JP2007038497A - 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 流路形成基板に圧力発生室を比較的高密度に配設することができ且つ流路形成基板の剛性を良好に確保することができる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供する。
【解決手段】 液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室12が形成される流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に振動板を介して設けられる下電極60、圧電体層70及び上電極80からなる圧電素子300と、流路形成基板10の圧電素子300側の面に接合され各圧力発生室12に供給される液体が貯留されるリザーバ31を有するリザーバ形成基板30とを具備し、且つリザーバ形成基板30の流路形成基板10との接合面側に、一端側がリザーバ31に連通すると共に他端側が振動板に設けられた連通口53を介して圧力発生室12に連通する供給路32を、各圧力発生室12のそれぞれに対応して設ける。
【選択図】 図2

Description

ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
液体噴射ヘッドであるインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、ノズル開口に連通する圧力発生室とこの圧力発生室に連通する連通部とが形成される流路形成基板と、この流路形成基板の一方面側に形成される圧電素子と、流路形成基板の圧電素子側の面に接合され連通部と共にリザーバの一部を構成するリザーバ部を有するリザーバ形成基板とを具備するものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、このような構成のヘッドでは、圧力発生室とリザーバとは、圧力発生室の一端側に設けられるインク供給路を介して連通されており、このインク供給路は、一般的に、圧力発生室と共に流路形成基板に形成されている。そして、このように従来のインクジェット式記録ヘッドでは、圧力発生室、インク供給路等のインク流路の多くが流路形成基板に形成されているため、流路形成基板の剛性が大幅に低下し、流路形成基板や振動板に割れ等が生じてしまうという問題がある。また、流路形成基板に圧力発生室等を比較的高密度に配列すると圧力発生室間の隔壁の厚さが薄くなり、隣接する圧力発生室間でクロストークが発生してしまうという問題、すなわち、良好なインク吐出特性が得られないという問題もある。そして、このような問題は、流路形成基板を大きくすることで解決することはできるものの、ヘッドが大型化してしまうため好ましくない。
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、勿論、インク以外の液体を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても、同様に存在する。
特開2000−296616号公報(第2図等)
本発明は、このような事情に鑑み、流路形成基板を大型化することなく、流路形成基板に圧力発生室を比較的高密度に配設することができ且つ流路形成基板の剛性を良好に確保することができる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合され各圧力発生室に供給される液体が貯留されるリザーバを有するリザーバ形成基板とを具備し、且つ該リザーバ形成基板の前記流路形成基板との接合面側には、一端側が前記リザーバに連通すると共に他端側が前記振動板に設けられた連通口を介して前記圧力発生室に連通する供給路が、各圧力発生室のそれぞれに対応して設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第1の態様では、圧力発生室が形成される流路形成基板の剛性が著しく向上するため、隣接する圧力発生室間でのクロストークが防止され、また流路形成基板や振動板の割れ等の発生が防止される。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記供給路が前記リザーバ形成基板の面内方向に延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第2の態様では、供給路の寸法精度が向上するため、供給路の流路抵抗を高精度に調整することができる。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、各圧電素子から引き出され少なくとも金(Au)からなる金属層を含むリード電極をさらに有すると共に、前記供給路の内面の一部が前記リード電極と同一の層からなるが当該リード電極とは不連続の不連続金属層によって構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第3の態様では、金(Au)からなる不連続金属層は、インク等の液体に対する耐性が高いため、インク等による供給路の内面の浸食が防止される。
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記リザーバが、各圧力発生室のそれぞれに対応して設けられて所定量の液体が貯留される複数の第1のリザーバと、これら複数の第1のリザーバに接続される第2のリザーバとで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第4の態様では、第2のリザーバが設けられていることで、隣接する圧力発生室間でもクロストークの発生がより確実に防止される。
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記リザーバ形成基板が、面方位(100)のシリコン単結晶基板からなることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第5の態様は、供給路、リザーバ等が高精度に形成されるため、良好なインク吐出特性が得られる。
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる第6の態様では、良好な印刷品質が得られ且つ耐久性にも優れた液体噴射装置を提供することができる。
本発明の第7の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板の一方面側に振動板を介して下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成すると共に当該圧力発生室の端部近傍に対応する領域の前記振動板を除去して連通口を形成する工程と、前記圧電素子から引き出されるリード電極を形成すると共に該リード電極と同一の層からなるが当該リード電極とは不連続の不連続金属層によって前記連通口を封止する工程と、圧力発生室に供給される液体が貯留されるリザーバと、一端側が前記リザーバに連通すると共に他端側が前記振動板に設けられた連通口を介して前記圧力発生室に連通する供給路とを有するリザーバ形成基板を前記流路形成基板に接着剤によって接合する工程と、前記流路形成基板をその他方面側から前記振動板及び前記不連続金属層が露出するまでウェットエッチングして前記圧力発生室を形成する工程と、前記連通口に対応する領域の前記不連続金属層を前記圧力発生室側からウェットエッチングすることにより除去して当該連通口を介して前記圧力発生室と前記供給路とを連通させる工程とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第7の態様では、圧力発生室をエッチングによって形成する際、そのエッチング液がリザーバ形成基板側に流れ込むのを防止でき、エッチング液による断線等、製造不良の発生を確実に防止することができる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造されるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化によって二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成され、さらに、この弾性膜50上には、例えば、厚さが、0.4μmの酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55が設けられている。
ここで、流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。そして、これら各圧力発生室12の長手方向一端部に対応する領域には、弾性膜50及び絶縁体膜55を貫通して圧力発生室12内に開口する連通口53が設けられている。なお、これらの連通口53は、後述するリザーバ形成基板30に設けられるリザーバ31に繋がっており、リザーバ31からこの連通口53を介して各圧力発生室12にインクが供給されるようになっている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12の長手方向の一方の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、圧力発生室12を形成する際のマスクとして用いられるマスク膜51を介して、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50及び絶縁体膜55が形成されており、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300が形成されている。ここで、圧電素子300とは、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されており、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。また、本実施形態では、連通口53の開口領域にも、このリード電極90と同一の層からなるがリード電極90とは不連続の不連続金属層95が残存している。
そして、このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、複数の圧力発生室12に供給するインクが貯留されるリザーバ31を有するリザーバ形成基板30が接着剤36によって接着されている。このリザーバ形成基板30の流路形成基板10との接合面側には、図3に示すように、一端側が弾性膜50等に設けられた連通口53に連通すると共に他端側がリザーバ31に連通する供給路32が、各圧力発生室12のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、各圧力発生室12は、これら連通口53及び供給路32を介してリザーバ31と連通している。この供給路32は、リザーバ形成基板30の流路形成基板10との接合面に設けられた溝であり、圧力発生室12よりも狭い幅でリザーバ形成基板30の面内方向に延設されている。また、本実施形態では、この供給路32の流路形成基板10側の面は、上述した不連続金属層95によって形成されている。すなわち、不連続金属層95が連通口53の開口領域から供給路32に対応する領域に亘って連続的に設けられており、供給路32の一方の内面がこの不連続金属層95で形成されている。なお、この供給路32は、リザーバ31から連通口53を介して圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持する役割を果たしている。すなわち、リザーバ31から圧力発生室12にインクを供給する際に過剰な量の流入や急激な流入を抑えるといった流量及び流速を調整する流路抵抗調整機能を有する。
また、リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部33が設けられている。圧電素子300は、この圧電素子保持部33内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部33は、密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。
このようなリザーバ形成基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、線膨張係数が流路形成基板10と略同一の材料で形成されていることが好ましい。このため、本実施形態では、リザーバ形成基板30の材料として、流路形成基板10と同一素材であるシリコン単結晶基板を用いている。ここで、リザーバ形成基板30として用いるシリコン単結晶基板の結晶面方位は、特に限定されないが、供給路32の形成精度を考慮すると、リザーバ形成基板30としては面方位(100)のシリコン単結晶基板を用いることが好ましい。このため、本実施形態では、リザーバ形成基板30として面方位(100)のシリコン単結晶基板を用いている。
そして、リザーバ31、供給路32及び圧電素子保持部33は、このシリコン単結晶基板からなるリザーバ形成基板30を異方性エッチングすることによって形成されている。このため、これらリザーバ31等、特に供給路32は高精度に形成されている。
ここで、リザーバ形成基板30である面方位(100)のシリコン単結晶基板を異方性エッチングすると、シリコン単結晶基板の(111)面が露出されながらエッチングが進行してリザーバ31等の凹部が形成される。すなわち、(111)面が露出された部分のエッチングは実質的に停止して深さ方向のみのエッチングが進行してリザーバ31等の凹部が形成される。
そして、供給路32は、リザーバ形成基板30の一方面側に設けられた浅い溝であり、その内面は(111)面のみで構成される。このため、エッチング時間を高精度に制御しなくても、供給路32は極めて高精度に形成される。
したがって、各供給路32の幅を調整することで、流路抵抗を確実に所望の値とすることができるため、良好なインク吐出特性を得ることができる。なお、このように内面が(111)面のみで構成されている供給路32等の断面形状は、略三角形形状となる。
このようなリザーバ形成基板30上には、図示しないが、圧電素子300を駆動するための駆動IC等が実装されている。そして、各圧電素子300から圧電素子保持部33の外側まで引き出された各リード電極90の先端部と駆動ICとがワイヤボンディング等によって電気的に接続されている。
さらに、リザーバ形成基板30のリザーバ31に対応する領域上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ31に対向する領域は開口部43となっているため、リザーバ31の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ31からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインクが吐出する。
以上説明したように、本発明の構成では、流路形成基板10に設けられた圧力発生室12と、リザーバ形成基板30に設けられたリザーバ31とを、リザーバ形成基板30に設けた供給路32を介して連通するようにした。これにより、流路形成基板10にはリザーバと供給路のインク流路は形成されずに圧力発生室12のみが形成され、流路形成基板10の剛性は確実に増加する。また、流路形成基板10の剛性の増加に伴って、圧力発生室12をある程度高密度に配列しても流路形成基板10の割れ等の発生を防止することができる。また、隣接する圧力発生室12間でのクロストークの発生も防止することができる。したがって、本発明の構成により、ヘッドの小型化を図ることができ且つ印刷品質の向上も図ることができる。
また、本実施形態では、リザーバ形成基板30の材料として面方位(100)のシリコン単結晶基板が用いられているため、ヘッドをさらに小型化することができる。例えば、リザーバ形成基板30として面方位(100)のシリコン単結晶基板を用いた場合、リザーバ31、圧電素子保持部33等を異方性エッチングによって形成することで、これらリザーバ31と圧電素子保持部33との一部が、リザーバ形成基板30の厚さ方向で重なるように配置することが可能となる(図2参照)。このようにリザーバ31等を効率的に配置してリザーバ形成基板30の面積を比較的小さくすることができ、その結果、ヘッドの小型化を図ることができる。
以下、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図6を参照して説明する。なお、図4〜図6は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜52を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次に、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。次に、図4(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる上電極膜80とを流路形成基板用ウェハ110の全面に形成し、これら圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。また、振動板を構成する絶縁体膜55及び弾性膜50を順次パターニングして、圧力発生室12の長手方向一端部近傍に対応する領域に、これら弾性膜50及び絶縁体膜55を貫通して圧力発生室12に開口する連通口53を形成する。なお、この連通口53は、勿論、圧電素子300を形成する前に形成するようにしてもよい。
ここで、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が好適に用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO(PT)、PbZrO(PZ)、Pb(ZrTi1−x)O(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiO(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O−PbTiO(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O−PbTiO(PIN−PT)、Pb(Sc1/3Ta2/3)O−PbTiO(PST−PT)、Pb(Sc1/3Nb2/3)O−PbTiO(PSN−PT)、BiScO−PbTiO(BS−PT)、BiYbO−PbTiO(BY−PT)等が挙げられる。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。
次に、図5(a)に示すように、リード電極90を形成する。具体的には、例えば、金(Au)からなる金属層91を形成した後、この金属層91上に、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を形成し、このマスクパターンを介して金属層91を圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電極90を形成する。またこのとき、連通口53に対応する領域の金属層91は、リード電極90とは不連続となるように残しておく。すなわち、連通口53に対向する領域に、リード電極90と同一の材料からなるが、当該リード電極90とは不連続の金属層91からなる不連続金属層95を形成し、この不連続金属層95で連通口53を封止する。このような不連続金属層95は、後述する工程で、流路形成基板用ウェハ110にエッチングして圧力発生室12等を形成する際に、エッチングの広がりを規制するための役割を果たす。なお、リード電極90等を構成する金(Au)からなる金属層91の下側には、例えば、ニッケルクロム(NiCr)等からなる密着層が設けられていてもよい。
次に、図5(b)に示すように、リザーバ形成基板用ウェハ130を、流路形成基板用ウェハ110上に接着剤36によって接合する。なお、リザーバ形成基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコンウェハであり、リザーバ形成基板用ウェハ130を接合することで流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図5(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸等によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、研磨及びウェットエッチングによって、流路形成基板用ウェハ110を、約70μmの厚さとなるように加工した。次いで、図6(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜51を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、図6(b)に示すように、このマスク膜51を介して流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチング(ウェットエッチング)して、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12を形成する。具体的には、流路形成基板用ウェハ110を、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液等のエッチング液によって弾性膜50及び不連続金属層95が露出するまでエッチングすることより、複数の圧力発生室12を同時に形成する。
このとき、連通口53は不連続金属層95によって封止されているため、連通口53を介してリザーバ形成基板用ウェハ130側にエッチング液が流れ込むことがない。これにより、リザーバ形成基板用ウェハ130の表面に設けられている配線等にエッチング液が付着することがなく、断線等の不良の発生を防止することができる。また、リザーバ31内にエッチング液が浸入してリザーバ形成基板用ウェハ130がエッチングされる虞もない。
なお、このような圧力発生室12を形成する際、リザーバ形成基板用ウェハ130の流路形成基板用ウェハ110側とは反対側の表面を、耐アルカリ性を有する材料、例えば、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等からなる封止フィルムでさらに封止するようにしてもよい。これにより、リザーバ形成基板用ウェハ130の表面に設けられる配線の断線等の不良をより確実に防止することができる。
次いで、図6(c)に示すように、連通口53に対向する領域の不連続金属層95を圧力発生室12側からウェットエッチングすることによって除去し、開口した連通口53を介して各供給路32と圧力発生室12とを連通させる。
なおその後は、流路形成基板用ウェハ110及びリザーバ形成基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110のリザーバ形成基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、リザーバ形成基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割する。これにより上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
以上説明したように、本発明では、連通口53をリード電極90と同一層である不連続金属層95によって封止し、この不連続金属層95を最終的にエッチングにより除去することで供給路32(リザーバ31)と圧力発生室12とを連通させるようにした。これにより、連通口53を高精度に形成することができる。また、圧力発生室12を形成する際に、エッチング液がリザーバ形成基板用ウェハ130側に流れ込んでリザーバ形成基板用ウェハ130がエッチングされてしまうのを防止することができる。さらに、リザーバ形成基板用ウェハ130上に設けられている配線がエッチング液によって断線してしまうのも防止することができる。
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの断面図である。
実施形態2は、圧力発生室に供給されるインクが貯留されるリザーバの構成の変形例である。すなわち、本実施形態では、リザーバ31Aが、列設された複数の圧力発生室12に共通する第1のリザーバ31aと、この第1のリザーバ31aと連通溝34を介して接続され圧力発生室12毎に独立して設けられる第2のリザーバ31bとで構成されている以外は、実施形態1と同様である。
このような構成では、圧力発生室12毎に独立して設けられる第2のリザーバ31bによって、隣接する圧力発生室12間でのクロストークが防止されるため、リザーバ31Aから各圧力発生室12に良好にインクが供給され、結果としてインク吐出特性が向上する。また勿論、本実施形態の構成においても、実施形態1と同様の効果が得られることはいうまでもない。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、1列の圧力発生室12の列に対応して1つのリザーバ31を設けた構成を例示したが、例えば、図8に示すように、リザーバ31Bを2列の圧力発生室12の列間に設け、この1つのリザーバ31Bから2列の各圧力発生室12のそれぞれに供給路32を介してインクを供給するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、供給路32の形状によって流路抵抗を調整するようにしているが、流路抵抗の調整方法は、これに限定されず、例えば、連通口53の開口面積を変化させることによって調整するようにしてもよい。連通口53の開口面積を調整することによっても流路抵抗を高精度に調整することができる。さらに、上述の実施形態では、リザーバ形成基板30として面方位(100)のシリコン単結晶基板を用いた例を説明したが、勿論、リザーバ形成基板30としては、面方位(110)のシリコン基板等を用いてもよいことはいうまでもない。
なお、上述した実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、例えば、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図9は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図9に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
さらに、上述した実施形態では、インクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。 実施形態1に係るリザーバ形成基板の平面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図である。 実施形態2に係る記録ヘッドの断面図である。 他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。 一実施形態に係る液体噴射装置の概略図である。
符号の説明
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 リザーバ形成基板、 31 リザーバ、 32 供給路、 33 圧電素子保持部、 36 接着剤、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 53 連通口、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 91 金属層、 95 不連続金属層、 110 流路形成基板用ウェハ、 130 リザーバ形成基板用ウェハ、 300 圧電素子

Claims (7)

  1. 液滴を吐出するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子と、前記流路形成基板の前記圧電素子側の面に接合され各圧力発生室に供給される液体が貯留されるリザーバを有するリザーバ形成基板とを具備し、且つ該リザーバ形成基板の前記流路形成基板との接合面側には、一端側が前記リザーバに連通すると共に他端側が前記振動板に設けられた連通口を介して前記圧力発生室に連通する供給路が、各圧力発生室のそれぞれに対応して設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 請求項1において、前記供給路が前記リザーバ形成基板の面内方向に延設されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  3. 請求項1又は2において、各圧電素子から引き出され少なくとも金(Au)からなる金属層を含むリード電極をさらに有すると共に、前記供給路の内面の一部が前記リード電極と同一の層からなるが当該リード電極とは不連続の不連続金属層によって構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記リザーバが、各圧力発生室のそれぞれに対応して設けられて所定量の液体が貯留される複数の第1のリザーバと、これら複数の第1のリザーバに接続される第2のリザーバとで構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記リザーバ形成基板が、面方位(100)のシリコン単結晶基板からなることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  6. 請求項1〜5の何れかの液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
  7. 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板の一方面側に振動板を介して下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子を形成すると共に当該圧力発生室の端部近傍に対応する領域の前記振動板を除去して連通口を形成する工程と、前記圧電素子から引き出されるリード電極を形成すると共に該リード電極と同一の層からなるが当該リード電極とは不連続の不連続金属層によって前記連通口を封止する工程と、圧力発生室に供給される液体が貯留されるリザーバと、一端側が前記リザーバに連通すると共に他端側が前記振動板に設けられた連通口を介して前記圧力発生室に連通する供給路とを有するリザーバ形成基板を前記流路形成基板に接着剤によって接合する工程と、前記流路形成基板をその他方面側から前記振動板及び前記不連続金属層が露出するまでウェットエッチングして前記圧力発生室を形成する工程と、前記連通口に対応する領域の前記不連続金属層を前記圧力発生室側からウェットエッチングすることにより除去して当該連通口を介して前記圧力発生室と前記供給路とを連通させる工程とを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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