JP2007036172A - 積層回路基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 熱伝導材で集めた熱を少ない部品点数で効率良く放熱することができ且つ信頼性の高い積層回路基板を得る。
【解決手段】 絶縁基板1の一方の面に回路パターン3を設ける。絶縁基板1の他方の面に放熱板5を設ける。絶縁基板1の一方の面に、発熱素子15を実装する表面金属層13を設ける。絶縁基板1の内部に、表面金属層13に金属間接合された内部金属層17を配置して熱伝導材12を構成する。表面金属層13及び内部金属層17の形状及び寸法を、発熱素子15から出る熱の全部または大部分が、熱伝導材12を通して放熱板5に伝達されるように定める。このようにすると、発熱素子5から出た熱の大部分を熱伝導材12に集めて、熱伝導材12から放熱板5へと伝達することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 絶縁基板1の一方の面に回路パターン3を設ける。絶縁基板1の他方の面に放熱板5を設ける。絶縁基板1の一方の面に、発熱素子15を実装する表面金属層13を設ける。絶縁基板1の内部に、表面金属層13に金属間接合された内部金属層17を配置して熱伝導材12を構成する。表面金属層13及び内部金属層17の形状及び寸法を、発熱素子15から出る熱の全部または大部分が、熱伝導材12を通して放熱板5に伝達されるように定める。このようにすると、発熱素子5から出た熱の大部分を熱伝導材12に集めて、熱伝導材12から放熱板5へと伝達することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、発熱素子からの発熱を絶縁基板内に配置した熱伝導材を介して放熱する積層回路基板に関するものである。
特開2004−214429号公報(特許文献1)には、積層プリント基板の内層に熱伝達率の高い材料で形成した熱伝導材を配置し、この熱伝導材の一部を積層プリント基板の表面に露出させて、露出面上に発熱する電子部品を実装し、熱伝導材をねじ部材を用いて筺体に取り付け、熱伝導材→ねじ部材→筺体の経路で放熱をする放熱構造を備えた積層プリント基板が開示されている。
また、特開2004−353345号公報(特許文献2)には、積層プリント基板の絶縁層に放熱用スルーホールを設け、発熱する電子部品から発生する熱を、前記放熱用スルーホールを介して表面から裏面に伝達し大気中に放熱をする放熱構造を備えた積層プリント基板が開示されている。
特開2004−214429号公報 図5
特開2004−353345号公報 図1
従来の構造(特許文献1)では、熱伝導材を一体成形品として製造し、積層プリント基板の表層シート(絶縁層)に熱伝導材を露出させる切り落とし部(孔部)を形成し、この切り落とし部から熱伝導材の一部を露出させている。従来の構造では、熱伝導材で集めた熱を、ねじ部材及び筺体を通して放熱する構造であるため、ねじ部材から筺体に伝わる熱量によって放熱性能が決まってしまう問題がある。またねじ部材等の熱伝達部品と筺体を必要とするために、部品点数が多くなる上、全体の厚みが厚くなる問題があった。さらに一体成形品の熱伝導材を作る必要があるため、価格が高くなる問題があった。また従来のように表層シートに切り落とし部を形成して、その部分から熱伝導材の一部を露出する構造では、表層シートの表面に金属箔で回路パターンをエッチングにより形成する際に、エッチング液が熱伝導材と表層シートとの境界部から内部に侵入して、表層シートが剥離する可能性があり、製品の信頼性を高めることができなかった。
従来の構造(特許文献2)では、放熱用スルーホールによる熱伝達経路が狭く、発熱する電子部品から発生する熱を放熱用スルーホールに効率良く伝えられない懸念がある。従って、放熱効果を十分に得られない心配がある。
本発明の目的は、熱伝導材で集めた熱を少ない部品点数で効率良く放熱することができ且つ信頼性の高い積層回路基板を提供することにある。
本発明の他の目的は、エッチングにより回路パターンと熱伝導材の表面金属層を形成しても、信頼性が低下することのない積層回路基板を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、発熱素子と放熱部材との接合部に、温度変化によって大きな力が加わることがない積層回路基板を提供することにある。
本発明の他の目的は、熱伝導材と放熱部材との間に絶縁層を設けても熱伝達を良好に行うことができる積層回路基板を提供することにある。
本発明の積層回路基板は、絶縁基板の一方の面上に金属層からなる回路パターンが設けられている。また絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い材料で形成された熱伝導材が、絶縁基板の一方の面に一端面を露出させた状態で絶縁基板の内部に配置されている。そして熱伝導材の一端面上に発熱量の大きい発熱素子が熱伝導材上に熱伝達可能に配置されている。本発明の積層回路基板では、まず絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い金属材料で形成された放熱部材を、絶縁基板の他方の面上に直接又は間接に熱伝達可能に設ける。すなわち絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い金属材料で形成された放熱部材を、絶縁基板の他方の面上に直接的に熱伝達可能に設けるか,または別の回路パターン及び/又は絶縁層を間に介して間接的に熱伝達可能に設ける。そして熱伝導材を、回路パターンを構成する金属層と同じ金属層により構成された表面金属層と、表面金属層に対して金属間接合されて絶縁基板の内部に配置された内部金属層とから構成する。その上で、表面金属層及び内部金属層の形状及び寸法を、発熱素子から出る熱の全部または大部分が、熱伝導材を通して放熱部材に伝達されるように定める。このようにすると、発熱素子から出た熱の大部分を熱伝導材に集めて、熱伝導材から放熱部材へと伝達することができる。そのため従来のように、ねじ等の熱伝達部品を用いることなく、放熱を行うことができる。
なお熱伝導材の一端面を、絶縁基板の一方の面と面一になるかまたは前記一方の面よりも絶縁基板内に下がった状態で絶縁基板の一方の面から露出させるようにしてもよい。このような構造にすると、露出面を除いて熱伝導材の周囲は、絶縁基板材料によって囲まれることになる。すなわち露出面を除いて熱伝導材は絶縁基板材料によって膨張(特に、面方向の膨張)を抑制されることになる。その結果、熱伝導材の露出面に発熱素子の端子やケースの一部を、半田等を用いて接続した場合であっても、熱変動が発生したときの熱伝導材の膨張を抑制できるので、半田等の接続部に大きな力(歪)が加わることがない。そのためこのような構造にすると、接続部にクラックが入って接続不良が発生するのを有効に防止できる。
熱伝導材を放熱部材に直接接触させれば、放熱効率は最も良くなる。電気的な絶縁の関係で、熱伝導材と放熱部材との間に絶縁層を配置する場合でも、この絶縁層を、絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い絶縁材料で形成した高熱伝導性の絶縁層とすれば、熱伝導材からの熱を放熱部材に積極的に伝達することができる。なお高熱伝導性の絶縁層は、熱伝導率が2W/m・K以上であることが好ましい。さらに好ましくは、4W/m・K以上である。この熱伝導率は、プローブ法で測定した場合の値である。なお他の絶縁層をすべてこの高熱伝導性の絶縁層により形成してもよいのは勿論である。
また本発明のように、熱伝導材を構成する表面金属層が、回路パターンを構成する金属層と同じであれば、回路パターンをエッチングにより形成する際に一緒に表面金属層を形成することができる。特に、表面金属層の横断面積を、内部金属層の横断面積よりも大きくし、内部金属層の外縁を表面金属層の外縁の内側に位置するようにすれば、エッチング液が内部に浸入するのを防ぐことができる。また表面金属層と内部金属層とを金属間接合により接合すると、両者を確実に接合できる上、両者間の熱伝導率の低下を阻止することができる。なおこの場合には、表面金属層及び内部金属層がいずれも銅を主成分とする金属によって形成し、表面金属層及び内部金属層とを、銅以外の金属を主成分とする金属を用いて金属間接合するのが好ましい。このようにすると、安価に熱伝導材を作ることができて、しかも高い熱伝導性を得ることができる。
なお表面金属層と内部金属層の横断面形状は、表面金属層の上に配置される発熱素子の横断面形状よりも大きく、発熱素子の横断面形状の輪郭が表面金属層と内部金属層の横断面形状の輪郭の内側に位置するように、発熱素子を配置するのが好ましい。この関係は、表面金属層を有しない熱伝導材を構成する場合にも同様に満たされるのが好ましい。すなわち熱伝導材の横断面積を、配置される発熱素子の外形がはみ出さない大きさにすることが好ましい。このようにすると発熱素子からの熱の大部分が熱伝導材を通って放熱されることが可能になる。ちなみに熱伝導材の横断面積を、発熱素子の横断面積の2.5倍以上にすると、発熱素子の温度を大幅に低下させることができる。なおこの場合、熱伝導材の厚みは、熱伝導材からの熱の大部分が放熱部材に伝達されるものであれば、特に限定されるものではない。
絶縁基板中には、1層以上の内部回路層が形成されていてもよい。この場合、1層以上の内部回路層は、熱伝導材の内部金属層の厚み寸法によって確定する絶縁基板の厚み部分内に形成されることになる。
本発明の積層回路基板を製造する場合には、次のようにして製造することができる。まず回路パターン及び表面金属層を形成するために用いる金属箔の裏面に内部金属層を形成するために用いる金属板を異種金属を用いて金属間接合した複合材を準備する。次に、金属板を所定形状に化学的エッチングにより除去して、表面金属層に対応する位置に内部金属層を残す。その後露出している異種金属を化学的エッチングにより除去して複合金属板を形成する。複合金属板には予め密着性向上のための処理を施す。当該処理は、化学的粗化処理が好ましい。金属箔が銅箔の場合には、当該処理は黒化処理や黒化−還元処理である。そして絶縁基板を、積層回路基板技術により1層以上の内部回路層を備えた多層絶縁基板として形成する際に、同時に複合金属板を多層絶縁基板上に接合し、その際に、熱伝導材の内部金属層の外面を多層絶縁基板の絶縁材料によって覆い、内部金属層を多層絶縁基板内に収納する。なお絶縁材料として圧縮が変形し難いものを用いる場合には、後に詳しく説明するように内部金属層を収納する内部金属層収納部を形成する凹部または貫通孔を多層絶縁基板に形成しておけばよい。そしてその後に、複合金属板にエッチングを施して回路パターンと表面金属層とを形成する。このようにすると、絶縁基板に特別な加工を施すことなく、熱伝導材の内部金属層を絶縁基板内に配置することができる。なお最後のエッチング処理を行わずに出荷し、出荷先において最後のエッチング処理を行うようにできるのは勿論である。
また別の方法では、前述と同様にして、内部金属層を金属間接合した複合金属板を形成する。そして絶縁基板を、積層回路基板技術により1層以上の内部回路層を備えた多層絶縁基板として形成するが、多層絶縁基板を形成する際に、熱伝導材の内部金属層が配置される位置に、内部金属層を収納する凹部または貫通孔からなる内部金属層収納部を予め形成しておく。そして多層絶縁基板の内部金属層収納部に内部金属層を収納した状態で、多層絶縁基板の片面上に複合金属板を接合する。その後、複合金属板にエッチングを施して回路パターンと表面金属層とを形成する。このような方法を採用すると、内部金属層がある程度大きくなった場合でも、簡単に内部金属層を絶縁基板内に収納することができる。また内部金属層と放熱部材との間に必要以上に熱容量が大きな絶縁層が、介在するのを阻止することができる。この場合においても、最後のエッチングを出荷先において行うようにしてもよいのは勿論である。
また熱伝導材が表面金属層を有さずに、絶縁基板内に熱伝導材を配置するためには、多層絶縁基板の内部金属層収納部に内部金属層を収納した状態で、多層絶縁基板の片面上に複合金属板を接合する。その後、複合金属板の金属箔に対して化学的エッチングを施して回路パターンを形成するのと同時に内部金属層上の金属箔を除去する。そしてその後、内部金属層上の異種金属を化学的エッチングにより除去して内部金属層を露出させるようにすればよい。なお異種金属を残しておいても特に支障がない場合には、異種金属の化学的エッチングを行う必要はない。この場合においても、エッチング処理を出荷先において行うようにしてもよいのは勿論である。
本発明によれば、熱伝導材で集めた熱を少ない部品点数で効率良く放熱することができ且つ信頼性の高い積層回路基板を提供することができる。また本発明によれば、発熱素子と放熱部材との接合部に、温度変化によって大きな力が加わることがないという効果が得られる。さらに本発明によれば、熱伝導材と放熱部材との間に絶縁層を設けても熱伝達を良好なものとすることができる利点が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る積層回路基板の実施の形態の一例の要部の構成を示す拡大縦断面図である。本例の積層回路基板は、絶縁基板1を備えている。絶縁基板1は、後に詳しく説明するように、内部に2層の内部回路層7及び9を備えた多層基板である。絶縁基板1の一方の面(表面)には、銅箔からなる回路パターン3が設けられており、絶縁基板1の他方の面(裏面)には、アルミニューム製の放熱板5が設けられている。本実施の形態では、この放熱板5が放熱部材を構成している。放熱板5は、積極的に熱を放熱するヒートシンクとして機能するものである。したがって放熱板5には、放熱効果を高めるために、複数の放熱フィンを一体に突設してもよいのは勿論である。
前述のように、絶縁基板1には、その内部に銅箔からなる2つの内部回路層7,9が内蔵されている。この絶縁基板1は、絶縁層1a,1b,1c及び1dが積層された多層絶縁基板の構造を有している。2つの内部回路層7及び9は、絶縁層1bの両面に銅箔を接合した両面銅箔基板を用意し、この両面銅箔基板の両面の銅箔に化学的エッチングを施して予め形成しておく。そして内部回路層7及び9を備えた両面銅箔基板の両側に、それぞれ所定枚数のプリプレグを重ねて絶縁層1a及び1cを形成する。図1においては、使用する複数枚のプリプレグは個々に図示していない。なお使用するプリプレグの大部分と両面銅箔基板には、後に説明する熱伝導材12の一部を構成する内部金属層17が嵌合される嵌合孔10を形成するための孔がそれぞれ形成されている。図に示すように、絶縁層1cを構成する一部のプリプレグは、嵌合孔10の底部を塞いでいる。
絶縁基板1の表面側に形成される回路パターン3は、銅箔に化学的エッチングを施して形成されている。使用する銅箔として、内部金属層17を構成するための所定形状で厚みの厚い伝熱用の銅板が銅とは異なる異種金属19(例えばNi)を用いて金属間接合されて構成された複合金属板を用いている。このような複合金属板は、回路パターン3及び表面金属層13を形成するために用いる金属箔の裏面に内部金属層17を形成するために用いる別の金属箔を異種金属を用いて金属間接合した複合材を準備し、金属板を所定形状に化学的エッチングにより除去して、表面金属層に対応する位置に、内部金属層を残すことにより形成することができる。この際、異種金属19は内部金属層17を形成するエッチング液によっては除去することができないので、すべて残ることになる。そこでその後露出している異種金属19を別の化学的エッチングにより除去する。異種金属19をエッチングする際には、銅箔は除去されることがない。ちなみにCuのエッチングを行う場合には、例えばメルテックス社製のアンモニア系アルカリ銅エッチング液を用いることができる。またNiのエッチングには、メック社製の「メックリムーバーNH−1862(商標)」を用いることができる。また本実施の形態で用いることができる前述の複合材としては、出願人である株式会社マルチが東洋鋼鈑株式会社と共同開発したクラッド材を用いることができる。このクラッド材は、1枚の銅箔の片面にニッケル層をメッキ法で設け、ニッケル層の上に別の銅箔(金属板)を重ねて圧延加工することで一体化させたものである。なおこのクラッド材を用いた大電流基板が、東洋鋼鈑株式会社のホームページに紹介されている。
金属間接合を用いて表面金属層13と内部金属層17とが接合された複合金属板を用いると、良好な熱伝達特性を発揮する接合部を形成することができる。積層回路基板を製造する際には、この伝熱用の銅板が接合された銅箔が、前述のプリプレグを介して両面銅箔基板の片側に積層される。このとき内部金属層17を構成する伝熱用の銅板は、複数枚のプリプレグに形成された嵌合孔10に嵌合されている。本例において、嵌合孔10は、内部金属層17を収納する内部金属層収納部を構成している。
また両面銅箔基板の反対側には、1枚ないし複数枚のプリプレグを介して別の銅箔が積層される。このようにして形成した積層材に対して積層方向から熱と圧力とを加えて、プリプレグを加熱硬化させると同時に、両側の銅箔をプリプレグに対して接合する。その後、両面の銅箔に対してエッチングを施して回路パターン3及び4をそれぞれ形成する。図1において3a及び4aは、スルーホールが形成されるランド部分である。このランド部分3a及び4aには、ドリルを用いて貫通孔11aが形成され、貫通孔11aの内部とランド部分3a及び4aとに跨ってスルーホール導体部11が形成されている。このスルーホール導体部11は、導電性ペーストを用いて形成してもよいが、本実施の形態では、メッキにより形成している。表面側の回路パターン3に含まれる大きなランド部は、熱伝導材12の一部を構成する表面金属層13を構成している。この例では、表面金属層13の横断面積は、内部金属層17の横断面積よりも大きく、しかも内部金属層17の外縁が表面金属層13の外縁の内側に位置している。このようにするとエッチングを行う際に、エッチング液が嵌合孔10と内部金属層17との間に浸入するのを確実に防ぐことができる。
熱伝導材12の表面金属層13の上には、パワートランジスタ等の1以上の発熱素子15が実装されている。本実施の形態では、発熱素子15は表面金属層13とは半田等を用いて表面金属層13上に接合されている。回路パターン3と発熱素子15との電気的な接続は、ワイヤーボンディング等の適宜の接続手段を用いて行われている。なお表面金属層13を電気的な回路の一部として利用してもよいのは勿論である。表面金属層13及び内部金属層17の形状・寸法は、発熱素子15から発生する熱の大部分を熱伝導材12に集めて、放熱板5に伝熱できるように定められている。また本実施の形態では、表面金属層13及び内部金属層17の横断面形状の輪郭形状をそれぞれ、発熱素子15の外形の輪郭形状よりも大きくしている。発熱素子15はその輪郭が、表面金属層13からはみ出ないようにして表面金属層13上に半田等を用いて接合されている。本実施の形態では、絶縁基板1の厚みが600μm程度あり、銅箔からなる内部金属層17の厚みは約500μm程度である。
本実施の形態では、嵌合孔10が底部を有しており、内部金属層17と回路パターン4との間には絶縁層1cの一部1c´が存在している。この絶縁層1cの1c´は、内部金属層17と回路パターン4との短絡の発生を防止している。なお短絡を防止する必要がない場合には、この絶縁層1cの一部1c´を無くして、内部金属層17が回路パターン4または絶縁層1dと直接接触するようにしてもよいのは勿論である。
また本実施の形態では、放熱板5と絶縁基板1との接合のために用いられる絶縁層1dの一部が、内部金属層17と放熱板5との間に存在している。内部金属層17から放熱板5への熱伝達を考えると、前述の絶縁層1cの一部1c´及び絶縁層1dの厚みはできるだけ薄く且つ熱伝導率が高いことが望まれる。本実施の形態では、絶縁層1dを構成するプリプレグに含浸した絶縁樹脂の熱伝導率が、絶縁層1a,1b及び1cを構成するために用いられるプリプレグに含浸した絶縁樹脂の熱伝導率よりも大きい。このような絶縁樹脂は、熱伝導率が例えば2W/m・K以上あることが好ましく、望ましくは4W/m・K以上あることが好ましい。このような絶縁樹脂としては、例えば特開平11−323162号公報等に記載された高熱伝導性の合成樹脂を用い、この合成樹脂に高熱伝導率の充填材、例えば、窒化ホウ素等を配合する。合成樹脂は、例えば、(式1)で示されるビフェニル骨格を持つエポキシ樹脂モノマの硬化物である。商用的には、エポキシ当量175のジャパンエポキシレジン製「YL6121H」を入手できる。これは、分子構造式(式1)において、R=−CH3,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
このような構造の積層回路基板1では、発熱素子15の発熱量を表面金属層13を介して内部金属層17を通して、絶縁基板1の他方の面の放熱板5に十分に伝熱させて放熱させることができる。
図2は、本発明に係る積層回路基板を実施するための最良の形態の第2例を示す縦断面図である。図2においては、図1に示した実施の形態の構成部分と同様の構成部分には、図1に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。図2の例は、裏面側に回路パターン4を形成することなく、銅箔4´をすべて残している点で、図1の例と構成を異にし、その他の構成は実質的に図1の例と同じである。このような裏面側に銅箔4´をすべて残すと、絶縁材料と比べて熱伝導率が高い裏面側の銅箔4´が、放熱板5に対する良好な熱伝導部材となるため、放熱効果を高めることができる。
図3は、本発明に係る積層回路基板を実施するための最良の形態の第3例を示す縦断面図である。なお、図3には、図1に示した構造を構成する部分と同様の部分に、図1に示した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して、詳細な説明を省略する。本例では、図1に示した構造と比較して、絶縁基板101の裏面側に回路パターンが存在していない点、また絶縁基板101が図1に示した絶縁層1dに相当する部分を備えていない点、さらにスルーホールはハーフスルーホール111で形成されている点が相違する。また本実施の形態では、少なくとも内部金属層117と放熱板105との間に存在する100〜150μmの厚みの絶縁層101cの一部101c´は、高伝熱性の絶縁樹脂で形成されている。絶縁層101cと放熱部材105とは、グリースからなる接続層121を介して接続されている。このような構造でも、第1例と同様な効果を得ることができる。
なお、この場合においても、内部金属層117と放熱板105とをグリース等の接続層121を介して、或いは直接接触させることもできる。
また上記実施の形態では、積層回路基板を製造する際に、両面銅箔基板及びプリプレグに予め孔を形成して嵌合孔10を形成している。しかしながら、特にプリプレグに孔を形成せずに、プリプレグを内部金属層に対応する部分だけ圧縮変形させて、プリプレグによって内部金属層の外面を覆うようにして、内部金属層を絶縁基板の内部に配置するようにしてもよいのは勿論である。
図4は、本発明に係る積層回路基板を実施するための最良の形態の第4例を示す縦断面図である。なお、図4には、図3に示した構造を構成する部分と同様の部分に、図3に示した符号の数に100の数を加えた数の符号を付して、詳細な説明を省略する。本例では、図1乃至図3に示した構造と比較して、熱伝導材が内部金属層217のみによって構成されている点が相違する。図4に示す構造の積層回路基板を製造するためには、多層絶縁基板の内部金属層収納部に内部金属層を収納した状態で、多層絶縁基板の片面上に第1の例で説明した複合金属板を接合する。その後、複合金属板の回路パターン203の形成に用いる銅箔(金属箔)に対して化学的エッチングを施して回路パターン203を形成するのと同時に、図1乃至図3では残した内部金属層217上の表面金属層(図1及び図3に示した符号13,113参照)に相当する金属箔を除去する。そしてその後、内部金属層217上の異種金属(図1及び図3に示した符号19,119参照)を化学的エッチングにより除去して内部金属層の一端を絶縁基板から露出させる。なお異種金属を残しておいても特に支障がない場合には、異種金属の化学的エッチングを行う必要はない。このような構造にすると、露出面217aを除いて熱伝導材を構成する内部金属層217の周囲は、絶縁基板材料によって囲まれた構造になる。その結果、露出面217aを除いて内部金属層217は、周囲の絶縁基板材料によって膨張を抑制された状態となる。そのため露出面217aに発熱素子215の端子やケースの一部を半田等を用いて接続した場合であっても、熱変動が発生したときの内部金属層217の膨張を抑制できるので、半田等の接続部に大きな力(歪)が加わることがない。よって図4の例によれば、発熱素子の半田接続部にクラックが入って接続不良が発生するのを有効に防止できる。
次に熱伝導材の横断面積と、発熱素子の横断面積との関係についてシミュレーションした結果を簡単に説明する。表1は、シミュレーション結果である。このシミュレーションは、図5に示すモデルに基づいて、Cu製の内部金属層の大きさ「たて」×「よこ」寸法を変えて発熱素子の発熱温度の変化を見たものである。
図5に示すモデルでは、放熱部材としてダイキャストから作られた水冷のヒートシンクを用いている。図6は、表1をグラフ化したものである。このシミュレーションでは発熱素子の発熱量は83Wとした。そして発熱素子の寸法を、12.8mm×9,4mmとした。また樹脂の熱伝達率λは、λ=5W/m・kとした。この結果から、内部金属層の横断面積が、発熱素子の横断面積の2.5倍以上になると、発熱素子の発熱温度が大幅に下がることが分かる。なおこの傾向は、内部金属層の種類が異なっても、また内部金属層の厚みが異なって、大きく変わることはなかった。この結果から、内部金属層の横断面積は、発熱素子の横断面積の2.5倍以上にすることが好ましいと考える。
1,101,201 絶縁基板
1a,1b,1c,1d,101a,101b,101c,201a,201b,201c 絶縁層
3,103,203 回路パターン
5,105,205 放熱板(放熱部材)
7,9,107,109,207,209 内部回路層
11,111,211 スルーホール導電部
11a,111a,211a 貫通孔
13,113 表面金属層
15,115,215 発熱素子
17,117,217 内部金属層
121,221 接合層
1a,1b,1c,1d,101a,101b,101c,201a,201b,201c 絶縁層
3,103,203 回路パターン
5,105,205 放熱板(放熱部材)
7,9,107,109,207,209 内部回路層
11,111,211 スルーホール導電部
11a,111a,211a 貫通孔
13,113 表面金属層
15,115,215 発熱素子
17,117,217 内部金属層
121,221 接合層
Claims (10)
- 絶縁基板の一方の面上に金属層からなる回路パターンが設けられ、
前記絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い材料で形成された熱伝導材が、前記絶縁基板の一方の面に一端面を露出させた状態で前記絶縁基板の内部に配置され、
前記熱伝導材の前記一端面上に発熱量の大きい発熱素子が前記熱伝導材上に熱伝達可能に配置されている積層回路基板であって、
前記絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い金属材料で形成された放熱部材が、前記絶縁基板の他方の面上に直接的に熱伝達可能に設けられるか、または別の回路パターン及び/又は絶縁層を間に介して間接的に熱伝達可能に設けられ、
前記熱伝導材が、前記回路パターンを構成する前記金属層と同じ金属層により構成された表面金属層と、前記表面金属層に対して金属間接合されて前記絶縁基板の内部に配置された内部金属層とからなり、
前記表面金属層及び前記内部金属層の形状及び寸法は、前記発熱素子から出る熱の全部または大部分が、前記熱伝導材を通して前記放熱部材に伝達されるように定められていることを特徴とする積層回路基板。 - 絶縁基板の一方の面上に金属層からなる回路パターンが設けられ、
前記絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い材料で形成された熱伝導材が、前記絶縁基板の一方の面に一端面を露出させた状態で前記絶縁基板の内部に配置され、
前記熱伝導材の前記一端面上に発熱量の大きい発熱素子が前記熱伝導材上に熱伝達可能に配置されている積層回路基板であって、
前記絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い金属材料で形成された放熱部材が、前記絶縁基板の他方の面上に直接的に熱伝達可能に設けられるか、または別の回路パターン及び/又は絶縁層を間に介して間接的に熱伝達可能に設けられ、
前記熱伝導材の一端面は、前記絶縁基板の前記一方の面と面一になるかまたは前記一方の面よりも前記絶縁基板内に下がった状態で前記絶縁基板の一方の面から露出しており、
前記熱伝導材の形状及び寸法は、前記発熱素子から出る熱の全部または大部分が、前記熱伝導材を通して前記放熱部材に伝達されるように定められていることを特徴とする積層回路基板。 - 少なくとも前記放熱部材と前記熱伝導材との間には、前記絶縁基板を構成する絶縁材料よりも熱伝導率の高い絶縁材料で形成された高熱伝導性の絶縁層が設けられている請求項1又は2に記載の積層回路基板。
- 前記表面金属層と前記内部金属層の横断面形状は、前記表面金属層の上に配置される前記発熱素子の横断面形状よりも大きく、前記発熱素子の横断面形状の輪郭が前記表面金属層と前記内部金属層の前記横断面形状の輪郭の内側に位置するように、前記発熱素子が配置されている請求項1に記載の積層回路基板。
- 前記表面金属層の横断面積は、前記内部金属層の横断面積よりも大きく、前記内部金属層の外縁が前記表面金属層の外縁の内側に位置している請求項4に記載の積層回路基板。
- 前記熱伝導材の横断面積は、配置される発熱素子の外形がはみ出さない大きさである請求項2に記載の積層回路基板。
- 前記熱伝導材の横断面積は、前記発熱素子の前記横断面積の2.5倍以上ある請求項4に記載の積層回路基板。
- 前記表面金属層及び前記内部金属層がいずれも銅を主成分とする金属によって形成され、前記表面金属層及び前記内部金属層とは、銅以外の金属を主成分とする金属を用いて金属間接合されていることを特徴とする請求項1に記載の積層回路基板。
- 前記絶縁基板中には、1層以上の内部回路層が形成されている請求項1又は2に記載の積層回路基板。
- 前記高熱伝導性の絶縁層は、熱伝導率が2W/m・K以上である請求項1又は2に記載の積層回路基板。
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