるスラリーの粘度が上がってしまい、作業効率が低下するので、クレアチンと溶媒の混合後の粘度は300mPa・s以下になるように調整するすることが好ましい。
本発明において、微粉化の対象とするクレアチンは、一般的に市販されているものであれば、その種類や性状は特に限定されない。好ましくは、デグサ社製の高純度クレアチン(商品名「クレアピュア」)などを用いることができる。
一般に、粉末や顆粒を微粉化する方法には、ビーズミル法の他に、ボールミル法、ローラーミル法、ジェットミルを用いるジェット粉砕法(加圧噴射された気体で粉体どうしを衝突させて微粉化する方法)などがある。しかし、ボールミル法やローラーミル法では、クレアチンを平均粒子径2μmまで微細化できない。また、ジェット粉砕法では、クレアチンの有用成分を毀損するおそれがある上、粉砕効率が悪いので、本発明では採用できない。いずれにしても、本発明に係る微粉化クレアチンの製造には、ビーズミル法を用いる必要がある。
すなわち、本発明において、ビーズミルを用いて非水系溶媒中のクレアチンを湿式粉砕する際には、ビーズとクレアチン粒子の衝突が繰り返されることによる粉砕時の摩擦熱でビーズミルの温度が上昇しやすいが、ビーズミルは外部からの冷却手段によって十分な冷却が可能であるため、クレアチンが熱によりダメージを受けてその品質を損なうおそれがない。さらに、本発明の製造方法では、クレアチンを微粉化するのに非水系溶媒とビーズ以外は使用せず、両者とも粉砕後は除去が可能であるため、安全であり、消費者に不安を与えることなく、微粉化クレアチンを容易に製造できる。
以下、実施例及び試験例をもって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の説明において「%」の表示は、特に断らない限り、重量割合を表す。
<微粉化クレアチンの製造例>
市販のクレアチンに対し2倍量のエタノールを加えて攪拌しながらビーズミルに供給した。封入したビーズはセラミック製で粒径0.1mmのものである。ビーズミル内をビーズ攪拌速度2000rpmで3時間循環させた。その後、遠心力とフィルターによってビーズを分離し、残ったスラリーを噴霧乾燥装置にかけ、平均粒子径2μm(最大粒子径5μmのものが20%以下)の顆粒状の微粉化クレアチンを製した。得られた微粉化クレアチンを電子顕微鏡で観察したところ、0.5μm程度の非常に微細な粒子の集合体であることが判明した。なお、微粉化後のクレアチンは、微粉化前のクレアチンに比べて有効成分の含量に変化はみられなかった。
《試験例1》
実施例1で製した微粉化クレアチン(平均粒子径2μm)と市販のクレアチン(同350μm)について、それぞれ、10℃の水に対する最大溶解濃度を測定した。その結果は以下のとおりである。
微粉化クレアチン 最大溶解濃度 2.11%
市販のクレアチン 同 1.01%
この結果から、本発明に係る微粉化クレアチンは、従来市販のクレアチン(未粉砕品)に比べて水溶解性が2倍以上高くなっていることが確認された。
《試験例2》
<消化吸収性確認試験>
(1)試験方法
実施例1で製した微粉化クレアチン(平均粒子径0.5μm)と市販のクレアチン(同350μm)及び対照として市販のデキストリンを用いて、消化吸収による吸収速度の比較試験を行なった。すなわち、微粉化クレアチンと市販のクレアチンとデキストリンとをそれぞれ同じ大きさで同じ形状のタブレットに成型して、これを別々のグループに摂取させ、摂取後の血液中クレアチン量の変化を経時的に測定した。試験方法は以下のとおりである。
(イ)試験区:プラセボ区 デキストリン(平均粒子径180μm)のタブレット
市販区 市販のクレアチン(同 350μm)のタブレット
微粉化区 微粉化クレアチン(同 0.5μm)のタブレット
(ロ)摂取方法:タブレットを口中に含み、噛んだり飲み込んだりしないように溶かしな がら摂取した。
(ハ)評価対象者:25歳から50歳までの健康な男女20名(各グループ10名)
(ニ)評価方法:喫食後のクレアチン濃度を経時的に測定した。
(2)試験結果
試験結果は表1に示すとおりである。なお、表1の数値は、喫食前のプラセボ区を100として、血中クレアチン濃度を相対値(%)で示したものである。
Figure 2007039408
(3)考察
表1から、微粉化区では、喫食後すみやかに血中濃度が高まる傾向が見られた。また、市販区では微粉化区よりも吸収速度が遅く、かつ、力価も低下する傾向が見られた。すなわち、微粉化区(微粉化クレアチン摂取群)は、市販区(市販のクレアチン摂取群)に比べて、クレアチン血中濃度の上昇が50%ほど速かった。また、血中最大濃度についても微粉化区の方が20%ほど多く観察された。この結果から、本発明に係る微粉化クレアチンは、従来の市販品に比べて、消化吸収性がすぐれていることが確認された。
《試験例3》
<運動機能増強性確認試験>
(1)試験方法
24歳から40歳までの健康な男女30名(各区ごとに男女5名ずつ計10名)に対して、それぞれ別々のタブレット状打錠品(5g)を供与し、以下の要領で運動機能の変化を評価した。
タブレットの主材
(イ)試験区:プラセボ区 デキストリン(平均粒子径180μm)
市販品区 市販のクレアチン(同 180μm)
微粉化区 微粉化クレアチン(同 0.5μm)
(ロ)摂取量:5粒(20g)/日を4日間摂取後、1粒(5g)/日を30日間摂取し 続けた。
(ハ)評価方法:各タブレットを摂取しながら以下のトレーニングを行なって運動機能の 向上率を測定した。
(ニ)トレーニングと摂取の方法:
a.タブレットの摂取開始日からトレーニングを行なった。
b.タブレットは、毎トレーニング終了後に摂取した。
c.トレーニングには、週に1回、被検者の能力に応じた高強度・低回数のスクワットを 実施した。
d.タブレット摂取の開始前と開始後30日目に、体重1kg当たり0.052kgの負 荷をかけた自転車のペダルを5分間隔で20秒ずつ3回漕いで、運動機能を測定した。
(2)試験結果
試験結果は、表2に示すとおりである。なお、表2の数値は、クレアチン摂取開始前のプラセボ区を100として、運動の前後で変化した最大筋力(仕事量)の変化をクレアチン摂取開始前後の相対値(%)で示したものである。
Figure 2007039408
(3)考察
表2から、被検者の運動機能は、クレアチン摂取区である微粉化区と市販品区では、プラセボ区と比較して、明らかに増強されていることが確認された。また、クレアチン摂取区でも、微粉化区では、市販区に比べて、トレーニングによる効果がより強く現れていることが確認された。
《試験例4》
<水溶解性確認試験>
微粉化クレアチン(平均粒子径0.5μm)と市販のクレアチン(同180μm)について、品温ごとの溶解度を測定したところ、表3に示す結果が得られた。
Figure 2007039408
《試験例5》
<皮膚吸収性確認試験>
(1)試験方法
試験例2に参加した男女30名(各区ごとに男女5名ずつ計10名)に対して、それぞれ別々の皮膚塗布剤(ワセリン90%にそれぞれ以下の塗布主材10%を加えてミキサーで混練したもの)を塗布し、以下の要領で皮膚への吸収性を評価した。
塗布主材
(イ)試験区:プラセボ区 デキストリン(平均粒子径180μm)
市販品区 市販のクレアチン(同 180μm)
微粉化区 微粉化クレアチン(同 2μm)
(ロ)塗布方法:運動前に上記皮膚塗布剤を上腕部に約5g塗布した。
(ハ)評価方法:塗布後の運動前と60分間自転車のペダルを漕いだ後、血中クレアチン 濃度を測定し、運動前後の差を比較した。
(2)試験結果
試験結果は表4に示すとおりである。なお、表4の数値は、運動前のプラセボ区を100(%)としたときの血中クレアチン濃度を相対値(%)で示したものである。
Figure 2007039408
(3)考察
表4から、血中クレアチン濃度は微粉化区が最も高い結果が得られた。よって、クレアチンを2μmまで微粉化すると、皮膚吸収性が大きく向上することが確認された。
<クレアチン含有酸性乳飲料の製造例>
(1)原料の配合量
砂糖 8.5%
脱脂粉乳 4.0 (無脂乳 固形量4.0%)
ペクチン 0.5 (HMペクチン:UNIPECTINE AYD380B)
微粉化クレアチン 1.8 (平均粒径0.5μm)
クエン酸 0.5
水 84.7
合 計 100.0%
(2)製法
(イ)あらかじめ、砂糖・ペクチン・水の一部を混合したものを加熱して溶解した。これを30℃に冷却した。
(ロ)脱脂粉乳を残りの水に溶解し、(イ)の溶液と混合した。
(ハ)(ロ)の混合液にクエン酸を加え、pH3.8に調整した。
(ニ)(ハ)の混合液に微粉化クレアチンを添加して混合させた。
(ホ)(ニ)の混合液を60℃まで加温した後、高圧ホモジナイザーにかけて150kg/cm2 で均質化した。
(ヘ)容器に充填して冷却し、製了とした。
(3)保存試験
上記の配合と製法で作った酸性乳飲料を5℃で5週間保存した。その結果、残存率は、保存1週間で78%、保存5週間で73%となった。同じ製品を常温(25℃)で保存したときの残存率は、保存1週間で57%、保存5週間で45%となり、冷蔵保存したときよりも、クレアチンの残存率が17〜25%減少することが確認された。
<クレアチン含有タブレットの製造例>
(1)原料の配合量
微粉化クレアチン 50.0 (平均粒径0.5μm)
ソルビトール 47.7
高甘味料 0.1
香料 0.2 (ラムネ)
滑沢剤 2.0
合 計 100.0%
(2)製法
各原料を秤取して混合後、打錠機にかけて成形した。
産業上の利用性
以上詳しく説明したとおり、本発明に係る微粉化クレアチンは、従来から市販されているクレアチンに比べて、生体への吸収性がすぐれている。よって、経口投与のみならず、舌下吸収させることや皮膚吸収させることも可能である。そのため、スポーツ選手だけでなく、一般の需要者、特に高齢者や病中・病後の方々など社会的弱者にも容易に使用しやすい各種のクレアチン製品を供給することができる。
本発明に係る微粉化クレアチンは、従来から市販されているクレアチンに比べて、体内への吸収性がすぐれている上に、水溶解性が2倍以上も大きくなっているので、スポーツ選手は勿論、一般の方々、例えば、高齢者や病中・病後の方々など社会的弱者にも摂取しやすいクレアチン含有の酸性乳飲料やタブレット状の医薬品・健康補助食品を供給することができる。
また、本発明に係る微粉化クレアチンは、一時に多量のクレアチンを摂取するのに好適である。その上、スポーツの前後に摂取するのにも好適である。しかも、クレアチン含有飲料にして保存しても、クレアチンが析出せず、所定の濃度を維持できる。このように、本発明に係る微粉化クレアチンとその製造方法は、従来のクレアチンの使用対象者や使用範囲を大きく広げることができる、画期的なものである。

Claims (4)

  1. 平均粒子径が2μm以下である微粉化クレアチン。
  2. 平均粒子径が2μm以下であると共に、皮膚から吸収させることが可能な微粉化クレアチン。
  3. 平均粒子径が2μm以下であると共に、水溶解性が品温10℃において2重量%以上である微粉化クレアチン。
  4. クレアチンを非水系溶媒に分散させた後、ビーズサイズ1mm以下のビーズミルにかけて粉砕し、平均粒子径2μm以下の微粉化クレアチンを製造する方法。





































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