JP2007020475A - プルラナーゼ活性が低下しているイネ変異体およびイネ変異体の生産方法ならびに当該イネ変異体により合成されるデンプン - Google Patents
プルラナーゼ活性が低下しているイネ変異体およびイネ変異体の生産方法ならびに当該イネ変異体により合成されるデンプン Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】 活性化されたトランスポゾンをイネのゲノムに導入し、当該トランスポゾンがPUL遺伝子に挿入されているイネ変異体を選抜する。得られたイネ変異体は改変されたデンプンを合成する。
【選択図】 なし
Description
Nakamura Y (2002) Plant Cell Physiol 43: 718-725 Smith et al. (1997) Annu Rev Plant Physiol Mol Biol 48: 67-87 Nakamura Y (1996) Plant Sci. 121: 1-18 James et al. (1997) Plant Cell 7: 417-429 Nakamura et al. (1997) Plant J. 12: 143-153 Kubo et al. (1999) Plant Physiol. 121: 399-409 Fujita et al. (2003) Plant Cell Physiol 44: 607-618 Kubo et al. (2005) Plant Physiol 137: 43-56 Dinges et al. (2003) Plant Cell 15: 666-680 Smith et al. (2005) Annu. Rev. Plant. Biol. 56: 73-98
本発明に係るイネ変異体は、PUL遺伝子に変異を有し、野生型と比較してプルラナーゼ活性が低下しているものである。
本発明に係るイネ変異体の生産方法としては、特に限定されるものではないが、例えば活性化されたトランスポゾンをイネのゲノムに導入し、当該トランスポゾンがPUL遺伝子に挿入されているイネ変異体を選抜することにより生産することができる。
ミュータントパネルは、(独)農業生物資源研究所によって開発された日本晴のノックアウトイネ集団であり(細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ41 植物のゲノム研究プロトコール(秀潤社)P66-67, 73-75)、このミュータントパネルから、PUL遺伝子にTos17トランスポゾンが挿入されている系統を選抜した。
PUL遺伝子のエキソン10にTos17が挿入されている系統(以下本明細書において、e10系統と略称することがある。)およびPUL遺伝子のイントロン16にTos17が挿入されている系統(以下、本明細書においてi16系統と略称することがある。)の再分化世代(M0)に稔った種子(M1種子)20粒を播種した。幼植物の葉身からゲノミックDNAを抽出し、これを鋳型にしてイネPUL遺伝子ゲノムDNA上の上記プライマーを用いてPCRを行うことでTos17の挿入と非挿入を確認した。確認は、e10系統については、挿入ホモをプライマーT1F、T2F/10F、11Fで、非挿入ホモを10F、11F/13R、9RでPCRを行い、それぞれの個体の遺伝子型(挿入ホモを-/-、非挿入ホモを+/+と示す)を決定した。また、i16系統については、挿入ホモをプライマーT1F、T2F/1R、2Rで、非挿入ホモを5F、6F/13R、9RでPCRを行い、それぞれの個体の遺伝子型(挿入ホモを-/-、非挿入ホモを+/+と示す)を決定した。開花後、これらの植物を温室に移動し、登熟種子および完熟種子を採取した。
実施例2で選抜したイネ変異体ホモ個体の登熟種子1粒のPUL活性を、Native-PAGE/DBE活性染色法およびPUL活性染色法を用いて行った。開花後10日ないし15日経過後の登熟種子1粒のもみ、胚および果皮を除去し、4倍体積の抽出バッファー(50 mM Imidazol-HCl、 pH 7.4、 12.5% glycerol、 8 mM MgCl2、 500 mM 2-mercaptoethanol)を加え、マイクロチューブ内でプラスチック製ホモジナイザー(グライナー社製)を用いてホモジナイズし、15000 rpm、10 min、4℃で遠心分離して得た上清にNative-PAGE用サンプルバッファー(0.3 M Tris-HCl (pH7.0)、 0.1% ブロモフェノールブルー、50%グリセロール)を1/2体積加えて電気泳動に用いた。電気泳動においては、DBE活性染色用にはジャガイモアミロペクチンを、PUL活性染色の場合はレッドプルランを60℃で溶かし込んだ7.5%アクリルアミドゲルを用いた.フロントが濃縮ゲルを通過するまでは7.5 mA、通過してからは15 mAの定常電流で4℃下で電気泳動し,フロントが出てから30分で電流を止めた。その後,反応液(50 mMクエン酸、 pH 6.0、 50 mM 2-mercaptoethanol)で2回洗浄し(各5分)、反応液を加えて30℃でシーソーで振とうしながら2時間反応させた。反応後,ヨードヨードカリ液(1%KI/0.1%I2)で染色した。さらに、BE活性染色(Nishi et al. (2001) Plant Physiol. 127:459-472)およびSS活性染色(Nishi et al. (2001) Plant Physiol. 127:459-472)も行い、デンプン合成に関連する他の酵素へのPUL活性低下の影響を調べた。
<4−1:胚乳アミロペクチンの鎖長分布解析>
PUL変異体および非挿入ホモ(+/+)の胚乳デンプンのアミロペクチンの鎖長分布を比較した。胚乳デンプンのアミロペクチンの鎖長分布は、O'Shea and Morell(1996. Electrophoresis, 17, 681-688)の方法を参考に以下のようにして解析を行った。PUL変異体および非挿入ホモ(+/+)のM2種子1粒から外内穎および胚を取り除き、ペンチで胚乳を粉砕した後、エッペンドルフチューブ内でプラスチック製ホモジナイザー(グライナー社製)を用いてさらに磨砕し、5 mlのメタノールを加え、10分間煮沸した。2500 x gで10分間遠心分離し、上清を除去し、90% メタノールを5 ml加え2度洗浄した。沈殿に15 μlの5 N 水酸化ナトリウムを加え、5分間煮沸してデンプンを糊化させた。糊化液を氷酢酸9.6μlで中和した後、蒸留水1089 μl、0.6 M 酢酸緩衝液(pH 4.4)100μl、2% アジ化ナトリウム 15μl、P. amyloderamosa イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68, 林原生物化学研究所)3μl(約210 unit)を加え、スターラーバーで撹拌しながら37℃、8時間以上反応した。さらにイソアミラーゼ 3μlを追加して8時間以上反応した後、常温で10000 x gで遠心分離し、上清を脱イオンカラム(AG501-X8(D), Bio-Rad)で濾過した。α-グルカン鎖の非還元末端を蛍光標識するため、Hizukuriら(1981. Carbohydrate Reserch, 94, 205-213)の方法により試料中の糖含量を定量し5 nmol相当の還元末端をもつα-グルカン鎖を遠心濃縮機で乾燥させ、2μlの1-アミノピレン-3,6,8-三硫酸塩(APTS)溶液(2.5% APTS, 15% 酢酸)、2μlのシアン化ホウ素ナトリウム溶液(1 M シアン化ホウ素ナトリウム, 100% テトラヒドロフラン)を添加し、55℃で90分間反応させた。分析時には12.5倍に蒸留水で希釈して用いた。鎖長分布解析は、キャピラリー電気泳動装置(P/ACE MDQ, Beckman Coulters)を用いて行った。グルコース重合度(DP)3以上の各ピーク面積を数値化し、DP50までのピーク面積の合計を100%としたときの各DPの割合(Area %)を算出した。
PUL変異体および非挿入ホモ(+/+)の胚乳デンプンの糊化温度特性を比較した。胚乳デンプンの糊化温度特性は、以下の方法(非特許文献7)で測定した。PUL変異体および非挿入ホモ(+/+)のM2種子のもみおよび胚を除去し、乳鉢で粉砕したものを105℃で2時間乾燥させた。乾燥させた粉末約3 mgに蒸留水9μlを加えたものをアルミ容器に入れて示差走査熱量測定(DSC、セイコーインスツルメンツ社製)に供した。昇温速度は3℃/minで5℃と100℃との間で測定した。
PUL変異体および非挿入ホモ(+/+)の種子の形態を比較した結果を図5に示す。図5に示すように、PUL変異体はe10変異体、i16変異体ともに変化がなかった。日本晴と比べてe10変異体、 i16変異体ともに腹白が増加する傾向にあったが、非挿入ホモ(+/+)も同様に腹白が増加していたので、これはPUL活性の低下が原因ではないと考えられた。また、玄米1粒あたりの平均重量を下表4に示す。
単離したPUL変異体および非挿入ホモ(+/+)の胚乳デンプンの形態と結晶性を走査電子顕微鏡(SEM)観察およびX線回折によって調べた。これらの分析のためのデンプン粒の調製法および分析法は以下の通りである。
Claims (11)
- PUL遺伝子に変異を有し、野生型と比較してプルラナーゼ活性が低下していることを特徴とするイネ変異体。
- トランスポゾンがPUL遺伝子に挿入されているイネ変異体であって、野生型と比較してプルラナーゼ活性が低下していることを特徴とする請求項1に記載のイネ変異体。
- トランスポゾンは、PUL遺伝子のエキソン10またはイントロン16に挿入されていることを特徴とする請求項2に記載のイネ変異体。
- トランスポゾンは、配列番号1に示されるイネ由来のPUL遺伝子において、5457番目の塩基と5458番目の塩基との間、または、9907番目の塩基と9908番目の塩基との間に挿入されていることを特徴とする請求項2または3に記載のイネ変異体。
- 上記トランスポゾンはレトロトランスポゾンであることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載のイネ変異体。
- 上記レトロトランスポゾンはTos17であることを特徴とする請求項5に記載のイネ変異体。
- 改変されたデンプンを合成することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のイネ変異体。
- 改変されたデンプンが、野生型が合成するデンプンと比較して、低下した糊化温度を有することを特徴とする請求項7に記載のイネ変異体。
- 改変されたデンプンを合成するイネ変異体を生産するための方法であって、
活性化されたトランスポゾンをイネゲノムに導入する工程と、
当該トランスポゾンがPUL遺伝子に挿入されているイネ変異体を選抜する工程とを含むことを特徴とするイネ変異体の生産方法。 - 活性化されたトランスポゾンは、Tos17であることを特徴とする請求項9に記載のイネ変異体の生産方法。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のイネ変異体により合成されるデンプン。
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WO2003023024A1 (fr) * | 2001-09-10 | 2003-03-20 | Japan Science And Technology Agency | Synthetases d'amidon |
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