JP2006510364A - (r)または(s)体のn−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびその逆対掌体であるn−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、酵素を用いて調製する方法 - Google Patents

(r)または(s)体のn−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびその逆対掌体であるn−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、酵素を用いて調製する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびその逆エステル化合物を、酵素を用いて立体選択的に調製する方法であって、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル((R)−対掌体および(S)−対掌体)の一方の対掌体に対し特異的な加水分解活性を有する酵素を、上記ラセミ混合物と反応させて、光学分割により(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを得る工程;未反応化合物としての(S)または(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、反応混合物から溶媒を用いて抽出する工程;または光学分割により分離されたあるアラニン対掌体をアルコールでエステル化して、(S)または(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを合成する工程を提供する。

Description

本発明は、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびその逆エステル化合物(counter ester compounds)を、酵素を用いて立体選択的に調製する方法に関する。より詳細には、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル((R)対掌体および(S)対掌体)のうちの一方に対して特異的な加水分解活性を有する酵素を、前記ラセミ混合物と反応させて、光学分割により(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを得る工程、反応混合物から、未反応化合物としての(S)または(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、有機溶媒を用いて抽出する工程、または光学分割により分離したあるアラニン対掌体をアルコールでエステル化して、(S)または(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを合成する工程を含む方法に関する。
ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびそのエステル化合物は、抗真菌活性を有するメタラキシル、ベナラキシル、フララキシル等を合成するための前駆体として有用である。これらの化合物の抗真菌活性は一般に、(R)対掌体に存するものである。
キラル金属触媒の存在下におけるエナミドの水素添加により、メタラキシルの(R)対掌体であるメタラキシル−Mの合成を達成したことが報告されている(非特許文献1)。この反応は、95.6%ee(%鏡像異性体過剰率)でメタラキシル−Mをもたらすが、高価なキラル金属触媒と、解放(releasing)工程(高温・高圧下での処理など)を必要とする。
光学活性化合物である(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの調製のための1つのアプローチとして、光学的に純粋なアミン、例えば(R)または(S)−フェニルエチルアミンを分割剤として用い、ラセミ混合物を分離する光学分割が知られている(特許文献1)。しかしこの方法には、前記の分割剤が高価であり、またその工程が複雑であるという欠点がある。
(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステル合成のための1つのアプローチとして、(S)−2−(ヒドロキシ)−プロパン酸メチルから開始してスルホネート誘導体を製造し、次いでこれを塩基存在下に2,6−ジメチルアニリンと反応させることが報告されている(特許文献2)。しかしこの方法によれば、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルを、95%eeを超える鏡像異性体過剰率で得ることは困難であり、また工程の性能のため高温を必要とする。また、キラル型のベナラキシル、フララキシル等に、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルを適用することもできるが、メタラキシル−Mについての必要な光学純度は95%ee超である。
一方、ラセミ混合物の光学分割には、対掌体を選択的に加水分解する、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ等の酵素の利用が知られている。例えば、Candida rugosaから単離されたリパーゼを用いて、ラセミ体の2−クロロプロピオン酸メチルを加水分解することが報告されている(非特許文献2)。更に、精製Candida rugosaリパーゼを用いて、(R)−2−(4−ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸を合成することが報告されている(特許文献3)。
ラセミ混合物の光学分割に酵素を利用することは極めて有効だが、酵素的分割にどのラセミ混合物を適用できるか、また、特定ラセミ混合物の光学分割にどの酵素を利用できるかを決定することは、非常に困難である。例えば、特許文献4の発明者らは、4−オキソ−1,2−ピロリジンジカルボン酸ジアルキルエステルの光学分割を行うため、プロテアーゼ、リパーゼおよびエステラーゼより選択された約44種の異なる酵素を用いて実験を行ったが、光学純度95%を与える酵素は1種しか見つからなかった。この例のように、酵素と基質の最適な選択肢を予測することは容易ではなく、可能性ある基質の化学構造を変化させながら、種々の酵素を注意深くスクリーニングすることが必要である。
一方、本発明のラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンに関しては、何らかの酵素を用いてその光学分割を行うための試みがなされたことはない。酵素を用いる既存の光学分割は、作物別(crop−based)除草剤用前駆体としてのアリールオキシプロピオン酸の合成、およびプロフェン系(profen−based)抗炎症剤用前駆体としてのアリールプロピオン酸の合成に限定されていた。換言すれば、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルの光学分割に酵素を用いることに関しては、何ら報告されていない。
米国特許第4,919,709号明細書 国際出願公開公報第WO00/76960号明細書 国際出願公開公報第WO90/15146号明細書 米国特許第5,928,933号明細書 Pesticide Science、Vol.54、1998、pp 302−304 Biotechnology & Bioengineering 30、1987、pp 995−999
本発明の発明者らは、鋭意研究を行い、(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルのラセミ混合物を、室温・大気圧下で、同ラセミ混合物中の両対掌体のうち一方のみを加水分解する酵素と反応させると、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびその逆エステルを、高い光学純度(>96〜99%ee)で調製することができることを明らかにした。本発明は、この発見に基づいてなされたものである。
従って、本発明の目的は、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよび(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、酵素を用いる光学分割により、高い光学純度で経済的に調製する方法を提供することにある。
本発明の一実施形態において、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの調製方法は、
(A)下記式(1):
Figure 2006510364
(式中、Rは、直鎖状または分岐状である、炭素数1〜18の非置換または置換アルキル基、炭素数3〜6の、非置換または置換シクロアルキル基、非置換または置換アリールアルキル基および非置換または置換ヘテロアリールアルキル基よりなる群から選択される基である)
で表されるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、その一方の対掌体をエナンチオ選択的に加水分解する有効量の酵素と反応させて、(R)体または(S)体のN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン(「(R)体アラニン」または「(S)体アラニン」)、およびその逆対掌体であるN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル(「逆(S)体エステル(counter (S)−form ester)」または「逆(R)体エステル(counter (R)−form ester)」)を生成させる工程;および
(B)反応混合物から、前記(R)体または(S)体アラニンを単離して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを得る工程
を含む。
式(1)のRには、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、2−ペンチル基、3−メチル−1−ブチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、2,2−ジクロロエチル基、1−クロロ−2−プロピル基、オレイル基、シクロヘキシル基、1−シクロプロピルメチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基、プロパルギル基、2−フェノキシ−1−エチル基、2,4−ジクロロベンジル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、1−チオエトキシエチル基等が含まれるが、それらに限定されない。
本発明の他の一実施形態において、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの調製方法は、
(A’)上記式(1)で表されるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、その一方の対掌体をエナンチオ選択的に加水分解する有効量の酵素と反応させて、(R)体または(S)体のN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン(「(R)体アラニン」または「(S)体アラニン」)、およびその逆対掌体であるN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル(「逆(S)体エステル」または「逆(R)体エステル」)を生成させる工程;および
(B’)反応混合物から、加水分解されていない前記逆(S)体または逆(R)体エステルを単離して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを得る工程
を含む。
一実施形態において、前記工程(B’)は、下記工程(B’’):
(B’’)反応混合物から、生成した前記(R)体または(S)体アラニンを単離し、次いで前記(R)体または(S)体アラニンを、アルコールR−OH(式中、Rは上記式(1)のものと同じである)でエステル化して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを得る工程
で置換されていてもよい。
本開示において用いるいくつかの用語および略語を以下に定義する。
用語「ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル」は、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルと、(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルのラセミ混合物を表すものとして用いる。
用語「対掌体(enantiomer)」は、互いに鏡像であって重ね合わせることのできない(non−superimposable)一対の分子体(molecular entities)を表すものとして用いる。本開示における文脈によっては、用語「対掌体」は、時には対掌体のアラニンを表すものとして、また時には対掌体のアラニンエステルを表すものとして用いる。
用語「逆(counter)」は、ある対掌体のアラニンに対して相補的な対掌体のアラニンに対応するエステルを表すものとして用いる。即ち、「(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンにとっての逆エステル」とは、(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを意味し、「(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンにとっての逆エステル」とは、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを意味する。
表記の便を図るため、用語「(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン」を時に「(R)体アラニン」と略記し、用語「(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン」を時に「(S)体アラニン」と略記する。同様に、用語「(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル」を時に「(R)体エステル」と略記し、用語「(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル」を時に「(S)体エステル」と略記する。ある場合には、用語「(R)体対掌体」または「(S)体対掌体」を用い、その意味(即ち、「(R)体アラニン」と「(R)アラニンエステル」のどちらを表すものとして用いられているか)は、関連する文脈において容易に理解できる。
ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル(本発明による光学分割をこのものに対して行う)の調製方法は、本発明が関連する分野における当業者にとって周知のものである。一例として、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルは、2−ブロモプロピオン酸エステルと2,6−ジメチルアニリンの反応により、容易に合成することができる。しかし、(R)および(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルのラセミ混合物から(R)体対掌体または(S)体対掌体だけを単離することは、両対掌体の有する物理的および化学的特性が極めて類似しているため極めて困難である。
従って、化学合成または分離による従来の光学分割方法に比して、本発明では、(R)体対掌体((R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル)および(S)体対掌体((S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル)のうち一方だけを、エナンチオ選択的に加水分解する酵素(以降、時に「選択的加水分解酵素」と称する)を用いるので、簡単・安価な工程により、特定の対掌体を容易に合成することが可能になる。
(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン調製方法における工程(A)においては、ラセミ混合物を水溶液、または水と少量の有機溶媒よりなる混合溶液に溶解し、次いで特定の加水分解酵素と、一定の温度およびpHにおいて反応させる。
特定の加水分解酵素が(R)体対掌体だけをエナンチオ選択的に加水分解する場合、工程(A)の反応において(R)体エステルだけが加水分解されて、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンが生成すると共に、(S)体エステル、即ち(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルが未反応のままとなる。逆に、特定の加水分解酵素が(S)体対掌体だけをエナンチオ選択的に加水分解する場合、工程(A)の反応において(S)体エステルだけが加水分解されて、(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンが生成すると共に、(R)体エステル、即ち(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルが未反応のままとなる。
工程(B)における反応混合物からの、加水分解された対掌体の単離は、反応系に応じて種々の方法により達成できる。反応系が水溶液のみからなる場合には、加水分解されていないエステル化合物((R)または(S)体エステル)を、有機溶媒を用いて抽出することができる。反応系が有機溶媒と水溶液の混合溶液からなる場合には、加水分解されていないエステル化合物を含む有機層を容易に分配して、新たに合成されたアラニンを含む水層を得ることができる。これは、加水分解されていないエステル化合物が、有機溶媒可溶な傾向にあることによる。
水溶液または水層に含まれる(R)または(S)体アラニンを酸性にし、次いで有機溶媒で抽出し、その後有機溶媒を除去して、光学的に純粋な(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを得る。種々の実験より、本発明の方法により得られる(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンは、非常に高い光学純度(>96〜99%ee)を有することが確認された。
同様に、工程(B’)において、反応混合物から未反応体で分離される、または工程(B’’)において、合成された(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを、アルコールとエステル化させて合成される(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルもまた、非常に高い光学純度(>96〜99%ee)を有することが確認された。
式(1)中のRは、アリル基、2−クロロエチル基、メトキシエチル基およびエトキシエチル基よりなる群から選択されることが好ましい。これは、これらの基を用いて反応時間を短縮し、光学純度を高めることができるためである。
(R)体エステルと(S)体エステルのうち一方だけをエナンチオ選択的に加水分解する限りにおいて、特定の加水分解酵素の種類は特に限定されないが、好ましくは微生物、動物または植物由来のリパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼよりなる群から選択される。
これらのうち、高いエナンチオ選択性および良好な光学純度をもたらすリパーゼが好ましい。より好ましくは、前記特定の酵素は、そのエナンチオ選択性および反応速度の観点から特に良好な、Pseudomonas由来リパーゼAK、東洋紡固定化リパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、Burkhoderia由来リパーゼPSおよびAH、Alcaligenes由来リパーゼQLM並びにCandida由来リパーゼOFよりなる群から選択される1種以上である。
(R)体対掌体および(S)体対掌体に対する選択性は、加水分解反応に用いた酵素の種類によって決まる。酵素の反応系への適用は、粉末状で行っても、水溶液状で行ってもよい。ある実施形態においては、再利用のための触媒回収を容易にするため、担体固定化酵素を使用することができる。そのような固定化方法(例えば、酵素を高分子担体や無機担体(セライト等)に取り付ける)は当業者にとって公知であるから、その詳細な記載は割愛する。
酵素の有効量は反応パラメータ(例えば反応温度、pH、濃度、反応時間等)に依存するので、その添加量は種々に決まりうる。ある実施形態においては、酵素の有効量は、好ましくは基質(エステルのラセミ混合物)の重量に対し0.1〜100重量%である。反応に用いる酵素の量が最小有効量より少ないと、反応時間が延長されて好ましくなく、また酵素の量がある最大有効値より多いと、過剰な酵素とより高価な分離工程の使用により、工程のコストが高くなり好ましくない。
反応条件に特に制限はないが、酵素反応の最適化のため、好ましくはpH3〜12、温度0〜60℃(より好ましくは30〜50℃)である。上記のように、工程(A)における加水分解反応は水溶液中で行ってもよく、基質の溶解性を向上し、また反応生成物による酵素活性の阻害を減少するため、少量の有機溶媒を含む混合溶液で行ってもよい。
酵素反応に用いる基質の濃度は、種々の反応パラメータに依存して変わりうる。好ましくは、酵素反応の最適化のため500mM〜1Mであるが、ある場合には1Mを超えてもよい。工程(A)および(A’)における加水分解反応では、ラセミ混合物であるエステル化合物は、初期の手順において、記載した水溶液にあまり溶解していなくてもよく、溶解したいくらかのエステル化合物が酵素と接触し、反応する。反応速度を増加し、酵素の活性を維持するため、少量の水と多量の有機溶媒からなる反応系を用いてもよい。
酵素反応に用いる有機溶媒の例には、アセトン、アセトニトリル、アルコール等の親水性溶媒、およびイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ヘキサン、トルエン等の疎水性溶媒が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態においては、親水性溶媒と疎水性溶媒からなる二相系溶媒を用いることもできる。
工程(B)または(B’)の抽出に用いる有機溶媒の例には、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ヘキサン、トルエン等、およびそれらのうち2種以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
工程(B’’)におけるエステル化反応に関しては、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンのカルボキシル基とアルコールが反応し、所望の(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを与えることによってそれが達成される限り、特に制限はない。このことは当業者により容易に達成しうるので、本開示中ではその記載は割愛する。
以降、実施例により本発明をより詳細に記載するが、本発明の範囲はそれらに限定されない。
実施例1:ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルの光学分割のための酵素スクリーニング
アセトニトリル500μl中にラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステル50μlを含む基質溶液を、リン酸カリウム緩衝液450μlに添加し、次いでこれに酵素粉末25mg(酵素溶液であれば、酵素溶液20μlに相当する)を添加した。反応は、30℃で1〜2日間行った。反応液の転化率を、C18逆相カラム上、波長254nmで検出を行いつつ、アセトニトリルと水の混合物(アセトニトリル:水=70:30、トリフルオロ酢酸0.1%含有)を溶出溶媒として用いるHPLCにより分析した。使用した酵素の種類とラセミ混合物の転化率を下記表1に示す。
Figure 2006510364
上記表1において、ある反応時間が経った後50%程度の転化率を示す酵素は、(R)体対掌体または(S)体対掌体に対し選択的な、高度にエナンチオ選択的な酵素であり、可能性ある候補である。この観点から、種々のリパーゼが、高度のエナンチオ選択性を有するそのような候補と考えられる。
実施例2:ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルの光学分割のための酵素スクリーニング
エンリッチした(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルのラセミ混合物(R:S=90:10)(化学的に合成)と、エンリッチした(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルのラセミ混合物(R:S=4:96)(化学的に合成)を各々調製し、実施例1と同様の方法で転化率を測定した。実験に用いた酵素の種類と、ラセミ混合物の転化率を下記表2に示す。
Figure 2006510364
上記表2の結果より、リパーゼAK、PSおよびQLMは、(R)体対掌体に対し選択的な、高度のエナンチオ選択性を有することがわかる。
実施例3:ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンアリルエステルおよびラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステルの光学分割のための酵素スクリーニング
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1mlに、酵素粉末2mgを分散させ、それにラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンアリルエステル20mgを添加して、得られた混合物を200rpm、35℃で振盪した。3および24時間後の各々において、試料20μlをヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(ヘキサン:イソプロピルアルコール=95:5)に溶解し、5%NaCOを用いてpH10に調節した。未反応エステル化合物は有機層(有機溶媒)に抽出された。水層を1NHClを用いてpH3〜4に調節し、次いで酢酸エチルで抽出した。層分配の後、減圧蒸留により有機溶媒を除去し、残さを再度ヘキサンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(ヘキサン:イソプロピルアルコール=95:5)に溶解して、エナンチオ選択性を分析した。
上記ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンアリルエステルに替えて、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステルを用いたことを除き、上記の手順を同様に繰り返した。
分析条件は以下の通りである。
Chiracel ODカラム、30℃、0.8ml、254nm
酸の分析−ヘキサン:イソプロピルアルコール:トリフルオロ酢酸=95:5:0.1
エステルの分析−ヘキサン:イソプロピルアルコール=100:1
分析結果を下記表3に示す。
Figure 2006510364
式中、conv.は転化率を意味し、eeおよびeeは各々、下記式で表される生成物の光学純度および反応物の光学純度を意味する。
ee=[(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル]−[(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル]/([(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル]+[(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル])
ee=[(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン]/[(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン+(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン]
表3からわかるように、アリルエステルのラセミ混合物と、2−クロロエチルエステルのラセミ混合物の両者において、ある種のリパーゼは50%程度の高い転化率と、良好なエナンチオ選択性を有し、最適反応時間はエステルの種類に応じて変わる。
実施例4:リパーゼOFによる(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステルの光学分割
1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1mlに、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステル20mgを添加し、それにリパーゼOF2mgを添加して、得られた混合物を200rpm、35℃で振盪した。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。17時間後、70.8%eeの(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを、転化率41.4%で得た。Candida rugosaリパーゼOFは種々のアイソザイムの混合体からなるので、それらのうちの特定のアイソザイムを用いると、生成物の光学純度を向上することができると予想される。
実施例5:エステルの種類に依存する酵素の反応性
0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)1mlに、種々のラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル各々20mgを溶解し、それにリパーゼPS2mgを添加して、実施例3と同様にして分析を行った。分析結果を下記表4に示す。
Figure 2006510364
上記表4からわかるように、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、アリル、メトキシエチルおよびエトキシエチルエステル等は、リパーゼPSの基質として特に好ましい。
実施例6:ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステルの光学分割
リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)2.5mlに、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステル500mgを添加し(濃度:200g/l)、それに酵素10mgを添加して(エステル:酵素=50:1)、得られた混合物を200rpm、35℃で振盪した。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。分析結果を下記表5に示す。
Figure 2006510364
上記表5の結果は、そこに示す酵素を用いて、先に言及したラセミ体を、優れた転化率および光学純度で、エナンチオ選択的に分離することができることを示している。更に、リパーゼAK、PSおよびQLMは、50%近くという極めて高い転化率をもたらす。
実施例7:基質と酵素の比率が変化する、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルの光学分割
0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)2.5mlに、何種類かのラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル1gを添加し(濃度:400g/L)、それに種々の量の酵素を各々添加して、得られた混合物を200rpm、35℃で振盪した。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。分析結果を下記表6に示す。
Figure 2006510364
上記表6に示すように、使用する酵素の量が増加するにつれて、転化率が向上することがわかる。また、酵素の最適使用量は、酵素およびエステルの種類、転化率、光学純度等、種々のパラメータを考慮して決定すべきであることもわかる。
実施例8:固定化リパーゼPSによるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルの光学分割
0.1Mリン酸カルシウム緩衝液(pH7.0)2.5mlに、リパーゼPS0.1gを溶解し、得られた混合物を攪拌下で室温に保ち、その後濾過により不溶物を除去した。濾液4.5mlを1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)と混合し、それにセパビーズFP−EP16(登録商標)(Resindion)30mgを添加した後、室温で終夜攪拌し、次いで濾過した。そのようにして得られたビーズ固定化酵素を、0.1Mトリス緩衝液(pH7)1mlに添加し、それにラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステル10mgを添加して、200rpmで振盪下、30℃で17時間反応を行った。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。
酵素固定化用の担体としてEupergit C(登録商標)(Rohm & Haas)を用いたことを除き、上記の手順を繰り返した。
セパビーズFP−EP16(登録商標)では、98.5%eeの(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを、転化率25%で得た。Eupergit C(登録商標)では、98.4%eeの(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを、転化率46%で得た。
実施例9:固定化リパーゼPSによる(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステルの光学分割
0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)5.0mlに、リパーゼPS0.1gを溶解し、それにXAD(登録商標)−7HP(Rohm & Haas)を、攪拌しながら、100mg(樹脂:酵素=1:1)、250mg、500mgおよび1.0gと量を変えて添加した。得られた混合物を30℃で24時間攪拌し、次いで濾過した。0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に、樹脂と不溶物を添加し、それにグルタルアルデヒド5μlを添加した後、室温で3時間攪拌した。そのようにして得られた固定化酵素(リパーゼPS10mgに相当)を、0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH8)1mlに添加し、それに(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン−2−クロロエチルエステル100mgを添加し、200rpm、35℃で16時間振盪して反応を進行させた。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。分析結果を下記表7に示す。
Figure 2006510364
実施例10:大量生産におけるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルの光学分割
蒸留水30mlに、(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステル20mlを添加し(濃度:400g/L)、それにリパーゼPS500mgを添加し、次いで40℃で攪拌(30%、Mettler DL70 titrator)して反応を行った。反応混合物のpHを一定に保つため、1NNaOHを自動的に添加した(Mettler DL70 titrator)。24時間後、リパーゼPS250mgを更に添加した。実施例3と同様にして、反応液の分析を行った。96.9%eeの(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを、転化率40.2%(6日後)で得た。
実施例11:酵素による(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステルの光学分割、および(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの単離
実施例9の反応溶液を濾過して不溶物を除去し、次いで得られた濾液を、Accurel MP1000(メタノールおよび水で平衡化したもの)2.72gを充填したガラスカラムを通過させた。そのようにして通過させた濾液に酢酸エチルを添加し、pHを9に調節し、酢酸エチル層をキラルHPLCで分析して、(S)−エステル:(R)−エステル=95.6:1.1(%面積比)およびエステル:酸=96.7:0.87(%面積比)との結果を得た。更に、水層を酸性にし、酢酸エチルで抽出して溶媒を留去し、キラルHPLCで分析して、白色の(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンが定量的に得られ、(R)−酸の光学純度は97.2%eeであり、エステル:酸=0.42:99.58(%面積比)であったことを確認した。
実施例12:酵素による(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメトキシエチルエステルの光学分割、および(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの単離
0.5Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)50mlに、ラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメトキシエチルエステル24gを添加し、それにリパーゼPS1.0gを添加し、次いで200rpm、35℃で振盪して反応を行った。転化率40%で反応を停止させた後、酢酸エチルを添加し、水層のpHを10に調節し、次いで酢酸エチルを分配してこれに水を添加した。水層をpH3〜4に調節し、酢酸エチル層をMgSO上で乾燥させた後濾過した。酢酸エチルを留去して、(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン5.3gを収率57.4%で得た。その光学純度をキラルHPLC分析で測定したところ、96%eeであった。
実施例13:(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンのエステル化
(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン5.03gをメタノール15gに溶解し、次いでそれに、0℃で塩化チオニル3.25g(1.05当量)を滴下した。2時間還流した後、GC分析を行ったところ、残留する(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンが2.5%であることが確認された。溶媒を留去して、トルエン30mlを添加し、次いでNaCO50mlで5回洗浄した。トルエン層を分配し、次いでMgSO上で乾燥させ、溶媒を除去した。そのようにして得られた(R)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンメチルエステル(4.2g;単離収率:78%)をキラルHPLCで分析したところ、光学純度は97.3%eeであった。GCで測定したところ、化学的純度は97.2%であった。
上記したように、本発明の方法によれば、類似した化学的および物理的特性のため既知の方法ではエナンチオ選択的に分割することができなかったラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、単純かつ低コストな工程で分離して、(R)体対掌体および(S)体対掌体を得ることができる。従って、本発明の方法により、対掌体に関して(enantiomerically)エンリッチされたメタラキシル、ベナラキシル、フララキシル等(抗真菌活性を有する)の前駆体として有用な、(R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンおよびそのエステル化合物を、高い光学純度および収率で容易に調製することができる。
本発明は、その精神および必須の特性から逸脱することなく、いくつかの態様をとることができるが、上記の実施例は、特に断らない限り、先行する記載の詳細により限定されることは一切なく、むしろ、添付の特許請求の範囲に定義される精神および範囲の中で、広く解釈すべきであることもまた理解すべきである。よって、特許請求の範囲内のあらゆる変更および修飾や、そのような範囲内の等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。

Claims (12)

  1. (R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンの調製方法であって、
    (A)下記式(1):
    Figure 2006510364
    (式中、Rは、直鎖状または分岐状である、炭素数1〜18の非置換または置換アルキルまたはアルケニル基、炭素数3〜6の、非置換または置換シクロアルキル基、非置換または置換アリールアルキル基および非置換または置換ヘテロアリールアルキル基よりなる群から選択される基である)
    で表されるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、その一方の対掌体をエナンチオ選択的に加水分解する有効量の酵素と反応させて、(R)体または(S)体のN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン(「(R)体アラニン」または「(S)体アラニン」)、およびその逆対掌体であるN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル(「逆(S)体エステル」または「逆(R)体エステル」)を生成させる工程;および
    (B)反応混合物から、合成された前記(R)体または(S)体アラニンを単離して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンを得る工程
    を含むことを特徴とする調製方法。
  2. (R)または(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルの調製方法であって、
    (A’)上記式(1)で表されるラセミ(R),(S)−N−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを、その一方の対掌体をエナンチオ選択的に加水分解する有効量の酵素と反応させて、(R)体または(S)体のN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニン(「(R)体アラニン」または「(S)体アラニン」)、およびその逆対掌体であるN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステル(「逆(S)体エステル」または「逆(R)体エステル」)を生成させる工程;および
    (B’)反応混合物から、加水分解されていない前記逆(S)体または逆(R)体エステルを単離して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを得る工程
    を含むことを特徴とする調製方法。
  3. 前記工程(B’)が、下記工程(B’’):
    (B’’)反応混合物から、合成された前記(R)体または(S)体アラニンを単離し、次いで前記(R)体または(S)体アラニンを、アルコールR−OH(式中、Rは上記式(1)のものと同じである)でエステル化して、光学的に純粋なN−(2,6−ジメチルフェニル)アラニンエステルを得る工程
    で置換されていることを特徴とする請求項2に記載の調製方法。
  4. 前記Rは、アリル基、2−クロロエチル基およびエトキシエチル基よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
  5. 前記酵素は、微生物、動物または植物由来のリパーゼ、プロテアーゼおよびエステラーゼよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
  6. 前記酵素は、リパーゼであることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
  7. 前記酵素は、Pseudomonas由来リパーゼAK、東洋紡固定化リパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、Burkhoderia由来リパーゼPSおよびAH、Alcaligenes由来リパーゼQLM並びにCandida由来リパーゼOFよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
  8. 前記酵素による加水分解反応を、水溶液中または少量の有機溶媒を含む混合溶液中で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
  9. 前記有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、アルコール等の親水性溶媒、イソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ヘキサン、トルエン等の疎水性溶媒、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
  10. 前記加水分解反応を、pH3〜12、0〜60℃で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
  11. 水溶液のみの反応系を用いる場合には、加水分解されていないエステル化合物((S)体または(R)体エステル)を、有機溶媒を用いて抽出すること、水溶液と有機溶媒の混合溶液の反応系を用いる場合には、加水分解されていないエステル化合物を含む有機層を分配して、合成された対掌体アラニンを含む水層を得ることにより、前記単離を達成することを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
  12. 前記酵素は、担体上に固定化された酵素、または何らかの形で架橋された酵素凝集体であることを特徴とする請求項1または2に記載の調製方法。
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