JP2007023476A - 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】用途に応じた種々の複合材において優れた特性を実現し得る炭素繊維の前駆体繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法であって、得られる前駆体繊維のポリアクリロニトリルの(100)反射から得られる結晶領域サイズと、トータル延伸倍率とが次式を満たす製造方法。
【数1】
Figure 2007023476

【選択図】なし

Description

本発明は、各種の複合材料において補強繊維材料として利用される炭素繊維束、特に強度発現性に優れる炭素繊維束、その炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法に関する。
従来、アクリル系繊維を前駆体とする炭素繊維はその優れた力学的性質により、航空宇宙用途を始め、スポーツ、レジャー用途の高性能複合材の補強繊維素材として広い範囲で利用されている。さらに、産業用途への広がりが進む中で、炭素繊維のさらなる高性能化が求められている。
こうした要求に対し、特許文献1、特許文献2、特許文献3では炭素繊維の表面平滑性を制御することで炭素繊維複合材の性能を向上させる方法が提案されている。
しかし、炭素繊維は直径十数μm以下と非常に細いので、繊維表面の曲率が非常に大きい割に表面の凹凸は非常に微細であること、繊維断面が円形でない場合は繊維表面の曲率が複数あること、そして、微細な区間で測られた平滑性は必ずしも繊維全体で一様でないことから、測定値の平均値で表される表面平滑性に十分な信頼性がない場合があり、そのため、測定された表面平滑性と炭素繊維及び複合材料の性能との関係が必ずしも一致しない場合があった。
さらに、特許文献3では、高強度炭素繊維を得る方法として、湿式紡糸法により得られる前駆体繊維の湿熱延伸倍率を最も好ましい範囲として2倍以下にする技術が提案されている。
しかし、ポリマー組成、紡糸原液溶媒、紡浴条件等の条件が異なった場合、適応できないことがあり、生産されている種々の品種に応用できないこともあった。また、この方法では乾燥緻密化前の延伸倍率が低いために、生産性を変更しないとした場合、乾燥緻密化後の延伸倍率を通常に比べ非常に大きくする必要がある。こうした場合、糸条全体の切断、あるいは全切断までは行かないものの部分的な糸の切断が発生し、毛羽が発生し品位の低下、紡糸及び焼成工程での工程通過性の低下を招くことがあり、実生産のためには優れた方法とはいえない。
特許文献4では、ねじり弾性率を向上させる方法として、単繊維表層部に異種元素を含有させ、単繊維中心部よりも結晶性の低い領域を作り出す技術が提案されている。
しかし、ねじり強度の向上については言及されておらず、異種元素を混入させることで、逆にねじり強度の低下をもたらす可能性があった。
特公昭52−24130号公報 特開平11−217734号公報 特開2000−160436号公報 特開平9−170170号公報
本発明の課題は、用途に応じた種々の複合材において優れた特性を実現し得る炭素繊維束、その前駆体繊維、及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明に至った。
本発明により、単繊維ねじり弾性率(GPa)に対する単繊維ねじり強度(GPa)の比が0.1以上である炭素繊維の単繊維を70質量%以上含むことを特徴とする炭素繊維束が提供される。
この炭素繊維束が、単繊維ねじり弾性率(GPa)に対する単繊維ねじり強度(GPa)の比が0.09以上である炭素繊維の単繊維を90質量%以上含むことが好ましい。
本発明により、トータル延伸倍率とポリアクリロニトリルの(100)反射から得られる結晶領域サイズが次式を満たすことを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維が提供される。
Figure 2007023476
本発明により溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法において、
湿熱延伸倍率の値を、湿熱延伸糸膨潤度が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下にすることを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法が提供される。
本発明により、溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法において、
湿熱延伸倍率の値を、湿熱延伸糸の平均細孔半径が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下にすることを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法が提供される。
本発明により、溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法において、
湿熱延伸倍率の値を、乾燥緻密化直後の繊維配向度が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下にすることを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法が提供される。
上記炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法において、前記溶剤がジメチルアセトアミドあるいはジメチルホルムアミドであり、前記湿熱延伸を行う際の湿熱延伸糸膨潤度が120%以下であることが好ましい。
本発明によれば、用途に応じた種々の複合材において優れた特性を実現し得る炭素繊維束とその製造に好適な前駆体繊維が提供され、さらにこの前駆体繊維を好適に製造することのできる製造方法が提供される。
本発明の炭素繊維束は、単繊維ねじり弾性率に対する単繊維ねじり強度の比(単繊維ねじり強度(GPa)/単繊維ねじり弾性率(GPa))が0.1以上である炭素繊維の単繊維を70質量%以上含む炭素繊維束である。
上記比が0.1以上となる単繊維が70%未満の場合、ねじり弾性率に対するねじり強度が低い炭素繊維単繊維の割合が多くなり、複合材料とした場合に、複雑な応力に対しての強度が著しく低下する。同様の観点から、上記比が0.09以上である炭素繊維の短繊維を90質量%以上含むことが好ましい。単繊維ねじり強度(GPa)/単繊維ねじり弾性率(GPa)の値が0.1以上を示す炭素繊維単繊維の割合は、大きければ大きいほど好ましい。
また本発明は、トータル延伸倍率とポリアクリロニトリルの(100)反射から得られる結晶領域サイズが次式を満たすことを特徴とする炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維である。尚、ここで言うトータル延伸倍率とは、乾燥緻密化前に凝固糸を延伸する延伸倍率と乾燥緻密化後の延伸倍率を掛け合わせた値であり、紡糸の最終ロール速度を凝固糸の引き取り速度で割った値でも同じである。
Figure 2007023476
かかる炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維は、後述する本発明の製造方法により好適に得ることができ、かかる本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を焼成することによって上述した本発明の炭素繊維束を好適に得ることができる。上記式が満たされると、本発明の炭素繊維束を好適に得ることができ、延伸により繊維内の結晶領域、もしくは結晶領域と非晶領域の界面が破壊されることを防止し、焼成時にグラファイト結晶網面内およびその付近に欠陥が生じて炭素繊維性能が著しく低下することを防止することができる。
以下に本発明の炭素繊維束及び炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法について詳しく説明する。
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維に用いるアクリロニトリル系重合体としてはアクリロニトリルのホモポリマー及び/又は他のモノマーとの共重合体を用いることができる。この場合、炭素化を良好に行う目的で共重合体中のアクリロニトリル組成は90質量%以上であることが好ましく、炭素繊維にした時の共重合成分に起因する欠陥点を少なくし、炭素繊維の品位並びに性能を向上させる目的からアクリロニトリルが95質量%以上であることがより好ましい。
アクリロニトリル系重合体の共重合成分モノマーとしては、特に制限は無いが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類;p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
アクリロニトリル系重合体の共重合成分モノマーとして、炭素化工程における環化反応を促進する目的でカルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。このようなカルボン酸基を有するモノマーとしては、メタクリル酸やイタコン酸が好ましい。又、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミドが好ましい。そして、溶剤に対する溶解性の向上、凝固糸の緻密性の向上の観点から、アクリルアミドは共重合体に1質量%以上含まれることが好ましい。従って、この場合必然的にアクリロニトリルは99質量%以下が好ましい範囲となる。凝固糸の緻密性については、特に、湿式紡糸であるか乾湿式紡糸であるかに関わらず、取り得る可能なほとんどの凝固浴条件で凝固糸にボイドの発生がないために、品種に応じた任意の凝固浴条件で優れた炭素繊維を実現することが可能である。アクリルアミドの含有量の上限は特に限定はされないが、好ましくは4質量%未満である。
原料に用いるアクリロニトリル系重合体の重合方法には、溶液重合、懸濁重合など、公知の重合方法の何れをも採用することができる。重合された共重合体から、未反応モノマーや重合触媒残渣、その他の不純物類を極力除く処理を施すことが好ましい。また、前駆体繊維紡糸での延伸性や炭素繊維の性能発現性等の点から、共重合体の重合度は、極限粘度〔η〕が1.0以上が好ましく、特に1.4以上の範囲が好ましい。重合度が高いと溶媒への溶解や製糸が困難となる傾向があるので、極限粘度〔η〕は、4.0を超えない範囲のものが好ましく利用される。
次に、アクリロニトリル系共重合体、好ましくは不純物の除去処理を施した前記共重合体を溶剤に溶解し、紡糸原液とする。溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液が使用できる。作製される繊維中に金属を含有せず、また、工程が簡略化される点で有機溶剤が好ましい。その中でも凝固糸及び湿熱延伸糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドあるいはジメチルホルムアミドを溶剤に用いることがより好ましい。
紡糸した際、緻密な凝固糸を得るためには、紡糸原液として、ある程度以上のポリマー濃度を有する重合体溶液を使用することが好ましい。具体的には、紡糸原液中の重合体濃度は、好ましくは17質量%以上、より好ましくは19質量%以上の範囲とする。用いる重合体の重合度にもよるが、適正な粘度・流動性を有するものとするため、重合体濃度は、25質量%を超えない範囲が好ましい。
炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の紡糸法は、湿式紡糸法か乾湿式紡糸法が好ましいが乾式紡糸法でも良い。湿式紡糸法、乾湿式紡糸法は用途に応じ使い分けられる。
紡糸工程は、先ず、前記の紡糸原液をノズル孔より凝固浴中に吐出し凝固糸とする。ノズル孔の形状に制限はないが、円形が一般的に使用される。凝固浴は、まず作製される凝固糸引き取りに十分な余裕がある条件に設定する。そして、凝固糸の断面形状が、円形、空豆形、楕円形など炭素繊維の用途に応じた形状になるように、凝固浴に含まれる溶剤濃度、温度を設定する。
凝固浴には、紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液が好適に使用される。ノズル孔より吐出される紡糸原液が所望の繊維径の凝固糸となるように、含まれる溶剤の濃度を調節する。使用する溶剤の種類にも依存するが、例えば、ジメチルアセトアミドあるいはジメチルホルムアミドを使用する場合、その濃度は50〜80質量%に選択することが好ましい。
また、凝固浴の温度は、凝固糸の緻密性の観点からは温度が低い方が好ましい。しかしながら、湿式紡糸の場合、凝固浴の温度を下げると凝固糸の引き取り速度が低下し、全体的な生産性が低下する点を考慮し、通常、好ましくは50℃以下、より好ましくは20℃以上40℃以下の範囲に選択する。
上記凝固糸は続いて湿熱延伸を施される。本発明で言う湿熱延伸とは該凝固糸が乾燥緻密化までになされる延伸のことを指す。従って、湿熱延伸倍率とは乾燥緻密化を行うロール速度と凝固糸を引き取るロール速度との比で定義され、湿熱延伸糸とは乾燥緻密化直前の糸を言う。湿熱延伸方法としては、空中での延伸、水、溶媒/水混合液、グリセリンなどの液体媒体中での延伸及び加圧あるいは常圧の水蒸気中での延伸などの方法を任意の順番で組み合わせてよい。途中に緩和工程を含んでも良い。但し、乾燥緻密化までに含まれている溶剤の洗浄を完了する観点から、温水中での延伸倍率が半分以上占めるのが好ましい。例えば、湿熱延伸倍率が3倍の場合は温水中の延伸は1.7(=√3)倍以上が好ましい。さらに、温水温度は単糸同士が融着しない範囲で、できるだけ高温にすることが効果的である。この観点から、延伸浴の温度は70℃以上の高温とすることが好ましい。また、温水の多段延伸の場合は、その最終浴を90℃以上の高温にすることが好ましい。また、この湿熱延伸に先立って、温水中で溶剤の洗浄を行っても良い。本発明者らは、湿熱延伸倍率が高くなるにつれ湿熱延伸糸の膨潤度が高くなり、ある延伸倍率で膨潤度が最大あるいは飽和になることを見出した。そして、湿熱延伸糸の平均細孔半径や乾燥緻密化直後の糸の繊維配向度も同様の関係であることを見出した。これらは、湿熱延伸倍率がある値以上になると湿熱延伸糸の膨潤度や平均細孔半径はほとんど変化しないか小さくなり緻密性が向上したように見えるが、実際は配向の向上しない延伸が行われており、繊維内部構造の破壊が起こったことを示している。この破壊が炭素繊維の欠陥の元となり性能の低下を招くのである。特に、ねじり物性ではこれが顕著に現れ、ねじり弾性率に対するねじり強度を大きく低下させる。尚、乾燥緻密化直後の糸とは、湿熱延伸糸を後述する油剤付与及びそれに続く乾燥緻密化処理を行い、その後の延伸を行わない段階の糸のことである。
このような現象を防止するためには、湿熱延伸糸膨潤度、平均細孔半径、乾燥緻密化直後の配向度の内の少なくとも1つについて、その値が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下になる湿熱延伸倍率を選ぶことが有効である。
湿熱延伸糸膨潤度、平均細孔半径及び乾燥緻密化直後の糸の繊維配向度が最大値あるいは飽和に達する湿熱延伸倍率は、当然、重合体組成、紡糸原液溶媒、紡浴条件等の条件に依り異なってくるので、条件ごとに上記各値の最大値あるいは飽和に達する湿熱延伸倍率を求めた後に、湿熱延伸倍率を設定することで本発明は達成される。上記各値の最大値あるいは飽和に達する湿熱延伸倍率は、湿熱延伸倍率0.2倍以上0.8倍以下ごとに各値を測定するのが好ましい。0.8倍より大きい場合は、正確に最大値あるいは飽和に達する湿熱延伸倍率を求めることができないことがある。0.2倍より小さい場合は、測定点が増え測定が煩雑になるだけである。尚、飽和点とは、横軸に湿熱延伸倍率、縦軸に測定値をとったとき測定点を結ぶ線分の傾きの絶対値が最大の傾きの10分の1以下になった点とする。
湿熱延伸倍率をより低い値に設定すると、乾燥緻密化後の延伸倍率をより大きくする必要があり紡糸工程通過性が相対的に悪くなる傾向がある。そのため、安定に生産するには、紡糸速度を遅くするなど生産性を落とす必要が生じる場合がある。かかる観点から、湿熱延伸倍率は1.5倍以上が好ましい。
このように乾燥緻密化前の延伸倍率を設定することで、本発明の炭素繊維及び炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を得ることができ、重合体組成、紡糸原液溶媒、湿式あるいは乾湿式等の紡糸方式、紡浴条件、繊維断面形状、単糸繊度及び総繊度等の各条件に依らず、優れた複合材特性を実現し得る炭素繊維を得ることが可能となる。
湿熱延伸、洗浄後、繊維表面には、公知の方法によって油剤処理を施す。油剤の種類は特に限定されないが、アミノシリコン系界面活性剤が好適に使用される。この油剤処理後、乾燥緻密化が行われる。この乾燥緻密化の温度は、繊維のガラス転移温度を超える温度に選択する。ガラス転移温度は、繊維自体の状態が、実質的には含水状態から乾燥状態へと変化することによって異なることもあり、温度が100〜200℃程度の加熱ローラーを用いる方法が好ましい。
乾燥緻密化後、再度延伸を行うことで、前駆体繊維を所望の繊維径とする後延伸工程を設けることが好ましい。この後延伸は、高温の加熱ローラー、熱盤などを利用する乾熱延伸、あるいは加圧スチームによるスチーム延伸など、繊維自体の状態を大きく変えない限り、種々の方式を用いることができる。また、多段で行うことも可能である。後延伸工程自体の延伸倍率は、乾燥緻密化の前に実施される延伸と前記乾燥緻密化の後に実施される後延伸工程と、これら全体として、所定の延伸倍率を達成するように、後延伸工程における延伸倍率は選択される。
また、乾燥緻密化前の延伸倍率と後延伸倍率を合わせた合計延伸倍率は、繊維の配向性に優れ、優れた性能の炭素繊維を得る観点から好ましくは6倍以上、より好ましくは8倍以上とし、糸切れを良好に防止して優れた生産性を実現する観点から好ましくは20倍以下、より好ましくは15倍以下とする。
以上説明したように、溶剤とこの溶剤に溶解したアクリロニトリル系共重合体を含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、この凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有する炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法において、湿熱延伸倍率を前述の範囲にすることにより、優れた炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維を得ることができる。
この前駆体繊維を、耐炎化工程、炭素化工程など公知の技術により焼成し、アクリロニトリル系炭素繊維を得ることができる。
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明における最良の実施形態の一例であるものの、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
本発明を記載する際に利用される、炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維及び炭素繊維の各種物性、具体的には、「膨潤度」、「平均細孔半径」、「配向度」、「結晶領域サイズ」、「ストランド強度、弾性率」ならびに「ねじり強度、弾性率」に関して、その評価方法を予め説明する。実施例中、特記がなされていない場合、記載する各種物性値、指標は、ここに記載する方法により測定、評価された値を表す。通常、複数の試料に対して、評価し、その平均値を採用している。また、含有率、濃度、配合量の表記に用いる「%」、「部」はそれぞれ質量%、質量部を表すこととする。
(イ)「膨潤度」
膨潤糸を遠心脱水機を用いて付着水を除去した(毎分1800回転を10分間)後の質量(W)と、これを沸水洗浄してから熱風乾燥機で80℃で16時間乾燥した後の質量(Wo)から以下の式で求めた値である。
Figure 2007023476
(ロ)「平均細孔半径」
延伸浴から出た糸条を採取し、t−ブタノールと脱イオン水の混合液でt−ブタノールの濃度を7段階に渡り濃くした溶液に順次浸漬し、繊維構造の変化がないように糸条内の液を全てt−ブタノールに置換する。これを−20℃以下に冷却しながら24時間真空下(3Pa以下)で乾燥する。この乾燥試料を約0.2g精秤し、ディラトメーターに入れる。次に水銀注入装置を用いて容器内を真空(7Pa以下)にし、その後水銀を充填する。そして、ポロシメーターを用いて測定を行う。圧力は最大400MPaまでかける。そして、細孔半径rは下式により算出される。平均細孔半径は、圧入された全水銀量の半分が圧入された時点の圧力から求められる細孔半径とした。
Figure 2007023476
(ハ)「配向度」
数百本の炭素繊維を酢酸ビニル/メタノール溶液で固め、幅0.5mmほどのサンプルを作製し、サンプルをX線に対して垂直な面上で360°回転させ、(002)反射における最高強度を含む子午線方向のプロファイルの半価幅から下記の式を用いて配向度を算出した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、出力は40kV−100mAであった。
Figure 2007023476
(ニ)「結晶領域サイズ」
前駆体繊維を50mm長に切断し、これを30mg精秤採取し、試料繊維軸が正確に平行になるようにして引き揃えた後、試料調整用治具を用いて巾1mmの厚さが均一な繊維試料束に整えた。この繊維試料束に酢酸ビニル/メタノール溶液を含浸させて形態が崩れないように固定した後、これを広角X線回折試料台に固定した。X線源として、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置を用い、同じくリガク社製のゴニオメーターにより、透過法によってグラファイトの面指数(100)に相当する2θ=17°近傍の回折ピークをシンチレーションカウンターにより検出した。出力は40kV−100mAにて測定した。回折ピークにおける半値巾から下記の式(2)を用いて、結晶領域サイズLaを求めた。
Figure 2007023476
(式中、Kはシェラー定数0.9、λは用いたX線の波長(ここではCuKα線を用いているので、1.5418Å)、θはBraggの回折角、β0は真の半値巾、β0=βE−β1(βEは見かけの半値巾、β1は装置定数であり、ここでは1.05×10-2rad)である。)
(ホ)「ストランド強度、弾性率」
JIS R−7601記載の方法で測定した。ストランドの作成は、油化シェル社製「エピコート828(商品名)」(100部)、無水メチルナジック酸(90部)、ジベンジルメチルアミン(2部)、アセトン(50部)を混合した組成の樹脂を炭素繊維に含浸後、50℃で1時間保持し、50℃から130℃に1時間かけて昇温後、130℃で2時間保持し硬化した。
(ヘ)「単繊維ねじり強度、弾性率」
長さ約2mmの単繊維試料の両端を台紙に固定し、この台紙の一端を、単繊維ねじり試験装置の金属フックに取り付けると共に、前記台紙のもう一方の端に金属フックを吊り下げ、溝のついた回転筒にセットし、回転筒を8mg/1回転にて、一定速度で回転させ、単繊維が破断したときのひずみと応力を検出することによって、単繊維ねじり強度(GPa)とねじり弾性率(GPa)を求めた。
単繊維の試料数は25〜30とし、それぞれの試料について単繊維ねじり弾性率に対する単繊維ねじり強度の比を算出し、この比が0.1以上である単繊維の割合を算出した。
実施例1、2、比較例1、2
アクリロニトリル96%、メタクリル酸1%、アクリルアミド3%で共重合したアクリル系共重合体を、ジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液(重合体濃度21%、原液温度60℃)を調整した。この紡糸原液を、直径0.075mm、孔数6000の口金を用いて、温度40℃、濃度65%のジメチルアセトアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。
この凝固糸を、1.0倍、1.5倍、2.0倍というように0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施した。6.5倍以上では繊維の破断が起こり安定に延伸できなかった。この湿熱延伸糸の膨潤度と平均細孔半径は表1にまとめ、それぞれグラフ化したものを図1、2に示す。結果、湿熱延伸倍率4.0倍で膨潤度は最大となり、延伸倍率4.5倍で平均細孔半径が最大になった。続いて、各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。この乾燥緻密化後糸の配向度を測定した所、表1、図3のようになり延伸倍率4.5倍で乾燥緻密化後糸配向度が飽和に達することがわかった。
以上の結果から、湿熱延伸倍率を2倍、3倍、5倍、6倍に設定したものをそれぞれ実施例1、2、比較例1、2とした。それぞれ上記の乾燥緻密化後、0.25MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計12倍になるように延伸を施して、単糸繊度が1.2dtex、トータル繊度が7200dtex、断面形状がほぼ円形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。実施例1では、実用上全く問題にならない程度であるが、この加圧水蒸気中の延伸前の糸条が幅広になり、糸条端部の耳折れや延伸機とのこすれがあってときどき毛羽が見られた。実施例1、2、比較例1、2のアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
得られた前駆体繊維を密度1.35g/cm2となるように空気中230〜260℃で加熱処理し耐炎化繊維とした。引き続き該繊維を窒素雰囲気中最終的に最高温度1300℃で処理した後、硝酸中で電解処理を施し、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3にまとめた。
実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。また、実施例1と実施例2の比較では、実施例1の方がやや強度が高くなったが、先述のように前駆体繊維の紡糸安定性が実施例2よりやや劣った。
実施例3、比較例3
実施例1と同じ紡糸原液を、直径0.075mm、孔数3000の口金を用いて、温度35℃、濃度60%のジメチルアセトアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。
この凝固糸を、先の例と同様に0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施し、続いて各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。各データを採った所、膨潤度の最大点、平均細孔半径の最大点及び乾燥緻密化後糸の配向度の飽和点はそれぞれ湿熱延伸倍率5.0倍、5.5倍及び5.5倍であった。これらの結果から、湿熱延伸倍率を3.0倍、6.0倍に設定したものをそれぞれ実施例3、比較例3とした。続いて0.25MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計10倍になるように延伸を施して、単糸繊度が1.2dtex、トータル繊度が3600dtex、断面形状が空豆形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
実施例1と同じ条件で焼成、電解処理を行い、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3のようになった。実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。
実施例4、比較例4
実施例1と同じ紡糸原液を、直径0.075mm、孔数6000の口金を用いて、温度35℃、濃度65%のジメチルアセトアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。
この凝固糸を、先の例と同様に0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施し、続いて各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。各データを採った所、膨潤度の最大点、平均細孔半径の最大点及び乾燥緻密化後糸の配向度の飽和点はそれぞれ湿熱延伸倍率4.0倍、4.5倍及び4.5倍であった。これらの結果から、湿熱延伸倍率を3.0倍、5.0倍に設定したものをそれぞれ実施例4、比較例4とした。続いて0.25MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計10倍になるように延伸を施して、単糸繊度が0.8dtex、トータル繊度が4800dtex、断面形状がほぼ円形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
得られた前駆体繊維を密度1.35g/cm2となるように空気中230〜260℃で加熱処理し耐炎化繊維とした。引き続き該繊維を窒素雰囲気中最終的に最高温度1400℃で処理した後、硝酸中で電解処理を施し、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3にまとめた。実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。
実施例5、比較例5
実施例1と同じ紡糸原液を、直径0.15mm、孔数1500の口金を用いて、一旦空気中に吐出し約5mmの空気中を通過させた後、温度20℃、濃度80%のジメチルアセトアミド水溶液に導き凝固糸を得た。
この凝固糸を、先の例と同様に0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施し、続いて各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。各データを採った所、膨潤度の最大点、平均細孔半径の最大点及び乾燥緻密化後糸の配向度の飽和点はいずれも湿熱延伸倍率4.0倍であった。これらの結果から、湿熱延伸倍率を3.0倍、5.0倍に設定したものをそれぞれ実施例5、比較例5とした。4本合糸後、0.25MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計10倍になるように延伸を施して、単糸繊度が1.2dtex、トータル繊度が7200dtex、断面形状がほぼ円形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
得られた前駆体繊維を実施例1と同じ条件で焼成、電解処理を行い、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3にまとめた。実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。
実施例6、比較例6
アクリロニトリル98%、メタクリル酸2%で共重合したアクリル系共重合体を、ジメチルホルムアミドに溶解して紡糸原液(重合体濃度23%、原液温度60℃)を調整した。この紡糸原液を、直径0.075mm、孔数6000の口金を用いて、温度30℃、濃度50%のジメチルホルムアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。
この凝固糸を、先の例と同様に0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施し、続いて各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。各データを採った所、膨潤度の最大点、平均細孔半径の最大点及び乾燥緻密化後糸の配向度の飽和点はいずれも湿熱延伸倍率3.5倍であった。これらの結果から、湿熱延伸倍率を2.0倍、5.0倍に設定したものをそれぞれ実施例6、比較例6とした。続いて0.25MPaの加圧水蒸気中で延伸倍率が合計10倍になるように延伸を施して、単糸繊度が0.8dtex、トータル繊度が4800dtex、断面形状がほぼ円形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
得られた前駆体繊維を実施例1と同じ条件で焼成、電解処理を行い、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3にまとめた。実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。
実施例7、比較例7
実施例1と同じ紡糸原液を、直径0.045mm、孔数6000の口金を用いて、温度35℃、濃度65%のジメチルアセトアミド水溶液に吐出し凝固糸とした。
この凝固糸を、同様に0.5倍ごとに延伸倍率を高くしていき6.0倍までの全12条件で70℃、90℃、95℃の3段の温水中湿熱延伸を施し、続いて各条件の湿熱延伸糸をアミノシリコン系油剤1.5%水溶液中に浸漬し、180℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化した。各データを採った所、膨潤度の最大点、平均細孔半径の最大点及び乾燥緻密化後糸の配向度の飽和点はそれぞれ湿熱延伸倍率3.5倍、3.5倍及び4.0倍であった。これらの結果から、湿熱延伸倍率を2.5倍、5.0倍に設定したものをそれぞれ実施例7、比較例7とした。続いて180℃に加熱した熱ロール間で延伸倍率が合計7倍になるように延伸を施して、単糸繊度が1.2dtex、トータル繊度が7200dtex、断面形状が空豆形のアクリロニトリル系前駆体繊維を得た。得られたアクリロニトリル系前駆体繊維の結晶領域サイズは表2のようになった。結晶領域サイズとトータル延伸倍率の関係を図4に示す。
得られた前駆体繊維を実施例4と同じ条件で焼成、電解処理を行い、炭素繊維を得た。ストランド強度、弾性率、ねじり強度、弾性率の結果は表3にまとめた。実施例では引っ張り強度及びねじり物性の優れた炭素繊維が得られた。
Figure 2007023476
Figure 2007023476
Figure 2007023476
実施例における湿熱延伸倍率と湿熱延伸糸膨潤度との関係を示すグラフである。 実施例における湿熱延伸倍率と平均細孔半径との関係を示すグラフである。 実施例における湿熱延伸倍率と配向度との関係を示すグラフである。 実施例におけるトータル延伸倍率と結晶領域サイズとの関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法であって、得られる前駆体繊維のポリアクリロニトリルの(100)反射から得られる結晶領域サイズと、トータル延伸倍率とが次式を満たす製造方法。
    Figure 2007023476
  2. 請求項1記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法であって、
    溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有し、湿熱延伸倍率を、湿熱延伸糸膨潤度が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下とする製造方法。
  3. 請求項1記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法であって、
    溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有し、湿熱延伸倍率を、湿熱延伸糸の平均細孔半径が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下とする製造方法。
  4. 請求項1記載の炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法であって、
    溶剤と該溶剤に溶解したアクリロニトリル系重合体とを含む紡糸原液を紡糸して凝固糸を得る紡糸工程、該凝固糸を湿熱延伸する湿熱延伸工程、該延伸した糸を油剤処理する油剤処理工程、該油剤処理した糸を乾燥緻密化する乾燥緻密化工程を有し、湿熱延伸倍率を、乾燥緻密化直後の繊維配向度が最大値あるいは飽和に達する延伸倍率以下とする製造方法。
  5. 前記溶剤がジメチルアセトアミドあるいはジメチルホルムアミドであり、前記湿熱延伸を行う際の湿熱延伸糸膨潤度を120%以下とする請求項2から4のいずれか一項に記載の製造方法。
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