JP2006503031A - 拒食症(an)及び過食症を治療するためのエイコサペンタエン酸(epa) - Google Patents

拒食症(an)及び過食症を治療するためのエイコサペンタエン酸(epa) Download PDF

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Abstract

エイコサペンタエン酸(EPA)を使用した、拒食症、過食症及び関連の臨床症候群の治療方法を提供する。

Description

本発明は、拒食症(AN)及び過食症を治療するための治療方法に関する。
拒食症(AN)は、深刻な疾病であり、特に思春期の少女及び若年婦人に発症するが、全年齢の男女両性に生じ得る疾病である。体重を減少する病理学的要求と一体となった、体重増加に対する恐怖感が存在する。患者は通常、混乱した身体イメージを抱いており、これは患者が常に、自身について、本来あるべき姿よりずっと過体重であり、太っていると知覚していることを意味する。
ANは、ますますありふれた疾患になっている。AN患者は、体重調節思想の強力な支持者となることがよくあり、彼らは可能な限りのことを実行し、そして他者を、同じ道をたどるよう説得する。現在、多数の「PRO−ANA(激やせ大好き)」ウェブサイトが存在し、このようなサイトは、ANを促し、体重減少を勧める方法を非常に詳細に説明している。これらの方法には、当然、厳しい食事制限、どれだけ食べられているかに関して他者を欺く方法、水分の減少を促進する利尿剤の使用、下痢を催す下剤の使用、及び催吐剤の使用及び他の手段による嘔吐の促進が挙げられる。基本的なAN症候群の異型では、多少の個体が比較的正常に摂食し、あるいは大量摂食さえ、その後、嘔吐及び他の極端な手段によって食べた物を取り除く。この異型ANは、過食症として知られている。
非常に多数の諸理論が存在するけれども、ANの根本原因は依然として不明である。現在まで、一貫して成果のある治療法は発見されていない。利用可能な治療法に関する最近の詳細な見込みのある研究では、使用する治療のタイプと任意の長期転帰との間には全く関連性がないことがわかった(非特許文献1参照)。この発見は、有効な治療が存在しないことを意味すると同時に、おそらくは、これらの治療が基礎とするほとんどの理論が間違っていることを意味する。
ANに関してあまり多くを知らない人々は、その深刻さを過小評価することが多い。実際には、全患者の半数以上が、決して適正に回復せず、何らかの形で終生の摂食障害を有する。この障害は彼らの生活を深刻に揺るがすものである。約20%の患者は死に至る。これは、若年女性に発症する比較的一般的なすべての疾患のうちで、はるかに高い死亡率である。そしてこの疾患は、一見したところ、ダイエットに対する欲求という比較的穏和な形で始まる。
DI Ben-Tovim等、「摂食障害患者の転帰:5年間の研究(Outcome in patients with eating disorders: A five-year study.)」Lancet, 2001; 357: 1254-7)
したがって、新規治療法がさし迫って必要とされる。本発明者らは、AN又は関連障害、例えば過食症を管理するための、新規治療法、エイコサペンタエン酸(EPA)又はそのいずれかの誘導体の使用を特許請求する。EPAは、高度に不飽和の必須脂肪酸であり、これは精神医学的及び神経学的障害において有用であることがわかっている(EP 1148873及びEP 0956013)。しかしながらこの治療は、出願人の知る限り、現在までAN又は過食症の治療法としては提唱されていない。実際、AN用に精神治療薬を使用しても不満足な転帰しか得られないことを考慮すると、従来技術に基づいてANがEPAに応答するかもしれないと考える理由はない。
本発明は、身体に吸収可能な任意の適切な形でエイコサペンタエン酸(EPA)を患者に投与することによって拒食症、過食症及び関連する臨床症候群の治療方法を提供する。この患者は、AN又は関連症候群の症状を示すか、あるいはそのリスクがあると考えられる。本発明はまた、拒食症、過食症及び関連する臨床症候群を治療するための薬物の製造における、身体に吸収可能な任意の適切な形でエイコサペンタエン酸(EPA)の使用を提供する。
本発明によれば、拒食症(AN)、過食症及び関連する臨床症候群に対して有効な治療方法を提供することができた。
エイコサペンタエン酸(EPA)は多種多様な形で投与することができる。本明細書中で使用する略語「EPA」は、この酸、又はその誘導体を表し、本発明で採用する製剤中に使用される。したがって、本発明で使用されるEPAの形としては、遊離酸、塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩又は任意の他の適切な塩、モノ、ジ、又はトリグリセリド、種々のリン脂質、アミド、エステル、例えばエチルエステル、メチルエステル又は他のエステル、及び、生物学的に適合性であり、かつ、標準的アッセイ技術によって患者の血中EPA濃度を高めることができると証明されえる任意の他の誘導体が挙げられる。また、これらの組合せも使用できる。好ましくは、トリグリセリド又はエチルエステルであり、エチルエステルが特に好ましい。
EPAは合成可能であるが、非常に困難である。その理由は、EPAには32種の異性体が存在し、そのうち、すべての二重結合がシス配置である1種のみが生物学的に活性であるからである。したがって通常は、天然のEPA含有源から調製する。この含有源には、微小藻類及び他の微生物、魚類、甲殻類及び海洋哺乳類由来の広範かつ多様な魚油(marine oils)が含まれる。さらに、遺伝子改変した微生物又は高等植物から調製する機会が増加している。これらのいずれかの含有源由来のEPAを本発明で使用することができる。これらは酸及びその誘導体の供給源を提供する。
EPAは、天然油状物形、あるいは、好ましくは部分精製又は完全精製された抽出物又は好ましくは70%を超える純粋化合物(遊離酸及び/又はその誘導体)、非常に好ましくは90%を超えるか、あるいは95%を超える純粋化合物を含有する半合成誘導体の形態で使用するとよい。純粋なEPA−トリグリセリド又は純粋なEPAのエチルエステルは、これらの目的に特に適している。EPAは細胞内の非常に特異的な部位に結合すること、そしてこの結合は、EPA自体の活性を妨害することができる他の脂肪酸によって妨害されえることがますます明らかになってきている(DF Horrobin, Progr Drug Res, 2002)。したがって、最終の医薬投薬形態が、EPAの作用を妨害する可能性がある他の脂肪酸を総計で10%未満、かつ個別には3%未満の含有量である場合に最良の治療結果が得られる。好ましくは、最終投薬形態は、EPAの作用を妨害する可能性がある他の脂肪酸を総計で5%未満、かつ個別には2%未満の含有量であるべきである。これに関して最も重要な脂肪酸は、関連脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)である。この考察において考慮すべき他の脂肪酸は、リノール酸(LA)及びアラキドン酸(AA)である。好ましくは、EPAは、ドコサヘキサエン酸、リノール酸及びアラキドン酸を総計で10%未満、かつ個別には3%未満及び含有する。さらに好ましくは、EPAは、ドコサヘキサエン酸及びリノール酸を総計で5%未満、かつ個別には2%未満及び含有する。また、EPA中にアラキドン酸は2%未満存在するのが好ましい。DHA、LA又はAAが1%又はそれ未満であるEPA製剤を使用することができる。あるいは、DHAを実質的に含まないEPA製剤を使用してもよい。さらに、この製剤は、LA又はAA、あるいはLA及びAAの両者を実質的に含まないものでもよい。
AN及び関連症状の治療に日常使用するEPAの総用量は、50mg〜20g/日の範囲でよいが、通常は100mg〜5g/日の範囲、特に300mg〜3g/日の範囲内である。
通常の投与経路は、カプセル又はマイクロカプセルの医薬投薬形態又は当業者が調製する他の適切な剤形で行う。特にAN患者に対して、他の適切な剤形とは、次のとおりである:
1.液状物又はエマルジョンの任意の剤形又は関連する経口投与の投薬形態。
2.AN患者で認められる食物恐怖症を迂回するために必要とされる可能性がある筋肉内又は静脈内の経路を経由する非経口投与用製剤の任意の形態。
3.適切な用量でEPAを添加した、特にAN患者治療用に用いられる特別医療食、とりわけ、経口投与用又は経腸チューブ摂食による投与用の流動食。
EPAはまた、AN患者又は関連障害患者用の、静脈内に投与される栄養補給剤に添加してもよい。
15歳の患者は、歴14ヶ月のダイエット及び摂食障害を示していた。これらの症状は、食事制限及び過度の運動で始まり、下剤乱用にまで進行した。初診時の2ヶ月前に、患者はすべての固形食の摂取を止めていた。初診時に、患者の体重は、身長1.63mに対して55kgと、依然として身長に対して正常範囲内であった。しかしながら、患者は、固形食摂取の停止後、体重が8kg減少し、月経が停止し、そして細い柔らかな「うぶ毛」が身体じゅうに生え始めた。これはANに一般的な症状である。
この患者を、家族療法、精神療法及び食事に関するアドバイスの標準的AN療法で治療を施した。この治療は有効ではなかった。その後2ヶ月にわたって、患者の体重は約10kg減少し、これにより患者は入院せざるを得なくなった。この時点で、患者は極度に疲労し、会話を持続することができないか、あるいは持続しようとしなくなった。患者は、るいそう状態であるにもかかわらず、依然として太っているという考えに取りつかれ、さらに体重を減少することを望んだ。患者の心拍数がは非常に低く、血糖が低かった。これは饑餓の徴候であった。親の同意を得て、この患者を強制経鼻胃栄養法で緊急治療した。この療法の2週間後、この患者は体重が2kg強増加し、口で少量食べ始めた。この期間の終了時点で、患者の家族は医学的アドバイスに反して患者を退院させた。
以後10日間にわたって、患者の体重はさらに5kg減少し、42kgになった。この患者の担当医は、彼女の生命が危険であると考え、強制入院のための指令を得た。この入院開始時には、患者は、1g/dのエイコサペンタエン酸エチル(E−EPA)で治療された。これにより治療に対する患者の応答が変化した。以後数週にわたって、患者は正常な摂食を開始し、12週間のうちに、彼女の体重は57kgに回復した。患者は、心的状態及び認知機能が改善し、普通にコミュニケーションができるようになった。体重及びと食物に悩まされて他のすべてのものを排除することなく、患者は自分の生活及び将来のすべての局面に関心を抱くようになった。歪曲した身体イメージの認識は消失し、患者は自分の外見に自信を持つようになった。12週後、この患者は退院した。彼女の体重は正常値の約62〜65kgで安定した。彼女は夏期のアルバイト職を得、これを楽しんで首尾よく終え、そして大学の課程に入学した。この経時変化を表1にまとめる。
表1.エチル−EPAで治療したAN患者の状態における変化。
モルガン・ラッセル(MR)転帰尺度は、AN患者の状態を評価するための良く認知された尺度である。全般尺度(MR−O)は全病像を対象としaddresses the whole picture、一方、下位尺度は、食物摂取(MR−A)、精神状態(MR−C)及び全般社会経済的健康状態(MR−E)のような懸案を対象とする(address issues)。全般尺度及びその下位尺度はすべて、0〜12のスコアで評価した。この場合、0は深刻な障害状態を示し、12は完全に正常な状態を示す。
患者7人の障害に対してEPAを用いる治療を施した。図1〜図5にこの研究の結果をまとめる。被験者は、1g/日のエチル−EPA(E−EPA)を初期3ヶ月間にわたって投与された。Laxdale Limitedより入手したE−EPAは、95%を超える純度のEPAであった。患者及び家族が3ヶ月を超える継続することを望んだ場合には投与を継続し、用量を1g/日より増量した事例もあった。すべての患者は、地域の医療保健サービス(local district health services)で利用可能な標準的治療を提供された。この治療には、徹底した精神医学的及び身体的評価、身体パラメータの標準的モニタリングが含まれていた。月次ベースでモニタ―するパラメータは、患者の体重及び身長を含んでいた。BMI、及び平均体重及び身長(ABW)を、Weight 4 heightソフトウェア(これはChild Growth Foundationによる1990英国参照データに基づく)を使用して算出した。次の標準的精神測定法を使用した:EDI−2、BDI−2、CGAS、CGI−S、モルガン・ラッセル、及び患者リッカートスケール(障害状態(problems)、一般的状態(general)及び改善状態(improvement)を含む)。
患者1
患者1は、彼女がエチル−EPA治療を開始した時に15.6歳であった。この患者は、性的虐待及びいじめとの関連で発症した18ヶ月の限定的摂食障害(anorexia)歴を有していた。多嚢胞性卵巣症候群(POS)、肥満症及び鬱病の家族歴が認められた。彼女の疾病の最近4ヶ月の期間中、症状は急速に悪化し、体重の約1/3が減じた(罹患前BMIは24を超えていた)。患者は、続発性無月経、血行不良及びうぶ毛を有していた。血液検査では、低血糖症、白血球減少及び肝機能検査異常(abnormal LFTs)が認められた。
入院するまでの時点で、患者のBMIは16.9(ABW 83.6%)であった。患者の精神状態は重度に損傷しており、患者への面会は困難であった。患者は極度の不安状態であり、身体イメージをひどく歪曲していた。経鼻胃リフィーディングを開始した数週間後に、彼女は、95%を超えるEPA純度のエチル−EPA(E−EPA)1gで開始した。患者にはさらに、Forcevalを2カプセル/日及びSolvazincの処方を受け、微量栄養素の欠乏を補った。患者は非常に病的な精神状態であり、基底の精神測定を完了できなかった。経鼻胃栄養法は3週間後に停止し、この時点で患者は、医学的助言に反して、時期尚早に退院した。患者の体重は急速に減少を続け、そして自主ベースの治療を保証することが不可能になったため、最終的には、精神保健法の第3項に基づいて患者を拘留した。以後、一般思春期精神保健施設で彼女の治療を継続し、患者に経口リフィーディング及び環境療法を施した。患者は個人精神療法に応じようとせず、また、何度も家族療法を試みたが失敗した。しかしながら、両親及び患者はE−EPA治療の継続には前向きであった。治療の2ヶ月後には、顕著な改善が見られた。これには、食欲、心的状態、自尊心、将来への関心の改善及び精神測定の正常化が含まれた。患者は座瘡を発症したが、これは後にPOSを原因とするものであるとわかった。この患者は3ヶ月のE−EPA治療を完了したが、体重増加の継続を懸念し、以後の治療の停止を決定した(BMI 22.8、ABW 111%)。この患者は大学へ復帰した。E−EPA治療の完了後、約3ヶ月間、患者の機能レベルは罹患前よりも高かった。しかしながら約6ヶ月後に、この患者は心的状態を悪化させ、重度の感情変動を経験した。1年の追跡調査時点で、この患者はほぼ罹患前の体重であった;生活上、顕著な心理社会的ストレッサーが認められたにもかかわらず、摂食障害の再発は認められず、患者は過食症の症状を発症しなかった。この患者は性的にアクティブであり、また月経が回復した。
患者2
患者2は14.5歳であり、歴2年の食事制限、過度の運動及び原発性無月経を伴っていた。この患者は慢性的に低下した自尊心及び低下した心的状態を患っていた。鬱病の家族歴が認められた。摂食障害に先立って、明らかな促進的事件(precipitating event)は認められなかった。患者は、救急医療時に小児科の集中治療室に入り、そして低血糖症及び心血管虚脱のために入院治療による回復を必要とした。この時点で、患者のBMIは14.4、ABW:76.3%であった。この患者は高度の精神病理を示した。これは、身体イメージの深刻な歪曲、食物に関する極度の恐怖感、生命を失うことを意味するものであってさえも、さらに体重減少を願望すること、及び強迫症状を含むものであった。最初の血液検査では、若干高いコレステロール、ビリルビン、及び高レベルのアミノトランスフェラーゼ、ならびに低レベルの亜鉛及びセレンが認められた。この患者は、亜鉛を補給しても、一貫して低い亜鉛レベルを示した。親の同意に基づき、患者の身体パラメータが安定するまで、経鼻胃(NG)栄養法を施したところ、患者はBMI 16.1(ABW:84.4%)に達した。E−EPA治療を、彼女がNG栄養法中に開始した。95%を超える純度のEPAを用量1g/日で投与した。小児科病棟から退院した後、患者の両親は思春期精神保健施設のデイホスピタル治療にのみ同意した。彼らは家族療法を拒否したが、患者は個人精神療法を受け入れた。この療法は動機付け及び心理教育的原理に基づくものであった。患者は依然として鬱病及び強迫症状を患っていたので、抗鬱薬治療を提案したが、再度、両親がこれに同意しなかった。患者は3ヶ月までの間に部分的に改善した(ABW 86.34%であり、精神測定ではほんの少しの改善が認められた)。両親は患者を時期尚早に退院させたが、その後3ヶ月間は体重が維持された。患者は6ヶ月後にE−EPA治療を停止し、その結果、体重(最低値ABW 73%)及び精神病理の両者に関して、顕著な悪化が生じた。両親は再入院を拒否したが、E−EPA及び亜鉛治療の再開には同意した。その後、顕著な改善が認められた。この治療の後期段階では、E−EPA投与剤を2g/日に増量した。1年の追跡調査時点で、患者のBMIは17.74(ABW:88.3%)であった。患者は心理社会的機能の大きな改善、社会生活の改善を示したが、ボーイフレンドはいなかった。患者は依然として無月経であった。
患者3
本事例の13.3歳の女性患者は、思春期対象施設を紹介された。この患者は歴3年の食事制限、原発性無月経、成長遅延、及び性的発育の遅延を有していた。患者は思春期前であった。患者は身体イメージの歪曲を否定した。また、顕著な情緒障害及び低下した心的状態が認められた。食物回避情緒診断(Food Avoidance Emotional Diagnosis)を実施した(これは代表的拒食症に相当する)。患者のBMIは紹介の時点で13.3(ABW 74.4%)であった。患者は、低体重であるにもかかわらず、身体的に安定していた。したがって、思春期精神保健施設では、この患者を5日/週の入院患者として管理した。患者は、経口リフィーディング、環境療法、心理教育及び支援カウンセリングを受けた。この患者は低フェリチン及び低葉酸値を示した(これらは治療された)。患者は精神療法に応じず、また、家族は移動が困難なために家族療法に参加しなかった。この患者は、1g/日の95%を超える純度のE−EPA治療を受け入れた。3ヶ月のE−EPA服用期間のうちに患者は3cm成長し、彼女のBMIは15.5(ABW:81%)になり、そして彼女の思春期が始まった。精神状態は有意に改善し、患者は快活かつ積極的になった。患者は食物に対する異常な先入観を有さず、広範囲の高カロリー食物を消費することができた。残念ながら、患者が思春期対象施設から退院した後、両親は定期的なフォローアップ検診の予約を逃し、患者のE−EPAに関するコンプライアンスは低下した。6ヶ月の時点で、患者は退院時と同体重であり、よりいっそうの成長は認められなかった。6ヶ月以後、この患者を追跡調査することができなかった。
患者4
本事例の14.5歳の女性は緊急に紹介されてきた患者であった。この患者は、いじめ及び家庭の問題に関連して、歴6ヶ月の食事制限及び急速な体重減少を伴っていた。患者は3ヶ月の無月経歴を有していた。患者は摂食不能であった。健康診断によると、BMIは14.8(ABW:74.7%)であった。患者は徐脈、低血圧及び末梢循環不良を示した。患者は、悪液質であり、乾燥肌であり、便秘であった。精神状態検査では、低下した心的状態、身体イメージの深刻な歪曲、体重及び容姿に関する先入観、及び食物関連の強迫行動が認められた。小児科病棟において、この患者にNG栄養法を施し、Solvazincを投与して亜鉛欠乏を治療した。数週間後(ABW 83.9%の時点で)、患者が小児科病院から退院した後、家族は最低限の精神保健治療提供(mental health input)にのみ同意した。しかしながら、患者は、1g/日の95%を超える純度のE−EPA治療を継続することに前向きであり、そしてE−EPAを総計で6ヶ月間投与した。2ヶ月後には、患者の心的状態に劇的な改善が認められ、また精神測定でも顕著な改善が見られた。患者は活発な社会生活を回復し、ボーイフレンドに関心を抱くようになった。患者の体重は85.5%ABW付近で安定した。しかしながら、E−EPA服用停止後3ヶ月以内に患者の体重は悪化した(80%ABW)。この年の末までの時点で、患者の月経は回復していなかった。
患者5
患者5は、この研究に、自発的に参加した。彼女は22歳の薬理学の学士卒であり、過食症の症状を伴った7年の拒食症歴を有していた。鬱病の家族歴が認められた。患者は、最低BMIが約14.15であったにもかかわらず、地域看護サービスがなかったために入院経験がなかった。この患者に、本発明者らとは別の供給元から入手したE−EPAを投与し、連絡の確保及び効能に関する助言を提供した。患者は続発性無月経を示したが、性的にアクティブであった。患者は、自尊心が低く、衝動制御が乏しく、不安発作を伴う顕著な併発性の不安(co-morbid anxiety)を示した。この患者は、地域サービスでの看護を受けていなかったので、心理教育セッションに一度参加したことを除き、心理学的治療を受けなかった。1g/日のE−EPA治療開始前、患者のBMIは17.15(ABW:77%)であった。3ヶ月後には、体重(BMI 20、ABW:90%)、摂食習慣及び心的状態に関して劇的な改善が認められた。しかし不安は改善されなかった。E−EPA用量を4g/日に増量したところ、不安発作が緩和された。6ヶ月の追跡調査では、患者は性的にアクティブであり、幸福であった。
患者6
本事例の17歳男性は、歴9年の食事制限ならびに体重及び容姿に関する先入観を示した。この患者は食物に関して強い強迫観念を抱き、これが原因で家庭では口論が頻発し、社会生活に衝突していた。初診時には、患者のBMIは17.57(ABW:87%)であった。彼の身長は発育パーセンタイル値0.01であり、これは深刻な成長遅延(成長ホルモン欠乏は認められない)及び性的発育の遅延を示すものであった。思春期の徴候はほとんど認められず、顔面には毛がなく、声変わりを経ておらず、患者ははるかに幼い子供に見えた。この患者は、低血圧、軽度の徐脈、及び末梢循環不良を示した。また、性欲の欠如が認められた。この患者及び家族は外来治療を望み、患者は、スケジュール(何度も数週間の間この地域にはいなかった)の都合により、心理教育及び食事カウンセリングのみを受けた。1g/日の95%を超える純度のE−EPA治療を開始して、4〜6週間のうちに、患者は劇的に改善した。3ヶ月終了時で、患者のBMIは19.1(ABW:93.6%)であり、患者は3cm成長した。また、患者の摂食障害症状は完全に解消し、性欲が回復した。6ヶ月の時点で唯一残存する症状は、軽度の不安であった。
患者7
本事例の13.5歳女性患者は、歴18ヶ月の食事制限及び過度の運動、成長及び発育の遅延を示した。彼女は思春期前であった。摂食障害及び鬱病に関する家族歴及び重大な家庭の問題が認められた。患者は、低い心的状態、体重及び容姿に関する先入観及び身体イメージの歪曲を示した。患者は身体的に安定していたので、思春期精神保健施設でw5日/週の入院患者として受け入れられた。患者は、経口リフィーディング、環境療法、家族療法及び個人療法を受けた。1d/日の95%を超える純度のE−EPA治療を開始する前は、患者のBMIは14.8(ABW:78.21)であり、そして3ヶ月のE−EPA治療が終了した時点では、16.21(ABW 84.5%)であった。患者はこの3ヶ月間に1.5cm成長した。この患者は約6週の時点で情緒悪化を示した。これは、親の別離、離婚寸前、及び引越しに応じた症状であった。この患者に関して追跡調査情報は存在しない。
注目すべき点は、E−EPA服用中に悪化した患者が認められなかったことである。対照的に、研究への参加が6ヶ月延期された患者では、この期間中に悪化が認められた。実施例2で考察した7人の患者のうち、4例で部分的な改善が認められ、3例では完全回復が見られた。成長遅延を示していた患者は、E−EPA治療期間中、治療に応答して顕著な成長を示した。ほとんどの患者が、拒食症に対する標準的治療、例えば個人療法及び家族療法に応じることを嫌ったことを考慮すると、本治療への参加及び導守率(recruitment and adherence)は良好であった。
治療に対するこれらの劇的な応答は、ANならびに関連の摂食及び嘔吐障害の管理に対する、全く新規で予測できないアプローチを明示するものである。したがって、本発明は、これらの障害の管理するための、任意の適切な投薬形態でのEPAの使用を指す。AN患者は、一般的な微量栄養素の欠乏を患うことが多いので、EPAを微量栄養素補給剤と別個に又は同一投薬形態中に組み合わせることが適切である。代表的な補給剤は、亜鉛補給剤、例えばSolvazinc(登録商標)、及びForceval(登録商標)である。EPAの適切な投薬形態は、単位投薬形態の医薬品、栄養補給剤及び特別食、例えば経鼻胃チューブ又は他の経腸もしくは非経口経路による投与用の食物が含まれる。
本発明によれば、拒食症(AN)、過食症及び関連する臨床症候群に対して有効な治療方法を提供することができた。
図1は、治療前後の、被験者の平均体重%を示す。 図2は、治療期間中の、CGI−S(重症度に関する臨床全般印象尺度)に基づく臨床重症度評価における変化を示す。 図3は、治療期間中の、全般機能(C−GAS)における変化を示す。 図4は、治療期間中の、BDI−2(ベック抑うつ質問票)における変化を示す。 図5は、治療期間中の、EDI−2(摂食障害調査表)における変化を示す。

Claims (12)

  1. 身体に吸収可能な任意の適切な形でエイコサペンタエン酸(EPA)を投与することによって、拒食症(AN)、過食症及び関連する臨床症候群の治療方法。
  2. 拒食症、過食症及び関連する臨床症候群を治療するための薬物の製造における、身体に吸収可能な任意の適切な形でのエイコサペンタエン酸(EPA)の使用。
  3. 前記EPAは、天然のEPA含有油状物由来である、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の使用。
  4. 前記EPAは、遊離酸、適切な塩、モノ、ジ、又はトリグリセリド、リン脂質、アミド、エステル又は生物学的に適合性を有する任意の他の誘導体の形である、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の使用。
  5. 前記EPAは、トリグリセリド又はエチルエステルの形である、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の使用。
  6. 前記EPAは、70%を超える純度、好ましくは90%を超える純度、そして非常に好ましくは95%を超える純度である、請求項1、2、4又は5に記載の方法又は使用。
  7. 前記EPAは、ドコサヘキサエン酸、リノール酸及びアラキドン酸を総計で10%未満、かつ個別には3%未満の含有量である、請求項6に記載の方法又は使用。
  8. 前記EPAは、ドコサヘキサエン酸及びリノール酸を総計で5%未満、かつ個別には2%未満の及び含有量である、請求項6に記載の方法又は使用。
  9. 前記EPAは、エチルエステル形である、請求項7又は8に記載の方法又は使用。
  10. 前記EPAは、適切な医薬投薬形態における経口投与用であり、用量が50mg〜20g/日の範囲、好ましくは100mg〜5g/日の範囲、そして非常に好ましくは300mg〜3g/日の範囲の投与量で投与される、いずれかの先行する請求項に記載の方法又は使用。
  11. 前記EPAは、適切な医薬投薬形態において非経口、筋肉内又は静脈内投与用である、いずれかの先行する請求項に記載の方法又は使用。
  12. 前記EPAは、拒食症(AN)又は関連障害を持つ患者用の栄養補給剤に添加され、
    該補給剤は、経口摂取され、又は経腸チューブによって投与され、又は経静脈的に投与される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法又は使用。
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