JP6616653B2 - 電磁波吸収体及び膜形成用ペースト - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波吸収体と、当該電磁波吸収体における電磁波吸収膜の形成に好適に使用し得る膜形成用ペーストとに関する。
携帯電話、無線LAN、ETCシステム、高度道路交通システム、自動車走行支援道路システム、衛星放送等の種々の情報通信システムにおいて、高周波帯域の電波の使用が広がっている。しかし、高周波帯域の電波の利用の拡大には、電子部品同士の干渉による電子機器の故障や誤動作等を招く懸念がある。このような問題の対策として、不要な電波を電波吸収体により吸収する方法がとられている。
高周波帯域の電波の用途の中でも、自動車の運転支援システムについて研究が進んでいる。かかる自動車の運転支援システムでは、車間距離等を検知するための車載レーダーにおいて、76GHz帯域の電波が利用されている。そして、自動車の運転支援システムに限らず、種々の用途において、例えば100GHz以上の高周波数帯域の電波の利用が広がると予測される。このため、76GHz帯域やそれよりも高周波数帯域の電波を良好に吸収できる電波吸収体が望まれている。
このような要求に応えるため、高周波数帯域における広い範囲において良好に電波を吸収できる電波吸収体として、例えば、ε―Fe系の鉄酸化物からなる磁性結晶を含む電波吸収膜を備える電波吸収体が提案されている(特許文献1を参照)。
特開2008−277726号公報
高周波帯域の電波を利用する種々の電子機器について、小型が進んでいる。このため、電子機器に搭載される電波吸収体についても小型化、薄型化が望まれている。しかし、特許文献1に記載される電波吸収体は、幅広い周波数帯域の電波を良好に吸収する物ではあるが、電波吸収膜を、例えば、膜厚1mm未満のように薄膜化した場合に、電波吸収性能が損なわれる場合がある。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、基材上に形成された電波吸収膜を備える電波吸収体であって、幅広い周波数帯域の電波に適用可能であって、電波吸収膜が膜厚1mm未満の薄膜である場合であっても、良好な電波吸収特性を示す電波吸収体を提供することを目的とする。また、本発明は、当該電波吸収体が備える電波吸収膜の形成に好適に用いられる膜形成用ペーストを提供とすることを目的とする。
本発明者らは、基材状に形成された電波吸収膜を備える電波吸収体において、電波吸収膜に特定のイプシロン型酸化鉄を含有させ、電波吸収膜の比誘電率を6.5〜65とすることによって上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の態様は、基材上に形成された電波吸収膜を備える電波吸収体であって、
前記電波吸収体は、60〜270GHz帯域に電波吸収量が最大となるピークを有し、
前記電波吸収膜は、イプシロン型酸化鉄を含み、
前記イプシロン型酸化鉄は、ε−Fe結晶、及び、結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶から選択される1種以上であり、
前記電波吸収膜の比誘電率が、6.5〜65である、電波吸収体である。
本発明の第二の態様は、ε−Fe結晶、及び、結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶から選択される1種以上であるイプシロン型酸化鉄を含み、
比誘電率が、6.5〜65である膜を与える、膜形成用ペーストである。
本発明によれば、基材上に形成された電波吸収膜を備える電波吸収体であって、幅広い周波数帯域の電波に適用可能であって、電波吸収膜が膜厚1mm未満の薄膜である場合であっても、良好な電波吸収特性を示す電波吸収体を提供することができる。また、本発明によれば、当該電波吸収体が備える電波吸収膜の形成に好適に用いられる膜形成用ペーストを提供とすることができる。
実施例1、実施例2、及び比較例1の電波吸収体についての、周波数と反射減衰量との関係を示す図である。 実施例2及び実施例3の電波吸収体についての、周波数と反射減衰量との関係を示す図である。
≪電波吸収体≫
本発明に係る電波吸収体は、基材上に形成された電波吸収膜とからなる。電波吸収体は、所定のイプシロン型酸化鉄を含み、その比誘電率が、6.5〜65である。本発明に係る電波吸収体は、60〜270GHz帯域に電波吸収量が最大となるピークを有する。
以下、基材と、電波吸収膜とについて説明する。
〔基材〕
電波吸収体は、電波吸収膜を支持する材料として基材を備える。基材の材料は特に限定されないが、電波の反射特性の点から導体が好ましい。導体の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、金属が好ましい。基材が金属からなる場合、基材の材料である金属としては、アルミニウム、チタン、SUS、銅、真鍮、銀、金、白金等が好ましい。
基材の形状は特に限定されず、種々の形状であってよい。電波吸収体の小型化の観点から、通常、板状の基材が選択される。板状の基材の形状は、曲面を有していてもよく、平面のみから構成されていてもよい。基材の形状としては、膜厚の均一な電波吸収膜の形成が容易であること等から、平板状であるのが好ましい。
基材が板状である場合、基材の厚さは特に限定されない。電波吸収体の小型化の観点から、基材の厚さは、0.1μm〜5cmであるのが好ましい。
〔電波吸収膜〕
電波吸収膜は、特定のイプシロン型酸化鉄を含む。また、電波吸収膜の比誘電率は、上記の所定の範囲内の値である。これらの条件を満たす電波吸収膜を前述の基材と組み合わせることによって、幅広い周波数帯域の電波に適用可能であって、電波吸収膜が膜厚1mm未満の薄膜である場合であっても、良好な電波吸収特性を示す電波吸収体を得ることができる。
電波吸収膜の膜厚は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。電波吸収体の小型化の観点から、電波吸収膜の膜厚は3mm未満であるのが好ましく、150μm以上3mm未満であるのがより好ましく、200μm以上3mm未満であるのが特に好ましい。
なお、電波吸収膜を構成する材料の組成や、電波吸収膜の比誘電率や比透磁率に応じて、最適な電波吸収効果が得られる電波吸収膜の膜厚が変動する場合がある。この場合、電波吸収膜の膜厚を微調整して、電波吸収体の電波吸収効果を最適化するのが好ましい。
以下、電波吸収膜が含む必須又は任意の成分と、電波吸収膜の比誘電率及び比透磁率の調整方法とについて説明する。
<イプシロン型酸化鉄>
イプシロン型酸化鉄として、具体的には、ε−Fe結晶、及び、結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶から選択される1種以上を用いる。このようなイプシロン型酸化鉄の結晶は磁性結晶であるため、本出願の明細書では、その結晶について「磁性結晶」と呼ぶことがある。
ε−Fe結晶については、周知のものを用いることができる。結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶については、後述する。
なお、本出願の明細書においてε−Fe結晶のFeサイトの一部が置換元素Mで置換されたε−MFe2−xを「M置換ε−Fe」とも呼ぶ。
ε−Fe結晶及び/又はM置換ε−Fe結晶を磁性相に持つ粒子の粒子径は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。例えば、後述するような方法で製造される、イプシロン型酸化鉄の磁性結晶を磁性相に持つ粒子は、TEM(透過型電子顕微鏡)写真から計測される平均粒子径が5〜200nmの範囲にある。
また、後述するような方法で製造される、イプシロン型酸化鉄の磁性結晶を磁性層に持つ粒子の変動係数(粒子径の標準偏差/平均粒子径)は80%未満の範囲にあり、比較的微細で粒子径の整った粒子群である。
本発明では、このようなイプシロン型酸化鉄の磁性粒子(すなわち、ε−Fe結晶及び/又はM置換ε−Fe結晶を磁性相に持つ粒子)の粉体を、電波吸収膜中の電波吸収材料として用いる。ここでいう「磁性相」は当該粉体の磁性を担う部分である。
「ε−Fe結晶及び/又はM置換ε−Fe結晶を磁性相に持つ」とは、磁性相がε−Fe結晶及び/又はM置換ε−Fe結晶からなることを意味し、その磁性相に製造上不可避的な不純物磁性結晶が混在する場合を含む。
イプシロン型酸化鉄の磁性結晶は、ε−Fe結晶と空間群を異にする鉄酸化物の不純物結晶(具体的には、α−Fe、γ−Fe、FeO、及びFe、並びにこれらの結晶においてFeの一部が他の元素で置換された結晶)を含んでいてもよい。
イプシロン型酸化鉄の磁性結晶が不純物結晶を含む場合、ε−Fe及び/又はM置換ε−Feの磁性結晶が主相であるのが好ましい。すなわち、当該電波吸収材料を構成するイプシロン鉄酸化物の磁性結晶の中で、ε−Fe及び/又はM置換ε−Feの磁性結晶の割合が、化合物としてのモル比で50モル%以上であるものが好ましい。
結晶の存在比は、X線回折パターンに基づくリードベルト法による解析で求めることができる。磁性相の周囲にはゾル−ゲル過程で形成されたシリカ(SiO)等の非磁性化合物が付着していることがある。
(M置換ε−Fe
結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであるとの条件を満たす限り、M置換ε−Feにおける元素Mの種類は特に限定されない。M置換ε−Feは、Fe以外の元素Mを複数種含んでいてもよい。
元素Mの好適な例としては、In、Ga、Al、Sc、Cr、Sm、Yb、Ce、Ru、Rh、Ti、Co、Ni、Mn、Zn、Zr、及びYが挙げられる。これらの中では、In、Ga、Al及びRhが好ましい。MがAlである場合、ε−MFe2−xで表される組成において、xは例えば0以上0.8未満の範囲内であるのが好ましい。MがGaである場合、xは例えば0以上0.8未満の範囲内であるのが好ましい。MがInである場合、xは例えば0以上0.3未満の範囲内であるのが好ましい。MがRhである場合、xは例えば0以上0.3未満の範囲であるのが好ましい。
本発明によれば、60〜270GHz帯域、好ましくは60〜230GHz帯域に電波吸収量が最大となるピークを有する電波吸収体が提供される。電波吸収量が最大となる周波数は、M置換ε−Feにおける元素Mの種類及び置換量の少なくとも一方を調整することにより調整することができる。
このようなM置換ε−Fe磁性結晶は、例えば後述の、逆ミセル法とゾル−ゲル法を組み合わせた工程及び焼成工程によって合成することができる。また、特開2008−174405号公報に開示されるような、直接合成法とゾル−ゲル法とを組み合わせた工程、及び焼成工程によってM置換ε−Fe磁性結晶を合成することができる。
具体的には、
Jian Jin,Shinichi Ohkoshi and Kazuhito Hashimoto,ADVANCED MATERIALS 2004,16,No.1、January 5,p.48−51、
Shin−ichi Ohkoshi,Shunsuke Sakurai,Jian Jin,Kazuhito Hashimoto,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,97,10K312(2005)、
Shunsuke Sakurai,Jian Jin,Kazuhito Hashimoto and Shinichi Ohkoshi,JOURNAL OF THE PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN,Vol.74,No.7,July,2005、p.1946−1949、
Asuka Namai,Shunsuke Sakurai,Makoto Nakajima,Tohru Suemoto,Kazuyuki Matsumoto,Masahiro Goto,Shinya Sasaki,and Shinichi Ohkoshi,Journal of the American Chemical Society, Vol.131,p.1170−1173,2009.等に記載されるような、逆ミセル法とゾル−ゲル法を組み合わせた工程及び焼成工程により、M置換ε−Fe磁性結晶を得ることができる。
逆ミセル法では、界面活性剤を含んだ2種類のミセル溶液、すなわちミセル溶液I(原料ミセル)とミセル溶液II(中和剤ミセル)を混合することによって、ミセル内で水酸化鉄の沈殿反応を進行させる。次に、ゾル−ゲル法によって、ミセル内で生成した水酸化鉄微粒子の表面にシリカコートを施す。シリカコート層を備える水酸化鉄微粒子は、液から分離されたあと、所定の温度(700〜1300℃の範囲内)で大気雰囲気下での熱処理に供される。この熱処理によりε−Fe結晶の微粒子が得られる。
より具体的には、例えば以下のようにしてM置換ε−Fe磁性結晶が製造される。
まず、n−オクタンを油相とするミセル溶液Iの水相に、鉄源としての硝酸鉄(III)と、鉄の一部を置換させるM元素源としてのM硝酸塩(Alの場合、硝酸アルミニウム(III)9水和物、Gaの場合、硝酸ガリウム(III)n水和物、Inの場合、硝酸インジウム(III)3水和物)と、界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)とを溶解させる。
ミセル溶液Iの水相には、適量のアルカリ土類金属(Ba、Sr、Ca等)の硝酸塩を溶解させておくことができる。この硝酸塩は形状制御剤として機能する。アルカリ土類金属が液中に存在すると、最終的にロッド形状のM置換ε−Fe磁性結晶の粒子が得られる。形状制御剤がない場合は、球状に近いM置換ε−Fe磁性結晶の粒子が得られる。
形状制御剤として添加したアルカリ土類金属は、生成するM置換ε−Fe磁性結晶の表層部に残存することがある。M置換ε−Fe磁性結晶におけるアルカリ土類金属の質量は、M置換ε−Fe磁性結晶における置換元素Mの質量と、Feの質量との合計に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
n−オクタンを油相とするミセル溶液IIの水相にはアンモニア水溶液を用いる。
ミセル溶液I及びIIを混合した後、ゾル−ゲル法を適用する。すなわち、シラン(例えばテトラエチルオルトシラン)をミセル溶液の混合液に滴下しながら撹拌を続け、ミセル内で水酸化鉄、又は元素Mを含有する水酸化鉄の生成反応を進行させる。これにより、ミセル内で生成した微細な水酸化鉄の沈殿の粒子表面が、シランの加水分解によって生成するシリカでコーティングされる。
次いで、シリカコーティングされたM元素含有水酸化鉄粒子を液から分離・洗浄・乾燥して得た粒子粉体を炉内に装入し、空気中で700〜1300℃、好ましくは900〜1200℃、さらに好ましくは950〜1150℃の温度範囲で熱処理(焼成)する。
この熱処理によりシリカコーティング内で酸化反応が進行して、微細なM元素含有水酸化鉄の微細な粒子が、微細なM置換ε−Feの粒子に変化する。
この酸化反応の際に、シリカコートの存在がα−Feやγ−Feの結晶ではなく、ε−Feと空間群が同じであるM置換ε−Fe結晶の生成に寄与するとともに、粒子同士の焼結を防止する作用を果たす。また、適量のアルカリ土類金属が共存していると、粒子形状がロッド状に成長しやすい。
また、前述の通り、特開2008−174405号公報に開示されるような、直接合成法とゾル−ゲル法とを組み合わせた工程、及び焼成工程によってM置換ε−Fe磁性結晶をより経済的に有利に合成することができる。
簡潔に説明すれば、初めに3価の鉄塩と置換元素M(Ga、Al等)の塩が溶解している水溶媒に、撹拌状態でアンモニア水等の中和剤を添加することで、鉄の水酸化物(一部が別元素で置換されていることもある)からなる前駆体が形成される。
その後にゾル−ゲル法を適用し、前駆体粒子表面にシリカの被覆層を形成させる。このシリカ被覆粒子を液から分離した後に、所定の温度で熱処理(焼成)を行うと、M置換ε−Fe磁性結晶の微粒子が得られる。
上記のようなM置換ε−Feの合成において、ε−Fe結晶と空間群を異にする鉄酸化物結晶(不純物結晶)が生成する場合がある。Feの組成を有しながら結晶構造が異なる多形(polymorphism)には最も普遍的なものとしてα−Fe及びγ−Feがある。その他の鉄酸化物としてはFeOやFeが挙げられる。
このような不純物結晶の含有は、M置換ε−Fe結晶の特性をできるだけ高く引き出す上で好ましいとは言えないが、本発明の効果を阻害しない範囲で許容される。
また、M置換ε−Fe磁性結晶の保磁力Hcは、置換元素Mによる置換量に応じて変化する。つまり、M置換ε−Fe磁性結晶における置換元素Mによる置換量を調整することで、M置換ε−Fe磁性結晶の保磁力Hcを調整することができる。
具体的には、例えばAlやGa等を置換元素Mとして用いた場合には、置換量が増えるほど、M置換ε−Fe磁性結晶の保磁力Hcが低下する。一方、Rh等を置換元素Mとして用いた場合には、置換量が増えるほど、M置換ε−Fe磁性結晶の保磁力Hcは増大する。
置換元素Mによる置換量に応じてM置換ε−Fe磁性結晶の保磁力Hcを調整しやすい点からは、置換元素Mとして、Ga、Al、In及びRhが好ましい。
そして、この保磁力Hcの低下に伴い、イプシロン型酸化鉄の電波吸収量が最大となるピークの周波数も低周波数側あるいは高周波数側にシフトする。つまり、M元素の置換量により電波吸収量のピークの周波数をコントロールすることができる。
一般的に用いられている電磁波吸収体の場合、電磁波の入射角度や周波数が設計した値から外れてしまうと吸収量がほとんどゼロになる。これに対し、イプシロン型酸化鉄を用いた場合、少し値が外れても、広い周波数範囲及び電磁波入射角度で電磁波吸収を呈する。このため、本発明によれば、幅広い周波数帯域の電波を吸収可能な電波吸収体を提供することができる。
イプシロン型酸化鉄の粒子径について、例えば上記工程において熱処理(焼成)温度を調整することによりコントロール可能である。
前述の逆ミセル法とゾル−ゲル法を組み合わせた手法や、特開2008−174405号公報に開示される直接合成法とゾル−ゲル法を組み合わせた手法によれば、TEM(透過型電子顕微鏡)写真から計測される平均粒子径として、5〜200nmの範囲の粒子径を有するイプシロン型酸化鉄の粒子を合成することが可能である。イプシロン型酸化鉄の平均粒子径は、10nm以上がより好ましく、20nm以上がより好ましい。
なお、数平均粒子径である平均粒子径を求める際、イプシロン型酸化鉄の粒子がロッド状である場合、TEM画像上で観察される粒子の長軸方向の径を当該粒子の径として平均粒子径を算出する。平均粒子径を求める際の、計測対象の粒子数は平均値を算出に当たり十分に多い数であれば特に限定されないが、300個以上であるのが好ましい。
また、ゾル−ゲル法で水酸化鉄微粒子の表面にコーティングされたシリカコートが、熱処理(焼成)後のM置換ε−Fe磁性結晶の表面に存在することがある。結晶の表面にシリカのような非磁性化合物が存在する場合、磁性結晶の取り扱い性や、耐久性、耐候性等が向上する点で好ましい。
非磁性化合物の好適な例としては、シリカのほか、アルミナやジルコニア等の耐熱性化合物が挙げられる。
ただし、非磁性化合物の付着量があまり多いと、粒子同士が激しく凝集する場合があり好ましくない。
非磁性化合物がシリカである場合、M置換ε−Fe磁性結晶におけるSiの質量は、M置換ε−Fe磁性結晶における置換元素Mの質量と、Feの質量との合計に対して、100質量%以下であるのが好ましい。
M置換ε−Fe磁性結晶に付着したシリカの一部又は大部分は、アルカリ溶液に浸す方法によって除去できる。シリカ付着量はこのような方法で任意の量に調整可能である。
電波吸収膜を構成する材料におけるイプシロン型酸化鉄の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。イプシロン型酸化鉄の含有量は、典型的には、電波吸収膜を構成する材料の質量に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましく、60〜91質量%が最も好ましい。
<比誘電率調整方法>
電波吸収膜は、その比誘電率が、6.5〜65であり、10〜50であるのが好ましく、15〜30であるのがより好ましい。電波吸収膜の比誘電率を調整する方法は特に限定されない。電波吸収膜の比誘電率の調整方法としては、電波吸収膜に誘電体の粉末を含有させ、且つ、誘電体の粉末の含有量を調整する方法が挙げられる。
誘電体の好適な例としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ジルコニウム、チタン酸亜鉛、及び二酸化チタンが挙げられる。電波吸収膜は、複数の種類の誘電体の粉末を組み合わせて含んでいてもよい。
電波吸収膜の比誘電率の調整に用いられる誘電体の粉末の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。誘電体の粉末の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、5〜50nmであるのがより好ましい。ここで、誘電体の粉末の平均粒子径は、電子顕微鏡により観察される、誘電体の粉末の一次粒子の数平均径である。
誘電体の粉末を用いて電波吸収膜の比誘電率を調整する場合、電波吸収膜の比誘電率が所定の範囲内である限り、誘電体の粉末の使用量は特に限定されない。誘電体の粉末の使用量は、典型的には、電波吸収膜を構成する材料の質量に対して、0〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
また、電波吸収膜にカーボンナノチューブを含有させることで、電波吸収膜の比誘電率を調整することができる。電波吸収能が優れる電波吸収体を得やすい点からは、カーボンナノチューブを電波吸収膜に含有させるのが好ましい。カーボンナノチューブは、上記の誘電体の粉末と併用してもよい。
電波吸収膜を構成する材料へのカーボンナノチューブの配合量は、電波吸収膜の比誘電率が所定の範囲内である限り特に限定されない。ただし、カーボンナノチューブは導電性材料でもあるため、カーボンナノチューブの使用量が過多であると、電波吸収体の電波吸収特性が損なわれる場合がある。
カーボンナノチューブの使用量は、典型的には、電波吸収膜を構成する材料の質量に対して、0〜20質量%が好ましくは、1〜10質量%がより好ましい。
<比透磁率調整方法>
電波吸収膜の比透磁率は特に限定されないが、1.0〜1.5であるのが好ましい。電波吸収膜の比透磁率を調整する方法は特に限定されない。電波吸収膜の比透磁率の調整方法としては、前述の通り、イプシロン型酸化鉄における置換元素Mによる置換量を調整する方法や、電波吸収膜におけるイプシロン型酸化鉄の含有量を調整する方法が挙げられる。
<ポリマー>
イプシロン型酸化鉄等が膜中に均一に分散されており、膜厚が均一な電波吸収膜の形成を容易にするために、電波吸収膜はポリマーを含んでいてもよい。電波吸収膜がポリマーを含む場合、ポリマーからなるマトリックス中に、イプシロン型酸化鉄等の成分を容易に分散させることができる。また、電波吸収膜が後述する膜形成用ペーストを用いて形成される場合、膜形成用ペーストがポリマーを含むことにより、膜形成用ペーストの製膜性が向上する。
ポリマーの種類は、本発明の目的を阻害しないものであって、電波吸収膜の製膜が可能なものであれば特に限定されない。ポリマーは、エラストマーやゴムのような弾性材料であってもよい。また、ポリマーは、熱可塑性樹脂であっても硬化性樹脂であってもよい。ポリマーが硬化性樹脂である場合、硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
ポリマーが熱可塑性樹脂である場合の好適な例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等)、FR−AS樹脂、FR−ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR−ポリプロピレン、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等が挙げられる。
ポリマーが熱硬化性樹脂である場合の好適な例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びアルキド樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂としては、種々のビニルモノマーや、種々の(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和結合を有する単量体を光硬化させた樹脂を用いることができる。
ポリマーが弾性材料である場合の好適な例としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びポリウレタン系エラストマー等が挙げられる。
後述する膜形成用ペーストを用いて電波吸収膜を形成する場合、膜形成用ペーストが分散媒とポリマーとを含んでいてもよい。この場合、ペーストの塗布性の点と、ポリマー中にイプシロン型酸化鉄等を均一に分散させやすいことから、ポリマーが分散媒に対して可溶であるのが好ましい。
電波吸収膜を構成する材料がポリマーを含有する場合、ポリマーの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポリマーの含有量は、典型的には、電波吸収膜を構成する材料の質量に対して、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
<分散剤>
イプシロン型酸化鉄や、比誘電率及び比透磁率を調整するために添加される物質を膜中で良好に分散させる目的で、電波吸収膜は分散剤を含んでいてもよい。電波吸収膜を構成する材料に分散剤を配合する方法は特に限定されない。分散剤は、イプシロン型酸化鉄やポリマーとともに均一に混合されてもよい。電波吸収膜を構成する材料がポリマーを含む場合、分散剤はポリマー中に配合されてもよい。また、分散剤により予め処理された、イプシロン型酸化鉄や、比誘電率及び比透磁率を調整するために添加される物質を、電波吸収膜を構成する材料に配合してもよい。
分散剤の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。従来から種々の無機微粒子や有機微粒子の分散用途で使用されている種々の分散剤の中から、分散剤を選択できる。
分散剤の好適な例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、及びアルミネートカップリング剤等が挙げられる。
分散剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。分散剤の含有量は、電波吸収膜を構成する材料の質量に対して、0.1〜30質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
<その他の成分>
電波吸収膜を構成する材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の成分以外の種々の添加剤を含んでいてもよい。電波吸収膜を構成する材料が含み得る添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、及び界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、それらが従来使用される量を勘案して使用される。
以上説明した、基材と、電波吸収膜とを組み合わせることで、本発明に係る電波吸収体が形成される。
≪膜形成用ペースト≫
膜形成用ペーストは、電波吸収膜について前述したイプシロン型酸化鉄を含有する。膜形成用ペーストは、電波吸収膜について前述した、比誘電率や比透磁率の調整のために添加される物質や、ポリマー及びその他の成分等を含有していてもよい。なお、ポリマーが硬化性樹脂である場合、膜形成用ペーストは、硬化性樹脂の前駆体である化合物を含む。この場合、膜形成用ペーストは、硬化剤、硬化促進剤、及び重合開始剤等を必要に応じて含有する。
膜形成用ペーストは、当該ペーストを用いて形成される電波吸収膜の比誘電率が、前述の所定の範囲内の値になるように、その組成を決定される。
膜形成用ペーストは、通常、分散媒を含む。しかし、膜形成用ペーストが、液状のエポキシ化合物のような液状の硬化性樹脂の前駆体を含有する場合、必ずしも分散媒は必要ない。
分散媒としては、水、有機溶剤、及び有機溶剤の水溶液を用いることができる。分散媒としては、有機成分を溶解させやすい点や、蒸発潜熱が低く乾燥による除去が容易であること等から、有機溶剤が好ましい。
分散媒として使用される有機溶剤の好適な例としては、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系アルコール類;酢酸−n−ブチル、酢酸アミル等の飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチル等の乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート等のエーテル系エステル類等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
膜形成用ペーストの固形分濃度は、膜形成用ペーストを塗布する方法や、電波吸収膜の膜厚に応じて適宜調整される。典型的には膜形成用ペーストの固形分濃度は、3〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。なお、ペーストの固形分濃度は、分散媒に溶解していない成分の質量と、分散媒に溶解している成分の質量との合計を固形分の質量として算出されるものである。
≪電波吸収体の製造方法≫
電波吸収体の製造方法は特に限定されない。基材と、電波吸収膜とを別個に形成した後に両者を接合して電波吸収体を製造してもよく、基材の表面に直接電波吸収膜を形成して電波吸収体を製造してもよい。
基材と、電波吸収膜とを別個に形成した後に両者を接合する場合、接合方法は特に限定されない。接合方法としては、電波吸収膜と基材とを必要に応じて接着剤を用いて貼りあわせる方法が挙げられる。電波吸収膜が、例えば1mm以上であるような厚膜である場合、ネジ、ビス等の留め具を用いて基材と電波吸収膜とを接合してもよい。
電波吸収膜を構成する成分が熱可塑性のポリマーを含む場合、電波吸収膜に含まれる必須又は任意の成分からなる混合物を用いて、押出成形、射出成形、プレス成型等の公知の方法で電波吸収膜を製造することができる。この場合、基材をインサート材として用いて、周知のインサート成形方法を用いて基材と電波吸収膜とが一体化された電波吸収体を形成してもよい。
これらの方法には、生産効率が高いメリットがある一方で、膜厚が1mm未満である薄膜の電波吸収膜の製造が困難であるデメリットがある。
この点、前述の膜形成用ペーストを用いる方法は、特に膜厚の制限なく高効率で電波吸収膜を形成できる点と、基材上に直接電波吸収膜を形成できる点で好ましい。
以下、膜形成用ペーストを基材上に塗布して電波吸収膜を形成することにより電波吸収体を製造する方法について説明する。
基材上に膜形成用ペーストを塗布する方法は、所望する膜厚の電波吸収膜を形成できる限り特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スピンコート法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、及びアプリケーター法等が挙げられる。
上記の方法により、形成される塗布膜を乾燥させて分散媒を除去することで電波吸収膜が形成される。塗布膜の膜厚は、乾燥後に得られる電波吸収膜の膜厚が所望の膜厚になるように適宜調整される。
また、膜形成用ペーストが光重合性又は熱重合性の化合物を含む場合、塗布膜に対して露光又は加熱を行い、電波吸収膜を形成することができる。
以下、本発明の実施例を示し、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜5及び比較例1〜3]
(膜形成用ペーストの調製)
イプシロン型酸化鉄、カーボンナノチューブ(CNT)、チタン酸バリウム、樹脂、及び分散剤を、表1に記載の組成となるように、ターピネオール中に加え、各成分を均一に溶解又は分散させて膜形成用ペーストを得た。なお、膜形成用ペーストの固形分濃度は、40質量%に調整した。
実施例及び比較例において、イプシロン型酸化鉄としてε−Ga0.45Fe1.55を用いた。イプシロン型酸化鉄の平均粒子径は20〜30nmであった。
カーボンナノチューブ(CNT)としては、長径150nmの多層カーボンナノチューブを用いた。
チタン酸バリウムは、平均粒子径10nmであるものを用いた。
樹脂として、セルロース(メチルセルロース)を用いた。
分散剤としては、ジ(イソプロピルオキシ)ジ(イソステアロイルオキシ)チタンと、ビニルトリメトキシシランの質量比1:1の混合物を用いた。
(電波吸収体の製造)
基材として、厚さ2mmでありアルミニウム製である平面状の基板を用いた。基材上に、前述の方法で調製された膜形成用ペーストを、スリット塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜の膜厚は、電波吸収膜の膜厚が表1に記載の膜厚になるように調整した。次いで、形成された塗布膜を乾燥させて、各実施例及び比較例の電波吸収体を得た。得られた電磁波吸収体について、電波吸収膜の膜厚、比誘電率、及び比透磁率を表1に記す。
Figure 0006616653
実施例1、実施例2、及び比較例1の電波吸収体について、ベクトルネットワークアナライザーを用いた自由空間法にて45〜95GHzにおける電波吸収特性を測定した。測定結果を図1に示す。
また、実施例3、比較例2及び比較例3の電波吸収体についても同様に周波数帯域45〜95GHzにおける電波吸収特性を測定した。実施例3の電波吸収体の測定結果を、実施例2の電波吸収体の測定結果とともに、図2に示す。
測定の結果、比較例2及び3の電波吸収体については、ごくわずかしか電波を吸収しないことが分かった。
図1及び図2によれば、イプシロン型酸化鉄を含有し、比誘電率が所定の範囲内の値である電波吸収膜を備える実施例1〜3の電波吸収体は、電波吸収膜が1mm未満の膜厚の薄膜であっても、良好な電波吸収特性を有することが分かる。
他方、比較例1〜3からは、電波吸収特性に優れるイプシロン型酸化鉄を含んでいても、電波吸収膜の比誘電率が所定の範囲内の値でない電波吸収膜を備える電波吸収体では、電波吸収膜が1mm未満の膜厚の薄膜である場合に、ほとんど電波を吸収できないことが分かる。

Claims (9)

  1. 基材上に形成された電波吸収膜を備える電波吸収体であって、
    前記電波吸収体は、60〜270GHz帯域に電波吸収量が最大となるピークを有し、
    前記電波吸収膜は、イプシロン型酸化鉄及びカーボンナノチューブを含み、
    前記イプシロン型酸化鉄は、ε−Fe結晶、及び、結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶から選択される1種以上であり、
    前記電波吸収膜の比誘電率が、6.5〜65であ
    前記電波吸収膜における前記イプシロン型酸化鉄の含有量が30質量%以上である、電波吸収体。
  2. 前記電波吸収膜中の前記カーボンナノチューブの含有量が1〜10質量%である、請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 前記基材が導体からなる、請求項1又は2に記載の電波吸収体。
  4. 前記電波吸収膜がセルロース樹脂を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電波吸収体。
  5. 前記基材が平板状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電波吸収体。
  6. ε−Fe結晶、及び、結晶と空間群がε−Feと同じであって、ε−Fe結晶のFeサイトの一部がFe以外の元素Mで置換されたものであり、式ε−MFe2−xで表され、前記xが0超2未満である結晶から選択される1種以上であるイプシロン型酸化鉄、並びにカーボンナノチューブを含み、
    ペースト固形分中における前記イプシロン型酸化鉄の含有量が30質量%以上であり、
    比誘電率が、6.5〜65である膜を与える、膜形成用ペースト。
  7. 前記ペースト固形分中における前記カーボンナノチューブの含有量が1〜10質量%である、請求項6に記載の膜形成用ペースト。
  8. さらにセルロース樹脂を含む、請求項6又は7に記載の膜形成用ペースト。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の膜形成用ペーストを用いて形成された膜。
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