JP2006342418A - 抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜、抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品、および抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜は、基材の素地上に形成される最外層の薄膜に含まれるSnとCuの含有比率が、100−x[原子%]:x[原子%](但し、xはCuの含有率であって、10≦x≦90である)であり、かつ、前記薄膜に1〜10[質量%]のSnO2を有する構成とした。また、本発明の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜は、前記Cuが、Cu6Sn5およびCu3Snの少なくとも一方を形成している形成率の合計値が10〜100%である構成としている。
【選択図】 なし
Description
また、例えば、特許文献1には、抗菌性のある金属微粉末を錫めっき皮膜へ添加するという発明が開示されている。
また、抗菌性のある金属微粉末を錫めっき皮膜に添加する場合、その添加工程が加わることによって製品作製のプロセスが複雑になるという問題があった。
合金めっきの技術とは、通常、水溶液から同時電析(合金電析)を行うことで合金めっき薄膜を形成するものである。つまり、この合金めっきは、水溶液から異なる種類の構成元素を、基材の素地上に同時に電析させることにより、一度の操作で合金めっき薄膜を形成するものである。
また、(4)黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌などは多くの金属に対して通性があり、これらを制菌できる金属が多くない、(5)合金電析を行って作製した合金めっきが必ず抗菌性を有するとは限らない、(6)水溶液中からの電析によって形成される合金めっきは、熱的に非平衡である場合があり、加熱などして使用されると変質するおそれがある。
このように、薄膜に含有されるCuが形成するCu6Sn5とCu3Snの形成率を合計した値が特定の範囲となるよう規定したことによって、これらの化合物の相乗効果で黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌などの細菌に対して生育環境を不都合な状態に変化させることができる。
そして、本発明の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜を形成された基材は、鉄鋼製材、アルミニウム製材、アルミニウム合金製材、銅製材、銅合金製材、プラスチック製材、またはガラス製材、またはこれらの混合製材とするのがよい。
このように、Cu層形成工程およびSn層形成工程をめっき処理、スパッタ処理、または蒸着処理とすることで容易に適切な厚さのCu層およびSn層を形成することができる。特に、めっき処理による場合、一般的な条件でそれぞれを単層として形成するため、環境負荷の高い薬品などを用いないでもCu層とSn層を形成することができる。スパッタ処理や蒸着処理による場合も同様に環境負荷の高い薬品などを用いないでもCu層とSn層を形成することができる。
本発明によれば、Sn−Cu合金薄膜を形成することによって、抗菌性を有する形成品を提供することができる。
本発明によれば、環境負荷が高くない条件で確実かつ容易に抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品を製造する方法を提供することができる。
[Sn−Cu合金薄膜]
本発明のSn−Cu合金薄膜は、基材の素地上に形成された薄膜に含まれるSn(錫元素)とCu(銅元素)の含有比率が、100−x[原子%]:x[原子%]であり、かつ、薄膜に1〜10[質量%]のSnO2を有する。
但し、前記の含有比率において、「x」はCuの含有率であって、10≦x≦90、好ましくは20≦x≦80、より好ましくは30≦x≦70、さらに好ましくは40≦x≦60である。
一方、Cuの含有率が10[原子%]を超えると、Cuが多すぎるために、Sn−Cu合金薄膜を安価に作製することができない。
つまり、Cuの含有率x[原子%]が、前記の含有比率において10≦x≦90を満たす場合、Sn−Cu合金薄膜に含有されるCuは、Sn−Cu合金薄膜全体に対して、少なくとも1[原子%]のCuが、Cu6Sn5およびCu3Snを形成していることになる。
次に、本発明の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品について説明する。
本発明の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品は、前記したSn−Cu合金薄膜を基材に施すことで得ることができる。
Sn−Cu合金薄膜を被覆する基材としては、導電性と耐熱性を有するものが好ましいが、導電性と耐熱性を有しないものであっても構わない。このような基材としては、例えば、鉄鋼製材、アルミニウム製材、アルミニウム合金製材、銅製材、銅合金製材などの金属製材を好適に用いることができるが、これに限られず、例えば、エンジニアリングプラスチックなどのプラスチック製材や、ガラス製材、またはこれらの混合製材も好適に用いることができる。
これらのSn−Cu合金薄膜形成品は、以下のようにして製造することができる。
次に、本発明のSn−Cu合金薄膜形成品の製造方法について説明する。
本発明のSn−Cu合金薄膜形成品の製造方法は、Cu層形成工程と、Sn層形成工程と、合金化薄膜形成工程と、冷却工程とを含んでなる。
以下、各工程の内容について説明する。
Cu層形成工程では、基材の素地上に、1〜50μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μmのCu層を形成する。このような層厚でCu層を形成すれば、Sn−Cu合金薄膜を安定的に得ることが可能である。
ここで、形成するCu層の層厚が1μm未満であると、層厚が薄すぎるために、形成されたSn−Cu合金薄膜の機械的強度が弱く、剥離等しやすくなる可能性があり好ましくない。また、十分な量のCu6Sn5およびCu3Snが生成されないおそれもある。
一方、Cu層の層厚がこれ以上厚くなると製品の寸法精度に影響を与えるおそれがある。また、成膜過程においても作製時間が長くなるため、工業的なメリットが低下する。
したがって、本発明においては、Cu層形成工程で形成するCu層の層厚を1〜50μmとする。
Sn層形成工程では、Cu層上に、さらに層厚1〜50μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1〜10μmのSn層を形成する。このような層厚でSn層を形成すれば、Sn−Cu合金薄膜を安定的に得ることが可能である。
ここで、形成するSn層の層厚が1μm未満であると、層厚が薄すぎるために、形成されたSn−Cu合金薄膜の機械的強度が弱く、剥離等しやすくなる可能性があり好ましくない。また、十分な量のCu6Sn5およびCu3Snが生成されないおそれもある。
一方、Sn層の層厚が厚すぎるために、Sn層の層厚がこれ以上厚くなると、製品の寸法精度に影響を与えるおそれがある。また、成膜過程においても作製時間が長くなるため、工業的なメリットが低下する。さらに、SnO2が多く生成されるるおそれもあり、色調など外観に劣る可能性もある。
したがって、本発明においては、Sn層形成工程で形成するSn層の層厚を1〜50μmとする。
また、めっき処理では、環境負荷の高い薬品を使用しなければならないことから、同時電析による合金めっきの形成は困難である。これに対して、スパッタ処理や蒸着処理では、前記したように環境負荷が高い薬品を使用しないことから、CuとSnを同時スパッタ処理や同時蒸着処理によって一度の操作で薄膜を形成することが可能である。
合金化薄膜形成工程では、Cu層およびSn層を順次形成した基材を200〜400℃、0.5〜5時間の条件で加熱する。かかる条件で加熱することによりCu層とSn層を軟化・溶融し、SnとCuの合金化薄膜を形成する。
すなわち、Cu層中のCu(銅元素)とSn層中のSn(錫元素)とを反応させることでCu6Sn5とCu3Snを生成させる。また、このとき、大気中のO2と接触するとSnO2を生成してしまうので、これを防止するために、例えば、脱気して加熱したり、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で加熱したりしてもよい。このようにすると、SnO2の含有率を確実に1〜10[原子%]の範囲とすることができる。
一方、加熱温度が400℃を超える場合や加熱時間が5時間を超える場合は、溶融したSnが蒸散するなどして十分な量のCu6Sn5およびCu3Snを生成できないおそれがある。
冷却工程では、加熱され、合金化薄膜が形成された基材を400℃/時間〜50℃/分間の速度で冷却し、Sn−Cu合金薄膜形成品とする。
このとき、冷却速度が400℃/時間よりも遅いと、Snの酸化が進んでSnO2の含有量が増加してしまうおそれがある。
一方、冷却速度が50℃/分間よりも速いと、冷却速度が速すぎるために形成した合金化薄膜にしわが入るなどするため好ましくない。
まずJIS SS 400の炭素鋼板を用いて、25℃の硫酸銅浴(硫酸銅150g/L、硫酸40g/L)に浸漬し、1A/dm2の電流密度で3分間の電解時間という条件下で電解することで、当該炭素鋼板上に層厚10μmのCu層をめっきして形成した。
表1は、フィルム密着法によるSn−Cu層を積層しただけで未加熱処理の薄膜(比較例)の抗菌性試験の結果を表している。また、表2は、フィルム密着法による熱処理後のSn−Cu熱処理合金化めっき薄膜(実施例)の抗菌性試験の結果を表している。
これに対して、表2に示すように、熱処理を行った実施例に係るSn−Cu熱処理合金化めっき薄膜は、熱処理を行うことによって、めっきの外層にCu6Sn5およびCu3Snが生成されたために、顕著な抗菌効果が認められた。
炭素鋼板に10μmのCu層を形成した後に、1μm、5μm、10μmの層厚にSn層を形成した。これらの試験片を、200℃、250℃、300℃、350℃の条件で5時間の熱処理を行った後に、30℃/分間の冷却速度で冷却した後、表面層近傍を蛍光X線分析にて分析した。
分析した結果をSn層の層厚ごとに図4から図6に示す。図4から図6において、横軸は、各熱処理温度を示し、縦軸は、Fe,Cu,Snの表面付近の濃度(mass%)を示す。
Claims (7)
- 基材の素地上に形成される最外層の薄膜に含まれるSnとCuの含有比率が、100−x[原子%]:x[原子%](但し、xはCuの含有率であって、10≦x≦90である)であり、かつ、
前記薄膜に1〜10[質量%]のSnO2を有することを特徴とする抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜。 - 前記Cuが、Cu6Sn5およびCu3Snの少なくとも一方を形成している形成率の合計値が10〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜。
- 前記薄膜が、Cu層とSn層を積層して、200〜400℃の熱処理を行って形成されたSn−Cu熱処理合金化めっき薄膜、Sn−Cu熱処理合金化スパッタ薄膜またはSn−Cu熱処理合金化蒸着薄膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜。
- 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜を基材に施してなる抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品。
- 前記抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜を形成された前記基材が、鉄鋼製材、アルミニウム製材、アルミニウム合金製材、銅製材、銅合金製材、プラスチック製材、またはガラス製材、またはこれらの混合製材であることを特徴とする請求項4に記載の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品。
- 基材の素地上に、層厚1〜50μmのCu層を形成するCu層形成工程と、
前記Cu層上に、層厚1〜50μmのSn層を形成するSn層形成工程と、
前記Cu層および前記Sn層を形成した前記基材を200〜400℃、0.5〜5時間の条件で加熱し、SnとCuの合金化薄膜を形成する合金化薄膜形成工程と、
加熱され、前記合金化薄膜が形成された前記基材を400℃/時間〜50℃/分間の速度で冷却し、Sn−Cu合金薄膜形成品とする冷却工程と、
を含んでなる抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品の製造方法。 - 前記Cu層形成工程および前記Sn層形成工程が、各々、めっき処理、スパッタ処理、または蒸着処理によって、それぞれを単層として積層させることを特徴とする請求項6に記載の抗菌性を有するSn−Cu合金薄膜形成品の製造方法。
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