JP2007020441A - コーヒー飲料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱殺菌による香気劣化を避け、淹れ立てのコーヒー香気、特にロースト感に寄与する2−フルフリルチオール等の含硫化合物が保持されたコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】コーヒー抽出液から香気成分を回収し、香気成分を回収した後の抽出液は加熱殺菌し、回収した香気成分は膜濾過により除菌した後、抽出液と香気成分を無菌環境下で混合することにより、淹れ立てのコーヒー香気成分のバランスを保持し、さらにロースト感に寄与する含硫化合物の損失を抑えたコーヒー飲料を製造することができる。

Description

本発明は、コーヒー飲料の製造方法に関するものであり、詳しくは殺菌時の香気成分の損失が抑制された、香りのよいコーヒー飲料の製造方法に関するものである。
コーヒーの香気成分は極めて不安定であるため、各種のコーヒー飲料製品、例えば缶コーヒー飲料等ではその製造工程あるいは保存流通過程で香気が劣化してしまうことが知られている。特に加熱殺菌時における香気の劣化は著しく、コーヒー飲料の淹れ立ての新鮮な香気は大きく損なわれる。なかでもコーヒーのロースト感に寄与する2−フルフリルチオール、メチオナール、3−メルカプト−3−メチルブチル ホーメート等の含硫化合物は、加熱によって著しく減少し、加熱殺菌時におけるコーヒーの香気劣化の主因となっている(非特許文献1、2)。
この問題を解決するために、加熱殺菌したコーヒー抽出液に、膜濾過により除菌した非加熱のコーヒーフレーバーを無菌環境下で添加することにより、加熱による香気の劣化の少ないコーヒー飲料を得る方法が提案されている(特許文献1、2)。しかしながらこれらの方法は、加熱殺菌によるコーヒー香気の劣化を避け、香り豊かなコーヒー飲料を製造するという点では一定の効果はあるものの、加熱殺菌によりコーヒー抽出液に含まれていた香気成分が劣化したところに更に膜濾過除菌したコーヒーフレーバーを添加するため、淹れ立てのコーヒーとは香気成分のバランスが異なってくる。また、コーヒーのロースト感に寄与する含硫化合物についての検討は全くなされていないため、淹れ立ての香気を損なわないコーヒー飲料の製造という観点からは、更なる技術の向上が望まれていた。
熊沢他,"日本食品科学工学会誌",Vol.45, p108-113 (1998) Kenji Kumazawa et al, "Journal of Agricultural and Food Chemistry", Vol.51, p2674-2678 (2003) 特開2001−128620号公報 特開2003−111579号公報
本発明は、加熱殺菌による香気劣化を避け、淹れ立てのコーヒー香気、特にロースト感に寄与する含硫化合物が保持されたコーヒー飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく研究を行った結果、コーヒー抽出液から香気成分を回収し、香気成分を回収した後の抽出液は加熱殺菌し、回収した香気成分は膜濾過により除菌した後、抽出液と香気成分を無菌環境下で混合することにより、淹れ立てのコーヒー香気成分のバランスを保持し、さらにロースト感に寄与する含硫化合物の損失を抑えたコーヒー飲料を製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、コーヒー抽出液から香気成分を回収する工程と、香気成分を回収した後の抽出液を加熱殺菌する工程と、回収した香気成分を膜濾過により除菌する工程と、
加熱殺菌後の抽出液と除菌後の香気成分を無菌条件下で混合する工程とからなる、殺菌工程における香気成分の損失が抑制されたコーヒー飲料の製造方法である。
また、本発明は損失が抑制された香気成分が含硫化合物であることを特徴とする前記コーヒー飲料の製造方法であり、さらに含硫化合物が2−フルフリルチオール、メチオナール、3−メルカプト−3−メチルブチル ホーメート、3−メルカプト−3−メチルブチル アセテートのいずれか1以上であることを特徴とする。
本発明のコーヒー飲料の製造方法によれば、殺菌工程における香気成分、特に2−フルフリルチオール等の含硫化合物の損失が抑制されるので、淹れ立てのコーヒーに近い香りを有するコーヒー飲料を製造できる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用されるコーヒー抽出液は、公知の方法でコーヒー豆から熱水等で抽出して得ることができる。得られた抽出液から香気成分を回収するが、香気成分の回収方法としては特に限定されるものではなく、一般的に用いられる方法を用いることができる。例えば、常圧蒸留法、減圧蒸留法、水蒸気蒸留法、泡沫濃縮法、薄膜蒸留法、気−液向流接触抽出法等を挙げることができるが、加熱による香気成分の劣化を抑える必要があることから、減圧蒸留法又は薄膜蒸留法を用いるのが好ましい。薄膜蒸留等の蒸留法を用いた場合は、香気成分は留出液としてコーヒー抽出液から分離回収される。
香気成分を分離した後のコーヒー抽出液は加熱殺菌工程に供される。加熱殺菌は100℃以下で行う低温殺菌、100℃以上で行う高温殺菌のいずれでもよい。一方、香気成分を含む留出液は膜濾過により除菌される。膜濾過は限外濾過(フィルター孔径0.002〜0.1μm)、精密濾過(フィルター孔径0.05〜1μm)等が用いられるが、菌の除去という目的からフィルター孔径0.45μm以下の膜を用いるのが好ましい。
加熱殺菌された抽出液と、膜除菌された留出液を常法により無菌充填し、目的のコーヒー飲料を得ることができる。
〔実施例〕
焙煎コーヒー豆粉砕物(ブラジル80%、コロンビア20%)120gを95℃のイオン交換水で抽出した後、20℃まで冷却し、1200gの抽出液を得た。この抽出液を連続薄膜蒸留装置に供し、香気成分を多く含有する留出液(327g)と、残りの抽出液(850g)に分離した。そして抽出液に牛乳(市販の無調整牛乳)を200g、砂糖を110g加え、1673gになるように水で希釈調整し、缶に充填、巻き締めを行い、123℃で20分間レトルト殺菌を行った。一方、留出液はメンブランフィルター(日本ポール:FTKDFL 孔径0.2μm)へ通液させることで除菌を行った。最後に除菌した留出液と殺菌した抽出液を配合した。
〔比較例〕
焙煎コーヒー豆粉砕物(ブラジル80%、コロンビア20%)120gを95℃のイオン交換水で抽出した後、20℃まで冷却し、1200gの抽出液を得た。この抽出液に牛乳(市販の無調整牛乳)を200g、砂糖を110g加え、全量が2000gになるように水で希釈調整し、缶に充填、巻き締めを行い、123℃で20分間レトルト殺菌を行った。
〔試験例〕
三菱化学(株)製セパビーズSP−700充填剤を円筒濾紙に詰め、ソックスレー抽出器に設置し、ジクロロメタンにて5回繰り返し洗浄した。洗浄された充填剤30mLを内径2.0cm、高さ52cmのガラスカラムに充填した。カラムは、メタノール、蒸留水の順におのおの200mLを用いて洗浄置換した。次に、実施例および比較例で作成した検体に内部標準としてウンデカン酸メチル0.2mg相当をそれぞれ添加した後、カラムに通液した。続いて、蒸留水200mLで洗浄、ジエチルエーテル:イソペンタン(7:3) 300mLで吸着成分を溶出させて香気抽出物を得た。これを、硫酸ナトリウムで脱水乾燥後、40℃、常圧下にて約5mLまで濃縮し、さらに、窒素気流下にて約300μLまで濃縮することで香気濃縮物を得た。得られた香気濃縮物は、茶褐色で、それぞれの検体の香気の特徴を有していた。このようにして得た香気濃縮物をGC/MS分析に供した。分析条件は以下のとおりである。
・装置; 6890N/5973 inert GC/MS及び7683 オートサンプラー(アジレント社製)
・カラム;DB−WAX(アジレント社製, 長さ60m , 内経0.25mm I.D., 膜厚0.25μm)
・キャリアーガス;ヘリウム
・流速;1.0mL/min.
・カラムオーブン温度;80℃‐210℃、 3℃/min.
・注入口温度;250℃
・スプリット比;30:1
・注入量;1.0μL
GC/MS分析結果より、コーヒーの寄与成分として知られる2−フルフリルチオール、メチオナール、3−メルカプト−3−メチルブチル ホーメート、3−メルカプト−3−メチルブチル アセテートについてその特徴的なマスフラグメントを用いて成分を抽出、定量した。表1及び図1に、本発明の実施例および比較例の成分量を示した。なお、表1の図中記号欄に示すとおり、図1において、aは2−フルフリルチオール、bはメチオナール、cは3−メルカプト−3−メチルブチル ホーメート、dは3−メルカプト−3−メチルブチル アセテートをそれぞれ示している。
Figure 2007020441
表1及び図1に示すように、各香気成分は留出液を膜濾過により除菌した実施例でよく保持されていた。
実施例及び比較例で得られたコーヒー飲料を、全体の香り、コーヒー感(淹れたてのコーヒー風味)、ロースト感、レトルト臭について、28名の専門パネルにより官能評価を行った。評価点は、比較例での強さを4点、比較例に対してかなり強いものを7点、かなり弱いものを1点とした7段階評価とし、各パネルの平均点を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2007020441
表2に示すとおり、回収した香気成分を膜除菌した実施例では、抽出液をそのまま加熱殺菌した比較例に比べ、全体の香りの強さ、コーヒー感、ロースト感がいずれも強い一方、加熱による香味劣化を示すレトルト臭は比較例より弱く、淹れたてのコーヒーの風味がよく保持されていた。
本発明のコーヒー飲料の製造方法によれば、殺菌工程における香気成分の損失が抑制され、淹れたてのコーヒーに近い香りを有するコーヒー飲料を製造できるので、缶入りコーヒー飲料等の製造に好適である。
実施例及び比較例におけるコーヒー飲料中の含硫化合物の成分量を表したグラフである。

Claims (3)

  1. コーヒー抽出液から香気成分を回収する工程と、
    香気成分を回収した後の抽出液を加熱殺菌する工程と、
    回収した香気成分を膜濾過により除菌する工程と、
    加熱殺菌後の抽出液と除菌後の香気成分を無菌条件下で混合する工程と
    からなる、殺菌工程における香気成分の損失が抑制されたコーヒー飲料の製造方法。
  2. 損失が抑制された香気成分が含硫化合物であることを特徴とする請求項1記載のコーヒー飲料の製造方法。
  3. 含硫化合物が2−フルフリルチオール、メチオナール、3−メルカプト−3−メチルブチル ホーメート、3−メルカプト−3−メチルブチル アセテートのいずれか1以上であることを特徴とする請求項2記載のコーヒー飲料の製造方法。
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