JP2007009249A - 耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.2〜0.35%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1.0%、P≦0.025%、S≦0.01%、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.5〜1.0%、Ti:0.002〜0.05%、V:0.05〜0.3%、B:0.0001〜0.005%、N≦0.01%、O(酸素)≦0.01%を含有し、残部はFeと不純物からなる鋼管を、加工度<40%で加工した後895℃以上の温度に加熱して焼入れするか、加工度≧40%で加工した後「加熱温度(℃)≧0.625×加工度(%)+870」を満たす温度に加熱して焼入れし、次いで、Ac1点以下の温度で焼戻しする。鋼管の化学組成は、特定量のNb、Ca及びZrの1種以上を含んでもよい。
【選択図】なし
Description
加熱温度(℃)≧0.625×加工度(%)+870・・・(1)、
但し、加工度は、ピアサーより後の加工での総加工度を表し、下記の(2)式に基づく値とする。
加工度(%)={(「ピアサー加工後の鋼管の断面積」−「焼戻し後の鋼管の断面積」)/「ピアサー加工後の鋼管の断面積」}×100・・・(2)。
C:0.2〜0.35%
Cは、焼入れ性を高めて強度を向上させるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.2%未満では、焼入れ性向上効果が低いため十分な強度が得られない。一方、Cの含有量が0.35%を超えると焼割れに対する感受性が増大する。したがって、Cの含有量を0.2〜0.35%とした。なお、C含有量の下限は0.25%とすることが好ましく、上限は0.30%とすることが好ましい。
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、焼戻し軟化抵抗を高める効果も有する。上記のうち特に脱酸効果を得るためには、Siの含有量を0.05%以上とする必要がある。一方、その含有量が0.5%を超えると、軟化相であるフェライト相の析出を促進し靱性や耐SSC性を低下させる。したがって、Siの含有量を0.05〜0.5%とした。なお、Si含有量の上限は0.3%とすることが好ましい。
Mnは、鋼の焼入れ性を確保するのに有効な元素であり、この目的からは、Mnの含有量を0.05%以上とする必要がある。しかしながら、Mnを1.0%を超えて含有させると、P、S等の不純物元素とともに粒界に偏析し、靱性や耐SSC性を低下させる。したがって、Mnの含有量を0.05〜1.0%とした。なお、Mn含有量の下限は0.1%とすることが望ましく、上限は0.6%とすることが望ましい。
Pは粒界に偏析し、靱性及び耐SSC性を低下させる。特に、その含有量が0.025%を超えると、靱性及び耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.025%以下とした。P含有量の上限は0.015%とすることが好ましい。なお、Pの含有量は可及的に少なくすることが望ましい。
SもPと同様に粒界に偏析し、靱性及び耐SSC性を低下させる。特に、その含有量が0.01%を超えると、靱性及び耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.01%以下とした。S含有量の上限は0.003%とすることが好ましい。なお、Sの含有量は可及的に少なくすることが望ましい。
Alは、鋼の脱酸に有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.005%未満の場合には前記の効果が得られない。一方、Alの含有量が0.10%を超えるとアルミナ系介在物を生成し、靱性を劣化させる。したがって、Alの含有量を0.005〜0.10%とした。なお、本発明におけるAlは、酸可溶Al(いわゆる「sol.Al」)のことを指す。
Crは,鋼の焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、この効果を得るためには0.1%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると鋼の転位密度が増加して、耐SSC性の低下を招く。したがって、Crの含有量を0.1〜1.0%とした。なお、Cr含有量の上限は0.6%とすることが望ましい。
Moは、本発明において重要な元素であり、鋼の焼入れ性を高めるとともに、焼戻し時に微細炭化物を形成し、水素の拡散係数を低減させて耐SSC性を高める作用を有する。前記の効果を得るためには、Moの含有量を0.5%以上とする必要がある。しかしながら、Moの含有量が1.0%を超えても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量を0.5〜1.0%とした。なお、Mo含有量の下限は0.6%とすることが望ましく、上限は0.8%とすることが望ましい。
Tiは、鋼中の不純物であるNを窒化物として固定する作用を有する。Nの固定は、焼入れ性向上のため添加するBがBNとなるのを抑制し、Bを固溶状態に維持して十分な焼入れ性を確保するために必要である。更に、前記のN固定に必要な量よりも多いTiを含む場合、余ったTiが炭化物として微細に析出し、ピン止め作用によって結晶粒を微細化する作用を有する。これらの効果を得るためには、Tiの含有量を0.002%以上とする必要がある。しかしながら、Tiを0.05%を超えて含有させても結晶粒を微細化する効果が飽和してコストが嵩むばかりである。また、靱性の低下もきたす。したがって、Tiの含有量を0.002〜0.05%とした。なお、Ti含有量の下限は0.005%とすることが望ましく、上限は0.03%とすることが望ましい。Ti含有量の下限は0.01%とすることが一層望ましく、上限は0.02%とすることが一層望ましい。
Vは、本発明において重要な元素であり、Moと同様に焼戻し時に微細な炭化物として析出し、水素の拡散係数を低減させて耐SSC性を向上させる作用を有する。前記の効果を得るためには、Vの含有量を0.05%以上とする必要がある。しかしながら、Vの含有量が0.3%を超えても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Vの含有量を0.05〜0.3%とした。なお、V含有量の上限は0.2%とすることが望ましい。
Bは、鋼の焼入れ性を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.0001%未満では十分な効果が得られない。一方、Bを0.005%を超えて含有させても前記の焼入れ性向上効果は飽和する。更に、粒界に粗大な炭化物であるCr23(C、B)6を形成して、耐SSC性の低下を招く。したがって、Bの含有量を0.0001〜0.005%とした。B含有量の下限は0.0002%とすることが望ましく、上限は0.002%とすることが望ましい。
Nは不純物として鋼中に存在し、粒界に偏析して耐SSC性を低下させる。Nの含有量が多くなって、特に、0.01%を超えると、Tiを添加、或いは、Tiに加えて更にZrを添加しても、Nを完全には固定できなくなって、フリーのNが存在することとなり、このNが粒界に偏析すると耐SSC性が低下するし、また、Bと結合してBNを形成すればBの焼入れ向上作用が十分には得られないので、耐SSC性や靱性が低下する。したがって、Nの含有量を0.01%以下とした。N含有量の上限は0.007%とすることが好ましい。なお、Nの含有量は可及的に少なくすることが望ましい。
OもNと同様に不純物として鋼中に存在し、その含有量が多くなると粗大な酸化物を形成して靱性や耐SSC性の低下を招く。特に、その含有量が0.01%を超えると、靱性や耐SSC性の低下が著しくなる。したがって、Oの含有量を0.01%以下とした。O含有量の上限は0.005%とすることが好ましい。なお、Oの含有量は可及的に少なくすることが望ましい。
Nbは、Cと結合して炭化物を形成し、ピン止め作用によって結晶粒を微細化するのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.002%未満では、前記の効果が不十分である。一方、Nbを0.1%を超えて含有させても前記の効果が飽和し、NbC析出物が増加して耐食性を劣化させる。したがって、添加する場合のNbの含有量を0.002〜0.1%とした。なお、添加する場合のNb含有量の下限は0.005%とすることが望ましく、上限は0.03%とすることが望ましい。
Caは、鋼中のSと結合して硫化物を形成することで介在物の形状を改善し、耐SSC性を高めるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.0001%未満では前記の効果が得られない。一方、Caを0.01%を超えて含有させても前記の効果が飽和するばかりか、粗大なCa系介在物が生成するので却って耐SSC性が低下し、また、靱性も低下する。したがって、添加する場合のCaの含有量を0.0001〜0.01%とした。なお、添加する場合のCa含有量の下限は0.0003%とすることが望ましく、上限は0.003%とすることが望ましい。
Zrは、鋼中の不純物であるNを窒化物として固定するのに有効な元素である。Nを固定することによって、焼入れ性向上のため添加するBがBNとなるのを抑制し、Bを固溶状態に維持して十分な焼入れ性を確保することができる。なお、前記N固定に関与する以外の残りのZrは、炭化物として微細に析出し、ピン止め作用によって結晶粒を微細化するのに有効である。しかしながら、Zrの含有量が0.002%未満では前記の効果が得られない。一方、Zrを0.1%を超えて含有させても結晶粒を微細化する効果が飽和してコストが嵩むばかりである。また、靱性の低下も招く。したがって、添加する場合のZrの含有量を0.002〜0.1%とした。なお、添加する場合のZr含有量の下限は0.005%とすることが望ましく、上限は0.06%とすることが望ましい。添加する場合のZr含有量の下限は0.01%とすることが一層望ましく、上限は0.04%とすることが一層望ましい。
前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼管は、その鋼管を40%未満の加工度で加工した後895℃以上の温度に加熱して焼入れするか或いは、40%以上の加工度で加工した後下記の(1)式を満たす温度に加熱して焼入れし、次いで、Ac1点以下の温度で焼戻しすることによって、良好な耐SSC性を発揮することができる。
但し、本発明における加工度は、ピアサーより後の加工での総加工度を表し、下記の(2)式に基づく値とする。
加工度(%)={(「ピアサー加工後の鋼管の断面積」−「焼戻し後の鋼管の断面積」)/「ピアサー加工後の鋼管の断面積」}×100・・・(2)。
SSCは鋼の強度が高くなるほど生じやすい。しかし、前記(B)項で述べたように、(A)項に記載の化学組成を有する鋼管を、40%未満の加工度で加工した後895℃以上の温度に加熱して焼入れするか或いは、40%以上の加工度で加工した後前記の(1)式を満たす温度に加熱して焼入れし、次いで、Ac1点以下の温度で焼戻しすることによって製造した場合には、降伏強度(YS)が869〜952MPaという高強度であっても、良好な耐SSC性が得られる。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.2〜0.35%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.025%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.5〜1.0%、Ti:0.002〜0.05%、V:0.05〜0.3%、B:0.0001〜0.005%、N:0.01%以下及びO(酸素):0.01%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成の鋼管を、40%未満の加工度で加工した後895℃以上の温度に加熱して焼入れするか或いは、40%以上の加工度で加工した後下記の(1)式を満たす温度に加熱して焼入れし、次いで、Ac1点以下の温度で焼戻しすることを特徴とする耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
加熱温度(℃)≧0.625×加工度(%)+870・・・(1)
但し、加工度は、ピアサーより後の加工での総加工度を表し、下記の(2)式に基づく値とする。
加工度(%)={(「ピアサー加工後の鋼管の断面積」−「焼戻し後の鋼管の断面積」)/「ピアサー加工後の鋼管の断面積」}×100・・・(2) - 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Nb:0.002〜0.1を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Ca:0.0001〜0.01%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Zr:0.002〜0.1%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Nb:0.002〜0.1及びCa:0.0001〜0.01%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Nb:0.002〜0.1及びZr:0.002〜0.1%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Ca:0.0001〜0.01%及びZr:0.002〜0.1%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 鋼管の化学組成が請求項1に記載のFeの一部に代えて、Nb:0.002〜0.1、Ca:0.0001〜0.01%及びZr:0.002〜0.1%を含有するものである請求項1に記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
- 焼戻し後の鋼管の降伏強度が758〜965MPaである請求項1から8までのいずれかに記載の耐硫化物応力割れ性に優れた油井用鋼管の製造方法。
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