JP2007026746A - 燃料電池用電極触媒の製造方法及びその方法で製造された電極触媒並びにその電極触媒を用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 先ず熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含窒素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物及び窒素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。次にこの重合物を熱処理して炭素化した後に、この炭素化物を微粉砕して貴金属以外の遷移金属11及び窒素13が添加された炭素材料12を得る。
【選択図】 図1
Description
こうした固体高分子型燃料電池において、その反応は多孔質ガス拡散電極内で起こる。十分な電流密度I(A/投影電極面積)を得るために、その電極としては、比表面積が大きくかつ導電性のあるカーボンブラックを多孔質構造体兼触媒担体としたものが一般に使用されている。また、その触媒としては白金(Pt)あるいは白金合金系触媒(Pt−Fe,Pt−Cr,Pt−Ru)が使用され、これら貴金属触媒が担体に高分散担持(粒径2〜数十nm)されている。
また、特許文献2に示された燃料電池用触媒では、B又はNを含有する化合物をガス状態にしてカーボン担体を熱処理又はプラズマ処理しているけれども、カーボン担体の活性点であるエッジ面をカーボン担体に導入できず、もっぱら窒素及びホウ素の電子的な相互作用により白金触媒が活性化された触媒を調製するのみで、電流密度が未だ低い問題点があった。
本発明の目的は、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、高い酸素還元活性を発現できる、燃料電池用電極触媒の製造方法及びその方法で製造された電極触媒を提供することにある。
本発明の別の目的は、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、極めて高い電流密度を得ることができる、燃料電池を提供することにある。
請求項2に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及び窒素13が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項3に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物を混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及び窒素13が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項5に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項6に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、含ホウ素化合物を混合し加熱反応させて重合することによりホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項8に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11、窒素13及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項9に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11、窒素13及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし9いずれか1項に係る発明であって、更に貴金属以外の遷移金属がCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする。
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池である。
請求項10に係る発明では、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、比較的低廉のCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の遷移金属を担持させたので、触媒の製造コストを低減することができる。
請求項13に係る発明では、上記方法で製造された燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を用いて燃料電池を作製したので、触媒で高い酸化還元能力が発現され、燃料電池の電流密度が極めて高く又は比較的高くなる。
本実施の形態の燃料電池用電極触媒は、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料により構成される。この炭素材料は、貴金属以外の遷移金属と、14族の炭素原子の両隣に位置するホウ素原子及び窒素原子と、炭素原子とのカーボンアロイ微粒子である。こうしたカーボンアロイ微粒子により、これまで触媒金属を高分散に担持させる触媒担体として用いられてきた炭素材料自身が酸素還元触媒能を有し、燃料電池用電極触媒として好適に使用することが可能となる。なお、貴金属以外の遷移金属としては、Co、Fe及びCuが挙げられる。また遷移金属を貴金属以外の遷移金属に限定したのは、貴金属以外の遷移金属が炭素原子と適度な親和性をもつため、炭素構造形成において触媒的な効果を発現することにより、炭素材料の表面に活性点となる六角網面のエッジを多数露出させることができるからである。更に貴金属以外の遷移金属の担持量は、炭素材料100重量%に対し0.1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%に設定される。ここで、貴金属以外の遷移金属の担持量を0.1〜50重量%の範囲に限定したのは、0.1重量%未満では酸素還元活性を十分に発現できず、50重量%を越えると遷移金属の添加量を増大しても酸素還元活性が向上しないからである。
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含窒素化合物と含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより、貴金属以外の遷移金属化合物、窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂としては、ポリフルフリルアルコール、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられ、貴金属以外の含遷移金属化合物(遷移金属源)としては、遷移金属フタロシアニン錯体、遷移金属ポルフィリン錯体、遷移金属アセチルアセトナト錯体、遷移金属メタロセン錯体、遷移金属塩などが挙げられる。また含窒素化合物(窒素源)としては、メラミン、フタロシアニン、アクリロニトリル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが挙げられ、含ホウ素化合物(ホウ素源)としては、BF3エーテル錯体、BF3メタノール錯体、BF3ピリジン錯体、BF3テトラヒドロフラン(THF)錯体、ホウ酸、ホウ酸塩などが挙げられる。
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂、貴金属以外の含遷移金属化合物、含ホウ素化合物及び含窒素化合物としては、上記第1の製造方法に挙げたものと同一のものが挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂としてポリフルフリルアルコールを用い、貴金属以外の含遷移金属化合物としてコバルトフタロシアニン錯体を用い、含窒素化合物としてメラミンを用い、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を用いる場合には、フルフリルアルコール100重量%にメタノール700〜900重量%を混合して混合溶液を調製した後に、この混合溶液100重量%に、コバルトフタロシアニン錯体0.11〜54.3重量%、好ましくは5.43〜21.72重量%を加えて混合し、更に重合開始剤として35%塩酸を1.1〜3.4重量%添加して混合する。この混合物から溶媒を揮発させて除去した後に、圧力1Pa〜101kPa及び温度50〜200℃の窒素又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気中に1〜72時間保持して重合反応させる。これによりコバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成する。次にこの重合物を熱処理して炭素化した後に、炭素化物を微粉砕する。この熱処理は上記第1の製造方法の炭素化するための熱処理と同一の熱処理である。更にこの微粉砕した炭素化物100重量%に、メラミン1〜200重量%、好ましくは5〜150重量%と、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)20〜3000重量%、好ましくは80〜2500重量%とを加えて混合し含浸担持させた後に、この混合物に対して上記炭素化のための熱処理と同一の熱処理を行うことにより、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素が添加された炭素材料、即ちカーボンアロイ微粒子が得られる。
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物及び含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂、貴金属以外の含遷移金属化合物、含窒素化合物及び含ホウ素化合物としては、上記第1の製造方法に挙げたものと同一のものが挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂としてポリフルフリルアルコールを用い、貴金属以外の含遷移金属化合物としてコバルトフタロシアニン錯体を用い、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を用い、含窒素化合物としてメラミンを用いる場合には、フルフリルアルコール100重量%にメタノール700〜900重量%を混合して混合溶液を調製し、この混合溶液100重量%に、メラミン0.84〜36重量%、好ましくは1.2〜6.0重量%と、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)25.8〜259重量%、好ましくは38.7〜155重量%とを加えて混合し、この混合物から溶媒を揮発させて除去した後に、圧力1Pa〜101kPa及び温度50〜200℃の窒素又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気中に1〜72時間保持して重合反応させる。これによりメラミンお及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合体)を合成する。次にこの重合物を熱処理して炭素化した後に、炭素化物を微粉砕する。この熱処理は上記第1の製造方法の炭素化するための熱処理と同一の熱処理である。更にこの微粉砕した炭素化物100重量%に、コバルトフタロシアニン錯体0.1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%を加えて混合し含浸担持させた後に、この混合物に対して上記炭素化のための熱処理と同一の熱処理を行うことにより、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素が添加された炭素材料、即ちカーボンアロイ微粒子が得られる。
なお、上記実施の形態では、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料を挙げたが、ホウ素を含まず貴金属以外の遷移金属及び窒素を含む炭素材料であってもよく、或いは窒素を含まず貴金属以外の遷移金属及びホウ素を含む炭素材料であってもよい。
<実施例1>
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、コバルトフタロシアニン錯体2.090gと、メラミン7.499gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)118.7gとを順次加え、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、コバルトフタロシアニン錯体、メラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、コバルトフタロシアニン錯体2.090gを加え、更に35%塩酸を1g添加し、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、コバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
実施例2と同様にしてコバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成し、この合成したポリフルフリルアルコールを実施例1と同様にして炭素化・粉砕・乾燥してコバルトを含むカーボンアロイ微粒子を作製した。次に上記コバルトを含むカーボンアロイ微粒子0.3gに、メタノール39.6gと、メラミン0.0158gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)0.26gとを加え、常温下でソニケーターを用いて1時間撹拌して混合した後に、ロータリエバポレータに収容し40℃に保持してメタノールを除去した。この混合物を石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却して熱処理物を得た。このカーボンアロイ微粒子を実施例3とした。なお、このカーボンアロイ微粒子は、炭素100重量%に対して、コバルトが12.96重量%含まれることがXPS(X線光電子分光)より判明した。これに対し実施例1と同じホウ素/コバルトの比を実現するように、ホウ素及び窒素を添加したのが実施例3である。具体的には、ホウ素及び窒素の合計が7.46重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、メラミン7.499gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)118.7gとを順次加え、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、メラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
メラミンとBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を比較例1とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、コバルトが3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
<比較例2>
コバルトフタロシアニン錯体を添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を比較例2とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、窒素及びホウ素の合計が94.8重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
実施例1〜4と比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子を用いて、これらの電極触媒について、酸化還元機能を調べるために電極活性試験を行った。
この酸素還元に関する電極活性を、図2に模式的に示す3極式電解セル1を用いて測定した。具体的には中央部の作用電極(回転電極)2は周囲が高分子絶縁体、中央部にガラス状炭素からなる電極部を持つ。この電極部にそれぞれ以下のようにして調製した触媒インクを塗布し、作用電極とした。符号3は参照電極(Ag/AgCl)であり、符号4は対極(Pt)である。
電解質溶液としては、1M硫酸水溶液に酸素を常温で溶解したものを用いた。回転速度1500rpmで電極を回転し、電位を掃引速度0.5mVs-1で掃引して、そのときの電流を電位の関数として記録した。その結果を図3に示す。なお、図3において、縦軸は反応速度を表す電流であり、縦軸の電流密度の絶対値が大きくなるほど反応速度が大きくなることを示し、また横軸は反応を進ませる力としての電圧であり、横軸の電圧が小さくなるほど反応を引き起す力が大きくなり、更にこの反応は燃料電池のプラス極の反応であるため、より電圧の高いところで大きな電流が流れるものほど触媒としての性能が高いことを意味する。
実施例1〜4と比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子について、X線回折法により結晶構造及び添加物の状態の分析を行った。その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、比較例1及び実施例4では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、比較例2と実施例1〜3では、2θ=26°に鋭い回折線が現れた。これらの回折線は炭素の(002)面反射に対応する回折線であり、この回折線が鋭いほど、炭素構造に規則性が現れて結晶化が進んでいる。また2θ=26°は乱層構造に対応している。従来の知見より、実施例1〜3ではシェル状構造の炭素が形成されていると考えられる。ここで、比較例1では、2θ=26°に鋭い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成は認められているけれども、炭素材料に窒素やホウ素が導入されていないため、低い酸素還元活性しか得られなかったものと考えられる。また、実施例4では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成が認められなかったけれども、この炭素材料の表面に窒素やホウ素が導入されたため、比較的高い酸素還元活性が得られたものと考えられる。なお、実施例2の2θ=42°に現れた鋭い回折線はコバルトが析出したものであり、実施例2及び3では2回も熱処理しているため、コバルトが凝集し始めたものと考えられる。
コバルトフタロシアニン錯体に替えて鉄フタロシアニン錯体3.053gを用いたことを以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を実施例5とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、鉄が3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
<実施例6>
コバルトフタロシアニン錯体に替えて銅フタロシアニン錯体2.720gを用いたことを以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を実施例6とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、銅が3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
実施例1、5及び6と比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いて、これらの電極触媒について、上記比較試験1と同様に、酸化還元機能を調べるために電極活性試験を行った。その結果を図5に示す。
図5から明らかなように、実施例1及び実施例5のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、極めて高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、極めて大きな電流密度を示すことが分かった。また実施例6のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、比較的高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、比較的大きな電流密度を示すことが分かった。
実施例1、5及び6と比較例2のカーボンアロイ微粒子について、X線回折法により結晶構造及び添加物の状態の分析を行った。その結果を図6に示す。
図6から明らかなように、比較例2及び実施例6では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、実施例1及び5では、2θ=26°に鋭い回折線が現れた。これらの回折線は炭素の(002)面反射に対応する回折線であり、この回折線が鋭いほど、炭素構造に規則性が現れて結晶化が進んでいる。また2θ=26°は乱層構造に対応している。従来の知見より、実施例5ではシェル状構造の炭素が形成されていると考えられる。更に実施例6では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成が認められなかったけれども、炭素材料に窒素とホウ素を導入したため、比較的高い酸素還元活性が得られたものと考えられる。なお、実施例5の2θ=42°に現れた鋭い回折線は鉄及び炭化鉄が析出したものであり、実施例5では鉄フタロシアニン錯体の熱分解特性が実施例1又は6のコバルト又は銅それぞれのフタロシアニン錯体の熱分解特性と異なるため、鉄が凝集し始めたものと考えられる。
12 炭素材料
13 窒素
14 ホウ素
Claims (13)
- 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含窒素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物及び窒素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕して貴金属以外の遷移金属(11)及び窒素(13)が添加された炭素材料(12)を得る粉砕工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及び窒素(13)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物を混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及び窒素(13)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕して貴金属以外の遷移金属(11)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る粉砕工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、含ホウ素化合物を混合し加熱反応させて重合することによりホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含窒素化合物と含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物、窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕して貴金属以外の遷移金属(11)、窒素(13)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る粉砕工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)、窒素(13)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に貴金属以外の含遷移金属化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)、窒素(13)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。 - 貴金属以外の遷移金属がCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属である請求項1ないし9いずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
- 熱硬化性樹脂がポリフルフリルアルコール、フェノールホルムアルデヒド樹脂又はメラミン樹脂であり、貴金属以外の含遷移金属化合物が遷移金属フタロシアニン錯体、遷移金属ポルフィリン錯体、遷移金属アセチルアセトナト錯体、遷移金属メタロセン錯体又は遷移金属塩であり、含窒素化合物がメラミン、フタロシアニン、アクリロニトリル又はエチレンジアミン四酢酸であり、含ホウ素化合物がBF3錯体、ホウ酸又はホウ酸塩である請求項1ないし9いずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
- 請求項1ないし11いずれか1項に記載の方法で製造された燃料電池用電極触媒。
- 請求項12に記載の燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池。
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