JP2006351677A - 高周波回路用銅箔およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 未処理銅箔の少なくとも電解エッチング処理を施す表面は、その表面から4μmの深さ領域において平均粒径が0.3μm以上の粒状の結晶組織からなり、該未処理銅箔の前記表面を、電解エッチングで粗化処理する高周波回路用銅箔の製造方法であり、この製造方法で製造した高周波回路用銅箔である。なお、前記未処理銅箔の前記結晶組織における粒状の大きさ分布は、1μm以上の粒径が10%以上を占めていることが望ましく、また、前記電解エッチング処理は、エッチング後の銅箔の表面粗さRzが2.5μm以下となるように未処理銅箔の表面を電解エッチング処理することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
このうち前記導体損は、銅箔に直接関連し、信号が高周波化すると表皮抵抗の増加により損失が大きくなる。高い周波数では、表皮効果(導体に交流を流すと磁束変化のために導体中心部に逆起電力が生じ電流が流れ難くなる)により電流は導体表面部分に流れるようになる。そのため、電流の流れる有効断面積が減少して抵抗が上昇する。
このため、銅箔の表面での形状(プロファイル)が伝送損失に大きく影響し、粗度の大きい箔は信号の伝播距離が長くなり、信号の減衰や遅延が問題となってくる。つまり、平滑であるほど導体損は小さくなる。
一方、化学エッチングではエッチング速度が遅い、制御が難しいなど生産性、安定性の面で課題がある。
ICカードはカード内にICを内蔵するので、より高度な判断、複雑な演算が可能であり、記憶容量は磁気カードの100倍程度大きく、情報の読み書きが可能であり安全性が高いという特徴がある。このICカードの情報伝達方法には、接点への物理的接触により交信する接触型以外に、電磁波などを用いて最大数メートル程度の空間的な距離をあけて交信することのできる非接触型のものもある。
また、非接触型ICカードはその通信距離により、密着型(通信距離〜2mm)、近接型(同10cm)、近傍型(同70cm)、マイクロ波型(同数m)の4タイプに分かれており、通信周波数は密着型では4.91MHz、近接型、近傍型では13.56MHz、マイクロ波型では2.45及び5.8GHzと、MHzからGHz域までにわたっている。
本発明の第1の観点の高周波回路用銅箔の製造方法は、未処理銅箔の少なくとも電解エッチング処理を施す表面が、該表面から4μmの深さ領域において平均粒径が0.3μm以上の粒状の結晶組織とし、該未処理銅箔の前記表面を、電解エッチングで粗化処理する高周波回路用銅箔の製造方法である。
一方、化学エッチングではエッチング速度が遅い、制御が難しいなど生産性、安定性の面で問題がある。
即ち、粒状の結晶組織からなる未処理銅箔の、電解エッチング処理する面の表面から4μmの深さまでの領域における平均粒径を0.3μm以上とし、該表面を電解エッチングすることで、ピール強度が高く、伝送損失の小さい高周波回路用として特性の優れた銅箔が作成できることを突き止めたのである。なお、前記の粒状の大きさの分布が、1μm以上の粒径が10%以上占めることで粗化粒子の均一性をより一層良くすることができ好ましく、また、1μm以上の粒径の占める比率を大きくすることによって表面粗度を大きくし、高いピール強度を得ることができる知見もえた。しかし、表面粗度が大きすぎると伝送損失に悪影響を与えるため、Rzで2.5以下とすることが望ましい。
本発明は上記のめっき液を用い、銅箔の製箔条件を制御することで、粒状の結晶組織の状態を制御し、電解エッチングすることで高周波領域での伝送損失に優れ、高いピール強度を有する銅箔の製造方法である。
また、電解エッチングの前に50℃以上で1時間以上熱処理することで銅箔の結晶組織の平均粒径を大きくし、かつ、1μm以上の粒径の占める比率を多くすることができる。
本発明では様々な要求を満たすために、上記電解エッチング処理銅箔の少なくともエッチング処理面に、Ni、Zn又はこれらの合金のめっき層、クロメート層、シランカップリング剤処理層の少なくとも1種の処理層を設けると良い。また、表面処理としてCo、Sn又はこれらの合金めっき層、有機防錆層を施しても良い。
また、本発明の銅箔ではラインでのハンドリング性のため、引っ張り強さが20kN/m2以上であり、かつ、伸び率が3%以上の特性を持つことが望ましい。
この実施例は、本発明の一般的な説明をする目的で記載するものであり、何ら限定的意味を持つものではない。
Tiドラムをカソードとして粒状の結晶組織からなる12μmの銅箔を
(1) めっき浴:
Cu :50〜130g/l
H2SO4 :80〜120g/l
3−メルカプト1−プロパンスルホン酸ナトリウム :0.3〜6ppm
ヒドロキシエチルセルロース(HEC) :0.5〜10ppm
低分子量(分子量3000)膠(PBF) :0.5〜10ppm
塩化物イオン :80〜120ppm
(2) 電流密度 :45〜65A/dm2
(3) 浴温 :40〜60℃
の条件により作成し、この銅箔の光沢面(Tiドラムに接着していた面)に、次の電解エッチング条件で電解エッチングを施した。
Cu :1〜40g/l
H2SO4 :30〜200g/l
添加剤 :微量
(2) 電流密度 :1〜50A/dm2
(3) 浴温 :20〜60℃
上記電解エッチング条件でエッチングした表面に、さらに表面処理としてNi量にして0.1mg/dm2のNiめっき処理、Zn量にして0.1mg/dm2のZnめっき処理の後、金属Cr量にして0.05mg/dm2のクロメート処理し、シランカップリング剤処理を施し、試験試料とした。
この試験試料の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表2、3に示す。
銅の濃度、硫酸濃度、塩素量、浴温、電流密度を表1に示す値にした他は実施例1と同様の条件で製箔し、実施例1と同様に製箔した銅箔の光沢面(Tiドラムに接着していた面)に電解エッチングを施し、表面処理を施して試験試料とした。
この試験試料の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表2、3に示す。
銅の濃度、硫酸濃度、塩素量、浴温、電流密度を表1に示す値にした他は実施例1と同様の条件で製箔し、製箔した銅箔のM面(ドラム接触面とは反対側の面、即ちS面と反対側の面)に実施例1と同じ条件で電解エッチングを施し、表面処理して試験試料とした。
この試験試料の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表2、3に示す。
実施例4で製箔した元箔を120℃の窒素雰囲気中で24時間熱処理し、その後実施例1と同一条件で電解エッチング、表面処理を施し、試験試料とした。
この試験試料の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表2、3に示す。
Tiドラムをカソードとして粒状の結晶組織からなる12μmの銅箔を、銅の濃度、硫酸濃度、塩素量、浴温、電流密度を表1に示す値にした他は実施例1と同様の条件で製箔し、この銅箔のS面(Tiドラムに接着していた面)に、実施例1と同一条件で電解エッチングによる粗化処理を施し、さらにNi量にして0.1mg/dm2のNiめっき処理、Zn量にして0.1mg/dm2のZnめっき処理の後、金属Cr量にして0.05mg/dm2のクロメート処理し、シランカップリング剤処理を施し試験試料とした。
この試験試料の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表2に併記する。
実施例1と3で製箔した元箔のM面に下記条件の電析による粗化処理を施し、比較例3、4とした。
この比較例の表面粗さ、ピール強度、伝送損失を表3に併記する。
(1) めっき浴:
Cu :20〜35g/l
H2SO4 :110〜160g/l
(2) 電流密度 :10〜50A/dm2
(3) 浴温 :15〜35℃
1.ピール強度の測定
ピール強度は常温で測定した。
2.高周波伝送損失の測定
高周波伝送損失の測定は、各試験試料(銅箔)を樹脂基材に積層した後、配線長:1,000mm、線幅:0.16mmのパターンを作成し、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー(株)8753ET)で85℃、5GHzでの伝送損失を測定した。
3.平均粒径、粒径1μm以上の占有率の測定
表面処理前の処理面の表面から4μmの深さ領域の平均粒径、粒径1μm以上の占有率の測定はEBSDで測定した。
実施例2と比較例3を比較すると、実施例2はピール強度、伝送損失ともに優れている。
実施例3と比較例4を比較すると、ピール強度は同程度であるが、実施例3は比較例4よりも伝送損失に優れている。
実施例4と比較例4を比較すると、実施例4はピール強度、伝送損失ともに優れている。
実施例5は実施例4の元箔を窒素雰囲気中120℃で24時間の熱処理後、同様の処理をしたものであるが、比較例4と比較してピール強度、伝送損失ともに優れている。
なお、本発明銅箔の製造方法はCOF、フレキシブルプリント配線板用としても高い評価を与えることができ、従って、特にその用途を限定するものではない。
Claims (7)
- 高周波回路用銅箔の製造方法であって、未処理銅箔の少なくとも電解エッチング処理を施す表面は、その表面から4μmの深さ領域において平均粒径が0.3μm以上の粒状の結晶組織からなり、該未処理銅箔の前記表面を、電解エッチングで粗化処理することを特徴とする高周波回路用銅箔の製造方法。
- 前記未処理銅箔の前記結晶組織における粒状の大きさの分布が、1μm以上の粒径が10%以上を占めている請求項1に記載の高周波回路用銅箔の製造方法。
- 前記電解エッチング処理は、表面粗さRzが2.5μm以下となるように未処理銅箔の表面を電解エッチング処理する請求項1または2に記載の高周波回路用銅箔の製造方法。
- 前記エッチング処理面に、Ni、Zn又はこれらの合金のめっき処理、クロメート処理、有機防錆処理、シランカップリング剤処理の少なくとも1種の処理を施す請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波回路用銅箔の製造方法。
- 未処理銅箔の少なくとも電解エッチング処理が施される表面の、表面から4μmの深さ領域における平均粒径が0.3μm以上の粒状の結晶組織であり、該未処理銅箔の前記表面を、電解エッチングで処理することにより表面粗さRzが2.5μm以下に粗化処理された高周波回路用銅箔。
- 引っ張り強さが20kN/cm2以上であり、かつ、伸び率が3%以上の特性を有する請求項5に記載の高周波回路用銅箔。
- 前記エッチング処理面に、Ni、Zn又はこれらの合金のめっき処理層、クロメート処理層、有機防錆処理層、シランカップリング剤処理層の少なくとも1種の処理層が設けられている請求項6または7に記載の高周波回路用銅箔。
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