JP2007005189A - 有機膜形成用マスク,封止膜形成装置並びに封止膜の形成方法 - Google Patents

有機膜形成用マスク,封止膜形成装置並びに封止膜の形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 欠陥のない良好な封止膜を形成できる極めて実用性に秀れた画期的な有機膜形成用マスク,封止膜形成装置並びに封止膜の形成方法を提供することである。
【解決手段】 有機材料を入射して有機膜3を基板2上の有機EL素子1に被覆する際の前記開口部7の開口形状を、前記基板2に重合する側となるマスク裏面側端開口部7Aの開口径とマスク表面側端開口部7Bの開口径とを同一開口径とせず、前記マスク裏面側端開口部7Aの開口径が前記マスク表面側端開口部7Bの開口径より大きくなる開口形状に形成し、このマスク裏面側端開口部7Aの前記有機EL素子1からの離反度を、このマスク裏面側端開口部7Aと前記基板2上の有機EL素子1に被覆する前記有機膜3とが接触しない離反度に設定したものである。
【選択図】 図6

Description

本発明は、有機膜形成用マスク,封止膜形成装置並びに封止膜の形成方法に関するものである。
有機EL素子は大気中の水分や酸素に弱く、封止缶またはガラスと呼ばれる構造物の封止キャップを紫外線硬化型樹脂でガラス基板に接着し、封止している。
しかしながら、本来有機EL素子は1μm以下の極薄い素子であり、この特徴を生かすために薄膜による膜封止が求められ、開発が進められている。
既に、無機EL素子においては、特許文献1において絶縁膜と金属膜との複合膜を形成することが示されており、特許文献2においてポリイミド樹脂と酸化珪素または窒化珪素の層を積層することが示されている。
ところで、有機EL素子の場合、特許文献3に示されるように、許容水分透過率が約10−6g/m/日と非常に小さく見積もられ、液晶素子に比べて千分の一以下が要求され、非常に高い水分のバリア性(封止性)が要求されている。
有機EL素子においても、特許文献4には気相法による膜に光硬化型樹脂を塗布して少なくとも二層構造からなる封止方法が示されており、特許文献5には樹脂層の上に酸化物、窒化物、あるいは金属層を形成することが示されている。
水分や酸素の封止性能は、金属や酸化物及び窒化物が高いことが知られているが、光透明性と配線短絡を防止するために絶縁性も要求されることから、従来から窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素及び酸化アルミニウムなどの無機膜が多用されている。
しかし、無機層単膜では、欠陥も含めて封止性能が充分に発揮できないため、一般的には、有機膜から成るバッファ層と無機膜から成るバリア層とを積層またはこれらを多層積層することにより封止性能を向上せしめている。
即ち、バッファ層たる有機膜は、水分の封止性能は小さいが有機EL素子表面を平坦化及び平滑化して無機膜の欠陥を少なくする機能を有し、この有機膜上に無機膜を形成することで、欠陥の少ない無機膜を形成でき、有機膜及び無機膜の積層断面において高い封止性能を発揮できることになる。例えば、特許文献3で示されるアクリレート含有ポリマーは、特許文献6で示される液体モノマーを液体状に蒸着して電子線や紫外線光にて重合される。この有機膜は液体であるために、有機EL素子の平坦化及び平滑化に秀れ、バリア膜の欠点を著しく減少させることができる。
図1に従来の有機EL素子21を封止する封止膜24の断面図を示す。一種類のパターン形成マスク(封止膜形成用マスク)を用いて、有機膜22及び無機膜23を積層した結果である。この場合、有機膜22の端面にはバリア膜である無機膜23が形成されておらず、大気中の水分が容易に有機膜22に浸透し、有機EL膜21が劣化することになる。尚、図2も同様に一種類のパターン形成マスクで封止膜24を形成した場合であり、有機膜22の端面に無機膜23が十分形成されていない状態を示す。この場合も図2より明らかなように容易に有機膜22の端部から水分が浸透することになる。
そこで、図3に図示したような有機膜22の端面をも無機膜23で覆う封止膜形状が提案されている。この封止膜24は、有機用パターン形成マスク(有機膜形成用マスク)と、この有機用パターン形成マスクより開口が大きい無機用パターン形成マスク(無機膜形成用マスク)とを用いて有機膜22と無機膜23とを交互に積層することで形成される。
また、特開平10−247587号公報に示されるように、一種類のパターン形成マスクのみで、有機EL素子の金属陰極を回り込みの悪い蒸着法で形成し、更に有機保護層を回り込みの良いスパッタリング法で形成する方法も提案されている。
特開昭63−96895号公報 特開昭64−41192号公報 特表2002−532850号公報 特開平4−267097号公報 特開平10−312883号公報 特表昭63−503552号公報 特開平10−247587号公報
上記図3に図示したような有機膜22の端面をも無機膜23で覆う封止膜形状によれば、理論上は確かに良好な封止性能が達成されることになるが、実際の封止膜形成工程においては以下のような問題点があり、その封止性能は未だ不十分であることを本発明者等は鋭意研究の結果見出した。
即ち、実際の封止膜形成工程においては、蒸着法、CVD法、スパッタリング法のいずれの方法で形成しても、図4に図示したように形成された膜がマスク24に接することになる(マスク裏面側端開口部Xに膜が接触する)が、特に粘性を有する有機膜22とマスク24とが接触すると、マスク24を基板20上から離脱せしめる際、このマスク24と接触した有機膜22の端部には必ず凹凸欠陥またはパーティクル付着による欠陥が発生してしまう。
このような有機膜上の欠陥は、図5に図示したように、有機膜22上に積層される無機膜23に必ずピンホール状の欠陥Aを発生せしめ、無機膜23の封止性能を著しく低下させることになる。
このように実際の有機EL素子において、封止膜24の端部に欠陥が発生した場合、この端部から水分が浸透し、水分が有機EL素子21上の最初の有機膜22を拡散することにより、容易に有機EL素子21に到達し、特性の劣化やダークスポットと呼ばれる非表示欠陥を発生させる。
この現象は、有機EL素子21の上に有機膜22を介さずに直接無機膜23を形成することで解決できるように思われるが、無機膜23だけでは十分な封止性能が得られないことは周知であり、有機EL素子21上に直に無機膜23が存在しても水分はこの無機膜23の欠陥部を通って有機EL素子21に到達してしまう。
また、無機膜と有機膜を一種類のパターン形成マスクでマスク交換をすることなく、回り込みの良し悪しを利用して保護膜を形成する場合も、封止膜端部は薄い膜で形成されることになり、十分な封止効果が得られない。
一方、有機EL素子、特に小型の表示素子においては、素子面と電極引き出し部(外部信号接続部)の間は短い距離が要求されており(約1〜3mm)、有機EL素子外周の封止代や接続部を極力短くしたいという要望もある。
本発明は、上述のような問題点を見出し、これを解決したもので、有機膜及び無機膜に欠陥が発生することを阻止して、高い封止性能が得られる欠陥のない良好な封止膜を形成できる極めて実用性に秀れた画期的な有機膜形成用マスク,封止膜形成装置並びに封止膜の形成方法を提供するものである。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
有機EL素子1が形成された基板2上に、この有機EL素子1を被覆するように形成される有機膜3と無機膜4とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜5の前記有機膜3を形成する際、前記基板2に重合され、前記基板2上の有機EL素子1を露出させ有機材料が入射する開口部7を有する有機膜形成用マスクであって、有機材料を入射して有機膜3を基板2上の有機EL素子1に被覆する際の前記開口部7の開口形状を、前記基板2に重合する側となるマスク裏面側端開口部7Aの開口径とマスク表面側端開口部7Bの開口径とを同一開口径とせず、前記マスク裏面側端開口部7Aの開口径が前記マスク表面側端開口部7Bの開口径より大きくなる開口形状に形成し、このマスク裏面側端開口部7Aの前記有機EL素子1からの離反度を、このマスク裏面側端開口部7Aと前記基板2上の有機EL素子1に被覆する前記有機膜3とが接触しない離反度に設定したことを特徴とする有機膜形成用マスクに係るものである。
また、前記開口部7にマスク裏面側の開口縁部を所定量切り欠く切欠部8を設け、この開口部7のマスク表面側の径小部を、マスク裏面側の径大部への有機材料の入射を遮る遮蔽部10に設定して、この遮蔽部10により前記マスク裏面側の径大部への有機材料の付着を阻止し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載の有機膜形成用マスクに係るものである。
また、前記切欠部8は、前記マスク表面側端開口部7Aと基板2上の有機EL素子1に被覆される有機膜3とが接触し得ない所定高さ位置から前記マスク裏面側の開口縁部を所定量切り欠くことで、開口部7のいずれの孔内面も前記有機膜3と接触しないように構成したことを特徴とする請求項2記載の有機膜形成用マスクに係るものである。
また、夫々異なる径の開口部を有する複数のマスク11,12をその開口部11A,12Aを連通せしめて貼り合わせ、段差部を有する開口部7を形成し、この段差部を前記切欠部8に設定したことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスクに係るものである。
また、前記基板2の裏面側に配設されるマグネット9により基板2表面に密着重合し得るように磁性材料で形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスクに係るものである。
また、有機EL素子1が形成された基板2上に、有機膜3と無機膜4とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜5をこの有機EL素子1を被覆するように形成する封止膜形成装置であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスク6と、この有機膜形成用マスク6を前記基板2表面上に密着重合せしめるマグネット9を基板2裏面側に配設した有機膜形成用マスク重合機構と、無機膜4を形成する際に基板2に重合される無機膜形成用マスク14と、この無機膜形成用マスク14を基板2表面上に重合せしめる無機膜形成用マスク重合機構とを設けたことを特徴とする封止膜形成装置に係るものである。
また、有機EL素子1が形成された基板2上に、有機膜3と無機膜4とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜5をこの有機EL素子1を被覆するように形成する封止膜の形成方法であって、基板2に請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスク6を重合せしめ、有機膜形成用マスク6の開口部7から有機材料を入射せしめて基板2上の有機EL素子1を被覆するように有機膜3を形成した後、前記有機膜形成用マスク6を基板2から離脱せしめて、この有機膜形成用マスク6を離脱せしめた基板2に無機膜形成用の開口部15を有する無機膜形成用マスク14を重合せしめ、この無機膜形成用マスク14の開口部15から無機材料を入射せしめて基板2上の有機EL素子1を被覆する有機膜3を被覆するように無機膜4を形成することを特徴とする封止膜の形成方法に係るものである。
本発明は、上述のように構成したから、有機膜と無機膜とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜の有機膜を形成する際、有機膜とマスクとが接触せず、有機膜にマスクとの接触が原因で生じる欠陥が生じることが阻止されるから、この有機膜上に欠陥の極めて少ない良好な無機膜を形成できることになり、よって、例えば請求項6記載の発明や請求項7記載の発明を用いて、高い封止性能が得られる欠陥のない良好な封止膜を形成できる極めて実用性に秀れた画期的な有機膜形成用マスクとなる。
また、請求項2,3記載の発明においては、本発明を一層容易に実現できる一層実用性に秀れたものとなる。
また、請求項4記載の発明においては、複雑な加工を必要とすることなく極めて簡易に作製できる一層実用性に秀れたものとなる。
また、請求項5記載の発明においては、例え上記したマスクに撓みやうねりがあっても良好に基板に密着重合できる一層実用性に秀れたものとなる。
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
例えば、基板2に有機膜形成用マスク6を重合せしめ、有機膜形成用マスク6の開口部7から有機材料を入射せしめて基板2上の有機EL素子1を被覆するように有機膜3を形成した後、前記有機膜形成用マスク6を基板2から離脱せしめて、この有機膜形成用マスク6を離脱せしめた基板2に無機膜形成用の開口部15を有する無機膜形成用マスク14を重合せしめ、この無機膜形成用マスク14の開口部15から無機材料を入射せしめて基板2上の有機EL素子1を被覆する有機膜3を被覆するように無機膜4を形成することで、有機EL素子1が形成された基板2上に、この有機EL素子1を被覆するように形成される有機膜3と無機膜4とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜5を形成する。
この際、開口部7のマスク裏面側端開口部7Aは、前記有機膜3と接触しない程度に有機EL素子1から離反せしめられており、従って、有機材料を基板1上に付着せしめて有機EL素子1を被覆するように有機膜3を形成しても、前記マスク裏面側端開口部7Aと前記有機膜3とは接触せず、従来のマスクと有機膜との接触が原因で生じる有機膜の凹凸欠陥やパーティクル付着による欠陥は生じない。
従って、凹凸欠陥やパーティクル付着による欠陥の生じていない有機膜3の上に無機膜4を形成することができるから、この無機膜4に欠陥が生じることも阻止できることになり、極めて欠陥の少ない秀れた封止性能を有する無機膜で有機EL素子1及び有機膜3を被覆して、有機EL素子1及び有機膜3への水分等の侵入を一層良好に阻止できることになり、それだけ有機EL素子の高精度化・長寿命化を図れることになる。
更に、有機膜3と無機膜4とに欠陥が生じないことで、有機EL素子1の外周の封止代を短くしても水分等の侵入を十分阻止できる構成を実現できるから、素子サイズを小型化することができ、基板当たりのパネル数を増やして生産性を向上させることができることになる。
即ち、開口部7の開口形状を、マスク裏面側端開口部7Aの開口径とマスク表面側端開口部7Bの開口径とを同一開口径とせず、例えばマスク裏面側の開口縁部を切欠する切欠部8を設けてマスク裏面側端開口部7Aの開口径がマスク表面側端開口部7Bの開口径より大きくなる開口形状に形成することで、有機材料が入射するマスク表面側端開口部7Bに対してマスク裏面側端開口部7Aが奥まった位置となり、それだけマスク裏面側端開口部7Aの近傍には前記有機材料が付着しにくいことになり、このマスク裏面側端開口部7Aの奥まり度合(有機EL素子1からの離反度)を適宜設定するだけで、前記有機EL素子1を被覆する有機膜3とマスク裏面側端開口部7Aとが接触することを確実に阻止できることになる。
また、マスクの裏面側の開口縁部に例えば前記切欠部8を設けるだけで、上述のような秀れた封止性能を実現できるから、それだけ簡易に且つコスト安に実現できることになる。
特に、径の異なる開口部を有する複数のマスク11,12をその開口部11A,12Aを連通せしめて貼り合わせることで段差部を有する開口部7を形成してこの段差部を切欠部8に設定することで複雑な加工を必要とすることなく極めて簡易に作製できる。
また、例えば、前記切欠部8を開口部7のマスク裏面側の開口縁部を所定量切り欠く構成とし、開口部7のマスク表面側の径小部を、マスク裏面側の径大部への有機材料の入射を遮る遮蔽部10に設定して、この遮蔽部10により前記マスク裏面側の径大部への有機材料の付着を阻止し得るように構成した場合には、前記マスク表面側の径小部が言わば庇の役割を発揮し、マスク表面側端開口部7Bに対して奥まった位置にある前記マスク裏面側端開口部7Aへの有機材料の付着を遮って、有機EL素子1を確実に被覆できる構成でありながら、この有機EL素子1の外周位置の有機膜3の端部がマスク裏面側端開口部7Aに接触しない構成を簡易に実現可能となる。
また、例えば、切欠部8を、前記マスク表面側端開口部7Bと基板2上の有機EL素子1に被覆される有機膜3とが接触し得ない所定高さ位置から前記マスク裏面側の開口縁部をマスク面方向に所定量切り欠くことで、開口部7のいずれの孔内面も前記有機膜3と接触しないように構成した場合には、前記基板2上の有機EL素子1を被覆するように有機膜3を形成する際、マスク裏面側端開口部7Aだけでなく、マスク表面側端開口部7B等の開口部7のいずれの孔内面も有機膜3と確実に接触しない構成となる。
また、例えば、前記基板2の裏面側に配設されるマグネット9により基板2表面に密着重合し得るように磁性材料で形成した場合には、極めて薄い構造でマスクに撓みやうねりがあっても、容易に基板2表面に密着重合せしめることができ、それだけ高精度の封止膜を形成することが可能となる。
本発明の具体的な実施例について図6〜11に基づいて説明する。
本実施例は、有機EL素子1が形成された基板2上に、この有機EL素子1を被覆するように形成される有機膜3と無機膜4とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜5の前記有機膜3を形成する際、前記基板2に重合され、前記基板2上の有機EL素子1を露出させ有機材料が入射する開口部7を有する有機膜形成用マスクであって、有機材料を入射して有機膜3を基板2上の有機EL素子1に被覆する際の前記開口部7の開口形状を、前記基板2に重合する側となるマスク裏面側端開口部7Aの開口径とマスク表面側端開口部7Bの開口径とを同一開口径とせず、マスク裏面側の開口縁部を切欠する切欠部8を設けて前記マスク裏面側端開口部7Aの開口径が前記マスク表面側端開口部7Bの開口径より大きくなる開口形状に形成し、この切欠部8の切欠度による開口部7のマスク裏面側端開口部7Aの前記有機EL素子1からの離反度を、このマスク裏面側端開口部7Aと前記基板2上の有機EL素子1に被覆する前記有機膜3とが接触しない離反度に設定した有機膜形成用マスク6と、無機膜4を形成する際に基板2に重合される無機膜形成用マスク14とを備え、この有機膜形成用マスク6及び無機膜形成用マスク14を基板2に重合せしめるマスク重合機構を設けた封止膜形成装置である。
各部を具体的に説明する。
有機膜形成用マスク6の切欠部8は、図6に図示したように開口部7のマスク裏面側の開口縁部をマスク面方向に所定量切り欠く構成とし、開口部7のマスク表面側の径小部を、マスク裏面側の径大部への有機材料の入射を遮る遮蔽部10に設定して、この遮蔽部10により前記マスク裏面側の径大部への有機材料の付着を阻止し得るように構成している。
具体的には、マスク表面側の径小部は、前記有機EL素子1の外周よりやや大きい径に設定し、マスク裏面側の径大部は、前記有機EL素子1を被覆する有機膜の外周よりやや大きい径に設定している。
更に具体的には、マスク表面側の径小部は、この径小部内面16によりマスク裏面側の径大部内面17への有機材料の入射を阻止して、有機膜3とマスク裏面側の径大部との間に非形成領域を形成し得る径に設定している。
従って、前記開口部7から入射する有機材料により、有機EL素子1を確実に被覆できる構成でありながら、マスク表面及びマスク表面側の径小部内面16によりマスク裏面側の径大部内面17側への有機材料の入射を遮ることができ、有機膜3の外周部分と有機膜形成用マスク6との接触を確実に阻止できる構成を、単にこのマスク裏面側端開口部7Aの奥まり度合(有機EL素子1からの離反度)を切欠部8の切欠度を適宜設定するだけで簡易に調整して実現できることになる。
また、前記切欠部8は、前記マスク表面側端開口部7Bと基板2上の有機EL素子1に被覆される有機膜3とが接触し得ない所定高さ位置から前記マスク裏面側の開口縁部をマスク面方向に所定量切り欠くことで、開口部7のいずれの孔内面も前記有機膜3と接触しないように構成している。
具体的には、切欠部8は、開口部7のマスク表面側の径小部内面16,マスク裏面側の径大部内面17及びこれらマスク表面側の径小部とマスク裏面側の径大部との段差面18とが夫々前記有機膜3と接触しないように前記マスク裏面側の開口縁部を断面視略長方形状に切り欠く構成としている。
また、本実施例の前記有機膜形成用マスク6は、図9に図示したように夫々異なる径の開口部を有する複数のマスク11,12をその開口部11A,12Aを連通せしめて熱圧接により貼り合わせ、段差部を有する開口部7を形成し、この段差部を前記切欠部8に設定した構成である。従って、複雑な加工作業が不要で容易に且つコスト安に作製できる。
尚、本実施例においては、上述のようにして有機膜形成用マスク6を作製しているが、他の方法で作製しても良い。
例えば、図10(a)に図示したように、マスク基材13の両面にレジスト19を塗布若しくは張り付け、露光によりエッチングパターンを形成する。この際、エッチングパターンは上下(マスク表面側とマスク裏面側と)で異なる寸法(マスク表面側開口径寸法x1,マスク裏面側開口径寸法x2)に設定する。次に、エッチングにより両面から同時にエッチングし、レジスト19を除去することにより、図10(b)に図示したような開口寸法の異なるマスクを作製しても良い。尚、両面同時エッチングの場合、マスク基材厚さaに対し、径大側開口部の厚さbは半分の厚さになるが、bの厚さを変えたい場合は片面毎にエッチング加工を行えば任意の厚さに加工できる。
この際、上記x2の寸法は有機EL素子1の大きさ・形状及び有機膜3の積層厚等にもよるが、上記x1より1〜6mm大きい寸法が望ましく、マスク基材の厚さaは25〜200μmが望ましく、また、a:bは2:1〜10:1に設定するのが望ましい。
また、有機膜形成マスク6は、非磁性でも良いが、マスクの仕上がり状態によってはうねりを持つため、例えばSUS430,SUS440,36インバーや42合金のような磁性材料で形成すると良い。この場合、図11に図示したように前記基板2の裏面側に配設されるマグネット9により基板2表面に密着重合せしめることができ、高精度の封止膜形成が可能となる。また、マグネット9は、基板を介して前記の磁性材料で形成したマスクを磁力により基板に密着できれば良く、具体的には電磁石や永久磁石が利用できる。
無機膜形成用マスク14としては、上記のような磁性材料から成り、前記有機膜形成用マスク6のマスク裏面側端開口部7Aの開口径以上の大きさの開口径を有する開口部15が形成されたものを採用している。
尚、無機膜形成用マスク14として、上記有機膜形成用マスク6と同様の構成のマスクを採用しても良いし、基板2表面への重合をフレーム固定式によるもの等としても良い。また、本実施例の前記基板2の裏面側に配設されるマグネット9を配設して成るマスク重合機構は、有機膜形成用マスク重合機構としてだけではなく、無機膜形成用マスク重合機構として兼用し得る構成としているが、この有機膜形成用マスク重合機構及び無機膜形成用マスク重合機構として夫々異なるマスク重合機構を設ける構成としても良い。
また、本実施例は、有機膜を形成するための有機膜形成機構として、有機材料としての液体状モノマーを基板2上に蒸着せしめた後、紫外線を照射したり加熱したりして重合させてポリマー膜を形成する有機膜形成機構を備えている。
上記有機材料としては、アクリレート、ポリパラキシレン、ポリ尿素など、いずれの材料を用いても良い。尚、蒸着重合若しくはプラズマ重合により基板2上に直接ポリマー膜を形成する構成を採用しても良い。
また、本実施例は、無機膜を形成するための無機膜形成機構として、無機材料を真空蒸着法を用いて基板2上に形成する無機膜形成機構を備えている。
上記無機材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸窒化珪素、酸化アルミニウムなどの形成した際、透明で絶縁性の膜となるものを採用するが望ましい。尚、スパッタリング法若しくはプラズマCVD法により前記無機膜4を形成する構成を採用しても良い。
本実施例の作動について説明する。
有機EL素子1が形成された基板2上に、開口部7から有機EL素子1を露出させるように有機膜形成用マスク6をマスク重合機構により搬送して位置決め状態で密着重合せしめる。
続いて、図6に図示したように有機膜形成機構により有機材料を基板2上に蒸着せしめて、有機EL素子1を被覆するように有機膜3を形成する。尚、本実施例においては、有機材料(及び無機材料)を基板2の下方から蒸着する。
有機膜3の形成後、マスク重合機構により、基板2上から有機膜形成用マスク6を離脱せしめる。この際、有機膜3は有機膜形成用マスク6と一切接触せず、有機膜3には有機膜形成用マスク6との接触による(有機膜形成用マスク6の基板2からの離脱に伴う)欠陥は生じない。
この有機EL素子1上に有機膜3が被覆された基板2上に、開口部15から有機EL素子1及び有機膜3を露出させるように無機膜形成用マスク14をマスク重合機構により搬送して位置決め状態で密着重合せしめる。
続いて、図7に図示したように無機膜形成機構により無機材料を基板2上に蒸着せしめて、有機EL素子1及び有機膜3を被覆するように無機膜4を形成することで、有機膜3と無機膜4と一層ずつ積層して成る封止膜が形成される。
尚、この無機膜形成用マスク14をマスク重合機構により離脱せしめ、更に上記工程を繰り返すことで、複数の有機膜3と無機膜4とを交互に積層した封止膜5を形成しても良い。この場合、図8に図示したように、封止膜5の最外周部に無機膜4のみが良好に積層され、且つ有機膜3の端部にマスクとの接触による凹凸欠陥等が発生しない極めて高い封止性能を有する封止膜5となる。
本発明の効果を裏付ける実験例について説明する。
封止膜の封止性能の評価は、多くが60℃、90%RHの高温多湿の環境で500時間保存後でも劣化が無いことが要求される。
有機EL素子では外的要因が入るため、有機EL素子の代わりに、水分と酸素に非常に敏感なカルシウム金属を蒸着し、このカルシウム金属を被覆するように封止膜を形成し、60℃、90%RH、750時間の環境試験による変化を観測した。
マスクを用いずに、有機膜と無機膜との積層膜から成る封止膜を封止代が50mmとなるように形成した場合には、膜封止端部が無機膜により終端されず(有機膜の端部が無機膜により被覆されず)、水分が有機膜内に拡散し、カルシウムの外周が水分と反応して透明となり丸みを帯びてしまうことが確認された。
また、図3に図示したような従来のマスクを用い、有機膜と無機膜との積層膜から成る封止膜を封止代が3mmとなるように形成した場合には、無機膜により有機膜の端部が被覆されているにも関わらず、カルシウムに丸い透過率変化が生じており、有機膜形成用マスクと有機膜との接触が原因で、図5に図示したようなピンホール状の欠陥が生じてしまうことが確認された。
一方、本実施例に係る封止膜を封止代が3mmとなるように形成したところ、ピンホール状の欠陥が原因でカルシウムに生じる丸い透過率変化や、カルシウムの外周部の透過率変化は全く認められず、有機膜形成用マスクと有機膜との接触を防ぐことにより、有機膜と無機膜との欠陥を無くすことができ、極めて良好な封止性能を達成できることが確認された。
以上説明したように、有機EL素子の膜封止において封止性能は非常に重要である。しかし、封止性能は有機EL素子の垂直方向のみではなく、有機EL素子周辺の膜封止端部(有機EL素子の水平方向)の封止性能も非常に重要である。
封止性能の向上のためには、有機膜と無機膜との積層構造が必要であり、この有機膜の端部に有機膜形成用マスクとの接触が原因で生じる欠陥を発生させないことが重要である。
更に、有機EL素子のみならず、ディスプレイの量産においては、素子外周の封止代や接続部を極力短くしなければならない。
本実施例に係る有機膜形成用マスクを用いて封止膜を形成することにより、有機膜の端部に欠陥が生じることを阻止でき、それだけ素子外周部を短くすることができる。
従って、品質及び耐久性を向上させて長寿命となり、素子サイズを小型化することができ、基板当たりのパネル数を増やして生産性を向上させることができることになる。
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
従来例の概略説明断面図である。 従来例の要部の拡大概略説明断面図である。 従来例の概略説明断面図である。 従来の封止膜形成工程の概略説明断面図である。 従来例の要部の拡大概略説明断面図である。 本実施例の有機膜形成工程の概略説明断面図である。 本実施例の無機膜形成工程の概略説明断面図である。 別例の要部の拡大概略説明断面図である。 本実施例に係る有機膜形成用マスクの作製工程の概略説明断面図である。 別例の有機膜形成用マスクの作製工程の概略説明断面図である。 本実施例の概略説明断面図である。
符号の説明
1 有機EL素子
2 基板
3 有機膜
4 無機膜
5 封止膜
6 有機膜形成用マスク
7 開口部
7A マスク裏面側端開口部
7B マスク表面側端開口部
8 切欠部
9 マグネット
10 遮蔽部
11,12 マスク
11A,12A 開口部
14 無機膜形成用マスク
15 開口部

Claims (7)

  1. 有機EL素子が形成された基板上に、この有機EL素子を被覆するように形成される有機膜と無機膜とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜の前記有機膜を形成する際、前記基板に重合され、前記基板上の有機EL素子を露出させ有機材料が入射する開口部を有する有機膜形成用マスクであって、有機材料を入射して有機膜を基板上の有機EL素子に被覆する際の前記開口部の開口形状を、前記基板に重合する側となるマスク裏面側端開口部の開口径とマスク表面側端開口部の開口径とを同一開口径とせず、前記マスク裏面側端開口部の開口径が前記マスク表面側端開口部の開口径より大きくなる開口形状に形成し、このマスク裏面側端開口部の前記有機EL素子からの離反度を、このマスク裏面側端開口部と前記基板上の有機EL素子に被覆する前記有機膜とが接触しない離反度に設定したことを特徴とする有機膜形成用マスク。
  2. 前記開口部にマスク裏面側の開口縁部を所定量切り欠く切欠部を設け、この開口部のマスク表面側の径小部を、マスク裏面側の径大部への有機材料の入射を遮る遮蔽部に設定して、この遮蔽部により前記マスク裏面側の径大部への有機材料の付着を阻止し得るように構成したことを特徴とする請求項1記載の有機膜形成用マスク。
  3. 前記切欠部は、前記マスク表面側端開口部と基板上の有機EL素子に被覆される有機膜とが接触し得ない所定高さ位置から前記マスク裏面側の開口縁部を所定量切り欠くことで、開口部のいずれの孔内面も前記有機膜と接触しないように構成したことを特徴とする請求項2記載の有機膜形成用マスク。
  4. 夫々異なる径の開口部を有する複数のマスクをその開口部を連通せしめて貼り合わせ、段差部を有する開口部を形成し、この段差部を前記切欠部に設定したことを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスク。
  5. 前記基板の裏面側に配設されるマグネットにより基板表面に密着重合し得るように磁性材料で形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスク。
  6. 有機EL素子が形成された基板上に、有機膜と無機膜とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜をこの有機EL素子を被覆するように形成する封止膜形成装置であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスクと、この有機膜形成用マスクを前記基板表面上に密着重合せしめるマグネットを基板裏面側に配設した有機膜形成用マスク重合機構と、無機膜を形成する際に基板に重合される無機膜形成用マスクと、この無機膜形成用マスクを基板表面上に重合せしめる無機膜形成用マスク重合機構とを設けたことを特徴とする封止膜形成装置。
  7. 有機EL素子が形成された基板上に、有機膜と無機膜とを少なくとも一層ずつ積層して成る封止膜をこの有機EL素子を被覆するように形成する封止膜の形成方法であって、基板に請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機膜形成用マスクを重合せしめ、有機膜形成用マスクの開口部から有機材料を入射せしめて基板上の有機EL素子を被覆するように有機膜を形成した後、前記有機膜形成用マスクを基板から離脱せしめて、この有機膜形成用マスクを離脱せしめた基板に無機膜形成用の開口部を有する無機膜形成用マスクを重合せしめ、この無機膜形成用マスクの開口部から無機材料を入射せしめて基板上の有機EL素子を被覆する有機膜を被覆するように無機膜を形成することを特徴とする封止膜の形成方法。
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