JP2007031901A - ポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品 - Google Patents

ポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品 Download PDF

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Abstract

【課題】 ポリウレタン弾性繊維をポリエステル繊維と混用して使用する際、ポリウレタン弾性繊維が分散染料に染着しかつ染色堅牢度が優れていることにより、従来の技術では得られなかった目剥き現象が発生しない外観品位の優れたストレッチ布帛および衣料品が得られるポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品を提供する。
【解決手段】 平均粒子径0.1μm以上60μm以下のポリエステル微粒子を含有するポリウレタン弾性繊維、およびポリウレタン弾性繊維と分散染料可染型繊維を含有し、分散染料で染着されていることを特徴とする混用品。
【選択図】 選択図なし

Description

本発明は、ポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品に関する。さらに詳しくは、分散染料に染着しかつ染色堅牢度の優れたポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品に関する。
ポリウレタン弾性繊維は、その優れた伸縮特性からポリエステル繊維やポリアミド繊維、セルロース繊維等と混用されてレッグ衣料、インナー衣料、スポーツ衣料などに幅広く使用されている。
ポリウレタン弾性繊維をポリエステル繊維と混用した布帛を分散染料で染色する場合、分散染料がポリウレタン弾性繊維に過度に染着するために、ポリエステル繊維の発色性が低くなり見栄えが悪くなる場合か、染色された混用布帛の洗濯堅牢度が著しく低下するという問題がある。このため染色した布帛の還元洗浄を行い、ポリウレタン弾性繊維に過度に染着している分散染料を除去する必要がある。しかしながらこのような場合には、ポリウレタンに染着している分散染料は還元分解されるため発色性が低下するとともに、ポリウレタン弾性繊維はポリエステル繊維に比べ色濃度が著しく低く、しかも異色相となっているため布帛が着用時等に伸長されると異色相のポリウレタン弾性繊維が見えいわゆる目剥き現象が出て製品の商品価値を著しく低下させるという問題があった。
ポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維を混用した布帛の目剥き防止における従来の技術としては、ポリウレタン原料に顔料・染料、カーボンブラック等を分散させて練り込むことにより原着する方法が開示されている(例えば、特許文献1,2を参照)。しかし、これらの方法では、原着したポリウレタン弾性繊維と分散染料によって染着したポリエステル繊維の同色性を発現することが難しく、濃色系の限られた色合いのものに限られるという問題がある。
また、ポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維を混用した布帛の目剥き防止における他の技術としては、ポリウレタン弾性繊維を金属錯塩染料で染色し、ポリエステル繊維を分散染料で染色する方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。しかし、この方法では金属錯塩染料と分散染料の組合せの種類が限られており、全ての衣料製品に適応できないという問題がある。
特開2005−2489号公報 特開2004−60093号公報 特開2003−201683号公報
本発明の目的は、ポリウレタン弾性繊維をポリエステル繊維と混用して使用する際、ポリウレタン弾性繊維が分散染料に染着しかつ染色堅牢度が優れていることにより、従来の技術では得られなかった目剥き現象が発生しない外観品位の優れたストレッチ布帛および衣料品が得られるポリウレタン弾性繊維及びこの繊維を用いた布帛および繊維製品を提供することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
1.平均粒子径0.1μm以上60μm以下のポリエステル微粒子を含有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
2.粒子径50μm以上の成分がポリエステル微粒子全体の1%未満であることを特徴とする上記1記載のポリウレタン弾性繊維。
3.ポリエステル微粒子を0.1重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする上記1または2に記載のポリウレタン弾性繊維。
4.ポリエステル微粒子の結晶化度が10%以上60%以下であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
5.上記1から4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維と分散染料可染型繊維を含有し、分散染料で染着されていることを特徴とする混用品。
6.分散染料で染色されたときに4級以上の洗濯堅牢度を有することを特徴とする上記5記載の混用品。
7.上記1から4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維が含有されていることを特徴とする布帛。
8.上記1から4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維が含有されていることを特徴とする衣料品。
本発明によるポリウレタン弾性繊維は、分散染料に染着しかつ堅牢度が優れているため、このポリウレタン弾性繊維を含有するストレッチ布帛からは目剥き現象の発生しない外観品位の優れた衣料品等が得られる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、特定粒径のポリエステル微粒子を含有することを特徴とする。ここで、ポリエステルとは、ポリマーの主鎖を構成する結合がエステル結合であるものをいい、脂肪族ポリエステルや、芳香族ポリエステルが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルが好ましい。特に好ましくはポリエチレンテレフタレートである。また、主鎖に不飽和結合を有するポリエステルでもよい。この他に繊維として要求される高強度物性を損わない程度に他の成分を含んでいてもよい。他の成分とは、例えばイソフタル酸、スルホイソフタル酸、アジピン酸、ネオぺンチルグリコール、ペンタエリスリトール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン、グリセリン、ポリエチレングリコール、パラヒドロキシ安息香酸等であり、その他、公知の成分が使用できる。また、本発明のポリエステル繊維には、本発明の効果を損わない程度において各種安定剤等の添加剤が含有されていてもよい。
ポリエステル微粒子の平均粒子径は、0.1μm以上60μm以下である。0.5μm以上50μm以下が好ましい。平均粒子径が小さいと分散染料で染色した際の発色性が十分ではない。また、平均粒子径が大きいと繊維の物理的性質に悪影響を及ぼすばかりではなく、紡糸時の糸切れが増加する。
ポリエステル微粒子は、粒子径50μm以上の成分がポリエステル微粒子全体の1%未満であることが好ましい。40μm以上の成分が1%未満であることがさらに好ましい。粒子径の大きな微粒子成分を含んでいる弾性繊維は物理的性質が低下するばかりではなく、紡糸時の糸切れが増加する。
ポリエステル微粒子の製造方法は、ポリエステルペレット、ポリエステル繊維、ポリエステルフィルム、ポリエステル成型品等を微粉砕する方法やパウダー状のポリマーを重合する方法等があるが、本発明の効果を損なわないならどのような方法でもよい。微粉砕方法は、ピンミル、ローラーミル、ボールミル、媒体攪拌型、ジェットミルなどの乾式粉砕や回転円筒式ボールミルや振動ボールミル等の湿式粉砕、また液体窒素等の冷媒によって凍結状態にした原料を粉砕する凍結粉砕等の公知の方法があるが、本発明の効果を損なわないならどのような方法でもよい。
ポリエステル微粒子の分級方法は、メカニカル方式、エアジェット方式、細管方式等の乾式法や沈降分級、サイクロン、遠心分級などの湿式法、ふるいわけ法など公知の方法があるが、本発明の効果を損なわないならどのような方法でもよい。
本発明のポリウレタン弾性繊維におけるポリエステル微粒子の含有量は0.1重量%以上30重量%以下が好ましい。0.2重量%以上20重量%以下がさらに好ましい。0.1重量%以下では分散染料で染色したときの発色が不足する。30重量%を超えると繊維の物理的性質に悪影響を及ぼすばかりではなく、紡糸時の糸切れが増加する。
ポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維を混用して使用する場合、分散染料による染色での同色性を得るためには、ポリウレタン繊維が含有するポリエステル微粒子とポリエステル繊維が同程度の結晶化度を持っていることが好ましい。ポリエステル繊維の結晶化度は、一般的に10%以上60%以下であるため、ポリエステル微粒子の結晶化度が10%以上60%以下であることが好ましい。20%以上55%以下がさらに好ましい。
本発明に用いられるポリウレタンは、例えば、数平均分子量が600〜5000であるポリマーグリコールと有機ジイソシアネートを反応させてソフトセグメントとなるウレタン中間重合体を合成後、鎖延長剤でハードセグメントを重合するといった公知の技術を用いることができる。鎖延長剤として、低分子ジオールを用いるとハードセグメントがウレタン結合からなるポリウレタン重合体となり、また、2官能性アミンを用いるとハードセグメントがウレア結合からなるポリウレタンウレア重合体を得ることができる。末端停止剤としては、1官能性アミン、モノアルコールのうちいずれも使用でき、鎖延長剤と混ぜて使用しても、別々に使用してもよい。
ポリマーグリコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシペンタメチレングリコール等のホモポリエーテルジオール、又は炭素原子数2から6の2種以上のオキシアルキレンから構成される共重合ポリエーテルジオール、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、イタコン酸、アゼライン酸、マロン酸等の二塩基酸の一種または二種以上とエチレングリコール、1,2ープロピレングリコール,1,3ープロピレングリコール,2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール,1,4ーブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のグリコールの一種または二種以上とから得られたポリエステルジオール、又は、ポリエステルアミドジオール、ポリエステルエーテルジオール、又はポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエーテルジオール、ポリチオエステルジオール、又はこれらジオールの共重合物、混合物等が挙げられる。
有機ジイソシアネートとしては、例えば、メチレン−ビス(4−フェニルイソシアネート)、メチレン−ビス(3−メチル−4−フェニルイソシアネート)、2,4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−キシリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、1−アルキルフェニレン−2,4及び2,6−ジイソシアネート、3−(α−イソシアネートエチル)フェニルイソシアネート、2,6−ジエチルフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニル−ジメチルメタン−4,4−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−及び1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等、又はこれらの混合物が挙げられる。
多官能性活性水素原子を有する鎖延長剤としては、例えば、ヒドラジン、ポリヒドラジン、炭素原子数2〜10の直鎖または分岐した脂肪族、脂環族、芳香族の活性水素を有するアミノ基を持つ化合物で例えばエチレンジアミン、1,2プロピレンジアミン、特開平5−155841号公報に記載されているウレア基を有するジアミン類等のジアミン、ヒドロキシルアミン、水等、また低分子量のグリコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,10−デカンジオール、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等を用いることが出来る。好ましくは、エチレンジアミン、1,2プロピレンジアミンである。
単官能性活性水素原子を有する末端停止剤としては、例えば、ジエチルアミンのようなジアルキルアミン等やエタノールのようなアルキルアルコール等が用いられる。これらの鎖伸長剤、末端停止剤は、単独又は、2種以上混合して用いても良い。
本発明においてポリエステル微粒子は、ポリウレタン溶液中や溶融ポリウレタン中に添加される。又はポリウレタンプレポリマー反応中や鎖伸長反応中に添加することも可能である。
このポリウレタンには、本発明のポリエステル微粒子以外に、ポリウレタン弾性繊維に通常用いられる他の化合物、例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、耐ガス安定剤、着色剤、艶消し剤、充填剤等を添加してもよい。
このようにして得られたポリウレタンは、公知の乾式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸等で繊維状に成形し、ポリウレタン弾性繊維を製造することができる。
得られたポリウレタン弾性繊維に、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性シリコン、ポリエーテル変性シリコン、アミノ変性シリコン、鉱物油、鉱物性微粒子、例えばシリカ、コロイダルアルミナ、タルク等、高級脂肪酸金属塩粉末、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、ポリエチレン等の常温で固形状ワックス等の油剤を単独、又は必要に応じて任意に組合わせて付与してもよい。
本発明のポリウレタン弾性繊維と分散染料可染型繊維を含有する混用品は、分散染料で染着されたときに、発色性、洗濯堅牢度が良好であり、目剥きを抑制することができる。分散染料可染型繊維としては、おもにポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維や公知の共重合系ポリエステル繊維などが挙げられる。さらに、使用目的に合わせて他の素材と混用して用いられるが、他の素材の種類、形態、繊度は適宜選択すればよく、特に限定されない。たとえば、綿、絹、羊毛、麻等の天然繊維、N6やN66等のポリアミド繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、アセテートレーヨン等が挙げられる。
混用される方法や混用形態は特に限定されず、交編織されたり、被覆、交絡、合撚等をした加工糸や、加工糸を含んで交編織された布帛等が挙げられる。
本発明のポリウレタン弾性繊維と分散染料可染型繊維との混用品は、分散染料で染色されたときに4級以上の洗濯堅牢度を有することが好ましい。3.5級以上がさらに好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維が含有された布帛は、水着、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、肌着等の各種ストレッチファンデーション、靴下用口ゴム、タイツ、パンティストッキング、ボディスーツ、スパッツ、ストレッチスポーツウエアー、ストレッチアウター、包帯、サポーター、医療用ウエア、裏地、紙オムツなどの用途に用いることができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維が含有された布帛の形態としては、緯編物、経編物、織物等があり、緯編物ではシングルの天竺組織、鹿子組織ダブルのリム、スムース、ピッケ組織等変化組織、経編物ではトリコットのハーフ組織、サテン組織等変化組織、ラッセルのパワーネット組織、サテン組織、チュール組織等、織物では平織、斜紋織、朱子織等変化組織、等のいずれの構造でも使用目的に合わせて選択する事ができる。
本発明のポリウレタン弾性繊維が含有された布帛は、レッグ衣料、インナー衣料、スポーツ衣料、アウター衣料等に好適に用いられる。レッグ衣料としては、パンティストッキング、タイツ、膝上ストッキング、ハイソックス、ショートソックスなど、インナー衣料としては、肌着、ショーツ、ガードル、ボディーファーなど、スポーツ衣料としては、水着、スパッツ、レオタードなど、アウター衣料としては、ストレッチパンツ、ジーンズなど、おしゃれを目的に使用されるものであれば、目剥き現象の発生のない外観品位の優れた衣料品を得ることができ、特に好ましい。
本発明について、以下具体的に説明する。本発明を実施例で更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例等における測定値は、下記の測定法により求めたものである。
[粒子径]
測定試料は、イオン交換水にヘキサメタリン酸ナトリウムを0.2重量%溶かした分散媒に、ポリエステル微粒子100ppmを添加し、超音波ホモジナイザーで1分間分散して調製した。粒子径は、日機装社製、マイクロトラック粒度分布測定装置にて粒子径分布を測定し、平均粒子径および最大粒子径を求めた。また、粒子径分布より、粒子径40μm以上および粒子径50μm以上の粒子比率を求めた。なおここで、粒子比率とは体積比率を示す。
[結晶化度]
結晶化度(Xc)は、DSCにより測定した。測定試料は、ポリエステル微粒子約10mgを秤量しサンプルシーラーを用いて調製した。SIIナノテクノロジー社製DSC210にて、窒素気流下10℃/minの昇温速度で、25℃〜300℃までのDSCプロファイルを測定した。DSCプロファイルからポリエステル微粒子中の結晶の融解熱(ΔHc)を求めた。結晶化度(Xc)は、下式(1)より求めた。ここで、ΔHm100=117.6J/gとした。
Xc=(ΔHm/ΔHm100)×100 (1)
[ηsp/cの測定]
ポリエステルポリマーを90℃でo−クロロフェノール溶剤に1g/dLの濃度で溶解し、その後、得られた溶液をオストワルド粘度管に移して35℃で測定し、下式(2)より算出した。
ηsp/c=(T/T)/c (2)
式中、Tは試料溶液の落下秒数、Tは溶剤の落下秒数、cは溶液濃度(g/dL)を表す。
[破断強度の測定]
引張試験機(オリエンテック(株)製商品名UTM−III 100型)を使用し、20℃、湿度65%の条件下で試料長5cmの試験糸を50cm/分の速度で引張破断強度の測定を行った。
[発色性]
丸編機(小池機械製作所製、CR−C型)を用いて、試験繊維のベア編地を作成する。下記条件で染色還元洗浄後の編地の表面を分光式色差計(日本電色工業社製、SQ2000)を使用して、Lab表色計におけるL値を測定した。
[染色条件]
試料(染色される繊維)の量に対し2重量%の染料(ダイスター社製、Dianix Navy US−NE)と分散助剤(明成化学工業社製、ディスパーN−700)9gを9リットルのイオン交換水に溶解し、酢酸でph5に調整した染色液を調製する。50%伸長下の試料を180℃×1分間熱セット処理し、その後130℃×30分間染色処理する。処理後に10分間水道水の流水中で水洗する。この染色処理を行った試料を一昼夜20℃で風乾する。
還元洗浄液は、イオン交換水にウレタンソーピング剤(明成化学工業社製、ラッコール SPN−2)を2g/L、フレーク苛性ソーダを4g/L、還元剤(ハイドロサルファイト)を4g/Lとなるように混合し調製した。80℃×20分間還元洗浄を行った。
[洗濯堅牢度]
混用染色品について、JIS L−0844 A−2法に従って評価した。試験片の変褪色と添付白布片のおせんの程度を、それぞれ変褪色用グレースケール、汚染用グレースケールと比較して判定した。
[目剥き]
混用染色品(布帛)を目視判定して目剥きの状態を1から5級で判定した。5級はポリウレタン弾性繊維が表面に出ていることを全く認識できないレベル。4級はポリウレタン弾性繊維が表面に出ていることを確認できないが、ぎらつき感が若干分かるレベル。3級はポリウレタン弾性繊維が表面に出ていることが認識できるレベル。2級はポリウレタン弾性繊維が表面に出ていることが認識でき、さらにその色が相手糸の色と違うことが認識できるレベル。1級は目剥きして明らかにポリウレタン弾性繊維が表に出ていることが確認でき、それが染まっていない、または、黄味あるいは赤味を帯びていると認識できるレベル。
[紡糸安定性]
単エンド紡糸機にて、紡糸速度550m/分、熱風温度330℃で乾式紡糸して44デシテックス/4フィラメントの繊維を製造した。1時間紡糸を行い、1時間以内で糸切れ無しの場合良好と表現した。巻取りゴデットローラー上で糸切れが頻発し巻取りが不可能であった場合は、紡糸不可と判定した。
[実施例1]
旭化成せんい社製のηsp/c=0.65のセミダルポリエステルペレットを予備結晶化後、130℃で48時間固相重合した。このペレットの粘度はηsp/c=1.0であった。このポリエステルペレットを液体窒素で冷却し、凍結粉砕機にて微粒子に粉砕した。この微粒子は、平均粒子径130μm、最大粒子径800μmであった。この微粒子を空気式分級機にて分級し、平均粒子径13μm、最大粒子径50μmであり、40μm以上の粒子比率が0.8%、50μm以上の粒子比率が0.2%の微粒子を得た。この微粒子の結晶化度は48%であった。
平均分子量1,800のポリテトラメチレンエーテルグリコール1,500g及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート312gを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。ついで、これを室温まで冷却した後、ジメチルアセトアミド2,700gを加え、溶解してポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
エチレンジアミン23.4gおよびジエチルアミン3.7gを乾燥ジメチルアセトアミド1,570gに溶解し、これを前期プレポリマー溶液に室温で添加して、粘度2,200ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、酸化防止剤、黄変防止剤等の添加剤、すなわち、ポリウレタン固形分に対して、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重付加体のイソブチレン付加物1.5重量%、NN−ビス(2−ヒドロキシエチル)−t−ブチルアミン2.5重量%、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5−ジベンジル−フェニル)−ベンゾトリアゾール0.3重量%、ステアリン酸マグネシウム0.05重量%を混合して重合原液とした。
ポリエステル微粒子200gおよび重合原液640gをジメチルアセトアミド1,100gに加えて、ホモミキサーで分散しポリエステル微粒子を含有したマスターバッチ溶液を得た。紡糸工程中で重合原液に、マスターバッチ原液を直接添加しスタティックミキサーにて混合して紡糸原液とした。ポリウレタン固形分に対して、ポリエステル微粒子の含有量が1重量%、5重量%、10重量%となるようにマスターバッチ溶液の添加比率を変えた。
この紡糸原液を紡糸速度600m/分、熱風温度330℃で乾式紡糸して44dT/4フィラメントの繊維を製造した。ポリエステル微粒子の添加量を変えたどの条件でも、ほとんど糸切れは発生せず紡糸安定性は良好であった。これらの繊維の引張破断強度を表1に示す。44dTの弾性繊維の破断強度は40cN以上あれば実使用上問題はない。
得られたポリウレタン弾性繊維のベア編地を作成し発色性を測定した。結果を表1に示す。L値が下がっていることは、ネイビーに染着していることを示している。
得られたポリウレタン弾性繊維と44dT/36フィラメントのレギュラーポリエステル繊維(旭化成せんい社製)を使って、36ゲージのツーウエイトリコット編地(ポリウレタン弾性繊維混用率24%)を作製した。得られた混用編地を90℃で2分間、拡布状でリラックス精錬し、190℃で30℃秒間乾熱セット後、サーキュラー染色機を用い染色を行った。染色した混用布帛の洗濯堅牢度および目剥き評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1のポリウレタン重合原液に、ポリエステル微粒子を含有したマスターバッチ原液を添加せずに、実施例1と同様の条件で44dT/4フィラメントのポリウレタン繊維を製造した。得られたポリウレタン繊維のベア編地を作成し発色性を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様に44dT/36フィラメントのポリエステル繊維との混用布帛を作製し、染色後の洗濯堅牢度および目剥き評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の凍結粉砕したポリエステル微粒子(平均粒子径130μm、最大粒子径800μm、50μm以上の粒子比率が82%)を分級せずにそのまま使用し、実施例1と同様の条件でマスターバッチ原液を調製した。ポリウレタン固形分に対して、ポリエステル微粒子の添加量が5重量%となるようにマスターバッチ溶液の添加量を調整した紡糸原液で、実施例1と同様の条件で44dT/4フィラメントのポリウレタン繊維の製造を試みたが、巻取りゴデットローラー上で糸切れが頻発し紡糸不可であった。
[比較例3]
実施例1の分級したポリエステル微粒子の含有量が、ポリウレタン固形分に対して35重量%になるように添加量を調整し紡糸原液を調製した。この紡糸原液を使用し、実施例と同様の条件で44dT/36フィラメントのポリウレタン弾性繊維を製造した。紡糸安定性は良好であった。この繊維の引張破断強度が、22cNと低かった。
[実施例2]
44dT/36フィラメントのレギュラーポリエステル繊維(旭化成せんい社製)を3mmにカットし、液体窒素で冷却して凍結粉砕機にて微粒子に粉砕した。この微粒子は、平均粒子径100μm、最大粒子径500μmであった。この微粒子を空気式分級機にて分級し、平均粒子径9μm、最大粒子径30μm、40μm以上の粒子比率が0.2%、50μm以上の粒子比率が0%の微粒子を得た。この微粒子の結晶化度は50%であった。この微粒子を使用し、実施例1と同様の条件でマスターバッチ原液を調製した。ポリウレタン固形分に対して、ポリエステル微粒子の含有量が5重量%となるようにマスターバッチ溶液の添加量を調整した紡糸原液で、実施例1と同様の条件で44dT/4フィラメントのポリウレタン繊維を製造した。紡糸安定性は良好であった。得られたポリウレタン繊維のベア編地を作成し発色性を測定した。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で44dT/4フィラメントのポリウレタン繊維を製造した。得られたポリウレタン繊維のベア編地を作製し発色性を測定した。また、実施例1と同様に44dT/36フィラメントのポリエステル繊維との混用布帛を作製し、染色後の洗濯堅牢度および目剥き評価を行った。評価結果を表1に示す。
表1の結果より、本発明により得られたポリウレタン弾性繊維とポリエステル繊維の混用品および/または、本発明により得られたポリウレタン弾性繊維を含有する布帛は、発色性、洗濯堅牢度が良好であり、目剥きのない商品価値の高いものであることが分かる。
Figure 2007031901
本発明のポリウレタン弾性繊維は、分散染料に染着しかつ堅牢度が優れているため、このポリウレタン弾性繊維を含有する混用品から、目剥き現象の発生しない外観品位の優れた衣料品等を好適に得ることができる。

Claims (8)

  1. 平均粒子径0.1μm以上60μm以下のポリエステル微粒子を含有することを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
  2. 粒子径50μm以上の成分がポリエステル微粒子全体の1%未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
  3. ポリエステル微粒子を0.1重量%以上30重量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン弾性繊維。
  4. ポリエステル微粒子の結晶化度が10%以上60%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維と分散染料可染型繊維を含有し、分散染料で染着されていることを特徴とする混用品。
  6. 分散染料で染色されたときに4級以上の洗濯堅牢度を有することを特徴とする請求項5記載の混用品。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維が含有されていることを特徴とする布帛。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維が含有されていることを特徴とする衣料品。
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