以下、本発明の詳細を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の製造方法によって得られた液晶表示装置を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
図1に示す液晶表示装置1では、2枚の第1,第2の基板2,3が対向し合うように配置されている。
第1の基板2を構成する透明基板2Aの内表面には、ブラックマトリックス4が等間隔に形成されている。ブラックマトリックス4上、およびブラックマトリックス4間の透明基板2Aの内表面には、赤、緑、青の3色からなるカラーフィルタ5がほぼ一定の厚みとなるように形成されている。カラーフィルタ5上には、ほぼ一定の厚みのオーバーコート層6およびITO透明電極7が形成されている。透明電極7を覆うように、ほぼ一定の厚みの配向膜8が形成されている。第1の基板2では、ブラックマトリックス3が形成されている部分において、配向膜8は凸部8aを有する。
他方、第2の基板3を構成する透明基板3Aの内表面には、ブラックマトリックス3と対応する位置において、例えば銅からなる段差9が形成されている。段差9上には、ほぼ一定の厚みのITO透明電極10が形成されている。ITO透明電極10を覆うように、ほぼ一定の厚みの配向膜11が形成されている。第2の基板3では、段差9が形成されている部分において、配向膜11は凸部11aを有する。
第1の基板2と第2の基板3とは、それぞれの外周縁近傍によって、図示しないシール材を介して接合されている。第1の基板2と第2の基板3とにより囲まれた空間に、液晶12が封入されている。ブラックマトリックス4に対応する位置、すなわち非画素領域に対応する領域に複数のスペーサ粒子13が配置されている。スペーサ粒子13により第1,第2の基板2,3の間隔が規制されて、適正な液晶層の厚みが維持されている。
なお、本発明では、スペーサ粒子が配置される基板を第1の基板と呼ぶものとし、上述した第2の基板3にスペーサ粒子が配置される場合には、第2の基板が第1の基板となる。
上述した第1の基板2にスペーサ粒子13を配置する方法を、図2(a)〜(c)を用いて説明する。図2(a)〜(c)に、スペーサ粒子が配置される過程を段階的に部分切欠正面断面図で示す。
図2(a)に示すように、ブラックマトリックス4が形成されている部分、すなわち配向膜8の凸部8aに対して、1個または複数個のスペーサ粒子13を含むスペーサ粒子分散液13Aを吐出する。吐出されたスペーサ粒子分散液13Aは、図2(b)に示すように、凸部8a上に着弾する。しかる後、スペーサ粒子分散液13Aが乾燥されて、図2(c)に示すように、スペーサ粒子13が凸部8a上に配置される。図2(c)に示すように、スペーサ粒子分散液13Aが乾燥される際にスペーサ粒子13が複数個含まれていると、液滴の着弾中心に向かってスペーサ粒子13が寄り集まるように移動し、複数のスペーサ粒子13が互いに接するように配置される。
上記のようにして、図3に部分切欠正面断面図で示すように、1個または複数個のスペーサ粒子13が凸部8a上にそれぞれ配置された第1の基板2が得られる。この第1の基板2は、スペーサ粒子13を介して対向するように第2の基板3に重ね合わせられる。重ね合わせられた第1,第2の基板2,3間に液晶を注入するか、若しくは第1,第2の基板2,3を重ね合わせる前に第1の基板2または第2の基板3上に液晶12が配置され、図1に示す液晶表示装置1が構成される。
(スペーサ粒子)
本発明では、粒子径が5μm以下であるスペーサ粒子が用いられる。粒子径が5μmを超えると、基板にスペーサ粒子分散液を吐出する際に、後述するインクジェット装置のノズルからスペーサ粒子分散液を直線的に吐出できず、凸部上からスペーサ粒子分散液がはみ出し易くなる。また、スペーサ粒子の粒子径が大きすぎると、吐出時にノズルの閉塞が生じ易く、さらに対向する基板間の距離が大きすぎて液晶表示素子の小型化等に対応できないことがある。スペーサ粒子の粒子径は、1μm以上であることが好ましい。粒子径が1μm未満であると、基板間の間隔の規制にスペーサ粒子が十分機能せず、対向する基板同士が接触することがある。
本発明に用いられるスペーサ粒子の材料は特に限定されず、例えば、シリカ粒子等の無機系粒子であってもよく、有機高分子等の有機系粒子であってもよい。中でも、液晶表示装置の基板上に形成されている配向膜を傷つけない程度の適度な硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、さらにセル内部でスペーサ粒子が移動し難いことから、有機系粒子が好ましく使用される。
上記有機系粒子としては特に限定されないが、例えば強度等が適度な範囲であるため、単官能単量体と多官能単量体との共重合体が好ましく用いられる。共重合体を構成する単官能単量体と多官能単量体との比率は、特に限定されず、有機系粒子に要求される強度や硬度により適宜調整され得る。
上記単官能単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。これら単官能単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等の2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能単量体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記単官能単量体または多官能単量体として、親水性基を有する単量体が用いられてもよい。親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスホフォニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基が挙げられる。
上記親水性基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸、及び、それらのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等のカルボキシル基を有する単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有する単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスフォニル基を有する単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレートやジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリロイル基を有するアミン類等のアミノ基を有する化合物;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基とエーテル基とをともに有する単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有する単量体等が挙げられる。
単官能単量体と多官能単量体とを共重合させてスペーサ粒子を得る方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等の各種重合法が挙げられる。
上記懸濁重合法では、得られるスペーサ粒子の粒子径分布が広範囲であり、多分散のスペーサ粒子が得られる。上記懸濁重合法により得られたスペーサ粒子の分級操作を行うことにより、所望とする粒子径、粒子径分布を有する多種のスペーサ粒子を得ることができる。一方、シード重合法または分散重合法では、分級工程を経ることなく単分散のスペーサ粒子が得られるため、特定の粒子径のスペーサ粒子を大量に得る際に好適である。
上記懸濁重合法とは、所望とする粒子径となるように、単量体及び重合開始剤からなる単量体組成物を貧溶媒中に分散させて重合させる方法である。懸濁重合法では、分散媒として、通常水に分散安定剤を加えたものが使用される。分散安定剤としては、媒体中に可溶の高分子が挙げられ、より具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。またノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。重合条件としては、上記重合開始剤や単量体の種類により異なるが、通常、重合温度は50〜80℃の範囲であり、重合時間は3〜24時間の範囲である。
上記シード重合法とは、ソープフリー重合や乳化重合により合成された単分散の種粒子に、単量体をさらに吸収させることにより、所望とする粒子径まで種粒子を膨らませる重合方法である。種粒子に用いられる有機単量体としては特に限定されず、例えば上述した単量体を用いることができる。単分散の種粒子に吸着される単量体としては、シード重合時の相分離を抑制するために、単分散の種粒子と親和性のある単量体を用いることが好ましい。単分散の種粒子に吸着される単量体としては、粒子径分布をより一層単分散とし得るため、スチレン及びその誘導体等がより好ましく用いられる。
上記種粒子の粒子径分布は、シード重合後の粒子径分布にも反映されるため、単分散であることが好ましく、Cv値が5%以下であることが好ましい。シード重合時に吸収させる単量体として、相が分離することを防止するため、種粒子と類似の組成を有する単量体を用いることが好ましい。種粒子がスチレン系の粒子である場合には、シード重合時に吸収させる単量体として、芳香族系ジビニル単量体を用いることがより好ましい。種粒子がアクリル系の粒子である場合には、シード重合時に吸収させる単量体として、アクリル系多官能ビニル単量体を用いることがより好ましい。
上記シード重合法では、必要に応じて分散安定剤が用いられる。分散安定剤としては、媒体中に可溶な高分子であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。また、ノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。
上記シード重合法では、種粒子1重量部に対して、単量体20〜100重量部を添加し、吸着させることが好ましい。
上記シード重合に使用される媒体としては特に限定されず、使用する単量体によって適宜変更し得るが、一般的に好ましく使用される有機溶媒としては、アルコール類、セロソルブ類、ケトン類又は炭化水素を挙げることができる。これらの媒体は単独で、又はこれらと互いに相溶可能な他の有機溶剤、水等と混合されて用いられる。媒体と互いに相溶可能な他の有機溶剤としては、具体的には、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、シメチルスルホキシド、酢酸エチル、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、2−ブタノンなどのケトン類等を挙げることができる。
上記分散重合法とは、単量体は溶解するが、生成したポリマーは溶解しない貧溶媒系で重合を行い、この系に高分子系分散安定剤を添加し、粒子形状の生成ポリマーを析出させる方法である。
上記分散重合法において、架橋成分が配合されると粒子の凝集が起こりやすく、安定的に単分散架橋粒子を得ることが困難であるが、条件を調整することにより単分散架橋粒子を得ることができる。
上記重合に際しては、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が好適に用いられる。重合開始剤は、重合に用いられる単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で添加されることが好ましい。
スペーサ粒子は、適正な液晶層の厚みを維持するためのギャップ材として用いられる。よって、スペーサ粒子には一定の強度が求められる。スペーサ粒子の圧縮強度を示す指標として、スペーサ粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)が用いられる。適正な液晶層の厚みを維持するためには、圧縮弾性率が2000〜15000MPaの範囲にあることが好ましい。圧縮弾性率が2000MPaより小さいと、液晶表示素子を組立てる際のプレス圧によってスペーサ粒子が変形し、所望とする液晶層の厚みを得ることが困難なことがある。圧縮弾性率が15000MPaより大きいと、液晶表示素子にスペーサ粒子を配置するときに、基板表面に形成されている配向膜を傷つけることがある。
上記スペーサ粒子の圧縮弾性率(10%K値)は、特表平6−503180号公報に記載の方法に準拠して求められる。例えば微小圧縮試験器(PCT−200、島津製作所社製)を用いて、ダイヤモンド製からなる直径50μmの円柱の平滑端面をスペーサ粒子に圧接させ、スペーサ粒子の直径が10%変位したときの加重から求められる。
液晶表示素子のコントラストを向上させるため、スペーサ粒子は着色されて用いられてもよい。着色されたスペーサ粒子としては、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等により処理されたスペーサ粒子、またはスペーサ粒子の表面に有機物の膜が形成された後、高温で分解又は炭化されて着色されたスペーサ粒子等が挙げられる。なお、スペーサ粒子を構成する材質自体が着色している場合には、スペーサ粒子を着色させずに用いてもよい。
スペーサ粒子には、帯電可能な処理が施されていてもよい。帯電可能な処理とは、スペーサ粒子分散液中でもスペーサ粒子が何らかの電位を持つように処理することである。このスペーサ粒子の電位(電荷)は、ゼータ電位測定器等の既存の測定器を用いて、既存の測定方法によって測定される。
帯電可能な処理を施す方法としては、例えば、スペーサ粒子中に荷電制御剤を含有させる方法、帯電しやすい単量体成分を含む単量体を用いてスペーサ粒子を製造する方法、スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法等が挙げられる。
スペーサ粒子が帯電可能である場合には、スペーサ粒子分散液におけるスペーサ粒子の分散性、分散安定性が高められる。よって、スペーサ粒子を散布するときに、電気泳動効果によって配線部(段差)近傍にスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
上記荷電制御剤を含有させる方法としては、スペーサ粒子を得る際に、荷電制御剤を共存させて重合を行う方法、スペーサ粒子を構成するモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を、スペーサ粒子を構成するモノマーと共存させて重合を行う方法、後述するスペーサ粒子の表面修飾の際に、表面修飾に用いられるモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を共存させて共重合を行う方法、表面修飾層又はスペーサ粒子の表面官能基と反する官能基を有する荷電粒子をスペーサ粒子表面と反応させる方法等が挙げられる。
上記荷電制御剤としては、特に限定されないが、例えば特開2002−148865号に記載の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤としては、特に限定されないが、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ヒドロキシルカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。
上記荷電制御剤としては、具体的には、例えば尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、非金属カルボン酸系化合物、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及び、これらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類等が挙げられる。上記レーキ顔料に用いられるレーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等が挙げられる。これら荷電制御剤は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
上記荷電制御剤を含有するスペーサ粒子の極性は、上記荷電制御剤を適宜選択することにより設定され得る。すなわち、周囲の環境に応じて、スペーサ粒子を正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
上記帯電しやすい単量体成分を含む単量体を用いてスペーサ粒子を製造する方法としては、上述した単量体の中で、親水性官能基を有する単量体を組み合わせて用いる方法が挙げられる。これらの親水性官能基を有する単量体の中から適切な単量体を適宜選択して用いることにより、周囲の環境に応じて、スペーサ粒子を正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
上記スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法としては、例えば、特開平1−247154号公報に記載のように、スペーサ粒子表面に樹脂を析出させて修飾する方法、特開平9−113915号公報または特開平7−300587号公報に記載のように、スペーサ粒子表面の官能基と反応する化合物をスペーサ粒子表面に作用させて修飾する方法、特開平11−223821号公報または特開2003−295198号公報に記載のように、スペーサ粒子表面でグラフト重合を行って表面を修飾する方法、スペーサ粒子表面に化学的に結合した表面層を形成する方法等が挙げられる。これらの表面処理を施す際に、スペーサ粒子が帯電処理されるように適宜の方法が選択される。
上記スペーサ粒子に帯電可能な表面処理を施す方法としては、液晶表示装置のセル中で、表面層が剥離して液晶に溶出することを防止するため、スペーサ粒子表面に化学的に結合した表面層を形成する方法が好ましい。
上記のように、スペーサ粒子に表面処理を施すことにより、スペーサ粒子の基板に対する接着性を高めることができる。また、スペーサ粒子を構成する単量体を適宜選択することにより、液晶表示素子において液晶の配向の乱れを抑制することができる。
(スペーサ粒子分散液)
スペーサ粒子を分散し得る媒体中に、上述したスペーサ粒子を分散させることにより、スペーサ粒子分散液を得ることができる。
スペーサ粒子分散液中には、溶媒として、例えばノズルから吐出される温度において液体である各種溶媒が含まれていることが好ましい。なかでも、水溶性又は親水性の溶媒が好ましい。インクジェット装置には、水系媒体用のノズルが用いられることがある。水系媒体用のノズルが用いられる場合には、スペーサ粒子分散液の媒体として疎水性の強い溶媒を用いると、ノズルを構成する部材中に溶媒が侵入したり、部材を接着している接着剤の一部が溶媒に溶解することがある。よって、水系媒体用のノズルが用いられる場合には、スペーサ粒子分散液中には、水溶性又は親水性の溶媒が含まれていることが好ましい。
上記水溶性又は親水性の溶媒としては、水の他、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコールの多量体;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のプロピレングリコールの多量体;グリコール類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等の低級モノアルキルエーテル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等の低級ジアルキルエーテル類;モノアセテート、ジアセテート等のアルキルエステル類、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール類、ジオール類のエーテル誘導体、ジオール類のアセテート誘導体、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類又はそのエーテル誘導体、アセテート誘導体、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルフォラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルフォン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。
スペーサ粒子分散液は、沸点が100℃以上である溶媒を含むことが好ましい。沸点とは、1気圧下における沸点を言うものとする。
スペーサ粒子分散液は、沸点が100℃以上、かつ20℃における表面張力が38mN/m以上である溶媒を含むことがより好ましい。沸点が100℃以上、かつ表面張力が38mN/m以上である溶媒を含むと、後述する後退接触角(θr)を大きくすることができる。また、沸点が100℃以上、かつ表面張力が38mN/m以上である溶媒を含むと、基板にスペーサ粒子分散液を吐出し着弾させたときの液滴径が小さくなるため、液滴の拡がりが生じ難い。さらに、液滴の着弾中心に向かってスペーサ粒子が移動し易くなる。よって、基板にスペーサ粒子を高精度に配置することができる。
スペーサ粒子分散液の20℃における表面張力は、33mN/m以上である。スペーサ粒子分散液の表面張力が33mN/mより低いと、基板にスペーサ粒子分散液を吐出し着弾させたときの液滴径が大きくなりすぎて、凸部上から液滴がはみ出し易くなる。
スペーサ粒子分散液の表面張力は、上述した溶媒を適宜組合わせることにより調整される。スペーサ粒子分散液の表面張力を33mN/m以上とするために、スペーサ粒子分散液は、溶媒として沸点が100℃未満である溶媒をさらに含むことがより好ましい。沸点が70℃以上、100℃未満の溶媒を含むことがさらに好ましい。
上記沸点が100℃未満の溶媒としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール等の低級モノアルコール類、アセトンなどが挙げられる。
基板に吐出されたスペーサ粒子分散液を乾燥させる温度が高温であると、配向膜が損傷し、液晶表示装置の表示画質が劣化することがあるが、上記沸点が100℃未満である溶媒を使用することにより、乾燥温度を低くでき、配向膜の損傷を防ぐことができる。
スペーサ粒子を除くスペーサ粒子分散液100重量%に対して、沸点が100℃未満である溶媒は、1.5〜50重量%の範囲で含まれていることが好ましい。沸点が100℃未満である溶媒が1.5重量%未満であると乾燥速度が遅くなり、液晶表示装置の生産効率が低下する。また、沸点が100℃未満である溶媒が50重量%を超えると、インクジェット装置のノズルの先端でスペーサ粒子分散液が乾燥し易くなる。さらに、沸点が100℃未満である溶媒が50重量%を超えると、スペーサ粒子分散液を製造する際や、スペーサ粒子分散液を保管している際にスペーサ粒子分散液が乾燥し、スペーサ粒子が凝集することがある。
上記沸点が100℃未満である溶媒は、20℃における表面張力が38mN/m未満であることが好ましく、25mN/m以下であることがより好ましい。溶媒の表面張力が38mN/m以上であると、スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなり、インクジェット装置のノズルの接液部分の表面張力によっては、吐出性が悪くなることがある。
スペーサ粒子分散液が、沸点100℃未満、表面張力が38mN/m未満である溶媒を含むと、後述するインクジェット装置にスペーサ粒子分散液を導入し易くなり、吐出する際には吐出性が向上する。
スペーサ粒子分散液には、上述した沸点が100℃未満の溶媒と、上述した沸点が100℃以上の溶媒とを含有させることが好ましい。沸点が100℃以上の溶媒として水が含まれている場合には、水の配合量は10重量%以下であることが好ましい。水の配合量が10重量%以下であると、スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子が沈降し難くなる。逆に、水の配合量が10重量%より多いと、スペーサ粒子分散液の粘度が低すぎてスペーサ粒子が沈降し易くなる。スペーサ粒子が沈降するとスペーサ粒子の分散状態にむらが生じ、基板上に配置されたスペーサ粒子の散布密度に差が生じ易くなる。
スペーサ粒子分散液は、沸点が100℃未満、かつ表面張力が38mN/m未満である溶媒とともに、沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒を含んでいることがより好ましい。スペーサ粒子分散液は、沸点が150℃以上、250℃以下であり、表面張力が38mN/m以上である溶媒を含んでいることがさらに好ましい。沸点が150℃以上、250℃以下であり、表面張力が38mN/m以上である溶媒を含むことにより、後退接触角をより一層大きくすることができる。基板にスペーサ粒子分散液を吐出し着弾させた後、スペーサ粒子分散液を乾燥させると、沸点が低い溶媒が先に揮発する。このとき、沸点が高い溶媒が残留し、スペーサ粒子分散液の表面張力が高くなる。よって、着弾地点中心に向かってのスペーサ粒子が移動し易くなる。
沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒の表面張力が38mN/m未満であると、スペーサ粒子分散液を基板に吐出し着弾させた後、スペーサ粒子分散液を乾燥させると、沸点100℃未満の溶媒が先に揮散するが、残留しているスペーサ粒子分散液の表面張力が乾燥前よりも低くなることがある。よって、基板に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴径が小さくならず、乾燥前よりも拡がり易くなり、着弾中心点に向かってスペーサ粒子が移動し難いことがある。
上記沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒としては、例えば、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール等のブタンジオール類が挙げられる。スペーサ粒子分散液に沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒を含ませると、インクジェット装置のノズル付近でスペーサ粒子分散液が乾燥し難くなり、吐出精度を高めることができる。さらに、スペーサ粒子分散液を製造する際や、スペーサ粒子分散液を保管している際にスペーサ粒子分散液が乾燥し、スペーサ粒子が凝集することがある。
スペーサ粒子分散液100重量%に対して、沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒の配合割合は、50〜98.5重量%の範囲にあることが好ましく、60〜95重量%の範囲にあることがより好ましい。沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒が50重量%未満であると、スペーサ粒子分散液が乾燥し、吐出精度が低下したり、凝集粒子が発生しやすくなる。沸点が150℃以上、250℃以下である溶媒が98.5重量%を超えると、若しくは沸点が250℃を超えると、乾燥に長時間かかり、生産効率が低下することがある。さらに、高温下に晒された配向膜を損傷し、液晶表示装置の表示画質が低下することがある。
スペーサ粒子分散液の20℃における粘度は、10mPa・sより大きく、20mPa・s未満であることが好ましい。粘度が10mPa・s以下であると、スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子が経時より沈降し易くなる。粘度が20mPa・s以上であると、ノズルからスペーサ粒子分散液を吐出する際に、吐出量の制御が困難なことがある。吐出性を制御するためには、スペーサ粒子分散液を過剰に加温しなければならないことがある。
スペーサ粒子分散液の20℃における比重は、1.00g/cm3以上であることが好ましい。比重が1.00g/cm3未満であると、スペーサ粒子分散液中に分散されているスペーサ粒子が経時により沈降し易くなる。
スペーサ粒子分散液の沈降速度は、150分以上であることが好ましい。沈降速度とは、内径φ5mmの試験管にスペーサ粒子分散液を高さ10cmとなるように導入した後、静置したときに、目視にて試験管底にスペーサ粒子の堆積が確認されるまでの時間をいう。
スペーサ粒子分散液の沈降速度が150分以上であると、スペーサ粒子分散液をインクジェット装置に導入した後からスペーサ粒子分散液を吐出するまでの間に、スペーサ粒子が沈降し難くなる。よって、インクジェット装置を用いて、スペーサ粒子分散液を安定に吐出することができる。
基板上に吐出された際に、スペーサ粒子分散液の基板に対する後退接触角(θr)は5度以上であることが好ましい。後退接触角が5度以上であると、基板に吐出したスペーサ粒子分散液を乾燥させるときに、スペーサ粒子分散液の着弾中心に向かって液滴が縮小し易くなる。また、1つの液滴中に複数のスペーサ粒子が含まれている場合でも、着弾中心に向かってスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
後退接触角とは、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液が基板上に着弾した後、乾燥させるまでの過程で、基板上に着弾したスペーサ粒子分散液の着弾径が小さくなり始めたとき、すなわち液滴が縮小し始めたときの接触角、または液滴の揮発成分の内80〜95重量%が揮発した際の接触角をいう。
後退接触角を5度以上にする方法としては、上述したスペーサ粒子分散液の溶媒の組成を調整する方法、または基板を表面処理する方法が挙げられる。
スペーサ粒子分散液の溶媒の組成を調整する際には、後退接触角が5度以上である溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を併用してもよい。2種以上の溶媒を混合して用いると、スペーサ粒子の分散性、スペーサ粒子分散液を用いるときの作業性、スペーサ粒子分散液の乾燥速度等を容易に調整することができる。
2種以上の溶媒が混合して用いられる場合には、混合される溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の後退接触角が5度以上であることが好ましい。最も沸点の高い溶媒の後退接触角が5度未満であると、乾燥過程において最も沸点の高い溶媒が残留することになるが、この場合スペーサ粒子分散液の液滴径が大きくなり、基板上で液滴が拡がり易くなる。また、着弾中心に向かってスペーサ粒子が寄り集まり易くなる。
上記後退接触角は、スペーサ粒子分散液が基板に着弾した直後の初期の接触角に比べて小さくなる傾向にある。初期の接触角では、スペーサ粒子分散液を構成する溶媒が基板表面に十分接触していない状態であるが、後退接触角では、溶媒が基板表面に十分接触しているためと考えられる。後退接触角が初期の接触角に対して著しく低い場合には、溶媒によって配向膜が損傷を受けていることがある。
初期の接触角は、10〜110度の範囲にあることが好ましい。初期の接触角が10度未満であると、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液が基板上に拡がり、スペーサ粒子の配置間隔が大きくなることがある。初期の接触角が110度より大きいと、基板上を液滴が移動し易くなり、配置精度が低くなったり、スペーサ粒子と基板との密着性が悪くなることがある。
インクジェット装置のノズルから吐出されるときのスペーサ粒子分散液の粘度は、0.5〜15mPa・sの範囲にあることが好ましく、5〜10mPa・sの範囲にあることがより好ましい。吐出されるときのスペーサ粒子分散液の粘度が、15mPa・sより高いと、吐出が困難なことがあり、0.5mPa・sより低いと、吐出量を制御することが困難なことがある。スペーサ粒子分散液を吐出する際に、インクジェット装置のノズルをペルチェ素子や冷媒等を用いて冷却したり、ヒーター等で加温することで、吐出されるときのスペーサ粒子分散液の温度を−5℃から50℃の範囲に調整することが好ましい。
スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子濃度は、0.01〜5重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜2重量%の範囲である。スペーサ粒子濃度を0.01〜5重量%とすることで、スペーサ粒子分散液を安定に吐出することができる。なお、スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子濃度は、基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数により適宜設定される。
スペーサ粒子濃度が0.01重量%未満であると、吐出された液滴中にスペーサ粒子が含まれないことがある。スペーサ粒子濃度が5重量%を超えると、インクジェット装置のノズルが目詰まり生じ易くなり、また吐出された液滴中に含まれるスペーサ粒子の数が多すぎて、乾燥過程でスペーサ粒子が移動し難くなる。
スペーサ粒子は、スペーサ粒子分散液中に単粒子状に分散されていることが好ましい。スペーサ粒子分散液中に凝集したスペーサ粒子が存在すると、吐出精度が低下したり、インクジェット装置のノズルが目詰まりすることがある。
本発明では、本発明の効果を阻害しない範囲で、スペーサ粒子分散液中に接着性を付与するための接着成分が添加されていてもよい。さらにスペーサ粒子の分散性を高めたり、表面張力や粘度等の物理的な特性を制御して吐出精度を高めたり、乾燥時のスペーサ粒子の移動性能を高めるために、各種の界面活性剤、粘性調整剤などがスペーサ粒子分散液に添加されていてもよい。
(インクジェット装置)
次に、スペーサ粒子分散液を基板上に吐出するときに用いるインクジェット装置について説明する。
本発明に用いられるインクジェット装置としては、特に限定されず、一般的な吐出方法によるインクジェット装置が用いられる。吐出方法としては、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出するサーマル方式等が挙げられる。中でも、スペーサ粒子分散液への熱的な影響が小さため、ピエゾ方式が好適である。
本発明では、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の重量が、5〜20ngの範囲にある。スペーサ粒子分散液の重量が5ng未満であると、1回で吐出されるスペーサ粒子分散液中にスペーサ粒子が含まれていないことがある。また、吐出量が5ng未満であると、散布密度を一定とするために、スペーサ粒子分散液に対するスペーサ粒子の配合割合を大きくする必要がある。スペーサ粒子の配合割合が大きくなると、ノズルからスペーサ粒子分散液が直線的に吐出されず、スペーサ粒子の配置精度が低下することがある。吐出量が20ngより多いと、基板に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴径が大きくなり、スペーサ粒子が非画素領域に対応する領域からはみ出し易くなる。
本発明では、基板表面の非画素領域に対応する領域内に凸部が形成されており、この凸部上にスペーサ粒子分散液が吐出される。スペーサ粒子分散液の吐出量が多すぎると、凸部からスペーサ粒子がはみ出し、スペーサ粒子が画素領域に対応する領域に配置され、表示画質が低下する。この場合、画素領域に対応する領域に配置されたスペーサ粒子は、対向された2枚の基板の間隔を規制する機能を果たさず、基板の部分によって間隔が異なることがある。
1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の重量を制御する方法としては、ノズルの口径を最適化する方法や、インクジェットヘッドを制御する電気信号を最適化する方法がある。後者はピエゾ方式のインクジェット装置を用いた時に特に効果的である。
インクジェット装置のスペーサ粒子分散液を収納しているインク室の接液部は、表面張力が31mN/m以上親水性の材料で構成されていることが好ましい。接液部の材料としては、親水性ポリイミド等の親水性の有機材料も用いることもできるが、耐久性の点で無機材料、すなわちセラミックスやガラス、腐食性が少ないステンレス等の金属材料が好適に用いられる。
通常のヘッドでは、電圧印加部品に対する絶縁等を確保するため、接液部に樹脂等が用いられる。接液部に用いられる樹脂は、表面張力が31mN/mより低い材料からなることが多い。この場合、スペーサ粒子分散液をヘッドに導入する際に、スペーサ粒子分散液のなじみが悪く、気泡が残存し易い。気泡が残存したノズルでは、スペーサ粒子分散液を吐出できないことがある。
インクジェット装置のノズルの口径は、スペーサ粒子の粒子径に対して5倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましい。ノズルの口径が5倍未満であると、スペーサ粒子の粒子径に対してノズルの口径が小さすぎて吐出精度が低下したり、場合によってはノズルが閉塞し吐出できないことがある。
吐出精度が低下する理由は以下のように考えられる。例えばピエゾ方式のインクジェット装置では、ピエゾ素子の振動によりピエゾ素子に近接したインク室にインクを吸引した後、インク室からインクを送り出し、インクをノズルの先端から吐出している。液滴の吐出方法としては、吐出の直前にノズル先端のメニスカス、すなわちインクと気体との界面を引き込んでから、液を押し出す引き打ち法とメニスカスが待機停止している位置から直接液を押し出す押し打ち法が挙げられる。一般的なインクジェット装置では、吐出される液滴が小さいため、前者の引き打ち法が主流である。本発明では、ノズルの径がある程度大きく、かつ吐出される液滴が小さいことが求められるため、引き打ち法が有効である。
しかしながら、引き打ち法では、吐出の直前にメニスカスが引き込まれる。このため、ノズルの口径が小さい場合、例えばノズルの口径がスペーサ粒子の粒子径の7倍未満であるときには、図4(a)に示すように、引き込んだメニスカス21近傍にスペーサ粒子22があると、引き込んだメニスカス21が軸対称とならないことがある。よって、メニスカス21が引き込まれた後に、メニスカス21が押し出される際に、スペーサ粒子分散液23の液滴が直進せずに曲がると考えられる。この場合、吐出精度が低下する。吐出の際の液滴の曲がりをなくすために、ノズルの口径を大きくしすぎると、吐出される液滴が大きくなり、液滴の着弾径も大きくなる。よって、荷電インクやスペーサ粒子22の配置精度が低下する。
ノズルの口径が大きい場合、例えばノズルの口径がスペーサ粒子の粒子径の7倍以上であるときは、図4(b)に示すように、引き込んだメニスカス21近傍にスペーサ粒子22が存在しても、メニスカス21はスペーサ粒子22の影響を受けない。よって、メニスカス21は軸対称に引き込まれる。よって、メニスカス21が引き込まれた後に、メニスカス21が押し出される際に、スペーサ粒子分散液23の液滴が直進すると考えられる。この場合、吐出精度が良好となる。
本発明では、上述したように、1つのノズルから1回で吐出されるスペーサ粒子分散液の重量が5〜20ngの範囲にある。吐出量を5〜20ngとする場合には、上述した引き打ち法が好適である。また、1回の吐出当たり電圧を1回印加するだけでなく、一旦電圧を印加した後、例えば100μ秒経過するまでに再度電圧を印加し、ノズルから飛び出す液滴の後部を引きちぎり、ノズルから液滴の後部が飛び出さないようにするダブルパルス法と呼ばれる吐出法がさらに好適である。電圧印加方法としては、ダブルパルス法を模して、電圧の立ち上がりの時間を変える方法も行われる。ダブルパルス法では、パルス波、台形波などの波形が適用され得る。
インクジェット装置のヘッドには、上述した様なノズルが複数個、一定の配置方式により設けられる。ノズルは、例えばヘッドの移動方向に対して直交する方向に、等間隔で64個または128個設けられる。ノズルは、複数列の設けられていてもよい。
ノズルの間隔は、ピエゾ素子等の構造やノズルの口径等により制約を受ける。よって、上述したように一定の間隔で設けられたノズルに対して、ノズルの間隔とは異なる間隔でスペーサ粒子分散液を基板に吐出する場合には、その吐出間隔に対して様々なヘッドを準備しなければならない。しかしながら、様々なヘッドを準備するのは困難である。よって、吐出間隔がヘッドの間隔より小さい場合は、通常はヘッドのスキャン方向に直角に配置されているヘッドを基板と平行に保ったままで、基板と平行な面内でヘッドを傾けてあるいは回転させて吐出する。他方、吐出間隔がノズルの間隔より大きい場合は、全てのノズルを用いてスペーサ粒子分散液の吐出せず、一部のノズルのみを用いて吐出したり、さらにヘッドを傾けるなどして吐出する。
生産効率等を高めるために、複数個のヘッドをインクジェット装置に取り付けることも可能である。しかしながら、取り付けるヘッドの数を増やした場合には、その制御がより一層困難になる。
図9(a),(b)に、本発明に用いられるインクジェット装置のヘッドの一例を模式的に示す。図9(a)は、インクジェットヘッドの一例の構造を模式的に示す部分切欠斜視図である。図9(b)は、ノズル孔部分において断面構造を示す部分切欠斜視図である。
図9(a),(b)に示すように、ヘッド100は吸引等によって予めインクが充填されるインク室101、及びインク室101からインクが送り込まれるインク室102を備えている。ヘッド100には、インク室102から吐出面103に至るノズル孔104が形成されている。吐出面103は、インクによる汚染を防止するため、予め撥水処理がされている。ヘッド100には、インクの粘度を調整するための温度制御手段105が設けられている。ヘッド100は、インク室101からインク室102にインクを送り込む機能を有する。ヘッド100は、インク室102に送り込まれたインクをノズル孔104から吐出する機能するピエゾ素子106を備えている。
ヘッド100では、温度制御手段105が設けられている。よって、インクの粘度が高すぎる場合には、ヒーターによりインクを加熱し、インクの粘度を低下させることができる。他方、インクの粘度が低すぎる場合には、ペルチェによりインクを冷却し、インクの粘度を上昇させることができる。
(液晶表示装置用の基板)
本発明に用いられる液晶表示装置用の第1,第2の基板としては、例えば、通常液晶表示装置のパネル基板として使用されるガラスや樹脂板などが挙げられる。また第1の基板または第2の基板として、画素領域にカラーフィルタが設けられた基板を用いることができる。この場合、画素領域はブラックマトリックスで画されており、ブラックマトリックスが非画素領域を構成する。ブラックマトリックスは、例えば実質的にほとんど光を通さないクロム等の金属やカーボンブラック等が分散された樹脂等からなる。
本発明では、第1の基板の基板表面の非画素領域に対応する領域内に凸部が形成されている。基板表面に形成された凸部は非画素領域全体に形成されていてもよく、スペーサ粒子分散液が吐出される部分のみに形成されていてもよい。凸部の形状としては、格子状に形成であってよく、長さ方向と幅方向とを有する形状であってもよい。なお、長さ方向と幅方向とを有する形状には、長方形、楕円形などが含まれる。
凸部が格子状の形状を有する場合には、スペーサ粒子分散液が吐出される部分の凸部の幅は、15〜40μmの範囲にあることが好ましい。凸部の幅が15μmより狭いと凸部上にスペーサ粒子分散液を吐出することが困難なことがあり、凸部の幅が40μmより広いと液晶表示装置の非画素領域の範囲が広すぎることがある。
基板表面の非画素領域内に形成された凸部の幅は、液晶表示装置の解像度や大きさ、液晶のモードによって適宜設定される。TFTやTFD等のアクティブマトリックス駆動の液晶表示装置の場合には、素子部近傍の凸部の幅は、30〜90μmの範囲にあることが好ましい。
(スペーサ粒子分散液の吐出とスペーサ粒子の配置方法)
本発明では、インクジェット装置を用いて、第1の基板の凸部上に、スペーサ粒子分散液が吐出されて、第1の基板の凸部上に非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子が配置される。
スペーサ粒子分散液が吐出された際に、初期接触角が10〜110度になるように、基板が構成されていることが好ましい。初期接触角を10〜110度とするために、基板の表面を低エネルギー表面とすることが好ましい。
上記基板の表面を低エネルギー表面とする方法としては、フッ素膜やシリコーン膜等の低エネルギー表面を有する樹脂を基板表面に設ける方法、液晶分子の配向を規制するために配向膜と呼ばれる、通常0.1μm以下である樹脂薄膜を基板表面に設ける方法が挙げられる。一般的には樹脂薄膜を基板表面に設ける方法が行われる。樹脂薄膜を構成する材料としては、通常ポリイミド樹脂が挙げられる。ポリイミド樹脂膜は、溶剤に可溶なポリアミック酸を基板に塗設した後に熱重合させたり、可溶性ポリイミド樹脂を基板に塗設した後に乾燥させて構成される。ポリイミド樹脂としては、基板の表面を低エネルギー表面とし得るために、長鎖の側鎖、主鎖を有するもがより好ましく用いられる。塗設された配向膜は、液晶の配向を制御する目的で表面がラビング処理されることが好ましい。なお、スペーサ粒子分散液の溶媒としては、配向膜中に浸透したり、溶解するなどして配向膜を汚染することがない溶媒を選ぶことが好ましい。
スペーサ粒子分散液が吐出される第1の基板には、非画素領域に対応する領域に、低エネルギー表面を有する箇所があることが好ましい。すなわち、スペーサ粒子分散液の液滴が低エネルギー表面を有する箇所に配置されることが好ましい。ここで、非画素領域に対応する領域とは、非画素領域を有する基板の非画素領域、すなわち例えばカラーフィルタ基板であれば上述のブラックマトリックス形成部分を指す。あるいは、非画素領域を有する基板を他方の基板と重ね合わせた際に、他方の基板において、非画素領域を有する基板の非画素領域に対向している領域が、非画素領域に対応する領域である。例えばTFT液晶パネルであれば、他方の基板はTFTアレイ基板であり、TFTアレイ基板と非画素領域を有する基板とを重ね合わせた際に、TFTアレイ基板の配線部等が非画素領域に対応する領域である。
基板表面の低エネルギー表面を有する箇所の表面エネルギーは、45mN/m以下であることが好ましく、40mN/m以下であることがより好ましい。45mN/mを超えると、インクジェット装置を用いて吐出できる程度の表面張力を有するスペーサ粒子分散液を使用する限り、吐出された液滴が基板上で濡れ拡がりスペーサ粒子が非画素領域に対応する領域からはみ出すことがある。
基板表面に配向膜等を設けて構成された低エネルギー表面は、スペーサ粒子分散液が着弾する箇所だけであってもよく、基板表面全体であってもよい。パターニングなどの工程の煩雑さを考慮すると、通常は基板表面全体が低エネルギー表面とされる。
配線等により形成された段差部分、または配向膜等を挟んでその近傍に金属種がある場合、もしくは配線部分に帯電制御剤が含まれている場合には、静電的相互作用、すなわち静電的な電気泳動効果により液滴中のスペーサ粒子が特定の位置に移動する。よって、スペーサ粒子の寄り集まりを制御するために、金属種や、帯電制御剤の種類を調整することが好ましい。また、配線に表面処理が施されている場合にも、静電的な電気泳動効果により液滴中のスペーサ粒子が特定の位置に移動する。この場合、配線等の表面処理に使用される化合物に対して、例えばイオン性の官能基を用いて化合物の官能基等を変えることが好ましい。なお、ソース配線やゲート配線等の配線や基板表面全体に、回路が破損しない程度の正又は負の電圧を印加し、スペーサ粒子の寄り集まりを制御することができる。
基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数(散布密度)は、50〜350個/mm2の範囲にあることが好ましい。
スペーサ粒子は、ブラックマットリックス等の非画素領域に対応する領域、もしくは配線等の非画素領域に対応する領域に配置されれば、配置される部分、および配置パターンは特に限定されない。しかしながら、スペーサ粒子が画素領域にはみ出すのを防止するために、例えば基板の非画素領域に対応する領域が格子状に形成されている場合には、格子状の非画素領域に対応する領域の縦横交差する格子点を狙ってスペーサ粒子分散液を吐出することがより好ましい。
1つの箇所におけるスペーサ粒子の配置個数は、配置箇所によって適宜設定され得るが、一般的には1〜12個程度であることが好ましい。平均配置個数として2〜6個程度であることが好ましい。その配置個数は、スペーサ粒子の粒子径およびスペーサ粒子分散液の濃度により適宜調整され得る。
スペーサ粒子分散液を基板に吐出する際には、インクジェット装置のヘッドのスキャンを1回で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。スペーサ粒子分散液の吐出に際しては、ヘッドの移動方向を例えば1回毎に交互に変えて往復させながら吐出してもよく、ヘッドを一定方向にのみ移動させながら吐出してもよい。
スペーサ粒子を基板に配置する方法としては、特開2002−015493号公報に記載のように、基板表面に垂線を引いたときに、この垂線対して所定の角度を有するようにヘッドを傾けて液滴を吐出し、さらにヘッドと基板との相対的な移動速度を制御する。このようにすることで、スペーサ粒子分散液の液滴の着弾径を小さくでき、非画素領域に対応する領域にスペーサ粒子を高精度に配置することができる。
(スペーサ粒子分散液の乾燥方法)
スペーサ粒子分散液を基板に吐出し、吐出されたスペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後、スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法について説明する。
スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後、スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、基板が載置されたステージを加熱する方法、基板に熱風を吹き付ける方法、遠赤外線等により基板を加熱する方法、基板を減圧乾燥する方法などが挙げられる。乾燥過程では、スペーサ粒子を液滴の着弾中心付近に寄せ集めるために、乾燥温度、乾燥時間、分散液の沸点、分散液の表面張力、分散液の配向膜に対する接触角、分散液中のスペーサ粒子濃度等を適当な条件に設定することが好ましい。
上記スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法として基板を減圧乾燥する方法が、基板に熱を与える必要がなく、基板や、基板上の配向膜、スペーサ粒子が加熱による損傷を受けないため好ましい。
乾燥過程でスペーサ粒子を液滴の着弾中心点付近に寄せ集めるためには、スペーサ粒子が基板表面を移動している間に液体が無くならないように、ある程度時間をかけて乾燥することが好ましい。すなわち、溶媒が急激に乾燥しない温度で乾燥することが好ましい。高温の溶媒が長時間配向膜と接触すると、配向膜を汚染して液晶表示装置としての表示画質を損なうことがあるため、低温下で乾燥することが好ましい。
室温で揮発しやすい溶媒を用いたり、溶媒が急激に揮発するような条件でスペーサ粒子分散液を使用すると、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥し易く吐出性が悪くなることがある。また、スペーサ粒子分散液を製造する際や、スペーサ粒子分散液を保管している際にスペーサ粒子分散液が乾燥し、スペーサ粒子が凝集することがある。
スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾したときの基板の表面温度は、スペーサ粒子分散液に含まれる最も低沸点の溶媒の沸点よりも20℃以上低い温度であることが好ましい。基板の表面温度が、最も低沸点の溶媒の沸点−20℃より高いと、最も低沸点の溶媒が急激に揮散して、スペーサ粒子が移動し難くなり、著しい場合は溶媒の急激な沸騰により、スペーサ粒子を含む液滴が基板表面を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下することがある。
スペーサ粒子分散液が基板表面に着弾した後に、基板の表面温度を徐々に上昇させながら、溶媒を乾燥させる。このとき、乾燥が完了するまでの基板の表面温度は90℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。乾燥が完了するまでの基板の表面温度が90℃を超えると、配向膜が汚染されて液晶表示装置の表示画質を低下することがある。なお、基板表面の液滴が消失した時点を、乾燥が完了したときとする。
スペーサ粒子分散液の乾燥が完了した後、基板に対するスペーサ粒子の固着性を高めたり、残留溶剤を除去するため、例えば120〜230℃程度の温度に基板をさらに加熱してもよい。
(液晶表示装置の組立)
スペーサ粒子が配置された第1の基板は、スペーサ粒子が配置されていない第2の基板と、スペーサ粒子を介して対向し合うように重ね合わせられる。第1,第2の基板は、例えば、外周縁近傍において周辺シール剤を用いて加熱圧着された後、第1,第2の基板間の空隙に液晶が充填されて液晶表示装置が作製される(真空注入法)。
あるいは、例えば第1の基板または第2の基板のいずれか一方の基板の外周縁近傍に、周辺シール剤を塗布し、周辺シール剤で囲まれた範囲内に液晶を滴下する。しかる後、他方の基板と貼り合わせて、シール剤が硬化されて液晶表示装置が作製される(液晶滴下工法)。
本発明では、第1の基板として、基板表面の非画素領域に対応する領域内に凸部が形成された基板を用いている液表表示装置が第1,第2の基板の間隔が異なる2つの領域を有し、少なくともスペーサ粒子が配置されている部分が、2つの領域のうち第1,第2の基板の間隔が狭い方の領域にある場合には、スペーサ粒子第1,第2の基板の間隔が規制され、液晶表示装置の液晶層の厚みを適度な範囲とすることができる。
近年、例えば非画素領域を構成するブラックマトリックスに用いられる遮光材料として、クロム、銅、チタン等の金属に替えて、アクリル樹脂等からなる樹脂が用いられてきている。樹脂からなるブラックマトリックスは、金属からなるブラックマトリックスよりも遮光性能に劣る。よって、ブラックマトリックスが樹脂からなる場合には、遮光性能を高めるために膜厚が大きくされる。本発明の液晶表示装置の製造方法では、ブラックマトリックスが樹脂により構成され、ブラックマトリックス部分における基板表面の凸部が高くされた場合に、凸部にスペーサ粒子を高精度に配置することができるため、凸部上に配置されたスペーサ粒子によって十分な液晶層の厚みと確保することができる。
以下実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(スペーサ粒子の調製)
ジビニルベンゼン15重量部と、イソオクチルアクリレート5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.3重量部とを、セパラブルフラスコ中で均一に混合した。次に、ポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールGL−03」、クラレ社製)の3%水溶液20重量部と、ドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部とを、セパラブルフラスコ中に投入し十分攪拌した。しかる後、イオン交換水140重量部をさらに添加した。この溶液を攪拌しながら窒素気流下、80℃で15時間反応させた。得られた粒子を熱水及びアセトンを用いて洗浄した後、分級操作を行い、平均粒子径が3、3.5、4または5.5μmであり、CV値が3.0%である4種のスペーサ粒子を得た。
(スペーサ粒子の表面修飾)
・スペーサ粒子SA
上記スペーサ粒子の調製により得られた平均粒子径が3、3.5、4または5.5μm、CV値が3.0%のスペーサ粒子5重量部を、ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部と、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部と、N−エチルアクリルアミド18重量部との混合物中に投入し、超音波機を用いて均一に分散させた。しかる後、反応系に窒素ガスを導入し、30℃で2時間撹拌を続けた。次に、1Nの硝酸水溶液で調製した0.1mol/Lの硝酸第2セリウムアンモニウム溶液10重量部を添加し、5時間反応させた。反応終了後、2μmのメンブランフィルタを用いて、スペーサ粒子と反応液とを濾別した。このスペーサ粒子をエタノール及びアセトンにて充分洗浄し、真空乾燥器にて減圧乾燥を行い、平均粒子径が3、3.5、4または5.5μmである4種のスペーサ粒子SAを得た。
・スペーサ粒子SB
上記スペーサ粒子の調製により得られた平均粒子径が3.5μm、CV値が3.0%のスペーサ粒子5重量部を、ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部と、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部と、メタクリル酸16重量部と、ラウリルアクリレート2重量部との混合物中に投入し、超音波機を用いて均一に分散させた。しかる後、上記スペーサ粒子SAと同様にして、平均粒子径が3.5μmであるスペーサ粒子SBを得た。
・スペーサ粒子SC
上記スペーサ粒子の調製により得られた平均粒子径が3.5μm、CV値が3.0%のスペーサ粒子5重量部を、ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部と、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部と、ポリエチレングリコールメタクリレート(分子量800)18重量部との混合中に投入し、超音波機を用いて均一に分散させた。しかる後、上記スペーサ粒子SAと同様にして、平均粒子径が3.5μmであるスペーサ粒子SCを得た。
(スペーサ粒子分散液の調製)
得られたスペーサ粒子を所定の粒子濃度になるように必要量をとり、下記表1〜3に示す組成の溶媒中にゆっくり添加し、超音波機を用いて十分撹拌し分散させた。しかる後、10μmの目開きのステンレスメッシュを用いて濾過し、凝集物を除去することによりスペーサ粒子分散液を得た。
得られたスペーサ粒子分散液の20℃における表面張力を、白金板を使用するウイルヘルミー法で測定した。また、表面張力を測定した結果を下記表1〜3に示した。
(基板の作製)
液晶テストパネル用の基板であるカラーフィルタ基板51と、段差62が設けられたTFTアレイモデル基板61とを用いた。
(カラーフィルタ基板)
図5に、ガラスからなる透明基板51Aの表面に、ブラックマトリックス52が設けられた状態を拡大して部分切欠平面図で示す。図6に、カラーフィルタ基板51を拡大して部分切欠正面断面図で示す。なお、図6では、図5に示すY−Y´部分おける断面構造を示している。
カラーフィルタ基板51は、以下のように作製した。
図5に示すように、ガラスからなる透明基板51A(300mm×360mm)の内表面に、公知の方法により金属クロムからなるブラックマトリックス52を設けた。ブラックマトリックス52は、幅40μm、厚み0.8μmとなるように、かつ縦間隔370μm、横間隔110μmの格子状となるように設けた。
図6に示すように、ブラックマトリックス52上およびその間に、赤,緑,青の3色からなる厚み1.5μmのカラーフィルタ53画素を、一定の厚みとなるように形成した。カラーフィルタ53の上に、ほぼ一定の厚みのオーバーコート層54及びITO透明電極55設けた。
ITO透明電極55上に、スピンコート法によりポリイミド樹脂溶液を塗布した。しかる後、ポリイミド樹脂溶液を150℃で乾燥し、230℃で1時間焼成し、硬化させてほぼ一定の厚みの配向膜56を形成した。カラーフィルタ基板51では、ブラックマトリックス52が形成されている部分において配向膜56が隆起して凸部56aが形成されており、その凸部56aの高さは0.8μm、凸部56aの幅は40μmであった。
上記配向膜56は、下記PI1、PI2またはPI3の3種類のいずれかの配向膜からなる。PI1、PI2またはPI3の配向膜を構成するために、下記ポリイミド樹脂溶液を用いた。形成された配向膜の表面張力(γ)は以下の通りであった。
・PI1:商品名「サンエバーSE130」,日産化学社製、表面張力(γ):46mN/m)
・PI2:商品名「サンエバーSE150」,日産化学社製、表面張力(γ):39mN/m)
・PI3:商品名「サンエバーSE1211」,日産化学社製、表面張力(γ):26mN/m)
(TFTアレイモデル基板)
図7に、ガラスからなる透明基板61Aの表面に、段差62が設けられた状態を拡大して部分切欠平面図で示す。図8に、TFTアレイモデル基板61を拡大して部分切欠正面断面図で示す。なお、図8では、図7に示すY−Y´部分おける断面構造を示している。
段差62が設けられたTFTアレイモデル基板61は、以下のように作製した。
図7に示すように、TFTアレイモデル基板は、ガラスからなる透明基板61A(300mm×360mm)の内表面に、公知の方法により銅からなる段差62を設けた。段差62は、上述したカラーフィルタ基板51のブラックマトリックス52に対向する位置において、幅40μm、高低差5nmとなるように設けた。また、段差62が縦横に交差する格子点おいて、その四角の一角に、一体的に構成された縦40μm、横20μmの段差62aを設けた。すなわち、TFTアレイモデル基板61では、段差62aが構成されている部分において、縦80μm、横60μmの大きさの段差62を設けた。
段差62上には、ほぼ一定の厚みのITO透明電極63を設けた。ITO透明電極63上には、上述したカラーフィルタ基板51と同様のポリイミド樹脂溶液を用いて、同様の方法により、ほぼ一定の厚みの配向膜64をさらに形成した。TFTアレイモデル基板61では、段差62が形成されている部分において配向膜64が隆起して凸部64aが形成されており、その凸部64aの高さは0.2μm、凸部64aの幅は段差62の幅と同じ幅である40μm若しくは60μmであった。
(インクジェット装置)
ノズルの口径が40μmであるヘッドを搭載したピエゾ方式のインクジェット装置を用意した。このヘッドのインク室の接液部を、ガラスセラミック材料により構成した。ノズルは、ノズル面がフッ素系の撥水加工が施されたものを用いた。
(スペーサ粒子の配置)
インクジェット装置のインク室にスペーサ粒子分散液を導入した後、スペーサ粒子分散液をカラーフィルタ基板51またはTFTアレイモデル基板61のいずれか一方の基板にスペーサ粒子を配置する工程に移行した。なお、インクジェット装置のノズルから吐出される初期のスペーサ粒子分散液0.5mLを捨てた後に、スペーサ粒子の配置を開始した。
先ず、ヒーターで45℃に加熱されたステージ上に、カラーフィルタ基板51またはTFTアレイモデル基板61を載せた。しかる後、上述したインクジェット装置のノズルから、カラーフィルタ基板51上のブラックマトリックス52部分の凸部56a上、もしくはTFTアレイモデル基板61の段差62部分の凸部64a上を狙って、スペーサ粒子分散液を吐出した。
カラーフィルタ基板51では、図5に丸印を付して示すB,Cのいずれかの箇所にスペーサ粒子を吐出した。吐出位置Cは、格子状のブラックマトリックス52の縦横が交差する格子点上に位置し、吐出位置Bは、縦横が交差する2つの格子点の縦方向の中間に位置する。
TFTアレイモデル基板61では、図7に丸印を付して示すA〜Cのいずれかの箇所にスペーサ粒子を吐出した。吐出位置Cは、格子状のブラックマトリックス52の縦横が交差する格子点上に位置し、吐出位置Bは、縦横が交差する2つの格子点の縦方向の中間に位置し、吐出位置Aは上述した段差52a部分上に位置する。
吐出の際のノズルの先端面と基板表面との間隔は0.5mmとした。インクジェット装置は、ダブルパルス方式とした。粘度15mPa・sを超えるスペーサ粒子分散液については、粘度が3〜15mPa・sの範囲となるように加熱しながら吐出した。吐出後、スペーサ粒子分散液の液滴の基板に対する初期接触角(θ)を接触角計により測定した。結果を表1〜3に示した。
スペーサ粒子分散液を吐出した後、カラーフィルタ基板51またはTFTアレイモデル基板61に着弾したスペーサ粒子分散液を乾燥させた。ステージ上の基板に吐出されたスペーサ粒子分散液が、完全に乾燥したことを目視で確認した。しかる後、残留している溶媒を除去し、150℃に加熱されたホットプレート上に基板を載置して15分間加熱し、スペーサ粒子を基板に固着させた。
(評価用液晶表示装置の作製)
いずれか一方の基板にスペーサ粒子が配置されたカラーフィルタ基板51と、TFTアレイモデル基板61とを、周辺シール剤を用いて貼り合わせた。貼り合わせた後、シール剤を150℃で1時間加熱し、硬化させてセルギャップがスペーサ粒子の粒子径となるように空セルを作製した。しかる後、カラーフィルタ基板51およびTFTアレイモデル基板61間に真空注入法により液晶を充填し、封口剤で注入口封止して液晶表示装置を作製した。
(実施例および比較例の評価)
下記の項目について評価を行った。
(スペーサ粒子散布密度)
スペーサ粒子を基板に固着させた後に、スペーサ粒子が配置されている部分において、1mm2あたりに散布されているスペーサ粒子の個数を観測し、散布密度とした。
(平均スペーサ粒子数)
1配置箇所あたりに凝集しているスペーサ粒子の個数の平均値を、1mm2の範囲内で計測し、平均スペーサ粒子数とした。
(スペーサ粒子配置精度)
液滴が乾燥した後のスペーサ粒子の配置状態を下記の基準で判定した。
○:スペーサ粒子の大部分が非画素領域に対応する領域にあった。
△:スペーサ粒子の一部が非画素領域に対応する領域からはみだしていた。
×:スペーサ粒子の多くが非画素領域に対応する領域からはみだしていた。
(表示画質)
液晶表示装置の表示画質を観察し、下記の基準で判定した。
○:表示領域中にスペーサ粒子が殆ど認められず、スペーサ粒子に起因する光抜けがなかった。
△:表示領域中にスペーサ粒子がわずかに認められ、スペーサ粒子に起因する光抜けがあった。
×:スペーサ粒子が認められ、スペーサ粒子に起因する光抜けがあった。
結果を下記表1〜3に示す。
実施例および比較例に用いた溶媒の沸点、表面張力、粘度、比重、および配向膜に対する各溶媒の後退接触角を下記表4,5に示す。
表1〜3に示すように、実施例の液晶表示装置では、スペーサ粒子は非画素領域に精度よく配置され、表示画質に優れていた。他方、比較例の液晶表示装置では、スペーサ粒子分散液が安定に吐出されないことがあった。また、非画素領域にまでスペーサ粒子が配置され、表示画質に劣っていた。