JP2007012852A - ビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 配線板9の両面側に、第1のロールコータを用いて、第1の絶縁性樹脂インクを塗布して、第1の樹脂インク層18a,18bを形成する第1塗布工程と、この第1の樹脂インク層18a,18bの表面に、第2のロールコータ10bを用いて、第2の絶縁性樹脂インク11bを塗布して、第2の樹脂インク層,を形成する第2塗布工程と、第1の樹脂インク層18a,18b及び前記第2の樹脂インク層,を同時に硬化させる硬化工程とを有し、第1塗布工程及び第2塗布工程のそれぞれの塗布条件を最適化する。
【選択図】図7
Description
そして、このような工程を繰り返すことにより、ビルドアップ型多層プリント配線板が得られる。
特許文献1に記載されている絶縁層の形成方法は、絶縁層形成の際に、配線板を垂直に立てた状態で一対の塗布用ロールのロール間に挟み、絶縁性樹脂インクを基板の両面側に同時に塗布することを特徴としている。
しかしながら、前者の方法は、配線板の一方の面に絶縁性樹脂インクを塗布して硬化させた後、他方の面に同様に絶縁性樹脂インクを塗布して硬化させるため2度の塗布工程及び2度の硬化工程が必要となり、生産性において不利である。
一方、後者の方法は、配線板の両面側に同時に絶縁性樹脂シートを接着できるため生産性は良好であるが、絶縁性樹脂シートは絶縁性樹脂インクに対して、一般的に、コストが高い。
従って、特許文献1に記載されている絶縁層の形成方法は、配線板の両面に同時に絶縁性樹脂インクを塗布でき、この塗布された絶縁性樹脂インクを両面同時に硬化できるので生産性が良好であり、また、コストが安い絶縁性樹脂インクを使用できるので、絶縁層の形成方法として有効な方法である。
絶縁層の厚さが厚いと、作製されたビルドアップ型多層プリント配線板の厚さが厚くなるので、薄型化に不利であり、逆に、絶縁層の厚さが薄いと、絶縁層の絶縁耐圧が低下する。そのため、ビルドアップ型多層プリント配線板の設計仕様に合わせて、最適な厚さになるように絶縁層を形成することが好ましい。
このような問題を解決する手段が、特許文献2に記載されている。
特許文献2に記載されている絶縁層の形成方法は、配線板の配線パターンの面積比率の小さい側の面に対する塗布圧力を、配線パターンの面積比率の大きい側の面に対する塗布圧力よりも小さくすることを特徴としている。
従って、特許文献2に記載されている絶縁層の形成方法により、配線板の両面側に形成されている配線層のそれぞれの配線パターンの面積比率が異なる場合においても、同じ厚さの絶縁層が得られる。
このように、同一配線層内で配線パターンの面積比率が大きい領域と小さい領域とが混在している場合、絶縁性樹脂インクの充填面積が異なるので、配線パターンの面積比率が大きい領域における絶縁層の厚さは、配線パターンの面積比率が小さい領域における絶縁層の厚さに対して、厚くなる。従って、同一絶縁層内で大きな厚さばらつき、例えば、約±20μmの厚さばらつきが生じる。言い換えれば、設定厚さが60μmのとき、厚さばらつきは約±33%となる。
同一絶縁層内で絶縁層の厚さにおける大きなばらつきが生じると、LVHの大きさや形状がばらついたり、LVHの底部に樹脂残りが生じる場合がある。そのため、LVH部における導通抵抗がばらついたり、接続不良が発生するといった問題が生じる。このような問題を発生させないためには、絶縁層の厚さばらつきを±10μm以下にすることが望ましい。言い換えれば、設定厚さが60μmのとき、厚さばらつきを±17%以下にすることが望ましい。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されている絶縁層の形成方法では、同一配線層内で配線パターンの面積比率が大きい領域と小さい領域とが混在している場合に、同一絶縁層内における厚さのばらつきを低減することは困難であり、その対策が望まれている。この同一絶縁層における絶縁層の厚さばらつきが大きいことを、第1の不具合と呼ぶ。
溶剤体積比率が小さいと、レベリング効果が低減するため、塗布後の樹脂インク層の表面が凹凸形状になり、この凹凸形状を有した状態で樹脂インク層を硬化させると、硬化後の絶縁層の表面も凹凸形状になる。このような凹凸形状を有する絶縁層をビルドアップしていくと、凹凸形状が増長され、フォトリソ法による配線パターン形成工程において、配線パターンの細りや断線といった問題が生じる場合がある。
一方、溶剤体積比率が大きいと、樹脂インク層を硬化させる際に、多量の溶剤が蒸発するので、硬化前の樹脂インク層の厚さに対して、硬化後の絶縁層の厚さが大きく変化するため、絶縁層における所定の厚さを得ることが困難になる。
従って、上述したように、絶縁層を形成するための絶縁性樹脂インクの溶剤体積比率は、20〜30vol%が好ましく、また、このときの絶縁性樹脂インクの粘度は、一般的に、1〜6Pa・sである。
例えば、絶縁性樹脂インク中の溶剤体積比率が約30vol%である場合、絶縁層302の厚さtka,tkbは、樹脂インク層301の厚さtma,tmbに対して、約30%薄くなる。
なお、図18(a)中の破線で示した矢印は、樹脂インク層301の表面の位置が、硬化により、絶縁層302の表面の位置になる様子を模式的に示したものである。
このIVH部凹みKの発生を、第2の不具合と呼ぶ。
図19に示すように、直径Re,Rfが等しい(Re=Rf)一対のロール310a,310bは、配線板300とそれぞれ接触している部分が変形する。しかし、配線板300とのそれぞれの接触面積は等しい、即ち、配線板300の搬送方向Edにおける、ロール310aと配線板300と接触面の長さ311aと、ロール310bと配線板300と接触面の長さ311bとはほぼ等しいため、IVH305の内部に、ほぼ同時に、絶縁性樹脂インク312が注入される。このため、IVH305の内部の空気が閉じ込められ、これがIVH内ボイドGとなる。
形成される絶縁層が所定の厚さを得るためには、それに対応する十分な量の絶縁性樹脂インクを配線板に転写させなければならない。そうすると、一般的に、図20に示すように、LVH320の開口径Riよりも、絶縁性樹脂インク312を転写するためのロール330における溝332の開口幅w1は大きくなる。
従って、LVH320の開口径Riよりも大きい開口幅w1の溝332を有するロール330を用いて、LVH320を有する絶縁層325の表面に絶縁性樹脂インク312を転写させようとすると、LVH320の内部の空気は、この絶縁性樹脂インク312によって、LVH320の内部に閉じ込められるので、これが、LVH内ボイドHとなる。
図1は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第1工程を説明するための模式的断面図である。
図2は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第2工程を説明するための模式的断面図である。
図3は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の絶縁層の形成方法を説明するための模式的断面図である。
図4〜図6は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第3工程を説明するための模式的断面図である。
図7及び図8は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第4工程を説明するための模式的断面図である。
図9は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第5工程を説明するための模式的断面図である。
図10は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第6工程を説明するための模式的断面図である。
図11は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第7工程を説明するための模式的断面図である。
図12は、本発明のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法における実施例の第8工程を説明するための模式的断面図である。
(第1工程)[図1参照]
コア材1の厚さが400μmであり、銅箔層2a,2bの厚さがそれぞれ12μmである両面銅張り板3の所定の位置に、表裏の銅箔層2a,2b間を電気的に接続するためのIVH(Interstitial Via Hole)4を貫通孔として形成する。このIVH4は、ドリル加工やレーザ加工により形成することができる。本実施例では、ドリル加工により、その直径が約300μmであるIVH4を形成した。
なお、コア材1及び銅箔層2a,2bの厚さやIVH4の直径は、本実施例に限定されるものではない。
IVH4の内壁及び銅箔層2a,2bの表面に、例えば、銅からなる第1めっき層5a,5bを形成する。この第1めっき層5a,5bは、例えば、無電解銅めっきを行った後、さらに電解銅めっきを行うことで形成され、本実施例では第1めっき層5a,5bのそれぞれの厚さが約20μmとなるように、めっき条件を設定した。
次に、フォトリソ法により、所定の配線パターン8a,8bが得られるように、第1めっき層5a,5b及び銅箔層2a,2bの一部をエッチング除去して、第1配線層6及び第2配線層7を形成する。
上述の工程を経た両面銅張り板3を両面配線板9と呼ぶ。
本実施例における絶縁層の形成方法は、詳細は後述するが、図3に示すように、両面配線板9の両面側に、第1の溶剤体積比率(第1の粘度)を有する第1の絶縁性樹脂インク11aを第1のロールコータ10aを用いて塗布して、第1の樹脂インク層18a,18bを形成する第1塗布工程と、この第1の樹脂インク層18a,18bの上に、さらに、第1の溶剤体積比率よりも大きい(第1の粘度よりも小さい)第2の溶剤体積比率(第2の粘度)を有する第2の絶縁性樹脂インク11bを第2のロールコータ10bを用いて塗布して、第2の樹脂インク層19a,19bを形成する第2塗布工程と、この第1の樹脂インク層18a,18b、及び第2の樹脂インク層19a,19bを、同時に硬化させることにより、絶縁層20,21を得る硬化工程とからなる。
また、第1塗布工程と第2塗布工程とを、異なる塗布条件に設定している。
この第1塗布工程は、第1のロールコータ10aを用いて、絶縁性樹脂インク11aを両面配線板9の両面側に塗布する際、IVH4の内部、及び配線パターン8a,8bの間隙がこの絶縁性樹脂インク11aで充填されることを目的にしている。
図4に示すように、第1塗布工程で用いる第1のロールコータ10aは、一対のロール12a,12bと、この一対のロール12a,12bそれぞれと接触するように載置された一対のドクターバー13a,13bと、第1の絶縁性樹脂インク11aを溜めておくための貯蔵部14a,14bと、第2工程で作製した両面配線板9を固定し、この両面配線板9を一対のロール12a,12bの間を通過させるような駆動手段を有する取り付け部15aとを有している。
なお、ロール12a,ドクターバー13a,及び貯蔵部14aからなるロール部16aと、ロール12b,ドクターバー13b,及び貯蔵部14bからなるロール部16bとは、それぞれが接離する方向に移動するような駆動手段をそれぞれ有している。
また、図5に示すように、一対のロール12a,12bは、その形状が円柱形状であり、その外周部には、周方向に延在する複数の溝17a,17bが一定のピッチ(開口幅)La,Lb毎に形成されている。
また、ロール12a,12bの溝17a,17bは、それぞれのピッチ(開口幅)La,Lbが60μmであり、それぞれの深さta,tbが30μmであり、それぞれの開口角θa,θbが90度である。即ち、本実施例の第1塗布工程では、上述した第4の不具合であるLVH内ボイドを解決するために、ロール12a,12bの溝17a,17bの開口幅La,Lb(60μm)を、後述するLVH22,23の開口径よりも小さくしている。なお、その理由については、後で詳述する。
図4において、第1の絶縁性樹脂インク11aの粘度(第1の粘度と呼ぶ場合がある)を、一般的に用いられる粘度よりも高い粘度、例えば、10〜20Pa・sの範囲内になるように調整した後、この粘度調整された第1の絶縁性樹脂インク11aを、貯蔵部14a,14bに供給する。
次に、一対のロール12a,12bを、図示しない駆動手段により、矢印Ea,Ebの方向に回転させると、貯蔵部14a,14bに溜められている第1の絶縁性樹脂インク11aが一対のロール12a,12bの溝17a,17bに入り込む。本実施例では、一対のロール12a,12bのそれぞれの外周部における回転スピードを、1.2m/minに設定した。なお、この回転スピードは、本実施例に限定されるものではないが、後述する両面配線板9の搬送速度よりも速くなるように、設定することが好ましい。
本実施例では、上述した第1の不具合である絶縁層の大きな厚さばらつきと、第2の不具合であるIVH部凹みの発生とを改善するために、第1の絶縁性樹脂インク11aの溶剤体積比率(第1の溶剤体積比率と呼ぶ場合がある)を、一般的な絶縁性樹脂インクよりも小さくなるように調整している。その理由については、後で詳述する。
なお、溶剤体積比率を小さくすると、レベリング性が悪化するが、第1塗布工程は、第1の絶縁性樹脂インク11aを、IVH4の内部及び配線パターン8aの段差を埋めるように充填させることが目的であるので、第1塗布工程では、レベリング性の悪化は問題にならない。
次に、ロール部16a及びロール部16bを、図示しない駆動手段により、それぞれが接近する方向とは反対方向に移動させる。
その後、取り付け部15aを、図示しない駆動手段により、矢印Ecの方向に移動させ、両面配線板9の両面側の所定の領域Fa,Fbが1組のロール12a,12bの間を通過し終わった時点で、取り付け部15aを停止させる。
その後、ロール部16a及びロール部16bを、図示しない駆動手段により、それぞれが接近する方向に移動させて、ロール12a及びロール12bそれぞれを両面配線板9に接触させる。
次に、取り付け部15aを、図示しない駆動手段により、所定の速度、例えば、0.8m/minで、矢印Edの方向に移動させて、一対のロール12a,12bの溝17a,17bに充填されている第1の絶縁性樹脂インク11aを両面配線板9の表面に転写させていく。
両面配線板9が一対のロール12a,12bの間を完全に通過し終わった後、取り付け部15aを停止させる。その後、取り付け部15aから両面配線板9を取り外す。
IVH4の内部及び配線パターン間は、第1の絶縁性樹脂インク11aで充填されており、第3の不具合であったIVH内ボイドGが発生していないことを確認した。なお、IVH内ボイドGが発生しなかった理由について、後で詳述する。
また、第1配線層6及び第2配線層7上の第1の樹脂インク層18a,18bの厚さは、約5μm以下と非常に薄く形成されていることを確認した。
従って、図6に示すように、第1の樹脂インク層18a,18bを形成したことにより、両面配線板9の表面を、ほぼ平滑な面にすることができた。
従って、本実施例のように、IVH4の内部及び配線パターンの段差を埋めるように第1の絶縁性樹脂インク11aで充填し、かつ、第1配線層6及び第2配線層7上に第1の樹脂インク層18a,18bがほとんど形成されない程度になるように、塗布条件を設定することが望ましい。
次に、第4工程である、第2塗布工程について、説明する。
この第2塗布工程は、後述する第1絶縁層20及び第2絶縁層21が、所定の厚さ(本実施例では、60μm)が得られるように、所定の厚さ(本実施例では、80μm)を有する第2の樹脂インク層19a,19bを形成させることが目的である。
図7に示すように、第2塗布工程で用いる第2のロールコータ10bは、一対のロール12c,12dと、この一対のロール12c,12dそれぞれと接触するように載置された一対のドクターバー13c,13dと、第2の絶縁性樹脂インク11bを溜めておくための貯蔵部14c,14dと、第1塗布工程で作製した両面配線板9を固定し、この両面配線板9を一対のロール12c,12dの間を通過させるような駆動手段を有する取り付け部15bとを有している。
なお、ロール12c,ドクターバー13c,及び貯蔵部14cからなるロール部16cと、ロール12d,ドクターバー13d,及び貯蔵部14dからなるロール部16dとは、それぞれが接離する方向に移動するような駆動手段をそれぞれ有している。
また、図5に示すように、一対のロール12c,12dは、その形状が円柱形状であり、その外周部には、周方向に延在する複数の溝17c,17dが一定のピッチ(開口幅)Lc,Ld毎に形成されている。
本実施例では、一対のロール12c,12dの直径Rc,Rdは、それぞれ110mmである。即ち、本実施例の第2塗布工程では、後述する第1絶縁層20の厚さと第2絶縁層21の厚さとを同じにするために、後述する第2の樹脂インク層19a,19bの厚さが同じになるように、直径Rc,Rdが同一である一対のロール12c,12dを用いている。
また、ロール12c,12dの溝17c,17dは、それぞれのピッチLc,Ldが800μmであり、それぞれの深さtc,tdが400μmであり、それぞれの開口角θc,θdが90度である。
図7に示すように、第2の絶縁性樹脂インク11bの粘度(第2の粘度と呼ぶ場合がある)を、一般的に用いられる粘度、例えば、3〜6Pa・sの範囲内になるように調整した後、この粘度調整された第2の絶縁性樹脂インク11bを、貯蔵部14c,14dに供給する。
次に、一対のロール12c,12dを、図示しない駆動手段により、矢印Ea,Ebの方向に回転させると、貯蔵部14c,14dに溜められている第2の絶縁性樹脂インク11bが一対のロール12c,12dの溝17c,17dに入り込む。本実施例では、一対のロール12c,12dのそれぞれの回転スピードを、1.2m/minに設定した。なお、この回転スピードは、本実施例に限定されるものではないが、後述する両面配線板9の搬送速度よりも速くなるように、設定することが好ましい。
そして、以降の塗布方法は、第1塗布工程と同様である。
硬化されていない第1の絶縁性樹脂インク11aからなる第1の樹脂インク層18a,18bと、硬化されていない第2の絶縁性樹脂インク11bからなる第2の樹脂インク層19a,19bとは、その界面近傍において互いに混ざり合うため、その境界面をはっきりと確認することは困難である。
そこで、第1の樹脂インク層18a,18bと第2の樹脂インク層19a,19bとの総厚te,tf(第1配線層6の表面から第2の樹脂インク層19aの表面までの厚さ,第2配線層7の表面から第2の樹脂インク層19bの表面までの厚さ)を測定した結果、総厚te,tfはいずれも約80μmであり、その表面はほぼ平滑な面であることを確認した。
上述の工程を経た両面配線板9を、例えば、150℃で1時間、加熱することによって、第1の樹脂インク層18a,18b及び第2の樹脂インク層19a,19b中の溶剤を蒸発させると共に、第1の樹脂インク層18a,18b及び第2の樹脂インク層19a,19bを硬化させる。
第1絶縁層20及び第2絶縁層21の厚さtg,th(第1配線層6の表面から第1絶縁層20の表面までの厚さ,第2配線層7の表面から第2絶縁層21の表面までの厚さ)は、それぞれの平均値が約60μmであり、それぞれの厚さのばらつきは、±8μmである。
また、配線パターンの面積比率の小さい領域Aa,Abにおける第1絶縁層20及び第2絶縁層20の平均厚さtga,thaと、配線パターンの面積比率の大きい領域Ba,Bbにおける第1絶縁層20及び第2絶縁層21の平均厚さtgb,thbとはほぼ等しく、第1の不具合であった絶縁層の厚さばらつきが改善されていることを確認した。さらに、第2の不具合であったIVH部凹みKが発生していないことを確認した。
なお、絶縁層の厚さばらつきが改善されたことと、IVH部凹みKが発生しなかったことに対する理由について、後で詳述する。
上述した工程により、IVH内ボイドがなく、配線パターンの面積比率の影響が低減され、厚さのばらつきが±10μm以下と良好である第1絶縁層20及び第2絶縁層21を形成することができた。
第1絶縁層20を介して、第1配線層6と、後述する第3配線層25とを電気的に接続するための第1のLVH(Laser Via Hole)22を、所定の位置に形成する。さらに、第2絶縁層21を介して、第2配線層7と、後述する第4配線層26とを電気的に接続するための第2のLVH23を、所定の位置に形成する。
具体的には、第1絶縁層20及び第2絶縁層21の所定の位置にレーザ光を照射させて、第1配線層6及び第2配線層7の表面を露出させるように、レーザ照射部の第1絶縁層20及び第2絶縁層21を除去することにより、開口径が約300μmであるLVH22,23を形成する。このLVH22,23は、炭酸ガス(CO2)レーザやYAGレーザにより、形成することができる。
次に、LVH22,23の内壁を覆うように、第1絶縁層20及び第2絶縁層21の表面に、例えば、銅からなる第2めっき層24a,24bを形成する。この第2めっき層24a,24bは、無電解銅めっきを行った後、さらに電解銅めっきを行うことで形成され、本実施例では第2めっき層24a,24bのそれぞれの厚さが約20μmとなるように、めっき条件を設定した。
その後、フォトリソ法により、所定の配線パターン27a,27bが得られるように、第2めっき層24a,24bの一部をエッチング除去して、第3配線層25及び第4配線層26を形成する。
上述の工程を経た両面配線板9を4層配線板28と呼ぶ。
次に、4層配線板28の両面側に、第3工程である、第1塗布工程と同様にして、第1の絶縁性樹脂インク11aを、第1のロールコータ10aを用いて塗布して、後述するLVH22,23の内部がこの第1の絶縁性樹脂インク11aで充填されるように、第3の樹脂インク層29a,29bを形成する。
さらに、この第3の樹脂インク層29a,29bの表面に、第4工程である、第2塗布工程と同様にして、第1の絶縁性樹脂インク11aよりも粘度の低い(溶剤体積比率の大きい)第2の絶縁性樹脂インク11bを第2のロールコータ10bを用いて塗布して、第4の樹脂インク層30a,30bを形成する。
その後、この第1の樹脂インク層29a,29b、及び第2の樹脂インク層30a,30bを、一度に硬化させることにより、第3絶縁層31及び第4絶縁層32を得る。
なお、第7工程における絶縁性樹脂インク11a,11bの主成分,粘度(溶剤体積比率),塗布条件,及び硬化条件等は、第3工程乃至第5工程と同様である。
第3絶縁層31及び第4絶縁層32の厚さti,tj(第3配線層25の表面から第3絶縁層31の表面までの厚さ,第4配線層26の表面から第4絶縁層32の表面までの厚さ)は、それぞれの平均値が約60μmであり、それぞれの厚さのばらつきが±8μmである。
そして、配線パターンの面積比率の小さい領域Ac,Adにおける第3絶縁層31及び第4絶縁層32の厚さと、配線パターンの面積比率の大きい領域Bc,Bdの第3絶縁層31及び第4絶縁層32の厚さとは、ほぼ等しいことを確認した。
また、LVH22,23は、その内部が第1の絶縁性樹脂インク11aで充填されており、第4の不具合であったLVH内ボイドが発生していないことを確認した。なお、LVH内ボイドが発生しなかった理由について、後で詳述する。
第3配線層25と、後述する第5配線層37とを電気的に接続するための第3のLVH33を、所定の位置に形成する。さらに、第4配線層26と、後述する第6配線層38とを電気的に接続するための第4のLVH34を、所定の位置に形成する。
具体的には、第3絶縁層31及び第4絶縁層32の所定の位置にレーザ光を照射させて、第3配線層25及び第4配線層26の表面を露出させるように、レーザ照射部の第3絶縁層31及び第4絶縁層32を除去することにより、開口径が約300μmであるLVH33,34を形成する。このLVH33,34は、炭酸ガス(CO2)レーザやYAGレーザにより、形成することができる。
その後、フォトリソ法により、所定の配線パターン36a,36bが得られるように、第3めっき層35a,35bの一部をエッチング除去して、第5配線層37及び第6配線層38を形成する。
その後、所定のパターンが得られるように、フォトリソ法により、このソルダーレジスト39a,39bの一部を除去した後、例えば、120℃で1時間加熱し、所定のパターンを有するソルダーレジスト39a,39bを十分に硬化させる。
ここで、半硬化とは、ソルダーレジスト39a,39b中の溶剤を十分に蒸発させるが、ソルダーレジスト39a,39b自体は十分に硬化されていない状態をいう。
次に、6層のビルドアップ型多層プリント配線板の比較例について、説明する。
比較例は、実施例における第1塗布工程を行わないで、第2塗布工程のみの1回の塗布により、絶縁層を形成する。比較例における絶縁性樹脂インク、及びその塗布条件は、実施例における第2塗布工程と同じである。また、その他の工程も、実施例と同じである。
以上の条件により、6層のビルドアップ型多層プリント配線板100が作製される。
また、絶縁層の厚さばらつきにおいても、比較例では約±18μmであったものが、本実施例では、±10μm以下と良好な結果を得ていることがわかる。
図13(a)は、比較例において、両面配線板9に第2の絶縁性樹脂インク11bを塗布した直後の樹脂インク層101の状態を表す模式的断面図であり、図13(b)は、比較例において、塗布された絶縁性樹脂インク11bがレベリングされた後の樹脂インク層101の状態を表す模式的断面図であり、図13(c)は、比較例において、樹脂インク層101を硬化させて、絶縁層110となる様子を表す模式的断面図である。
また、図14(a)は、実施例において、第1の樹脂インク層18aの表面に、第2の樹脂インク層19aが形成された直後の状態を表す模式的断面図であり、図14(b)は、実施例において、第1の樹脂インク層18a及び第2の樹脂インク層19aを硬化させて、第1絶縁層20となる様子を表す模式的断面図である。
図13(a)に示すように、両面配線板9に第2の絶縁性樹脂インク11bを塗布した直後では、配線パターンの面積比率の小さい領域Daにおける樹脂インク層101の厚さtsaと、配線パターンの面積比率の大きい領域Caにおける樹脂インク層101の厚さtpaとは、ほぼ同じである。
しかし、図13(b)に示すように、時間の経過に伴い、樹脂インク層101の表面がレベリングされると、配線パターン102上の第2の絶縁性樹脂インク11bの一部が、配線パターン102の間隙部に移動するため、配線パターンの面積比率の小さい領域Daにおける樹脂インク層101の厚さtsbは、配線パターンの面積比率の大きい領域Caにおける樹脂インク層101の厚さtpbよりも、薄くなる。
従って、図13(c)に示すように、配線パターンの面積比率の大きい領域Caにおける絶縁層110の厚さtpcと、配線パターンの面積比率の小さい領域Daの配線パターン102上の絶縁層110の厚さtscとで差が生じる。この差が、絶縁層110の厚さばらつきとなる。また、配線パターンの面積比率の小さい領域Daにおける絶縁層110の表面は、図13(c)に示すように、凹凸形状を有する。
なお、図13(c)中の点線は、硬化前の樹脂インク層101の表面を表している。
また、第2の樹脂インク層19aの溶剤体積比率は、比較例における樹脂インク層101と同じであるため、硬化後の厚さは、硬化前に対して、約30%減少するが、第2の樹脂インク層19aの厚さは、配線パターンの面積比率に関係なく均一であるため、厚さの減少量も均一である。なお、図14(b)中の点線は、硬化前の第2の樹脂インク層19aの表面を表している。
従って、本実施例は、配線パターンの面積比率に関係なく、厚さが均一で、表面が平坦な第1絶縁層20を形成することができる。
また、ここでは、第1絶縁層20を例に挙げて説明したが、第2絶縁層21、第3絶縁層31、及び第4絶縁層32についても、同様に説明することができる。
但し、第1の絶縁性樹脂インク11aの粘度が高すぎるとIVH内部やLVH内部への埋め込み性が低下し、逆に、粘度が低すぎると、IVH部凹みが発生したり、絶縁層の厚さばらつきが大きくなる。従って、第1の絶縁性樹脂インク11の粘度は、本実施例のように、10〜20Pa・sの範囲に設定することが望ましい。
また、第1絶縁層20及び第2絶縁層21(第3絶縁層31及び第4絶縁層32)は、ロールの溝ピッチ,溝深さ,及び第2の絶縁性樹脂インク11bの粘度を調整することにより、所定の厚さが得られる。但し、第2の絶縁性樹脂インク11bの粘度が高すぎると、良好なレベリング効果が得られなくなり、逆に、粘度が低すぎると、硬化前後の厚さの差が大きいため、所定の厚さが得られにくくなる。そこで、本実施例のように、第2の絶縁性樹脂インク11bの粘度を、3〜6Pa・sの範囲に設定することが望ましい。
図15は、実施例において、第1の樹脂インク層18a,18b及び第2の樹脂インク層19a,19bを硬化させて、第1絶縁層20及び第2絶縁層とする様子を表す模式的断面図である。
IVH部凹みの解決理由は、上述した絶縁層の厚さばらつきの改善理由と同じように、説明することができる。
即ち、本実施例は、図15に示すように、第1塗布工程で、溶剤体積比率の小さい第1の絶縁性樹脂インク11aによりIVH4の内部を埋める。このため、第1の樹脂インク層18a,18bが形成された後の、両面配線板9の表面は平滑になる。
その後、表面が平坦化された両面配線板9に、第2塗布工程により、第2の絶縁性樹脂インク11bを塗布するので、第2の樹脂インク層19a,19bの厚さは、IVH4の有無に関係なく、均一になる。
そして、第1の樹脂インク層18a,18b及び第2の樹脂インク層19a,19bを硬化させると、第1の樹脂インク層18a,18b及び第2の樹脂インク層19a,19b中の溶剤が蒸発するが、第1の樹脂インク層18a,18bの溶剤体積比率は小さいので、硬化後の厚さの減少量も小さい。従って、硬化後の第1の樹脂インク層18a,18bの表面の平坦性はほとんど悪化しない。
従って、本実施例は、IVH部凹みの発生がなく、表面が平坦な絶縁層を形成することができる。
図16に示すように、直径Ra,Rbが異なる(Ra<Rb)一対のロール12a,12bを用いた場合、一対のロール12a,12bは、両面配線板9とそれぞれ接触している部分が変形する。一対のロール12a,12bの各中心と両面配線板9との各距離、あるいは、一対のロール12a,12bと両面配線板9との各接触圧力が略同じである場合、一対のロール12a,12bと両面配線板9との各接触面の面積は異なる。即ち、本実施例では、両面配線板9の搬送方向Edにおいて、小さな直径Raのロール12aと両面配線板9との接触面の長さ150cに対して、大きな直径Rbのロール12bと両面配線板9との接触面の長さ150dは長いので、大きな直径Rbを有するロール12bは、より長い時間、絶縁性樹脂インク11aをIVH内部に注入することができる。このため、IVH内部の空気は、小さな直径Rgを有するロール201c側に押し出されるので、IVH内ボイドが発生しないと考えられる。
また、一対のロール12a,12bの直径Ra,Rbが、Ra>Rbの関係であっても、同様の効果が得られる。
なお、本実施例では、ロール12aの直径Raを108mmとし、ロール12bの直径Rbを110mmとしたが、上述したように、Ra<Rb、またはRa>Rbの関係を満たせばよく、本実施例に限定されるものではない。
また、上述したように、IVH内ボイドの発生を防ぐためには、一対のロールにおいて、配線板の搬送方向における、配線板とのそれぞれの接触面の長さが異なるようにすればよい。即ち、本実施例以外の方法、例えば、硬度の異なる一対のロールを用いても、同様の効果が得られる。
本実施例では、第1塗布工程におけるロール12a,12bの溝ピッチ(開口幅)La、Lb及び溝深さta,tbを、60μm及び30μmとしたため、図17に示すように、LVH22(23)の開口径Rj(Rj=300μm)よりも、ロール12a(12b)の開口幅w2(w2=60μm)は狭い。このため、LVH22(23)の内部に絶縁性樹脂インク11aが入り込むので、LVH内ボイドが発生しなかったものと考えられる。
さらに、第2塗布工程により、第3絶縁層31及び第4絶縁層32のそれぞれの厚さを約60μmにすることができる。
また、図17に示すように、LVH22(23)の内部の絶縁性樹脂インク11aの表面は若干の凹みを有するが、この凹みは、絶縁性樹脂インク11aが充填される前のLVH22(23)の凹みに対して、非常に小さいので、第2塗布工程により、埋めることができる。
なお、本実施例では、ロール12a,12bの溝ピッチ(開口幅)La,Lb、溝深さta,tb、及び溝開口角θa,θbを、それぞれ60μm、30μm、及び90°としたが、上述したように、Rj>w2の関係を満たせばよく、本実施例に限定されるものではない。
即ち、上述したように、溝の開口幅がLVHの開口幅よりも狭ければ、本実施例と同様の効果が得られる。
従って、溝の開口幅がLVHの開口幅よりも狭ければ、複数の溝をロールの外周部にらせん状に形成しても良いし、ロールの中心軸方向に延在するように形成しても良い。
また、各溝の開口幅は、同じである必要はなく、溝の最大開口幅がLVHの開口幅よりも狭ければ、実施例と同様の効果が得られる。
Claims (4)
- 両面側に形成された配線パターンと、この配線パターン同士を接続する貫通孔とを有する配線板の前記両面側に、絶縁層を形成する工程を有するビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法において、
前記配線板の前記両面側に、ロールコート法により、第1の溶剤体積比率を有する第1の絶縁性樹脂インクを塗布して、この第1の絶縁性樹脂インクで、前記配線パターンにおける隣接するパターン間の間隙を埋め、前記貫通孔の内部を充填させると共に、前記配線パターンが覆われるように、第1の樹脂インク層を形成する第1塗布工程と、
前記第1の樹脂インク層の表面に、ロールコート法により、前記第1の溶剤体積比率よりも大きい第2の溶剤体積比率を有する第2の絶縁性樹脂インクを塗布して、第2の樹脂インク層を形成する第2塗布工程と、
前記第1の樹脂インク層及び前記第2の樹脂インク層を、同時に硬化させることにより、絶縁層とする硬化工程とを有することを特徴とするビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法。 - 両面側に形成された配線パターンと、この配線パターン同士を接続する貫通孔とを有する配線板の前記両面側に、第1のロールと第2のロールとを有するロールコータを用いて、絶縁性樹脂インクを塗布する塗布工程を有するビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法であって、
前記第1のロール及び前記第2のロールを回転させながら前記配線板に接触させると共に、前記配線板を所定の搬送方向に搬送させて、前記配線板に前記絶縁性樹脂インクを塗布する際に、前記第1のロールと前記配線板の一方の面との接触面における前記搬送方向の長さと、前記第2のロールと前記配線板の他方の面との接触面における前記搬送方向の長さとを異ならせることを特徴とするビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法。 - 前記第1のロール及び前記第2のロールの形状はそれぞれ略円筒形状であり、前記第1のロールの直径と、前記第2のロールの直径とが、異なることを特徴とする請求項2記載のビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法。
- 開口径Rの非貫通孔を、少なくとも一方の面に有する配線板の両面側に、一対のロールを有するロールコータを用いて、絶縁性樹脂インクを塗布することにより、樹脂インク層を形成する工程を有するビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法において、
前記一対のロールには、各外周部に、最大幅w1の複数の溝、または、最大開口幅w2の複数の凹部が形成されており、前記配線板の前記非貫通孔を有する側の面と接触する側の前記ロールの前記溝、または、前記凹部が、w1<R、または、w2<Rとされたことを特徴とするビルドアップ型多層プリント配線板の製造方法。
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