JP2006347828A - ガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】白金との接触に起因する泡の発生を抑制するとともに、うねりが小さいガラスを作製可能なガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス原料を溶融する溶融工程1と、溶融したガラス融液を清澄する清澄工程2と、ガラス融液を成形装置に供給する供給工程3と、供給されたガラス融液を成形する成形工程4とを含み、前記工程中の少なくとも一部を白金容器内で行うガラスの製造方法において、前記の工程を流れるガラス流の一部を本流から分岐させて、前記白金容器と電気的に接続した雰囲気制御用白金容器7に導くとともに、雰囲気制御用白金容器内の雰囲気の酸素分圧をガラス融液の酸素分圧より低くなるように制御する。
【選択図】図2

Description

本発明はガラスの製造方法に関するものであり、電子デバイス用板ガラス、特に液晶ディスプレイ用基板ガラスのような高い品質が求められるディスプレイ用基板ガラスの製造に好適なガラスの製造方法に関するものである。
ガラスを工業的に生産する場合、ガラス原料を溶融し、清澄した後、ガラス融液を成形装置に供給して所望の形状に成形する方法が一般的に用いられている。特に液晶ディスプレイの基板ガラスのような高品質が求められる板ガラスでは、製造装置からの汚染等によって表示欠陥となる異物や泡が発生しないように、清澄、供給等の各工程を白金容器内で行っている。
ところが従来より、白金とガラス融液との接触に起因して泡が発生するという問題が指摘されている。この現象は電池現象と呼ばれ、ガラス融液の温度差や組成の濃淡に起因して起こることが報告されている。(例えば非特許文献1)
そこでこの問題を解決すべく、特許文献1ではガラス融液と接する雰囲気を、酸素分圧の低い状態にする技術が提案されている。
"An Electrochemical Theory for Oxygen Reboil" by J. H. Cowan, Journal of The American Ceramic Society, Vol.49, No.10 特公昭43−21644号公報
特許文献1では、ガラス融液及び白金と接する部位の雰囲気に窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性な気体を供給することにより、酸素のない雰囲気に変更している。
ところが、この方法を利用してガラス、特に板ガラスを製造すると、ガラス表面に大きなうねりが発生することが確認された。うねりの高さが大きいと、特に液晶ディスプレイ等の基板用ガラスでは、成膜工程でパターンが断線したり、ショートしたりするという不具合を引き起こすことがある。なおここでいう「うねりの高さ」とは、板ガラス表面上の一定長さ(例えば20mm)内における表面凹凸の高低差の最大値を意味する。
本発明の目的は、白金との接触に起因する泡の発生を抑制するとともに、うねりが小さいガラスを作製可能なガラスの製造方法を提供することである。
本発明者等は種々の検討を行った結果、ガラス融液上に不活性な気体を導入する上記特許文献1の方法では、導入される気体とガラス融液との温度差が大きいためにガラス融液の不均質を招き、ガラス表面のうねりが大きくなることに着目した。導入される気体の温度を溶融ガラスと同等になるように調節することも考えられるが、これを適用するには大がかりな装置が必要となり、現実的でない。そこで電気的に接続した状態で本流と支流とにガラス流を分割し、支流のガラス融液が接する雰囲気のみを酸素が少ない状態に制御することにより、上記目的が達成できることを見いだし、本発明として提案するものである。
即ち、本発明のガラスの製造方法は、ガラス原料を溶融する溶融工程と、溶融したガラス融液を清澄する清澄工程と、ガラス融液を成形装置に供給する供給工程と、供給されたガラス融液を成形する成形工程とを含み、前記工程中の少なくとも一部を白金容器内で行うガラスの製造方法において、前記の工程を流れるガラス流の一部を本流から分岐させて、前記白金容器と電気的に接続した雰囲気制御用白金容器に導くとともに、雰囲気制御用白金容器内の雰囲気の酸素分圧をガラス融液の酸素分圧より低くなるように制御することを特徴とする。
本発明の方法によれば、雰囲気を制御するためのガラス流と、高品位な製品を製造するためのガラス流を分離しているため、雰囲気制御によって生じる悪影響が製品に及ぶことがない。しかも雰囲気を制御することで、白金との接触に起因する泡を減少させることができ、泡品位に優れたガラスを作製することができる。
本発明の方法において、本流のガラスに含まれる白金接触に起因する泡が減少すると考えられる理由を、図1のモデルを使用して説明する。
本流に当たるガラス融液部分及び支流に当たるガラス融液部分が接触する白金容器は、電気的に接続されている。一方、本流部分と支流部分のガラス融液上方の雰囲気は互いに隔離されており、支流部分の雰囲気は本流部分の雰囲気よりも酸素分圧が低い状態に制御されている。
通常、白金容器内(本流部分)では、ガラス融液−白金−雰囲気部分で以下の反応(反応A)が生じて雰囲気中の酸素がガラス融液中に供給される。
反応A: 1/2O2 (雰囲気中) + 2e- → O2-
またこのとき消費される電子は、ガラス融液−白金界面で以下の反応(反応B)が起こることによって提供されると考えられる。その結果として白金界面で酸素泡が発生することになる。
反応B: O2- → 1/2O2 (酸素泡)+ 2e-
この現象は、一般に電池現象と呼ばれ、ガラス融液の温度差や濃度差がきっかけとなって生じると説明されている。
本発明では、雰囲気制御用白金容器内の雰囲気の酸素分圧がガラス融液の酸素分圧よりも低いため、支流部分のガラス融液−白金−雰囲気部分で、以下の反応(反応C)によってガラス融液中の酸素が雰囲気中に移動する。
反応C: O2- → 1/2O2 (雰囲気中)+ 2e-
このとき酸素イオンから電子が白金容器に提供されるが、本流側と支流側の白金容器は電気的に接続しているため、提供された電子が本流部分側の白金容器に移動し、以下の反応(反応D)によって本流部分の白金容器界面の酸素泡を消滅させると考えられる。
反応D: 1/2O2 (酸素泡)+ 2e- → O2-
以下、本発明の方法を詳述する。
本発明の製造方法は、ガラス原料を溶融する工程と、溶融したガラス融液を清澄する工程と、ガラス融液を成形装置に供給する工程と、供給されたガラス融液を成形する工程とを含む。また必要に応じてガラス融液の状態を調節する調整工程や、ガラス融液を均質化させるための攪拌工程等を含んでもよい。
また前記した各種工程のうちの少なくとも一部が白金容器内で行われる。ガラスの汚染を防止するために、例えば液晶ディスプレイ用基板ガラスの製造では、溶融工程より下工程は全て白金容器内で行うことが望ましい。なお本発明において、「白金」とは、白金族元素又は白金族元素合金を意味する。また「容器」とは、内部にガラス融液を保持し、或いは移送する槽状、ポット状、パイプ状等種々の形態を含み、白金で成形されたもののみならず、少なくともガラス融液の接触部分が白金箔で内張されたものも含む。
さらに本発明においては、上記した工程を通過するガラス流(本流)の一部を分岐させる。分岐させる時期或いは分岐数に制限はないが、以下の理由から、成形工程(具体的には成形直前)で分岐させることが好ましい。つまり本発明を用いると、泡品位及び表面品位に優れたガラスとともに、表面品位の劣るガラスも同時に発生する。分岐させる時期や分岐数を適正化することにより、うねりが大きく表面品位の劣るガラスの発生量を極力低減させることができる。泡品位向上の観点からすれば、各工程でガラス流を分岐させることが望ましいが、この方法では表面品位の劣るガラスが多量に発生する。成形工程に近い工程での泡の発生は、ガラスの泡品位に大きな影響を与える。成形直前でのみガラス流を分岐させれば、各工程で分岐させる場合に比べて、得られるガラスの泡品位は若干悪化するが、表面品位の劣るガラスの発生は少量に抑えられる。そこで泡品位と表面品位、さらに生産性を考慮すると、供給工程や成形工程で分岐することが好ましい。また供給工程は調整工程、撹拌工程を含むことが多々あるが、これらの調整工程、撹拌工程で分岐しても構わない。なお当然ながら、支流ガラスの流量が本流ガラスの流量を上回ることは、生産性の観点から好ましくない。
またガラス流を分岐させる際のガラス融液の粘度は、50dPas〜400000000dPas、特に250dPas〜8000000dPas、さらには1000dPas〜150000dPas、最適に2000dPas〜5000dPasであることが好ましい。つまり分岐させる際のガラスの粘度が極度に高すぎると、ガラス流を分岐させにくくなる。またこれを解消するためにガラス流量を上げると、表面品位の劣るガラスが多量に発生してしまう。反対にガラスの粘度が低すぎると、ガラス流量の調整が難しくなる。
分岐させた支流ガラスを、白金容器と電気的に接続した雰囲気制御用白金容器に導く。本流が通過する白金容器と支流が導かれる雰囲気調整用白金容器との電気的な接続は、種々の方法で行うことが可能である。例えば、分岐点から雰囲気調整用白金容器に導くための流路に白金容器を使用することによって両者の導通をとることができる。
雰囲気制御用白金容器内の雰囲気の酸素分圧は、ガラス融液中の酸素分圧より低くなるように制御することが重要である。具体的には0.1atm以下であることが好ましい。酸素分圧が低くなければ、上記反応Dが起こらず、電子を本流の白金容器に供給することができなくなる。
なお、雰囲気制御用白金容器を通過させた支流ガラスは、本流に戻すべきではない。つまり支流のガラスは、雰囲気制御用白金容器内で雰囲気によって表面が冷却され、不均質なガラスとなっている可能性が高い。それゆえこのようなガラスを本流に戻すと、高品位のガラス製品を得ることが難しくなる。その一方で、支流ガラスを長時間滞留させておくと、上記反応Dが進むにつれてガラスの酸素分圧が徐々に低下し、反応速度が遅くなって電子の供給量が減少するおそれがある。それゆえ支流ガラスは、本流に戻すことなく成形等を行って系外に排出し、常に新たなガラス融液を本流から導き入れることが望ましい。例えば支流ガラスは、高品位が求められない用途のガラス製品に成形したり、成形後に研磨してうねりを削り取ったり、或いはカレット等として利用することができる。
上記のようにして支流ガラスを処理する一方で、本流ガラスは溶融雰囲気を制御する工程を経ることなく所望の形状、例えば板状に成形する。このため本流ガラスには雰囲気調整による悪影響が及ばず、うねり等のない高品位のガラス製品を得ることが可能となる。板状に成形する方法としてはオーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法等のダウンドロー成形等がある。オーバーフローダウンドロー法を採用する場合には、成形後にガラスを研磨しないことが一般的であるから、本発明の方法を採用する意義が大きい。同様に、高い品質が要求される液晶ディスプレイ用基板ガラス等のディスプレイ用基板ガラスを製造するに当たっても、本発明を適用する意義が大きい。
このようにして、泡品位に優れ、しかもうねりの小さい液晶ディスプレイ用基板ガラス等のガラス製品を製造することができる。
以下、実施例を用いて本発明の方法を説明する。図2は、本発明方法を実施するためのガラス製造装置の一例を示している。図中、1は溶融装置、2は清澄装置、3は供給装置、4は第一の成形装置、5は第二の成形装置、6はガラス流分岐流路、7は雰囲気制御装置、8、9、10、11は連絡流路である。また溶融装置1及び成形装置4、5は耐火物にて作製されているが、それ以外の装置、即ち清澄装置2、供給装置3、ガラス流分岐流路6、雰囲気制御装置7、連絡流路8、9、10、11はすべて白金製である。またこれらの装置のうち、供給装置3、ガラス流分岐流路6、及び連絡流路9、10が雰囲気制御装置7と電気的に接続されている。
溶融装置1は、連絡流路8を介して清澄装置2に接続されている。溶融装置1に供給されたガラス原料は、溶融装置1内で溶解、ガラス化される。その後、ガラス融液は連絡流路8を通って清澄装置2に導かれる。
清澄装置2は、連絡流路8、9を介して溶融装置1及び供給装置3と接続されている。溶融装置1から供給されたガラス融液は、清澄装置2内で脱泡、均質化される。その後、ガラス融液は連絡通路9を通って供給装置3へ導かれる。
供給装置3は、連絡流路9、10を介して清澄装置2及び第一の成形装置4に接続されている。清澄装置2から導かれたガラス融液は、供給装置3内で成形に適した温度、粘度に調整される。その後、ガラス融液は連絡流路10を通って第一の成形装置4に導かれる。
第一の成形装置4は、連絡流路10を介して供給装置3と接続されている。第一の成形装置4としては、例えばオーバーフローダウンドロー装置等の板ガラス成形装置が採用される。供給装置3から導かれたガラス融液は、第一の成形装置4によって所定の形状、例えば板ガラスに成形された後、図示しない取り出し装置により取り出される。
また供給装置3はガラス流分岐流路6を介して雰囲気制御装置7と接続している。供給装置3において、ガラス流が本流と支流に分岐され、支流ガラスはガラス流分岐流路6を通って雰囲気制御装置7に導かれる。
雰囲気制御装置7は、ガラス流分岐流路6を介して供給装置3と、また連絡流路11を介して第二の成形装置5とそれぞれ接続されている。雰囲気制御装置7は、例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性な気体を内部に供給して、内部雰囲気を酸素分圧の低い状態に制御することが可能な装置である。供給装置3で本流から分岐された支流ガラスは、雰囲気制御装置7内に導かれ、酸素分圧の低い雰囲気に晒される。その後、ガラス融液は連絡流路11を通って第二の成形装置5に導かれる。
第二の成形装置5は、連絡流路11を介して雰囲気制御装置7と接続されている。第二の成形装置5としては、例えばカレット作製装置が採用される。雰囲気制御装置7から導かれたガラス融液は、第二の成形装置5によって例えばカレットにされた後、図示しない搬送装置により搬出される。
次に、上記ガラス製造装置を用いてガラスを製造する方法を説明する。
まずガラス原料を溶融装置1に供給し、ガラス原料を溶解、ガラス化する。続いてガラス融液を清澄装置2内で清澄し、供給装置3に導く。供給装置3では、ガラス融液を成形に適した温度、粘度に調整し、第一の成形装置4へ送る。またガラス流の一部を分岐させて、雰囲気制御装置7に送る。
さらに雰囲気制御装置7内の雰囲気を酸素分圧が低い状態に制御しておき、送られてきたガラス流をこの低酸素雰囲気に晒す。この工程によって、前記反応Cが生じ、電子が白金内に移動する。雰囲気制御装置7は、供給装置3、ガラス流分岐流路6、及び連絡流路9、10と電気的に接続されているので、これらの各部位に電子が提供される。提供された電子によって、各部位で上記反応Dが起こり、白金界面で発生した泡が消失する。なお、清澄装置2や連絡流路8、11は雰囲気制御装置7と絶縁されているので、白金製の装置ではあるが、本実施例では電子は提供されていない。
引き続き、雰囲気制御装置7から第二の成形装置5に供給されたガラス融液をカレット化する。このように支流ガラスを本流に戻すことなく消費することによって、新たなガラス融液を連続的(或いは断続的)に雰囲気制御装置7に導き入れることができる。
一方、供給装置3から供給されたガラス融液を、第一の成形装置4にて板状に成形する。第一の成形装置4に供給されるガラス融液は、雰囲気制御を受けていない本流のガラスであるため、うねりの小さい板ガラスを得ることができる。しかも支流ガラスを雰囲気制御することで提供される電子によって、白金界面における本流ガラスの泡は消失するため、成形された板ガラスは泡品位に優れている。
なお、本実施例においては一つの工程を一つの装置で行う例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば一つの装置内で溶融工程、清澄工程が行われることもあれば、溶融工程を複数の溶融装置で行うこともある。
本発明の製造方法は、液晶ディスプレイ用基板等のディスプレイ用基板ガラスだけでなく、その他の電子デバイス用板ガラス、例えばCCDやLDのカバーガラス等を製造する場合にも適用できる。
本発明の原理を説明するモデル図である。 本発明を実施するためのガラス製造装置の一例を示す説明図である。
符号の説明
1 溶融装置
2 清澄装置
3 供給装置
4、5 成形装置
6 ガラス流分岐流路
7 雰囲気制御装置
8、9、10、11 連絡流路

Claims (8)

  1. ガラス原料を溶融する溶融工程と、溶融したガラス融液を清澄する清澄工程と、ガラス融液を成形装置に供給する供給工程と、供給されたガラス融液を成形する成形工程とを含み、前記工程中の少なくとも一部を白金容器内で行うガラスの製造方法において、前記の工程を流れるガラス流の一部を本流から分岐させて、前記白金容器と電気的に接続した雰囲気制御用白金容器に導くとともに、雰囲気制御用白金容器内の雰囲気の酸素分圧をガラス融液の酸素分圧より低くなるように制御することを特徴とするガラスの製造方法。
  2. 少なくとも清澄工程及び供給工程が、白金容器内で行われることを特徴とする請求項1のガラスの製造方法。
  3. 清澄工程又は供給工程において、ガラス流の一部を分岐させることを特徴とする請求項1又は2のガラスの製造方法。
  4. 分岐させた支流のガラスを雰囲気制御用白金容器に供給した後、成形し、又は系外に排出することを特徴とする請求項1〜3の何れかのガラスの製造方法。
  5. 本流のガラスを板状に成形することを特徴とする請求項1のガラスの製造方法。
  6. オーバーフローダウンドロー法により板状に成形することを特徴とする請求項5のガラスの製造方法。
  7. 請求項5又は6の何れかの方法で製造されてなることを特徴とする電子デバイス用板ガラス。
  8. 請求項5又は6の何れかの方法で製造されてなることを特徴とする液晶ディスプレイ用基板ガラス。
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