本発明では、インクジェット装置を用いて、スペーサ粒子が分散されているスペーサ粒子分散液が吐出されて、基板にスペーサ粒子が配置される。
(スペーサ粒子)
本発明に使用されるスペーサ粒子の材料は特に限定されず、例えば、シリカ粒子等の無機系粒子であっても、有機高分子等の有機系粒子であってもよい。中でも、有機系粒子は、液晶表示装置の基板上に形成された配向膜を傷つけない適度の硬度を有し、熱膨張や熱収縮による厚みの変化に追随しやすく、更にセル内部でのスペーサ粒子の移動が比較的少ないという長所を持つために好ましく使用される。
上記有機系粒子としては特に限定されないが、通常は、強度等が適切な範囲にあるので、単官能単量体と多官能単量体との共重合体が用いられる。この際、単官能単量体と多官能単量体との比率は特に限定されるものではなく、得られる有機高分子系粒子に要求される強度や硬度により適宜調整される。
上記単官能単量体としては、例えば、スチレン、αーメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン誘導体;塩化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。これら単官能単量体は単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等の2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能単量体は単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記単官能又は多官能単量体として、インクへの分散性を上げるために親水性基を有する単量体が用いられてもよい。親水性基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスホフォニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基が挙げられる。
このような親水性基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸、及び、それらのα−又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等のカルボキシル基を有する単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有する単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスフォニル基を有する単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレートやジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリロイル基を有するアミン類等のアミノ基を有する化合物;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基とエーテル基とをともに有する単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有する単量体等が挙げられる。
上記単量体を重合して粒子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等が挙げられ、いずれの方法が採られてもよい。
上記懸濁重合法は、得られる粒子の粒子径分布が比較的広く多分散の粒子が得られるため、スペーサ粒子として利用する場合には分級操作を行って、所望の粒子径や粒子径分布を有する多品種の粒子を得る際に好適に用いられる。一方、シード重合、分散重合は、分級工程を経ることなく単分散粒子が得られるので、特定の粒子径の粒子を大量に製造する際に好適に用いられる。
上記懸濁重合法とは、単量体及び重合開始剤よりなる単量体組成物を、目的とする粒子径となるよう貧溶媒中に分散し重合する方法である。懸濁重合に使用する分散媒は、通常、水に分散安定剤を加えたものが使用される。分散安定剤としては媒体中に可溶の高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。またノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。重合条件は上記重合開始剤や単量体の種類により異なるが、通常、重合温度は50〜80℃、重合時間は3〜24時間である。
上記シード重合法とは、ソープフリー重合や乳化重合にて合成された単分散の種粒子に、更に単量体を吸収させることにより、狙いの粒子径にまで膨らませる重合方法である。種粒子に用いられる有機単量体としては特に限定されず、上記の単量体が用いられるが、種粒子の組成は、シード重合時の相分離を抑えるために、シード重合時の単量体成分と親和性のある単量体であることが好ましく、粒子系分布の単分散性の点等からスチレン及びその誘導体等が好ましい。
上記種粒子の粒子径分布は、シード重合後の粒子径分布にも反映されるのでできるだけ単分散であることが好ましく、Cv値として5%以下であることが好ましい。上述したようにシード重合時には種粒子との相分離が起きやすいため、シード重合時に吸収させる単量体は、できるだけ種粒子組成と近い組成が好ましく、種粒子がスチレン系であれば芳香族系ジビニル単量体、アクリル系であればアクリル系多官能ビニル単量体を吸収させて重合させるのが好ましい。
また、シード重合法においては、必要に応じて分散安定剤を用いることもできる。分散安定剤としては、媒体中に可溶の高分子であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。また、ノニオン性又はイオン性の界面活性剤も適宜使用される。
上記シード重合法においては、種粒子1重量部に対して、単量体を20〜100重量部加えることが好ましい。
上記シード重合に使用する媒体としては特に限定されず、使用する単量体によって適宜決定されるべきであるが、一般的に好適な有機溶媒としては、アルコール類、セロソルブ類、ケトン類又は炭化水素を挙げることができ、更にこれらを単独、又は、これらと互いに相溶しあう他の有機溶剤、水等との混合溶媒として用いることができる。具体的には、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、シメチルスルホキシド、酢酸エチル、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、2−ブタノン等のケトン類等を挙げることができる。
上記分散重合法とは、単量体は溶解するが、生成したポリマーは溶解しない貧溶媒系で重合を行い、この系に高分子系分散安定剤を添加することにより生成ポリマーを粒子形状で析出させる方法である。
また、一般に架橋成分を分散重合により重合すると、粒子の凝集が起こりやすく、安定的に単分散架橋粒子を得ることが難しいが、条件を選定することにより、架橋成分を含んだ単量体を重合することが可能となる。
上記重合に際しては、重合開始剤が用いられ、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が好適に用いられる。なお、重合開始剤の使用量は通常、重合に際して用いられる単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましい。
本発明に使用されるスペーサ粒子の粒径は、液晶表示素子の種類により適宜選択可能なため特に限定されず、上記スペーサ粒子の粒径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。1μm未満であると、対向する基板同士が接触して液晶表示素子のスペーサとして充分機能しないことがあり、20μmを超えると、スペーサ粒子を配置すべき基板上の遮光領域等からはみ出しやすくなり、また、対向する基板間の距離が大きくなって近年の液晶表示素子の小型化等の要請に充分に応えられなくなる。
本発明で使用されるスペーサ粒子は、適正な液晶層の厚みを維持するためのギャップ材として用いられるため、一定の強度が必要とされる。粒子の圧縮強度を示す指標として、粒子の直径が10%変位した時の圧縮弾性率(10%K値)で表した場合、適正な液晶層の厚みを維持するためには、2000〜15000MPaが好適である。2000MPaより小さいと、表示素子を組立てる際のプレス圧により、スペーサ粒子が変形して適切なギャップが出にくい。15000MPaより大きいと表示素子に組み込んだ際に、基板上の配向膜を傷つけて表示異常が発生することがある。
上記スペーサ粒子の圧縮弾性率(10%K値)は、特表平6−503180号公報記載の方法に準拠して求められた値である。例えば微小圧縮試験器(PCT−200、島津製作所社製)を用い、ダイヤモンド製の直径50μmの円柱の平滑端面で、粒子を10%歪ませるための加重から求められる。
上記の方法により得られたスペーサ粒子は、表示素子のコントラスト向上のために着色されて用いられてもよい。着色された粒子としては、例えば、カーボンブラック、分散染料、酸性染料、塩基性染料、金属酸化物等により処理された粒子、また、粒子の表面に有機物の膜が形成され高温で分解又は炭化されて着色された粒子等が挙げられる。なお、粒子を形成する材質自体が色を有している場合には着色せずにそのまま用いられてもよい。また、スペーサ粒子には帯電可能な処理が施されていても良い。帯電可能な処理とは、スペーサ粒子が、スペーサ粒子分散液中でも何らかの電位を持つように処理することであり、この電位(電荷)は、ゼータ電位測定器等既存の方法によって測定できる。
帯電可能な処理を施す方法としては、例えば、スペーサ粒子中に荷電制御剤を含有させる方法、帯電しやすい単量体を含む単量体からスペーサ粒子を製造する方法、スペーサ粒子に帯電可能な表面処理をする方法等が挙げられる。
なお、このようにスペーサ粒子が帯電可能であると、スペーサ粒子分散液中でのスペーサ粒子の分散性や分散安定性が高められ、散布時に電気泳動効果で配線部(段差)部近傍にスペーサ粒子が寄り集まりやすくなる。
上記荷電制御剤を含有させる方法としては、スペーサ粒子を重合させる際に荷電制御剤を共存させて重合を行いスペーサ粒子中に含有させる方法、スペーサ粒子を重合する際に、スペーサ粒子を構成するモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を、スペーサ粒子を構成するモノマーと共重合させてスペーサ粒子中に含有させる方法、後述するスペーサ粒子の表面修飾の際に、表面修飾に用いられるモノマーと共重合可能な官能基を有する荷電制御剤を共重合させて表面修飾層に含有させる方法、表面修飾層又はスペーサ粒子の表面官能基と反する官能基を有する荷電粒子を反応させて表面に含有させる方法等が挙げられる。
上記荷電制御剤としては、特に限定されないが、例えば特開2002−148865号公報に記載の方法を用いることができる。具体的には、例えば、有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ系染料金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ヒドロキシルカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。
また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、非金属カルボン酸系化合物、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及び、これらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等が挙げられる)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類等が挙げられる。これら荷電制御剤は単独で用いられてもよく、2種類以上が組合せて用いられてもよい。
上記荷電制御剤を含有するスペーサ粒子の極性は、上記耐電制御剤の中から適切な荷電制御剤を適宜選択することにより設定され得る。すなわち、スペーサ粒子を周りの環境に対して正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
上記スペーサ粒子を製造する際、帯電しやすい単量体を含む単量体から適宜単量体を選択する方法としては、スペーサ粒子を製造する箇所で述べた単量体として、親水性官能基を有するものを組み合わせて用いる方法が挙げられる。これらの親水性官能基を有する単量体の中から適切な単量体を適宜選択することにより、スペーサ粒子を周りの環境に対して正に帯電させたり、負に帯電させたりすることができる。
また、スペーサ粒子には、基板との接着性を向上させるための表面処理を行うことが好ましい。スペーサ粒子の表面修飾をする方法としては、例えば、特開平1−247154号公報に開示されているようにスペーサ粒子表面に樹脂を析出させて修飾する方法、特開平9−113915号公報や特開平7−300587号公報に開示されているようにスペーサ粒子表面の官能基と反応する化合物を作用させて修飾する方法、特開平11−223821号公報、特願2002−102848号に記載のようにスペーサ粒子表面でグラフト重合を行って表面修飾を行う方法等が挙げられるが、これらを行う際、スペーサ粒子が帯電処理されるような方法が適宜選択される。
上記スペーサ粒子の表面修飾方法としては、スペーサ粒子表面に化学的に結合した表面層を形成する方法が、液晶表示装置のセル中で表面層の剥離や液晶への溶出という問題が少ないので好ましい。なかでも特開平11−223821号公報に記載の表面に還元性基を有する粒子に酸化剤を反応させ、粒子表面にラジカルを発生させて表面にグラフト重合を行う方法が、表面層の密度が高くでき、充分な厚みの表面層を形成できるために好ましい。この方法において帯電処理するには、グラフト重合を行う際、単量体として親水性官能基を有する単量体が組み合わせて用いられる。
また、このように表面処理を施すことにより、スペーサ粒子の基板に対する接着性が高まったり、使用する単量体を適宜選択すれば、液晶表示体での液晶の配向が乱されなくなるという効果もある。従って、帯電処理の有無にかかわらず、スペーサ粒子に表面修飾が行われてもよい。
上記スペーサ粒子は、グラフト処理により表面修飾されていることが好ましい。具体的には、上記スペーサ粒子の表面に親水性官能基及び/又は炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体をラジカル重合してなるビニル系熱可塑性樹脂がグラフト重合により結合されていることが好ましい。
上記親水性官能基としては特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基等が挙げられるが、中でも、液晶との相互作用が少ないことから、水酸基、カルボキシル基及びエーテル基が好適に用いられる。これらの親水性官能基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記親水性官能基を有するビニル系単量体としては特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそれらのα−アルキル誘導体又はβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;上記不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等のカルボキシル基を有するビニル系単量体;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有するビニル系単量体;ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスホニル基を有するビニル系単量体;ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有するビニル系単量体;(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基及びエーテル基を有するビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有するビニル系単量体等が挙げられる。これらの親水性官能基を有するビニル系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記炭素数3〜22のアルキル基としては特に限定されず、例えば、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ノナデシル基、エイコデシル基、ヘニコシル基、ドコシル基、イソボルニル基等が挙げられる。これらの炭素数3〜22のアルキル基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸と上記炭素数3〜22のアルキル基とからなるエステル化合物;ビニルアルコールと上記炭素数3〜22のアルキル基とからなるエステル化合物;ビニル基と上記炭素数3〜22のアルキル基とからなるビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらの炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記親水性官能基を有するビニル系単量体及び炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
また、上記ビニル系熱可塑性樹脂を構成するビニル系単量体が、上記親水性官能基を有するビニル系単量体30〜80重量%及び上記炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体20〜60重量%を含有してなることが好ましい。
ビニル系単量体中における親水性官能基を有するビニル系単量体の含有量が30重量%未満であると、得られるスペーサ粒子を含有するスペーサ粒子分散媒体中に充分に単粒子化した状態で分散することが難しくなって、凝集粒子が発生しやすくなり、インクジェット装置での安定的な吐出が困難となったり、セルギャップを正確に形成できなくなることがあり、逆にビニル系単量体中における親水性官能基を有するビニル系単量体の含有量が80重量%を超えると、液晶表示装置のセルを形成した際に、表示画素中にはみ出したスペーサ粒子の表面において液晶の異常配向を来たしやすくなって、表示品質の低下につながることがある。
また、ビニル系単量体中における炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体の含有量が20重量%未満であると、液晶表示装置のセルを形成した際に、表示画素中にはみ出したスペーサの表面において液晶の異常配向を来たしやすくなって、表示品質の低下につながることがあり、逆にビニル系単量体中における炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体の含有量が60重量%を超えると、得られるスペーサ粒子の媒体中への分散安定性が低下することがある。
なお、上記スペーサ粒子の表面に上記親水性官能基及び/又は炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体をラジカル重合してなるビニル系熱可塑性樹脂をグラフト重合により結合させてスペーサ粒子の表面被覆層の厚みを厚くする等の目的で、複数の異なった組成のビニル系熱可塑性樹脂層を積層する場合、上記親水性官能基を有するビニル系単量体30〜80重量%及び炭素数3〜22のアルキル基を有するビニル系単量体20〜60重量%を含有してなる好ましいビニル系単量体の使用は、表面被覆層の最外層となるビニル系熱可塑性樹脂についてのみ考慮すれば良い。これは、スペーサ粒子分散液やインクジェットインクに用いられる媒体に対する分散性や液晶異常配向の抑制等の機能はスペーサの表面近傍の状態によって発現するからである。
このような表面処理を行うことにより、パネル作製後の衝撃テスト等でのスペーサ移動がなくなる。
(スペーサ粒子分散液)
本発明において、スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子を分散させうる媒体中に、上述したスペーサ粒子が分散されている。本発明に係る製造方法で用いられるスペーサ粒子分散液、及び、本発明のスペーサ粒子分散液の表面張力は、33mN/m以上、接液部の表面張力+2mN/m以下であれば特に限定されない。基板上に吐出された分散液滴の表面張力が高いと、スペーサ粒子を乾燥過程で移動させるのに適している。
スペーサ粒子分散液の媒体としては、例えば、ヘッドから吐出される温度で液体である各種溶媒が用いられる。なかでも水溶性又は親水性の溶媒が好ましい。なお、一部のインクジェット装置のヘッドは水系媒体用にできているため、これらのヘッドを使用する際は、疎水性の強い溶媒は、ヘッドを構成する部材を溶媒が侵したり、部材を接着する接着剤の一部を溶かすことがあるので好ましくない。
上記水溶性又は親水性の溶媒としては、水の他、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコールの多量体;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のプロピレングリコールの多量体;グリコール類のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノイソプロピルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等の低級モノアルキルエーテル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル等の低級ジアルキルエーテル類;モノアセテート、ジアセテート等のアルキルエステル類、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール類、ジオール類のエーテル誘導体、ジオール類のアセテート誘導体、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類又はそのエーテル誘導体、アセテート誘導体、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、スルフォラン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、α−テルピネオール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビス−β−ヒドロキシエチルスルフォン、ビス−β−ヒドロキシエチルウレア、N,N−ジエチルエタノールアミン、アビエチノール、ジアセトンアルコール、尿素等が挙げられる。
本発明では上述した溶媒を組み合わせて、スペーサ粒子分散液の表面張力を33mN/m以上とする。スペーサ粒子分散液の表面張力が33mN/mより低いと、基板上に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴径が大きくなるため好ましくない。
スペーサ粒子分散液の表面張力が上記接液部の表面張力+2mN/mより大きいと、ヘッド内のインク室壁面とスペーサ粒子分散液とのなじみが悪くなり、例えばインク室内に気泡が残存する等の問題が生じ、スペーサ粒子分散液が吐出されないノズルが発生する場合がある。
スペーサ粒子分散液の表面張力を33mN/m以上とする方法としては、スペーサ粒子分散液の媒体として、沸点が100℃未満の溶媒と、沸点が100℃以上の溶媒とを含有させることが好ましい。更に好ましくは、沸点が100℃未満の溶媒としては、沸点が70℃以上100℃未満の有機溶媒である。
なお、本発明中でいう沸点とは1気圧の条件下での沸点をいう。
上記沸点が100℃未満の溶媒としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール等の低級モノアルコール類、アセトン等が好ましく使用される。
スペーサ粒子分散液を散布して溶媒を乾燥させる際に、媒体が高温になると配向膜を汚染して液晶表示装置の表示画質を損なうため、乾燥温度をあまり高くできない。このため、上記のような100℃未満の溶剤を使用することにより、乾燥温度を低くできるので配向膜を汚染することがない。
スペーサ粒子を除くスペーサ粒子分散液100重量%に対し、沸点が100℃未満の溶媒は、2〜15重量%の範囲で含まれていることが好ましい。沸点が100℃未満の溶媒が2重量%未満であると、本発明で適用される比較的低い乾燥温度における分散液としての乾燥速度が遅くなり、生産効率が低下するので好ましくない。また、沸点が100℃未満の溶媒が15重量%を超えると、スペーサ粒子分散液の表面張力が低くなりすぎ、基板に着弾した際に液滴が広くなりすぎスペーサが集まりにくくなったり、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくインクジェット吐出性を損ねることがある。更に、スペーサ粒子分散液の製造時やタンクで乾燥しやすく、その結果凝集粒子の発生する可能性が高くなることがある。
また、上記沸点が100℃未満の溶媒は、20℃における表面張力が38mN/m以下、更に好ましくは25mN/m以下であることが好ましい。溶媒の表面張力が38mN/mより大きいと、インクジェット装置による吐出性が悪くなることがある。なお、沸点が100℃以上の溶媒の20℃における表面張力は、38mN/m以上であることが好ましい。
スペーサ粒子分散液に、沸点100℃未満で表面張力が38mN/m以下の溶媒が含まれていることにより、後述するインクジェット装置にスペーサ粒子分散液を導入しやすくなり、吐出する際には吐出性を向上できる。
なお、上述したように、スペーサ粒子分散液には、上記沸点が100℃未満の溶媒と、100℃以上の溶媒とを含有させることが好ましい。沸点が100℃以上の溶媒は、水と沸点が150℃以上の溶媒との混合物であることが好ましく、水と沸点が150℃以上250℃以下の溶媒との混合物であることが更に好ましい。より好ましい上限は200℃である。
本発明では、沸点が150℃以上、250℃以下で表面張力が38mN/m以上の溶媒が混合されることにより、後退接触角を5度以上とすることが容易になる。すなわち、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾後は、沸点100℃未満の表面張力の低い溶媒が先に揮散し、残された分散液の表面張力が高くなり、着弾地点中心に向かってのスペーサ粒子の移動が起こりやすくなるため好ましい。
逆に、沸点が150℃以上、250℃以下の溶媒の表面張力が38mN/m未満であると、スペーサ粒子分散液の液滴が基板上に着弾後は、沸点100℃未満の表面張力の低い溶媒が先に揮散するので、残された分散液の表面張力が初期より低くなる。よって、着弾液滴径が小さくならず、着弾液滴径が初期より拡がり易くなり、着弾地点中心に向かってスペーサ粒子が移動し難くなる。
上記沸点が150℃以上250℃以下の溶媒としては、例えば、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール等の低級アルコールエーテル類が挙げられる。このような溶媒は、スペーサ粒子分散液がインクジェット装置のノズル付近で過剰に乾燥し、吐出精度が低下するのを防止する。更に、スペーサ粒子分散液の製造時やタンクで乾燥するため、凝集粒子の発生が抑制される。
スペーサ粒子分散液の媒体中における沸点が150℃以上、250℃以下の溶媒の比率は、0.1〜95重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜90重量%である。0.1重量%未満では上記のような分散液の乾燥による吐出精度低下や凝集粒子の発生が起こりやすくなるため好ましくない。95重量%を超えたり、沸点が250℃を超えると、乾燥時間が著しくかかり効率が低下するばかりでなく、配向膜の汚染による液晶表示装置の表示画質の低下が起こりやすくなる。
また、スペーサ粒子分散液としては、吐出される基板に対する後退接触角(θr)が5度以上であることが好ましい。上記後退接触角が5度以上あれば、基板に着弾したスペーサ粒子分散液の液滴が乾燥し、その中心に向かって縮小していくとともに、その液滴中に1個以上含まれるスペーサ粒子がその液滴中心に寄り集まることが可能となる。更に、そこに荷電インクが吐出されると静電的に作用する力による荷電インクの着弾点へのスペーサ粒子の移動がより起こりやすくなり、スペーサ粒子の配置精度がより向上する。
上記後退接触角(θr)が5度未満であると、基板上で液滴の着弾した箇所の中心(着弾中心)を中心として液滴が乾燥し、その液滴径が縮小するとともに、スペーサ粒子がその中心に集まり難くなる。
なお、ここで後退接触角とは、基板上に置かれたスペーサ粒子分散液の液滴が、基板上に置かれてから乾燥するまでの過程で、基板上に最初に置かれた際の着弾径より小さくなりだした時(液滴が縮みだした時)に示す接触角、又は、液滴の揮発成分の内80〜95重量%が揮発した際に示す接触角をいう。
上記後退接触角が5度以上となるようにする方法としては、上述したスペーサ粒子分散液の分散媒の組成を調整する方法、又は、基板の表面を調整する方法が挙げられる。
スペーサ粒子分散液の分散媒の組成を調整するには、後退接触角が5度以上の媒体を単独で用いてもよいし、又は、2種以上の媒体を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いると、スペーサ粒子の分散性、スペーサ粒子分散液の作業性、乾燥速度等の調整が容易なので好ましい。
スペーサ粒子分散液として2種以上の溶媒が混合して用いられる場合には、混合される溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の後退接触角(θr)が5度以上となるように混合することが好ましい。最も沸点の高い溶媒の後退接触角(θr)が5度未満であると、乾燥後期で液滴径が大きくなり(基板上で液滴が濡れ拡がり)、スペーサ粒子が基板上で着弾中心に集まり難くなる。
なお、本発明に至る過程において、後退接触角は、いわゆる接触角(液滴を基板に置いた際の初期接触角で通常はこれを接触角と呼ぶことがほとんどである)に比べ小さくなる傾向があることがわかった。これは、初期の接触角は、スペーサ粒子分散液を構成する溶剤に接触していない基板表面上での液滴の基板に対する接触角であるのに対し、後退接触角はスペーサ粒子分散液を構成する溶剤に接触した後の基板表面上での液滴の基板に対する接触角であるためと考えられる。すなわち、後退接触角が初期接触角に対して著しく低い場合は、それらの溶剤によって配向膜が損傷を受けていることを示しており、これらの溶剤を使用することが、配向膜汚染に対して、好ましくないこともわかった。
また、スペーサ粒子分散液は、基板面との初期接触角θが、10〜110度になるように調整されることが好ましい。スペーサ粒子分散液と基板面との初期接触角が10度未満の場合、基板上に吐出されたスペーサ粒子分散液液滴が、基板上に濡れ拡がった状態となりスペーサ粒子の配置間隔を狭くできないことがあり、110度より大きいと、少しの振動で液滴が基板上を動き回りやすく、結果として配置精度が悪化したり、スペーサ粒子と基板との密着性が悪くなるという問題が発生する。
本発明のスペーサ粒子分散液の吐出時の粘度は、好ましくは、0.5〜15mPa・sの範囲であり、更に好ましくは5〜10mPa・sの範囲である。吐出時の粘度が、15mPa・sより高いとインクジェット装置で吐出できないことがあり、0.5mPa・sより低いと、吐出できても吐出量をコントロールすることが困難になるなど安定的に吐出できなくなることがある。なお、スペーサ粒子分散液を吐出する際に、インクジェット装置のヘッド温度をペルチェ素子や冷媒等により冷却したり、ヒーター等で加温したりして、スペーサ粒子分散液の吐出時の液温を−5℃から50℃の間に調整してもよい。
スペーサ粒子分散液中のスペーサ粒子の固形分濃度は、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、更に好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。0.01重量%未満では吐出された液滴中にスペーサ粒子を含まない確率が高くなるため好ましくない。また、10重量%を超えるとインクジェット装置のノズルが閉塞することがあり、着弾した分散液滴中に含まれるスペーサ粒子の数が多くなりすぎて、乾燥過程でスペーサ粒子の移動が起こりにくくなるので好ましくない。
また、スペーサ粒子分散液は、スペーサ粒子が単粒子状に分散されていることが好ましい。分散液中に凝集物が存在すると、吐出精度が低下するばかりでなく、著しい場合はインクジェット装置のノズルに閉塞を起こす場合があるので好ましくない。
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、スペーサ粒子分散液中に接着性を付与するための接着成分、スペーサ粒子の分散を改良したり、表面張力や粘度等の物理特性を制御して吐出精度を改良したり、スペーサ粒子の移動性を改良する目的で各種の界面活性剤、粘性調整剤などが添加されてもよい。
(インクジェット装置)
次に、スペーサ粒子分散液を基板上に吐出するのに用いられるインクジェット装置について説明する。
本発明におけるインクジェット装置では、インクジェット装置のヘッドのスペーサ粒子分散液を収納しているインク室の接液部は、表面張力が31mN/m以上の親水性の材料で構成されている。なお、接液部が薬液等により親水化処理されて、表面張力が31mN/m以上の親水性の材料とされていてもよい。また、本発明のスペーサ粒子分散液においては、上述したスペーサ粒子分散液の表面張力が、接液部の表面張力+2mN以下となるように構成されれば、接液部の表面張力は特に限定されない。
本発明では、スペーサ粒子分散液の表面張力が、接液部の表面張力+2mN以下となるように構成されれば、吐出しやすいことが分かった。
本発明では、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出させるサーマル方式等の通常の吐出方法によるインクジェット装置が用いられる。その中でも、スペーサ粒子分散液等吐出物に対して熱的な影響の少ないピエゾ方式が好適に用いられる。
本発明に係る製造方法では、インク室の接液部が、表面張力が31mN/m以上親水性の材料で構成されている。その材料として、親水性ポリイミド等の親水性の有機材料を用いたり、通常のインク室の接液部の材料からなるヘッドに親水化処理剤で処理を行ったり(接液部の材料により酸化処理や親水性有機薄膜のコーティング処理を行ったり)することもできるが、耐久性の点で無機材料が用いられる。
通常のヘッドではこの部分に電圧印加部品との絶縁等のために樹脂等が用いられているが、このような表面張力が31mN/mより低い材料では、スペーサ粒子分散液をヘッドに導入する際、スペーサ粒子分散液とのなじみが悪いので気泡が残存しやすく、気泡が残存すると気泡が残存したノズルは吐出できないといった問題が発生するので好ましくない。
インクジェット装置のヘッドのインク室の接液部は、より好ましくは、表面張力が40mN/m以上親水性の材料で構成される。表面張力が40mN/m以上であると、より一層未吐出ノズルの発生が抑制され、更には吐出状態も安定する。表面張力が40mN/m以上の親水性の材料としては、セラミックスやガラス、腐食性が少ないステンレス等の金属材料が挙げられる。
また、上記インクジェット装置のノズル口径はスペーサ粒子径に対して5倍以上が好ましい。5倍未満であると粒子径に比較しノズル径が小さすぎて吐出精度が低下したり、著しい場合はノズルが閉塞し吐出ができなくなるので好ましくない。更に好ましくは7倍以上である。
吐出精度が低下する理由は、以下のように考えられる。ピエゾ方式ではピエゾ素子の振動によりピエゾ素子に近接したインク室に、インクを吸引、又はインク室からインクをノズルの先端を通過させて吐出させている。液滴の吐出法として、吐出の直前にノズル先端のメニスカス(インクと気体との界面)を引き込んでから、液を押し出す引き打ち法とメニスカスが待機停止している位置から直接液を押し出す押し打ち法があるが、一般のインクジェット装置においては前者の引き打ち法が主流であり、これの特徴として小さな液滴が吐出できる。本発明のスペーサ粒子分散液の吐出においては、ノズルの径がある程度大きく、かつ、小液滴の吐出が要求されるため、この引き打ち法が有効である。
しかしながら、引き打ち法の場合吐出直前にメニスカスを引き込むため、例えばノズル口径が粒子径の5倍未満のようなノズル径が小さい場合、図1(a)に示されているように、引き込んだメニスカス2近傍にスペーサ粒子1があるとメニスカス2が軸対称に引き込まれない。よって、引き込みの後の押し出しの際、スペーサ粒子分散液3の液滴は直進せず曲がってしまい、吐出精度が低下すると考えられる。例えばノズル口径が粒子径の7倍以上のようなノズル径が大きい場合、図2(b)に示されているように、引き込んだメニスカス2近傍にスペーサ粒子1があっても、スペーサ粒子1の影響を受けない。よって、メニスカス2は軸対称に引き込まれ、引き込みの後の押し出しの際、スペーサ粒子分散液3の液滴は直進し、吐出精度が良くなると考えられる。しかしながら、吐出の際の液滴の曲がりをなくすために、不必要にノズル径を大きくすると、吐出される液滴が大きくなり着弾径も大きくなるので、荷電インクやスペーサ粒子1を配置する精度が粗くなり好ましくない。
ノズルから吐出される液滴量としては、スペーサ粒子分散液の場合、10〜80pLの範囲が好ましい。液滴量を制御する方法としては、ノズルの口径を最適化する方法やインクジェットヘッドを制御する電気信号を最適化する方法がある。後者はピエゾ方式のインクジェット装置を用いた時に特に重要である。
インクジェット装置において、インクジェットヘッドには、上述した様なノズルが、複数個、一定の配置方式により設けられている。例えば、ヘッドの移動方向に対して直交する方向に等間隔で64個や128個設けられている。なお、これらが2列等複数列設けられている場合もある。
ノズルの間隔は、ピエゾ素子等の構造やノズル径等の制約を受ける。従って、スペーサ粒子分散液を上記のノズルが配置されている間隔以外の間隔で基板に吐出する場合には、その吐出間隔それぞれにヘッドを準備するのは難しい。よって、ヘッドの間隔より小さい場合は、通常はヘッドのスキャン方向に直角に配置されているヘッドを基板と平行を保ったまま基板と平行な面内で傾けてあるいは回転させて吐出する。ヘッドの間隔より大きい場合は、全てのノズルで吐出するのではなく一定のノズルのみで吐出したり、加えてヘッドを傾けるなどして吐出する。
また、生産性を上げる等のために、この様なヘッドを複数個、インクジェット装置に取り付けることも可能であるが、取り付ける数を増やすと制御の点で複雑になるので注意を要する。
図7に、本発明で用いられるインクジェット装置のヘッドの一例を模式図で示す。図7に示されているように、ヘッド100は、吸引等によって予めインクが充填されるインク室101、及びインク室101からインクが送り込まれるインク室102を備えている。ヘッド100には、インク室102から吐出面103に至るノズル孔104が形成されている。吐出面103は、インクによる汚染を防止するため、予め撥水処理がされている。ヘッド100には、インクの粘度を調整するための温度制御手段105が設けられている。ヘッド100は、インク室101からインク室102にインクを送り込むように機能し、更にインクをノズル孔104から吐出するように機能するピエゾ素子106を備えている。
ヘッド100では、上記温度制御手段105が設けられているため、粘度が高すぎる場合にはヒーターによりインクを加熱してインクの粘度を低下させることができ、粘度が低すぎる場合には、ペルチェによりインクを冷却してインクの粘度を上昇させることが可能とされている。
(液晶表示装置用の基板)
本発明に用いられる液晶表示装置用の第1、第2の基板としては、ガラスや樹脂等、通常液晶表示装置のパネル基板として使用されるものを用いることができる。また、一方の基板としては、画素領域にカラーフィルタが設けられた基板を用いることができる。この場合、画素領域は、実質的にほとんど光を通さないクロム等の金属やカーボンブラック等が分散された樹脂等のブラックマトリックスで画されている。このブラックマトリックスが、非画素領域を構成することになる。
(スペーサ粒子分散液の吐出とスペーサ粒子の配置方法)
本発明では、インクジェット装置を用いて、第1の基板又は第2の基板の表面に、スペーサ粒子分散液が吐出されて、非画素領域に対応する特定の位置にスペーサ粒子が配置される。
この際、基板上、特に、スペーサ粒子分散液の液滴が吐出され着弾する箇所は、スペーサ粒子分散液の後退接触角(θr)が5度以上となるように調整されるか、又は、スペーサ粒子分散液が1種以上の溶剤からなる混合物である場合、その溶剤の中で最も沸点の高い溶剤の後退接触角(θr)が5度以上となるように調整されることが好ましい。荷電インクの場合は、上記のように後退接触角が5度以上になるように調整する必要はない。但し、後退接触角が5度以上に調整されていても何ら問題はない。
上記後退接触角を5度以上する方法としては、上述したスペーサ粒子分散液の溶媒を選ぶ方法、基板の表面を低エネルギー表面とする方法が挙げられる。
上記基板の表面を低エネルギー表面とする方法としては、フッ素膜やシリコーン膜等の低エネルギー表面を有する樹脂を塗設する方法でもよいが、該基板の表面には液晶分子の配向を規制する必要があるため配向膜と呼ばれる樹脂薄膜(通常は0.1μm以下)を設ける方法が一般に行われる。これらの配向膜には通常ポリイミド樹脂膜が用いられる。ポリイミド樹脂膜は、溶剤に可溶なポリアミック酸を塗設後熱重合させたり、可溶性ポリイミド樹脂を塗設後乾燥させることにより得られる。これらのポリイミド樹脂としては、長鎖の側鎖、主鎖を有するものが、低エネルギー表面を得るのにより好ましい。上記配向膜は、液晶の配向を制御するため、塗設後、表面がラビング処理される場合がある。なお、上述のスペーサ粒子分散液の媒体はこの配向膜中に浸透したり溶解したりして配向膜汚染性が無いようなものを選ぶ必要がある。
なお、本発明においては、スペーサ粒子分散液が吐出される第1の基板又は第2の基板には、非画素領域に対応する領域中で、低エネルギー表面を有する箇所があり、着弾後の液滴が、低エネルギー表面を有する箇所に存在することになるように、スペーサ粒子分散液の液滴を着弾させる。ここで、非画素領域に対応する領域とは、非画素領域(カラーフィルタ基板であれば上述のブラックマトリックス)、あるいは、もう一方の基板(TFT液晶パネルであればTFTアレイ基板)上で、その基板を非画素領域を有する基板と重ね合わせた際、その画素領域を有する領域に対応する領域(TFTアレイ基板であれば配線部等)のいずれかを指す。
低エネルギー表面を有する箇所の表面エネルギーは45mN/m以下である事が好ましく、より好ましくは40mN/m以下である。45mN/mを超えると、インクジェット装置で吐出できる程度の表面張力を有するスペーサ粒子分散液を使用する限り、その液滴が基板上で濡れ拡がってしまいスペーサ粒子が非画素領域からはみ出してしまうことになる。
配向膜を塗るなどして得られる低エネルギー表面は、スペーサ粒子が着弾する箇所だけでも良いし、基板全面でも良い。パターニングなどの工程を考えると通常は全面が低エネルギー表面とされる。
また、本発明において、スペーサ粒子分散液が吐出される第1の基板又は第2の基板には、非画素領域に対応する領域中で、低エネルギー表面を有する箇所があり、着弾後の液滴が、低エネルギー表面を有する箇所に存在するようにスペーサ粒子分散液の液滴を着弾させているが、そこには、周囲と段差を有する箇所が含まれてもよい。また、段差を有する箇所のみに荷電インクが吐出乾燥させられているとなお好ましい。
なお、ここでいう段差とは、基板上に設けられた配線等によって生じる非意図的な凹凸(周囲との高低差)、あるいは、本発明のようにスペーサ粒子を集めるために意図的に設けられた凹凸をいい、凸凹表面下の構造は問わない。従ってここでいう段差は、表面凹凸形状における凹部又は凸部と平坦部(基準面)との段差をいう。
具体的には、例えば、TFT液晶パネルでのアレイ基板では、図2(a)〜(c)に示されているようなゲート電極やソース電極による段差(0.2μm程度)、図2(g)に示されているようなアレイによる段差(1.0μm程度)等が挙げられる。更に、カラーフィルタ基板では。図2(d)〜(f)、(h)に示されているようなブラックマトリックス上での画色カラーフィルタ間の凹部段差(1.0μm程度)等が挙げられる。
本発明では、スペーサ粒子径をD(μm)、段差をB(μm)とすると、段差は0.01μm<|B|<0.95Dの関係があるような段差であることが好ましい。0.01μmより小さいと、段差周辺にスペーサ粒子を集めることが困難になることがあり、0.95Dを超えるとスペーサ粒子による基板のギャップ調整効果が得にくくなることがある。なお、段差の作用については、段差が有る場合、乾燥の最終段階で液滴乾燥中心が段差部に擬似的に固定されるので、着弾したスペーサ粒子分散液液滴が乾燥した後、スペーサ粒子を非画素領域に対応する領域中にある段差周辺のごく限られた位置に集めることができると説明される。
この場合、図3に示されているように、スペーサ粒子11が乾燥後、最終的に残留する位置は、凸部ならば角で、凹部であればそのくぼみの中であることが多い。
また、段差の作用に関しては、配線等の段差部分又は配向膜等の薄膜を挟んでその近傍に金属があり、スペーサ粒子に表面修飾がなされていたり、帯電制御剤が含有されている場合、静電的相互作用いわゆる静電的な「電気泳動」効果により液滴中で粒子がその部分に移動、吸着されていくとも考えられる。この場合、金属種や、例えばイオン性の官能基を使用する等して配線等の表面処理に使用される化合物の官能基等を変えたり、帯電制御剤の種類を調整しながら加えたり、あるいは、ソース配線やゲート配線等の配線や基板全面に回路が破損しない程度の正又は負の電圧を印加したりする。このようにすると、スペーサ粒子の寄り集まりを制御することができる。
本発明では、インクジェット方式で上述した基板の該非画素領域に対応する特定の位置を含むような位置に、スペーサ粒子分散液を吐出する。
本発明において、スペーサ粒子分散液は下記式(1)以上の間隔をもって基板に対して吐出することが好ましい。なお、この間隔は、着弾したスペーサ粒子分散液の液滴が乾燥しない間に次の液滴が吐出される場合の、それら液滴間の最低間隔である。
上記式(1)中、Dはスペーサ粒子の粒子径(μm)を表し、θはスペーサ粒子分散液と基板面との初期接触角を表す。
上記式(1)よりも小さな間隔で吐出しようとすると、液滴径が大きいままなので着弾径も大きくなり液滴の合着が起き、乾燥過程でスペーサ粒子の凝集方向が一カ所に向かって起こらなくなる。結果として、乾燥後のスペーサ粒子の配置精度が悪くなる問題が発生する。また、吐出液滴量を小さくしようとしてノズル径を小さくすると、相対的にスペーサ粒子径がノズル径に対して大きくなるため、先述したようにインクジェットヘッドノズルより安定的に、例えば常に同一方向に直線的にスペーサ粒子を吐出できず、飛行曲がりにより着弾位置精度が低下する。また、スペーサ粒子によってノズルが閉塞する場合がある。なお、図9は、上記方法によりスペーサ粒子分散液を基板に吐出し、後述する乾燥を経て配置する様子を示す模式図である。
ただし、ある一方向のみ液滴を重ねて配置することは、表面状態次第では可能である。すなわち、好ましくは接触角や後退接触角があまり高くない基板表面上では、液滴が、円状に合着していくのではなくその方向のみにしか合着せず、棒状に合着するので、乾燥後、その方向のみにスペーサを、線状あるいは破線状に配置することが可能となる。図10は、このような方法によりスペーサ粒子分散液を基板に吐出し、後述する乾燥を経て配置する様子を示す模式図である。
上記式(1)のようにして吐出されて基板上に配置されるスペーサ粒子の配置個数(散布密度)は、通常50〜350個/mm2であることが好ましい。この粒子密度を満たす範囲であれば、ブラックマットリックス等の非画素領域や配線等の非画素領域に対応する領域のどのような部分にどのようなパターンで配置しても構わない。しかしながら、表示部(画素領域)へのはみ出しを防止するため、格子状の遮光領域(非画素領域)からなるカラーフィルタに対しては、一方の基板上のその格子状の遮光領域の格子点に対応する箇所を狙って配置することがより好ましい。
なお、1カ所の配置位置におけるスペーサ粒子の個数は、配置箇所毎に違うが、一般的には0〜12個程度であって、平均個数として、2〜6個程度である。その平均個数は、スペーサ粒子の粒子径及びスペーサ粒子分散液の濃度により調整される。
また、このように、スペーサ粒子分散液を吐出し液滴を基板上に着弾させるには、インクジェットヘッドのスキャンを1回で行うことも、複数回に分けて行うこともできる。特に、スペーサ粒子を配置しようとする間隔が上記(1)式よりも狭い場合は、その間隔の整数倍の間隔で吐出し、いったん乾燥させてから、その間隔分だけずらして、再度吐出するなどしてもよい。移動(スキャン)方向に関しても、1回毎に交互に変えて(往復吐出)吐出することもでき、片方向に移動時のみ吐出(単方向吐出)することもできる。
更に、このような配置方法として、特願2000−194956号にあるように、ヘッドを基板面に対する垂線と角度を持つように傾け、液滴の吐出方向を変え(通常は基板面に対する垂線と平行)、更にヘッドと基板との相対速度をコントロールする。このようにすることで、着弾する液滴径を小さくし、より一層非画素領域又はそれに対応する領域中にスペーサ粒子を配置しやすくすることも可能である。
(スペーサ粒子分散液の乾燥方法)
次に、スペーサ粒子分散液が基板上に着弾してから、分散液中の媒体(溶剤、溶媒)を乾燥させる工程について説明する。
スペーサ粒子分散液を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、基板を加熱したり、熱風や冷風を吹き付けたり減圧乾燥する方法が挙げられる。しかしながら、スペーサ粒子を乾燥過程で着弾液滴の中央付近に寄せ集めるためには、媒体の沸点、乾燥温度、乾燥時間、媒体の表面張力、媒体の配向膜に対する接触角、スペーサ粒子の濃度等を適当な条件に設定することが好ましい。
スペーサ粒子を乾燥過程で着弾液滴の中で寄せ集めるためには、スペーサ粒子が基板上を移動する間に液体がなくならないように、ある程度の時間幅をもって乾燥する。このため媒体が急激に乾燥する条件は好ましくない。また、媒体は高温で配向膜と接触すると、配向膜を汚染して液晶表示装置としての表示画質を損なうことがあるため好ましくない。従って、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度は90℃以下とすることが好ましく、更に好ましくは60℃以下である。乾燥が完了するまでの間の基板温度が90℃を超えると、配向膜を損傷して液晶表示装置の表示画質を損なうので好ましくない。
媒体として室温で著しく揮発しやすいものや、激しく揮発するような条件下でそれらの媒体を使用すると、インクジェット装置のノズル付近のスペーサ粒子分散液が乾燥しやすくインクジェット吐出性を損なうので好ましくない。また、分散液の製造時やタンクで乾燥によって凝集粒子が生成する可能性があるので好ましくない。
基板温度が比較的低い条件であっても乾燥時間が著しく長くなると液晶表示装置の生産効率が低下するだけでなく、インク媒体が長時間、配向膜と接触することによる配向膜の汚染や損傷が発生するので好ましくない。
本発明においては、スペーサ粒子分散液が基板上に着弾した時の基板表面温度は、分散液に含まれる最も低沸点の溶媒の沸点より20℃以上低い温度であることが好ましい。更に好ましくは室温付近(15〜35℃)である。最も低沸点の溶媒の沸点より20℃低い温度より高くなると、最も低沸点の溶媒が急激に揮散し、スペーサ粒子が移動できないばかりでなく、著しい場合は溶媒の急激な沸騰で液滴ごと基板上を動き回り、スペーサ粒子の配置精度が著しく低下するので好ましくない。
また、スペーサ粒子分散液が基板上に着弾した後に、基板温度を徐々に上昇させながら媒体を乾燥させる際には、乾燥が完了するまでの間の基板表面温度は90℃以下が好ましく、更に好ましくは60℃以下である。乾燥が完了するまでの間の基板温度が90℃を超えると、配向膜を損傷して液晶表示装置の表示画質を損なうので好ましくない。
このように、配向膜の損傷を防止するための乾燥方法としては、できるだけ低温で、短時間に乾燥させることが好ましい。具体的には、基板の表面温度を60℃以下にし、液滴が接触してから5秒から4分以内(更に好ましくは5秒から2分以内)に液滴を乾燥させてしまうことが好ましい。あまりに短時間で乾燥させてしまうと上述したようにスペーサ粒子の寄り集まりが悪化するし、長時間かかると配向膜が損傷する。
これを達成する手段としては、液滴近傍の媒体蒸気を速やかに取り除く、すなわち、風を当てたり、減圧下で乾燥を行ったりすることである。ただし、その風量はあまり強すぎると粒子が液滴内を動き回り結果として、スペーサ粒子の寄り集まりが阻害されるので、風量は適宜調整する必要がある。
但し、配向膜の種類によっては、スペーサ粒子寄り集まりをよくするために、90℃を超える高温で短時間で乾燥してもよい。具体的には、100〜150℃で5〜20秒程度の乾燥を行うことが好ましい。
なお、本発明中でいう乾燥完了とは基板上の液滴が消失した時点をいう。
この後、スペーサ粒子の基板に対する固着性を高めたり、残留溶剤を除去したりするため、より高い温度(120〜230℃程度)に基板を加熱してもよい。
(液晶表示装置の組立)
本発明の製造方法に従ってスペーサ粒子を配置した基板は、スペーサ粒子が配置されていない基板と周辺シール剤を用いて加熱圧着され、形成された基板間の空隙に液晶が充填されて液晶表示装置が作製される(真空注入法)。あるいは、片方の基板に周辺シール剤を塗布しそれに囲まれた範囲内に液晶を滴下しもう一方の基板を貼り合わせシール剤を硬化させて液晶表示装置が作製される(液晶滴下工法)。この場合、いずれの基板にスペーサ粒子を配置されてもよい。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例及び比較例)
(スペーサ粒子の調製)
セパラブルフラスコにて、ジビニルベンゼン15重量部、イソオクチルアクリレート5重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル1.3重量部を均一に混合した。次に、ポリビニルアルコール(GL−03、クラレ社製)の3%水溶液20重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部を投入しよく攪拌した。しかる後、イオン交換水140重量部を添加した。この溶液を攪拌しながら窒素気流下80℃で15時間反応を行った。得られた粒子を熱水及びアセトンにて洗浄後、分級操作を行い、平均粒子径が4.0μm、CV値が3.0%のスペーサ粒子を得た。
(スペーサ粒子の表面修飾)
得られたスペーサ粒子5重量部をジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部、N−エチルアクリルアミド18重量部中に投入し、ソニケータによって均一に分散させた。しかる後、反応系に窒素ガスを導入し30℃にて2時間撹拌を続けた。
次に、1Nの硝酸水溶液で調製した0.1mol/Lの硝酸第2セリウムアンモニウム溶液10重量部を添加し、5時間反応を続けた。反応終了後、2μmのメンブランフィルタにて粒子と反応液とを濾別した。この粒子をエタノール及びアセトンにて充分洗浄し、真空乾燥器にて減圧乾燥を行い、スペーサ粒子SAを得た。
また、得られたスペーサ粒子5重量部、ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部、メタクリル酸16重量部、ラウリルアクリレート2重量部からスペーサ粒子SBを得た。更に、ジメチルスルホキシド(DMSO)20重量部、ヒドロキシメチルメタクリレート2重量部、ポリエチレングリコールメタクリレート(分子量800)18重量部を用いて同様にしてスペーサ粒子SCを得た。
(スペーサ粒子分散液の調製)
上述した方法で得られたスペーサ粒子を所定の粒子濃度になるように必要量をとり、下記表1に記載した組成の溶媒にゆっくり添加し、ソニケータを使用しながら充分撹拌することによって分散させた。しかる後、10μmの目開きのステンレスメッシュで濾過して凝集物を除去し、スペーサ粒子分散液S1〜S8を得た。得られたスペーサ粒子分散液の表面張力は、白金板を使用するウイルヘルミー法で測定した。結果を下記表1に示した。
(基板の作製)
液晶テストパネル用の第1の基板としてカラーフィルタ基板、及び、第2の基板としてTFTアレイ基板にある段差を模した液晶表示装置基板(TFTアレイモデル基板)を用いた。
(カラーフィルタ基板)
実施例及び比較例では、以下の2種類のカラーフィルタ基板21、31のいずれかを用いた。
図4(a)に、カラーフィルタ基板21、31に用いるガラス基板に、ブラックマトリックスが設けられた状態の一部を拡大して示す部分切欠平面図である。図4(b)に、カラーフィルタ基板21の一部を拡大して示す部分切欠正面断面図であり、図4(c)に、カラーフィルタ基板31の一部を拡大して示す部分切欠正面断面図である。
実施例及び比較例に用いた1枚の表面が平滑なカラーフィルタ基板21は、以下のように作製した。
実施例及び比較例に用いた1枚の表面が平滑なカラーフィルタ基板21は、以下のように作製した。図4(a)、(b)に示されているように、300mm×360mmのガラス基板22の上に通常の方法により、金属クロムからなるブラックマトリックス23(幅25μm、縦間隔150μm、横間隔75μm、厚み0.2μm)を設けた。ブラックマトリックス23上及びその間に、RGBの3色からなるカラーフィルタ24画素(厚み1.5μm)を表面が平坦となるように形成した。その上にほぼ一定の厚みのオーバーコート層25及びITO透明電極26設けた。更にその上に、スピンコート法によってポリイミドを含有する溶液(日産化学社製、サンエバーSE1211、表面張力(γ):26mN/m)を均一に塗布した。塗布後、80℃で乾燥した後に190℃で1時間焼成し、硬化させてほぼ一定の厚みの配向膜27を形成した。
次に、ブラックマトリックス23上に凹部(段差(深さ)1.3μm)が設けられたカラーフィルタ基板31を以下のように作製した。
図4(c)に示されているように、ガラス基板22上のブラックマトリックス23が設けられていない箇所に、RGBの3色からなるカラーフィルタ32画素(厚み1.5μm)を形成した。ブラックマトリックス23及びカラーフィルタ32上に、ほぼ一定の厚みのオーバーコート層33及びITO透明電極34を設けた。更にその上に、スピンコート法によってポリイミドを含有する溶液(日産化学社製、サンエバーSE1211、表面張力(γ):26mN/m)を均一に塗布した。塗布後、80℃で乾燥した後に190℃で1時間焼成し、硬化させてほぼ一定の厚みの配向膜35を形成した。
(TFTアレイモデル基板)
図5(a)に、TFTアレイモデル基板に用いるガラス基板に、段差が設けられた状態の一部を拡大して示す部分切欠平面図で示す。図5(b)に、TFTアレイモデル基板の一部を拡大して示す部分切欠正面図である。
段差が設けられたTFTアレイモデル基板41は、以下のように作製した。
図5(a)、(b)に示されているように、TFTアレイモデル基板41は、上記カラーフィルタ基板21、31のブラックマトリックス23に相対する位置において、300mm×360mmのガラス基板42上に、従来公知の方法により銅からなるよる段差43(幅8μm、厚み0.2μm)を設けた。その上に、ほぼ一定の厚みのITO透明電極44を設け、更に上述した方法でほぼ一定の厚みの配向膜45を形成した。
(インクジェット法によるスペーサ粒子の配置)
表1に示したスペーサ粒子分散液S1〜S8、及び、カラーフィルタ基板21、31、TFTアレイモデル基板41を用いて下記の方法でスペーサ粒子を配置した。
先ず、ピエゾ方式の口径50μmのヘッドを搭載したインクジェット装置を用意した。このヘッドのインク室の接液部は、表1に示す表面張力を有する材質で構成した。なお、接液部の材質(表面)の表面張力は、表面張力が既知の液体数種類のその材質表面に対する接触角を測定し、接触角が0となる表面張力を推定する方法で調べた。
次に、ステージ上に、表1に示した段差を有するカラーフィルタ基板21又は31を載せた。このカラーフィルタ基板21又は31上に、上述したインクジェット装置を用いて、ブラックマトリックス23部分を狙って、縦のライン1列おきに、縦のラインの上に、110μm間隔で、表1に示したスペーサ粒子分散液の液滴を縦110μm×横150μmピッチで吐出し、配置し、その後、45℃に加熱されたホットプレート上にて乾燥させた。吐出の際のノズル(ヘッド面)と基板の間隔は0.5mmとし、ダブルパルス方式を用いた。なお、実施例13のみ120℃に加熱されたホットプレート上にて10秒程で乾燥させた。
更に、ステージ上に、表1に示した段差43を有するTFTアレイモデル基板41を載せた。この基板上に、上述したインクジェット装置を用いて、ブラックマトリックス23に対応する段差43を狙って、縦のライン1列おきに、縦のラインの上に、110μm間隔で、表1に示したスペーサ粒子分散液の液滴を縦110μm×横150μmピッチで吐出し、配置し、その後、45℃に加熱されたホットプレート上にて乾燥させた。吐出の際のノズル(ヘッド面)と基板の間隔は0.5mmとし、ダブルパルス方式を用いた。なお、実施例13における乾燥条件は、120℃に設定したホットプレート上で10秒程で乾燥させた。
上記のようにして得られた基板上に配置されたスペーサ粒子の散布密度、平均スペーサ粒子数を計測した。また、上述した基板への吐出は、ヘッドへのスペーサ粒子分散液の導入すなわちヘッドクリーニングを表1の回数行った後で行ったが、ヘッドクリーニング後の未吐出ノズルの全ノズルに対する割合も計測した。その結果を下記表1に示す。
ステージ上の基板に吐出されたスペーサ粒子分散液が、目視で完全に乾燥したのを確認した後、更に残留した溶媒を除去し、150℃に加熱されたホットプレート上に移して加熱し15分間放置して、スペーサ粒子を基板に固着させた。
(評価用液晶表示装置の作製)
上述のようにしていずれか一方にスペーサ粒子を配置したカラーフィルタ基板21と対向基板となるTFTアレイモデル基板41とを、もしくはいずれか一方にスペーサ粒子を配置したカラーフィルタ基板31と対向基板となるTFTアレイモデル基板41とを、周辺シール剤を用いて貼り合わせた。貼り合わせた後、シール剤を150℃で1時間加熱して硬化させてセルギャップがスペーサ粒子の粒子径となるような空セルを作製し、次に真空法で液晶を充填し、封口剤で注入口封止して液晶表示装置を作製した。
(実施例1〜13及び比較例1〜4の評価)
下記の項目について評価を行った。結果を表1に示す。
(スペーサ粒子散布密度)
基板にスペーサ粒子を固着させた後に、1mm2あたりに散布されているスペーサ粒子の個数を観測し、散布密度とした。
(平均スペーサ粒子数)
1配置位置あたりに凝集しているスペーサ粒子の個数の平均値を上記1mm2の範囲内で計測した。なお、表1において、−印は、凝集していないため測定不能であることを指す。
(スペーサ粒子配置精度)
液滴が乾燥した後のスペーサ粒子の配置状態を下記の基準で判定した。
○:殆どすべてのスペーサ粒子が非画素領域に対応する特定の位置(遮光領域)にあった。
△:一部のスペーサ粒子が非画素領域に対応する特定の位置(遮光領域)からはみだした位置にあった。
×:多くのスペーサ粒子が非画素領域に対応する特定の位置(遮光領域)からはみだした位置にあった。
(スペーサ粒子存在範囲)
図6に示されているように、ブラックマトリックス、又は、これに対応する部分の中心から両側に等間隔で平行線を引き、この2本の平行線間に個数で95%以上のスペーサ粒子が存在する平行線間の距離をスペーサ粒子存在範囲とした。
(表示画質)
液晶表示装置の表示画質を観察し、下記の基準で判定した。
○:表示領域中にスペーサ粒子が殆ど認められず、スペーサ粒子起因の光抜けがなかった。
△:表示領域中に若干のスペーサ粒子が認められスペーサ粒子起因の光抜けがあった。
×:スペーサ粒子が認められスペーサ粒子起因の光抜けがあった。
また、本実施例及び比較例に用いた溶媒の沸点、粘度、表面張力を下記表2に示す。
表1に示されたように、実施例の液晶表示装置では、未吐出のノズルが発止することもなく、スペーサ粒子は精度良くほとんど非表示領域に配置され、表示画質に優れていた。一方、比較例の液晶表示装置では、未吐出ノズルが発生したり、寄り集まりはしているが配置精度が悪く非表示領域にまで配置され、表示画質に劣っていた。