JP2008174820A - 工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法 - Google Patents

工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 結晶粒を微細にすることができる、工具鋼中間素材の製造方法と、これにより得られた工具鋼中間素材を用いた工具鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】 工具鋼素材に熱間加工を行う熱間加工工程と、熱間加工工程終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで冷却し、熱間加工冷却工程後、加熱炉に工具鋼素材を入材して400〜700℃の温度に加熱・保持を行う第1の加熱・保持工程に次いで、工具鋼素材を加熱して、工具鋼素材温度をパーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域に高めた後、その温度域にて保持を行う第2の加熱・保持工程と、第2の加熱・保持工程の後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織を有する工具鋼中間素材とする工程とを含み、パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域にて保持を行う工程は保温槽内にて行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法に関するものである。
工具鋼への焼鈍、焼入れ、焼戻しを行う熱処理方法は多くの提案がなされている。一般的には変態を繰り返すことで結晶粒径の微細化が図られている。具体的には、熱間加工後にマルテンサイト、ベイナイト変態域まで冷却し、その後Ac3点以上で完全にオーステナイト変態させ、焼鈍を行った後、焼入れ、焼戻しするといった熱処理方法がその例である。
また、焼鈍状態での金属組織は、炭化物をなるべく均一に分散させた金属組織であるほうが好ましいとされる。例えば、C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼は、金型をはじめとして多くの工具に用いることができる鋼である。そのため、工具鋼には最適な熱処理条件にて熱処理を行って金属組織や機械的特性を調整する必要がある。
そして、より経済的に効率よく所望の金属組織や機械的特性を得るために、熱間鍛造に代表される熱間加工の冷却途中で次工程の熱処理に移行する提案もなされている。
例えば、Cを0.25〜0.55%含有した中炭素鋼を製造する方法として、特開2000−204414号(特許文献1参照)がある。この提案は、鍛錬からの冷却途中にパーライト変態温度域でパーライト変態させ、更にAc3点以上の温度で1回以上の焼準処理を施した後、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上施すことで強度、靱性ともに優れた中炭素鋼を製造することが開示されている。
特開2000−204414号公報
上記の特許文献1に示された熱処理方法を用いて結晶粒を微細化するには、焼準処理まで行えば、結晶粒を微細にできる効果を得ることができる。
特許文献1の方法では、鍛錬からの冷却途中でパーライト化処理を行うため、被熱処理材料の結晶粒界にネット状の炭化物が析出する。結晶粒界に析出したネット状の炭化物は、その後の焼入れ焼戻しでも残存し続けて靱性を阻害するといった問題点を生じる。そのため、特許文献1の方法では、ネット状炭化物の解消と変態による結晶粒微細化を図る目的で、焼準処理を必須としていた。
また、特許文献1をはじめとする従来の方法においては、所定の温度で保持を行う熱処理には、加熱炉を用いて行われている。この熱処理の一部でも、加熱炉を使用せずに所望の熱処理の目的が達成できれば、経済的に有利となる。
本発明の目的は、焼準処理を必要とせずに結晶粒を微細にすることができる、工具鋼中間素材の製造方法と、これにより得られた工具鋼中間素材を用いた工具鋼の製造方法を提供することを第一の目的とし、更に、従来の加熱炉を用いた熱処理と同じ効果を、保温槽を用いることで達成することを第二の目的とする、工具鋼中間素材の製造方法及び工具鋼の製造方法を提供する。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。
本発明者らは、熱間加工後の冷却条件について鋭意検討した結果、冷却過程で以下の2つの重要なポイントがあることを見出した。
重要なポイント1:900℃付近の強制冷却、
重要なポイント2:パーライトノーズよりも低い温度域で保持。
上記重要なポイント1及び2の効果としては、
重要なポイント1の900℃付近の強制冷却は、熱間加工時に固溶していた炭素がその冷却過程において結晶粒界にネット状の炭化物として析出するのを抑制することができる。900℃付近の強制冷却によって、ネット状炭化物を解消するための焼準処理が必要なくなるという効果がある。
重要なポイント2のパーライトノーズよりも低い温度域では、過冷効果により炭化物の核生成密度が高く、炭素の拡散が遅いため、炭化物を微細に析出することが可能である。また、長時間保持によりオーステナイトを完全に拡散変態させフェライトと炭化物析出組織とすることができる。フェライトと炭化物析出組織のままで焼入れ焼戻しを行うことで結晶粒を微細にするという効果がある。
上述の重要なポイント1と重要なポイント2の知見を組合わせることで、結晶粒を微細とするに最適な焼入れ焼戻し前の工具鋼中間素材とすることが可能となる。そして、前記の工具鋼中間素材を用いて焼入れ・焼戻しを行うことで工具鋼の結晶粒径を微細にできる。
そして、重要なポイント2のパーライトノーズよりも低い温度域で保持する際、保温槽内で処理を行っても、加熱炉を用いた場合と同様の効果を得ることがきることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼素材を、1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行う熱間加工工程と、
前記熱間加工工程終了後、前記工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、
前記熱間加工冷却工程の後、加熱炉に前記工具鋼素材を入材して400〜700℃の温度に加熱・保持を行う第1の加熱・保持工程と、
前記第1の加熱・保持工程に次いで、前記工具鋼素材を加熱して、工具鋼素材温度をパーライトノーズと該パーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域に高めた後、前記パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域にて保持を行う第2の加熱・保持工程と、
前記第2の加熱・保持工程の後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織を有する工具鋼中間素材とする工程とを含み、
前記第2の加熱・保持工程のうち、前記パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域にて保持を行う工程は、保温槽内にて行う工具鋼中間素材の製造方法である。
好ましくは、前記工具鋼素材の重量が、100kg以上である工具鋼中間素材の製造方法である。
本発明で適用する工具鋼素材は、C:0.10〜2.0%、質量%でSi:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:1.0〜15.0%、Mo:10.0%以下を含有し、更にNi:4.0%以下、V:4.0%以下、W:20.0%以下、Co:10.0%以下、の何れか1種以上を含有して残部は実質的にFeでなることが望ましい。
更に本発明は、上述の工具鋼中間素材の製造方法で得られた工具鋼中間素材に、焼入れ・焼戻しを行う工具鋼の製造方法である。
好ましくは、工具鋼中間素材を、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行って平均結晶粒度番号で6番より細粒にする工具鋼の製造方法である。
本発明によれば、焼入れ焼戻し後の平均結晶粒度番号を、6番より細粒でき、優れた強度・靭性を有する工具鋼を得ることができる。また、熱処理工程の一部を保温槽内での処理しても、加熱炉を用いた処理と同等の効果を得ることができ、経済的に有利である。
以下に本発明で規定した理由を図1に示したヒートパターンを用いて詳しく説明する。
先ず、本発明ではC:0.10〜2.00%を含有する工具鋼素材を本発明の対象とする。
C含有量を0.10%〜2.00%とした理由は、C量が0.10%未満では、C量が少なすぎてCが結晶粒内まで拡散せずに結晶粒内に炭化物が析出しない。一方、2.00%以上では炭化物が過剰となり、靱性を低下させる。好ましくはC:0.20〜0.60%である。
そして、C:0.10〜2.00%を含有した工具鋼素材を、1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行う熱間加工工程を行う(図1には図示なし)。加熱温度は、工具鋼素材の塑性加工性を考慮し、完全にオーステナイト組織とするため1050℃以上とした。また、1250℃以上では工具鋼素材が部分的溶融する可能性があるため、1050〜1250℃の範囲とした。好ましくは1070〜1170℃の範囲内である。なお、熱間加工工程中に、工具鋼素材を加熱・保持を行う場合、加熱・保持の時間が長時間となるにしたがって、オーステナイト結晶粒が粗大に成長する。そのため、加熱・保持の時間は、オーステナイト結晶粒の成長を考慮して適宜決定すればよく、3〜10時間程度であれば十分である。
なお、工具鋼素材の熱間加工では、例えば、自由鍛造、型打鍛造といった熱間鍛造を適用するとよい。熱間鍛造の条件としては、熱間加工終了温度は工具鋼素材の表面温度が950〜1050℃の範囲であれば良く、鍛造比は熱間加工においてより歪を蓄積させるため5より大きいことが好ましい。
そして、上記の熱間加工工程終了後、工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却を行う(図1中の(1))。炭化物析出温度を図1に線Aで示している。
熱間加工終了後の工具鋼素材温度は結晶粒界に炭化物が析出可能な温度にある。熱間加工終了後の結晶粒界に、過剰に炭化物が析出した場合、焼入れ焼戻しを行った後も炭化物が結晶粒界に残存し、靱性を阻害するという問題がある。そのため、結晶粒界に炭化物が析出し難い700℃以下の温度域まで冷却を急ぐ必要がある。
この時の冷却は、連続冷却した時に結晶粒界に炭化物が析出する領域にかからない程度の速さで冷却することとする。冷却速度は、おおよそ25℃/minの速さであれば良い。例えば、工具鋼素材の断面寸法がおおよそ300mm(t)×300mm(w)よりも小さいものは空冷でも十分である。断面寸法がおおよそ300mm(t)×300mm(w)よりも大きいものは、例えば大型扇風機を用いて強制冷却すると良い。
そして、上記の冷却により結晶粒界に炭化物が析出し難い700℃以下の温度域まで冷却を行うが、過度に低い温度まで冷却するとオーステナイトがベイナイトに変態する可能性がある。金属組織がベイナイトに変態してしまうと、その後の等温保持にて炭化物の析出を制御できないという問題や、焼入れ加熱時に結晶粒が粗大化し易いといった問題がある。これを抑制するために、工具鋼素材の表面温度の下限を500℃とする。
上述の冷却工程の後に、加熱炉に工具鋼の素材を入材し、400〜700℃の温度に加熱・保持を行う第1の加熱・保持工程を施す(図1中の(2))。この処理は、工具鋼の素材の中心部までパーライトノーズ以下の温度に均熱化をする目的で行う。
第1の加熱・保持の温度を400〜700℃に限定した理由は、700℃より高い温度になると、先述したように結晶粒界に炭化物が析出する。また、400℃より低い温度であると、金属組織がベイナイトに変態する可能性があるためである。
なお、加熱・保持の時間を過度に長時間とすると、加熱・保持の最中にベイナイトに変態する可能性がある。そのため、工具鋼の素材の中心部までパーライトノーズ以下の温度に均熱化しつつ、金属組織をベイナイトに変態させない時間を適宜決定すればよい。例えば、加熱・保持の時間としては、0.5〜5時間程度であれば十分である。
第1の加熱・保持工程に続いて、工具鋼素材を加熱し(図1中の(3))、工具鋼素材温度をパーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域に高める。その後、加熱炉から工具鋼素材を取出して工具鋼素材を保温槽に入材する。
保温槽に入材した工具鋼素材は、工具鋼素材自身の熱によって復熱する。なお、復熱とは、工具鋼素材を保温槽に入材することで、工具鋼素材内部からの熱伝導と、保温槽壁からの輻射熱により工具鋼素材表面温度を上昇させ、工具鋼素材内部温度と工具鋼素材表面温度とを減少させるものである。
この温度域にて保温槽によって所定の温度域に保持し、第2の加熱・保持工程(図1中の(4))とする。なお、本発明においては、保温槽には加熱装置が設けられていないため、保温槽入材前に、工具鋼素材を1〜5時間程度加熱して、工具鋼素材の均熱化をはかるのが望ましい。その後、第2の加熱・保持工程の後に工具鋼素材を冷却(図1中の(5))して工具鋼中間素材とする。
本発明において、第2の加熱・保持工程の温度をパーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域とした第一の理由は、この温度範囲内では旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織が得られるためである。旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織とすることで、焼鈍後に行う焼入れ焼戻しによって結晶粒微細化の達成が可能となる。
第2の加熱・保持工程の温度が、パーライトノーズより高温側では炭化物がほぼ均一に分散したパーライト組織となる。一方、パーライトノーズよりも100℃低い温度よりも低温では、パーライト変態が終了するまでの時間が長くなり、旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織を得がたいという問題がある。そのため、本発明ではパーライトノーズとパーライトノーよりも100℃低い温度との間の温度域とした。
また、本発明において、第2の加熱・保持工程の温度をパーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域とした第二の理由は、保温中に工具鋼素材の金属組織が変態する時に生じる発熱を利用する。すなわち、本発明においては工具鋼素材の変態潜熱を利用して工具鋼素材を一定の範囲の温度と時間にて保温して、前述の旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織に調整させるためである。
この時、工具鋼素材の重量を大きくすることにより、工具鋼素材の熱量が増加し保温槽内での工具鋼素材の温度低下を抑制でき、工具鋼素材をパーライト変態終了させるに十分な保持時間とすることができる。
そのために望ましい工具鋼素材の重量は100kg以上であり、好ましくは300kg以上、更に好ましくは500kg以上である。
また、保温槽内の工具鋼素材充填率は15%以上であれば、上述した本発明の効果をより確実に得ることができる。より好ましくは30%以上である。
これは、鋼材充填率が15%以上であれば、鋼材の熱量が大きいため、復熱までの時間が短くて済み、パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域で余裕を持った保温効果が得られるためである。逆に15%未満であれば、装入量が少ないために不経済であり、鋼材の熱量が少ないために復熱までに時間がかかり、さらに保温槽内の断熱効果を高めないといけない場合があるためである。
一方、好ましい上限は95%であり、100%となると工具鋼素材と同寸法の保温槽が必要であり、挿入する工具鋼素材寸法が決定してしまうため、使い勝手が悪くなる。そのため、好ましい上限は95%とすると良い。
ところで、本発明で言う保温槽とは、鋼材を覆う箱状や蓋状のものを言う。
この保温槽は加熱源を有さず、例えば、箱状や蓋状の内部に断熱材を設けて密閉空間を構成し、例えば保温槽の一部に例えば熱伝対温度計を差し込む穴や、保温槽内部の鋼材の色合いを目視で確認する穴等を一部に設けても差し支えなく、必ずしも完全に外気と遮断する密閉空間を形成する必要はない。
保温槽の構造は、例えば図2で正面図と側面図の模式図を示すような、保温槽台(6)に工具鋼素材(7)を置き、保温槽台(6)に保温槽上蓋(8)を被せて工具鋼素材(7)を覆う密閉空間を形成する構造の保温槽(9)としても良いし、例えば図3で正面図と側面図の模式図を示すような、保温槽下蓋(10)の内部に工具鋼素材(7)を置き、保温槽上蓋(8)を被せて工具鋼素材(7)を覆う密閉空間を形成する構造の保温槽(9)としても良いし、図4で示すような、保温槽台(6)に工具鋼素材(7)を置き、レール(11)を走行可能な移動車輪(12)付きの保温槽(9)を矢印方向に走行させて工具鋼素材(7)を覆う密閉空間を形成する台車型構造で有ってもよい。この場合、保温槽(9)を固定し、保温槽台の方に移動車輪を設けて保温槽台を移動させても良い。
この本発明方法を適用すれば、旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織を持つ工具鋼中間素材が得られる。そして、旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織のまま焼入れを行うと、これらの炭化物を核として結晶粒界、粒内を問わず新たなオーステナイトが生成される。これにより焼入れ加熱時に、結晶粒が粗大に成長することを抑制でき、結晶粒の微細化が達成できる。焼入れ後に行う焼戻しを行った後も細粒を維持することができる。
結晶粒微細化のメカニズムとしては、炭化物を核とした新オーステナイト粒の生成、及び、隣接するフェライト粒の結晶方位が異なることによるオーステナイト粒の粗大成長を抑制、の2つが関係しているものと考えている。
具体的には、本発明では、金属組織をフェライト組織としている。フェライト組織は、結晶粒の向きがランダムとなっていることから、焼入れ加熱時に、それぞれの結晶粒が、互いに成長を抑制し合って、オーステナイト結晶粒の微細化がはかれると考えている。また、結晶粒微細化のメカニズムのもう一つは、炭化物を核として新たなオーステナイト粒が生成される。それらの結晶粒が互いに粒の成長を抑制しあうことで結晶粒が細粒化できる。
炭化物を核とする結晶粒微細化のメカニズムは、炭化物が密な領域は、0.1〜0.5μmと微細な炭化物が数多く存在し、炭化物が疎な領域は炭化物が密な領域に対し炭化物の個数が少ないため、焼き入れ加熱することにより、炭化物が基地(マトリックス)に固溶して、基地内で炭素濃度に差が生じる。炭化物濃度は、炭化物が密な領域が炭化物が疎な領域より高くなるため、炭化物が密な領域の変態点は、炭化物が疎な領域の変態点より低くなる。そのため、炭化物が密な領域から優先的にオーステナイトへ変態する。
炭化物が密な領域のオーステナイトは粒成長しようとするが、微細な炭化物が多数析出しているため、焼き入れ加熱により生成するオーステナイトの核生成サイトも多く、お互いの結晶粒が粒成長を抑制しあう。次いで炭化物が疎な領域もオーステナイトへ変態し、オーステナイトの成長を抑制し、結晶粒の微細化が達成できると考えている。
なお、炭化物微細化機構が得られるに必要な炭素濃度と、部分的な炭素濃度の差をより確実に実現するには、炭化物が密な領域及び炭化物が疎な領域ともに、固溶し易い大きさの炭化物が主体となっているのが良く、10000倍で観察した時に確認できる炭化物総個数の80%以上(好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上)が0.1〜0.5μmの大きさであるのが良い。
また、例えば、金属組織を電子顕微鏡で10000倍で観察すると、100μm中に円相当径0.1〜0.5μmの炭化物個数が300個以上形成されている炭化物が密な領域(旧オーステナイト粒界近傍)と、該炭化物が密な領域に対して、100μm中に円相当径0.1〜0.5μmの炭化物個数が100個以上少ない炭化物が疎な領域(旧オーステナイト粒内部)とが混在する金属組織にすることにより、部分的な炭素濃度の濃度差が顕著になり、特に好ましい。
以上のように、炭化物微細化機構が得られるに必要な炭素濃度と、部分的な炭素濃度の差と共に、固溶し易い大きさの炭化物個数が特定個数以上の差をもって存在することが望まれることから、本発明では、旧オーステナイト粒界近傍は炭化物が密に、旧オーステナイト粒内部は炭化物が疎に析出した金属組織とするのである。
次に本発明の工具鋼素材の好ましい組成について説明する。なお、含有量は質量%で表している。Cについては上述したので、Cの説明は割愛する。
Si:2.0%以下
Siは工具鋼において溶解時の脱酸剤として添加される。しかし、多量に添加すると靱性が低下する。そのため、本発明では2.0%以下とした。好ましくは0.15〜1.20%である。
Mn:2.0%以下
Mnは工具鋼において溶解時の脱酸および脱硫剤として添加される。しかし、多量に添加すると靱性が低下する。そのため、本発明では2.0%以下とした。好ましくは0.30〜1.00%である。
Cr:1.0〜15.0%
Crは工具鋼において焼入れ性を向上させ、引張り強さや靱性を改善するという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では1.0〜15.0%とした。好ましくは1.0〜13.0%である。
Mo:10.0%以下
Moは工具鋼において焼入れ性を向上させる。また、焼戻しにより微細な炭化物を形成し、高温引張り強さを増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では10.00%以下とした。好ましくは0.20〜5.00%である。
Ni:4.00%以下
Niは工具鋼において焼入れ性を向上させ、靱性を改善するという目的で添加される。しかし、多量に添加すると変態点を下げ、高温強度が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは2.0%以下である。
V:4.00%以下
Vは工具鋼において結晶粒を細かくし靱性を向上させる。また、焼戻しにより高硬度の炭窒化物を形成し、引張強度を増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは0.10〜1.10%である。
W:20.00%以下
Wは工具鋼において焼入れ性を向上させる。また、焼戻しにより微細な炭化物を形成し、高温引張り強さを増大させるという目的で添加される。しかし、多量に添加すると逆に靱性が低下する。そのため本発明では4.00%以下とした。好ましくは0.10〜1.10%である。
Co:10.00%以下
Coは工具鋼において赤熱硬性を増し、高温引張強度を増大させるという目的で添加される。本発明では10.00%以下とした。
残部は実質的にFe
本発明ではこれら規定する元素以外は実質的にFeとしているが、不可避的に含有する不純物も当然含まれる。また、例えばNb、Tiは、結晶粒を微細化するのに有効な元素であるため、靱性が劣化させない程度の0.20%以下の範囲で含有させても良い。また、Alは炭素の拡散を早くする元素であり、パーライト変態で炭化物の析出を促進させる効果があるため、0.20%以下の範囲で含有させても良い。
次に上述の本発明方法により得られた工具鋼中間素材を用いて、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行うことで平均結晶粒度番号で6番より細粒の工具鋼とすることができる。
Ac3点以上の温度に加熱して焼入れするとしたのは、Ac3点以上に加熱を行わないと完全にオーステナイトに変態せず、正常な焼入れ組織が得られないためである。なお、焼入れ時の保持時間は工具鋼中間素材の内部まで所定温度に達し、完全にオーステナイトに変態し、かつ、オーステナイト粒が粗大に成長しないと言ったことを考慮して適宜決定すればよく、0.5〜3時間程度であれば十分である。
焼入れした中間素材は、1回以上の焼戻しを行う。焼戻しの回数はオーステナイトが残留することなく焼戻しマルテンサイト組織得ることを考慮して1回以上行うとよい。また、加熱・保持の時間は要求される硬さ、強度を得ると言ったことを考慮して適宜決定すればよく、540〜650℃の温度範囲内で、1〜10時間程度であれば十分である。
この焼入れ、焼戻し熱処理を行うことで平均結晶粒度番号で6番より細粒にすることができる。平均結晶粒度番号で6番以上の細粒が得られると、靱性が改善させるという効果がある。好ましい平均結晶粒度は8番より細粒である。
以上、説明した本発明によれば、焼入れ焼戻し後の平均結晶粒度番号を、6番より細粒でき、優れた強度・靭性を有する工具鋼を得ることができる。また、熱処理工程の一部を保温槽内での処理しても、加熱炉を用いた処理と同等の効果を得ることができ、経済的に有利である。
本発明方法を適用して得られた工具鋼中間素材の硬さは300HBW以下とすることができる。そのため、被熱処理材料の硬さが低いため、優れた加工性を付与することができる。
本発明の一例を示すヒートパターンの模式図である。 本発明で用いる保温槽の一例を示す模式図である。 本発明で用いる保温槽の一例を示す模式図である。 本発明で用いる保温槽の一例を示す模式図である。
符号の説明
1. 熱間加工後の冷却工程
2. 第1の加熱・保持工程
3. 加熱工程
4. 第2の加熱・保持工程
5. 第2の加熱・保持工程後の冷却工程
6. 保温槽台
7. 工具鋼素材
8. 保温槽上蓋
9. 保温槽
10. 保温槽下蓋
11. レール
12. 移動車輪

Claims (5)

  1. C:0.10〜2.0%を含有する工具鋼素材を、1050〜1250℃に加熱して熱間加工を行う熱間加工工程と、
    前記熱間加工工程終了後、前記工具鋼素材の表面温度が500〜700℃となるまで空冷以上の冷却速度で冷却する冷却工程と、
    前記熱間加工冷却工程の後、加熱炉に前記工具鋼素材を入材して400〜700℃の温度に加熱・保持を行う第1の加熱・保持工程と、
    前記第1の加熱・保持工程に次いで、前記工具鋼素材を加熱して、工具鋼素材温度をパーライトノーズと該パーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域に高めた後、前記パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域にて保持を行う第2の加熱・保持工程と、
    前記第2の加熱・保持工程の後に冷却を行って、フェライト組織に炭化物を析出させた金属組織を有する工具鋼中間素材とする工程とを含み、
    前記第2の加熱・保持工程のうち、前記パーライトノーズとパーライトノーズよりも100℃低い温度との間の温度域にて保持を行う工程は、保温槽内にて行うことを特徴とする工具鋼中間素材の製造方法。
  2. 前記工具鋼素材の重量が、100kg以上であることを特徴とする請求項1に記載の工具鋼中間素材の製造方法。
  3. 前記工具鋼素材は、C:0.10〜2.0%、質量%でSi:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:1.0〜15.0%、Mo:10.0%以下を含有し、更にNi:4.0%以下、V:4.0%以下、W:20.0%以下、Co:10.0%以下、の何れか1種以上を含有して残部は実質的にFeでなることを特徴とする請求項1または2に記載の工具鋼中間素材の製造方法。
  4. 請求項1乃至4の何れかに記載の工具鋼中間素材の製造方法で得られた工具鋼中間素材に、焼入れ・焼戻しを行うことを特徴とする工具鋼の製造方法。
  5. 工具鋼中間素材を、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れし、その後、焼戻しを1回以上行って平均結晶粒度番号で6番より細粒にする請求項5に記載の工具鋼の製造方法。
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