JP2006344805A - 電磁波吸収体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電磁波吸収体の電気抵抗を維持しつつ、軟磁性体粒子粉末を従来よりも高充填化することができ、高いノイズ低減効果を有する電磁波吸収体を提供すること。
【解決手段】 軟磁性体粒子粉末の表面に、エネルギービームの照射により反応する吸着膜を形成し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と化学結合していることを特徴とする電磁波吸収体。
【選択図】 なし

Description

本発明は電磁波吸収体に関するものであり、詳しくは電子部品から発生する数10MHzから数GHzの広帯域の電磁波ノイズを抑制する電磁波吸収体に関する。更に詳しくは、電子部品が微小化され、高密度実装されたとき発生する数10MHzから数GHzの広帯域の電磁波ノイズを抑制することができる軟磁性体含有量が高い近傍界用電磁波吸収体に関するものである。
近年、高周波を利用するデジタル電子機器類の普及が進み、中でも準マイクロ波帯域を使用する移動通信機器類の普及がめざましい。携帯電話に代表される移動体通信機器やデジタルカメラは、小型化軽量化の要求が顕著であり、電子部品の高密度実装化が最大の技術課題の一つとなっている。従って、実装された電子部品類やプリント配線あるいはモジュール間配線等が互いに極めて接近している。加えて信号処理速度の高速化も図られているため、静電及び電磁結合による線間結合の増大化や放射ノイズによる干渉などが生じ、機器の正常な動作を妨げる事態が少なからず生じている。
このような電磁障害に対して従来は、主に導体シールドを施すことによる対策がなされてきた。しかしながら、導体シールドは空間とのインピーダンス不整合に起因する電磁波の反射を利用する電磁障害対策であるために、遮蔽効果は得られても不要輻射源からの反射による電磁結合が助長され、その結果二次的な電磁障害を引き起こす場合が少なからず生じている。また、チップ積層コンデンサーなどの受動部品によりノイズを抑制することが実施されているが、ノイズ抑制が不十分となりつつある。
この二次的な電磁障害対策として、磁性体の磁気損失、即ち虚数部透磁率μ″を利用した不要輻射ノイズの抑制が有効である。偏平な軟磁性体やソフトフェライトを樹脂と混練分散した電波吸収シートが提案、市販されている(例えば特許文献1参照)。これらシートは、任意の形状に加工できること、機器の薄型化に対応しやすいという利点があり、移動体通信機器やデジタルカメラノイズ発生個所に貼り付け使用されている。しかし、電子部品のさらなる高密度実装の要求に対応するためには、より薄層で高いノイズ低減効果を有する近傍界用電磁波吸収体が必要である。
特開2002−344192号公報
本発明は前記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、電磁波吸収体の電気抵抗を維持しつつ、軟磁性体粒子粉末を従来よりも高充填化することができ、高いノイズ低減効果を有する電磁波吸収体を提供することである。
本発明は、以下のとおりである。
1)軟磁性体粒子粉末の表面に、エネルギービームの照射により反応する吸着膜を形成し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と化学結合していることを特徴とする電磁波吸収体。
2)軟磁性体粒子粉末の表面に、エネルギービームの照射により反応する吸着膜を形成し、これにエネルギービームの照射により反応する有機物を添加し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と前記有機物を介して化学結合していることを特徴とする電磁波吸収体。
本発明の構成によれば、軟磁性体粒子粉末を従来になく高充填化することができ、薄い厚みであっても電磁波吸収体の電気抵抗を維持しつつ、高いノイズ低減効果を有する電磁波吸収体を提供することができる。
以下、本発明をさらに説明する。
電磁波吸収特性は、マイクロストリップライン上に電磁波吸収体をおき、ネットワークアナライザーを使用し、反射係数、透過係数を測定し、各周波数に対し伝送損失(Ploss/Pin)=1−(|反射係数|+|透過係数|)で求めている。この式からもわかるように、透過する電磁波量および反射する電磁波量を小さくする必要がある。しかし扁平状の金属軟磁性体粒子粉末を樹脂またはゴム中に分散させて電波吸収体を作製した場合、充填率を50容量%まで高めると、偏平形状の金属軟磁性体粒子粉末同士が接触して絶縁性が保てなくなり、反射率が増大し、かえって吸収率が低下することが知られている。そこで本発明で使用される軟磁性体粒子粉末としては、絶縁性が高い酸化物軟磁性体を使用するのが好ましい。例えば、Ni−Znフェライト、Mn−Znフェライト、これらに置換元素が含有されたスピネル型フェライト、Mn−Znフェライト表層にNi−Znフェライト層を形成した複合フェライト(例えば特開2003−151812号公報参照)、M型フェライトのFe3+をTi−Mn、Zr−Mn等種々のイオンで置換したM型フェライトが好ましい。またこれら種々のイオンで置換したM型フェライト表面にスピネル型フェライト層を設けた複合フェライトも好ましい。また、センダスト粉末のような扁平状金属軟磁性体粒子粉末表面にスピネル型フェライト層を被覆した複合磁性体が知られている(例えば前記特許文献1、国際公開WO03/15109号パンフレット等参照)。これらの複合磁性体は、表面のスピネル層の組成、厚みを制御することで絶縁性が確保できるので本発明に使用することができる。さらに磁性体の充填率を高めるために、平均粒径が異なる軟磁性体粒子粉末を混合使用することも好ましい。
本発明に使用される酸化物軟磁性体粒子粉末の平均粒径は、例えば1.5〜50μmであり、1.5〜40μmが好ましく、2.0〜30μmがさらに好ましい。複合フェライトを用いる場合、Ni−Znフェライト層の厚さは、0.3〜5μmが好ましい。扁平状金属軟磁性体粒子粉末を用いる場合は、平均厚さ0.5〜5μm、平均粒径5〜50μm、アスペクト比(平均粒径/平均厚さ)2〜60であるものが好ましい。また表面にフェライト層を形成する場合は、その厚さは0.1〜3μmが好ましい。また、平均粒径が異なる軟磁性体粒子粉末を混合使用する場合は、小粒径の粉末の平均粒径は例えば1.5〜10μmであり、大粒径の粉末の平均粒径は例えば5〜50μmであり、小粒径と大粒径との粒径差は、例えば5〜40μmであり、両者の混合割合は、大粒径の粉末100質量部に対し、小粒径の粉末は例えば2〜50質量部である。
軟磁性体粒子粉末の表面に形成される、エネルギービームの照射により反応する吸着膜は、通常単分子膜である。また、吸着膜を構成する化合物としては、エネルギービームの照射により反応する官能基もしくは結合部を有し、軟磁性体粒子粉末の表面に結合する有機物が好ましい。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、フォスフォニル基、スルフォニル基など粒子表面と強固な吸着をする官能基を有する化合物などが挙げられる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、味の素社製商品名プレンアクトなどを使用することができる。
前記のような単分子膜の形成方法は公知であり、例えば特公平7−5924号公報に開示されている。
エネルギービームの照射により反応する有機物としては、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂を使用することができ、電子線硬化性樹脂としては、通常、一分子中に電子線感応性二重結合が2個以上あるアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリル酸アミド類、アリル化合物、ビニルエ−テル類、ビニルエステル類が用いられ、二重結合1個当りの質量平均分子量が50〜4000の電子線硬化性樹脂が好ましい。このような電子線硬化性樹脂としては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ノボラックジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグルコールジアクリレートなどの二官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の二官能メタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセリルトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能アクリレートおよび上記アクリレートと同様の三官能メタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの四官能以上のアクリレートおよび上記アクリレートと同様の四官能以上メタクリレートなどのモノマーアクリレート(メタクリレート)やエーテル、エステル、カーボネート、エポキシ、塩化ビニル、ウレタンなどの骨格を有するオリゴマーやポリマーを上記モノマーで変性し、電子線感応性二重結合を含有させたものが用いられる。これらの化合物は単独でも混合して用いてもかまわない。これらの中で好ましいものは4官能以上のアクリレートであり、更に好ましくはペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。これらの脂肪族(メタ)アクリレート化合物は、例えば、「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や、「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)等に記載されており公知であり、又は、日本化薬(株)、東亜合成(株)、共栄社化学(株)等の商品として市販されている化合物である。
エネルギービームの照射により反応する有機物の添加量は、例えば軟磁性体粒子粉末100質量部に対し、0.5〜15質量部、好ましくは、1〜10質量部、さらに好ましくは、1〜5質量部である。
本発明の電磁波吸収体は、前記吸着膜に対し、エネルギービームを照射し、その少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と化学結合してなるものである。
また本発明の電磁波吸収体は、前記吸着膜およびエネルギービームの照射により反応する有機物に対し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と前記有機物を介して化学結合してなるものである。
これにより、電気抵抗を維持しつつ、軟磁性体粒子粉末を従来よりも高充填化することができ、数10MHzから数GHzの広帯域の高いノイズ低減効果を有する電磁波吸収体を提供することができる。
本発明の電磁波吸収体は、例えば電磁波吸収シートとして用いることができる。具体的には、(1)軟磁性体粒子粉末を有機溶剤中に分散し、この中に吸着膜を形成させる物質を添加し、軟磁性体粒子粉末の表面に化学結合した吸着膜もしくは強固な吸着層を形成させ、これをポリエチレンテレフタレート(PET)のような基材上に塗布し、加圧成形し、エネルギービームを照射する;(2)前記の吸着膜を有する軟磁性体粒子粉末を成形し、エネルギービームを照射する;(3)前記の吸着膜を有する軟磁性体粒子粉末に、エネルギービームの照射により反応する有機物を添加し分散し、分散物を基材上に塗布し、加圧成形し、エネルギービームを照射する;(4)前記の吸着膜を有する軟磁性体粒子粉末に、エネルギービームの照射により反応する有機物を添加し分散し、加圧成形し、エネルギービームを照射する;などにより電磁波吸収シートが得られる。
エネルギービームとしては、電子線や紫外線であることができる。紫外線を使用する場合には光重合開始剤を添加することが好ましい。電子線を使用する場合は、重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、加速電圧が30〜1000kV、好ましくは50〜300kVであり、吸収線量として0.5〜20Mrad(5〜200kGy)、好ましくは2〜10Mrad(20〜100kGy)である。加速電圧が30kV未満の場合はエネルギーの透過量が不足し、1000kVを超えると反応(架橋および/または重合)に使われるエネルギーの効率が低下し経済的でない。電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が高いと表面近傍の架橋、硬化反応が阻害される。紫外線光源としては、水銀灯が好ましく用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3m/分〜20m/分で使用される。電磁波吸収体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)に記載されているものを使用できる。具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどがある。光重合開始剤の混合比率は、紫外線硬化性官能基を有する化合物100質量部に対し0.5〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらに好ましくは3〜10質量部である。
エネルギービームの照射装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
実施例1
水熱法で作成した平均粒径が2μmと8μmのMn−Znフェライト粉末をそれぞれ水溶液中に分散し、水溶液中に分散されたMn−Znフェライトの表面をフェライトメッキ法によりNi−Znフェライト層で被覆して複合フェライト粉末を得た。すなわち、Mn−Znフェライト分散液を80℃に加熱し、分散液の温度を80℃に保ちながらFeCl2 (12g/l)、NiCl2 (4g/l)、ZnCl2 (0.5g/l)の反応液を用いて、各Mn−Znフェライトの表面を超音波励起フェライトメッキによりNi−Znフェライト層で被覆して複合フェライト粉末を得た。超音波励起フェライトメッキ法は、超音波ホーンを使用し、超音波を加えることによって液を激しく運動させながら亜硝酸NaNO2 等の酸化剤を徐々に加えて酸化させると共に、pHコントローラによりアンモニア水でpHを調整して反応液をほぼ中性に維持した。このようにして、核晶のMn−Znフェライト粉末粒子がフェライトメッキの反応液によって侵されることなく、その表面に0.5μm厚のNi−Znフェライトメッキ被覆層を形成した複合フェライト粉末を合成し、水洗・ろ過・乾燥した。
ビニルトリクロロシラン(CH2=CH−CH2−SiCl3)を溶解させたn−ヘキサンを主成分とする溶液を調製し、得られた複合フェライト粉末を浸漬した。複合フェライト粉末表面に存在する水酸基と−SiCl3基とが脱塩酸反応を起こして、CH2=CH−CH2−Si(O−)3 単分子膜が複合フェライト粉末表面に一様に形成される。表面に単分子膜が形成された複合フェライト粉末を回収し、n−ヘキサンで2回洗浄した。
前記のようにして得られた平均粒径8.5μmの単分膜つき複合フェライト粉末100質量部と平均粒子径2.5μmの単分子膜つき複合フェライト粉末2.5質量部を秤量し、トルエン200質量部に加えた。攪拌・混合し、脱泡した分散液を厚さが20μmのPETに乾燥膜厚が0.4mmとなるように塗布した。80℃、50MPaで加圧し、表面成形した。加圧により軟磁性層厚みは0.15mmとなった。この後、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気中で、加速電圧200kVの電子線を吸収線量が50kGyになるように照射した。得られた電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
実施例2
実施例1で得た平均粒子径8.5μmの単分子膜つき複合フェライト100質量部と平均粒子径2.5μmの単分子膜つき複合フェライト2.5質量部を秤量し、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート5質量部、シクロヘキサノン50質量部、メチルエチルケトン50質量部と混練した。脱泡処理したのち、厚さが20μmのPETに乾燥膜厚が0.4mmとなるように塗布した。90℃で2分余熱し、50MPaで2分加圧し、冷却した。加圧により軟磁性層厚みは0.15mmとなった。この後、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気中で、加速電圧200kVの電子線を吸収線量が50kGyになるように照射した。得られた電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
実施例3
平均粒径25μm、平均厚さ0.5μmのセンダスト粉末をイオン交換水に浸漬し、よく撹拌した後、窒素により十分に脱酸素を行なった。さらに、FeCl2 (12g/l)、NiCl2 (4g/l)、ZnCl2 (0.5g/l)の反応液を窒素により十分に脱酸素を行なった後、センダスト浸漬イオン交換水に加え、アンモニア水でpHを調整して反応液をほぼ中性に維持し、温度を65℃に維持しつつ3時間空気を吹き込みながら攪拌し、膜厚0.5μmのフェライト層をセンダスト粉末表面に形成し、水洗・ろ過・乾燥した。さらに、窒素中で650℃にて2時間加熱処理した。
フェライト層を形成したセンダスト粉末をトルエンに分散し、p−スチリルトリメトキシシランのトルエン溶液を添加し、フェライト表面に存在する水酸基と反応させ、単分子膜を形成した。表面に単分子膜が形成されたセンダスト粉末を回収し、トルエンで2回洗浄した。
単分子膜つきセンダスト粉末100質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート5質量部、シクロヘキサノン50質量部、メチルエチルケトン50質量部と混練し、シクロヘキサノン50質量部、メチルエチルケトン100質量部で希釈し、希釈液を分散・脱泡処理した。厚さが20μmのPETに乾燥膜厚が0.3mmとなるように塗布した。80℃、50MPaで加圧し、表面成形した。加圧により軟磁性層厚みは0.1mmとなった。この後、酸素濃度200ppm以下の窒素雰囲気中で、加速電圧200kVの電子線を吸収線量が50kGyになるように照射した。得られた電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
実施例4
実施例3で作成したフェライト層を形成したセンダスト粉末を使用し、p−スチリルトリメトキシシランに変えて3ーアミノプロピルトリメトキシシランを使用し、表面に単分子膜を形成した。また、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートに変えてトリメチロールプロパントリアクリレートを使用した以外は実施例3と同様にして電磁波吸収シートを作成した。得られた軟磁性層厚みは0.1mmであった。この電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
比較例 1
実施例1で得た平均粒径8.5μmの複合フェライト粉末100質量部および平均粒径2.5nmの複合フェライト粉末2.5質量部を、ポリウレタン樹脂10質量部、イソシアネート化合物3質量部、シクロヘキサノン50質量部、メチルエチルケトン50質量部と混練した。脱泡処理したのち、厚さが20μmのPETに乾燥膜厚が0.4mmとなるように塗布した。90℃で2分余熱し、50MPaで2分加圧し、冷却した。加圧により軟磁性層厚みは0.20mmとなった。得られた電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
比較例2
実施例3で作成した表面にフェライト層を形成したセンダスト粉末100質量部、ポリウレタン樹脂15質量部、イソシアネート化合物3質量部、シクロヘキサノン50質量部、メチルエチルケトン50部を混練した。脱泡処理したのち、厚さが20μmのPETに乾燥膜厚が0.3mmとなるように塗布した。80℃で2分余熱し、50MPaで2分加圧し、冷却した。加圧により軟磁性層厚みは0.15mmとなった。得られた電磁波吸収シートにつきネットワークアナライザーを使用して伝送損失を測定した。また電磁波吸収シートの磁気特性と耐傷性を評価した。
伝送特性の測定方法
マイクロストリップラインに測定サンプル(20mm×20mm)を置き、ネットワークアナライザーを使用し、1mVのパルス波形で給電し、Sパラメーター法で反射係数、透過係数を測定し、各周波数に対し伝送損失(Ploss/Pin)=1−(|反射係数|+|透過係数|)で求めた。伝送損失は1が最大で、数値が大きいほうが好ましい。
磁気特性
振動試料型磁力計(VSMP−7型、東英工業製)を使用し、印加磁界159.2kA/mでHcとBmを測定した。
耐傷性
新東科学製引っ掻き試験機(先端0.1mmΦのダイヤモンド針)を用いて、荷重30g、速度10mm/secで軟磁性層表面の引っ掻き試験を行った後、傷の深さを測定した。
実施例、比較例の特性を以下の表1に示す。
Figure 2006344805
本発明による電磁波吸収体は、軟磁性体粒子粉末を高充填化することができ、伝送特性、耐傷性ともにすぐれている。

Claims (2)

  1. 軟磁性体粒子粉末の表面に、エネルギービームの照射により反応する吸着膜を形成し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と化学結合していることを特徴とする電磁波吸収体。
  2. 軟磁性体粒子粉末の表面に、エネルギービームの照射により反応する吸着膜を形成し、これにエネルギービームの照射により反応する有機物を添加し、エネルギービームを照射し、前記吸着膜の少なくとも一部が、隣接する軟磁性粒子粉末の表面に形成された吸着膜と前記有機物を介して化学結合していることを特徴とする電磁波吸収体。
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