JP2007016284A - 工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法 - Google Patents

工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 焼準処理を必要とせずに結晶粒径を微細にすることができる、工具鋼中間素材の製造方法と、これにより得られた工具鋼中間素材を用いた工具鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】 C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼素材を1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行い、該熱間加工終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却後、加熱炉中にて400〜700℃の温度に加熱・保持を行い、次いで工具鋼素材の素材温度を高める加熱を行なって工具鋼素材温度をパーライトノーズから−100℃の温度域に高めて加熱・保持後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織とする工具鋼中間素材の製造方法であり、前述の処理後に、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行って平均結晶粒度番号で6番より細粒にする工具鋼の熱処理方法である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、工具鋼中間素材の製造方法と、前記工具鋼中間素材に対して焼入れ焼戻しを行う工具鋼の製造方法に関するものである。
工具鋼への焼鈍、焼入れ、焼戻しする熱処理方法は多くの提案がなされており、一般的に変態を繰り返すことで結晶粒径の微細化が図られている。熱間加工後にマルテンサイト、ベイナイト変態域まで冷却し、その後Ac3点以上で完全にオーステナイト変態させ、焼鈍を行った後、焼入れ、焼戻しするといった熱処理方法がその例である。
また、焼鈍状態での金属組織は、炭化物をなるべく均一に分散させた金属組織であるほうが好ましいとされる。C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼は、金型をはじめとして多くの工具に用いることができる鋼であるため、最適な熱処理条件にて熱処理を行って金属組織や機械的特性を調整する必要がある。
そして、より経済的に効率よく所望の金属組織や機械的特性を得るために、熱間鍛造に代表される熱間加工の冷却途中で次工程の熱処理に移行する提案もなされている。
例えば特開2000−204414号(特許文献1参照)には、鍛錬からの冷却途中にパーライト変態温度域でパーライト変態させ、更にAc3点以上の温度で1回以上の焼準処理を施した後、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上施すことで強度、靱性ともに優れた、Cを0.25〜0.55%含有する中炭素鋼を製造することが開示されている。
特開2000−204414号公報
上記の特許文献1に示された熱処理方法は、焼準まで行うと結晶粒を微細にできる効果が得られるが、例えば鍛錬からの冷却途中でパーライト化処理を行うため、被熱処理材料の結晶粒界にネット状の炭化物が析出し、その後の焼入れ焼戻しでもネット状炭化物が残存し靱性を阻害するといった問題点があった。そのためこの工程では必ず焼準処理を行いネット状炭化物の解消と変態による結晶粒微細化を図る必要がある。
本発明の目的は、焼準処理を必要とせずに結晶粒径を微細にすることができる、工具鋼中間素材の製造方法と、これにより得られた工具鋼中間素材を用いた工具鋼の製造方法を提供する。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。
本発明は熱間加工後の冷却条件について鋭意検討した結果、冷却過程で以下の2つの重要なポイントがあることを見出した。
(1)900℃付近の強制冷却
(2)パーライトノーズよりも低い温度域で等温保持
上記(1)、(2)の効果としては、
(1)は熱間加工時に固溶していた炭素がその冷却過程において結晶粒界にネット状の炭化物として析出するということを防止し、これらネット状炭化物を解消するためのその後の焼準処理を必要としないという効果がある。
(2)の温度域はパーライトノーズより低い温度域では過冷効果により炭化物の核生成密度が高く、炭素の拡散が遅いため、炭化物を微細に析出することが可能である。また、長時間保持によりオーステナイトを完全に拡散変態させフェライトと炭化物析出組織とする。この組織のままで焼入れ焼戻しを行うことで結晶粒を微細にするという効果がある。
この(1)と(2)の知見を組合わせることで、結晶粒径を微細とするに最適な焼入れ焼戻し前の工具鋼中間素材とすることができ、この工具鋼中間素材を用いて焼入れ・焼戻しを行うことで工具鋼の結晶粒径を微細にできることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼素材を1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行い、該熱間加工終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却した後、加熱炉に工具鋼素材を入材して400〜700℃の温度に加熱・保持を行い、次いで前記400〜700℃の温度に加熱・保持した工具鋼素材の素材温度を高める加熱を行なって工具鋼素材温度をパーライトノーズからマイナス100℃の温度域に高め、該パーライトノーズからマイナス100℃の温度域にて加熱・保持後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織とする工具鋼中間素材の製造方法である。
好ましい工具鋼素材の化学組成は、質量%でSi:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:1.0〜15.0%、Mo:10.0%以下を含有し、更にNi:4.0%以下、V:4.0%以下、W:20.0%以下、Co:10.0%以下、の何れか1種以上を含有して残部は実質的にFeでなる組成とすると良い。
また本発明は上記の工具鋼中間素材の製造方法により得られた工具鋼中間素材を用いて、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行って平均結晶粒度番号で6番より細粒にする工具鋼の製造方法である。
本発明によれば、平均結晶粒度番号で6番より細粒にし、優れた強度・靭性を有する工具鋼を得ることができる。
以下に本発明で規定した理由を図3に示したヒートパターンを用いて詳しく説明する。
先ず、本発明ではC:0.10〜2.00%を含有する工具鋼素材を本発明の対象とする。
C含有量を0.10%〜2.00%とした理由は、C量が0.10%未満では、C量が少なすぎてCが結晶粒内まで拡散せずに結晶粒内に炭化物が析出しなく、2.00%以上では炭化物が過剰となり、靱性を低下させるためである。好ましくはC:0.20〜0.60%である。
そして、上述の工具鋼素材を1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行う(図3には図示なし)。加熱温度は工具鋼素材の塑性加工性を考慮し、完全にオーステナイト組織とするため1050℃以上とした。また、1250℃以上では工具鋼素材が部分的溶融する可能性があるため1050〜1250℃の範囲とした。好ましくは1070〜1170℃の範囲内である。また、加熱・保持の時間は長時間保持するにつれ、オーステナイト結晶粒が粗大に成長すると言ったことを考慮して適宜決定すればよく、3〜10時間程度であれば十分である。
なお、工具鋼素材の熱間加工では自由鍛造、型打鍛造といった熱間鍛造を適用するとよく、熱間加工のその他の条件としては、熱間加工終了温度は工具鋼素材の表面温度が950〜1050℃の範囲であれば良く、鍛造比は熱間加工においてより歪を蓄積させるため5より大きいことが好ましい。
そして、上記の熱間加工終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却を行う(図3中の(1))。
熱間加工終了後の工具鋼素材温度は結晶粒界に炭化物が析出可能な温度にある。熱間加工終了後に過剰に結晶粒界に炭化物が析出した場合、焼入れ焼戻しを行うと、炭化物が結晶粒界に残存し、靱性を阻害するという問題がある。そのため、結晶粒界に炭化物が析出し難い700℃以下の温度域まで冷却を急ぐ必要がある。
この時の冷却は、粒界炭化物のノーズにかからない程度の速さで冷却することとし、工具鋼素材の断面寸法がおおよそ300mm(t)×300mm(w)よりも小さいものは空冷とし、それ以上に大きいものは、ファンにてカゼを当てて強制冷却すると良く、おおよそ25℃/minの速さであれば良い。
そして、上記の冷却により結晶粒界に炭化物が析出し難い700℃以下の温度域まで冷却を行うが、過度に低い温度まで冷却するとオーステナイトがベイナイトに変態する可能性があり、ベイナイト変態してしまうとその後の等温保持にて炭化物の析出を制御できないという問題がある。これを抑制するために、空冷以上での冷却の下限は500℃とした。
次に、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却の後、加熱炉に工具鋼の素材を入材し、400〜700℃の温度に加熱・保持を行う(図3中の(2))。
400〜700℃に限定した理由は700℃より高いと先に述べた通り結晶粒界に炭化物が析出し、400℃より低いとベイナイトに変態する可能性があるためである。なお、加熱・保持の時間は長時間保持すると、その時点でベイナイトに変態する可能性があると言ったことを考慮して適宜決定すればよく、0.5〜5時間程度であれば十分である。この処理により、被熱処理材の中心部までパーライトノーズ以下の温度に均熱化をする。
次に、前記400〜700℃の温度に加熱・保持した工具鋼素材の素材温度を高める加熱を行なって(図3中の(3))工具鋼素材温度をパーライトノーズからマイナス100℃の温度域に高め、該パーライトノーズからマイナス100℃の温度域にて加熱・保持を行い(図3中の(4))、冷却(図3中の(5))して工具鋼中間素材とする。
パーライトノーズからマイナス100℃の温度域としたのは、この範囲内では図1に示すような旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織が得られるためであり、焼鈍後に行う焼入れ焼戻しによって結晶粒微細化を達成するに必要な金属組織に調整するためである。
パーライトノーズより高温側では炭化物がほぼ均一に分散したパーライト組織となり、パーライトノーズからマイナス100℃より低い温度では、パーライト変態が終了するまでの時間が長くなり、旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織を得がたいという問題があり、焼鈍後に行う焼入れ焼戻しによって化粧粒径の微細化がはかれない。そのため、本発明ではパーライトノーズからマイナス100℃の温度域とした。
なお、加熱・保持の時間はパーライト変態開始後、パーライト変態終了まで保持するといったことを考慮して適宜決定すればよく、10〜50時間程度であれば十分であり、本発明で言う焼鈍とは、鍛造終了後の強制冷却からパーライトノーズからマイナス100℃の温度域に加熱・保持後に冷却までを焼鈍とする。
この本発明方法を適用して得られた工具鋼中間素材が有する金属組織のまま焼入れを行うと、これらの炭化物を核として結晶粒界、粒内を問わず新たなオーステナイトが生成される。これにより焼入れ加熱時に、結晶粒が粗大に成長することを抑制でき、焼入れ焼戻し後も細粒を得ることができる。
結晶粒微細化のメカニズムとしては、(1)炭化物を核とした新オーステナイト粒の生成、(2)隣接するフェライト粒の結晶方位が異なることによるオーステナイト粒の粗大成長を抑制しているものと考えている。
具体的には、(1)は炭化物を核として旧オーステナイト粒とは異なる新たなオーステナイト粒が生成されるためお互いに結晶粒の成長を抑制しあうことで細粒を得られ、(2)は低温変態組織(ベイナイト、マルテンサイト組織)をベースとする組織はフェライト組織に方位性があり、オーステナイト化時に逆変態で結晶粒が揃い粗大化しやすいが、高温変態組織(ベイナイト、マルテンサイト変態させない組織)をベースとしたフェライト組織では方位性がなく、オーステナイト化時に粗大にならず、細粒が得られると考えている。
なお、本発明方法を適用して得られた工具鋼中間素材の硬さは300HBW以下とするこができる。そのため、被熱処理材料の硬さが低いため、被熱処理材料の加工性も良い。
なお、この工具鋼中間素材での金属組織はフェライト組織に炭化物を析出させた金属組織に調整されている。フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織とは、図1に示すように旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織であり、このような状態のものをフェライト組織に炭化物を析出させた金属組織と言い、これを確かめるには、金属組織観察用の試験片を切り出し、観察面を鏡面研磨し、腐食し顕微鏡にて直接観察するといった方法で確認すればよい。
次に本発明の工具鋼素材の好ましい組成について説明する。なお、含有量は質量%で表している。
Si:2.0%以下
Siは工具鋼において溶解時の脱酸剤として添加される。しかし、多量に添加すると靱性が低下する。そのため、本発明では2.0%以下とした。好ましくは0.15〜1.20%である。
Mn:2.0%以下
Mnは工具鋼において溶解時の脱酸および脱硫剤として添加される。しかし、多量に添加すると靱性が低下する。そのため、本発明では2.0%以下とした。好ましくは0.30〜1.00%である。
Cr:1.0〜15.0%
Crは工具鋼において焼入れ性を向上させ、引張り強さや靱性を改善するという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では1.0〜15.0%とした。好ましくは1.0〜13.0%である。
Mo:10.0%以下
Moは工具鋼において焼入れ性を向上させる。また、焼戻しにより微細な炭化物を形成し、高温引張り強さを増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では10.00%以下とした。好ましくは0.20〜5.00%である。
Ni:4.00%以下
Niは工具鋼において焼入れ性を向上させ、靱性を改善するという目的で添加される。しかし、多量に添加すると変態点を下げ、高温強度が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは2.0%以下である。
V:4.00%以下
Vは工具鋼において結晶粒を細かくし靱性を向上させる。また、焼戻しにより高硬度の炭窒化物を形成し、引張強度を増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは0.10〜1.10%である。
W:20.00%以下
Wは工具鋼において焼入れ性を向上させる。また、焼戻しにより微細な炭化物を形成し、高温引張り強さを増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは0.10〜1.10%である。
Co:10.00%以下
Coは工具鋼において赤熱硬性を増し、高温引張強度を増大させるという目的で添加される。本発明では10.00%以下とした。
残部は実質的にFe
本発明ではこれら規定する元素以外は実質的にFeとしているが、不可避的に含有する不純物も当然含まれる。また、例えばNb、Tiは、結晶粒を微細化するのに有効な元素であるため、靱性が劣化させない程度の0.20%以下の範囲で含有させても良い。また、Alは炭素の拡散を早くする元素であり、パーライト変態で炭化物の析出を促進させる効果があるため、0.20%以下の範囲で含有させても良い。
次に上述の本発明方法により得られた工具鋼中間素材を用いて、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行うことで図2に示すような平均結晶粒度番号で6番より細粒の工具鋼とすることができる。
Ac3点以上の温度に加熱して焼入れするとしたのは、Ac3点以上に加熱を行わないと完全にオーステナイトに変態せず、正常な焼入れ組織が得られないためである。なお、焼入れ時の保持時間は工具鋼中間素材の内部まで所定温度に達し、完全にオーステナイトに変態し、かつ、オーステナイト粒が粗大に成長しないと言ったことを考慮して適宜決定すればよく、0.5〜3時間程度であれば十分である。
そして、1回以上の焼戻しを行う。焼戻しの回数はオーステナイトが残留することなく焼戻しマルテンサイト組織得ることを考慮して1回以上行うとよい。また、加熱・保持の時間は要求される硬さ、強度を得ると言ったことを考慮して適宜決定すればよく、540〜650℃の温度範囲内で、1〜10時間程度であれば十分である。
この焼入れ、焼戻し熱処理を行うことで平均結晶粒度番号で6番より細粒にすることができる。平均結晶粒度番号で6番以上の細粒が得られると、靱性が改善させるという効果がある。好ましい平均結晶粒度は8番より細粒である。
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
まず工具鋼を溶解し、10Tonの鋼塊を得た。組成を表1に示す。
そして、この鋼塊を3分割し、本発明法で適用するの工具鋼素材と、比較例の工具鋼素材とした。
この工具鋼素材を1100℃に加熱し、8時間保持を行った。そして、熱間鍛造(熱間プレス)にて熱間加工を行った。この時の加工率は18%(鍛造比5.5)とし、350mm(t)×350mm(w)×1500mm(l)に仕上げた。熱間加工終了温度は表面温度が950℃であった。
そして、工具鋼素材の表面温度が550℃となるまでファンにてカゼを吹き当てることによる強制冷却を行い(図3中の(1))、熱間加工時に固溶していた炭素がその冷却過程において結晶粒界にネット状の炭化物として析出するということを防止するために、900℃付近もカゼを吹き当てる強制冷却とした。なお、表面温度は放射温度計を用いて測定した。
その後450℃の加熱炉に工具鋼素材を入材し、450℃の温度で3時間保持を行い(図3中の(2))、次いで前記450℃の温度に加熱・保持した素材の素材温度をパーライトノーズからマイナス100℃の温度域内の700℃(本発明方法1)、725℃(本発明方法2)、パーライトノーズよりも高い温度域の800℃(比較方法)の温度に素材温度を高める加熱を行い(図3中の(3))、20時間保持を行った後(図3中の(4))、炉冷し(図3中の(5))て工具鋼中間素材とした。なお、表1に示す工具鋼のパーライトノーズの温度は775℃であった。
この本発明の工具鋼中間素材及び比較例の工具鋼中間素材から硬さ測定用の試験片を切り出して、ブリネル硬度試験にて硬さ測定を行った。硬さ試験結果を表2に示す。
また、金属組織観察用の試験片を切り出して、金属組織観察を行ったところ、本発明法を適用した金属組織は、図1に示すような旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織であることが確認された。なお、比較例工具鋼中間素材の金属組織は炭化物がほぼ均一に分散したパーライト組織であった。
次に、本発明の製造方法にて得られた工具鋼中間素材及び比較例工具鋼中間素材を用いて、Ac3点以上の温度の1030℃に加熱して焼入れし、その後、600℃にて焼戻しを1回行った工具鋼とした。なお、加熱保持時間は焼入れ時が2時間、焼戻し時は7時間とした。
本発明の工具鋼及び比較例の工具鋼から金属組織観察用の試験片、硬さ測定用の試験片を切り出し、平均結晶粒度、硬さを測定した。また、シャルピー衝撃試験用の試験を切り出し、シャルピー衝撃を測定した。これら試験結果を表3に、金属組織写真を図2に示す。
以上説明したように、本願発明の熱処理方法によれば、熱間加工からの冷却過程で、ファンにて強制冷却を行い、次いでパーライトノーズからマイナス100℃の温度域内にてパーライト変態させ、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織とし、さらにAc3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行うので、平均結晶粒度番号で8番より細粒となり、靱性が大幅に向上する効果がある。
本願発明の熱処理方法によれば、焼入れ、焼戻し後の結晶粒が微細になることから工具鋼の靱性が要求される用途に利用可能である。
本発明法にて得られた焼鈍後の顕微鏡写真である。 本発明法と比較法にて得られた焼入れ・焼戻し後の顕微鏡写真である。 本発明のヒートパターンを示す模式図である。

Claims (3)

  1. C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼素材を1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行い、該熱間加工終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却した後、加熱炉に工具鋼素材を入材して400〜700℃の温度に加熱・保持を行い、次いで前記400〜700℃の温度に加熱・保持した工具鋼素材の素材温度を高める加熱を行なって工具鋼素材温度をパーライトノーズからマイナス100℃の温度域に高め、該パーライトノーズからマイナス100℃の温度域にて加熱・保持後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織とすることを特徴とする工具鋼中間素材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の工具鋼素材は、質量%でSi:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:1.0〜15.0%、Mo:10.0%以下を含有し、更にNi:4.0%以下、V:4.0%以下、W:20.0%以下、Co:10.0%以下、の何れか1種以上を含有して残部は実質的にFeでなることを特徴とする工具鋼中間素材の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の工具鋼中間素材の製造方法により得られた工具鋼中間素材を用いて、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行って平均結晶粒度番号で6番より細粒にすることを特徴とする工具鋼の製造方法。
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