JP2007037533A - L−スレオニンの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微生物を用いてL−スレオニンを効率よく製造する。
【解決手段】L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属に属する微生物を炭素源、窒素源及び硫黄源を含む培地で培養し、当該培地中にL−スレオニンを生成蓄積せしめるL−スレオニンの製造法であって、発酵培地中の硫黄の濃度を一定濃度以下に調整することを特徴とする方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、発酵工業に関し、エシェリヒア属細菌を利用した発酵法によりL−スレオニンを効率よく製造する方法に関する。L−スレオニンは必須アミノ酸の1種であり、医療を目的とする栄養混合物の成分として利用されている。さらに、動物用飼料添加物、製薬業及び化学工業における試薬としてさまざまに利用されている。
L−スレオニン、L−イソロイシン等のL−アミノ酸は、これらのL−アミノ酸生産能を有するコリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌を用いて発酵法により工業生産されている。これらのアミノ酸生産菌としては、生産性を向上させるために、自然界から分離した菌株または該菌株の人工変異株、あるいは遺伝子組換えによりL−アミノ酸生合成酵素が増強された組換え体等が用いられている。
具体的にはL−スレオニンの製造法としては、エシェリヒア属細菌の変異株を用いるものには、6−ジメチルアミノプリン耐性の変異株(特許文献1参照)や、ボレリジン耐性の変異株(特許文献2参照)を用いる方法があり、組換え体エシェリヒア属細菌を用いる方法には、例えばスレオニンオペロンをプラスミドで増幅させた菌株(特許文献3参照)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子やアスパルターゼ遺伝子をプラスミドで増幅させた菌株(特許文献4参照)をL−スレオニン生産株として用いる方法が知られている。
エシェリヒア・コリのL−スレオニンの生合成に関与する酵素をコードする遺伝子としては、アスパルトキナーゼIII遺伝子(lysC)、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(asd)、アスパルトキナーゼI−ホモセリンデヒドロゲナーゼ遺伝子(thrA)、ホモセリンキナーゼ遺伝子(thrB)、スレオニンシンターゼ遺伝子(thrC)等の遺伝子が知られており、thrABCはスレオニンオペロンを構成している。スレオニンオペロンは、アテニュエーター構造を形成しており、培養液中のイソロイシン、スレオニンにより発現が抑制される。このアテニュエーション領域のリーダー配列あるいは、アテニュエーターを除去したスレオニンオペロンを用いることにより、発酵収率が向上することが知られている(特許文献5、非特許文献1、特許文献9参照)。
これまでに、L−スレオニンの製造法として、全ての栄養源を最初に発酵槽に含んだ回分培養法、最初に一定の栄養分を発酵槽に含み、一または二以上の栄養素を連続的に供給する流加培養や(特許文献5、特許文献6)、糖の濃度を一定以下に制御する方法も開発されている。(特許文献7、特許文献8)一方、L−スレオニンの製造法として、リン酸と炭素源が生育の制限因子となるように、培養液を流加(フィード)させる方法も開発されている(特許文献10)。
硫黄は、菌体生育に必須の因子であり、L−スレオニン発酵の発酵培地中に含有されており、硫黄源の多くが硫酸アンモニウム(硫安)である。通常、L−スレオニン発酵用培地中の硫黄濃度は、約0.4g/L以上である。(特許文献11)しかし、これまでL−スレオニン発酵生産に関して、発酵培地中の硫黄の濃度を制御すること、また低減させた時の効果は知られていなかった。
特開平5-304969号公報 国際公開第98/04715号パンフレット 特開平05-227977号公報 米国特許出願公開第2002/0110876号明細書 米国特許5,538,873号明細書 欧州特許593792号明細書 国際公開第2005/014840号パンフレット 国際公開第2005/014843号パンフレット 国際公開第2005/049808号パンフレット 米国特許5,753,230号明細書 米国特許6,562,601号明細書 Biotechnology Letters vol24,No.21,November 2002
本発明は、L−スレオニンを生産する能力を有するエシェリヒア属細菌を用いてL−スレオニンを効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意研究の結果、発酵培地成分中、硫黄の濃度が発酵成績に影響を与えうること、発酵培地中の硫黄濃度を一定濃度以下に調整することによりL−スレオニン発酵収率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属に属する微生物を炭素源、窒素源及び硫黄源を含む液体培地で培養し、当該培地中にL−スレオニンを生成蓄積させるL−スレオニンの製造法であって、発酵培地の硫黄の濃度を一定濃度以下に調整することを特徴とする方法。
(2)前記発酵培地の硫黄の濃度が0.35g/L以下になるように調整する(1)に記載の方法。
(3)前記微生物がエシェリヒア・コリである(1)〜(2)に記載の製造法。
(4)前記微生物が有するL−スレオニン生合成系酵素が、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変されたことを特徴とする(1)〜(3)に記載の方法。
(5)前記L−スレオニン生合成系酵素が、アスパルトキナーゼ、ホモセリンキナーゼ、スレオニンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される1種又は2種以上の酵素である(4)に記載の方法。
(6)前記硫黄源が硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、システイン、シスチン、グルタチオンから選択される1種又は2種以上の硫黄源である(1)〜(5)に記載の方法。
(7)前記培養が、回分培養法、流加培養法、及び連続培養法からなる群より選択される方法により行われる(1)〜(6)に記載の方法。
(8)前記培養が、硫黄源を含む培地を流加する流加培養法または連続培養法により行われる(7)に記載の方法。
(9)前記培養、流加培養法又は連続培養法により行われ、流加する栄養培地が炭素源、増殖促進効果を持つ栄養素、及び硫黄源を含み、かつ該微生物の対数増殖終了時以降に培養液中の炭素源の濃度が30g/L以下に保持されるように連続的又は間欠的に発酵槽に流加する(8)に記載の方法。
本発明によれば、L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属細菌に属する微生物を用いた発酵法によるL−スレオニンの生産法において、L−スレオニンの発酵収率、生産性を向上させることが出来る。
<1>本発明の製造法
本発明の方法は、L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属に属する微生物を炭素源、窒素源及び硫黄源を含む液体培地で培養し、当該培地中にL−スレオニンを生成蓄積させるL−スレオニンの製造法であって、発酵培地中の硫黄の濃度を一定濃度以下に調整することを特徴とする製造法である。本発明において「硫黄の濃度」とは、硫黄原子に換算した硫黄源の濃度である。
本発明で用いられる培地は、栄養源として炭素源、窒素源、及び硫黄源を含んでいればいずれでもよく、発酵培地中の硫黄の濃度が一定以下になるように調整された培地であること以外は、特に制限されない。ここで、硫黄源とは、硫黄原子を含んでいるものであればいずれでもよいが、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の硫酸塩、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が望ましく、なかでも硫酸アンモニウムが望ましい。塩としては特に制限されず、アンモニウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩でもよい。また培地中にこれらの物質を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。「一定濃度以下」とは、硫黄を大量に含む培地あるいは通常の発酵培地と比べてL−スレオニン収率が向上する量であればいずれの濃度でもよいが、具体的には、発酵培地に含まれる硫黄濃度は好ましくは0.35g/L、より好ましくは0.25g/L以下、特に好ましくは0.10g/L以下である。尚、本発明の特徴の一つは、発酵培地中の硫黄濃度を調整する点にある。したがって、発酵培地に含まれる硫黄濃度が従来用いられている発酵培地と同等であっても、L−スレオニン収率を向上させるために培地中の硫黄濃度を調整する工程が含まれれば、本発明の範囲に含まれる。
本発明の方法は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed−batch culture)、連続培養法(continuous culture)のいずれも用いることができ、培地中の硫黄濃度は、初発培地で一定濃度以下になるように調整されていてもよいし、流加培地中の硫黄濃度により一定濃度以下になるように制限してもよいし、これらを組み合わせてもよい。また、初発培地、流加培地とも、同じ硫黄源を用いてもよいし、流加培地の硫黄源を初発培地と変更してもよい。
ここで本発明において、上記流加培養とは、培養中の容器に培地を連続的又は間欠的に流加し、培養終了時までその培地を容器から抜き取らない培養方法をいう。また、連続培養とは、培養中の容器に培地を連続的又は間欠的に流加するとともに、容器から培地(通常、流加する培地と当量)を抜き取る方法をいう。また、「初発培地」とは、流加培養又は連続培養において流加培地を流加させる前の回分培養(batch培養)に用いる培地のことを意味し、「流加培地」とは、流加培養又は連続培養を行う際に発酵槽に供給する培地のことを意味する。流加培地は、微生物の生育に必要な成分の全てを含んでいてもよいが、一部のみを含むものであってもよい。また、本発明において「発酵培地」とは、発酵槽中の培地を意味し、この発酵培地からL−スレオニンが回収される。また、本発明において、「発酵槽」とは、L−スレオニン発酵を行う器を意味し、その形状は問わず、発酵タンクを用いてもジャーファーメンターを用いてもよい。また、その容量は、L−スレオニンを生成・回収できる容量であればいずれでもよい。
尚、硫黄は、培養の全工程において一定濃度以下に制限されていることが好ましいが、制限される工程は一部分でもよい。例えば、本発明の方法が、L−スレオニン生産能を持つ微生物を増殖させる段階(増殖期)と、L−スレオニンを産生させる段階(L−スレオニン生産期)を含む場合、L−スレオニン生産期において硫黄を一定濃度以下に制限すればよく、L−スレオニン蓄積微生物を増殖させる増殖期においては、硫黄を一定量以上培地に含有させてもよく、一定濃度以下に制限してもよい。また、L−スレオニンを産生させる段階においても、その段階の全期間で硫黄の含有量が前記の範囲である必要はなく、同段階の初期に含有量が前記範囲以上になるように硫黄を存在させ、培養時間に応じて減
少させてもよい。また不足した硫黄を間欠的に追添してもよい。本発明における「増殖期」とは、培養開始から3時間、好ましくは6時間、特に好ましくは、10時間以内の、炭素源が主に菌体生育に使用されている時期、すなわち微生物が対数的に増殖している時期を意味し、本発明における「L−スレオニン生産期」とは、培養開始から3時間以降、好ましくは6時間以降、特に好ましくは10時間以降炭素源が主にL−スレオニン生産に用いられている時期を意味する。
尚、発酵培地には微生物の生育に最低限必要な量の硫黄を含んでいればよく、一時的に不足している状態になってもよい。一時的とは、例えば発酵全体の時間のうち約20%、40%、最大で約60%の時間で硫黄が不足している状態でもよい。硫黄が不足した状態とは、一時的に0になってもよいが、発酵培地中1μg/L以上、10μg/L、100μg/L以上含まれていることが望ましい。このように、一時的に硫黄濃度が0になることがあっても、硫黄を含む培地での培養期間が存在する場合は、「エシェリヒア属に属する微生物を炭素源、窒素源及び硫黄源を含む液体培地で培養する」との文言に含まれる。培養液中の硫黄濃度は、イオンクロマトグラム法やホットフラスコ法により測定することができる。
また、本発明は、硫黄の濃度が一定濃度以下に制限されるように、流加培地の硫黄の濃度を調整することによって、制限してもよい。例えば流加培養により硫黄の濃度を制限する場合には、発酵培地中の硫黄濃度が0.35g/L、望ましくは0.25g/L以下、より望ましくは0.10g/L以下になるように制御することが好ましい。
本発明に用いられる培地に含まれる炭素源としては、炭素源としては、グルコース、グリセロール、フラクトース、スクロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が使用でき、特にグルコース、スクロースが好ましい。その他、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノール等のアルコール類も単独あるいは他の炭素源と併用して用いることができる。また、炭素源となる原料としては、ケインモラセス、ビートモラセス、ハイテストモラセス、シトラスモラセスを用いてもよいし、セルロース、デンプン、コーン、シリアル、タピオカ等の天然原料の加水分解物を用いてもよい。また培養液中に溶存した二酸化炭素も炭素源として使用出来る。これらの炭素源が初発培地にも流加培地にも用いることができる。培地中にこれらの炭素源を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、初発培地、流加培地とも、同じ炭素源を用いてもよいし、流加培地の炭素源を初発培地と変更してもよい。例えば、初発培地の炭素源をグルコースとし、流加培地の炭素源をスクロースとする場合である。
本発明の培地中に含まれる窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ウレア等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用することができ、pH調整に用いられるアンモニアガス、アンモニア水も窒素源として利用できる。また、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、大豆加水分解物等も利用出来る。培地中にこれらの窒素源を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。これらの窒素源は、初発培地にも流加培地にも用いることができる。また、初発培地、流加培地とも、同じ窒素源を用いてもよいし、流加培地の窒素源を初発培地と変更してもよい。
また本発明の培地には、炭素源、窒素源、硫黄の他にリン酸源を含んでいることが好ましい。リン酸源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム、ピロリン酸などのリン酸ポリマー等が利用出来る。
また本発明の培地には、炭素源、窒素源、硫黄の他に、増殖促進因子(増殖促進効果を持つ栄養素)を含んでいてもよい。増殖促進因子とは、微量金属類、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆
たん白分解物等が使用できる。
微量金属類としては、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、ビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等が挙げられる。これらの増殖促進因子は初発培地に含まれていてもよいし、流加培地に含まれていてもよい。
また本発明の培地には、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。特に本発明に用いることができるL−スレオニン生産菌は、後述のようにL−スレオニン生合成経路が強化されており、L−スレオニン分解能が弱化されているものが多いので、L−リジン、L−ホモセリン、L−イソロイシン、L−メチオニンから選ばれる1種又は2種以上を添加することが望ましい。
初発培地と流加培地は、培地組成が同じであってもよく、異なっていてもよい。また、初発培地と流加培地は、硫黄濃度が同じであってもよく、異なっていてもよい。さらには、流加培地の流加が多段階で行われる場合、各々の流加培地の組成は同じであってもよく、異なっていてもよい。
培養は、発酵温度20〜45℃、特に好ましくは33〜42℃で通気培養を行うことが好ましい。ここで酸素濃度は、5〜50%に、望ましくは10%程度に調節して行う。また、pHを5〜9に制御し、通気培養を行う。培養中にpHが下がる場合には、例えば、炭酸カルシウムを加えるか、アンモニアガス、アンモニア水等のアルカリで中和する。このような条件下で、好ましくは10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のL−スレオニンが蓄積される。蓄積されるL−スレオニンの濃度は野生株より高く、培地中から採取・回収できる濃度であればいずれでもよいが、50g/L以上、望ましくは75g/L以上、さらに望ましくは100g/L以上である。
培養終了後の培養液からL−スレオニンを採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から遠心分離等によって菌体を除去した後に、濃縮晶析することによって採取される。
本発明においては、L−スレオニン蓄積を一定以上に保つために、微生物の培養を種培養と本培養とに分けて行ってもよく、種培養をフラスコ等を用いたしんとう培養、又は回分培養で行い、本培養を流加培養、又は連続培養で行ってもよく、種培養、本培養ともに回分培養で行ってもよい。
これらの培養法の場合、予定したL−スレオニン濃度に到達したときに、L−スレオニンを一部引き抜いて、新たに培地を添加して繰り返し培養を行ってもよい。新たに添加する培地とは、炭素源及び増殖促進効果を持つ栄養素(増殖促進因子)を含む培地が好ましく、硫黄を一定濃度以下含んでいることが好ましい。ここで一定濃度以下とは、発酵培地中の硫黄濃度が0.35g/L以下、望ましくは0.25g/L以下、より望ましくは0.10g/L以下になるように添加する培地を調整することを意味する。炭素源としては、グルコース、スクロース、フルクトース、増殖促進因子としては、窒素源、リン酸、アミノ酸等が好ましい。窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ウレア等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用することができる。またリン酸源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウムが使用でき、アミノ酸としては、栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。
本発明において、流加培養あるいは、連続培養を行う際には、一時的に糖や栄養源の供給が停止するように間欠的に流加培地を流加してもよい。また、流加を行う時間の最大で
30%以下、望ましくは20%以下、特に望ましくは10%以下で流加培地の供給を停止することが好ましい。流加培養液を間欠的に流加させる場合には、流加培地を一定時間添加し、2回目以降の添加はある添加期に先行する添加停止期において発酵培地中の炭素源が枯渇するときのpH上昇または溶存酸素濃度の上昇がコンピューターで検出されるときに開始するように制御を行い、培養槽内の基質濃度を常に自動的に低レベルに維持してもよい(米国特許5,912,113号明細書)。
流加培養に用いられる流加培地とは、炭素源及び増殖促進効果を持つ栄養素を含む(増殖促進因子)培地が好ましく、発酵培地中の硫黄の濃度が一定以下になるような硫黄を含んでいてもよい。ここで一定濃度以下とは、発酵培地中の硫黄濃度が0.35g/L以下、望ましくは0.25g/L以下、より望ましくは0.10g/L以下になるように添加する培地を調整することを意味する。流加培地自体の硫黄濃度は、上記濃度範囲であってもよく、それ以外であってもよいが、上記濃度範囲であることが好ましい。
炭素源としては、グルコース、スクロース、フルクトース、増殖促進因子としては、窒素源、リン酸、アミノ酸等が好ましい。窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、ウレア等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用することができる。またリン酸源としては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウムが使用でき、アミノ酸としては、栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。また、流加培地は1種でもよく、2種以上の培地を混合してもよい。2種以上の流加培地を用いる場合、それらの培地は混合して1つのフィード缶により流加させてもよいし、複数のフィード缶で流加させてもよい。
また、流加培養を行う際に、糖の量が、流加培養液あるいは発酵培地全体の炭素源量として、30g/Lを超えない程度で流加させることが好ましく、20g/L以下、10g/L以下で制御することが好ましい。特に、微生物の対数増終了時以降に、糖濃度が前記濃度範囲となるように制御することが好ましい。炭素源の流加速度は、米国特許5,912,113号明細書記載の方法を用いて制御することが出来る。また、糖とリン酸が菌体生育の制限因子となる濃度で糖とリン酸を流加することが好ましく、流加培養液に含まれるリン酸の量としては、P/C ratioで2以下、好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下である(米国特許5,763,230号明細書参照)。
本発明で連続培養法を用いる場合には、引き抜きは流加と同時に行ってもよいし、一部引き抜いたあとで流加を行ってもよい。また培養液をL−スレオニンと細胞を含んだまま引き抜いて、細胞だけ発酵槽に戻す菌体を再利用する連続培養法でもよい(フランス特許2669935号明細書参照)。連続的あるいは間欠的に栄養源を流加する方法は流加培養と同様の方法が用いられる。
ここで、培養液を間欠的に引き抜く場合には、予定したL−スレオニン濃度に到達したときに、L−スレオニンを一部引き抜いて、新たに培地を流加して培養を行う。また、添加する培地の量は、最終的に引き抜く前の培養液量と同量になるように培養することが好ましい。ここで同量とは、引き抜く前の培養液量と93〜107%の程度の量を意味する。
培養液を連続的に引き抜く場合には、栄養培地を流加させると同時に、あるいは流加させたあとに開始することが望ましく、例えば開始時間としては最大で流加を始めた5時間後、望ましくは3時間後、さらに望ましくは最大で1時間後である。また引き抜く培養液量としては、流加させる量と同量で引き抜くことが好ましい。
菌体を再利用する連続培養法とは、予定したアミノ酸濃度に達したときに、発酵培地を間欠的にあるいは連続して引き抜き、L−スレオニンのみを取り出し、菌体を含むろ過残留物を発酵槽中に再循環させる方法であり、例えばフランス特許2669935号明細書を参照にして実施することができる。
<2>本発明に用いることができるエシェリヒア属細菌
本発明に用いることができるエシェリヒア属細菌は、L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属細菌で、本発明において、「L−スレオニン生産能」とは、培地中で培養したときに、培地中にすなわち細胞外に遊離のL−スレオニンを培地から回収できる程度に生成し、蓄積する能力をいい、特に野生株又は親株より多くのL−スレオニンを蓄積できる能力をいう。具体的には、硫黄濃度を調整しない通常の培養法で、好ましくは30g/L以上、より好ましくは50g/L以上、特に好ましくは75g/L以上のL−スレオニンを蓄積することが好ましい。
本発明に用いられる好適なエシェリヒア属細菌を得るために用いる、エシェリヒア属細菌の親株としては、特に限定されないが、具体的にはナイトハルトらの著書(Neidhardt,
F.C. et al., Escherichia coli and Salmonella Typhimurium, American Society for Microbiology, Washington D.C., 1029 table 1) に挙げられるものが利用できる。その中では、例えばエシェリヒア・コリが挙げられる。エシェリヒア・コリとしては具体的には、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
これらを入手するには、例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所
12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
<2−1>L−スレオニン生産能の付与
以下、エシェリヒア属細菌にL−スレオニン生産能を付与する方法について述べる。
L−スレオニン生産能を付与するには、L−スレオニン生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、または代謝制御変異株の取得、L−スレオニン生合成系酵素の活性が増強された組換え株、例えばL−スレオニン生合成系酵素がフィードバック阻害を受けないように改変された変異株又は組換え株、L−スレオニン生合成系酵素遺伝子の発現が強化された組換え株の創製等、従来、エシェリヒア属細菌や、コリネ型細菌の育種に採用されてきた方法を適用することが出来る。これらの方法によるL−スレオニン生産菌の育種において、付与する栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は単独でもよく、2種または3種以上であってもよい。前記L−スレオニン生合成系酵素としては、アスパルトキナーゼ、ホモセリンキナーゼ、及びスレオニンシンターゼが挙げられる。
また、L−スレオニン生合成系酵素の活性を増強する場合、増強されるL−スレオニン生合成酵素は単独であっても2種または3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与とL−スレオニンの生合成系酵素活性の増強を組み合わせてもよい。
以下に、L−スレオニンの生合成系酵素活性の増強によって、エシェリヒア属細菌にL−スレオニンの生産能を付与または増強する方法を例示する。酵素活性の増強は、例えば、細胞内の該酵素活性が上昇するように同酵素をコードする遺伝子に変異を導入するか、又はその遺伝子を増幅することによって行うことが出来る。これらは同遺伝子を用いた遺
伝子組換え技術を利用することによって行うことが出来る。
L−スレオニン生合成系酵素をコードする遺伝子としては、アスパルトキナーゼIII遺伝子(lysC)、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(asd)、thrオペロンにコードされるアスパルトキナーゼI遺伝子(thrA 配列番号1の塩基番号337〜2799)、ホモセリンキナーゼ遺伝子(thrB 配列番号1の塩基番号2801〜3733)、スレオニンシンターゼ遺伝子(thrC 配列番号1の塩基番号3734〜5020)が挙げられる。カッコ内は、その遺伝子の略記号である。これらの遺伝子は2種類以上導入してもよい。L−スレオニン生合成系遺伝子は、スレオニン分解が抑制されたエシェリヒア属細菌に導入してもよい。スレオニン分解が抑制されたエシェリヒア属細菌としては、例えば、スレオニンデヒドロゲナーゼ活性が欠損したTDH6株(特開2001−346578号)等が挙げられる。
L−スレオニン生合成系酵素は、最終産物のL−スレオニンによって酵素活性が抑制される。従って、L−スレオニン生産菌を構築するためには、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないようにL−スレオニン生合成系遺伝子を改変することが望ましい。また、上記thrA,thrB,thrC遺伝子は、スレオニンオペロンを構成しているが、スレオニンオペロンは、アテニュエーター構造を形成しており、スレオニンオペロンの発現は、培養液中のイソロイシン、スレオニンに阻害を受け、アテニュエーションにより発現が抑制される。この改変は、アテニュエーション領域のリーダー配列(配列番号6)あるいは、アテニュエーターを除去することにより(配列番号1)、達成出来る(国際公開第02/26993号パンフレット、Biotechnology Letters vol24,No.21,November 2002、国際公開第2005/049808号パンフレット参照)。 特に、配列番号1に示す配列の塩基番号188〜310に相当する配列が除去された配列を有するようにスレオニンオペロンを改変すること、配列番号1に示す配列の塩基番号148〜310に相当する配列が除去された配列を有するようにスレオニンオペロンを改変することが望ましい。
スレオニンオペロンの上流には、固有のプロモーターが存在するが、non−nativeのプロモーターに置換してもよいし(WO 98/04715号パンフレット参照)、スレオニン生合成関与遺伝子の発現がラムダファージのリプレッサーおよびプロモーターにより支配されるようなスレオニンオペロンを構築してもよい(欧州特許第0593792号明細書参照)。また、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないようにエシェリヒア属細菌を改変するために、α-amino-β-hydroxyvaleric acid (AHV)に耐性な菌株を選抜することによっても得られる。
このようにL−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変されたスレオニンオペロンは、さらに、宿主内でコピー数が上昇しているか、あるいは強力なプロモーターに連結し、発現量が向上していることが好ましい。コピー数の上昇は、プラスミドによる増幅の他、トランスポゾン、Mu−ファージ等で染色体上にスレオニンオペロンを転移させることによっても達成出来る。
また、アスパルトキナーゼIII遺伝子(lysC)は、L−リジンによるフィードバック阻害を受けないように改変した遺伝子を用いることが望ましい。このようなフィードバック阻害を受けないように改変したlysC遺伝子は、米国特許5,932,453号明細書に記載の方法により取得できる。
L−スレオニン生合成系酵素以外にも、解糖系、TCA回路、呼吸鎖に関する遺伝子や遺伝子の発現を制御する遺伝子、糖の取り込み遺伝子を強化することも好適である。これらのL−スレオニン生産に効果がある遺伝子としては、トランスヒドロゲナーゼ(pntAB)遺伝子(欧州特許733712号明細書)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(pepC)(国際公開95/06114号パンフレット)、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ遺
伝子(pps)(欧州特許877090号明細書)、コリネ型細菌あるいはバチルス属細菌のピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(国際公開99/18228号パンフレット、欧州出願公開1092776号明細書)が挙げられる。
また、L−スレオニンに耐性を付与する遺伝子、L−ホモセリンに耐性を付与する遺伝子の発現を強化することや、宿主にL−スレオニン耐性、L−ホモセリン耐性を付与することも好適である。耐性を付与する遺伝子としては、rhtA遺伝子(Res Microbiol. 2003 Mar;154(2):123−35.)、rhtB遺伝子(欧州特許出願公開第0994190号明細書)、rhtC遺伝子(欧州特許出願公開第1013765号明細書)、yfiK,yeaS遺伝子(欧州特許出願公開第1016710号明細書)が挙げられる。また宿主にL−スレオニン耐性を付与する方法は、欧州特許出願公開第0994190号明細書や、国際公開第90/04636号パンフレット記載の方法を参照出来る。
前記遺伝子のコードする酵素の活性を上昇させることは、、遺伝子の発現を増強することによって達成でき、例えば、遺伝子組換え技術を利用して、細胞中の遺伝子のコピー数を高めることによって行うことができる。例えば、目的遺伝子を含むDNA断片を、宿主微生物で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組換えDNAを作製し、これを微生物に導入して形質転換すればよい。
目的遺伝子としてエシェリヒア・コリ遺伝子を用いる場合、公知の遺伝子情報やGenBankに登録されたエシェリヒア・コリMG1655、又はW3110の目的遺伝子の配列を参考にして、プライマーを作成し、エシェリヒア・コリの染色体DNAを鋳型とするPCR法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al., Trends Genet. 5, 185 (1989)参照)によって、目的遺伝子を取得することができる。他の微生物の目的遺伝子も、その微生物において公知の遺伝子情報やGenbankの配列情報に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR法、又は、前記配列情報に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプローブとするハイブリダイゼーション法によって、微生物の染色体DNA又は染色体DNAライブラリーから、取得することができる。なお、染色体DNAは、DNA供与体である微生物から、例えば、斎藤、三浦の方法(H. Saito and K.Miura, Biochem.B iophys. Acta, 72, 619 (1963)、生物工学実験書、日本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年参照)等により調製することができる。
また、エシェリヒア属細菌の種や菌株によって目的酵素をコードする遺伝子の塩基配列に差異が存在することがあるため、本発明に用いる目的遺伝子は、公知の遺伝子、GenBankに登録された遺伝子配列には限られず、コードする目的タンパク質の機能、すなわち増幅することによりL−スレオニン生産脳を向上させることが出来る限り、1若しくは複数の位置での1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加等を含む配列を有するタンパク質をコードする変異体又は人為的な改変体であってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には1から20個、好ましくは、1から10個、より好ましくは1から5個である。
上記置換は機能的に変化しない中性変異である保存的置換が好ましい。保存的変異とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、phe,trp,tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、leu,ile,val間で、極性アミノ酸である場合には、gln,asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、lys,arg,his間で、酸性アミノ酸である場合には、asp,glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、ser,thr間でお互いに置換する変異である。より具体的には、保存的置換としては、alaからser又はthrへの置換、argからgln、his又はlysへの置換、asnからglu、gln、lys、his又はaspへの置換、aspからasn、glu又はglnへの置換、cysからser又はalaへの置換、glnからasn、glu、lys、his、asp又はargへの置換、gluからgly、asn、gln、lys又はaspへの置換、glyからproへの置換、hisか
らasn、lys、gln、arg又はtyrへの置換、ileからleu、met、val又はpheへの置換、leuからile、met、val又はpheへの置換、lysからasn、glu、gln、his又はargへの置換、metからile、leu、val又はpheへの置換、pheからtrp、tyr、met、ile又はleuへの置換、serからthr又はalaへの置換、thrからser又はalaへの置換、trpからphe又はtyrへの置換、tyrからhis、phe又はtrpへの置換、及び、valからmet、ile又はleuへの置換が挙げられる。
また、さらに、目的遺伝子は、同じ機能を有する限り、相同性ある遺伝子を用いてもよく、公知のタンパク質の配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するタンパク質をコードする相同遺伝子が用いられる。また、それぞれ導入する宿主により、遺伝子の縮重性が異なるので、それぞれ目的遺伝子が導入される宿主で使用しやすいコドンに置換したものでもよい。同様に目的遺伝子は、増幅することによってL−スレオニン生産能を向上することができる限り、N末端側、C末端側が延長したものあるいは削られているものでもよい。例えば延長する、または削られる長さは、アミノ酸残基で50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。より具体的にはアミノ酸配列のN末端側50アミノ酸から5アミノ酸、C末端側50アミノ酸から5アミノ酸削ったものでもよい。
このような目的遺伝子と相同な遺伝子は、例えば、部位特異的変異法によって、コードするタンパク質の特定の部位のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加を含むように塩基配列を改変することによって取得することができる。また、以下のような従来知られている変異処理によっても取得され得る。変異処理としては、目的遺伝子の塩基配列をヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、および該遺伝子を保持する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、紫外線またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくはエチルメタンスルフォネート(EMS)等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法、エラープローンPCRによって変異を導入する方法が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、目的遺伝子を保持する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。これらの遺伝子が発現量を増強することによりL−スレオニン生産能を向上させるタンパク質をコードしているか否かは、例えば、これらの遺伝子をエシェリヒア・コリの野生株・あるいはL−スレオニン生産能を有する株に導入し、L−スレオニンの生産能が向上するかどうかを調べることにより、確かめることができる。
また目的遺伝子は、目的塩基配列もしくはその相補配列又は又はこれらの配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ発現を増強することにより、エシェリヒア属細菌のL−スレオニン生産能を向上させるタンパク質をコードするDNAが挙げられる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件で、1回より好ましくは2〜3回洗浄する条件が挙げられる。
次に、PCR法により増幅された目的遺伝子を、宿主微生物の細胞内において機能することのできるベクターDNAに接続して組換えDNAを調製する。宿主微生物の細胞内において機能することのできるベクターとしては、宿主微生物の細胞内において自律複製可能なベク
ターを挙げることができる。エシェリヒア・コリ細胞内において自律複製可能なベクターとしては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, pACYC184,(pHSG、pACYCは宝バイオ社より入手可), RSF1010, pBR322, pMW219(pMWはニッポンジーン社より入手可)等が挙げられる。
上記のように調製した組換えDNAを微生物に導入するには、これまでに報告されている形質転換法に従って行えばよい。例えば、エシェリヒア・コリK−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり、バチルス・ズブチリスについて報告されているような、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。
一方、目的遺伝子のコピー数を高めることは、目的遺伝子を微生物の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。微生物の染色体DNA上に目的遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して相同組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。また、染色体上の不要な遺伝子に相同組換えで目的遺伝子を導入してもよいし、不要な領域にタンデムに目的遺伝子を導入してもよい。あるいは、特開平2−109985号公報に開示されているように、目的遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。(米国特許5,595,889号明細書参照)染色体上に目的遺伝子が転移したことの確認は、目的遺伝子の一部をプローブとして、サザンハイブリダイゼーションを行うことによって確認出来る。
さらに、目的遺伝子の発現の増強は、上記した遺伝子コピー数の増幅以外に、国際公開00/18935号パンフレットに記載されたようにして、染色体DNA上またはプラスミド上の目的遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することや、目的の発現を上昇させるようなレギュレーターを増幅、目的の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化させることによっても達成される。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、ラムダファージ由来のPrプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、目的遺伝子のプロモーター領域に塩基置換等を導入し、より強力なものに改変することも可能である。プロモーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1995, 1, 105−128)等に記載されている。さらに、リボソーム結合部位(RBS)と開始コドンとの間のスペーサ、特に開始コドンのすぐ上流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られており、これらを改変することも可能である。目的のプロモーター等の発現調節領域は、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺伝子解析ソフトを用いて決定することも出来る。これらのプロモーターの置換または改変により目的遺伝子の発現が強化される。発現調節配列の置換は、例えば温度感受性プラスミドを用いて行うことができる。
このような方法により活性が上昇した結果、酵素活性が野生株あるいは非改変株と比べて少なくとも、10%、25%、50%、100%、200%、400%、600%、又は1000%上昇する。
またこれらの酵素活性の上昇は複数組み合わせてもよく、酵素活性の低下と組み合わせてもよい。対照となるエシェリヒア属細菌としては、例えば、野生株として、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
さらに、本発明の細菌は、L−スレオニンの生合成経路から分岐してL−スレオニン以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または欠損していてもよい。このような酵素としては、スレオニンデヒドロゲナーゼ、スレオニンデアミナーゼ、スレオニンデヒロラターゼがあり、該酵素の活性が低下または欠損した株は国際公開第95/23864号パンフレット、国際公開第96/17930号パンフレット、国際公開第03/080843号パンフレット、国際公開第04/087895号パンフレットなどに記載されている。
また、本発明の細菌は、L−スレオニン分解系酵素以外にも、解糖系、TCA回路、呼吸鎖に関する酵素でL−スレオニン生産に不利に働く酵素や遺伝子の発現を制御する機能を有する酵素、副生物の生合成系の酵素の活性が低下または欠損していてもよい。このような酵素としては、RNAポリメラーゼのσファクターをコードする遺伝子(rpoS;国際公開01/05939号パンフレット、国際公開03/074719号パンフレット)、フォスフォエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(pckA; 国際公開第02/29080号パンフレット)、フォスフォグルコースイソメラーゼ遺伝子(pgi; Molecular and General Genetics 217(1):126−31(1989))、ピルビン酸オキシダーゼ遺伝子(poxB ;国際公開第02/29080号パンフレット)等が挙げられる。
上記のような酵素の活性を低下または欠損させるには、通常の変異処理法によって、染色体上の上記酵素の遺伝子に、細胞中の当該酵素の活性が低下または欠損するような変異を導入すればよい。例えば、遺伝子組換えによって、染色体上の酵素をコードする遺伝子を欠損させたり、プロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列等の発現調節配列を改変したりすることなどによって達成される。また、染色体上の酵素をコードする領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、また終始コドンを導入すること(ナンセンス変異)、一〜二塩基付加・欠失するフレームシフト変異を導入すること、遺伝子の一部分あるいは全領域を欠失させることによっても達成出来る(Journal of biological Chemistry 272:8611-8617(1997))。また、コード領域が欠失したような変異酵素をコードする遺伝子を構築し、相同組換えなどによって、該遺伝子で染色体上の正常遺伝子を置換すること、トランスポゾン、IS因子を該遺伝子に導入することによっても酵素活性を低下または欠損させることができる。また、アンチセンス−RNAにより発現を阻害させることによっても達成出来る(Proceedings of the National Academy of Sciences,USA 95 5511−5515(1998), Journal of Biological Chemistry 266,20833−20839(1991))。
例えば、上記の酵素の活性を低下または欠損させるような変異を遺伝子組換えにより導入する為には、以下のような方法が用いられる。目的遺伝子の部分配列を改変し、正常に機能する酵素を産生しないようにした変異型遺伝子を作製し、該遺伝子を含むDNAでエシェリヒア属細菌を形質転換し、変異型遺伝子と染色体上の遺伝子で組換えを起こさせることにより、染色体上の目的遺伝子を変異型に置換することが出来る。このような相同組換えを利用した遺伝子置換による部位特異的変異導入は既に確立しており、直鎖上DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある(米国特許第6303383号、又は特開平05-007491号公報)。また、上述のような相同組換えを利用した遺伝子置換により部位特異的変異導入は、宿主上で複製能力を持たないプラスミドを用いても行うことが出来る。
このような方法により活性あるいは発現が低下した結果、酵素活性が野生株あるいは非改変株と比べて少なくとも、75%、50%、25%、又は10%減少するかあるいは完全に活性
が消失する。またこれらの酵素活性の低下は複数組み合わせてもよいし、上述の酵素活性の上昇と組み合わせてもよい。対照となるエシェリヒア属細菌としては、例えば、野生株として、プロトタイプの野生株K12株由来のエシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げられる。
本発明に用いるL−スレオニン生産菌は、スクロースを炭素源として資化できるように改変した株でもよい。例えば、スクロースを単一炭素源として生育できることを指標として、E. coliH155株からP1形質導入により、スクロースを資化する株を取得することができる。スクロースを炭素源として資化できるL−スレオニン生産菌は、国際公開第90/04636号パンフレットを参照して構築出来る。
また、L−スレオニン生産菌の構築方法として、上述の遺伝子操作法以外に、例えば、エシェリヒア属細菌を紫外線照射または、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)または亜硝酸等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、L−アミノ酸耐性、あるいはL−アミノ酸のアナログ耐性株、L−アミノ酸栄養要求株を取得し、L−スレオニン生産能が向上した株を選択する方法が挙げられる。例えば、ボレリジン耐性変異株(米国特許5,939,307号パンフレット)、ジアミノコハク酸耐性変異株(国際公開00/09661号パンフレット)α−メチルセリン耐性変異株(国際公開00/09661号パンフレット)、フルオロピルビン酸耐性変異株(国際公開00/09661号パンフレット)、酢酸耐性変異株(米国特許5,919,670号パンフレット)、スレオニン耐性変異株(国際公開90/04636号パンフレット)、AHV耐性変異株(Genetika 16:206(1978))が挙げられる。
<2−2>本発明に使用することができるL−スレオニン生産菌の例示
以下に、本発明で使用することのできるL−スレオニン生産能が付与されたエシェリヒア属細菌を例示する。ただし、L−スレオニン生産能を有する限り、これらに制限されない。
本発明で使用することのできるL−スレオニン生産菌として、エシェリヒア・コリVKPM
B-3996株(米国特許第5,175,107号明細書参照)を例示することが出来る。このVKPM B-3996株は、1987年11月19日にロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズム(Russian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM), GNII Genetika )に登録番号VKPM B-3996 のもとに寄託されている。また、このVKPM B-3996株は、ストレプトマイシン耐性マーカーを有する広域ベクタープラスミドpAYC32(Chistorerdov, A.Y., Tsygankov, Y.D.Plasmid, 1986, 16, 161-167を参照のこと)にスレオニン生合成系遺伝子(スレオニンオペロン:thrABC)を挿入して得られたプラスミドpVIC40(国際公開第90/04636号パンフレット)を保持している。このpVIC40においては、スレオニンオペロン中のthrAがコードするアスパルトキナーゼI−ホモセリンデヒドロゲナーゼIの、L−スレオニンによるフィードバック阻害が解除されている。
本発明で使用することのできるL−スレオニン生産菌として、エシェリヒア・コリB-5318株(欧州特許第0593792号明細書参照)も例示することができる。B-5318株は、1987年11月19日にロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズム(Russian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM), GNII Genetika)に登録番号VKPM B-5318のもとに寄託されている。またこのVKPM B-5318株は、イソロイシン非要求性菌株であり、ラムダファージの温度感受性C1リプレッサー、PRプロモーターおよびCroタンパク質のN末端部分の下流に、本来持つ転写調節領域であるアテニュエーター領域を欠失したスレオニンオペロンすなわちスレオニン生合成関与遺伝子が位置し、スレオニン生合成関与遺伝子の発現がラムダファージのリプレッサーおよびプロモーターにより支配されるように構築された組換えプラスミドDNAを保持している。
エシェリヒア・コリ427T23(米国特許5,631,157号明細書)も好適なL−スレオニン生産菌として例示することができる。427T23株は、L−スレオニンによるフィードバック阻害を解除したホモセリンデヒドロゲナーゼを有し、スレオニンジアミナーゼ活性が弱化し、スクロースを炭素源として使用出来る性質を有している。427T23は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにATCC98082として寄託されている。
エシェリヒア・コリkat-13(米国特許5,175,107号明細書)も好適なL−スレオニン生産菌として例示することができる。Kat−13株は、ボリリジンに耐性を有し、L−スレオニンによるフィードバック阻害を解除したホモセリンデヒドロゲナーゼを有し、スレオニンジアミナーゼ活性が弱化し、スクロースを炭素源として使用出来る性質を有している。
エシェリヒア・コリ TDH6株(特開2001−346578号)にスレオニン生合成系酵素をコードする遺伝子を導入した株も好適なL−スレオニン生産菌として例示することができる。TDH6株はスレオニンデヒドロゲナーゼ活性が欠損した株で、B-3996株からスレオニン生合成系酵素をコードする遺伝子を搭載したpVIC40を脱落させた株であり(特許第3239903号)、ロシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズム(Russian National Collection of Industrial Microorganisms (VKPM), GNII GenetikaにVKPM B-3420として登録されている。
また、その他の本発明に用いることができるL−スレオニン生産菌として、以下の菌株が例示出来る。
エシェリヒア・コリ MG-442 (CMIMB-1628米国特許4,278,765号明細書)
エシェリヒア・コリ VL334/pYN7(米国特許4,278,765号明細書)
エシェリヒア・コリ H-4225 (FERMBP-1236 米国特許5,017,483号明細書)
エシェリヒア・コリ H-7256 (FERMBP-2137)
エシェリヒア・コリ DSM9807 (KCCM-10168)
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
<流加培養における初添の硫黄の制限効果>
はじめに、流加培養において、本培養の初発培地の硫黄を一定以下に制限した際のL−スレオニン生産への影響を確認した。
まず、B-5318株をストレプトマイシン硫酸塩20mg/Lを含むLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L、寒天 15g/L)にて37℃で24時間培養した菌体を1枚のプレートから1/10だけ掻き取り、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含むLB培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L)50mLを含む羽付きフラスコに植菌し、40℃、144rpmにて6時間種培養を行った。
種培養終了後、本培養培地300mLを注入した1L容ジャーファーメンターに、本培養培地体積の16%に当たる種培養液を植菌し、40℃、pH7.0にて培養を行った。本培養培地組成は以下に示す。
<本培養培地組成>
ショ糖 27g/L
酵母エキス 1.8g/L
KH2PO4 1.5g/L
NaCl 0.6g/L
MgSO4・7H2O 0.36g/L
FeSO4・7H2O 18mg/L
MnSO4・4H2O 18mg/L
ストレプトマイシン硫酸塩 20mg/L
初添硫黄は硫酸アンモニウムを、硫黄含量として0.78g/L〜0.10g/Lになるように適宜添加することにより、調整を行った。
培養中のpHは7.0になるようにアンモニアガスを添加することにより調整を行った。培地中の糖が消費され枯渇した後は、600g/Lのショ糖(スクロース)水溶液を添加し、流加培養を行った。
培養は42時間行った後、L−スレオニン濃度をHPLCにて測定した。
その結果、表1に示すとおり、L−スレオニン発酵収率は硫黄が低下するにつれて、向上し、特に0.29g/L以下で顕著に増加した。
Figure 2007037533
<流加培養における流加培地の硫黄の制限効果>
まず、実施例1と同様にしてB-5318株をストレプトマイシン硫酸塩20mg/Lを含むLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L、寒天 15g/L)にて37℃で24時間培養した菌体を1枚のプレートから1/10だけ掻き取り、ストレプトマイシン硫酸塩20 mg/Lを含むLB培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl 5g/L)50mLを含む羽付きフラスコに植菌し、40℃、144rpmにて6時間種培養を行った。
種培養終了後、本培養培地300mLを注入した1L容ジャーファーメンターに、本培養培地体積の16%に当たる種培養液を植菌し、40℃、pH7.0にて培養を行った。本培養培地組成は実施例1と同じである。った。L−
培養中のpHは、7.0になるようにアンモニアガスを添加することにより調整を行った。培地中の糖が消費し枯渇したあとは、発酵培地中の硫黄濃度が一定以下になるように調整したスクロースを含む流加培地を流加することによって発酵を行った。結果を表2に示す。流加培地中の硫黄濃度は、0〜1.22g/Lに制御し、本培養の全期間を通じて、発酵培地中が0.144g/L〜0.548g/Lの硫黄を含むように制御を行った。
その結果、発酵培地中の硫黄の濃度を0.35g/L以下に制限することによって、流加培養法でもL−スレオニンの収率が向上することが確認できた。
Figure 2007037533
培地への初添硫黄量とL−スレオニンの収率との関係を示す図。

Claims (9)

  1. L−スレオニン生産能を有するエシェリヒア属に属する微生物を炭素源、窒素源及び硫黄源を含む液体培地で培養し、当該培地中にL−スレオニンを生成蓄積させるL−スレオニンの製造法であって、発酵培地の硫黄の濃度を一定濃度以下に調整することを特徴とする方法。
  2. 前記発酵培地の硫黄の濃度が0.35g/L以下になるように調整する請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物がエシェリヒア・コリである請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記微生物が有するL−スレオニン生合成系酵素が、L−スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記L−スレオニン生合成系酵素が、アスパルトキナーゼ、ホモセリンキナーゼ、スレオニンシンターゼ遺伝子からなる群より選択される1種又は2種以上の酵素である請求項4に記載の方法。
  6. 前記硫黄源が硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、システイン、シスチン、グルタチオンから選択される1種又は2種以上の硫黄源である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記培養が、回分培養法、流加培養法、及び連続培養法からなる群より選択される方法により行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記培養が、硫黄源を含む培地を流加する流加培養法または連続培養法により行われる請求項7に記載の方法。
  9. 前記培養が、流加培養法又は連続培養法により行われ、流加する栄養培地が炭素源、増殖促進効果を持つ栄養素、及び硫黄源を含み、かつ該微生物の対数増殖終了時以降に培養液中の炭素源の濃度が30g/L以下に保持されるように連続的又は間欠的に発酵槽に流加する請求項8に記載の方法。
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