JP2006344250A - 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて高密度に記録された信号の再生がなされる磁気記録媒体において、高い生産性のプラズマCVD方式が実施可能で、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐ磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 非磁性支持体1の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの導電性の金属層2を形成し、該金属層2の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層3と保護層4を順次形成し、前記保護層4形成後に導電性の金属層2を酸化させる。従来DCプラズマCVD法による保護膜成膜実施時に発生していた、磁性層3による電圧下降分が大きくなることによる保護膜膜質の劣化や保護層密着力低下、放電の不安定化や生産効率の低下等を抑制できるとともに、テープ化した際には金属層2が酸化して導電性が低下しているため、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 非磁性支持体1の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの導電性の金属層2を形成し、該金属層2の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層3と保護層4を順次形成し、前記保護層4形成後に導電性の金属層2を酸化させる。従来DCプラズマCVD法による保護膜成膜実施時に発生していた、磁性層3による電圧下降分が大きくなることによる保護膜膜質の劣化や保護層密着力低下、放電の不安定化や生産効率の低下等を抑制できるとともに、テープ化した際には金属層2が酸化して導電性が低下しているため、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐことができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、テープ状の磁気記録媒体に関するものであり、特に、異方性磁気抵抗効果型磁気ヘッド(AMRヘッド)若しくは巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)などのMRヘッドを用いて高密度に記録された信号の再生がなされ、テープ表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)保護膜を有し、磁性層の下に、プラズマCVDの際には導電性の金属層を2nm〜15nm、好ましくは5nm〜10nm有し、テープ化した際には導電性が低下した金属酸化物層になっている磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
従来より、磁気記録媒体としては、非磁性支持体上に酸化物磁性粉末あるいは合金磁性粉末等の粉末磁性材料を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機結合剤中に分散させた磁性塗料を塗布し乾燥させて作製される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く知られていた。
これに対して、高密度記録化への要求から、磁性金属あるいはCo−Ni等の合金からなる強磁性材料を、真空薄膜形成手段(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等)によって非磁性支持体上に直接被着させた強磁性金属薄膜よりなる磁性層を有する磁気記録媒体が実用化されている。
上記のような、いわゆる金属磁性薄膜型の磁気記録媒体は、保磁力、残留磁化、角形比等に優れ、短波長での電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁性層の膜厚をきわめて薄く形成できるため、記録減磁や再生時の厚み損失が小さいこと、磁性層中に非磁性材である結合剤を混入する必要がないため、磁性材料の充填密度を高め、大きな磁化を得ることができる等、数々の利点を有している。
さらに、磁気記録媒体の電磁変換特性を向上させ、より大きな出力を得ることができるようにするため、斜方蒸着法によって磁性層を形成した構成の磁気記録媒体が提案され、現在の蒸着磁気テープの主流となっている。このような蒸着磁気テープは、高画質VTR用、デジタルVTR用、データストレージ用等の磁気テープとして実用化されている。
一方で、磁気テープ等の磁気記録媒体のデータストリーマーとしての需要が高まるに伴い、さらなる磁気記録媒体の高記録密度化が要求されてきている。記録情報の再生を行う際に用いる磁気ヘッドとして、従来の誘導型ヘッドに代わり、異方性磁気抵抗効果型磁気ヘッド(AMRヘッド)、巨大磁気抵抗効果型磁気ヘッド(GMRヘッド)、あるいはトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド(TMRヘッド)などの磁気抵抗効果型磁気ヘッド(MRヘッド)の適用が検討され、一部導入されるようになってきている。これらのAMRヘッドやGMRヘッドは磁性層からの微小な漏洩磁束を高感度に検出することができるので、記録密度の向上を図るために非常に有効である。
従来構成の蒸着テープをそのまま上記のような高感度の磁気抵抗効果型磁気ヘッドに適用すると、発生する磁束量が大きすぎ、MR素子の抵抗変化が直線性を保つ領域を外れてしまい、歪みのない特性を得ることができないという問題を生じる。したがってこのような高感度型の磁気抵抗効果型磁気ヘッドの使用に対応するためには、DVCに代表されるインダクティブヘッドを使用する場合の磁性層厚みの150nm程度から、MR素子の抵抗変化が直線性を保つ領域にまで、磁性層を薄層化することが要求される。
ところで、データストリーマー用途としての磁気テープの記録再生のシステムには、ヘリカルスキャン方式とリニア方式の2種類が実用化されている。ヘリカルスキャン方式は、回転ドラム上に配置された磁気ヘッドが、高速に回転しながら磁気テープ上をスキャンすることで記録再生を行う方式である。
ヘリカルスキャン方式の特徴としては、記録トラックを精密に記録できるだけでなく、再生時には記録したトラックを正確にスキャンできるように制御することが原理的に可能であり、磁気テープシステムにおいて高記録密度を達成することが可能である。こうしたヘリカルスキャン方式は、VHSなどの家庭用ビデオ録画装置や、ハイバンド8mmビデオテープレコーダー、デジタルビデオテープレコーダー用として幅広く実用化されている。
一方、リニア方式は磁気テープの幅方向にトラックを設け、長手方向に記録を行う方式である。高速でテープを走行させることが容易であると同時に、磁気ヘッドを並列に数多く並べることによって記録再生の転送レートを向上させることが可能である。
カムコーダ用途などの磁気記録テープシステムでは高記録密度が達成可能なヘリカルスキャン方式が有利であるが、磁気記録テープシステムの体積に制約の少ないデータストレージ用途では、上記リニア方式が幅広く実用化され、市場においてもDLT(Digital Linear Tape)やLTO(Linear Tape−Open)といった商品が主流となっている。
上記のAMRヘッドやGMRヘッドなどの磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、ヘリカルスキャン方式とリニア方式のいずれの記録再生システムにも使用が可能であるが、従来の誘導型ヘッドに比べて静電気放電(ESD;Electro−Static Discharge)に対する耐性が低く、磁気テープの装着時や動作時に帯電した静電気によって容易に静電破壊を起こしてしまうという問題がある。
例えば、MRヘッドのうち、AMRヘッドの静電耐圧は200V程度、GMRヘッドの静電耐圧は40V程度であるのに対して、プラスチックなどの摩擦によって磁気記録媒体が帯電する帯電電圧は数kV以上である。この磁気記録媒体に帯電した電荷が上記のMRヘッドに急激に移動すると容易に静電破壊を起こしてしまう。
上記の問題に対応するため、テープの帯電を抑止するためにテープ表面抵抗が高すぎないこと、そして電荷がMRヘッドに急激に移動しないようにテープ表面抵抗が低すぎないことが要求され、下記特許文献1には、テープの表面抵抗を103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲に制御することが必要であることが既に提案されている。
またテープ表面抵抗を抑制する方法としては、下記特許文献2、特許文献3に記載のものが提案されている。
特開2003−242621号公報
特開2003−016626号公報
特開2003−338026号公報
蒸着テープの代表的な商品であるDVCテープでは、磁性層厚みが150nm程度で、表面抵抗が100〜200Ω/sqとなる。
高感度の磁気抵抗効果型磁気ヘッドに適用するためには、発生する磁束量を抑えるために、磁性層の薄層化が必要であることは先に述べたが、磁性層を薄層化すると、その表面抵抗は上昇する。したがって磁性層を薄層化することは、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊に対しても有効な手法である。
ところで、これらの磁気記録媒体においては、磁性層表面に硬質の保護層を形成し、これによって、磁気ヘッドやガイドとの摺動に対する耐久性を確保している。この硬質の保護層としては、カーボン膜、石英(SiO2)膜、ジルコニア(ZrO2)膜等が挙げられ、特にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、硬度が高く、保護効果に優れることから、蒸着テープ用の保護層の主流になっている。DLC膜は、スパッタリング法やCVD法により成膜できる。
スパッタリング法では、電場や磁場を利用してAr等の不活性ガスを電離(プラズマ化)させ、生じたアルゴンイオンを加速してターゲットに衝突させる。その結果、アルゴンイオンの運動エネルギーによってターゲットの原子がはじき出され、そのはじき出された原子が、ターゲットと対向する基板上に堆積することで薄膜が成膜される。しかし、このスパッタリング法は、成膜速度が遅く、工業レベルで用いるには生産性に問題がある。
これに対して、CVD法(化学気相成長法)は、電場や磁場を用いて発生させたプラズマのエネルギーを利用して、原料ガスに分解、合成等の化学反応を起こさせ、この化学反応の結果生じた反応生成物を基体上に堆積させることで薄膜を成膜する方法である。このCVD法は、スパッタリング法に比べて遙かに成膜速度が高いため、工業的な生産性に優れている。
CVD法のなかでも、直流電圧印加によってプラズマを形成し、保護層を成膜するDCプラズマCVD方式は、成膜スピードが速く、さらにはラジカルな状態になった成膜ガスのイオン(炭化水素イオン)が電圧によって加速されるため、磁性層への密着力が高く、優れた保護層形成方法であると言える。
しかしながらDCプラズマCVD方式は、磁性層に電流を流す手法であり、磁性層の表面抵抗によって、その生産性やDLC膜の特性が大きく変化する。すなわち、高感度型の磁気抵抗効果型磁気ヘッドへの対応と、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊への対応のために磁性層を薄層化し、その表面抵抗が103〜106Ω/sqになった場合、磁性層の電気抵抗が大きいため、DCプラズマCVD法による成膜を行う際に印加された電圧は、磁性層による電圧下降分が大きくなってしまうため、プラズマ発生のための充分な電圧が確保できなくなってしまうという問題が生じる。
このようにプラズマ発生のための電圧が不充分な状態で成膜されたDLC膜は、炭化水素ガスの分解が不充分であるため、膜質が劣化する。さらには、成膜ガスである炭化水素イオンの加速が不充分となるため、磁性層に対する保護層の密着力が低下してしまい、最終的に得られる磁気テープの摺動耐久性の悪化を招来する。
この問題を回避するために、プラズマCVD成膜工程において、印加する電圧値を高くする方法が挙げられるが、この場合には、放電の不安定化を招来し、膜質にバラつきが大きくなり、生産効率の低下を招来してしまう。
前記特許文献2は磁性層の下に電極層を成膜する手法であるが、この特許文献2に記載されている比抵抗50×10-6Ωm以下を実現した場合、テープの表面抵抗は2.5Ω/sq以下になり、表面抵抗が低すぎるため、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を引き起こす。
また特許文献3は磁性層の上に電極層を成膜する手法であるが、磁性層上のこのような層は、スペーシング損失となるため、記録再生特性の劣化を招く。
そこで本発明は、磁気抵抗効果型磁気ヘッドを用いて高密度に記録された信号の再生がなされ、テープ表面に例えばDLC保護膜を有する磁気記録媒体において、高い生産性のプラズマCVD方式が実施可能で、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐ磁気記録媒体およびその製造方法を提供することを目的としている。
本発明においては、長尺状の非磁性支持体上に、膜厚75nm以下の磁性層を有し、磁性層上に、プラズマCVD法によって形成された保護層を有する磁気記録媒体において、磁性層の下に、プラズマCVDの際には導電性の金属層を2nm〜15nm、好ましくは5nm〜10nm有し、テープ化した際には導電性が低下した金属酸化物層になっているものとする。
すなわち本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの金属層を有し、その金属層の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層を有し、当該磁性層上に保護層を有することを特徴としている。
また磁気記録媒体は、磁気抵抗効果型ヘッド、又は巨大磁気抵抗効果型ヘッドを用いて信号の再生がなされることを特徴としている。
また磁気記録媒体の表面抵抗は、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲にあることを特徴としている。
また磁気記録媒体は、ヘリカル・スキャン記録再生システムにより、信号の記録及び/又は再生がなされることを特徴としている。
また磁気記録媒体は、リニア方式記録再生システムにより、信号の記録及び/又は再生がなされることを特徴としている。
また前記保護層の膜厚を4〜15nmとし、前記保護層上に潤滑剤層を形成し、前記非磁性支持体の他方の主面に、膜厚0.1〜0.6μmのバックコート層を形成したことを特徴としている。
また本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの導電性の金属層を形成し、該金属層の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層と保護層とを順次形成し、前記保護層形成後に前記導電性の金属層を酸化させることを特徴としている。
本発明によれば、電磁変換特性、表面抵抗、耐蝕性等に優れた特性を備えた磁気記録媒体が得られる。特に、従来、75nm以下に薄層化した磁性層に対して例えばDCプラズマCVD法による保護膜成膜実施時に発生していた、磁性層による電圧下降分が大きくなることによる保護膜膜質の劣化や保護層密着力低下、放電の不安定化や生産効率の低下等を抑制できるとともに、テープ化した際には金属層が酸化して導電性が低下しているため、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐことが可能である。
すなわち、磁性層が75nm以下もの薄層の高密度記録型の磁気記録媒体を作製する場合において、磁性層の下に2nm〜15nmの導電性金属層を形成することで、生産性の高いプラズマCVD実施が可能な表面抵抗の低い中間状態を実現し、これを大気、あるいは酸素雰囲気中の保管によって導電性金属層を酸化させ、テープ化された時には磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐ表面抵抗の高い状態に変化させることが可能になる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施形態例に限定されるものではない。
図1に、本発明方法により作製される磁気記録媒体の概略断面図を示す。磁気記録媒体100は、長尺形状の非磁性支持体1の一方の主面に、金属層2、磁性層3、保護層4、及び潤滑剤層5が順次積層され、非磁性支持体1の他方の主面にバックコート層6が形成された構成を有している。以下、各層について詳細に説明する。
(非磁性支持体)
非磁性支持体1には、通常、磁気記録媒体の基体として用いられている公知の材料をいずれも適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン2,6−ナフタリンジカルボキシレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック類が挙げられる。
(非磁性支持体)
非磁性支持体1には、通常、磁気記録媒体の基体として用いられている公知の材料をいずれも適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン2,6−ナフタリンジカルボキシレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック類が挙げられる。
非磁性支持体1には、後述する磁性層形成に先立ち、易接着化、表面性改良、着色、帯電防止、耐磨耗性付与等の目的で表面処理や前処理を行うようにしてもよい。非磁性支持体1の磁性層形成面側には、バインダー、フィラー、界面活性剤等の各種添加剤を含有させたコーティング層を形成することにより、表面に微細な凹凸を付加したり、機械的な強度を高めたりしてもよい。
バインダーには、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。フィラーとしては、耐熱性ポリマーからなる粒子、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム等が挙げられる。
(金属層)
金属層2は、真空薄膜形成技術によって成膜する。金属層2は、導電性を有する金属薄膜により形成されてなり、その厚みが2nm〜15nm、好ましくは5nm〜10nmの厚みを有し、単層膜であっても多層膜であってもよい。この金属層2を形成する金属材料としては、従来公知の金属、あるいはこれらの複合体をいずれも使用することができる。
(金属層)
金属層2は、真空薄膜形成技術によって成膜する。金属層2は、導電性を有する金属薄膜により形成されてなり、その厚みが2nm〜15nm、好ましくは5nm〜10nmの厚みを有し、単層膜であっても多層膜であってもよい。この金属層2を形成する金属材料としては、従来公知の金属、あるいはこれらの複合体をいずれも使用することができる。
例えばAu、Ag、Cu、Fe、Co、Ni、Al、Ti、Cr、Mn、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Sn、Ta、W や これらの合金であるCu-NiやCu-Zn、Ti-W、Cu-Sn-Zn等、又はこれらの複合体をいずれも使用することができる。
金属層2は、真空下で、金属材料を加熱蒸発させ、非磁性支持体1上に付着させる真空蒸着法や、強磁性金属材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法や、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こして生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタ法等によって形成することができる。
真空蒸着法は、成膜性が良好で、生産性が高く、操作も容易である。前記スパッタ法は、容易に生産することが可能で、また成膜性も良好である。また、前記イオンプレーティング法は、成膜における制御が容易で、成膜性も良好である。
金属層2の具体的な成膜工程について、例を挙げて説明する。
この例においては、1×10-2〜1×10[Pa]の真空下で、金属材料をマグネトロンスパッタリングにより、非磁性支持体1上に成膜を行う。
図2に示すマグネトロンスパッタ装置200においては、排気口214から排気されて、真空状態となされた真空槽201内に、送りロール203と巻き取りロール204とが設けられており、これらの間に非磁性支持体1が順次走行するようになされている。これら送りロール203と巻き取りロール204との間の、非磁性支持体1が走行する中途部には、冷却キャン205が設けられている。
この冷却キャン205には、冷却装置が設けられ、非磁性支持体1の温度上昇による熱変形等を抑制している。非磁性支持体1は、送りロール203から順次送り出され、さらに冷却キャン205の周面を通過し、巻き取りロール204に巻取られていくようになされている。
尚、送りロール203と冷却キャン205との間、及び該冷却キャン205と巻き取りロール204との問には、それぞれガイドロール206、207が配設され、送りロール203から冷却キャン205及び冷却キャン205から巻取りロール204に亘って走行する非磁性支持体1に所定のテンションをかけ、非磁性支持体1が円滑に走行するようになされている。
成膜室202は隔壁208、209によって隔てられており、スパッタリングの際の金属粒子の抑制やガス圧力を制御している。成膜室202内の冷却キャン205と対向する位置には、ターゲット210が設けられている。ターゲット210は、上述した金属層2の材料となるものであり、例えば、Cu、Al等が用いられる。これらターゲット210は、カソード電極を構成するバッキングプレート211に支持されている。そして、バッキングプレート211の裏面には、磁場を形成するマグネット212が配設されている。
このように構成されたマグネトロンスパッタ装置200において、金属層2を成膜する場合には、真空槽201内を約1×10-4〔Pa〕程度に減圧した後、ガス導入管213からArガスを導入して真空度を例えば約0.8〔Pa〕とする。
そして、ガス導入管213からArガスを導入するとともに、冷却キャン205をアノード、バッキングプレート211をカソードとして、約600Vの電圧を印加し、約40Aの電流が流れる状態を保持する。そして、この電圧の印加により、Arガスがプラズマ化し、電離されたイオンがターゲット210に衝突することにより、材料から原子がはじき出される。
このとき、バッキングプレート211の裏面に配置されたマグネット212により、ターゲット210近傍には、磁場が形成されるので、電離されたイオンは、ターゲット210の近傍に集中されることとなる。そして、これらのターゲット210からはじき出された原子は、冷却キャン205の外周面に沿って走行する非磁性支持体1に付着する。このようにして、金属層2が成膜された被処理体250は、巻き取りロール204に巻き取られる。
(磁性層)
磁性層3は、真空薄膜形成技術によって成膜する。磁性層3は、強磁性金属薄膜よりなり、部分酸化型の金属磁性膜であることが望ましく、単層膜であっても多層膜であってもよい。この磁性層3を形成する強磁性金属材料としては、従来公知の磁性金属、あるいはこれらの複合体をいずれも使用することができる。
(磁性層)
磁性層3は、真空薄膜形成技術によって成膜する。磁性層3は、強磁性金属薄膜よりなり、部分酸化型の金属磁性膜であることが望ましく、単層膜であっても多層膜であってもよい。この磁性層3を形成する強磁性金属材料としては、従来公知の磁性金属、あるいはこれらの複合体をいずれも使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni等の強磁性金属、Fe−Co、Co−Ni、Co−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−Pt、Co−Ni−Pt、Fe−Co−Ni、Fe−Co−B、Fe−Ni−B、Fe−Co−Ni−Cr等の強磁性合金等の材料、又はこれらの材料に任意の元素を含有させたものが挙げられる。
磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)に適用するためには、磁性層の膜厚は75nm以下、特に巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMRヘッド)に適用することを考慮すれば50nm以下とする必要がある。
磁性層3は、真空下で、上記強磁性金属材料を加熱蒸発させ、金属層2上に付着させる真空蒸着法や、強磁性金属材料の蒸発を放電中で行うイオンプレーティング法や、アルゴンを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こして生じたアルゴンイオンでターゲット表面の原子を叩き出すスパッタ法等、いわゆるPVD技術によって形成することができる。
磁性層3の具体的な成膜工程について、例を挙げて説明する。この例においては、1×10-6〜1×10-2Paの真空下で、強磁性金属材料を抵抗加熱や高周波加熱、電子ビーム加熱等により蒸発させ、金属層2上に蒸発金属(強磁性金属材料)を被着させて磁性層3の成膜を行う。
図3に示す蒸着装置300においては、排気口315から排気されて、略真空状態となされた真空槽301内に、送りロール303と巻き取りロール304とが設けられており、これらの間に、非磁性支持体1に金属層2を成膜した被処理体250が順次走行するようになされている。これら送りロール303と巻き取りロール304との間の、被処理体250が走行する中途部には、冷却キャン305が設けられている。
この冷却キャン305には、冷却装置が設けられ、被処理体250の温度上昇による熱変形等を抑制している。被処理体250は、送りロール303から順次送り出され、さらに冷却キャン305の周面を通過し、巻き取りロール304に巻取られていくようになされている。
尚、送りロール303と冷却キャン305との間、及び該冷却キャン305と巻き取りロール304との問には、それぞれガイドロール306、307が配設され、送りロール303から冷却キャン305及び冷却キャン305から巻取りロール304に亘って走行する被処理体250に所定のテンションをかけ、被処理体250が円滑に走行するようになされている。
蒸着室302は隔壁308、309によって隔てられており、ルツボ310から蒸発した金属粒子や反射、散乱する電子ビームの流入を抑制している。冷却キャン305の下方にルツボ310が設けられ、このルツボ310に金属磁性材料311が充填されている。
蒸着装置300の側壁部には、ルツボ310内に充填された金属磁性材料311を加熱蒸発させるための電子銃312が取り付けられている。電子銃312は、これより放出される電子線が、ルツボ310内の金属磁性材料311に照射されるような位置に配設されている。
前記電子線によって蒸発した金属磁性材料311は、冷却キャン305の周面を定速走行する非磁性支持体1の上に形成された金属層2上に磁性層3として被着形成されるようになっている。
冷却キャン305とルツボ310との間であって、冷却キャン305の近傍には、シャッター313が配設されている。シャッター313は、冷却キャン305の周面を定速走行する被処理体250の所定領域を覆う形で形成され、このシャッター313によって、金属磁性材料311が金属層2に対して、所望の角度範囲で斜めに蒸着されるようになっている。
さらに、このような蒸着に際し、蒸着装置300側壁部を貫通して設けられる酸素ガス導入管314を介して金属層2上の磁性層3に酸素ガスが供給され、磁性層3の磁気特性、耐久性、及び耐蝕性の向上が図られている。
蒸着の入射角は、被処理体250の法線方向から90度〜45度までとし、金属層が形成された非磁性支持体1の送り速度を変化させ、蒸着層の厚さを制御する。また、蒸着中は磁気特性を制御するために、酸素ガス導入管314から酸素ガスを導入しながら成膜を行う。
(保護層)
上記のように、磁性層3の成膜を行った後、保護層4の形成を行う。図4に、保護層形成用の成膜装置として、DCプラズマCVD装置400の概略構成図を示す。この装置400においては、排気口414によって内部が略真空状態となされた真空槽401内に、定速回転する送りロール403と、巻き取りロール404とが設けられ、これらの間に、非磁性支持体1に金属層2と磁性層3が成膜された被処理体350が、順次走行するようになされている。
(保護層)
上記のように、磁性層3の成膜を行った後、保護層4の形成を行う。図4に、保護層形成用の成膜装置として、DCプラズマCVD装置400の概略構成図を示す。この装置400においては、排気口414によって内部が略真空状態となされた真空槽401内に、定速回転する送りロール403と、巻き取りロール404とが設けられ、これらの間に、非磁性支持体1に金属層2と磁性層3が成膜された被処理体350が、順次走行するようになされている。
被処理体350が走行する中途部には、冷却キャン405が設けられている。被処理体350が走行する中途部には、ガイドロール406、407が設けられており、被処理体350に所定のテンションをかけ、円滑に走行するようになされている。
隔壁408、409により形成された成膜室402には、冷却キャン405の下方に、パイレックス(登録商標)ガラス、プラスチック等よりなる反応管410が設けられている。この反応管410には、反応管410の底部を貫通したガス導入管411から、所定の成膜ガスが供給されるようになされている。
反応管410内の中途部には、金属メッシュ等よりなる放電電極413が取り付けられている。放電電極413は、外部に配設されたDC電源412と接続されており、0〜3000Vの電圧が印加されるようになされている。
この装置400においては、放電電極413に電圧が印加されることで、放電電極413と冷却キャン405との間にグロー放電が生じ、反応管410内に導入された成膜ガスが、グロー放電によって分解し、被処理体350上に被着し保護層4が形成される。
なお、供給するガスとしては、炭化水素系、ケトン系、アルコール系等、従来公知の材料をいずれも使用できる。また、プラズマ生成時には炭素化合物の分解を促進するためのガスとして、Ar、H2等を導入してもよい。
その他、ダイヤモンドライクカーボンの膜硬度、耐食性の向上を図るため、カーボンが窒素、フッ素と反応した状態でもよく、ダイヤモンドライクカーボン膜は単層であっても多層であってもよい。
また、プラズマ生成時には炭素化合物の他、N2、CHF3、CH2F2等のガスを単独あるいは適宜混合した状態で成膜することもできる。
保護層4は、スペーシング・ロスによる損失を防止し、かつ実用上充分な走行耐久性、耐食性を確保するため、4nm〜15nm程度の膜厚に形成することが望ましい。
本発明における磁気記録媒体は、特に、保護層4を形成する際には、磁性層3の下の金属層2が導電性を有し、テープ化した際には導電性が低下した金属酸化物層になっているものとする。
これによって、75nm以下に薄層化した磁性層に対して例えばDCプラズマCVD法による保護膜成膜実施時に発生していた、磁性層による電圧下降分が大きくなることによる保護膜膜質の劣化や保護層密着力低下、放電の不安定化や生産効率の低下等を抑制できるとともに、テープ化した際には金属層が酸化して導電性が低下しているため、磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐことが可能である。
(潤滑剤層、バックコート層)
なお、カーボン保護層4上に潤滑剤層5を形成したり、磁性層3の形成面側とは反対側にバックコート層6を形成したりしてもよい。この場合、潤滑剤層5やバックコート層6の形成用材料としては、非磁性顔料、樹脂結合剤等、従来公知の材料を適宜用いることができる。
(潤滑剤層、バックコート層)
なお、カーボン保護層4上に潤滑剤層5を形成したり、磁性層3の形成面側とは反対側にバックコート層6を形成したりしてもよい。この場合、潤滑剤層5やバックコート層6の形成用材料としては、非磁性顔料、樹脂結合剤等、従来公知の材料を適宜用いることができる。
なお、バックコート層6の膜厚は、ガイドとの摺動特性を高く維持し、磁気記録媒体全体としての薄型化を図るために膜厚は0.1〜0.6μmとすることが望ましい。
(酸素パージ)
さらに、金属層を酸化させるため、酸素雰囲気中に保管する工程をとりいれた。この工程はCVD成膜実施後であれば、いつでも実施が可能である。本実施形態例では、保護層4を成膜後、真空用容器を約1×10-2〔Pa〕程度に減圧した後、酸素ガスを大気圧まで導入した酸素雰囲気中に、3日間保管した。
(酸素パージ)
さらに、金属層を酸化させるため、酸素雰囲気中に保管する工程をとりいれた。この工程はCVD成膜実施後であれば、いつでも実施が可能である。本実施形態例では、保護層4を成膜後、真空用容器を約1×10-2〔Pa〕程度に減圧した後、酸素ガスを大気圧まで導入した酸素雰囲気中に、3日間保管した。
上述のようにして作製される本実施形態の磁気記録媒体は信号を高密度に記録することが可能であり、再生用の磁気ヘッドとしてAMRヘッド、GMRヘッドあるいはTMRヘッドを用いた磁気記録テープシステム用の磁気記録媒体として好適である。
テープシステムとしては、回転ドラム上に配置された磁気ヘッドが、高速に回転しながら磁気テープ上をスキャンすることで記録再生を行うヘリカルスキャン方式が好適である。これは、上述のように本実施形態の磁気記録媒体の磁性層は、斜方蒸着膜の柱状構造を有する強磁性金属薄膜の単層からなり、磁気ヘッドの摺動方向によって記録再生特性が異なる異方性を有している。このため、磁気記録媒体に対して磁気ヘッドが常に同じ方向に摺動するヘリカルスキャン型が適している。
しかし、例えばイコライザを用いて双方向に記録再生が行われるときの磁気信号差を調整する回路などを備えることにより、リニア方式にも適用することもできる。
本実施形態に係る磁気記録媒体によれば、静電気に起因する電圧が磁気記録媒体に印加されたときに磁気ヘッドに伝わる静電破壊電流の大きさを、磁気ヘッドを破壊する電流の大きさよりも小さくするように、磁気記録媒体の表面抵抗が高くなっているため、磁気ヘッドに伝わる静電破壊電流が磁気ヘッドを破壊する電流より十分小さくなる。これにより、磁気記録媒体である磁気テープとテープ走行系の外部から放電される静電気による、AMRヘッドやGMRヘッドなどの磁気ヘッドの静電破壊を防止できる。
次に、本発明による具体的な磁気記録媒体のサンプルを、実施例および比較例として作製し、各々特性の評価を行った。なお、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、この上に金属層2を、図2に示したマグネトロンスパッタ装置200を用いて以下の条件により成膜した。
〔実施例1〕
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、この上に金属層2を、図2に示したマグネトロンスパッタ装置200を用いて以下の条件により成膜した。
金属材料:Cu100wt%
導入ガス:アルゴンガス
成膜室圧力:0.8Pa
金属Cu層の膜厚:2nm
次に、磁性層3を、図3に示した蒸着装置300を用いて以下の条件により成膜した。
導入ガス:アルゴンガス
成膜室圧力:0.8Pa
金属Cu層の膜厚:2nm
次に、磁性層3を、図3に示した蒸着装置300を用いて以下の条件により成膜した。
(蒸着条件)
成膜材料:Co100wt%
入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
磁性層の膜厚:15nm
次に、図4に示したDCプラズマCVD装置400を用いて、下記に示す条件により、カーボン保護層4の成膜を行った。
成膜材料:Co100wt%
入射角:45°〜90°
導入ガス:酸素ガス
磁性層の膜厚:15nm
次に、図4に示したDCプラズマCVD装置400を用いて、下記に示す条件により、カーボン保護層4の成膜を行った。
(CVD条件)
導入ガス:エチレン/アルゴン混合ガス375sccm(アルゴン混合率:20vol%)
反応管内圧力:30Pa
投入電圧:+1.5kV
カーボン保護層の膜厚:10nm
なお、上記においては、金属層2と磁性層3の成膜工程とを、同一のチャンバー内で連続的に行った。
導入ガス:エチレン/アルゴン混合ガス375sccm(アルゴン混合率:20vol%)
反応管内圧力:30Pa
投入電圧:+1.5kV
カーボン保護層の膜厚:10nm
なお、上記においては、金属層2と磁性層3の成膜工程とを、同一のチャンバー内で連続的に行った。
次に、モノエステルモノカルボン酸系潤滑剤を用いて潤滑剤層5を形成し、カーボン系のバックコート層6を形成し、サンプル磁気テープを作製した。
〔実施例2〕
金属Cu層の膜厚を4nmとした。
〔実施例2〕
金属Cu層の膜厚を4nmとした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例3〕
金属Cu層の膜厚を5nmとした。
〔実施例3〕
金属Cu層の膜厚を5nmとした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例4〕
金属Cu層の膜厚を10nmとした。
〔実施例4〕
金属Cu層の膜厚を10nmとした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例5〕
金属Cu層の膜厚を15nmとした。
〔実施例5〕
金属Cu層の膜厚を15nmとした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例6〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを35nmにした。
〔実施例6〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを35nmにした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例7〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを55nmにした。
〔実施例7〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを55nmにした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例8〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを75nmにした。
〔実施例8〕
金属Cu層の膜厚を5nmとし、磁性層厚みを75nmにした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例9〕
金属Cu層の膜厚を15nmとし、磁性層厚みを75nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例10〕
金属Cu層の膜厚を2nmとし、磁性層厚みを45nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例11〕
金属Cu層の膜厚を4nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例12〕
金属Cu層の膜厚を5nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例13〕
金属Cu層の膜厚を10nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例14〕
金属Cu層の膜厚を15nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例1〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを10nmにした。CVDの実施が不可能であったため、保護層は成膜せず、その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例2〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを15nmにした。CVDの実施が不可能であったため、保護層は成膜せず、その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例3〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを35nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例4〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを45nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例5〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを55nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例6〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを75nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例7〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを80nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例8〕
金属Cu層の膜厚を17nmとし、磁性層厚みを15nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例9〕
金属Cu層の膜厚を15nmとし、磁性層厚みを75nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例10〕
金属Cu層の膜厚を2nmとし、磁性層厚みを45nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例11〕
金属Cu層の膜厚を4nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例12〕
金属Cu層の膜厚を5nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例13〕
金属Cu層の膜厚を10nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔実施例14〕
金属Cu層の膜厚を15nmとした。その他の条件は、上記実施例10と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例1〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを10nmにした。CVDの実施が不可能であったため、保護層は成膜せず、その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例2〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを15nmにした。CVDの実施が不可能であったため、保護層は成膜せず、その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例3〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを35nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例4〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを45nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例5〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを55nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例6〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを75nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例7〕
金属Cu層を形成せず、磁性層厚みを80nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
〔比較例8〕
金属Cu層の膜厚を17nmとし、磁性層厚みを15nmにした。その他の条件は、上記実施例1と同様として磁気テープを作製した。
上述したようにして作製した実施例1〜14、及び比較例1〜8のサンプル磁気テープのCVDスピード評価とテープ特性評価を行った。
(CVDスピード)
CVDスピードは、保護膜を10nm成膜した場合のスピードで判断した。CVDは電圧を+1.5kVとし、このときに流れる電流によってスピードが左右される。
(CVDスピード)
CVDスピードは、保護膜を10nm成膜した場合のスピードで判断した。CVDは電圧を+1.5kVとし、このときに流れる電流によってスピードが左右される。
CVD実施不可能は不可と評価し、CVDスピード 〜48m/minは適性でないと評価し、CVDスピード 48〜80m/minは適性範囲と評価し、CVDスピード 80m/min以上は好ましい範囲と評価した。
テープ特性評価は、電磁変換特性、テープ表面抵抗測定、耐蝕性について、下記に示す方法により行った。
(電磁変換特性)
AIT3ドライブを改造し、MRヘッドを搭載したものを使用した。各サンプル磁気テープに、記録波長0.29μmで、情報信号を記録した後、MRヘッドにより再生し、出力レベルとC/Nを測定した。
(電磁変換特性)
AIT3ドライブを改造し、MRヘッドを搭載したものを使用した。各サンプル磁気テープに、記録波長0.29μmで、情報信号を記録した後、MRヘッドにより再生し、出力レベルとC/Nを測定した。
出力レベルは、リファレンスとして、実施例6の磁気テープを基準値(±0dB)とした場合、リファレンスに比較して5dB以上マイナスであると、実用上充分な記録再生特性が得られない。
C/Nは出力レベルとノイズレベルの比をとったもので、実施例6の磁気テープを基準値(±0dB)とした場合、リファレンスに比較して5dB以上マイナスであると、実用上充分な記録再生特性が得られない。
(表面抵抗)
温度25℃、湿度55%の環境下で、金属性の電極に幅8mmにスリットした磁気テープを置き、その両端に各50gのおもりを付け、電極に磁気テープを密着させた後、電極間にKIKUSUI製DC電源にて10Vの直流電圧をかけ、YOKOGAWA製デジタルマルチメーターで電流値を測定し、表面抵抗[Ω/sq]を算出した。
(表面抵抗)
温度25℃、湿度55%の環境下で、金属性の電極に幅8mmにスリットした磁気テープを置き、その両端に各50gのおもりを付け、電極に磁気テープを密着させた後、電極間にKIKUSUI製DC電源にて10Vの直流電圧をかけ、YOKOGAWA製デジタルマルチメーターで電流値を測定し、表面抵抗[Ω/sq]を算出した。
表面抵抗は、特許文献1において、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲に制御することが磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐために必要である旨が既に報告されている。したがって103〜107Ω/sqは適性と評価し、103Ω/sq以下は不可と評価し、107Ω/sq以上は不可と評価した。
(耐蝕性)
SO2耐蝕性の評価を次のようにして行った。
(耐蝕性)
SO2耐蝕性の評価を次のようにして行った。
SO2ガス環境の磁化劣化評価として、ガス試験装置(SO2ガス濃度=0.5ppm、30℃・80%RH)の環境で、100時間保存したサンプルの磁化量変化を測定した。VSMを用いてサンプルの飽和磁化を測定し、下記数式1を用いて算出した。
磁化劣化率φr(%)=(保存前の磁化量−保存後の磁化量)/保存前の磁化量…(1)
上記数式1においてSO2ガス環境保存後のCo磁性層の磁化量が半分に減少すれば磁化劣化率50%、保存後の磁化率がゼロまで減少すれば磁化劣化率は100%になる。
上記数式1においてSO2ガス環境保存後のCo磁性層の磁化量が半分に減少すれば磁化劣化率50%、保存後の磁化率がゼロまで減少すれば磁化劣化率は100%になる。
そして前記磁化劣化率が10%未満のものを不可と評価し、10%以上のものを良好と評価した。
上記評価結果は次の表1のとおりである。
表1に示す評価結果から、先ず、磁性層の膜厚について検討する。
磁性層の膜厚を15〜75nmに形成した実施例1〜14においては、出力、C/Nともにリファレンス(実施例6)に比較して−5dB以内となっており、実用上充分な結果が得られた。
ところで、高密度記録化を図るためには、磁性層を薄層化し、高感度磁気ヘッド(MRヘッドやGMRヘッド)を用いることが必要となってくるが、比較例1のように、磁性層の膜厚を10nmもの薄層にした場合には、充分な出力が得られなかった。
一方、比較例7に示すように、磁性層の膜厚が75nmを超えるものとした場合に、高感度磁気ヘッドを使用して信号再生を行うと、ノイズが高くなってしまい、C/Nは劣化した。この結果から、磁性層の膜厚は15nm〜75nmとすることが好適であることが確かめられた。
次にCVDスピードについて検討する。
先ず、金属Cu層を成膜しない場合の磁性層の膜厚とCVD実施の可否については、比較例1、比較例2でCVDの実施が不可能であり、比較例3〜6でもCVDスピードは80m/min未満であり、磁性層が薄い場合にスピードの低下が顕著である。これは磁性層が薄くなると、磁性層の抵抗が高くなり、印加された電圧は、磁性層による電圧下降分が大きく、プラズマには充分な電圧がかからなくなるため、炭化水素ガスが分解され難くなるためである。
ところが、電磁変換特性を満足する、磁性層が最も薄い15nmの場合、金属Cu層を2nm形成した実施例1では、CVDの実施が可能になった。さらに、実施例2〜5ではCVDのスピードアップがなされ、特に5nm以上の金属Cu層があれば、80m/min以上(好ましい目標値)のCVDスピードが可能になる。
次に表面抵抗について検討する。
表面抵抗は、特許文献1において、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲に制御することが磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐために必要である旨が既に報告されている。実施例1〜4、実施例6〜8については、テープ化後の表面抵抗は103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲内であった。実施例5、実施例9では酸素雰囲気に3日間保管した場合に、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲内になった。しかしながら、金属Cu層を17nmにした比較例8では、3日間酸素雰囲気に保管しても、表面抵抗は103Ω/sqを超えず、低いままであった。
金属Cu層を有する実施例1〜14と、金属Cu層を形成しなかった比較例1〜7の表面抵抗と比較すると、テープ化する工程で大気に曝されることで、金属Cu層が酸化し、金属Cu層を形成しなかった磁性層の表面抵抗とほぼ同じにすることが可能になった。
以上より、金属層によって生産性の高いプラズマCVD実施が可能な表面抵抗の低い中間状態を実現し、これを大気に暴露することで導電性金属層を酸化させ、テープ化された時には磁気抵抗効果型磁気ヘッドの静電破壊を防ぐ表面抵抗の高い状態に変化させることが可能になった。
また耐蝕性については、金属Cu層を有する実施例1〜14の方が、金属Cu層を形成しなかった比較例1〜7に比べて劇的にSO2耐蝕性が向上する。
1…非磁性支持体、2…金属層、3…磁性層、4…保護層、5…潤滑剤層、6…バックコート層、100…磁気記録媒体、200…マグネトロンスパッタ装置、300…蒸着装置、400…DCプラズマCVD装置。
Claims (9)
- 非磁性支持体の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの導電性の金属層を形成し、その金属層の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層を形成し、前記磁性層上に保護層を形成した後に前記導電性の金属層を酸化させたことを特徴とする磁気記録媒体。
- 磁気抵抗効果型ヘッド、又は巨大磁気抵抗効果型ヘッドを用いて信号の再生がなされることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 表面抵抗が、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 表面抵抗が、103Ω/sq〜107Ω/sqの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
- ヘリカル・スキャン記録再生システムにより、信号の記録及び/又は再生がなされることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- リニア方式記録再生システムにより、信号の記録及び/又は再生がなされることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記保護層の膜厚を4〜15nmとし、前記保護層上に潤滑剤層を形成し、前記非磁性支持体の他方の主面に、膜厚0.1〜0.6μmのバックコート層を形成したことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
- 前記保護層の膜厚を4〜15nmとし、前記保護層上に潤滑剤層を形成し、前記非磁性支持体の他方の主面に、膜厚0.1〜0.6μmのバックコート層を形成したことを特徴とする請求項6に記載の磁気記録媒体。
- 非磁性支持体の一方の主面上に膜厚2nm〜15nmの導電性の金属層を形成し、該金属層の上に膜厚15nm〜75nmの磁性層と保護層とを順次形成し、前記保護層形成後に前記導電性の金属層を酸化させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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