JP2007036147A - 固体電解コンデンサ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成した後、固体電解質層を温水洗浄し、好ましくはさらに再化成を行なう。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明によれば、以下の固体電解コンデンサ素子の製造方法、固体電解コンデンサ素子及びこれを用いた固体電解コンデンサが提供される。
2.金属基材が表面に多孔質層を有するものである前記1に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
3.弁作用金属がアルミニウムである前記1または2に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
4.温水の温度が35℃以上沸点以下である前記1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
5.温水への浸漬により温水洗浄を行なう前記1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
6.温水洗浄前に35℃未満の水で予備洗浄を行なう工程を含む前記1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
7.温水洗浄後に固体電解質層を化成液に浸漬して通電することによる再化成工程を含む前記1〜6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
8.再化成を100mA/cm2以下の電流密度で行なう前記7に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
9.再化成を最大の化成電圧の2倍未満の電圧を印加して行なう前記7に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
10.前記7に記載の製造方法であって、再化成を15V以上の電圧を印加して行なう耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
11.再化成を0.1mA/cm2以上の電流密度で行ない、酸化物皮膜の形成が不十分な素子を不適品として積極的に選別排除する前記10に記載の耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
12.再化成を50mA/cm2未満の電流密度で行ない、安定な酸化物皮膜の形成を促進する前記10に記載の耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
13.印可電圧が安定した後に印加電圧を低減して保持し、次いで再び電圧を上昇させるサイクルを複数回繰り返す前記7〜12のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
14.酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成する工程が、当該基材表面に重合性化合物を付着させ、次いで酸化剤を作用させて化学重合させる工程である前記1〜13のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
15.酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成する工程が、当該基材表面に酸化剤を付着させ、次いで重合性化合物を作用させて化学重合させる工程である前記1〜13のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
16.前記1〜15のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法により製造される固体電解コンデンサ素子。
17.前記16に記載の固体電解コンデンサ素子を用いてなる固体電解コンデンサ。
18.前記16に記載の固体電解コンデンサ素子を積層してなる積層型固体電解コンデンサ。
上述のように、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法は、酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成した後、固体電解質層を温水洗浄する工程を有することを特徴とする。本発明により製品品質が向上する理由は詳細には明らかではないが、固体電解質層形成後に温水洗浄することにより、固体電解質層内に含まれている酸化剤や未反応モノマー、オリゴマー等が除去され、また、温水中において酸化物等の水和が進行して修復が進むことが考えられる。もっとも、これらは、本発明の効果から推定した機構であって、本発明はこれらの機構に限定されない。また、これらの機構は本発明以前に予想されていたものではない。
再化成は、100mA/cm2以下の電流密度(固体電解コンデンサ素子表面に対する法線方向の電流成分に換算した数値。以下、「投影面積」値という。)で行なう。電流密度の好適範囲については以下に詳述する。
(1)酸化物皮膜層の欠陥がある素子を確実に排除する、または
(2)酸化物皮膜層の欠陥がある素子についても欠陥を確実に修復する
が考えられる。
弁作用を有する金属の寸法は、使用目的によって変わり得るが、例えば、薄板ないし箔では、一般的に厚みが約40〜150μmのものが使用される。また、形状は用途により異なるが、平板形素子単位として幅約1〜50mm、長さ約1〜50mmの矩形のものが好ましく、より好ましくは幅約2〜20mm、長さ約2〜20mm、さらに好ましくは幅約2〜5mm、長さ約2〜6mmである。
チオフェン骨格を有する化合物としては、3−メチルチオフェン、3−エチルオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ペンチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−ノニルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−フルオロチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−シアノチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−ブチレンチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、一般には市販されている化合物または公知の方法(例えばSynthetic Metals誌、1986年、15巻、169頁)で準備できるが、本発明においてはこれらに限定されない。
これらの化合物は、市販品または公知の方法で入手できる。なお、以上は例示であり、本発明において固体電解質を形成する導電性重合物はこれに限られるものではない。
また、例えば、図2に示すように各陰極部(固体電解質層)と陽極部がそれぞれ重なるに積層し全体を樹脂封止する。陰極と陽極に対応するリードフレーム上に、陰極部と陽極部とを有する固体電解コンデンサ素子を、陰極と陽極、陽極部と陰極部がそれぞれ対応するように積層し、全体を樹脂封止してもよい。
封止剤は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂が挙げられる。
実施例1
アルミニウム化成箔(日本蓄電器工業株式会社製の8Vf化成箔)を5mm幅に切断したものを20mmずつの長さに切り取った。この箔片を金属製支持体に複数個接合し、化成電圧8Vで化成処理を行ない、切断時に生じた金属面に誘電体酸化皮膜を形成させた。
固定していない端から5mmの箇所にマスキング材(耐熱性樹脂)を線状に塗布し、幅5mm、長さ5mmの固体電解質層形成領域(陰極部領域)を画定した。
次いで、導電性高分子形成箇所を含む素子の一部を温度15℃の5wt%アジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬させ、電流を50mA/cm2(投影面積)に設定し、電圧を印加し、設定電圧8Vに到達した後に5分間の一定電圧で保持を行い、保持後は電圧が設定電圧の1/2以下になるまで放電させる再化成を行なった。目視観察により固体電解質層の剥離を識別したが、実施例1の条件では固体電解質層が剥離した素子は観察されなかった。
以上のようにして製造した1000個の固体電解コンデンサチップを125℃に加熱し定格電圧を1時間印加してコンデンサチップ製品を製造した。
再化成時の電圧印加による固体電解質層剥離発生率(本実施例では0%)と製品歩留まり(定格電圧2.5Vにおける漏れ電流が0.03CV未満であるコンデンサの割合)を表1に示す。
温水洗浄工程における温水の温度を60℃とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
温水洗浄工程における温水の温度を90℃とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、電流密度を5mA/cm2(投影面積)とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、電流密度を0.5mA/cm2(投影面積)とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、8Vまでの電圧印加と放電のサイクル(以下、再化成回数という。)を5回実施した以外は実施例4と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、1回目の設定電圧を1V、2回目を3V、3回目を7V、4回目を10V、5回目を13Vとした以外は実施例6と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
アルミニウム化成箔に67Vf化成箔を用い、化成電圧を67Vとし、再化成を32Vで行なった以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行なった。結果を表1に示す。
なお、実施例8〜実施例15では、再化成の電圧印加時に固体電解質層が剥離する素子が観察された。表1における固体電解質層剥離発生率は、再化成処理を行なった素子の全数に対するこのような剥離発生素子の割合を示す。また、表1における「漏れ電流が0.03CV未満であるコンデンサの割合」は、実施例8〜実施例15については、固体電解質層が剥離した素子を選別除去した後の素子を用いたコンデンサについての定格電圧25Vにおける漏れ電流が0.03CV未満であるコンデンサの割合である。
温水洗浄工程における温水の温度を60℃とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
温水洗浄工程における温水の温度を90℃とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、電流密度を5mA/cm2(投影面積)とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、電流密度を0.5mA/cm2(投影面積)とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、電流密度を0.05mA/cm2(投影面積)とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、再化成回数を5回とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
再化成において、1回目の設定電圧を15V、2回目を20V、3回目を25V、4回目を30V、5回目を32Vとした以外は実施例14と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例1の温水洗浄工程における洗浄水の温度を25℃とした以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例8の温水洗浄工程における洗浄水の温度を25℃とした以外は実施例8と同様にして固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサの製造を行ない、それぞれ実施例8と同様に評価した。結果を表1に示す。
また、耐高電圧品についても、従来法では再化成時の剥離発生率が全数の1/4程度にも上り、しかも不適品の選別除去後の歩留まりも約40%であったため、全体の製品歩留まりが30%程度となっていたが、本発明に従い温水洗浄及び再化成を行なった場合、剥離発生率が10%以下に抑えられ、しかも、不適品はほぼ確実に排除されるため、高い効率で高品質の製品を製造することができる。特に温水浸漬と低電流密度の再化成(実施例13)ではプロセス全体の製品歩留まりが90%、温水浸漬と複数回の再化成を組み合わせ(実施例14〜15)ではプロセス全体の製品歩留まりが約95%以上であり、極めて効果的に製品品質の改善が実現できる。
2 酸化皮膜層
3 固体電解質層
4 導電体
5 マスキング材
6 固体電解コンデンサ
7 陽極リード
8 陰極リード
9 封止材
Claims (18)
- 酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成した後、固体電解質層を温水洗浄する工程を有することを特徴とする固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 金属基材が表面に多孔質層を有するものである請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 弁作用金属がアルミニウムである請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 温水の温度が35℃以上沸点以下である請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 温水への浸漬により温水洗浄を行なう請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 温水洗浄前に35℃未満の水で予備洗浄を行なう工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 温水洗浄後に固体電解質層を化成液に浸漬して通電することによる再化成工程を含む請求項1〜6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 再化成を100mA/cm2以下の電流密度で行なう請求項7に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 再化成を最大の化成電圧の2倍未満の電圧を印加して行なう請求項7に記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 請求項7に記載の製造方法であって、再化成を15V以上の電圧を印加して行なう耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 再化成を0.1mA/cm2以上の電流密度で行ない、酸化物皮膜の形成が不十分な素子を不適品として積極的に選別排除する請求項10に記載の耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 再化成を50mA/cm2未満の電流密度で行ない、安定な酸化物皮膜の形成を促進する請求項10に記載の耐高電圧コンデンサ用固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 印可電圧が安定した後に印加電圧を低減して保持し、次いで再び電圧を上昇させるサイクルを複数回繰り返す請求項7〜12のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成する工程が、当該基材表面に重合性化合物を付着させ、次いで酸化剤を作用させて化学重合させる工程である請求項1〜13のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 酸化物皮膜を有する金属基材上に化学重合により固体電解質層を形成する工程が、当該基材表面に酸化剤を付着させ、次いで重合性化合物を作用させて化学重合させる工程である請求項1〜13のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子の製造方法により製造される固体電解コンデンサ素子。
- 請求項16に記載の固体電解コンデンサ素子を用いてなる固体電解コンデンサ。
- 請求項16に記載の固体電解コンデンサ素子を積層してなる積層型固体電解コンデンサ。
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