JP2007013045A - 窒化ガリウム系化合物半導体発光素子 - Google Patents

窒化ガリウム系化合物半導体発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 光取り出し効率に優れた反射型正極を備えた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を提供すること。
【解決手段】 基板上にn型半導体層、発光層およびp型半導体層からなる窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造体を有する発光素子において、p型半導体層上に設けられた正極が透明材料層および該透明材料層上に設けられた反射性金属層からなる反射型正極であることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
【選択図】 図1

Description

本発明は窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に関し、特に光取り出し効率に優れた反射型の正極を備えたフリップチップ型窒化ガリウム系化合物半導体発光素子に関する。
近年、短波長光発光素子用の半導体材料としてGaN系化合物半導体材料が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶を始めとして、種々の酸化物やIII−V族化合物を基板として、その上に有機金属気相化学反応法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
GaN系化合物半導体材料の特性として、横方向への電流拡散が小さいことがある。そのために、電極直下の半導体にしか電流が注入されず、発光層で発光した光は電極に遮られて外部に取り出されない。そこで、この系の発光素子の正極としては、一つには透明電極が用いられ、正極を通して光が取り出される。一方、フリップチップと呼ばれる、反射型の正極を用いて発光した光を基板側から取り出す方式も採用されている。
従来のフリップチップ型素子用の正極は、PtやNiなどのコンタクト金属とRh、Agなどの反射金属を組み合わせた層構造(例えば特許文献1参照)であった。
一方、発光素子の外部量子効率は、光取出し効率と内部量子効率を掛け合わせたものとして表される。内部量子効率とは、素子に注入した電流のエネルギーのうち、光に変換される割合である。一方の光取り出し効率とは、半導体結晶内部で発生した光の内、外部へ取り出すことのできる割合である。
透明電極を用いた方式において、半導体結晶から大気中への光取出し効率を増大させる手法として、半導体の光取り出し面に凹凸加工を施す技術がある。半導体面にこのような加工を施すには、ドライエッチング、ウエットエッチングによる方法や、ダイシング、ダイヤモンド針によるスクライビング、レーザスクライビングなどによる方法が採られる。しかし半導体材料に加工を施すことは、半導体層に負荷を掛けダメージを残すため、光取出し効率を向上させても、内部量子効率を減少させてしまい、発光強度の増大が得られなかった。さらに、場合によってはリーク電流の発生など発光素子の破壊を伴って、発光素子の歩留まりが低下することがあった。
そこで、光取り出し効率を増大させるための凹凸を設ける層を半導体層上に形成し、光取出し効率を向上させる技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、半導体層そのものに凹凸加工を施すのではなく、半導体層上の透明の材料からなる層に凹凸加工を施すので、半導体にダメージを与えることなく光取り出し効率の増大を図ることができる。しかしながら、この特許文献2は、あくまでも透光性電極を使用した型の素子についての発明である。また、この特許文献2には、凹凸を設ける層を構成する透明材料として、ポリカーボネイト、窒化シリコン、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、硫化亜鉛および酸化ビスマスなどが開示されている。
また、一般的な半導体素子のような、薄膜の積層構造の場合、光取り出し効率を下げている要因の一つには多重反射がある。基板の表面・裏面、誘電率の異なる層の界面、および反射膜を形成した面等で多重反射が生じ、発光が透明材料内を往復する間に、材料による吸収などで減衰してしまう。
フリップチップの場合、反射型の電極と半導体/基板の界面で多重反射が生じて、光取り出し効率を下げている。そこでいずれかの反射面を凹凸とし、多重反射を回避する構造を作製することが望まれる。
方法の一つは、結晶を成長させる基板を凹凸の表面とし、基板と半導体の界面を凹凸面とする方法である(例えば特許文献3参照)。しかし、この方法では結晶成長の基板を凹凸としなければならないため、安定してウエーハ内で均一に、ミラー状の綺麗な結晶膜を得ることが難しくなる。反対に、反射電極面を凹凸とする方法もある(例えば特許文献4参照)。しかし、従来のフリップチップ電極では、コンタクト金属が反射金属を兼ねているか、またはコンタクト金属がごく薄いために、反射電極面を凹凸にするためには、半導体の表面に加工を施す必要があった。半導体表面に加工を施すことは、前述したように内部量子効率へのダメージが生じて、思うように発光の出力は上がらない。
特開2000−183400号公報 特開2000−196152号公報 特開2002−164296号公報 米国特許第6,563,142号明細書
本発明の目的は、上述の問題点を解決し、光取り出し効率に優れた反射型正極を備えた窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を提供することである。
本発明において透明あるいは透光性とは、300〜600nmの波長領域における光に対して透光性であることを意味する。
本発明は、下記の発明を提供する。
(1)基板上にn型半導体層、発光層およびp型半導体層からなる窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造体を有する発光素子において、p型半導体層上に設けられた正極が透明材料層および該透明材料層上に設けられた反射性金属層からなる反射型正極であることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(2)透明材料層が導電性材料を含む上記1項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(3)透明材料層が非導電性材料を含む上記1または2項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(4)透明材料層がp型半導体と接触しており、正極コンタクト層として機能している上記2項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(5)透明材料層とp型半導体との間に、正極コンタクト層を有する上記1〜3項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(6)透明材料層が、ITO、TiO2、ZnO、ZnS、Bi23、MgO、ZnAlOおよびSnO2からなる群より選ばれた少なくとも一種の材料からなる上記2〜5項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(7)透明材料層が、ITO、ZnO、MgO、ZnAlOおよびSnO2からなる群より選ばれた少なくとも一種の材料からなる上記6項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(8)反射性金属層が、Ag、Al、Fe、Cr、Ti、Co、Ni、Pd、Os、Ru、Pt、RhおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる上記1〜7項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(9)反射性金属層が、Ag、Al、Fe、Pt、RhおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる上記8項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(10)反射性金属層が、AgまたはAlから選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる上記9項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(11)反射性金属層の透明材料層側の表面が凹凸を有する上記1〜10項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(12)透明材料層の反射性金属層側の表面が凹凸を有する上記11項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(13)凹凸の形状がストライプ状である上記11または12項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(14)凹凸の形状がドット状または格子状である上記11または12項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(15)凹凸の形状がランダム状である上記11または12項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(16)凹凸が曲面で構成されている上記11〜15項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(17)凹凸が基板面に対して傾斜した平面で構成されている上記11〜15項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(18)傾斜した平面が、基板面に対して5度から85度の角度を成す上記17項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(19)凹凸の高低差が0.01〜10μmである上記11〜18項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
(20)上記1〜19項のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子からなるランプ。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、半導体層の結晶性が良好であり、かつ、発光層で発光した光が素子内で多重反射することなく効率よく外部に取り出され、光取り出し効率に優れているので、極めて大きな発光出力を有する。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は、フリップチップタイプの素子構造であり、正極は透明材料層と反射性金属層からなっている。透明材料層には、ITOおよびZnOなどの導電性透明酸化物を使用できる。また、透明材料層には、SiO2およびSiNなどの非導電性透明材料を用いることもでき、その場合は、半導体に接して形成され、半導体と電気的に接触する正極コンタクト層が必須となる。
また、該透明材料層の半導体とは反対側に反射性金属層が形成されていて、透明材料層の表面に施された凹凸の加工によって、反射性金属層の光反射面は凹凸の形状を持っている。即ち、半導体層自体ではなく、半導体層または正極コンタクト層上に形成された透明材料層に凹凸加工を施した上で反射性金属層を形成することにより、内部量子効率をさげることなく、光取出し効率を向上することが可能となった。
加工を施すための透明材料層は、正極コンタクト層を兼ねることもできる。重要なことは、透明材料層が、充分な透光性を有しており、ある程度の膜厚を有していて、多重反射を回避することができるような凹凸を形成できることである。透明材料層の膜厚としては、50nmから10μmあることが望ましい。
本明細書で用いる透明および透光性という用語は、必ずしも100%の光透過率を全波長域で発揮することを意味するものではなく、半導体内部で発生した光を外部に取り出す機能を有することを意味する。従って、発光波長における光透過率にして50%以上であるように、材料と膜厚を制御して作製した膜に対して、この用語を使用する。
図1は、実施例1で作製された本発明のフリップチップ型窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図である。10がフリップチップ用の正極であり、正極コンタクト層を兼ねた透明材料層12、反射性金属層13、オーバーコート層14およびボンディング層15から構成されている。導電性の透明材料(実施例1ではITO)からなる正極コンタクト層を兼ねた透明材料層12の最表面に凹凸加工処理が施されている。1は基板である。2はGaN系化合物半導体層であり、n型半導体層3、発光層4およびp型半導体層5から構成される。6はバッファ層であり、20は負極である。
この場合の透明材料層12を構成する材料は、導電性の透明材料であればどのようなものを用いても良い。例えば、前記特許文献2に列挙されたものも使用出来る(特許文献2には、凹凸を設ける層を構成する透明材料として、ポリカーボネイト、窒化シリコン、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、硫化亜鉛および酸化ビスマスなどが開示されている)。中でも、導電率の高い透明材料、例えばITO、TiO2、ZnO、ZnS、Bi23、MgO、ZnAlOおよびSnO2などが望ましい。さらに好ましくは、ITO、ZnO、MgO、ZnAlOおよびSnO2である。特に、ITOおよびZnOは優れた透明性と導電率を持つ安価な材料であり、本発明に用いるのに適した材料である。
透明材料層の厚さは、50nmから10μmであることが好ましい。50nm未満では、光取り出し効率の向上に有効な凹凸加工ができない。10μmを超えると、光透過性の低下が著しく発光出力の低下が危惧される。100nm〜5μmがさらに好ましい。
図11は、透明材料層が非導電性の材料から場合である実施例2で作製された窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図である。図1と同様に、10が正極であり、正極コンタクト層11、透明材料層12、反射性金属層13、オーバーコート層14およびボンディング層15から構成されている。1は基板である。2はGaN系化合物半導体層であり、n型半導体層3、発光層4およびp型半導体層5から構成される。6はバッファ層であり、20は負極である。透明材料層12の最表面に凹凸加工処理が施されている。
図11に示したように、透明材料層12が非導電性の場合、導電性材料からなる透明な正極コンタクト層11が必須となる。そして、透明材料層は連続した層ではなく、正極コンタクト層11がむき出しになった領域が含まれ、その領域で反射性金属層13と正極コンタクト層11が接触している方が、駆動電圧を低減させる目的から望ましい。ボンディング層15から電極に注入された電流を正極コンタクト層11に均一に流すには、絶縁体である透明材料層12が正極コンタクト層11の全面を覆うのではなく、反射性金属層13がとところどころで正極コンタクト層11と接触する構造とした方が望ましい。
透明材料層を構成する非導電性の材料としては、非導電性の透明材料であればどのようなものを用いても良い。例えば、前記特許文献2に列挙されたものも使用出来る。中でも、導電率の低い透明材料、例えばSiO2、Si34およびCaF2などが好ましい。
一般的に、より透明性の高い材料は非導電性であることが多く、このような材料を使いたい場合、正極コンタクト層を設けることで、発光出力を上げることができる。
非導電性の透明材料層の厚さは、導電性の透明材料層と同様に、10nmから10μmであることが好ましい。10nm未満では、光取り出し効率の向上に有効な凹凸加工ができない。10μmを超えると、光透過性の低下が著しく発光出力の低下が危惧される。100nm〜5μmがさらに好ましい。
透明材料層の表面に凹凸を設けるには、一旦平坦な表面を有する透明材料層を成膜した後、透明材料層の一部を削除して凹部を形成する方法と透光性膜を部分的にさらに積層して凸部を形成する方法がある。また、透明材料層を形成する際の成膜条件を制御することで凹凸を形成することも可能である。これらの中でも、一旦平坦な表面を有する透明材料層を成膜した後、透明材料層の一部を削除して凹部を形成する方法が、形状を制御しやすいため、好ましい。
本発明において、凹凸は基板面に対して垂直の面のみで構成されていても構わないし、基板面に対して傾斜した平面から構成される凹凸であっても構わない。しかしながら、多重反射を回避する効果は、基板面に対して傾斜した平面から構成される凹凸を含む方が望ましい。「基板面に対して傾斜した平面から構成される凹凸」とは、凹部または凸部を構成する透明材料層表面の少なくとも一部が基板面に対して傾斜した平面であることをいう。
例えば、透明材料層の表面に存在する凹凸が、図4(平面図)および図5(図4のXY切断断面図)に示したように凸部がストライプ状に存在しているパターンの場合、凸部を構成する透明材料層の表面A、BおよびCのうちAおよびCが基板面に対して傾斜した平面となっている。勿論、基板面に平行な面Bが存在せず、凸部がAおよびC面のみで構成されていてもよいし、AおよびC面のうちどちらかが基板面に対して垂直であってもよい。凸部を構成する全ての面が基板面に対して傾斜した平面であることが、多重反射を効率よく回避し、光取り出し効率の向上にとって好ましい。
基板面に対して傾斜した平面の角度は基板面に対して5度から85度の範囲であることが好ましい。5度未満または85度を超えると光取り出し効率が向上し難い。好ましくは15度から75度の範囲であり、特に好ましくは30度から60度の範囲である。
透明材料層の表面に存在する凹凸はどのようなパターンを取る事も可能である。中でも、上述したストライプ状とすることは、加工のしやすさの面から望ましい。その際、ストライプ状の凹部または凸部の幅はその最大部で1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数のストライプを作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。ピッチは1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数のストライプを作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。
一方、凹凸の形状を図6(平面図)および図7(図6のXY切断断面図)に示したようなドット状の凸部とすることは、多重反射を効率よく回避し、かつ、光を発光素子の周囲のどの方向からも均等に取り出すことができるため、配光均一性の面から好ましい。上記のストライプ状では、ストライプに平行な方向と直角な方向で、取り出される光の強度が異なるため、配光均一性ではドット状に劣る。
ドット状の凸部の幅および長さは、その最大部で1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数のドットを作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。ピッチは1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数のドットを作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。
さらに、凹凸の形状を図8(平面図)および図9(図8のXY切断断面図)に示したような格子状の凸部とすることは、多重反射を効率よく回避し、かつ、凹凸加工のし易さと配光均一性の両方を兼ね備えさせることができるので、最も望ましい。その際、凸部の幅はその最大部で1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数の凸部を作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。ピッチは1μm〜500μmが好ましい。1μm以下では加工が難しくなり、500μm以上では各チップ面内に充分な数の凸部を作りこむことができない。さらに好ましくは、10μm〜100μmである。
透明材料層の表面に形成される凹凸の形状としては、ランダムな形状であっても良い。その場合は、大きさ、幅、深さおよび斜面の角度などが様々な値を持つ凹凸が形成される。凹部または凸部の平面形状も、様々である。
このような形状を作製するには、先述の膜を形成する場合の条件を制御する方法のほか、ドライエッチングやウェットエッチングなどを用いて最表面をランダムに加工する方法を用いることもできる。
透明材料層の表面に存在する凹凸の断面形状は、どのような形状を持つこともできる。最も一般的なのは、単一の角度の面で形成される、三角形或いはV字型の形状であるが、その他、2種類の角度の面で形成される五角形、3種類の角度の面で形成される七角形の形状であっても良い。しかしながら、多種類の角度で形成される形状を取る断面は形成することが難しく、収率を落とすことが多い。最も有効なのは、三角形或いはV字型の形状である。また、三角形或いはV字型の先端部が切り落とされて基板面に対して平行な面となった台形でもよい。
透明材料層の表面に形成される凹凸の形状としては、断面形状に曲面を含む形状であっても良い。その場合には、曲面を含んでさえいれば、大きさ、幅、深さおよび斜面の角度などは、様々な値を持つ凹凸が形成されても良い。中でも、レンズ形状および球状形状などの、完全に曲面から形成される形状とすることは、多重反射を防止する目的で、もっとも望ましい。
また、凹凸の高低差は透明材料層の膜の厚さの範囲内で任意に決めればよく、10nm〜10μmの範囲が好ましく、100nm〜5μmの範囲がさらに好ましく、200nm〜1μmの範囲が特に好ましい。10nm未満では、光取り出し効率が十分改良されない。一方、あまり高低差を大きくすると、加工コストが増大する。
透明材料層の表面に凹凸を形成するための凹凸加工は、別に制限されず、どのような方法を用いてもよい。例えば、フォトリソグラフィーとして知られる方法を用いてパターニングし、その後ドライエッチングまたはウエットエッチングを用いて凹部を形成し、残った部分を凸部とすることができる。また、ダイヤモンド針を押し付けて線を引くスクライブや、レーザ光を当てて熱を発生させることで加工を施すレーザースクライブの手法を応用しても良い。
以下に、斜めの面を持つ格子形状の凹凸加工の方法の一例を示す。凹凸加工の方法としては、前述のように従来あるどのような手法を用いても良く、これらの例に限定されるものではない。
まず、窒化ガリウム系化合物半導体積層体のp型半導体層上に導電性透明材料、例えばITOの膜を一様な膜厚で形成する。その後、全面にレジストを塗布し、形成したいパターンに露光する。この際、露光のための光として平行光でない光束を使用する。平行光でない光は、パターンの縁から内側に少量入り込むことができるので、この現象を利用して、露光した光量に応じて、レジスト膜のパターンの縁にテーパーを形成することが可能である。平行光でない光束は、露光装置の光源の位置や試料の位置をずらすことによって、いわゆる「ピントが合っていない」状態にすることで実現できる。
他に、レジストを塗布する際に、レジストを通常よりも厚く形成することで、レジストが感光する光の量がパターンの縁において不十分となり、レジスト膜のパターンの縁にテーパーを形成するなどの方法もある。同様のことは、感光時の光の量を減量したり、感光時間を短くすることによっても実現することが可能である。
このような縁部にテーパーが形成されたレジスト膜を保護膜としてドライエッチングを施すと、エッチングによってレジスト膜も膜厚を減少させるので、形成された凹部の縁にもテーパーが形成される。図10はこの工程を経時的に示した図である。このような方法で、基板面に対して傾斜した平面からなる凹部(残された部分から見ると凸部)を形成することが可能である。
同様に、レジスト膜を保護膜として、ウエットエッチングによってパターンを形成することもできる。ウエットエッチングのためのエッチング液としては、既存のものを、パターニングしたい材料に合わせて選ぶことができる。
また、凹凸加工にはスクライブと呼ばれる方法を用いることもできる。透明材料層として形成したITOやSiO2などの膜の表面を、先端を希望するテーパーの形状としたダイヤモンド針で縦方向および/または横方向にけがく事で、ストライプ状または格子状の例えばV字型をした凹部(残された部分から見るとストライプ状またはドット状の凸部)を透明材料層の表面に形成することが可能である。
同様の形状の凹凸加工は、レーザを照射することで透明材料層の表面を融解して溝を穿つ、レーザースクライブという方法を用いることでも可能である。
反射性金属層は透明材料層上に設けられる。従って、反射性金属層の少なくとも透明材料層側は、透明材料層と同じような凹凸を有する表面となる。この凹凸面で発光層からの光が反射されるので、多重反射が回避される。
反射性金属層は、反射率の高い金属であればどのような金属を用いても良い。また、加工を施された透明材料との密着性が良好であることも必要である。反射率の良い金属とは、反射率にして80%以上である金属を指すものとする。例えば、Ag、Al、Fe、Cr、Ti、Co、Ni、Pd、Os、Ru、Pt、RhおよびIrからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの少なくとも一種を含む合金が好ましい。中でも、Ag、Al、Fe、Pt、RhおよびIrからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの少なくとも一種を含む合金がさらに好ましい。Ag、Alまたはこれらの少なくとも一種を含む合金が特に好ましい。
反射性金属層は、加工を施された透明材料層の全面を覆っていることが望ましく、そのため、反射性金属層はある程度の膜厚を有することが望ましい。具体的には、10nm以上であることが望ましく、更に望ましくは50nm以上である。また、あまり厚過ぎてもいたずらに工程が長くなるばかりなので、100μm以下が好ましい。さらに好ましくは10μm以下である。
また、反射性金属層としてAgなどのエレクトロマイグレーションを起こしやすい金属を使用する場合は、反射性金属層上にオーバーコート層を形成することが好ましい。オーバーコート層は、反射性金属層よりも一回り大きく、反射性金属層を完全に覆うような形状であることが望ましい。オーバーコート層には、エレクトロマイグレーションを防止できるような材料であれば、どのような材料を用いてもよい。RhやPtなどの導電性の金属を用いることが好ましい。SiO2などの非導電性材料を用いることもできるが、その上に設けられるボンディング層と反射性金属層との電気的接触形成のために部分的に金属にしておくか、エレクトロマイグレーションに影響を与えない程度にボンディング層と反射性金属層とを接触させておく必要がある。
本発明における正極には、透明材料層と半導体との間に、電気的なコンタクトを取る目的で、半導体(p型半導体層)表面と接触する導電性材料からなる透明な正極コンタクト層を設けることができる。前述したように、透明材料層が非導電性材料で形成される場合は、この正極コンタクト層が必須である。正極コンタクト層に要求される性能としては、p型半導体層との接触抵抗が小さいことと、光透過性が良いことである。
正極コンタクト層の材料には、導電性の透明材料層を構成するために挙げた前述の導電性透明材料を用いることができる。しかし、p型半導体層との接触抵抗の観点から、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、コバルト(Co)およびクロム(Cr)等の金属またはそれらを含む合金が好ましい。これらの中でもPtは、仕事関数が高く、高温熱処理を施さなくとも、p型GaN系化合物半導体層に対して良好なオーミック接触を得ることが可能なので、特に好ましい。
正極コンタクト層に上記の金属を用いる場合の膜厚としては、0.1〜7.5nmの範囲が好ましい。0.1nm未満では安定した薄層が得られ難い。7.5nmを超えると透光性が低下する。0.1〜5nmがさらに好ましい。また、その後の透明材料層の積層による透光性の低下と成膜の安定性を考慮すると、0.5〜2.5nmの範囲が特に好ましい。
また、正極コンタクト層を格子状としたり、ボールアップによって飛び飛びの島状としたりすることもできる。このように正極コンタクト層に薄い領域と厚い領域を形成することにより、光透過率の高い薄い領域を形成することができる。
反射性金属層またはオーバーコート層の上には、ワイヤ、リードフレームおよびサブマウンドなど、電流を流すための回路を接続するためのボンディング層を形成することができる。
ボンディング層を構成する材料については、各種の材料を用いた各種の構造のものが知られており、これら周知のものを特に制限されることなく用いることが出来る。但し、反射性金属層またはオーバーコート層との密着性の良い材料を用いることが望ましく、厚さはボンディング時の応力に対して電極あるいは半導体層へダメージを与えないよう十分厚くする必要がある。また最表層は接続する相手との密着性の良い材料とすることが望ましい。例えば、Auである。
ボンディング層の最表面には、透明材料層に施した凹凸が現れていないことが望ましい。ボンディング層を厚く形成することにより凹凸を目立たなくすることが可能であるので、ボンディング層の膜厚は、例えば400nm以上とすることが望ましい。
しかしながら、ボンディング層の表面に微小な凹凸が生じていたとしても、条件や方法によって結線することは可能であるので、凹凸が生じていることは必ずしも不良と言うわけではない。
正極コンタクト層、透明材料層、反射性金属層、オーバーコート層およびボンディング層など、各層を構成する膜の成膜方法については、特に制限されることはなく公知の真空蒸着法やスパッタ法を用いることができる。真空蒸着には加熱方法に抵抗加熱方式や電子線過熱方式などがあるが、金属以外の材料の蒸着には、電子線加熱方式が適している。また、原料となる化合物を液状とし、これを表面に塗布した後然るべき処理により酸化物膜とする方法も用いることができる。また、一旦金属の膜を形成しておいて、これを酸化することで酸化材料膜とする方法も用いることができる。
上述の正極を設ける、基板上に窒化ガリウム系化合物半導体層を積層した積層構造体は、図1に示したような、基板上にバッファ層を介して窒化ガリウム系化合物半導体を積層し、n型半導体層、発光層およびp型半導体層を形成した積層構造体が従来より多数知られており、これら周知の窒化ガリウム系化合物半導体積層構造体を含めて、発光素子に適した窒化ガリウム系化合物半導体積層構造体であれば何ら制限無く用いることができる。
基板には、サファイア単結晶(Al23;A面、C面、M面、R面)、スピネル単結晶(MgAl24)、ZnO単結晶、LiAlO2単結晶、LiGaO2単結晶、MgO単結晶およびGa23単結晶などの酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶ならびにZrB2などのホウ化物単結晶などの公知の基板材料を何ら制限なく用いることができる。基板を通して光を取り出したい場合には透明の基板であることが必要であるが、基板を剥離してフリップチップ型素子を成すことも可能であるため、基板は必ずしも透明である必要はない。なお、基板の面方位は特に限定されない。また、ジャスト基板でも良いしオフ角を付与した基板であっても良い。
基板にも、光取出し効率を増進するための凹凸加工を施すことができる。
一つには、結晶成長を行う面に予め凹凸加工を施しておき、その上に半導体結晶を作製することができる。この場合には、安定的にミラー状の綺麗な結晶面を得ることが難しいが、良好な結晶面を得ることができれば、反射型電極の反射面に施した凹凸との相乗効果により、より大きな光取出し効率を実現できる。
また、基板の裏面(フリップチップとした場合に光取り出し面となる面を裏面と呼ぶ)に凹凸加工を施すこともできる。この場合にもハンドリングが困難であり、収率を落とす可能性があるが、反射型電極の反射面に施した凹凸との相乗効果により、より大きな光取出し効率を実現できる。
n型半導体層、発光層およびp型半導体層は各種構造のものが周知であり、これら周知のものを何ら制限なく用いることができる。
それらを構成する窒化ガリウム系化合物半導体としても、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体が周知であり、本発明におけるn型半導体層、発光層およびp型半導体層を構成する窒化ガリウム系化合物半導体としても、一般式AlxInyGa1-x-yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体を何ら制限なく用いることができる。
これらの窒化ガリウム系化合物半導体の成長方法は特に限定されず、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、などIII族窒化物半導体を成長させることが知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚制御性、量産性の観点からMOCVD法である。MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H2)または窒素(N2)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N24)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si26)を、Ge原料としてゲルマン(GeH4)または有機ゲルマニウム化合物を用い、p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム((EtCp)2Mg)を用いる。
基板上にn型半導体層、発光層およびp型半導体層が順次積層された窒化ガリウム系化合物半導体のn型半導体層に接して負極を形成するために、発光層およびp型半導体層の一部を除去して、n型半導体層を露出させる。その後残したp型半導体層上に上述の反射型正極を形成し、露出させたn型半導体層上に負極を形成する。負極としては、各種組成および構造の負極が周知であり、これら周知の負極を含め、各種組成および構造の負極を何ら制限無く用いることができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
図1は本実施例で作製した窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図であり、図2はその平面を示した模式図である。サファイアからなる基板(1)上に、AlNからなるバッファ層(6)を介して、窒化ガリウム系化合物半導体層(2)を積層した。窒化ガリウム系化合物半導体層(2)は、厚さ8μmのアンドープGaNからなる下地層、厚さ2μmのGeドープn型GaNコンタクト層および厚さ0.02μmのSiドープn型In0.1Ga0.9Nクラッド層がこの順序で積層されたn型半導体層(3)、厚さ16nmのSiドープGaN障壁層および厚さ2.5nmのIn0.06Ga0.94N井戸層を5回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層(4)、および厚さ0.01μmのMgドープp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層と厚さ0.18μmのMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層がこの順序で積層されたp型半導体層(5)からなっている。p型AlGaNコンタクト層上に、厚さ500nmのITOからなる透明材料層(12)、厚さ100nmのAgからなる反射性金属層(13)、厚さ500nmのRhからなるオーバーコート層(14)およびAu/Ti/Al/Ti/Au5層構造(厚さはそれぞれ50/20/10/100/200nm)のボンディング層(15)よりなる正極(10)を形成した。透明材料層(12)の表面には、図4にその平面図を示したようなドット状パターンの斜め面を有する凸部(16)を設けた。n型GaNコンタクト層上にTi/Auの二層構造の負極(20)を形成した。光取り出し面は基板側とした。
この構造において、n型GaNコンタクト層のキャリア濃度は1×1019cm-3であり、n型In0.1Ga0.9Nクラッド層のSiドープ量は1×1018cm-3であり、GaN障壁層のSiドープ量は1×1017cm-3であり、p型AlGaNコンタクト層のキャリア濃度は5×1018cm-3であり、p型AlGaNクラッド層のMgドープ量は5×1019cm-3であった。
窒化ガリウム系化合物半導体層の積層(図1の3〜6)は、MOCVD法により、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。また、正極および負極は次の手順で形成した。
初めに反応性イオンエッチング法によって負極を形成する部分のn型GaNコンタクト層を下記手順により露出させた。
まず、エッチングマスクをp型半導体層上に形成した。形成手順は以下の通りである。レジストを全面に一様に塗布した後、公知のリソグラフィー技術を用いて、正極領域からレジストを除去した。真空蒸着装置内にセットして、圧力4×10-4Pa以下でNiおよびTiをエレクトロンビーム法により膜厚がそれぞれ約50nmおよび300nmとなるように積層した。その後リフトオフ技術により、正極領域以外の金属膜をレジストとともに除去した。
次いで、反応性イオンエッチング装置のエッチング室内の電極上に半導体積層基板を載置し、エッチング室を10-4Paに減圧した後、エッチングガスとしてCl2を供給してn型GaNコンタクト層が露出するまでエッチングした。エッチング後、反応性イオンエッチング装置より取り出し、上記エッチングマスクを硝酸およびフッ酸により除去した。
次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びリフトオフ技術を用いて、p型AlGaNコンタクト層上の正極を形成する領域にのみ、ITOからなる透明材料層(12)を形成した。透明材料層の形成では、基板を真空スパッタ装置内に導入し、ITO膜を500nm積層した。
真空室から取り出した後、引き続き、透明材料層の表面に凹凸加工を施した。
まず、公知のフォトリソグラフィーの技術を用いてドット状のパターンのレジスト膜を透明材料層上に形成した。レジストはポジ型と呼ばれる露光部分が現像処理で溶け出すものを使用し、レジストへの露光の時間を通常用いるよりも短くして、マスクパターンの縁の部分に露光不足の領域を作り出した。これを露光することにより、斜めの縁を有するレジストパターンを作製した。
このようにして作製したレジストパターンつきの透明材料層に、ドライエッチングを用いて、基板に対して斜めの面を有するドット状の凸部を形成した。ドット状の凸部は、四角錐の頂上を切ったような形状で、台形の断面を持っていて、上面は一辺が2μm下面は一辺が3μmの四角形で形成されている。高さは290nm程度であり、5μmの間隔でチップの辺に平行に並んでいる。ドット状の凸部を構成する斜めの面の基板に対してなす角度は約30度であった。
その後、通常リフトオフと呼ばれる周知の手順に則って処理し、さらに同様な手法で透明材料層を完全に覆うようにして、Agからなる反射性金属層(14)を積層した。反射性金属層は蒸着装置を用いて積層し、膜厚は100nmとした。
さらにその後、通常リフトオフと呼ばれる周知の手順に則って処理し、反射性金属層の領域を完全に覆うようにしてRhからなるオーバーコート層(14)を形成した。オーバーコート層は蒸着装置を用いて積層し、膜厚は、500nmとした。
その後、通常リフトオフと呼ばれる周知の手順に則って処理し、さらに同様な手法でオーバーコート層の上にAuからなる第1の層、Tiからなる第2の層、Alからなる第3の層、Tiからなる第4の層、Auからなる第5の層を順に積層し、ボンディング層(15)を形成した。このようにしてp型AlGaNコンタクト層上に正極を形成した。ボンディング層は蒸着装置を用いて積層した。
次に、露出したn型GaNコンタクト層上に負極を以下の手順により形成した。レジストを全面に一様に塗布した後、公知リソグラフィー技術を用いて、露出したn型GaNコンタクト層上の負極形成部分からレジストを除去して、通常用いられる真空蒸着法で半導体側から順にTiが100nm、Auが200nmからなる負極を形成した。その後レジストを公知の方法で除去した。
このようにして正極および負極を形成したウエーハを、基板裏面を研削・研磨することにより80μmまで基板の板厚を薄くして、レーザスクライバを用いて半導体積層側から罫書き線を入れたあと、押し割って、350μm角のチップに切断した。続いてこれらのチップをプローブ針による通電で電流印加値20mAにおける順方向電圧の測定をしたところ3.3Vであった。
その後、このチップを、サファイア基板面を上にしてサブマウントと呼ぶ基板上に実装し、このチップの乗ったサブマウントを、TO−18缶パッケージに実装してテスターによって発光出力を計測したところ印加電流20mAにおける発光出力は18mWを示した。
(比較例1)
透明材料層に凹凸加工を施さないことを除いて、実施例1と同様に窒化ガリウム系化合物半導体発光素子を作製した。この発光素子を実施例1と同様に評価したところ、順方向電圧は3.3Vと同じであったが、発光出力は8mWであった。
(実施例2)
図11は、本実施例で作製した窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図であり、その平面を示した模式図は実施例と同様に図2である。サファイアからなる基板(1)上に、実施例1と同様に、AlNからなるバッファ層(6)を介して、窒化ガリウム系化合物半導体層(2)を積層した。
本実施例における正極構造は以下のとおりである。p型AlGaNコンタクト層上に、厚さ20nmのITOからなる正極コンタクト層(11)、厚さ180nmのSiO2からなる透明材料層(12)、厚さ100nmのAgからなる反射性金属層(13)、厚さ500nmのRhからなるオーバーコート層(14)およびAu/Ti/Al/Ti/Au5層構造(厚さはそれぞれ50/20/10/100/200nm)のボンディング層(15)からなる正極(10)を形成した。SiO2からなる透明材料層(12)には、実施例1と同様に、図4に示されるようなドット状パターンの斜め面を有する凸部を設け、凸部の高さは180nmとし、ドット状の凸部以外の部分は正極コンタクト層(11)が露出して反射性金属層(13)と接触するようにした。
n型GaNコンタクト層上には、実施例1と同様に、Ti/Auの二層構造の負極(20)を形成した。光取り出し面は基板側とした。
正極は次の手順で形成した。初めに反応性イオンエッチング法によって負極を形成する部分のn型GaNコンタクト層を実施例1と同様の手順により露出させた。
次に、公知のフォトリソグラフィー技術及びリフトオフ技術を用いて、p型AlGaNコンタクト層上の正極を形成する領域にのみ、ITOからなる正極コンタクト層(11)およびSiO2からなる透明材料層(12)を形成した。正極コンタクト層および透明材料層の形成では、基板を真空スパッタ装置内に導入し、ITO膜を20nm積層後、引き続きSiO2膜を180nm積層した。
真空室から取り出した後、引き続き、透明材料層に凹凸加工を施した。
まず、公知のフォトリソグラフィーの技術を用いてドット状のパターンのレジスト膜を形成した。レジストはポジ型と呼ばれる露光部分が現像処理で溶け出すものを使用し、レジストへの露光の時間を通常用いるよりも短くして、マスクパターンの縁の部分に露光不足の領域を作り出した。これを露光することにより、斜めの縁を有するレジストパターンを作製した。
このようにして作製したレジストパターンつきの透明材料層に、ドライエッチングを用いて、基板に対して斜めの面を有するドット状の凸部を形成した。ドット状の凸部は、四角錐の頂上を切ったような形状で、台形の断面を持っていて、上面は一辺が2μm下面は一辺が2.2μmの四角形で形成されている。高さは180nm程度であり、凸部以外の部分にはSiO2からなる透明材料層が存在せず、ITOからなる正極コンタクト層を露出させるような構造とした。凸部は5μmの間隔でチップの辺に平行に並んでいる。ドット状の凸部を構成する斜めの面の基板に対してなす角度は約60度であった。
その後、通常リフトオフと呼ばれる周知の手順に則って処理し、さらに同様な手法で透明材料層および露出した正極コンタクト層を完全に覆うようにして、Agからなる反射性金属層(13)を積層した。反射性金属層は蒸着装置を用いて積層し、膜厚は50nmとした。
その後、実施例1と同様に、オーバーコート層およびボンディングパッド層を形成した。このようにしてp型AlGaNコンタクト層上に正極(10)を形成した。
次に、露出したn型GaNコンタクト層上に負極を実施1と同様の手順により形成した。このようにして正極および負極を形成したウエーハを、基板裏面を研削・研磨することにより85μmまで基板の板厚を薄くして、レーザスクライバを用いて半導体積層側から罫書き線を入れたあと、押し割って、350μm角のチップに切断した。
得られたチップを実施例1と同様に評価したところ、電流印加値20mAにおける順方向電圧は3.4Vであり、発光出力は19.5mWを示した。
本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子は優れた光取出し効率を有するので、この発光素子から高輝度のLEDランプを作製することができ、照明用途、ディスプレイ用途およびバックライト用途として有用である。
実施例1で作製した本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図である。 実施例1および実施例2で作製した本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の平面を示した模式図である。 実施例1および実施例2で作製した本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の透明材料層の平面を示した模式図である。 透明材料層の表面に存在する凹凸パターンの一例を示した平面図である。 図4のXY切断断面図である。 透明材料層の表面に存在する凹凸パターンの別の一例を示した平面図である。 図6のXY切断断面図である。 透明材料層の表面に存在する凹凸パターンの別の一例を示した平面図である。 図8のXY切断断面図である。 本発明で、テーパの付いたレジストを用いたドライエッチングで加工を行なう手順を示した模式図である。 実施例2で作製した本発明の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の断面を示した模式図である。
符号の説明
1 基板
2 GaN系化合物半導体層
3 n型半導体層
4 発光層
5 p型半導体層
6 バッファ層
10 正極
11 正極コンタクト層
12 透明材料層
13 反射性金属層
14 オーバーコート層
15 ボンディング層
20 負極

Claims (20)

  1. 基板上にn型半導体層、発光層およびp型半導体層からなる窒化ガリウム系化合物半導体の積層構造体を有する発光素子において、p型半導体層上に設けられた正極が透明材料層および該透明材料層上に設けられた反射性金属層からなる反射型正極であることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  2. 透明材料層が導電性材料を含む請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  3. 透明材料層が非導電性材料を含む請求項1または2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  4. 透明材料層とp型半導体との間に、正極コンタクト層を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  5. 透明材料層がp型半導体と接触しており、正極コンタクト層として機能している請求項2に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  6. 透明材料層が、ITO、TiO2、ZnO、ZnS、Bi23、MgO、ZnAlOおよびSnO2からなる群より選ばれた少なくとも一種の材料からなる請求項2〜5のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  7. 透明材料層が、ITO、ZnO、MgO、ZnAlOおよびSnO2からなる群より選ばれた少なくとも一種の材料からなる請求項6に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  8. 反射性金属層が、Ag、Al、Fe、Cr、Ti、Co、Ni、Pd、Os、Ru、Pt、RhおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  9. 反射性金属層が、Ag、Al、Fe、Pt、RhおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる請求項8に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  10. 反射性金属層が、AgまたはAlから選ばれた少なくとも一種の金属、またはこれらの金属の少なくとも一種を含む合金からなる請求項9に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  11. 反射性金属層の透明材料層側の表面が凹凸を有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  12. 透明材料層の反射性金属層側の表面が凹凸を有する請求項11に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  13. 凹凸の形状がストライプ状である請求項11または12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  14. 凹凸の形状がドット状または格子状である請求項11または12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  15. 凹凸の形状がランダム状である請求項11または12に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  16. 凹凸が曲面で構成されている請求項11〜15のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  17. 凹凸が基板面に対して傾斜した平面で構成されている請求項11〜15のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  18. 傾斜した平面が、基板面に対して5度から85度の角度を成す請求項17に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  19. 凹凸の高低差が0.01〜10μmである請求項11〜18のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子。
  20. 請求項1〜19のいずれか一項に記載の窒化ガリウム系化合物半導体発光素子からなるランプ。
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