以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
(車両の構成)
図1は、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された、車両の全体構成を示す概略図である。なお、図1では、実線矢印がガスなどの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。
車両は、主に、エアクリーナ1と、エアフロメータ2と、吸気通路3と、ターボ過給機4と、インタークーラ5と、スロットルバルブ6と、サージタンク7と、吸気ポート8と、内燃機関9と、排気ポート10と、排気通路11a、11bと、吸気ポート圧力センサ12と、排気ポート圧力センサ13と、可変動弁制御部14と、可変ノズル15と、ECU(Engine Control Unit)20と、を備える。なお、排気ポート圧力センサ13は、排気通路11a、11bに対応する排気ポート10ごとに設けられているが、図1では、説明の便宜上、省略している。
エアクリーナ1は、外部から取得された空気(吸気)を浄化して、吸気通路3に供給する。エアフロメータ2は、吸気通路3を通過する吸気の流量を検出する。吸気通路3中には、ターボ過給機4のコンプレッサ4aが配設されており、吸気はコンプレッサ4aの回転によって圧縮される(過給される)。また、吸気通路3中には、吸気を冷却するインタークーラ5と、内燃機関9に供給する吸気量を調整するスロットルバルブ6が設けられている。
スロットルバルブ6を通過した吸気は、サージタンク7に一旦貯蔵された後、内燃機関9の気筒(シリンダ)9a内に流入する。内燃機関9は、4つの気筒9aを有する直列4気筒型エンジンである。また、内燃機関9は、ガソリンエンジンやデーゼルエンジンなどとして構成することができる。
それぞれの気筒9aには、気筒9a内に吸気を導入するための吸気弁(不図示)と、気筒9a内のガス(排気ガス)を排出するための排気弁(不図示)が設けられている。吸気弁及び排気弁は、それぞれカムシャフト(不図示)に接続されており、カムシャフトは、可変動弁制御部14に接続されている。可変動弁制御部14は、図示しないカムシャフトを介して吸気弁及び排気弁の開閉を行う。可変動弁制御部14は、弁の開閉のタイミング(バルブタイミング)を可変制御することが可能な装置であり、ECU20から供給される制御信号S4によって制御される。例えば、可変動弁制御部14は、吸気弁と排気弁が同時に開いている期間(オーバーラップ量)などを調整することができる。オーバーラップ量が大きい場合には、吸気側と排気側との間で、圧力差に応じた方向へのガスの流れが発生する。
吸気ポート8には、吸気ポート8内の圧力(以下、「吸気ポート圧」とも呼ぶ。)を検出する吸気ポート圧力センサ12が設けられている。吸気ポート圧力センサ12が検出した吸気ポート圧は検出信号S12として、ECU20に出力される。また、排気ポート10には、排気ポート10内の圧力(以下、「排気ポート圧」とも呼ぶ。)を検出する排気ポート圧力センサ13が設けられている。排気ポート圧力センサ13が検出した排気ポート圧は、検出信号S3としてECU20に出力される。なお、吸気ポート圧は過給圧に対応し、排気ポート圧は背圧に対応する。
内燃機関9内における燃焼により生成した排気ガスは、排気通路11a、11bに排出される。詳しくは、図1の右から順に第1気筒、第2気筒、第3気筒、第4気筒とすると、排気通路11aは第1気筒と第4気筒に接続されており、排気通路11bは第2気筒と第3気筒に接続されている。このように排気通路11a、11bを構成することにより、第1気筒及び第4気筒と、第2気筒及び第3気筒との間において、ブローダウン(排気行程初期の高圧ガスの排出のことをいう。)などによる影響が互いに生じない。即ち、排気行程終期に、他の排出通路に接続された気筒のブローダウンによって、もう一方の排気通路に接続された気筒内の排気ガスが排出されないという問題が発生しない。
更に、排気通路11a及び排気通路11bは、それぞれターボ過給機4に接続されている。これにより、排気通路11a、11bを通過した排気ガスが、ターボ過給機4内のタービン4bを回転させる。このようなタービン4bの回転トルクが、過給機4内のコンプレッサホイールに伝達されてコンプレッサ4aが回転することによって、ターボ過給機4を通過する吸気が圧縮される。このように、ターボ過給機4は、ツインエントリー型に構成されている。
また、ターボ過給機4には、可変ノズル15が設けられている。可変ノズル15は、ベーンによって構成され、ターボ過給機に供給される排気ガスを絞ることができる。これにより、ターボ過給機4に供給される排気ガスの流量(流速)が調整され、過給圧を変化させることができる。具体的には、可変ノズル15を閉じていくと排気ガスが絞られるため、過給圧が上昇する傾向にある。逆に、可変ノズル15を開いていくと排気ガスへの絞りが緩められるため、過給圧は低下する傾向にある。なお、可変ノズル15は、ECU20から供給される制御信号S5によって開度が制御される。また、可変ノズル15は、排気通路11aから供給される排気ガス、及び排気通路11bから供給される排気ガスの各々の量を調整可能に構成されている。
ECU20は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを含んで構成される。ECU20は、上記した各種センサから供給される出力に基づいて、車両内の制御を行う。具体的には、ECU20は、吸気ポート圧及び排気ポート圧に基づいて、可変ノズル15の開度(ベーン開度)と、オーバーラップ量の制御を行う。即ち、ECU20は、ベーン開度制御手段、及びオーバーラップ量制御手段として機能する。
(可変ノズルの制御方法)
次に、第1実施形態に係る可変ノズル15の制御方法について具体的に説明する。
(1)第1の例
まず、第1実施形態の第1の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第1の例では、車両が加速過渡状態で、且つオーバーラップ量が十分にあるときに、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高くなるように、可変ノズル15の開度を制御する。このような制御を行うのは、吸気ポート圧を排気ポート圧よりも高い状態にすることによって、吸気側から排気側へのガスの流れを促進させて、加速の過渡時(加速初期)における過給遅れを改善するためである。
図2は、第1の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理は、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS101では、ECU20は、車両の運転状態が加速過渡状態であるか否かを判定する。この場合、ECU20は、アクセル開度や燃料噴射量などに基づいて、加速の要求があるか否かを判定する。詳しくは、ECU20は、過給圧の条件が要求出力に達しているか否かを判定する。加速過渡状態である場合(ステップS101;Yes)には処理はステップS102に進み、加速過渡状態でない場合(ステップS101;No)には処理は当該フローを抜ける。
ステップS102では、ECU20は、オーバーラップ量が十分にあるか否かを判定する。具体的には、ECU20は、クランクアングルなどを取得して現在のオーバーラップ量を割り出し、基準オーバーラップ量(オーバーラップ量を判定する際に用いる「所定量」に対応する。)と現在のオーバーラップ量とを比較することによって判定を行う。基準オーバーラップ量は、内燃機関9の運転状態によって規定されるマップを用いて決定される。このマップによれば、内燃機関の回転数が大きく、且つ負荷が小さい場合、大きな基準オーバーラップ量が決定される。逆に、内燃機関の回転数が小さく、且つ負荷が大きい場合、小さな基準オーバーラップ量が決定される。
現在のオーバーラップ量が基準オーバーラップ量以上である場合、即ちオーバーラップ量が十分にある場合(ステップS102;Yes)には、処理はステップS104に進む。この場合には、吸気側と排気側との間のガスの流れが発生しやすい。一方、現在のオーバーラップ量が基準オーバーラップ量未満である場合、即ちオーバーラップ量が十分にない場合(ステップS102;No)には、処理はステップS103に進む。この場合には、吸気側と排気側との間のガスの流れは発生しにくい。
ステップS103では、ECU20は、通常の可変ノズル制御を実行する。具体的には、ECU20は、現在の過給圧が目標過給圧となるように、可変ノズル15を閉じていく制御を実行する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
ステップS104では、ECU20は、可変ノズル15を大きく閉じる。以降の処理で可変ノズル15を徐々に開いていく制御を実行するために、最初に可変ノズル15を大きく閉じる。この処理が終了すると、処理はステップS105に進む。
ステップS105では、ECU20は、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも大きいか否かを判定する。吸気ポート圧が排気ポート圧よりも大きい場合(ステップS105;Yes)には、処理はステップS107に進む。この場合には、可変ノズル15を変えなくても、現在の開度に設定した状態で、吸気側から排気側へのガスの流れが生じる。一方、吸気ポート圧が排気ポート圧以下である場合(ステップS105;No)には、処理はステップS106に進む。この場合には、吸気側から排気側へのガスの流れが生じない。そのため、ステップS106で、ECU20は、吸気ポート圧を排気ポート圧よりも大きくするために可変ノズル15を開く。具体的には、ECU20は、所定量だけ可変ノズル15を開く。そして、処理はステップS107に進む。
ステップS107では、ECU20は、可変ノズル15の制御を継続するか否かを判定する。通常の可変ノズル制御においても可変ノズル15の制御を継続するか否かの判定が行われるが、ステップS107においても、この通常の可変ノズル制御で行われる判定と同様の判定が行われる。例えば、現在の過給圧が目標過給圧に達したか否かなどの判定が行われる。制御を継続する場合(ステップS107;Yes)には、処理はステップS105に戻り、再度判定を行う。一方、制御を継続しない場合(ステップS107;No)には、処理は当該フローを抜ける。
以上の処理を実行することによって、吸気ポート圧を排気ポート圧よりも高い状態に設定することができ、吸気側から排気側へのガスの流れを促進させることができる。これにより、内燃機関9に吸気を効果的に取り入れることができると共に、排気ガスを即座に排出することができるため、加速の過渡時における過給遅れを低減することが可能となる。
(2)第2の例
次に、第1実施形態の第2の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第2の例では、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて可変ノズル15の開度の制御を行う点で、前述した第1の例とは異なる。
図3は、第2の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS201〜S205の処理及びステップS207の処理は、前述した第1の例に係るステップS101〜S105の処理及びステップS107の処理と同様であるため、これらの処理の説明を省略する。第2の例に係る可変ノズル制御処理では、第1の例に係るステップS106の代わりに、ステップS206の処理を行う。よって、ここでは、ステップS206の処理について説明する。
ステップS206では、ECU20は、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて、可変ノズル15を開く。具体的には、ECU20は、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて、現在の可変ノズル15の開度(以下、「現開度」と呼ぶ。)に対して開く開度(以下、この開度を「開き開度」と呼ぶ。)を決定する。
例えば、ECU20は、図4に示すようなマップを用いて開き開度を決定する。図4は、横軸に吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧(絶対値によって示している。)を示し、縦軸に開き開度を示す。このマップによれば、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧が大きいほど、開き開度として大きな開度が決定され、差圧が小さいほど、開き開度として小さな開度が決定される。ECU20は、このようにして決定された開き開度を、現在の可変ノズル15の開度に対して加算した開度を可変ノズル15に対して設定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS207に進み、可変ノズル15を開く制御を継続するか否かの判定を行う。
以上の処理を実行することより、排気ポート圧が吸気ポート圧よりもかなり高いときに、可変ノズル15を大きく開くことができるため、即座に、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態に設定することが可能となる。これにより、過渡時の過給遅れを即座に改善することが可能となる。
(3)第3の例
次に、第1実施形態の第3の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第3の例では、可変ノズル15を開く制御を開始する前に設定する開度(以下、この開度を「基本開度」と呼ぶ、)を、内燃機関9の状態に応じて変化させる点で、前述した第1の例及び第2の例とは異なる。このように基本開度を変更するのは、内燃機関9の状態に応じて最適な基本開度が変化するためである。
図5は、第3の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS301〜S303の処理及びステップS305〜S307の処理は、前述した第1の例に係るステップS101〜S103の処理及びステップS105〜S107の処理と同様であるため、これらの処理の説明を省略する。第3の例に係る可変ノズル制御処理では、第1の例に係るステップS104の代わりに、ステップS304の処理を行う。よって、ここでは、ステップS304の処理について説明する。
ステップS304では、ECU20は、内燃機関9の運転状態に基づいて可変ノズル15を閉じる。この場合、ECU20は、内燃機関9の運転状態に応じて、可変ノズル15を閉じる際に用いる基本開度を変更する。そして、ECU20は、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて決定される開度(以下、この開度を「変化開度」と呼ぶ。)を用いて、基本開度を変化させた開度に可変ノズル15を設定する。即ち、ECU20は、基本開度に対して変化開度を加算した開度に可変ノズル15を設定する。なお、変化開度は、処理を繰り返す過程において、前述した開き開度を加算していった値に相当する。以上の処理が終了すると、処理はステップS305に進み、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高いか否かの判定が行われる。
ここで、基本開度を決定する方法の具体例について、図6を用いて説明する。図6は、基本開度を決定する際に用いるマップを示している。図6は、横軸に内燃機関9の回転数を示し、縦軸に内燃機関9の負荷(噴射量などによって決定される)を示している。このマップによれば、回転数が高く、且つ負荷が大きい場合には、閉じ側の開度に基本開度が設定され、回転数が低く、且つ負荷が小さい場合には、開き側の開度に基本開度が設定される。
なお、前述した基本開度を設定する処理は、吸気ポート圧を排気ポート圧よりも高くするための処理(ステップS305〜S307)を行うたびに実行される。具体的には、ステップS307において可変ノズル15の制御を継続すると判定された場合(ステップS307;Yes)には、処理はステップS304に戻り、再度ステップS304の処理が行われる。
このように、第3の例に係る可変ノズル制御処理によれば、内燃機関9の運転状態に応じて基本開度を設定する処理を繰り返し実行するため、内燃機関9の運転状態に影響を受けることなく、適切に可変ノズル15を開く制御を行うことができる。これにより、過渡時の過給遅れを適切に低減することが可能となる。
なお、ステップS304の処理を行うたびに変化開度を更新(クリア)することに限定はされず、ステップS304〜S307の処理の終了後に決定された変化開度を記憶して、記憶された変化開度を次回のステップS304の処理における初期値として用いても良い。即ち、変化開度を学習させても良い。これによっても、迅速に過給遅れを改善することが可能となる。
また、第3の例に係るステップS306の処理においても、第2の例で示したステップS206の処理と同様に、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて決定される開き開度を用いて可変ノズル15を開く制御を行っても良い。
(4)第4の例
次に、第1実施形態の第4の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第4の例では、可変ノズル15の開度が開き側の上限値(以下、「限界開度」と呼ぶ。)に達したか否かを考慮に入れて制御を行う点で、前述した第1の例〜第3の例とは異なる。具体的には、可変ノズル15の開度が限界開度となった場合には、オーバーラップ量を減らし、且つ可変ノズル15を閉じる制御を行う。こうするのは、可変ノズル15を限界開度まで開いた状態においては、吸気ポート圧の上昇が遅くなり、吸気ポート圧が即座に排気ポート圧よりも高くならない場合があるためである。このような場合には、可変ノズル15を更に開いて密度の低い吸気を導入するよりも、可変ノズル15を閉じて密度の高い吸気を導入するほうが、全体としてより多くの質量の吸気を導入することができる。
図7は、第4の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS401、S402、S403、S404、S406、S407、及びS409の処理は、それぞれ、前述した第1の例に係るS101、S102、S104、S105、S106、S107、及びS103の処理と同様であるため、これらの処理の説明を省略する。ここでは、可変ノズル15を開く処理(ステップS406)の前に行うステップS405の処理と、S405の処理後に行うステップS408の処理について説明する。
ステップS405では、ECU20は、可変ノズル15を開いても良いか否かを判定する。この場合、ECU20は、現在の可変ノズル15の開度が限界開度を超えているか否かを判定する。例えば、ECU20は、内燃機関9の運転状態によって規定されるマップを用いて限界開度を決定する。
図8は、限界開度を決定する際に用いるマップの例を示している。図8は、横軸に内燃機関9の回転数を示し、縦軸に限界開度を示している。このマップによれば、回転数が高いほど小さな限界開度が決定され、逆に、回転数が低いほど大きな限界開度が決定される。
図7に戻って、ステップS405の処理の説明を行う。可変ノズル15の開度が限界開度を超えている場合(ステップS405;No)には、処理はステップS408に進む。この場合、可変ノズル15を更に開いても、吸気ポート圧の上昇が遅く、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高くならない場合がある。よって、可変ノズル15をこれ以上開くことは好ましくない。一方、可変ノズル15の開度が限界開度を超えていない場合(ステップS405;Yes)には、処理はステップS406に進む。この場合には、可変ノズル15を開いても問題は生じないため、言い換えると可変ノズル15を開いたほうが吸気ポート圧を上昇させることができるため、ステップS406において可変ノズル15を開く処理を行う。
ステップS408では、ECU20は、オーバーラップ量を減らす処理を行う。具体的には、ECU20は、可変動弁制御部14を制御することによって、オーバーラップ量を減らす。そして、処理はステップS409に進み、ECU20は、通常の可変ノズル制御を実行する。即ち、ECU20は、可変ノズル15を限界開度から閉じこんでいく制御を実行する。これにより、可変ノズル15を開く制御を続行する場合と比較して、吸気ポート圧を早期に高めることができる。こうなるのは、可変ノズル15を開く制御を続行する場合には密度の低い吸気が導入されるが、可変ノズル15を閉じた場合には密度の高い吸気が導入されるため、結果的に多くの質量の吸気を導入されることとなるためである。
以上の処理を実行することにより、無駄に可変ノズル15を開く制御が実行されることを防止して、過渡時の過給遅れを適切に改善することができる。
なお、第4の例に係るステップS403の処理においても、前述した第3の例で示したステップS304の処理と同様に、車両の運転状態から決定される基本開度を用いて可変ノズル15を閉じる処理を行っても良い。更に、ステップS406の処理においても、前述した第2の例で示したステップS206の処理と同様に、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて決定される開き開度を用いて可変ノズル15を開いても良い。
(5)第5の例
次に、第1実施形態の第5の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第5の例では、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高いときに、可変ノズル15を閉じても吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態を維持できる場合には、可変ノズル15を閉じる処理を行う点で、前述した第1の例〜第4の例とは異なる。可変ノズル15を閉じても吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態を維持できるような状況においては、可変ノズル15を閉じることによって過給圧(吸気通路3の内圧)を上昇させるための制御を行っても、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも低くなることはない。したがって、第5の例では、このような状況において、可変ノズル15を開く制御を行う代わりに閉じる制御を行うことによって、過給圧の上昇を図る。
図9は、第5の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS501〜S507の処理は、前述した第1の例に係るステップS101〜S107の処理と同様であるため、説明を省略する。第5の例では、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い場合(ステップS505;Yes)に、可変ノズル15の制御を継続するか否かの判定を行う代わりに、ステップS508及びステップ509の処理を行う。よって、ここでは、ステップS508及びステップ509の処理について説明を行う。
ステップS508では、ECU20は、可変ノズル15を閉じても良いか否かの判定を行う。具体的には、ECU20は、以下の(a)〜(c)のいずれかに該当する場合には、可変ノズル15を閉じても良いと判定する。
(a)ステップS505〜S509の処理を繰り返し実行した場合において、ステップS506の可変ノズル15を開く処理を一度も行っていない場合
(b)吸気ポート圧が排気ポート圧よりもかなり高い場合
(c)吸気ポート圧が所定圧よりも低い場合
上記の(a)及び(b)に該当する場合には、可変ノズル15を閉じても、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも低くなることはない、即ち吸気ポート圧と排気ポート圧との圧力の関係が逆転することはない。一方、(c)に該当する場合には、ステップS504において可変ノズル15を閉じ足りなかった場合に該当する。例えば、可変ノズル15における経年変化やヒスなどが原因で、所望の開度にまで閉じられなかった場合などに、このような状況が生じる。(c)に該当する場合にも、可変ノズル15を閉じても、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも低くなることはない。
可変ノズル15を閉じても良いと判定された場合(ステップS508;Yes)には、処理はステップS509に進む。ステップS509では、ECU20は、可変ノズル15を閉じる処理を行う。一方、可変ノズル15を閉じても良いと判定されなかった場合(ステップS508;Yes)には、処理はステップS507に進む。この場合、可変ノズル15の開度を変化させることなく、ステップS509で可変ノズル15の制御を継続するか否かの判定が行われる。
このように、第5の例に係る可変ノズル制御処理では、可変ノズル15を閉じても吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態を維持できる場合(上記した(a)〜(c)のいずれかの条件を満たした場合)に、可変ノズル15を開く代わりに可変ノズル15を閉じる制御を行う。これにより、過給圧を効果的に上昇させることができるため、加速の過渡時における過給遅れを改善することが可能となる。
なお、第5の例に係るステップS504の処理においても、前述した第3の例で示したステップS304の処理と同様に、車両の運転状態から決定される基本開度を用いて可変ノズル15を閉じる処理を行っても良い。更に、ステップS506の処理においても、前述した第2の例で示したステップS206の処理と同様に、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて決定される開き開度を用いて可変ノズル15を開いても良い。
また、ステップS505とステップS506の処理の間に、前述した第4の例で示したステップS405の処理と同様に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えているか否かの判定を行っても良い。更に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えている場合には、前述した第4の例で示したステップS408の処理と同様に、オーバーラップ量を減らす処理を行うことも可能である。
(6)第6の例
次に、第1実施形態の第6の例に係る可変ノズル15の制御方法について説明する。
第6の例も、可変ノズル15を閉じても吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態を維持できると判断された場合に、可変ノズル15を閉じる処理を行う点で、前述した第5の例と同様である。しかし、第6の例では、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて可変ノズル15を閉じる制御を行う点で、第5の例とは異なる。差圧に基づいて可変ノズル15を閉じる制御を行うことにより、差圧が大きい場合には、可変ノズル15を大きく閉め込むことができ、即座に可変ノズル15の開度を目標開度に設定することができる。逆に、差圧が小さい場合には、可変ノズル15を無駄に大きく閉め込むことを防止して、適切な開度によって閉め込むことができる。したがって、第6の例に係る可変ノズル15の制御方法によれば、可変ノズル15の開度を適切に目標開度に設定することが可能となる。
図10は、第6の例に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理も、ECU20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS601〜S608の処理は、前述した第5の例に係るステップS501〜S508の処理と同様であるため、説明を省略する。第6の例では、第5の例のステップS509の代わりにステップS609の処理を行う。よって、ここでは、ステップS609の処理について説明する。
ステップS609では、ECU20は、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて、可変ノズル15を閉じる。具体的には、ECU20は、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて、現在の可変ノズル15の開度(現開度)に対して閉じ込む開度(以下、この開度を「閉じ込み開度」と呼ぶ。)を決定する。
例えば、ECU20は、図11に示すようなマップを用いて閉じ込み開度を決定する。図11は、横軸に吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧(絶対値によって示している。)を示し、縦軸に閉じ込み開度を示す。このマップによれば、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧が大きいほど閉じ込み開度として大きな開度が決定され、差圧が小さいほど閉じ込み開度として小さな開度が決定される。即ち、差圧が大きいほど可変ノズル15は大きく閉じられ、差圧が小さいほど可変ノズル15は小さく閉じられる。ECU20は、このようにして決定された閉じ込み開度を、現在の可変ノズル15の開度に対して減算した開度に可変ノズル15を設定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS607に進み、可変ノズル15の制御を継続するか否かの判定を行う。
このように、第6の例に係る可変ノズル制御処理によれば、可変ノズル15を閉じても吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高い状態を維持できると判断された場合に、目標開度まで即座に可変ノズル15を閉じることができる。これにより、過給圧を効果的に向上させることができるため、加速の過渡時における過給遅れを改善することが可能となる。
なお、第6の例に係るステップS604の処理においても、前述した第3の例で示したステップS304の処理と同様に、車両の運転状態から決定される基本開度を用いて可変ノズル15を閉じる処理を行っても良い。更に、ステップS606の処理においても、前述した第2の例で示したステップS206の処理と同様に、吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて決定される開き開度を用いて可変ノズル15を開いても良い。
また、ステップS605とステップS606の処理の間に、前述した第4の例で示したステップS405の処理と同様に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えているか否かの判定を行っても良い。更に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えている場合には、前述した第4の例で示したステップS408の処理と同様に、オーバーラップ量を減らす処理を行うことも可能である。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
(車両の構成)
図12は、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された、車両の全体構成を示す概略図である。なお、図12では、実線矢印がガスなどの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。
第2実施形態に係る車両は、筒内圧センサ16と、排気温度センサ17と、吸気温度センサ18と、吸気ポート温度センサ25と、酸素濃度センサ26とを備え、ECU20の代わりにECU21を有する点で、前述した第1実施形態に係る車両とは異なる。また、第2実施形態に係る車両は、排気ポート圧力センサ13を有していない。第1実施形態に係る車両と同一の構成要素に対しては同一の符号を付し、その説明を省略する。
なお、筒内圧センサ16は複数の気筒9aごとに各々設けられているが、図12では、説明の便宜上省略している。また、排気温度センサ17も排気通路11a、11bにそれぞれ設けられているが、図12では、説明の便宜上省略している。
筒内圧センサ16は、気筒9aの内圧を検出し、検出した圧力を検出信号S6としてECU21に出力する。排気温度センサ17は、排気ガスの温度を検出し、検出した温度を検出信号S7としてECU21に出力する。吸気温度センサ18は、インテークマニホールドの吸気の温度を検出し、検出した温度を検出信号S8としてECU21に出力する。
また、吸気ポート温度センサ25は、吸気ポート8の温度を検出し、検出した温度を検出信号S25としてECU21に出力する。酸素濃度センサ26は、吸気ポート8内の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度を検出信号S26としてECU21に出力する。更に、エアフロメータ2は、吸気通路3を通過する吸気の流量(以下、「吸入空気量」とも呼ぶ。)を検出し、検出した吸入空気量を検出信号S27としてECU21に出力する。
ECU21は、車両内の各種センサから検出信号を取得し、これらに基づいて可変ノズル15の制御を行う。具体的には、ECU21は、上記したセンサの少なくともいずれかの検出信号に基づいて排気側から吸気側への吹き返しの有無を推測し、この推測結果に基づいて可変ノズル15の開度の制御を行う。言い換えると、ECU21は、吸気ポート圧と排気ポート圧との大小関係を推測し、この推定結果に基づいて可変ノズル15の開度を制御する。このように、第2実施形態に係るECU21は、第1の推測手段及び第2推測手段として機能する。
(可変ノズルの制御方法)
次に、第2実施形態に係る可変ノズル15の制御方法について、図13を用いて説明する。
図13は、第2実施形態に係る可変ノズル制御処理を示すフローチャートである。この処理は、ECU21によって所定の周期で繰り返し実行される。
第2実施形態に係る可変ノズル制御処理は、吸気ポート圧力センサ12が検出した吸気ポート圧と排気ポート圧力センサ13が検出した排気ポート圧との大小関係を比較する代わりに、他のセンサの出力に基づいて排気側から吸気側への吹き返しの有無を推測する、即ち吸気ポート圧と排気ポート圧との大小関係を推測する点で、前述した第1実施形態に係る可変ノズル制御処理とは異なる。詳しくは、第2実施形態に係る可変ノズル制御処理では、排気ポート圧を直接検出せずに、吸気ポート圧と排気ポート圧との大小関係を推測する。
具体的には、第2実施形態に係る可変ノズル制御処理では、前述したステップS105やステップS205などの判定の代わりに、ステップS905の判定を行う。ステップS901〜S904の処理はステップS101〜S104の処理と同様であり、ステップS906〜S907の処理はステップS106〜S107の処理と同様であるため、これらの説明を省略し、ここではステップS905の処理についてのみ説明を行う。
ステップS905では、ECU21は、排気側から吸気側へのガスの吹き返しの有無を判定する。具体的には、ECU21は、車両内のセンサからの検出信号に基づいて、吸気ポート圧と排気ポート圧との大小関係を推測することによって、吹き返しの有無を判定する。吸気ポート圧が排気ポート圧よりも高いと推測された場合、即ち吹き返しが生じていないと推測された場合には(ステップS905;Yes)、処理はステップS907に進む。ステップS907では、可変ノズル15の制御を継続するか否かの判定が行われる。一方、吸気ポート圧が排気ポート圧よりも低いと推測された場合、即ち吹き返しが生じていると推測された場合には(ステップS905;No)、処理はステップS906に進む。ステップS906では、ECU21は、可変ノズル15を開く制御を行う。
このように、第2の実施形態では、排気ポート圧力センサを用いることなく、吹き返しを推測して可変ノズル15の制御を行う。これにより、高応答な排気ポート圧力センサを設ける必要がないので、装置の構成を簡略化することができると共に、コストを低減することが可能となる。また、排気ポート圧力センサの耐久性や搭載性などにおける不具合の発生も抑制することができる。
なお、第2実施形態に係るステップS904の処理においても、前述した第1実施形態で示したステップS304の処理と同様に、車両の運転状態から決定される基本開度を用いて可変ノズル15を閉じる処理を行っても良い。更に、ステップS906の処理においても、第1実施形態で示したステップS206の処理と同様に、推測された吸気ポート圧と排気ポート圧との差圧に基づいて開き開度を決定し、決定された開き開度を用いて可変ノズル15を開いても良い。
また、ステップS905とステップS906の処理の間に、前述した第1実施形態で示したステップS405の処理と同様に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えているか否かの判定を行っても良い。更に、可変ノズル15の開度が限界開度を超えている場合には、第1実施形態で示したステップS408の処理と同様に、オーバーラップ量を減らす処理を行うことも可能である。
(推測方法)
次に、吸気ポート圧と排気ポート圧との大小関係を推測する方法の具体例について説明する。
なお、図12に示した車両は、以下で説明する推測方法において用いるセンサを全て具備しているものを示しているが、以下の推測方法のいずれかのみを用いる場合には、車両は、その推測方法に用いるセンサのみを有すれば良い。
(1)第1の例
まず、第2実施形態の第1の例に係る推測方法について、図14を用いて説明する。
図14は、吸気ポート圧変化を示す図であり、横軸にクランク角を示し、縦軸に吸気ポート圧を示している。具体的には、クランク角t1において吸気弁を開き、クランク角t2において排気弁を閉じている。また、クランク角t1とクランク角t2との間は、吸気弁及び排気弁の両方が開いているオーバーラップ期間に対応する。なお、吸気ポート圧は、吸気ポート圧力センサ12によって検出された圧力である。
図14では、実線が吹き返しが無い場合の吸気ポート圧変化を示し、破線が吹き返しが有る場合の吸気ポート圧変化を示している。これより、吹き返しが有る場合には、吹き返しが無い場合と比較して、吸気弁を開いた直後に吸気ポート圧が上昇していることがわかる。このような吸気ポート圧の上昇は、排気側から吸気側にガスが逆流したために生じている。したがって、ECU21は、吸気弁を開いた直後の吸気ポート圧の上昇率を測定することによって、吹き返しの有無を判定することができる。
(2)第2の例
次に、第2実施形態の第2の例に係る推測方法について説明する。
第2の例は、第1の例とは異なり、吸気ポート圧変化の代わりに吸気ポート温度変化に基づいて、吹き返しの有無を推測する。この吸気ポート温度は、吸気ポート温度センサ25によって検出された温度である。
吸気ポート温度変化を用いることによっても、前述した第1の例と同様に、吹き返しの有無を推測することができる。具体的には、吹き返しが有る場合には、吸気弁を開いた直後に吸気ポート温度が上昇する。このような吸気ポート温度の上昇は、比較的高温である燃焼後のガス(排気ガス)が、排気側から吸気側に逆流した場合に生じる。以上より、ECU21は、吸気弁を開いた直後の吸気ポート温度の上昇率を測定することによって、吹き返しの有無を判定することができる。
(3)第3の例
次に、第2実施形態の第3の例に係る推測方法について説明する。第3の例では、吸気ポート8における酸素濃度に基づいて吹き返しの有無を推測する点で、前述した第1の例及び第2の例とは異なる。
図15は、酸素濃度変化を示す図であり、横軸にクランク角を示し、縦軸に酸素濃度を示している。具体的には、クランク角t1において吸気弁を開き、クランク角t2において排気弁を閉じている。また、クランク角t1とクランク角t2との間は、吸気弁及び排気弁の両方が開いているオーバーラップ期間に対応する。なお、酸素濃度は、酸素濃度センサ26によって検出された圧力である。
図15では、実線が吹き返しが無い場合の酸素濃度変化を示し、破線が吹き返しが有る場合の酸素濃度変化を示している。これより、吹き返しが有る場合には、吹き返しが無い場合と比較して、吸気弁を開いた直後に酸素濃度が低下していることがわかる。このような酸素濃度の低下は、燃焼後のガスが排気側から吸気側に逆流したために生じている。したがって、ECU21は、吸気弁を開いた直後の酸素濃度の低下率を測定することによって、吹き返しの有無を判定することができる。
(4)第4の例
次に、第2実施形態の第4の例に係る推測方法について説明する。
第4の例では、吸気弁を開いたときの、吸気ポート圧と筒内圧に基づいて吹き返しを推測する点で、前述した第1の例〜第3の例とは異なる。吸気ポート圧は吸気ポート圧力センサ12が検出した圧力であり、筒内圧は筒内圧センサ16によって検出された圧力である。
上記の第1の例〜第3の例に係る推測方法を用いた場合には、オーバーラップのタイミングにおいて、吸気脈動によって正圧波が伝わってきた場合、吹き返しの有無を正確に判定することができない場合がある。これは、オーバーラップのタイミングで吸気脈動が生じた場合には、吸気ポート圧又は吸気ポート温度の上昇が発生する可能性があるからである。よって、第4の例では、判定精度を向上させるために、吸気ポート圧だけでなく筒内圧も用いることによって、吹き返しの有無を判定する。こうするのは、筒内圧は吸気脈動の影響をほとんど受けないためである。
具体的には、ECU21は、吸気ポート圧が筒内圧未満である場合に、吹き返し有りと判定する。このように、第4の例に係る推測方法によれば、吸気ポート圧と気筒9aの筒内圧を用いるため、吸気脈動による影響を受けることなく、精度良く吹き返しの有無の判定を行うことができる。
(5)第5の例
次に、第2実施形態の第5の例に係る推測方法について説明する。
第5の例では、予測した排気ポート圧を用いて吹き返しの有無を判定する点で、第1の例〜第4の例とは異なる。このように予測された排気ポート圧を用いるのは、予測された排気ポート圧も吸気脈動の影響をほとんど受けないためである。
具体的には、第5の例では、吸入空気量及び排気温度によって規定されるマップなどを参照して、排気ポート圧を推測する。このマップは、吸入空気量と排気温度と排気ポート圧との関係を、予め実験などによって求めることにより作成される。また、マップを参照する際に用いる吸入空気量及び排気温度は、それぞれエアフロメータ2及び排気温度センサ17から取得される。
ECU21は、吸気ポート圧力センサ12によって検出された吸気ポート圧が、上記のようにして推測された排気ポート圧よりも低い場合に、吹き返し有りと判定する。以上のような判定を行うことにより、吸気脈動による影響を受けることなく、精度良く吹き返しの有無の判定を行うことができる。このように、第5の例に係る推測方法によれば、予測された排気ポート圧を用いるため、吸気脈動による影響を受けることなく、精度良く吹き返しの有無の判定を行うことができる。
(6)第6の例
次に、第2実施形態の第6の例に係る推測方法について説明する。
第6の例では、体積効率(行程容積に対して、1サイクル当たりに吸入される空気の容積の比率)の変化に基づいて吹き返しの有無を判定する点で、第1の例〜第5の例とは異なる。この体積効率は、吸入空気量、吸気温度、及び吸気ポート圧に基づいて計算される。この場合、吸入空気量はエアフロメータ2によって検出され、吸気温度は吸気温度センサ18によって検出され、吸気ポート圧は吸気ポート圧力センサ12によって検出される。
通常、排気圧力が上昇して吹き返しが発生した場合には、排気側から吸気側にガスが逆流するため、体積効率は低下する。したがって、ECU21は、体積効率の低下率を計算することによって、吹き返しの有無を推測する。
このように、第6の例に係る推測方法によっても、体積効率を用いるため、吸気脈動による影響を受けることなく、精度良く吹き返しの有無の判定を行うことができる。更に、第6の例では、吸気弁の開弁タイミングにおける圧力や温度などを判定に用いないため、前述した第1の例〜第5の例と比較して、高応答のセンサを用いる必要がない。よって、第6の例によれば、コストを低減することができる。
[変形例]
本発明は、直列4気筒エンジンに適用は限定されず、V型6気筒エンジンなどにも適用することができる。この場合には、それぞれのバンクに対してターボ過給機と可変ノズルが設けられているため、ターボ過給機と排気通路とをツインエントリー型に構成する必要はない。
また、本発明は、ベーンで構成された可変ノズル15を用いて過給圧を制御することに限定はされない。他の例では、可変ノズル15の代わりにウエストゲート弁を用いて、過給圧が背圧よりも高くなるような制御を行うことができる。この場合には、ベーン開度の代わりに、ウエストゲート弁のオン/オフのタイミングなどを制御すればよい。