本発明は、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する脱水反応工程を含んでなる脱水反応生成物の製造方法であって、上記脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、上記水分離器は、上記反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、下部の径が上部の径よりも細く、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御されている脱水反応生成物の製造方法である。
本発明はまた、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する脱水反応工程を含んでなる脱水反応生成物の製造方法であって、上記脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、上記水分離器は、上記反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、脱水溶剤と生成水との界面及び/又は気液界面の検出装置が設けられ、上記検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させる脱水反応生成物の製造方法でもある。
本発明者らは、高品質の脱水反応生成物を効率良く製造するべく鋭意研究を進めた結果、(A)脱水反応工程で用いる水分離器に備えられる供給管を工夫すると反応液の突沸が防止され、脱水溶剤と生成水の界面が安定化して検出精度が向上すること、(B)水分離器の形状を工夫すると脱水溶剤と生成水の界面の検出精度が向上すること、(C)水分離器に備えられる検出装置を工夫すると、検出装置内でゲル状物により閉塞することが充分に抑制されることも見出した。具体的には、(1)水分離器に備えられる供給管に関し、水分離器内の気相部と液相部とに開放口を有するように設定すること、(2)水分離器の形状に関し、下部の径が上部の径よりも細く、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御すること、(3)水分離器に備えられる検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させることにより、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。また、このような水分離器を用いた脱水反応生成物の製造方法により得られる生成物が高品質のものとなることから、この生成物をセメント添加剤用重合体等の製造原料として好適に用いることができることも見出した。
以下に、本発明を詳述する。
本発明の脱水反応生成物の製造方法は、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する脱水反応工程を含んでなるものであって、上記(2)の形態、すなわち、該脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、該水分離器は、該反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、下部の径が上部の径よりも細く、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御されている形態、又は、上記(3)の形態、すなわち、該脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、該水分離器は、該反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、脱水溶剤と生成水との界面及び/又は気液界面の検出装置が設けられ、該検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させる形態である。好ましくは、上記(1)の形態、すなわち、該脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、該水分離器は、該反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有し、該供給管は、気相部と液相部とに開放口を有する形態と、上記(2)及び/又は(3)の形態とを組み合わせることである。
以下では、上記(1)、(2)及び(3)の形態の順に説明する。
本発明の脱水反応生成物の製造方法は、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する脱水反応工程を含んでなる。また、このような脱水反応生成物の製造方法の通常実施される形態では、脱水反応工程に続けて、後述する中和工程、溶剤留去工程等を含んでなる。
先ず、上記脱水反応工程で用いられる本発明における装置について説明する。
上記脱水反応工程は、反応槽と水分離器とを必須として用いて行われ、上記水分離器は、(1)上記反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有し、該供給管が、気相部と液相部とに開放口を有する形態、(2)上記反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、下部の径が上部の径よりも細く、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御されている形態、(3)上記反応槽と繋がった供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有すると共に、脱水溶剤と生成水との界面及び/又は気液界面の検出装置が設けられ、該検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させる形態のうち(2)若しくは(3)の形態、又は、これらを組み合わせた形態である。このような水分離器の好ましい形態としては、上記(1)〜(3)をすべて組み合わせた形態である。
本発明では、上記水分離器を用いて、例えば、反応槽中で気化しコンデンサにより凝縮液化された留出物を脱水溶剤と生成水とに分離して生成水を除去しつつ脱水溶剤を反応槽に還流させる操作を行うことになる。
なお、留出物とは、脱水反応工程やその他の工程により反応槽から留出されるものすべてを意味する。すなわち反応槽から留去される反応生成水や、水溶液の形態で仕込まれる原料からの生成水、必要に応じて生成水と共沸させるために用いられる脱水溶剤の他、留出された(メタ)アクリル酸等の反応原料等を含むものを意味し、その形態としては、ガス状、液状等が挙げられる。
本発明の脱水反応生成物の製造方法は、上記(1)の形態を組み合わせることが好ましい。
上記(1)の形態では、供給管が、気相部と液相部とに開放口を有することになる。この場合、供給管が有する液相部の開放口から水分離器内に液状留出物を供給しつつ気相部の開放口からもガス状留出物を放出することになり、水分離器内の液相部の圧力の変動を抑えることができ、これにより本発明の作用効果を更に発揮することが可能となる。
上記水分離器において、反応槽と繋がった供給管とは、反応槽からの留出物を水分離器内に供給するための配管である。反応槽と水分離器とが接続された形態としては、通常ではコンデンサを介して繋がることになるが、反応槽からの留出物が水分離器内に供給されることになる限り特に限定されるものではない。上記供給管は、1本の管でも複数の管でもよく、分枝していても分枝していなくてもよい。また、分枝している場合には分枝管を有することになり、例えば、気相部から液相部へ向けて分枝管を有していても、液相部から気相部へ向けて分枝管を有していてもよい。更に、断面形状も特に限定されず、例えば、円形であることが好ましい。このような供給管は、断面形状が円形である1本の管(円管)で分枝管を有しない形態であることが好ましい。開放口とは、供給管から供給される留出物の水分離器内への供給口を意味し、供給管や分枝管の先端や側面に設けられる1個又は複数個の穴である。このような開放口の形状としては、特に制限はないが、例えば、円形であることが好ましい。
上記(1)の形態ではまた、供給管が有する気相部の開放口が、該供給管の側面に空けた1個又は複数個の穴であることが好ましい。より好ましくは、気相部の開放口をガスだけを吐出して液状留出物が噴出しない様に工夫することが好ましい。気相部への開放口の径は、1〜200mmが好ましく、5〜100mmがより好ましく、10〜50mmであることが更により好ましい。気相部の開放口の個数は、大きさにもよるが、例えば、1〜50個とすることが好ましい。より好ましくは、1〜10個である。このようにすることにより、水分離器内の液相部の圧力の変動を充分に抑えることが可能となる。
上記(1)の形態では更に、水分離器が、更に邪魔板が備えられ、上記供給管が有する気相部の開放口が、該邪魔板と反対方向にあることが好ましい。邪魔板が備えられることにより、水分離器内の液相部において、脱水溶剤が上相に存在し、生成水が下相に存在する室(A)と、邪魔板の上からオーバーフロー(越流)した脱水溶剤が存在する室(B)とに分け、効率よく生成水の除去と脱水溶剤の還流とを行うことができることになる。このとき、供給管が有する液相部の開放口は上記室(A)に有り、供給管が有する気相部の開放口が、邪魔板と反対方向にあると、気相部の開放口から放出される留出物が、上記室(B)へ混入することが防止され、これにより、還流させる脱水溶剤中に生成水が混ざることを防止することができる。
本発明の脱水反応生成物の製造方法における上記(2)の形態では、水分離器における下部の径が上部の径よりも細く、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御されることになる。これにより、脱水溶剤と生成水との界面の検知精度を向上させることができることになる。従って、脱水溶剤の還流量と生成水の抜き出し量とを精度よく管理して脱水溶剤と生成水との界面を安定的に保つことにより、脱水反応工程における脱水反応を安定的に行うことが可能となる。この場合、下部の径が上部の径よりも細くなる形態としては、例えば、上部から下部にかけて段階的又は連続的に細くなる形態が挙げられるが、図1を用いて後述するような形態、すなわち下部の径を実質的に一定として下部の径が上部の径よりも細くなる形態とすることが好ましい。下部の径を実質的に一定とすることにより界面の高さから容易に液量に換算することができ、複雑な計算による間違いもなくなる。また、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるように制御する方法としては、例えば、界面計を用いて脱水溶剤と生成水との界面を検知しつつ留出物が水分離器内へ供給される速度と、水分離器内で分離した脱水溶剤や生成水を水分離器外へ除去する速度とを調整することにより行うことができる。このとき、コントロールバルブの開度を調整することにより界面の位置を制御することが好ましい。
本発明の脱水反応生成物の製造方法における上記(3)の形態では、水分離器に脱水溶剤と生成水との界面の検出装置が設けられ、該検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させることになる。また、水分離器に更に邪魔板が備えられ、上記室(B)において気相部と液相部(脱水溶剤)との界面の検出装置が設けられるときには、該検出装置の内部にもゲル化防止剤を作用させることが好ましい。検出装置の内部にゲル化防止剤を作用させることにより、検出装置内でゲル状物により閉塞することが充分に抑制され、製造工程での不具合の発生や、各種の化学製品の性能や品質の低下を充分に抑制することができる。検出装置としては、上記界面を検出することができる手段を有する装置であれば特に限定されるものではない。例えば、比重差や電気抵抗を利用した検知手段を有する装置等が挙げられ、図1において後述するように、水分離器から液化された留出物を管内に導入して界面を検出する、いわゆる界面計を用いることが好適である。
上記ゲル化防止剤としては、例えば、重合禁止剤等が挙げられ、具体的には、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンを用いることが好ましい。
上記ゲル化防止剤の量としては、例えば、脱水反応条件、中でも反応系に作用させる熱量や反応系内に仕込む脱水溶剤量等に応じて、留出物の量に見合う量に適宜設定することが好ましく、例えば、反応原料であるアルコールやアミンと(メタ)アクリル酸の仕込み量の合計重量に対して、0.1〜5000重量ppmとすることが好ましい。0.1重量ppm未満であると、ゲル化防止剤の作用効果を充分に発揮することができないおそれがあり、5000重量ppmを超えると、作用させる量に見合う作用効果の発現が見込めず不経済となるおそれがある。より好ましくは、5〜500重量ppmである。
上記ゲル化防止剤を検出装置に作用させる方法としては、ゲル化防止剤が有する作用効果を有効に発揮できる方法であれば特に限定されず、例えば、作用させる検出装置内の部位にノズルを設け、ノズルからゲル化防止剤を注入することができる。作用させる部位としては、脱水溶剤と生成水との界面近傍や、気相部と液相部(脱水溶剤)との界面近傍とすることが好ましい。また、作用させる時期としては、水分離器に脱水溶剤や水が存在するときである。特に、水分離器の脱水溶剤や水相中に(メタ)アクリル酸等の重合性の単量体が存在する間に作用させるのが好ましい。特に、該単量体が水分離器に供給される時期、即ち、脱水反応生成物の脱水中や、脱水溶剤留去中に作用させることが好ましい。更に、作用させるゲル化防止剤の形態としては、溶剤等により液化(溶解)した形態、粉末状等の固化した形態、昇華した状態を含む気化した形態等が挙げられ、これらの中でも、溶剤等により液化した形態、特に脱水溶剤と同種の溶剤により液化した形態とすることが好ましい。
本発明における水分離器及びそれに備えられる供給管や邪魔板の材質としては特に限定されず、公知の材質が使用できるが、例えば、SUS製、好ましくは、耐蝕性の点から、SUS304、SUS316、SUS316L、より好ましくは、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、水分離器の内部にグラスライニング加工やテフロン(登録商標)加工等が施されて反応原料及び生成物の腐食性に対して不活性なものとしてもよい。
本発明における水分離器を図1を用いて説明する。
図1は、本発明における水分離器を例示した概念図である。この図1では、供給管が備えられ、かつ、内部に気相部と液相部とを有し、更に邪魔板が備えられ、脱水溶剤と生成水との界面の検出装置として界面計(A)と共に、邪魔板より供給管と反対側の水分離器の室〔室(B)〕における気相部と液相部(脱水溶剤)との気液界面の検出装置として界面計(B)が設けられ、下部に生成水出口と脱水溶剤出口とを有して構成された水分離器の一形態が示されている。この形態では、供給管が有する気相部の開放口が、供給管の側面に空けた複数個の穴であり、かつ、邪魔板と反対方向にあり、また、水分離器の下部の径が上部の径よりも細く、生成水出口と脱水溶剤出口とに接続される配管にはコントロールバルブ(図示せず)が備えられ、脱水溶剤と生成水との界面が下部に保たれるようにコントロールバルブにより制御され、更に、界面計(A)及び界面計(B)の内部にゲル化防止剤を作用させるノズル(ゲル化防止剤注入口)が備えられている。
上記図1ではまた、供給管がコンデンサ(図示せず)に接続され、反応槽で発生したガス状留出物は、コンデンサにより凝縮液化され、供給管を通過して、邪魔板より供給管側の水分離器内の室〔室(A)〕に入り、室(A)では下相に生成水が溜まり、上相には脱水溶剤が溜まることになる。また、室(A)の上相に溜まった脱水溶剤は、邪魔板の上を越流して室(B)に入って溜まることになる。室(A)に溜まった生成水は、脱水溶剤と生成水との界面が一定の位置になるように界面計(A)で界面を検知しながらコントロールバルブにより調整されて生成水出口から除去され、また、室(B)に溜まった脱水溶剤は、界面計(B)で界面を検知しながらコントロールバルブにより調整されて脱水溶剤出口から抜き出され、反応槽に還流されることになる。このとき、界面計(A)及び界面計(B)の内部には、ゲル化防止剤が作用され、ゲル状物の形成による閉塞が防止されることになる。なお、図1中、脱水溶剤と生成水とが斜線で示されている。
上記図1において、供給管が有する気相部と液相部の開放口の位置としては、例えば、気相部や液相部の開放口から出た留出物が室(B)に入ったり水分離器の内壁に付着したりしにくいところに設定することが好ましい。また、邪魔板は充分に高くすることが好ましい。邪魔板が低過ぎると、室(A)中で留出物が脱水溶剤と生成水とに比重分離される前に邪魔板の上を越流し、室(B)に入ってしまうおそれがあり、また水分離器の容量を充分に有効利用できないからである。
上記図1の形態では、水分離器における下部の径が上部の径よりも充分に細くなるように設定することが好ましい。例えば、下部の径と上部の径との直径の比率が、1/20〜1/2となるように設定することが好ましい。1/20よりも下部の径が細過ぎると、高さを高くしないと貯水容量が減るため水分離器が大きくなり過ぎるおそれがあり、1/2よりも下部の径が太いと、脱水溶剤と生成水との界面の検知精度が充分に向上しないおそれがある。より好ましくは、1/10〜1/3である。
上記図1の形態ではまた、水分離器における下部の高さと上部の高さとの比率が、1/30〜1/1となるように設定することが好ましい。1/30よりも下部の高さが低過ぎると、下部に溜まった生成水が上部へ流入して脱水溶剤と生成水との界面の検知精度が充分に向上しないおそれがあり、1/1よりも下部の高さが高過ぎると、装置が大きくなり過ぎるおそれがある。より好ましくは、1/10〜1/2である。
本発明の脱水反応生成物の製造方法に用いられる水分離器は、上述したように、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する脱水反応工程を含んでなり、反応槽と水分離器とを必須として用いる脱水反応生成物の製造方法において、副生する生成水を反応系から除去しつつ、反応槽内での突沸を防止し、脱水溶剤と生成水との界面の検知精度を向上させると共に安定化させ、しかも、ゲル状物の形成が充分に抑制されるようにすることにより、製造工程での不具合の発生や、各種の化学製品の性能や品質の低下を充分に抑制することができる作用効果を発揮するものである。このような水分離器は本発明の好ましい実施形態の一つである。
本発明ではまた、上記脱水反応生成物が、セメント添加剤用重合体の製造原料として用いられることが好ましい。すなわち本発明の製造方法を用いて製造される脱水反応生成物から得られる重合体をセメント添加剤の製造原料として用いることが好ましい。これにより、セメント添加剤の製造において、その性能や品質が低下することが抑制されて安定的に製造することが可能となる。
次に、脱水反応生成物を製造する方法として、脱水反応工程に続けて、必要に応じて中和工程、溶剤留去工程等を含んでなる方法について説明する。
上記脱水反応工程では、例えば、反応槽、コンデンサ及び該反応槽と該コンデンサとを接続する連結管を必須とする脱水反応装置と、該コンデンサと供給管により接続された水分離器とを用いて行われる。このような脱水反応装置を用いて、反応槽により脱水反応を行いつつ、コンデンサと水分離器とを用いて蒸留操作を行うことになる。
上記脱水反応工程では、脱水反応が化学平衡となる場合には、反応によって生成される反応生成水を反応槽から取り除くと反応が進行することになる。このような工程では、(1)反応槽中で生成する反応生成水を取り除きやすくするため、必要により反応液に脱水溶剤を混合し、該脱水溶剤と生成水とを共沸させることにより気化された留出物を生じさせる操作、(2)該留出物が反応槽とコンデンサとを接続する連結管を通過してコンデンサに入り、該コンデンサ中で留出物を凝縮液化させる操作、(3)凝縮液化された留出物をコンデンサに接続された水分離器中で脱水溶剤と生成水とに分離する操作、(4)分離された脱水溶剤を反応槽中に還流させる操作、等の操作が行われることになる。
上記反応槽とは、反応器や、反応容器、反応釜等と同じ意味内容で用いられるものであって、脱水反応を行うことができる容器であれば特に限定されるものではない。反応槽の形状は、特に限定されるものではない。多角型、円筒型等があるが、攪拌効率、取扱い性、汎用性等の点から円筒型が好ましい。また邪魔板の有無は問わない。反応槽の加熱方式は外部ジャケットにスチーム等の熱媒を接触させることによって加熱するものであっても良いし、反応槽の内部にコイル等の伝熱装置を備えていて加熱するものであっても良い。このような反応槽の内部の材質としては特に限定されず、公知の材質が使用できるが、例えば、SUS製、好ましくは、耐蝕性の点から、SUS304、SUS316、SUS316L、より好ましくは、SUS316、SUS316L等が挙げられる。また、反応槽の内部にグラスライニング加工等が施されて反応原料及び生成物に対して不活性なものとしてもよい。このような反応槽は、通常では脱水反応を均一に効率よく行うため攪拌機が備えられている。攪拌機は特に限定されるものではない。攪拌機は通常、電動モーター、軸、攪拌機から構成されるがその攪拌翼も形状を問わない。攪拌機としては、デスクタービン、ファンタービン、わん曲ファンタービン、矢羽根タービン、多段ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルマージン型、角度付き羽根、プロペラ型、多段翼、アンカー型、ゲート型、二重リボン翼、スクリュー翼、マックスブレンド翼等を挙げることができ、なかでも多段ファンタービン翼、ファウドラー翼が汎用性の点で好ましい。
上記コンデンサとは、反応槽から生じる留出物を凝縮液化させる装置であり、該凝縮液化は、冷却液である管外流体と留出物とを熱交換させることにより行われる。
上記コンデンサの材質としては、SUS304、SUS316、SUS316L等のSUS製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できる。ゲル状物の発生をより低減するために、内面を鏡面仕上げやグラスライニング加工されたコンデンサを使用できるが、加工やメンテナンスにかかるコストの点から、SUS304、SUS316、SUS316L、好ましくは、SUS316、SUS316L等のSUS製のコンデンサを用いることが好ましい。
上記コンデンサの伝熱面積としては、反応槽の容積等によって異なるが、例えば、反応槽30m3では、50〜500m2とすることが好ましい。より好ましくは、100〜200m2である。このようなコンデンサに使用される冷却媒体としては、例えば、水やオイル等が挙げられる。
上記水分離器の容積としては、反応槽の容積や留出物の留出量等によって異なるが、例えば、反応槽30m3では、1〜20m3とすることが好ましい。より好ましくは、3〜10m3である。
上記脱水反応工程は、アルコール及び/又はアミンと(メタ)アクリル酸とを脱水溶剤の存在下でエステル化及び/又はアミド化する工程であり、これによりエステル及び/又はアミドを生成することになる。このような工程において反応原料とされる化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書中、上記のエステルやアミドをそれぞれエステル化物やアミド化物ともいう。
上記エステル化反応に使用されるアルコールとしては、水酸基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、アルコール類、フェノール類、ジオール類、3価以上のアルコール類、ポリオール類等が挙げられる。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルブタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の1級アルコール;iso−プロピルアルコール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、メチルアミルアルコール、2−オクタノール、ノニルアルコールや、日本触媒社製「ソフタノール(商品名)」等の炭素数12〜14のアルコール等の2級アルコール;tert−ブタノール、tert−ペンタノール等の3級アルコール等が挙げられ、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等が挙げられ、ジオール類としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等が挙げられ、3価以上のアルコール類やポリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトール、グルコース、フラクトース、ソルビトール、グルコン酸、酒石酸、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
上記アルコールとしてはまた、下記一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましく、このような化合物は、アルコールにおける主成分として含有されることが好ましい。この場合、アルコール中には付加的にその他の成分を含んでいても含んでいなくてもよい。
R1(R2O)nH (1)
式(1)中、R1は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18、好ましくは炭素数2〜8のオキシアルキレン基を表す。nは、R2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0〜300、好ましくは2〜300の数である。
すなわち、本発明の好ましい実施形態としては、上記アルコールが、下記一般式(1);
R1O(R2O)nH (1)
(式中、R1は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R2Oは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、R2Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0〜300の数である。)で表される形態が挙げられる。
なお、平均付加モル数とは、当該化合物1モル中における当該繰り返し単位のモル数の平均値を意味する。
上記R1の炭素数が30を超えたり、上記R2Oの炭素数が18を超えたりすると、エステル化物を製造原料として得られる重合体の水溶性が低下し、セメント添加剤等に用いる場合の用途性能、すなわちセメント分散性能等が低下するおそれがある。また、上記nが300を超えると、一般式(1)で表される化合物と(メタ)アクリル酸との反応性が低下するおそれがある。
上記R1やR2Oの好適な炭素数の範囲は、エステル化物の使用用途により設定されることになる。例えば、エステル化物をセメント添加剤用重合体の製造原料として用いる場合には、R1としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアルキルフェニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜18の直鎖又は枝分かれ鎖のアルキル基及びアリール基とすることが好ましい。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基である。
上記R2Oとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられ、これらの中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。なお、R2Oは、一般式(1)で表される化合物を構成する繰り返し単位であり、各繰り返し単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。このうち、2種以上の異なる繰り返し単位を有する場合には、各繰り返し単位はブロック状に付加していてもよく、ランダム状に付加していてもよく、特に限定されるものではない。
上記nの範囲についても、エステル化物の使用用途により設定されることになり、例えば、エステル化物をセメント添加剤用重合体の製造原料として用いる場合には、2〜300とすることが好ましい。より好ましくは、5〜200であり、更に好ましくは、8〜150である。また、増粘剤等として用いる場合には、10〜250とすることが好ましい。より好ましくは、50〜200である。
上記nが0の場合には、水との溶解性や沸点の点から、上記R1 は、炭素数4以上の炭化水素基であることが好ましい。すなわちnが0の場合には、特にメタノールやエタノール等のアルコールでは低沸点のため生成水と共に蒸発して生成水中に溶解することにより、当該アルコール原料の一部が反応系外に留去され、目的とするエステル化物の収率が低下することから、これを防止するためである。
上記アミド化反応に使用されるアミンとしては特に限定されず、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアミルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三アミン類;アリルアミン、ジアリルアミン等の脂肪族不飽和アミン類;シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン類;アニリン、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアニリン等の芳香族モノアミン類;o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン類;α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン等のアミノナフタリン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ポリエチレングリコール(モノ)アミン、ポリエチレングリコール(ジ)アミン等のオキシエチレンアミン類;尿素、チオ尿素等の尿素類;ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンへのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレンイミンへのプロピレンオキサイド付加物等の高分子類等が挙げられる。
上記エステル化反応やアミド化反応では、(メタ)アクリル酸と共に、その他のカルボキシル基を有する不飽和単量体を用いることができる。カルボキシル基を有する不飽和単量体とは、少なくともカルボキシル基と不飽和結合を有する単量体である。具体的には、クロトン酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、エライジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エステル化反応やアミド化反応においては、必要に応じて、反応系に触媒を添加して行ってもよく、触媒の存在下で反応を行うことが好ましい。特にエステル化反応では酸触媒が好適であり、反応を速やかに進行させることができる。このような酸触媒としては、水和物及び/又は水溶液の形態で用いてもよく、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion(商品名、デュポン社製)」レジン、「Amberlyst 15(商品名)」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記酸触媒の中でも、後述する脱水溶剤と水との共沸温度や反応温度等の点から、常圧(1013hPa)における沸点が高いもの、具体的には、常圧における沸点が150℃以上であるものが好ましい。より好ましくは、200℃以上である。このような酸触媒としては、例えば、硫酸(常圧における沸点:317℃)、パラトルエンスルホン酸(沸点:185〜187℃/13.3Pa(0.1mmHg))、パラトルエンスルホン酸水和物、メタンスルホン酸(沸点:167℃/1333.2Pa(10mmHg))等が挙げられる。これらの中でも、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物を用いることが好適である。
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であれば特に限定されず、例えば、0.4ミリ当量/g以下とすることが好ましい。0.4ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成されるジエステルの量が増加し、それらを用いて合成されるセメント添加剤用重合体のセメント分散能が低下するおそれがある。より好ましくは、0.36〜0.01ミリ当量/gであり、更に好ましくは、0.32〜0.05ミリ当量/gである。なお、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)とは、反応に使用した酸触媒のH+ の当量数(ミリ当量)を、反応原料の合計仕込み量(g)で割った値で表され、具体的には、下記式により算出される値を意味する。
上記酸触媒の使用量としてはまた、各種の化学製品用途に適用される重合体の製造原料となるエステル化物やアミド化物の有用性や、このような適用用途に要求される基本性能である分散性能等に悪影響を及ぼすことになるゲル状物発生の防止・抑制の点から、反応原料の合計重量に対する酸触媒中の酸の重量の比をX(重量%)とし、酸触媒中の水和物及び/又は水溶液として存在する水分の重量の比をY(重量%)とした場合に、0<Y<1.81X−1.62
の関係式を満足することが好ましい。
上記関係式について具体例を挙げて説明すれば、例えば、パラトルエンスルホン酸一水和物を例にとると、反応原料の合計重量に対するパラトルエンスルホン酸の重量の比がX(重量%)であり、反応原料の合計重量に対する一水和物として存在する水分の重量の比がY(重量%)であるのであって、決して、酸触媒以外の酸成分として、例えば、原料の(メタ)アクリル酸等や水分すなわちエステル化反応により生ずる反応生成水等は、上記XやYの対象物とはなり得ない。
上記酸触媒の使用量が上記関係式を満足しない場合には、例えば、Yが0であると、酸触媒中に水和物及び/又は水溶液として存在する水分が存在しないこととなり、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、それらを用いて合成されるセメント添加剤用重合体等の用途性能として、例えば、セメント分散能等が低下するおそれがある。また、Y≧1.81X−1.62であると、エステル化反応時に反応系内で形成されるゲルの量が増加し、上記と同様となる。
上記酸触媒の反応系への添加方法としては、一括、連続又は順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、反応原料と共に一括で仕込むことが好ましい。
上記エステル化反応やアミド化反応は、重合禁止剤の存在下で行われることが好ましい。これにより、反応原料中の不飽和カルボン酸とその生成物であるエステル化物及び/又はアミド化物の重合を防止することできる。このような重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用でき、特に限定されず、例えば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の点から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンを用いることが好ましい。これらは、脱水反応工程においても溶剤留去工程においても極めて有効に重合禁止能を発揮することができる点から極めて有用である。
上記重合禁止剤の使用量としては、反応原料であるアルコール、アミン及び酸の合計仕込量を100重量%とすると、0.001〜1重量%とすることが好ましい。0.001重量%未満であると、重合禁止能の発現が充分でなく、反応原料や生成物の重合を有効に防止しにくくなり、1重量%を超えると、エステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能が低下するおそれがあり、また、過剰に添加することに見合う効果も得られず、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは0.001〜0.1重量%である。
上記エステル化やアミド化反応においては、脱水溶剤の存在下で脱水反応操作を行うことにより、反応系外に生成水と脱水溶剤とを共沸させ、凝縮液化して生成水を分離除去させながら還流させることにより行うことができる。これにより、エステル化反応やアミド化反応で生成する反応生成水を効率よく共沸できる。このような脱水溶剤としては、水と共沸する溶剤であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水との共沸温度が150℃以下であるものが好ましく、60〜90℃であるものがより好ましい。このような脱水溶剤として具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。水との共沸温度が150℃を超えると、反応時の反応系内の温度管理や留出物の凝縮液化処理等の制御等を含む取り扱い性が低下するおそれがある。
上記脱水溶剤を用いる脱水反応操作において、脱水溶剤の使用量としては、反応原料であるアルコール、アミン及び酸の合計仕込量を100重量%とすると、0〜100重量%とすることが好ましい。100重量%を超えると、過剰に添加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的な面から不利となるおそれがある。より好ましくは、2〜50重量%である。
上記脱水反応工程において、エステル化反応やアミド化反応は、回分式や連続式いずれの反応操作方法によっても行ない得るが、回分式で行うことが好ましい。また、反応条件としては特に限定されず、反応が円滑に進行する条件であればよいが、例えば、反応温度としては、30〜180℃とすることが好ましい。より好ましくは、60〜130℃であり、更に好ましくは、90〜125℃であり、最も好ましくは、100〜120℃である。30℃未満であると、脱水溶剤の還流が遅くなり、脱水に時間がかかる他、反応が進行しにくくなるおそれがあり、180℃を超えると、反応原料の一部が分解することにより、エステル化物やアミド化物により得られる重合体において、セメント分散性能等の各種用途における分散性能や増粘特性の低下や、反応原料の重合、留出物への反応原料の混入量の増加、エステル化物やアミド化物の性能及び品質の劣化等が生じるおそれがある。
上記反応条件において、反応時間としては、後述するように反応率が70%以上に達するまでとすることが好ましい。より好ましくは、80%以上に達するまで、更により好ましくは、98%以上に達するまでである。通常では、1〜100時間、好ましくは3〜60時間である。また、反応圧力としては、常圧又は減圧下のいずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
上記エステル化反応やアミド化反応の反応率としては、70%以上となるように設定することが好ましい。70%未満であると、製造されるエステルやアミドの収率が不充分であり、これを重合原料として得られるセメント添加剤用重合体等の用途性能、すなわちセメント分散能等が低下するおそれがある。より好ましくは、70〜99%、更に好ましくは、80〜98%である。なお、上記反応率とは、反応原料であるアルコールやアミンの仕込み時及び反応終了時の量の比率であって、例えば、下記測定条件で液体クロマトグラフィー(LC)により各々のピークの面積として測定することにより、下記式により算出される値(%)である。
反応率測定条件
解析装置:Waters社製 Millennium クロマトグラフィーマネージャー(商品名)
検出器:Waters社製 410 RI検出器(商品名)
使用カラム:GLサイエンス社製 イナートシルODS−2(内径4.6mm、長さ250mm)(商品名) 3本
カラム温度:40℃
溶離液:水8946g、アセトニトリル6000g及び酢酸54gを混合して、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH4.0に調整した溶液を用いる。
流速:0.6ml/min
本発明の脱水反応生成物の製造方法では、脱水反応工程において酸触媒を用いた場合には、酸触媒や(メタ)アクリル酸を中和する中和工程を行うことが好ましい。これにより、触媒が活性を失い、エステル化反応やアミド化反応により得られる脱水反応生成物の加水分解が抑制され、重合に関与しない不純物の発生が抑制された結果、重合体の品質や性能の低下を抑制することが可能となる。
上記中和工程の方法としては、例えば、エステル化反応やアミド化反応の終了後、酸触媒を中和剤で中和することにより行う方法が好ましい。
上記中和剤としては、酸触媒を中和できるものであれば特に制限はない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等を挙げらることができ、これらが1種又は2種以上使用される。また、中和剤の形態としては特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液の形態とすることが好ましい。
上記中和工程では、酸触媒や(メタ)アクリル酸が中和されることになるが、酸触媒の全部と、(メタ)アクリル酸の一部が中和されるように設定することが好ましい。この場合、中和される(メタ)アクリル酸は、エステル化反応やアミド化反応後の残りの(メタ)アクリル酸を100重量%とすると、20重量%以下、好ましくは、0.01〜5重量%であることが好ましい。なお、酸触媒と(メタ)アクリル酸とでは、酸触媒の方が酸強度が大きいため、酸触媒から中和されることになる。
上記中和工程における中和方法では、脱水溶剤中でエステル化反応やアミド化反応を行う場合には、アルカリと共に多量の水を反応系に添加することが好ましい。すなわち多量の水がない状態では、アルカリが脱水溶剤に難溶であるために濃い状態で系内に浮遊し、このような高濃度のアルカリの浮遊は中和に消費されるまでの長時間にわたって消失せず、エステル化物やアミド化物の加水分解を引き起こすことになる。この場合、水の添加量としては、アルカリの使用形態にもよるが、例えば、40〜60重量%のアルカリ水溶液を中和剤として添加する場合には、アルカリ水溶液とは別に、アルカリ水溶液の1重量部に対して、通常5〜1000重量部とすることが好ましい。より好ましくは、10〜100重量部である。5重量部未満であると、アルカリが反応系内で不均一になるおそれがあり、1000重量部を超えると、生産性を確保するために中和槽が別途必要となる等、生産コストが上昇するおそれがある。
上記中和工程における中和温度としては、例えば、90℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、0〜80℃である。更により好ましくは25〜65℃である。90℃を超えると、添加される中和剤が加水分解の触媒として作用し、加水分解生成物を多量に生成するようになるおそれがある。80℃以下であると、加水分解生成物の生成がより充分に抑制されることになるが、0℃未満であると、反応液が粘稠になることに起因して攪拌がしにくくなる他、反応後に水を留去するため所定の温度まで降温するのに長時間を要したり、室温よりも低い温度まで降温するのに新たに冷却手段(装置)を設けたりする必要が生じて生産コストが上昇するおそれがある。
脱水溶剤を重合工程等に利用する場合を除いては、該脱水溶剤を留去することが好ましい。上記溶剤留去工程において、脱水溶剤の留去方法としては特に限定されず、例えば、脱水溶剤のみを留出するようにして留去してもよく、他の適当な添加剤を加えて留去してもよいが、水を用いて脱水溶剤と共沸させて留去することが好ましい。この場合、中和工程が行われたことにより、反応系内に酸触媒やアルカリが実質的に存在しないため、水を加えて昇温しても加水分解反応が起こらない。このような方法により、より低い温度で脱水溶剤を除去することができることになる。
上記留去方法の条件としては、反応系内の脱水溶剤を好適に留出(蒸発)させるように設定すれば特に限定されず、例えば、溶剤留去中の反応槽内の液温(常圧下)としては、水を用いる場合には、通常80〜120℃とすることが好ましい。より好ましくは、90〜110℃である。また、水を用いない場合には、通常80〜160℃とすることが好ましい。より好ましくは、90〜150℃である。上記のいずれも場合にも、上記温度よりも低いと、脱水溶剤を蒸発させるのに充分な温度(熱量)とはならないおそれがあり、上記温度よりも高いと、重合を引き起こすおそれがある他、多くの熱量が大量の低沸点原料の蒸発に消費されるおそれがある。反応槽内の圧力としては、常圧下又は減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
上記溶剤留去工程において用いる装置系としては、脱水反応工程で用いた装置系をそのまま使用することが好ましい。
本発明の脱水反応生成物の製造方法により得られる脱水反応生成物は、各種の重合体、すなわちセメント添加剤や炭酸カルシウム、カーボンブラック、インク等の顔料分散剤、スケール防止剤、石膏・水スラリー用分散剤、石炭・水スラリー(CWM)用分散剤、増粘剤等の化学製品に用いられる重合体を製造するための製造原料として好適に適用されることになる。
以下では、脱水反応生成物の製造方法により得られる脱水反応生成物を製造原料としてセメント分散剤用重合体を製造する方法や、該セメント分散剤用重合体を含有するセメント添加剤を製造する方法、該セメント添加剤を使用する方法について説明する。
上記セメント分散剤用重合体としては、得られた脱水反応生成物と不飽和カルボン酸系単量体を必須成分とする単量体を重合して得られるポリカルボン酸系重合体が挙げられる。このようなポリカルボン酸系重合体の重合方法としては、特に制限はなく、例えば、重合開始剤を用いての溶液重合や塊状重合等の公知の重合方法を採用できる。
上記不飽和カルボン酸系単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデシレン酸、エライジン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;これらのジカルボン酸とアルコールのモノエステル類等を挙げることができ、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩を挙げることができる。
ポリカルボン酸系重合体には、必要に応じて不飽和カルボン酸系単量体以外の単量体を共重合させることもできる。この様な単量体としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類やそれらの一価金属塩、二価金属塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素数1〜18、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールやベンジルアルコール等のフェニル基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
上記ポリカルボン酸系重合体は、特定の重量平均分子量を有する重合体であることが好ましい。例えば、下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量としては、例えば、500〜500000であることが好ましい。500未満であると、セメント添加剤の減水性能が低下するおそれがあり、500000を超えると、セメント添加剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するおそれがある。より好ましくは、5000〜300000であり、最も好ましくは8000〜100000の範囲である。
上記GPCは、溶離液貯蔵槽、溶離液の送液装置、オートサンプラー、カラムオーブン、カラム、検出器、データ処理機等から構成される。例えば、下記の市販の装置を組み合わせることにより測定条件を設定して分子量を測定することができる。
分子量測定条件
機種 :LCモジュール1plus(商品名、WATERS社製)
検出器:示差屈折計(RI)410示差屈折計(商品名、WATERS社製)
溶離液:0.05M 酢酸ナトリウム、アセトニトリル/イオン交換水=40/60混合液を酢酸でpHを6に調整したものを使用する。
溶離液の流量:1.0ml/min
カラム:
TSK−GEL ガードカラム(内径6mm、長さ40mm)
+TSK−GEL G−4000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)+TSK−GEL G−3000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)+TSK−GEL G−2000SWXL(内径7.8mm、長さ300mm)(いずれも商品名、東ソー社製)
カラムオーブンの温度:40℃
検量線:検量線は、標準試料の分子量や数、ベースラインの引き方、検量線近似式の作製方法等により変化する。このため、以下の条件を設定することが好ましい。
1.標準試料
標準試料には、市販の標準ポリエチレンオキシド(PEO)と標準ポリエチレングリコール(PEG)を使用する。標準試料には、次の分子量のものを使用することが好ましい。
1470、4250、7100、12600、24000、46000、85000、219300、272500(合計9点)
これらの標準試料は、以下の点に配慮して選択した。
(1)分子量900以上の標準試料を7点以上使用する。
(2)分子量900〜2000の標準試料を少なくとも1点含む。
(3)分子量2000〜60000の標準試料を少なくとも3点含む。
(4)分子量200000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
(5)分子量270000±30000の標準試料を少なくとも1点含む。
2.ベースラインの引き方
分子量の上限:水平で安定なベースラインからピークが立ち上がる点とする。
分子量の下限:主ピークの検出が終了した点とする。
3.検量線の近似式
上記標準試料を用いて作製した検量線(「溶出時間」対「log分子量」)は3次式の近似式を作製し、これを計算に用いる。
上記ポリカルボン酸系重合体を含有するセメント分散剤では、良好なセメント分散性能及びスランプ保持性能を発揮することができるが、必要により、ポリカルボン酸系重合体以外の公知のセメント添加剤(セメント分散剤)を更に配合してもよい。
上記セメント分散剤ではまた、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤等を配合することができる。
このようにして得られるセメント分散剤は、セメントや水を含有するセメント組成物として、例えば、ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いられることになる。
上記セメント分散剤の水硬性材料への添加量としては、従来のセメント分散剤に比較して少量の添加でも優れた効果を発揮することになるが、例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメントの重量を100重量%とすると、0.001〜5重量%となるような比率の量を練り混ぜの際に添加すればよい。0.001重量%未満であると、セメント分散剤の作用効果が充分に発揮されないおそれがあり、5重量%を超えると、その効果は実質的に頭打ちとなり、経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは、0.01〜1重量%である。これにより、高減水率の達成、スランプロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の作用効果を奏することになる。
本発明の脱水反応生成物の製造方法について、装置構成の一実施形態の概略図を示した図2を用いて説明する。なお、このような実施形態は本発明の代表的な一例であり、本発明の実施形態はこれに限られるものではない。
図2では、先ず所定温度まで昇温して脱水反応工程を行った後、所定温度まで降温して中和工程を行い、次いで所定温度まで昇温し脱水溶剤の溶剤留去工程を行うための装置構成が示されている。このような装置構成では、反応槽101内で脱水反応時に生成される反応生成水を含む留出物を留出させ、ゲル状物の発生を防止しながらコンデンサ125にて凝縮液化した後に、水分離器127にて反応生成水を分離除去し、残りの留出物をポンプ142により所定の溶剤循環速度で還流させて反応槽101に戻す循環機構が形成されている。このような循環機構では、反応槽101上部と向流又は並流接触形式の縦型多管式円管形コンデンサ125の塔頂部とが連結管123により連結され、コンデンサ125の下底部と水分離器127の上部とが供給管(配管)129により連結されることにより、反応槽101と水分離器127とが供給管129で繋がっている。
以下では、脱水反応としてエステル化反応を行う場合について説明する。
反応槽101は、熱交換手段として、温水や加庄スチーム等を熱媒体に使用し得る外部ジャケット102が設けられている。また、反応槽101内には、反応温度を計測するための温度センサ(図示せず)が適当な数カ所の部位に取り付けられている。このような温度センサは、反応温度を規定の温度に保つために制御部本体(図示せず)に電気的に接続されている。上記装置機構としては、例えば、反応槽101に取り付けられたジャケット102等が挙げられる。
上記実施形態における水分離器127としては、材質をSUS304製とし、その内部には邪魔板131が備えられ、邪魔板131で区切られた2つの室(A)133及び室(B)134が形成されている。この水分離器127では、供給管129は、室(A)133の液相部に開放口を有すると共に、供給管129の側面に空けた複数個の穴162により気相部にも開放口を有し、かつ、この気相部の開放口が邪魔板131と反対方向にある。図2中、水分離器127内部の矢印は、開放口からの留出物の流れ方向を示し、供給管129の複数個の穴162の部分が拡大図で示されている。また、水分離器127の下部の径が上部の径よりも細くなっている。更に、脱水溶剤と生成水との界面の検出装置として界面計(A)136及び気相部と液相部(脱水溶剤)との気液界面の検出装置として界面計(B)138が設けられ、界面計(A)136及び界面計(B)138の内部にゲル化防止剤を作用させている。
上記水分離器ではまた気相部にコンデンサ128が取付けられている。水分離器の気相部中の脱水溶剤や揮発性の(メタ)アクリル酸等は、コンデンサ128で充分に冷却されるため、系外に放出されることはない。また、コンデンサ128には開放口(いわゆるベント)が備えられ、これにより、反応槽を加熱したときにも反応系内の圧力が過剰に上昇することはなく、計器の破損を防止している。
上記水分離器127ではまた、コンデンサ125で凝縮液化された留出物が貯められる側の室(A)133の下部と生成水の処理タンク135とが配管137により連結され、配管137にはコントロールバルブ140が備えられ、処理タンク135には廃水用の配管139が連結されている。水分離器127のもう一方の室(B)134の下部は反応槽101と配管141で連結され、この配管141にもコントロールバルブ(図示せず)が備えられ、反応槽101内の生成水と共沸する脱水溶剤を貯蔵する脱水溶剤貯蔵タンク143と連結された配管145が合流(連結)されている。また、合流点の手前(水分離器127側)の配管141の経路上には循環ポンプ142が設置され、合流点の後方(反応槽101側)の配管141の経路上には流量計144が設けられている。更に、該流量計144には、計測される流量を積算し、溶剤循環速度を算出するための流量計測システム本体(図示せず)と電気的に接続されている。
上記反応槽101には、アルコール原料用のステンレススチール(例えば、SUS304)製の原料貯蔵タンク103、(メタ)アクリル酸原料用の原料貯蔵タンク105、酸触媒用の触媒貯蔵タンク107、及び、脱水反応後に酸触媒を中和処理するための中和剤(中和剤水溶液)を貯蔵したカーボンスチール(例えば、高炭素鋼)製の中和剤貯蔵タンク111が備えられ、それぞれ配管113、115、117及び121により連結されている。配管117には、ポンプ167が設けられている。また、脱水反応時の反応系(反応槽101)内の重合を防止するための重合禁止剤を貯蔵した重合禁止剤貯蔵タンク109が配管119によりポンプ169を介して連結されている。
上記原料貯蔵タンク105では、(メタ)アクリル酸が重合しやすく、例えば、メタクリル酸では、長期の保存や熱等によっても重合するため、通常では0.1重量%メトキノン等の微量の重合禁止剤が(メタ)アクリル酸に添加されている。また、図2では、常時30〜40℃に保温するため、ポンプ116を用いた外部ジャケット150(保温手段)を有する循環経路151が設けられ、(メタ)アクリル酸原料を常に30〜40℃に保持して重合しないように循環させるような装置構成となっている。
上記原料貯蔵タンク105、配管115、ポンプ116及び循環経路151内部には、腐食性を有する(メタ)アクリル酸による腐食を防止するため、合成樹脂等の耐食性材料によるライニング加工が施されているものを使用することが好ましい。同様に、触媒貯蔵タンク107、配管117、ポンプ167にも酸触媒による腐食を防止するためにテフロン(登録商標)、塩化ビニル等合成樹脂等の耐酸性材料によるライニング加工が施されているものを使用することが好ましく、ポンプ167にはマグネットポンプを用いることが好ましい。重合禁止剤の貯蔵タンク169、ゲル化防止剤の貯蔵タンク147、159には、攪拌装置を備えている(図示せず)。粉末状の重合禁止剤を溶剤に溶解させる場合には、充分に攪拌を行い、完全に溶解させることが好ましい。しかしながら、何らかの原因で完全に溶解していない重合禁止剤又はゲル化防止剤の溶液を、ポンプ160、169、179で移送すると、ポンプは閉塞を起こし停止することがある。このような事態は、溶解さえ充分であれば起こり得ないことであるが、ポンプ160、169、179には、少々のスラリー状の液体が移送されても滞りなく移送を継続できるポンプが好ましい。また、溶剤に溶解した重合禁止剤又はゲル化防止剤を移送する場合には、テフロン(登録商標)、バイトン(登録商標)等の耐薬性の材料でシールされたポンプを使用することが好ましい。この様な条件を満たすポンプとしては、モーノポンプ(兵神装備社製)に適当なシールを施すのが最適である。また、反応槽101の下部には、エステル化反応により反応槽101内部に合成されたエステル化物を回収するための配管153が連結されている。
上記図2ではまた、コンデンサ125におけるゲル状物の発生を抑制するため、コンデンサ125の塔頂部には噴霧ノズル126が設けられており、この噴霧ノズル126は、留出物のゲル化防止用のゲル化防止剤を貯蔵するゲル化防止剤貯蔵タンク147と配管149によりポンプ179を介して連結されている。同様に、反応槽101と連結管123の接続部付近には、噴霧ノズル(図示せず)が連結管123側から反応槽101側に向けて噴霧できるように設けられており、この噴霧ノズルは水分離器127と配管141により連結されている。
上記循環機構の一部は、脱水反応後に、系内(反応槽101内)の生成物であるエステル化物を含有する溶液から脱水溶剤を含む留出物を留出し、ゲル状物の発生を防止しながら凝縮液化した後に、脱水溶剤を含む留出物を系外に除去するための循環機構としても利用されている。このような循環機構では、水分離器127に、配管157を介して、脱水溶媒を減圧吸引により除去するために真空ポンプ(エゼクタ)155が取り付けられている。また、上記図2では、留出物中の水相でのゲル化を充分に防止するため、新たにコンデンサ125の塔頂部に設けられた噴霧ノズル126に、水溶性重合禁止剤を溶かした水溶液(以下、単に「水溶性ゲル化防止剤」ともいう)を貯蔵する水溶性ゲル化防止剤貯蔵タンク159が配管161により連結されている。
上記図2では、以上の装置構成により、以下に説明するように脱水反応生成物の製造が行われることになる。
先ず、脱水反応工程として、反応槽101内部に、各原料貯蔵タンク103及び105、触媒貯蔵タンク107、重合禁止剤貯蔵タンク109、並びに、脱水溶剤貯蔵タンク143より、配管113、115、117、119及び配管145を介した配管141を通じて、反応原料であるアルコール及び(メタ)アクリル酸、酸触媒、重合禁止剤及び脱水溶剤をそれぞれ所定量を仕込み、適宜設定された反応温度、ジャケット温度、圧力等の反応条件でエステル化反応を行う。これにより逐次生成する生成水は、反応槽101内に仕込まれた脱水溶剤と共沸され連結管123を通じて留出されることになる。留出されてきたガス流体、すなわち溶剤−水共沸物である留出物は、コンデンサ125に通され凝縮液化される。また、上記図2では、ゲル化防止剤貯蔵タンク147より配管149を通じてコンデンサ125の塔頂部に設けられた噴霧ノズル126から所定量のゲル化防止剤を連続的に噴霧して、ガス流体や凝縮液化物である留出物と接触させている。
次いで、凝縮液化された留出物は、コンデンサ125の下部より供給管129を通じて水分離器127の室(A)133に貯められ、水相(下相)と溶剤相(上相)の2層に分離されることになる。このとき、供給管129の開放口が上述したように設定されていることから、水分離器127へ供給される留出物の圧力等が変動しても、突沸の発生、界面の検知精度の低下、界面の液ゆれ、ゲル状物の形成等の不具合が充分に抑制されることになる。また、下相の生成水は、配管137を通じて逐次抜かれ、生成水の処理タンク135に貯められる。このとき、界面計(A)136で水相と溶剤相との界面を検知しながら該界面が水分離器127の下部の細い部分に保たれるように、配管137に備えられたコントロールバルブで水相の抜き取り量(留出量)を調整することにより制御されている。そして、処理タンク135内で、必要に応じて、環境基準(廃水基準)値を満足するように化学的又は生物学的に処理された後、配管139を通じて、本装置系外に廃水される。一方、室(A)133において、ノズル126より噴霧されたゲル化防止剤を含有する上相となる溶剤相は、邪魔板131をオーバーフローして隣の室(B)134に貯められる。そして、溶剤相はポンプ142を介し、配管141を通じて所定の溶媒循環速度で還流され反応槽101に戻されることになる。このとき、配管141に備えられたコントロールバルブやポンプ142により溶媒循環速度が調整されることになる。これらの操作において、水分離器127が上述した構造であるため、本発明の作用効果を充分に発揮して、製造工程での不具合の発生を抑制すると共に、生成するエステル化物の性能や品質の低下を充分に抑制することが可能となる。このとき一部は反応槽101と連結管123の接続部付近に設けられた噴霧ノズルを通して噴霧され、反応槽101と連結管123の接続部付近でのゲル化を防止している。
更に、中和工程として、脱水反応終了後、降温し反応槽101の内温(液温)が、例えば、60℃以下に降温するまで、反応槽101の外部ジャケット102に冷媒を通じて降温し、その後は所定温度以下を維持するように適宜調整しながら、中和剤貯蔵タンク111より配管121を通じて反応槽101内に、多量の水により所定の濃度まで薄められたアルカリ水溶液(中和剤)を添加することにより酸触媒や(メタ)アクリル酸の一部を部分中和することになる。
上記中和工程が終了後、溶剤留去工程として、常圧下に、反応槽101の外部ジャケット102に熱媒(加圧スチーム)を通じて所定の温度まで昇温することにより、反応槽101内の脱水溶剤及び部分中和処理の際に加えられている水の他、(メタ)アクリル酸等も共沸されて、連結管123を通じて留出されることになる。留出されてきたガス状流体である溶剤−水共沸物は、コンデンサ125に通され凝縮液化されることになる。
上記溶剤留去工程において凝縮液化された留出物は、留出した脱水溶剤を反応槽101に還流させない以外は、上記脱水反応工程における凝縮液化された留出物と同様に処理されることになる。
上記溶剤留去工程においては、溶剤と共に脱水反応工程に比して多量の水がコンデンサ125に入る。重合性化合物が水相側においてゲル化することを防止するため、水溶性ゲル化防止剤貯蔵タンク159より配管161を通じてコンデンサ125の塔頂部に設けられた噴霧ノズル126から所定量の水溶性ゲル化防止剤を連続的に滴下して、留出物と接触させることが好ましい。
上記溶剤留去工程の後、反応槽101内に、配管(図示せず)により連結されている水貯蔵タンク(図示せず)又は上水管(図示せず)より調整水を添加して所望の脱水反応生成物の水溶液を得ることになる。得られる脱水反応生成物の水溶液は、配管153より回収(貯蔵)される。