JP2007023350A - ポリパラキシリレン膜の形成方法、ポリパラキシリレン膜、インクジェットヘッド - Google Patents

ポリパラキシリレン膜の形成方法、ポリパラキシリレン膜、インクジェットヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な構成の装置で実施でき、耐薬品性及び絶縁性に優れたポリパラキシリレン膜の形成方法を提供すること。
【解決手段】本発明のポリパラキシリレン膜の形成方法は、基体の温度が20℃以下又は材料ガスの圧力が100mmTorr以上の条件で材料ガスを基体に接触させることによってポリパラキシリレンからなる下部を形成し、下部形成時よりも基体温度が高いか、材料ガスの圧力が低い条件で材料ガスを基体に接触させることによって下部を覆うポリパラキシリレンからなる上部を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ポリパラキシリレン膜の形成方法、ポリパラキシリレン膜、及びインクジェットヘッドに関する。本発明のポリパラキシリレン膜は、耐薬品性及び絶縁性に優れているので、種々の精密部品の保護膜として使用可能である。特に、せん断モードを利用したインクジェットヘッドの電極等をインクから保護する保護膜として好適に用いられる。
せん断モード型のインクジェットヘッドは、特許文献1に記載のように、圧電基板に平行溝からなるインク流路を形成し、インク流路内面に電極層を形成し、流路上面を塞ぐために別の基板を取り付け、インク出射部にノズル孔を有するノズルプレートを取り付けることによって作製する。
この電極層は、常時、インクにさらされるため、腐食を防止するためにポリパラキリシレン膜で保護する技術が知られている。ポリパラキリシレン膜は、耐薬品性が高いという点において優れているが、ピンホールが発生して耐薬品性の悪化や絶縁不良が起こりやすいという問題がある。
この問題に対処するため、特許文献2には、基体に設けられるポリパラキシリレンとポリクロロパラキシリレンを含む保護膜であって、ポリパラキシリレンに対するポリクロロパラキシリレンの組成比が、前記基体の界面側よりも表面側の部分の方が高いことを特徴とする保護膜が開示されている。
特開平4−259563号公報 特開2002−210967号公報
しかし、特許文献2の保護膜を形成するには、ポリパラキシリレンとポリクロロパラキシリレンのそれぞれのための昇華室及び熱分解炉が必要となり、装置コストの増大に繋がる。そのため、より簡易な構成の装置を用いて、耐薬品性及び絶縁性が高い保護膜を形成することができる方法が望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成の装置で実施でき、耐薬品性及び絶縁性に優れたポリパラキシリレン膜の形成方法を提供するものである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明のポリパラキシリレン膜の形成方法は、基体の温度が20℃以下又は材料ガスの圧力が100mmTorr以上の条件で材料ガスを基体に接触させることによってポリパラキシリレンからなる下部を形成し、下部形成時よりも基体温度が高いか、材料ガスの圧力が低い条件で材料ガスを基体に接触させることによって下部を覆うポリパラキシリレンからなる上部を形成する。
上記下部の形成条件によれば、基体に0.5〜10μm程度の凹凸がある場合でも、形成される下部にピンポールが発生しにくい。従って、絶縁性が高い下部を形成することができる。
また、上記上部の形成条件によれば、耐薬品性の高い上部を形成することができる。
本発明によれば、絶縁性の高い下部を耐薬品性の高い上部が覆うので、耐薬品性及び絶縁性に優れたポリパラキシリレン膜を得ることができる。
また、本発明のポリパラキシリレン膜の形成方法は、1つの昇華室及び熱分解炉を有する成膜装置で実施することができるため、成膜装置の構成が複雑にならない。
また、本発明の方法によって得られるポリパラキシリレン膜は、材料の異なる多層膜ではないので、材料の異なる層間の剥離等の問題が生じない。
1.本発明のポリパラキシリレン膜の形成方法
本発明のポリパラキシリレン膜の形成方法は、基体の温度が20℃以下又は材料ガスの圧力が100mmTorr以上の条件で材料ガスを基体に接触させることによってポリパラキシリレンからなる下部を形成し、下部形成時よりも基体温度が高いか、材料ガスの圧力が低い条件で材料ガスを基体に接触させることによって下部を覆うポリパラキシリレンからなる上部を形成する。
1−1.下部形成工程
下部は、ポリパラキシリレンからなり、基体の温度が20℃以下又は材料ガスの圧力が100mmTorr以上の条件で材料ガスを基体に接触させることによって形成することができる。
このような条件で下部を形成すると、下部にピンホールが発生しにくい。
基体として、インクジェットヘッド、半導体装置、液晶ディスプレイパネル、太陽電池パネル、MEMS等のデバイス,もしくはフレキシブル回路基板、ガラスエポキシ回路基板等の回路基板などが挙げられる。
材料ガスは、例えば、ジパラキシリレンとジラジカルパラキシリレンを含む混合ガスである。ジパラキシリレンは、第三化成株式会社から入手可能である(商品名:diX-N)。ジパラキシリレンは、真空中で100℃程度に加熱すると昇華し、さらに600℃程度に加熱すると、熱分解され、反応性の高いジラジカルパラキシリレンが得られる。従って、ジパラキシリレンの分解が十分であれば、材料ガスは、ジラジカルパラキシリレンを主成分とするガスとなる。この材料ガスを基体に接触させることによって下部が形成される。
基体の温度は、好ましくは20℃、さらに好ましくは19℃、さらに好ましくは18℃、さらに好ましくは17℃、さらに好ましくは16℃、さらに好ましくは15℃以下である。
基体の温度を予め低くした状態で下部を形成すると、下部の平均分子量を比較的小さく、例えば50万以下にすることができる。この場合に、下部の平均分子量が小さくなる作用は、必ずしも明らかではないが、基体温度を低くしておくと、基体表面での重合反応の反応速度に対して、重合反応を伴わない物理的な吸着の発生頻度が相対的に多くなるため、成膜工程において重合反応が抑制されたように見えるためであると考えられる。
基体の温度を予め低くした状態で下部を形成すると、下部にピンホールが形成されにくい。その作用は、必ずしも明らかではないが、下部の平均分子量が比較的小さくなるためであり、以下の作用によるものと考えられる。
(1)図1(a)に示す基体1の凹部3がポリパラキシリレンで充填されるとき、図1(b)に示すように凹部3内にもポリパラキシリレン膜5が形成される。
(2)図1(c)に示すようにポリパラキシリレン膜5が厚くなるにつれて、凹部3内の側壁7a,7bが近づき、最終的に接触して界面が形成され、この界面がピンホールの原因になる。
(3)ポリパラキシリレン膜5の平均分子量が小さい場合、低分子量(例えば1万以下)のポリパラキシリレンが比較的高い割合で存在しており、図1(d)に示すように、この低分子量のポリパラキシリレンが界面9に存在して界面9を不明瞭にする。従って、ポリパラキシリレン膜5にピンホールが形成されにくい。
また、基体温度が低すぎる場合は、ジラジカルパラキシリレン(反応性モノマー)やジパラキシリレンが重合反応を伴わないで単に基体に吸着することが優先的に起こり、保護膜の耐薬品特性、絶縁特性等が低下するという理由から基体の温度は、上記温度以下であって、好ましくは-10℃、さらに好ましくは0℃、さらに好ましくは10℃以上であることが好ましい。
材料ガスの圧力は、好ましくは100mmTorr、さらに好ましくは125mmTorr、さらに好ましくは150mmTorr、さらに好ましくは175mmTorr、さらに好ましくは200mmTorr以上である。材料ガスの圧力を予め高くした状態でポリパラキシリレン膜の下部を形成すると、この下部の密度を比較的低く、例えば1.11g/cm3以下にすることができる。この場合に、下部の密度が小さくなる作用は、必ずしも明らかではないが、材料ガスの圧力が高いと、材料ガス中のジラジカルパラキシリレンが気相中で重合してオリゴマーを生成して、このオリゴマーが基体上に乱雑に付着し、形成されるポリパラキシリレン膜中に微細な空間が残されやすいためであると考えられる。
材料ガスの圧力を高くして下部を形成すると、下部にピンホールが形成されにくい。その作用は、必ずしも明らかではないが、以下の通りであると考えられる。材料ガスの圧力が高い場合、上述の通り、気相中で生成されたオリゴマーが基体上に乱雑に付着しやすいので、図1(c)に示す側壁7a,7bが接触して形成される界面においても、前記オリゴマーが乱雑に付着して界面を不明瞭にする。従って、ポリパラキシリレン膜5にピンホールが形成されにくい。
また、材料ガス圧が高すぎるとジラジカルパラキシリレン(反応性モノマー)同士が衝突を繰り返して気相中で重合反応が進行し、オリゴマーが被着体に付着する機会が多くなりすぎて耐薬品特性や絶縁特性が低下するという理由から、材料ガスの圧力は、上記圧力以上であって、好ましくは300mmTorr、さらに好ましくは250mmTorr以下であることが好ましい。
上述した条件は、互いに組み合わせることもできる。例えば、基体温度の条件と材料ガス圧力の条件を組み合わせることができる。この場合、下部にはさらにピンホールが形成されにくくなる。
2.上部形成工程
上部はポリパラキシリレンからなり、下部形成時よりも基体温度が高いか、材料ガスの圧力が低い条件で材料ガスを基体に接触させることによって形成される。上部は、下部が形成された基板上に、下部を覆うように形成される。
上記条件によれば、耐薬品性の高い上部が得られる。
上部形成時の基体温度は、下部形成時よりも、好ましくは2℃、さらに好ましくは4℃、さらに好ましくは6℃、さらに好ましくは8℃、さらに好ましくは10℃以上高い。基体温度を高くすると上部の平均分子量が大きくなる。その作用は、必ずしも明らかではないが、基体温度を高くして成膜する場合、基体表面での重合反応の反応速度に対して、重合反応を伴わない物理的な吸着の発生頻度が相対的に少なくなるため、重合反応を伴う成膜が優先的に促進されたように見えるためであると推測される。
また、上記条件で上部が形成された場合に、上部の耐薬品性が高くなる作用は、必ずしも明らかでないが、上部の平均分子量が大きい場合に薬品が膜に浸透しにくくなるためであると考えられる。
基体温度を下部形成時よりも高くする方法は、(1)高温の材料ガスが基体に衝突することによる基体温度の自然上昇を利用する方法、(2)ヒーターやランプを用いて積極的に基体温度上昇させる方法などが考えられる。上記(1)の場合、下部を厚く形成したい場合には、ペルチェ素子などによって基体温度が所定温度以下になるように制御する。
また、基体温度を高温にしすぎた場合は、成膜速度が著しく低下するため、所望の膜厚まで成膜するための工程時間が長くなると同時に収率が悪化して必要以上に原材料を投入する必要があるという理由から、上部形成時の基体温度は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下であることが好ましい。
上部形成時の材料ガスの圧力は、下部形成時よりも、好ましくは10mmTorr、さらに好ましくは20mmTorr、さらに好ましくは30mmTorr、さらに好ましくは40mmTorr、さらに好ましくは50mmTorr、さらに好ましくは60mmTorr以上低い。材料ガスの圧力を低くすると、上部の密度が高くなる。その作用は、必ずしも明らかではないが、材料ガス中のジラジカルパラキシリレン同士の衝突機会が減少して気相中でのオリゴマー生成量が減少することによって、基体へのオリゴマーの乱雑な付着量が減少するためであると考えられる。
また、上記条件で上部が形成された場合に、上部の耐薬品性が高くなる作用は、必ずしも明らかでないが、上部の密度が高い場合に薬品が膜に浸透しにくくなるためであると考えられる。
材料ガスの圧力を下部形成時よりも低くする方法は、(1)基体への成膜を行う成膜チャンバの排気バルブを調節する方法、(2)ジパラキシリレンの昇華温度を調節する方法などが考えられる。
また、成膜時間の短縮が可能であるという理由から、上部形成時の材料ガスの圧力は、好ましくは10mmTorr、さらに好ましくは20mmTorr、さらに好ましくは30mmTorr以上であることが好ましい。
上述した条件は、互いに組み合わせることもできる。例えば、基体温度の条件と材料ガス圧力の条件を組み合わせることができる。この場合、上部はさらに耐薬品性が高くなる。
また、上部形成前に、他の材料からなる膜等で下部を覆う工程を備えてもよい。
また、成膜チャンバ内の雰囲気温度は、好ましくは成膜スタート時の基体温度と同じにする。
また、上部又は下部形成工程において、材料ガス以外のガスの分圧は、好ましくは30mmTorr、さらに好ましくは20mmTorr、さらに好ましくは10mmTorr以下である。材料ガス以外のガスの分圧が低い方が、良好なポリパラキシリレン膜が形成されやすいからである。
本発明は、別の観点では、材料ガスを基体に接触させる工程を備えるポリパラキシリレン膜の形成方法であって、成膜開始時の基体温度が20℃以下であるか、材料ガスの圧力が100mmTorr以上であり、膜形成中に基体温度を上昇させるか、材料ガスの圧力を低下させることを特徴とするポリパラキシリレン膜の形成方法を提供する。「基体温度を上昇させる」とは、外部からヒーターなどで熱を供給して基体温度を上昇させる場合のみならず、高温の材料ガスの基体への衝突によって基体温度を自然に上昇させる場合も含む。上記下部形成工程及び上部形成工程についての説明は、ここでも当てはまる。
ここで、図2を用いて、本発明のポリパラキシリレン膜の形成に利用可能な成膜装置の一例を紹介する。図2に示す成膜装置は、昇華加熱ヒーター11を有する昇華室13と、熱分解加熱ヒーター15を有する熱分解炉17と、図示しない試料ホルダーを有する成膜チャンバ19と、未反応のモノマーガスをトラップするコールドトラップ21と、真空排気するロータリーポンプ23とを備える。コールドトラップ21は、液体窒素収容部25を有する。コールドトラップ21は、バックグラウンド真空度を高める機能も有する。
次に、この成膜装置を用いたポリパラキシリレン膜の形成方法の一例を説明する。
まず、成膜チャンバ19内の試料ホルダーにポリパラキシリレン膜を形成する基体を設置する。次に、昇華室13に、必要量のジパラキシリレンを投入する。次に、ロータリーポンプ23を稼動させて、成膜チャンバ19内の圧力が10mmTorr以下になるように排気し、熱分解炉17の熱分解加熱ヒーター15に通電して、熱分解炉17内の温度を約700℃まで昇温させる。次に、液体窒素収容部25に液体窒素を投入する。液体窒素は、コールドトラップ21を冷却する。以上で成膜のための準備を完了する。
次に、昇華加熱ヒーター11に通電して、昇華室13内の温度を100から180℃程度まで昇温させることにより、昇華室18に投入されたジパラキシリレンの全量を投入量によるが2時間から10時間の時間をかけて加熱して昇華させる。昇華したジパラキシリレンは、拡散によって熱分解炉17に到達する。熱分解炉17に到達したジパラキシリレンは、さらに加熱され、熱分解されてジラジカルパラキシリレンが生成される。生成されたジラジカルパラキシリレンは、拡散によって成膜チャンバ19に移動し、成膜チャンバ19内に設置された基体に衝突する。このとき、ジラジカルパラキシリレンの重合反応が起こり、基体上にポリパラキシリレン膜が形成される。
2.本発明のポリパラキシリレン膜の構造
本発明のポリパラキシリレン膜は、基体上に形成される下部と、下部を覆う上部からなるポリパラキシリレン膜であって、下部は、平均分子量が50万以下又は密度が1.11g/cm3以下であり、上部は、下部よりも平均分子量が大きいか密度が高いことを特徴とする。
2−1.下部
下部は、直接基体上に形成されてもよいし、他の材料からなる膜等を介して間接的に基体上に形成されてもよい。
下部は、平均分子量が、好ましくは50万、さらに好ましくは40万、さらに好ましくは30万、さらに好ましくは20万以下である。下部の平均分子量が小さい場合に、下部にピンホールが形成されにくい点については、上述した通りである。
本明細書において、「平均分子量」は、重量平均分子量を意味し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法と飛行時間型質量分析法を組み合わせた質量分析手法(MALDI-TOFMS法)にて測定する。この方法の詳細は、DIC Technical Review No.8/2002 p13〜p18に記載されている。この方法は、例えば株式会社島津製作所製の質量分析計「AXIMA-CFR」を用いて実施することができる。イオン化助剤(カチオン化剤)には、AgTFA (Silver trifluoroacetate)を用い、マトリックスにはDithranol (1,8-Dihydroxy-9[10H]-anthracenone)を用いる。イオン化に用いるレーザーの波長は、337nmとする。後述する実施例では、上記装置を用いて、上記条件で平均分子量の測定を行った。
また、平均分子量が、膜厚方向に変化する場合、0.5μm厚の層をサンプルとして測定する。
また、下部においても耐薬品特性および絶縁特性がより優れることとピンホール抑制効果が優れるという理由から、下部は、平均分子量が、上記値以下であって、好ましくは1万、さらに好ましくは5万、さらに好ましくは10万以上であることが好ましい。
また、下部は、別の観点では、例えば、密度が、好ましくは1.11g/cm3、さらに好ましくは1.09g/cm3、さらに好ましくは1.07g/cm3、さらに好ましくは1.05g/cm3以下である。下部の密度が小さい場合に、下部にピンホールが形成されにくい点については、上述した通りである。
本明細書において、「密度」は、例えば剥離しやすい樹脂材料上に基体と同条件で成膜して剥離し、質量を電子天秤で計測し、面積と膜厚を計測して体積を求め、密度を求める方法をとった。その他に成膜された基体から膜の一部を剥離し、例えば密度を振って作製した比重0.9〜1.2までの数種類の溶液に浸漬して、沈降・静止・浮上の状態から静止した比重溶液と同じ密度であると判断できる。
また、膜中の微小欠陥などが密度低下として現れており、微小欠陥が多すぎると微小欠陥自体が連続的に形成されて逆にピンホールを形成してしまい、ピンホール抑制効果が低下するという理由から、下部は、密度が、上記値以下であって、好ましくは0.9g/cm3、さらに好ましくは0.95g/cm3、さらに好ましくは1g/cm3以上であることが好ましい。
また、上記平均分子量の条件と密度の条件は組み合わせることが可能である。この場合、下部には、ピンホールがさらに形成されにくくなる。
下部は、厚さが、好ましくは1μm、さらに好ましくは1.5μm、さらに好ましくは2μm以上である。下部は、厚く形成する方が、下部にピンホールが形成されにくい。下部は、厚さが、好ましくは10μm、さらに好ましくは5μm以下である。この場合、この程度の厚さがあれば、十分であるからである。
2−2.上部
上部は、下部を直接覆ってもよいし、他の材料からなる膜等を介して間接的に覆ってもよい。
上部は、下部より平均分子量が大きいか密度が高い。
平均分子量については、上部は、平均分子量が、下部より好ましくは2万、さらに好ましくは10万、さらに好ましくは20万、さらに好ましくは30万、さらに好ましくは40万以上大きい。ポリパラキシリレンは、その平均分子量が、大きくなるほど耐薬品性が高くなると考えられるので、下部より平均分子量が大きい上部で下部を覆うことにより、耐薬品性に優れたポリパラキシリレン膜が得られる。
また、上部の平均分子量は、作製可能な範囲で、高い方が好ましい。
密度については、上部は、密度が、下部より好ましくは0.01g/cm3、さらに好ましくは0.02g/cm3、さらに好ましくは0.04g/cm3、さらに好ましくは0.06g/cm3、さらに好ましくは0.08g/cm3以上高い。ポリパラキシリレンは、その密度が、大きくなるほど耐薬品性が高くなると考えられるので、密度が上記値よりも大きい上部で下部を覆うことにより、耐薬品性に優れたポリパラキシリレン膜が得られる。
また、上部の密度は、作製可能な範囲で、高い方が好ましい。
また、上記平均分子量の条件と密度の条件は組み合わせることが可能である。上部が下部より平均分子量が大きくかつ密度が高い場合、耐薬品性はさらに高くなる。
上部は、厚さが、好ましくは1μm、さらに好ましくは1.5μm、さらに好ましくは2μm以上である。上部は、厚く形成する方が、耐薬品性を高める効果が高くなる。上部は、厚さが、好ましくは10μm、さらに好ましくは5μm以下である。この場合、この程度の厚さがあれば、十分であるからである。
下部と上部とは、好ましくは、連続的に繋がる。これは、例えば、平均分子量又は密度の値が、ポリパラキシリレン膜表面に向かって膜厚方向に徐々に大きくなる場合である。この場合、下部と上部との間に明確な境界は見られないが、平均分子量又は密度の値が所定値以下である部分を下部と呼び、下部よりも平均分子量又は密度の値が大きい部分を上部と呼ぶ。
下部と上部とは、非連続であってもよい。これは、例えば、下部を形成した後に、平均分子量又は密度の値が大きくなるように成膜条件を突然変更した場合である。この場合であっても、同様の作用により、耐薬品性及び絶縁性に優れたポリパラキシリレン膜が得られる。
本発明は、別の観点では、基体上に形成され、基体側の部分よりも表面側の部分の方が平均分子量が大きいか密度が高く、基体側の部分の平均分子量が50万以下であるか密度が1.11g/cm3以下であるポリパラキシリレン膜を提供する。基体側の部分及び表面側の部分のポリパラキシリレン膜の特徴は、それぞれ、上記下部及び上部についての記載が当てはまる。
2−3.応用
上述の通り、本発明のポリパラキシリレン膜は、耐薬品性及び絶縁性に優れている。従って、この膜は、インクジェットヘッド、半導体装置、液晶ディスプレイパネル、太陽電池パネル、MEMS等のデバイス,もしくはフレキシブル回路基板、ガラスエポキシ回路基板等の回路基板等からなる基体の保護膜として使用可能である。
ここで、図3を用いて、特許文献1に示されているようなせん断モード型インクジェットヘッドのインク室(圧力発生室)の保護膜に本発明のポリパラキシリレン膜を適用した例を示す。図3は、インクジェットヘッドのインク出射方向から見た断面図である(便宜上、インク室を2つのみ描いている。)。
このインクジェットヘッドでは、上下方向に分極処理が施され、平行溝が形成された圧電基板31と、カバー部材32とが接着剤33で接着されている。前記平行溝の上側がカバー部材32で覆われて、インク室34が形成されている。インク室34の側面の上半分には電極35が形成されている。電極35に電圧が印加されると隣接するインク室34を隔てる側壁が変形してインク室34の容積が減少し、インク室34に収容されているインクが吐出される。なお、電極35は、特許文献1のように、インク室34の側壁全面及び底面に形成されていてもよい。
本発明のポリパラキシリレン膜36は、インク室34の内面の全面に形成され、インク室34内を流れるインクから、接着剤33、電極35、インク室34の側面の露出部分を保護する。従って、ポリパラキシリレン膜36は、インクジェットヘッドのインクと接する部分に形成される。なお、インクには、電解質溶液インク、導電性インク、有機溶媒系インクなど種々のものがある。
実施例1では、基体上に低分子量部と高分子量部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、その絶縁性及び耐薬品性を検証した。また、比較例として、基体上に、2層の高分子量部からなるポリパラキシリレン膜を形成し、本発明のポリパラキシリレン膜と比較した。
1.サンプルの作成
1−1.絶縁性試験用サンプル
基体として、5cm角のPZT圧電材料基板(トーキン社製)を用いた。この基板は、表面に0.5μm〜10μm程度の凹凸を多数有していることが知られている。
この基板の全面にスパッタリング法によって厚さ0.5μmのCu膜を形成した。Cu膜は、基板の凹凸をほぼそのまま反映した形状になる。
次に、図2に概要を示した成膜装置(岸本産業社製、型式:diXコーティング装置)を用いて、Cu膜上に低分子量部と高分子量部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、表1に示す実施例サンプル1〜16を作製した。成膜前に成膜チャンバ19内を窒素ガスで置換し、その後、成膜チャンバ19内の圧力を10mmTorrまで減圧した。ジパラキシリレンの熱分解は、700℃で行った。
低分子量部及び高分子量部の厚さは、それぞれ、0.5、1、1.5、2μmとした。別の実験から材料ガスの基体への衝突によって、0.5μmの成膜によって基体温度が1.5℃上昇することが分かっている。そのため、基体を表1に示す温度に冷却して成膜を開始した。基体温度を20℃以下にして形成された部分を低分子量部、20℃より高い温度にして形成された部分を高分子量部と呼ぶ。成膜チャンバ19内での材料ガスの圧力は、50mmTorrとした。成膜チャンバ19内の雰囲気温度は、23℃にした。以上の条件では、成膜速度は、1.0μm/時間であった。実施例サンプル6について平均分子量を測定したところ、ポリパラキシリレン膜の基体から0.5μmの層の平均分子量は、48.8万であり、表面から0.5μmの層の平均分子量は、52.3万であった。
また、Cu膜上に2層の高分子量部からなるポリパラキシリレン膜を形成し、表1に示す比較例サンプル1、2を作製した。比較例サンプル1、2の高分子量部の厚さは、それぞれ1μmを2層、2μmを2層とした。基体温度を23℃にして第1層の成膜を開始し、第1層の成膜が終了すると、再度、基体温度を23℃にして第2層の成膜を行った。基体温度以外の条件は、実施例サンプルと同様の条件で成膜を行った。以上の条件では、成膜速度は、0.8μm/時間であった。
1−2.耐薬品性試験用サンプル
基体として、5cm角のポリカーボネイト基板表面を3M社製ラッピングフィルムを用いてポリカーボネイト表面の一部(2.5cm×2.5cmの範囲)を粗面化したものを用いた。ラッピングフィルムで粗面化することで表面に0.5μm〜10μm程度の凹凸が多数形成される。
次に、図2に概要を示した成膜装置(岸本産業社製、型式diXコーティング装置)を用いて、上記基板上に低分子量部と高分子量部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、表2に示す実施例サンプル17〜32を作製した。成膜前に成膜チャンバ19内を窒素ガスで置換し、その後、成膜チャンバ19内の圧力を10mmTorrまで減圧した。ジパラキシリレンの熱分解は、700℃で行った。
低分子量部及び高分子量部の厚さは、それぞれ、0.5、1、1.5、2μmとした。別の実験から材料ガスの基体への衝突によって、0.5μmの成膜によって基体温度が2.0℃上昇することが分かっている。そのため、基体を表2に示す温度に冷却して成膜を開始した。基体温度20℃以下で形成された部分を低分子量部、20℃以上で形成された部分を高分子量部と呼ぶ。成膜チャンバ19内での材料ガスの圧力は、50mmTorrとした。成膜チャンバ19内の雰囲気温度は、23℃にした。以上の条件では、成膜速度は、1.0μm/時間であった。実施例サンプル22について平均分子量を測定したところ、ポリパラキシリレン膜の基体から0.5μmの層の平均分子量は、48.5万であり、表面から0.5μmの層の平均分子量は、52.1万であった。
また、上記基板上に2層の高分子量部からなるポリパラキシリレン膜を形成し、表2に示す比較例サンプル3、4を作製した。比較例サンプル3、4の高分子量部の厚さは、それぞれ1μmを2層、2μmを2層とした。基体温度を23℃にして第1層の成膜を開始し、第1層の成膜が終了すると、再度、基体温度を23℃にして第2層の成膜を行った。基体温度以外の条件は、実施例サンプルと同様の条件で成膜を行った。
2.絶縁性試験
上記工程で作製されたサンプルを2枚準備し、2枚のサンプルをポリパラキシリレン膜が5mmの間隔を空けて対向するように、電気伝導度が19.58S/mの水性インク(主成分:水及びジエチレングリコール)中に配置し、フレキシブル基板を利用してCu膜に交流電源を接続し、実効値で120V、60Hzの交流電圧を印加した。24時間、250時間、500時間印加した後、Cu膜の腐食個所の数を数えた。ポリパラキシリレン膜にピンホールが存在すると、Cu膜に腐食が生じるので、Cu膜の腐食個所の数を数えることによって、ポリパラキシリレン膜にピンホールが存在しているかどうかを検証することができる。
試験結果を表1に示す。Cu膜の腐食が確認された時点で試験を終了したので、それ以降の試験結果についてはハイフン「−」を表示している。
Figure 2007023350
膜構成が同じである実施例サンプル6と比較例サンプル1、実施例サンプル12と比較例サンプル2を比較すると、何れの場合も実施例サンプルの方が良い結果が得られたことが分かる。
また、低分子量部の厚さを1μm以上にした場合に良い結果が得られ、さらに高分子量部の厚さも1μm以上にした場合にさらに良い結果が得られた。この両方の厚さが1μm以上の場合、Cu膜に腐食が生じるまでの時間が250時間を超えた。この値は、本実施例のポリパラキシリレン膜が、15〜20V駆動のせん断モード型インクジェットヘッド(産業用・民生用)の電極保護膜として十分な絶縁性を有していることを示している。
3.耐薬品性試験
上記工程で作製されたサンプルを60℃の混合有機溶媒溶液(エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、芳香族系有機溶媒を体積比1:1:1で混合したもの)に浸し、ポリカーボネイト基板に白化が発生するまでの日数を数えた。この日数を比較することにより、ポリパラキシリレン膜の耐薬品性を評価することができる。
試験結果を表2に示す。表2に示した日数でポリカーボネイト基板にピンホール白化が発生した。
Figure 2007023350
また、表2の結果を図4のグラフに表した。図4のグラフの各系列に付した数値は、低分子量部の厚さを示す。従って、4本の系列は、下から順に、低分子量部の厚さが0.5μm、1μm、1.5μm、2μmのものに対応する。
図4中の矢印Aは、膜構成が同じである実施例サンプル22と比較例サンプル3との差を示し、矢印Bは、膜構成が同じである実施例サンプル32と比較例サンプル4との差を示す。矢印A,Bが示すように、何れの場合も実施例サンプルの方が良い結果が得られたことが分かる.
また、図4から明らかなように、低分子量部及び高分子量部の何れの厚さも1μm以上である場合に、ポリカーボネイト基板に白化が発生するまでの日数が30日を超えた。この値は、本実施例のポリパラキシリレン膜が、せん断モード型インクジェットヘッド(産業用・民生用)の保護膜として十分な耐薬品性を有していることを示している。
4.まとめ
以上より、本実施例のポリパラキシリレン膜は、比較例のポリパラキシリレン膜よりも絶縁性及び耐薬品性の両方において優れていることが分かった。また、本実施例のポリパラキシリレン膜は、低分子量部及び高分子量部の両方の膜厚が1μm以上である場合に絶縁性及び耐薬品性の両方において極めて優れていることが分かった。
実施例2では、基体上に低密度部と高密度部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、その絶縁性及び耐薬品性を検証した。また、このポリパラキシリレン膜と、実施例1で作製した比較例サンプル1〜4との比較を行った。比較例サンプル1〜4のポリパラキシリレン膜の第1層及び第2層は、何れも材料ガスの圧力を高密度部形成時の値(50mmTorr)にして形成されているので、表3及び表4では高密度部と表記する。
1.サンプルの作成
1−1.絶縁性試験用サンプル
基体として、5cm角のPZT圧電材料基板(トーキン社製)を用いた。この基板は、表面に0.5μm〜10μm程度の凹凸を多数有していることが知られている。
この基板の全面にスパッタリング法によって厚さ0.5μmのCu膜を形成した。Cu膜は、基板の凹凸をほぼそのまま反映した形状になる。
次に、成膜装置(Para Tech社製、型式パリレンコーティング装置)を用いて、Cu膜上に低密度部と低密度部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、表3に示す実施例サンプル101〜116を作製した。成膜前に成膜チャンバ19内を窒素ガスで置換し、その後、成膜チャンバ19内の圧力を10mmTorrまで減圧した。ジパラキシリレンの熱分解は、700℃で行った。
低密度部及び高密度部の厚さは、それぞれ、0.5、1、1.5、2μmとした。成膜チャンバ19内での材料ガスの圧力は、低密度部形成時には100mmTorrとし、高密度部形成時には50mmTorrとした。低密度部の成膜終了後、成膜チャンバ19の排気バルブを調節することにより、材料ガスの圧力を調節した。成膜チャンバ19内の雰囲気温度は、23℃にした。基体温度を23℃にして低密度部の成膜を開始し、低密度部の成膜が終了すると、再度、基体温度を23℃にして高密度部の成膜を行った。別の実験から材料ガスの基体への衝突によって、低密度部形成時には、0.5μmの成膜によって基体温度が2.5℃上昇し、高密度部形成時には、0.5μmの成膜によって基体温度が1.2℃上昇することが分かっている。低密度部形成時の成膜速度は、2.2μm/時間、高密度部形成時の成膜速度は、0.9μm/時間であった。実施例サンプル106について密度を測定したところ、ポリパラキシリレン膜の基体から0.5μmの層の密度は、1.09g/cm3であり、表面から0.5μmの層の密度は、1.11g/cm3であった。
1−2.耐薬品性試験用サンプル
基体として、5cm角のポリカーボネイト基板表面を3M社製ラッピングフィルムを用いてポリカーボネイト表面の一部(2.5cm×2.5cmの範囲)を粗面化したものを用いた。ラッピングフィルムで粗面化することで表面に0.5μm〜10μm程度の凹凸が多数形成される。
次に、成膜装置(Para Tech社製、型式パリレンコーティング装置)を用いて、上記基板上に低密度部と低密度部とからなるポリパラキシリレン膜を形成し、表4に示す実施例サンプル117〜132を作製した。成膜前に成膜チャンバ19内を窒素ガスで置換し、その後、成膜チャンバ19内の圧力を10mmTorrまで減圧した。ジパラキシリレンの熱分解は、700℃で行った。
低密度部及び高密度部の厚さは、それぞれ、0.5、1、1.5、2μmとした。成膜チャンバ19内での材料ガスの圧力は、低密度部形成時には100mmTorrとし、高密度部形成時には50mmTorrとした。低密度部の成膜終了後、成膜チャンバ19の排気バルブを調節することにより、材料ガスの圧力を調節した。成膜チャンバ19内の雰囲気温度は、23℃にした。基体温度を23℃にして低密度部の成膜を開始し、低密度部の成膜が終了すると、再度、基体温度を23℃にして高密度部の成膜を行った。別の実験から材料ガスの基体への衝突によって、低密度部形成時には、0.5μmの成膜によって基体温度が2.8℃上昇し、高密度部形成時には、0.5μmの成膜によって基体温度が1.4℃上昇することが分かっている。低密度部形成時の成膜速度は、1.9μm/時間、高密度部形成時の成膜速度は、0.7μm/時間であった。実施例サンプル122について密度を測定したところ、ポリパラキシリレン膜の基体から0.5μmの層の密度は、1.08g/cm3であり、表面から0.5μmの層の密度は、1.12g/cm3であった。
2.絶縁性試験
実施例1と同じ方法で、絶縁性試験を行った。その結果を表3に示す。Cu膜の腐食が確認された時点で試験を終了したので、それ以降の試験結果についてはハイフン「−」を表示している。
Figure 2007023350
膜構成が同じである実施例サンプル106と比較例サンプル1、実施例サンプル112と比較例サンプル2を比較すると、何れの場合も実施例サンプルの方が良い結果が得られたことが分かる。
また、低密度部の厚さを1μm以上にした場合に良い結果が得られ、さらに高密度部の厚さも1μm以上にした場合にさらに良い結果が得られた。この両方の厚さが1μm以上の場合、Cu膜に腐食が生じるまでの時間が250時間を超えた。この値は、本実施例のポリパラキシリレン膜が、15〜20V駆動のせん断モード型インクジェットヘッド(産業用・民生用)の電極保護膜として十分な絶縁性を有していることを示している。
3.耐薬品性試験
実施例1と同じ方法で、耐薬品性試験を行った。その結果を表4に示す。表4に示した日数でポリカーボネイト基板にピンホール白化が発生した。
Figure 2007023350
また、表4の結果を図5のグラフに表した。図5のグラフの各系列に付した数値は、低密度部の厚さを示す。従って、4本の系列は、下から順に、低密度部の厚さが0.5μm、1μm、1.5μm、2μmのものに対応する。
図5中の矢印Aは、膜構成が同じである実施例サンプル122と比較例サンプル3との差を示し、矢印Bは、膜構成が同じである実施例サンプル132と比較例サンプル4との差を示す。矢印A,Bが示すように、何れの場合も実施例サンプルの方が良い結果が得られたことが分かる.
また、図5から明らかなように、低密度部及び高密度部の何れの厚さも1μm以上である場合に、ポリカーボネイト基板に白化が発生するまでの日数が30日を超えた。この値は、本実施例のポリパラキシリレン膜が、せん断モード型インクジェットヘッド(産業用・民生用)の保護膜として十分な耐薬品性を有していることを示している。
4.まとめ
以上より、本実施例のポリパラキシリレン膜は、比較例のポリパラキシリレン膜よりも絶縁性及び耐薬品性の両方において優れていることが分かった。また、本実施例のポリパラキシリレン膜は、低密度部及び高密度部の両方の膜厚が1μm以上である場合に絶縁性及び耐薬品性の両方において極めて優れていることが分かった。
本発明の作用の説明に用いる断面図である。 本発明のポリパラキシリレン膜の形成に使用可能な成膜装置の構成図である。 本発明のポリパラキシリレン膜を適用したインクジェットヘッドの構造を示す、インク出射方向から見た断面図である。 本発明の実施例1の耐薬品性試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例2の耐薬品性試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1:基体 3:凹部 5:ポリパラキシリレン膜 7a,7b:凹部の側壁 9:界面 11:昇華加熱ヒーター 13:昇華室 15:熱分解加熱ヒーター 17:熱分解炉 19:成膜チャンバ 21:コールドトラップ 23:ロータリーポンプ 25:液体窒素収容部 31:圧電基板 32:カバー部材 33:接着剤 34:インク室 35:電極 36:ポリパラキシリレン膜

Claims (12)

  1. 基体の温度が20℃以下又は材料ガスの圧力が100mmTorr以上の条件で材料ガスを基体に接触させることによってポリパラキシリレンからなる下部を形成し、
    下部形成時よりも基体温度が高いか、材料ガスの圧力が低い条件で材料ガスを基体に接触させることによって下部を覆うポリパラキシリレンからなる上部を形成するポリパラキシリレン膜の形成方法。
  2. 上部は、下部形成時よりも基体温度が2℃以上高い条件で形成される請求項1に記載の方法。
  3. 上部は、下部形成時よりも材料ガスの圧力が10mmTorr以上低い条件で形成される請求項1に記載の方法。
  4. 材料ガスを基体に接触させる工程を備えるポリパラキシリレン膜の形成方法であって、成膜開始時の基体温度が20℃以下であるか、材料ガスの圧力が100mmTorr以上であり、膜形成中に基体温度を上昇させるか、材料ガスの圧力を低下させることを特徴とするポリパラキシリレン膜の形成方法。
  5. 基体上に形成される下部と、下部を覆う上部からなるポリパラキシリレン膜であって、
    下部は、平均分子量が50万以下又は密度が1.11g/cm3以下であり、
    上部は、下部よりも平均分子量が大きいか密度が高いことを特徴とするポリパラキシリレン膜。
  6. 上部は、下部よりも平均分子量が2万以上大きい請求項5に記載のポリパラキシリレン膜。
  7. 上部は、下部よりも密度が0.01g/cm3以上高い請求項5に記載のポリパラキシリレン膜。
  8. 上部及び下部は、それぞれ厚さが1μm以上である請求項5に記載のポリパラキシリレン膜。
  9. 上部及び下部は、連続的に繋がる請求項5に記載のポリパラキシリレン膜。
  10. 上部及び下部は、非連続である請求項5に記載のポリパラキシリレン膜。
  11. 基体上に形成され、基体側の部分よりも表面側の部分の方が平均分子量が大きいか密度が高く、基体側の部分の平均分子量が50万以下であるか密度が1.11g/cm3以下であるポリパラキシリレン膜。
  12. 請求項1〜11に記載のポリパラキシリレン膜をインクと接する部分に備えたインクジェットヘッド。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008201026A (ja) * 2007-02-21 2008-09-04 Konica Minolta Holdings Inc インクジェットヘッド及びその製造方法
JP2010186788A (ja) * 2009-02-10 2010-08-26 Mitsui Eng & Shipbuild Co Ltd 原子層成長装置および方法
JP2011522129A (ja) * 2008-06-03 2011-07-28 アイクストロン、アーゲー 低圧ガス相の中で薄膜ポリマーを堆積させるための堆積方法
JP2018053341A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 大日本印刷株式会社 ポリパラキシリレン蒸着方法及び蒸着体

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