JP2006342298A - 2段階に優れた形状回復能を持つ形状記憶性樹脂および該樹脂の架橋物からなる成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】2段階の優れた形状回復力を備えた形状記憶性成形体を提供する
【解決手段】 冷却により共有結合し、加熱により開裂する共有結合性熱可逆性反応により架橋される部位、および共有結合性非可逆反応により架橋される部位をもつ樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)または結晶溶融温度(Tm)が40℃以上200℃以下の範囲にあり、前記熱可逆性反応の開裂温度(Td)が50℃以上300℃以下、Tg(またはTm)+10℃≦Tdの範囲にあることを特徴とし、非可逆架橋による第一形状、熱可逆性架橋による第二形状の記憶が可能であり、Tg(またはTm)の特性を用いた第三形状と合わせて二段階の形状記憶が可能となる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、2段階に優れた形状回復能を持つ樹脂組成物に関するものである。又、本発明は、該成形樹脂組成物の架橋体からなる成形体、変形した成形体及び、これらの使用方法にも関する。
形状記憶性を示す材料として従来から合金材料と樹脂材料があり、形状記憶性合金はパイプ継手や歯列矯正など、形状記憶性樹脂は熱収縮チューブ、締め付けピン、ラミネート材、ギブス等の医療用器具材などに利用されている。形状記憶性樹脂は形状記憶合金と比べて、複雑な形状に加工できる、形状回復率が大きい、軽量である、自由に着色できる、低コストである等のメリットが挙げられ、一層の用途拡大が注目されている。
一般に形状記憶性樹脂は、樹脂に所定の温度をかけて変形したのち、室温まで冷却することで所望の形に固定することが出来、さらに再度加熱することで、本来の形状に復元する性質を有する。形状記憶性樹脂は、物理的あるいは化学的結合部位(架橋点)から成る固定相と、ある温度以上(可逆相内部でのガラス転移温度(Tg)または融点(Tm))で流動的になる非架橋部分から成る可逆相から構成されていることを特徴とする。
形状記憶性樹脂のメカニズムをさらに詳細に説明するが、以下の1から3のステップによって、形状記憶の付与、成形品の変形および記憶形状の回復を実現する。又、図1に、概念図を示す。
1.成形加工
形状記憶性樹脂を所定の方法(加熱、溶融、固化)で成形加工すると、固定相と可逆相(硬)から成る初期状態(原形)(同図(a)及び部分拡大図(b))が記憶される。
2.成形品の変形
成形品を任意の形状に変形させるには、固定相は溶融させずに可逆相のみを溶融させる温度、つまり可逆相内部のTgやTm以上に加熱し可逆相(軟)に移行させ(同図(c))、この状態で外力を加えることによって変形できる(同図(d))。変形された成型品をTg未満やTm未満(またはTc(結晶化温度)以下)に冷却すると、可逆相も完全に固化して変形した状態で固定化される(同図(e))。
3.記憶形状の回復
任意形状に変形された成形品の形状は、一時的に強制固定されている可逆相によりその変形状態が保たれている。従って加熱により可逆相のみが軟化する温度に達すると、樹脂はゴム状特性を示して安定状態となり、元の形状を回復する(同図(c))。さらにTg未満やTm未満(またはTc以下)に冷却することにより、同図(b)の初期状態の成形体に戻る。
ここで、固定相は架橋の種類によって熱硬化型と熱可塑型に分類され、それぞれに長所と短所を持つことが知られている。また、可逆相を固定化する方法によりガラス転移型(Tg利用型)、結晶転移型(Tc利用型)および三次元架橋形成型(Ta利用型)に分類することができ、それぞれに特徴を持つ。
まず、固定相の架橋方法について述べる。熱可塑型形状記憶性樹脂の固定相は、結晶部、ポリマーのガラス状領域、ポリマー同士の絡まり合い、金属架橋等から成る。この固定相は加熱により融解するため、再成形可能、つまりリサイクルできるという長所を持つ。しかしながら、熱可塑型の固定相の結合力は共有結合架橋である熱硬化型に比べて弱いため、熱硬化型より形状回復力に劣るといった短所を持つ。
熱可塑型形状記憶性樹脂の例として、ポリノルボルネン(特許文献1:特開昭59−53528号公報)が挙げられる。ポリマー同士の絡まりあいが固定相、絡まりのない部位が可逆相となり、形状記憶性を持つことが記載されている。しかし、この形状記憶性樹脂は形状回復時間が長く、分子量が非常に高いため加工性が悪いという問題点がある。
ポリウレタン(特許文献2:特開平2−92914号公報)の例も知られており、固定相は結晶部、可逆相は非晶部である。しかしこの形状記憶性樹脂も、形状回復時間が長い。また、引張強度が極めて弱いため、電子機器用部材に用いるのは困難である。
スチレン−ブタジエン共重合体(特許文献3:特開昭63−179955号公報)も知られている。固定相はポリスチレンのガラス状領域、可逆相はトランスポリブタジエンの結晶部である。しかしこの形状記憶性樹脂においても、形状回復時間が長く形状回復率も低いという問題点が指摘されている。
上記の熱可塑性の形状記憶性樹脂の形状記憶特性を改善する方法も提案されている。例えば、特許文献4(特許掲載公報2692195号)では、特許文献3に類似する3元系ブロック共重合体中のオレフィン性不飽和結合の80%以上を水素化することで、形状回復率、回復時間に優れた形状記憶性樹脂が提供できるとしている。しかし非特許文献1(唐牛正夫、「形状記憶ポリマーの材料開発」シーエムシー、第30〜43頁、1989年刊)で、スチレン−ブタジエン系熱可塑性の形状記憶性樹脂は、繰り返し変形することで形状記憶回復率が低下するという問題点が指摘されている。
これに対し、熱硬化型形状記憶性樹脂の固定相は、共有結合による架橋構造から成る。熱硬化型の長所としては、樹脂の流動を防ぐ効果が高く、優れた形状回復力や寸法安定性を有し、回復速度が速い。
たとえば、従来の熱硬化型形状記憶性樹脂の具体例として、トランス−1,4−ポリイソプレン(特許文献5:特開昭62−192440号公報)が挙げられる。これはトランス−1,4−ポリイソプレンを硫黄あるいはパーオキサイド等により架橋した樹脂であり、固定相は架橋部位、可逆相はトランス−1,4−ポリイソプレンの結晶部である。この樹脂の結晶化温度は12℃であり、Tgは−70℃以下である。このガラス転移を第三形状の固定に利用すれば、2段階にわたる形状記憶も可能である。すなわち、第二形状の記憶を結晶化により行い、第三形状の固定をガラス転移温度でおこなうわけであるが、第二形状の記憶が熱可塑型と同様に弱い分子間力を利用するため、第二形状への回復時間や回復率も低くなる。
次に、可逆相の固定方法について述べる。樹脂は結晶性樹脂と非晶性樹脂に分類可能であり、Tc(結晶化温度)は結晶性樹脂特有のものであるのに対して、Tg(ガラス転移温度)は樹脂の非晶相(アモルファス相)に起因する現象であり、非晶性樹脂のみならず、結晶性樹脂の非晶部分に起因して観測されるため、何れの樹脂においても存在する。Ta(結合形成温度)は、熱可逆結合反応の結合温度であり、この反応が可能な官能基を有する樹脂特有の現象である。
Tc利用型の特徴を述べる。Tc(またはTm(結晶相溶融温度))は樹脂の結晶化による分子運動の凍結(または溶融)に起因する現象であり、Tc(またはTm)以下の温度領域で樹脂の弾性率が上昇するため、変形した形状を固定することが可能となる。弾性率の上昇度合いは、結晶性樹脂の結晶化部分の割合(結晶化度)により大きくことなるため、樹脂全体の硬さは樹脂の種類や結晶化の条件に依存する。すなわち、使用温度域でやわらかい材料を設計することが可能となる。形状記憶合金の用途としては、メガネのフレームや携帯電話のアンテナのように柔らかい特性を利用する場合も多く見受けられる。常温でやわらかい形状記憶樹脂が得られれば、安価でかつ軽量な材料として、これら形状記憶合金の代わりに用いることができる。また、Tc(またはTm)により形状固定を行った場合、一般にTgにくらべ(狭い温度幅で転移するため)転移が早いため、形状記憶樹脂としての実用性に優れ好ましい。(非特許文献2 A. Lendenら、Angew. Chem. Int. Ed., 2002年号41巻、2034〜2057頁)
次にTg利用型の特徴を述べる。Tgは非晶相の分子運動の凍結・溶融に起因する現象であり、Tg以下の温度領域で樹脂の弾性率が上昇するため、変形した形状を固定することが可能となる。Tg型の固定を行った場合、弾性率の上昇は非晶相の割合や相分離構造に依存するが、使用温度域においてガラス状態であるため、硬い樹脂を容易に得ることが可能である。したがって、使用温度域で高い剛性が必要な用途には好ましい。
ガラス転移により可逆相を固定化している例としては、上述のポリノルボルネン(特許文献1:特開昭59−53528号公報)、ポリウレタン(特許文献2:特開平2−92914号公報)があげられるが、形状記憶を分子間の絡み合いや結晶化により行っている為、形状の回復時間および回復力について課題があることは既に述べた。
樹脂中に熱可逆的架橋構造を導入し、形状記憶樹脂の可逆相を熱可逆架橋により固定化した例として、特許文献6(特開平2−258818号公報)がある。熱可逆性共有結合的架橋構造として、カルボキシル基等のイオン架橋基、ディールス−アルダー反応、ニトロソ基の二量化反応を使用した共有結合架橋構造が開示されている。請求項には、芳香族ビニル単量体と共役ジエン系単量体とのブロック共重合体を基体重合体とし、該基体重合体を熱可逆的に架橋させて得られる架橋体であって、該架橋体の解離重合体(前記基体重合体)のガラス転移温度(Tg)が該架橋体に含有される熱可逆的架橋の解離(開裂)温度(Td)より高く、かつ該ガラス転移温度が70℃〜140℃の範囲にあることを特徴としている。
第3頁右下欄には、「熱可逆的架橋の解離温度は解離重合体のガラス転移温度より低ければよいが、実用的には、解離温度は解離重合体のガラス転移温度より10℃以上低いことが好ましい。」と記載されている。このブロック共重合体では、スチレン−ブタジエン共重合体(特許文献3)と同様、100℃程のTgを有する芳香族系樹脂が固定相として働く。一方、芳香族系樹脂のTgより低い融点を持つ結晶性のジエンポリマーが可逆相として働く。熱可逆性共有結合的架橋構造はジエンポリマー中の二重結合部に導入されており、Td以上に加熱することで結合(架橋)が開裂し、この状態で変形させた後、Td以下に冷却することで再結合(再架橋)し形状記憶性が得られ、又、芳香族系樹脂のTg以上に加熱することで、成形性が向上し、再成形可能としている。つまり、この形状記憶性樹脂では、図2に示すように、樹脂部が固定相となり、架橋部が可逆相として機能し(同図(a))、Td以上に加熱することで、架橋が開裂し(同図(b))、さらにこの加熱状態を維持して外力を加えて変形し(同図(c))、Td未満に冷却して再架橋させることで、同図(d)に示すように形状が記憶される。形状を回復させるには、再度Td以上に加熱して架橋を開裂させることにより実施され、冷却して原形に復帰する。再成形時には芳香族系樹脂のTg以上に加熱することで、同図(e)に示すように固定相の樹脂部が流動性を有し、再成形可能となる。
しかし、形状回復時には架橋が開裂していることからこの樹脂は熱可塑型であり、優れた形状回復力は得られないこと、使用可能な樹脂や熱可逆性結合的架橋構造が限定されていること、さらに、共有結合による架橋構造の解離温度は高いため(ディールス−アルダー型:120〜160℃、ニトロソ基型:70〜160℃)、実際にこの特許の条件を満たす樹脂や架橋部位が制限され、特に形状記憶時の温度マージンが極めて狭い範囲であることから、実用性に乏しい。
ところで、熱可逆反応を架橋に用いた例として非特許文献3(Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊)に、ディールス−アルダー反応、ニトロソ二量化反応、エステル化反応、アイオネン化反応、ウレタン化反応、アズラクトン−フェノール付加反応が記載されている。
また、非特許文献4(中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第67巻、第12号、第766〜774頁、1994年刊);非特許文献5(中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第69巻、第11号、第735〜742頁、1996年刊);特許文献7(特開平11−35675号公報)には、ビニルエーテル基を利用する熱可逆架橋構造が記載されている。
また、酸無水物のエステル化反応による可逆反応を耐熱性向上とリサイクル性向上に利用した例が特許文献8(特開平11−106578号公報)などに記載されており、ビニル重合化合物にカルボン酸無水物を導入し、ヒドロキシ基を有するリンカーで架橋する手法が示されている。
しかし、いずれも形状記憶性についての記述はなく、形状記憶性樹脂として用いられた例もない。
環境問題に対処するために種々の生分解性ポリマーを用いた形状記憶性樹脂も提案されている。例えば、特許文献9(特開平9−221539号公報)には、ポリ乳酸系樹脂等の脂肪族ポリエステル系樹脂から構成された生分解性の形状記憶性樹脂が開示されている。しかしながら、これらも熱可塑性樹脂である点で形状回復力、回復速度は不十分である。
生分解性の熱又は光硬化性樹脂を用いた形状記憶性樹脂が特許文献10(特表2002−503524号公報)に記載されている。同特許文献の図5には、光架橋による形状記憶と、熱又は光による架橋開裂による形状回復が示されている。また、複数の形状記憶については記載されているが、これは単に熱可塑性の形状記憶樹脂をブレンドすることにより得られるポリマーブレンドであり、この方法では、共有結合性架橋による2つの優れた形状記憶性および復元性は得られない。
特開昭59−53528号公報 特開平2−92914号公報 特開昭63−179955号公報 特許掲載公報2692195号 特開昭62−192440号公報 特開平2−258818号公報 特開平11−35675号公報 特開平11−106578号公報 特開平9−221539号公報 特表2002−503524号公報 唐牛正夫、「形状記憶ポリマーの材料開発」シーエムシー、第30〜43頁、1989年刊 A. Lendenら、Angew. Chem. Int. Ed., 2002年号41巻、2034〜2057頁 Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊 中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第67巻、第12号、第766〜774頁、1994年刊 中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第69巻、第11号、第735〜742頁、1996年刊
従来の形状記憶特性に加え、さらにもう一段の形状記憶が可能となれば、一層の用途拡大が可能となる。たとえば、従来の熱収縮チューブは、加熱により記憶していた収縮形状に復元することを利用し、2本のパイプを接合するものであり、パイプを外す際にはチューブを切断する必要があった。これに対し、2段階に形状記憶が可能な樹脂を用い、低い温度領域での加熱により収縮形状に復元し、高い温度領域での加熱により逆に膨張形状に復元するチューブを作ることが可能である。これをもちいれば、一度接合に用いたチューブも、更に加熱することにより膨張し取りはずせるようになる。また、締め付けピンの場合であれば、従来は、加熱し折り曲げることによりピン締め付けに用い、再び加熱することにより元のまっすぐの形状に復元させることにより締め付けを外すだけであった。2段階形状記憶樹脂を用いれば、低い温度領域での加熱により自動的に折れ曲がり締め付けたのち、更に高い温度領域での加熱により再びピンがまっすぐにのびて取り外せるようになる。このように、従来の形状記憶合金および形状記憶樹脂にない広い応用範囲が期待できる。
本発明は、従来の方法では、得られなかった2段階かつ優れた復元力を持つ形状記憶樹脂および該樹脂からなる成型体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明によれば、2段階の記憶形状をもち、優れた形状回復の能を持つ形状記憶性樹脂を用いた成形体を提供することができる。
本発明者は、樹脂のTg(またはTm)が常温以上であり、共有結合性の非可逆的な結合による架橋部位およびTd(可逆架橋解離温度)未満の温度では共有結合しかつTd以上の温度で再開裂する熱可逆的な結合による架橋部位を有する形状記憶性樹脂が、非可逆性架橋による第一形状と、熱可逆性架橋による第二形状とが記憶でき、Td以上の温度で第一形状への形状回復が可能であることから、電子機器用部材等、優れた形状回復力を必要とする成形体に使用可能であることを見出した。また、Tg(またはTm)での第三形状の付与が可能となるため、2段階に形状記憶を行うことが可能である。さらに、樹脂の一部または全部に植物由来樹脂などの非石油原料を用いることにより、さらに環境適合性に優れた材料を得ることが可能である。
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
(1) 冷却により共有結合し、加熱により開裂する共有結合性熱可逆性反応により架橋される部位、および共有結合性非可逆反応により架橋される部位をもつ樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)または結晶溶融温度(Tm)が40℃以上200℃以下の範囲にあり、前記熱可逆性反応の開裂温度(Td)が50℃以上300℃以下、Tg(またはTm)+10℃≦Tdの範囲にあることを特徴とする形状記憶性樹脂。
(2)樹脂の架橋部位のうち、共有結合性熱可逆反応による架橋部位が占める割合は、10%以上50%以下である。
(3) 前記熱可逆性反応は、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型からなる群より選ばれる1種以上の形式であることを特徴とする。
(4) 前記樹脂は、生分解性を有することを特徴とする。
(5) 前記樹脂は、植物由来の樹脂を原料とする樹脂である。
(6) 前記樹脂は、ポリブチレンサクシネートまたはポリヒドロキシアルカノエートを原料とする樹脂である。
(7) 前記樹脂は、ポリブチレンサクシネートまたはポリヒドロキシアルカノエートを原料とし、前記熱可逆性反応がディールスアルダー型である。
(8) 上記形状記憶性樹脂の架橋物からなることを特徴とする形状記憶性樹脂成形体。
(9) 上記形状記憶性樹脂前駆体を、共有結合性非可逆反応により架橋部位を形成するように架橋硬化して記憶すべき所定の第一形状に成形し、次に、得られた成形体に、Td以上の温度で変形を与え、可逆架橋形成温度(Ta)以下の温度に冷却して変形形状を固定することにより第二形状を記憶させたことを特徴とする形状記憶性樹脂成型体。
(10) 上記(9)の成形体に、Tg(またはTm)以上、Td未満の温度で変形を与え、Tg未満(または結晶化温度(Tc)以下)の温度において固定することにより第三形状を付与した形状記憶性樹脂成形体。
(11) 上記(10)の第三形状を付与した成形体を、Tg(またはTm)以上、Td未満の温度に加熱することにより、記憶させた元の第二形状に回復させ、Td以上、樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱することにより第一形状に回復させることを特徴とする形状記憶性樹脂成形体の使用方法。
本発明の形状記憶性樹脂は、第一形状記憶及び第二形状記憶には共有結合によるネットワーク構造を利用するため、形状回復能に優れており、第三の形状の固定にはガラス転移(または結晶化)を利用するため、迅速かつ容易に固定が可能である。また、第三形状の固定に利用するガラス転移(または結晶化)を室温より高い温度域である40℃以上とすることにより、室温付近で使用される電子機器の部材等の成形体として用いた場合、迅速かつ容易に固定が可能な第三形状を利用できるため有用である。
具体的には、架橋部位に共有結合性の非可逆性反応および熱可逆性反応を導入した形状記憶性樹脂が提供される。熱可逆性反応とは、結合が所定の温度で開裂し、冷却時に再結合する反応をいう。樹脂を非可逆性反応で架橋することで、架橋部位が第一の固定相、その他の樹脂部分が可逆相である形状記憶樹脂が得られる。その他の樹脂部分を熱可逆性反応で架橋することで、熱可逆性架橋部位が第二の固定相、残りの樹脂部分が可逆相となり、第二の形状記憶特性が得られる。さらに、実用温度域では共有結合架橋しているため熱硬化型として機能し、第二形状への変形時や第一形状への回復時には加熱により熱可逆結合が開裂して(半)熱硬化型となり弾性率も低下する。このため、第一形状への回復時には優れた形状回復力を有する長所を持つ形状記憶性樹脂となる。また、冷却時に再結合するため、成形前と同等の形状記憶性樹脂が得られ、繰り返し変形による形状回復率の低下も起こらない。
第三形状変形や、第二形状への回復は、Tg(またはTm)以上Td以下の温度で行い、第三形状の固定には樹脂全体を強固に拘束するTg(またはTc)を利用できる。また、主鎖に植物由来樹脂などの非石油原料を用いれば、更に環境負荷を低減させることができる。
次に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の形状記憶性樹脂のメカニズムを詳細に説明するが、以下の1から6のステップによって、成型加工(第一形状(記憶)の付与)、変形加工(第二形状(記憶)の付与)、変形加工(第三形状の付与)、第二形状記憶の回復、第一形状記憶の回復および再成形を実現する。又、図3に、概念図を示す。
1.成形加工
本発明の形状記憶性樹脂はその前駆体を所定の温度で加熱し、非可逆共有結合による架橋反応が生じることで第一形状の記憶が行われる。これを常温に冷却することにより、更に熱可逆架橋およびガラス転移が生じ第一形状成形体(a)が得られる。
2.変形加工(第二形状)
第一形状を記憶した成形体を任意の形状に変形させるには、固定相の熱可逆的架橋部が開裂するTd以上に加熱すればよい。Tg(またはTm)以上となると状態(b)に示すように樹脂は軟化するが熱可逆性架橋部はTd以上となるまでは開裂していない。さらに、Td以上に加熱されると状態(c)に示すように熱可逆性架橋部の開裂が起こる。この状態(c)では、弾性率が低く、自由に変形可能である。この状態で外力を加えることによって変形できる(同図(d))。変形された成型品をTa(可逆架橋形成温度)以下に冷却すると、変形した状態で可逆架橋が再形成されるため(同図(e))、第二の形状が記憶される。常温に冷却することにより、ガラス転移も生じ第二形状成形体が得られる(同図(f))。
3.変形加工(第三形状)
第二形状成形体をTg(またはTm)以上Td未満で加熱することにより、弾性率が低下し、外力により容易に変形する状態(g)になる。この変形はTg未満(またはTc以下)の温度域(低温域)まで冷却することにより、第三形状として固定される(同図(h))。
4.第二形状記憶の回復
第三形状は、一時的に強制固定されている可逆相(結晶相またはガラス化した非晶相)により変形状態が保たれている。したがって、加熱によりガラス化した非晶相のみが軟化する温度または可逆相の結晶相が溶融する温度(Tg(またはTm)以上Td未満の中温域)に達すると、樹脂の一部がゴム状特性を示して安定状態となり、元の第二形状を回復し(e)、これを常温に冷却することにより第二形状(f)となる。
5.第一形状記憶の回復
第二形状は、一時的に強制固定されている可逆相(熱可逆架橋)によりその変形状態が保たれている。従って成型体を加熱により可逆相の熱可逆架橋の解離温度(Td)以上にすると、さらに弾性率が低下を示して安定状態となり、元の第一形状を回復する(同図(c))。このとき、非可逆共有結合性の架橋が存在するため、優れた回復力を達成することが可能である。さらにTg未満(またはTc以下)に冷却することにより、同図(a)の初期状態の成形体に固定される。
樹脂については、導入する熱可逆反応のTd以下、電子機器用部材等成形体の使用時に耐えうる温度以上の範囲でTg(またはTm)を有する樹脂を選択する。使用する部材によって耐熱温度は異なるが、樹脂のTg(またはTm)は40℃以上200℃以下が好ましい。Tg(またはTm)は40℃未満では室温での剛性が低く、形態安定性が悪くなり、またTg(またはTm)が200℃より高い場合、成形性、加工性とも悪く、かつ多量のエネルギーが必要となるため、生産性および経済性の点から不利となる。また、樹脂のTg(またはTm)は40℃以上120℃以下が好ましい。ユーザーが製品を形状記憶する際に、実用的な加熱手段としてドライヤーやお湯等が考えられ、特にお湯による加熱を行う場合においては、100℃以下の温度範囲で比較的正確に温度制御できることから好ましい。一方、室外で用いる用途に用いる場合、Tg(またはTm)は60℃以上が好ましい。また、自動車用の内装など更に高い耐熱性が必要な用途に用いる場合、Tg(またはTm)は80℃以上が好ましい。また、樹脂のTg(またはTm)がTd以上であると、樹脂が軟化する前に架橋が開裂するため形状記憶性に優れた形状記憶を達成することが出来ない。導入する熱可逆反応のTdより10℃以上低いTg(またはTm)を有する樹脂が好ましい。
図4に本発明の形状記憶性樹脂の応用例として、割りピンへの適用例を示す。本発明の形状記憶樹脂では、製造者が付与した割りピンの第一形状(b:伸ばした状態)を、Td以上、樹脂の分解温度(Tdec)未満の温度に加熱することで、加工者が用途にあわせて任意の長さで折り曲げた第二形状(cまたはd;開いた状態)を付与することが可能である。これにより、Td以上に加熱するだけで、割りピンは元の第一状態(b)にもどり、容易に抜くことが可能となる。さらに、本発明では2段階の形状記憶が可能であり、組み立て加工者は任意の第三形状(e)を一時的に固定することが可能となる。たとえば、第三形状を第一形状と同じく伸ばした状態にし、Tg未満(またはTc以下)に冷却することにより固定することが可能となるため、容易にピンを差し込むことが可能であり、温度をTg(またはTm)以上Td未満に加熱することにより、記憶された第二形状(f:開いた状態)になる。図に示したような閉じた容器や壁など反対側からピンを開けない場合でもピンを加熱するだけで自動的にピンが開くため便利である。さらに、Td以上Tdec未満に加熱すれば、第一状態(b:伸ばした状態)に戻るため、容易に解体することができ、この操作により第二形状の記憶は失われるため、第一形状品としてリサイクル可能となる。また、植物由来樹脂などの生分解性樹脂により、本樹脂を製造すれば、環境適合性が更に向上する。
架橋部位に用いる熱可逆反応の結合の開裂温度(Td)は、50℃以上300℃以下の範囲とする。実用温度域では固定相および可逆相は硬化状態でなければ、電子機器用部材に使用可能な力学特性は得られない。従って、Tdが50℃未満であると、耐熱性の問題から電子機器用部材への適用は困難である。またTdが300℃を超えると、樹脂の熱分解や、作業上に問題が生じるため適切ではない。
次に、Tdは樹脂のTg(またはTm)+10℃以上とする。形状記憶時にはTg(またはTm)以上の温度で加熱し可逆相を軟化させて樹脂を変形させるが、この温度で固定相が架橋していなければ、樹脂の流動性を防止することができないため、形状を記憶できない。変形可能な温度範囲を広くするために、TdはTg(またはTm)+20℃以上が望ましい。さらに好ましくは、TdはTg(またはTm)+30℃以上が望ましい。
第二形状の記憶時および第一形状の回復時の温度は、Td以上とする。Td未満では樹脂の熱可逆架橋の解離が起こらないため、第二形状記憶および第一形状回復することができない。
以上をまとめると、以下の式になる。
40℃≦Tg(またはTm)≦200℃ (1)
50℃≦Td≦300℃ (2)
Tg(またはTm)+10℃≦Td (3)
40℃≦Tg(またはTm)≦Tt3<Td≦Tt2<Tdec (4)
(上記(4)式において、Tt2,Tt3はそれぞれ第二形状及び第三形状への変形温度、Tdecは樹脂の分解温度を示す。)
前記熱可逆性反応は、1種の反応形式を含んでいれば優れた形状記憶性及びリサイクル性を実現することができるが、2種以上の反応形式を含んでいても良い。2種以上の反応形式を含み、それぞれのTdが異なる場合、最も高い温度のTdをTd1,最も低い温度のTdをTd2とすると、上記(3)及び(4)式は、以下の通りとなる。
Tg(またはTm)+10℃≦Td2 (3’)
Tg(またはTm)≦Tt3<Td2<Td1≦Tt2<Tdec (4’)
又、隣接する2つのTd間(Tda、Tdb)に10℃以上の温度差がある場合、すなわち、
Tda+10℃≦Tdb (5)
であれば、上記Tt2,Tt3での形状記憶に加えて、別の形状を記憶することも可能である。別の形状記憶を行う際の変形温度をTt2’とすると、以下の関係が成立する。
Tt3<Tda≦Tt2’<Tdb (6)
また、Tm(及びTc)を明確に示す結晶性の樹脂材料を使用すると、Tm(及びTc)とTgとの間に10℃以上の温度差が存在する場合にも、別の形状記憶を行うことができる。この場合、Tm(及びTc)が40℃以上であれば、Tgは40℃未満であっても良い。例えば、Tgが10℃以下の樹脂を使用すると常温で柔らかい成形体が得られ、医療用途などに好適に使用できる。一方、Tgが40℃以上であれば、常温で硬い成形体が得られ、常温で材料の硬さが要求される用途に適している。
又、ポリマーブレンドによって、それぞれの成分が異なる架橋構造を形成し、いわゆる相互貫入高分子網目構造等を形成する場合にも、複数の形状の記憶が可能となることがある。
本発明において、非可逆性共有結合と熱可逆性共有結合の導入方法としては、非可逆性共有結合に必要な官能基および熱可逆性共有結合に必要な官能基をもつ樹脂前駆体(A型)を用いる方法の他に、非可逆性共有結合に必要な官能基を有する樹脂前駆体(B型)と熱可逆性共有結合に必要な官能基を有する樹脂前駆体(C型)を混合して用いる手法がある。また、A型にB型または、およびC型を組み合わせる手法でもよい。
熱可逆的架橋反応は、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型からなる群より選ばれる1種以上の形式である。
非可逆的架橋反応は、解離反応の温度が300℃以上で現実的に非可逆であるところの上記の反応形式のもの、オレフィンのビニル重合、アニオン重合、カチオン重合、光重合、放射線重合などの付加型、エーテル、スルフィド、アミン、シラン、アミド、エステル、カーボネートなどを生成する縮合型、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、エポキシなどによる重付加型からなる群より選ばれる1種類以上の形式である(参考:高分子の合成・反応(3)p.13〜 共立出版株式会社)。
樹脂の架橋部位のうち、共有結合性熱可逆反応による架橋部位が占める割合は、10%以上50%以下であることが好ましい。10%未満では、第二形状の記憶回復力が不十分となる場合があり、50%を超えると第一形状の記憶回復力が不十分となる場合がある。
(樹脂の官能基導入)
共有結合性熱可逆反応および共有結合性非可逆反応に必要な官能基は、樹脂材料(前駆体)の分子鎖末端に導入してもよいし、分子鎖中に導入してもよい。ただし、分子中の官能基数が少ない場合は、分子鎖の末端にも官能基が存在する方が、より多くの分子鎖を架橋構造に組み込むことが出来るので好ましい。また、導入の方法としては、付加反応、縮合反応、共重合反応などを用いることができる。
例えば、分子鎖中に官能基を導入する方法としては、ポリスチレンのカルボン酸化、ニトロ化等様々な官能基の導入方法が知られている。また、ポリスチレンのハロゲン化も知られており、アミン基への変換等、ハロゲン基の様々な化学反応を利用して、必要な官能基を導入することも可能である。
主鎖に官能基を有する樹脂も利用可能である。たとえば、ポリビニルアルコール等、水酸基を有するポリマーはエステル化、エーテル化等、官能基の導入方法が知られている。また、ポリメタクリル酸等のカルボン酸基を有する樹脂は、エステル化等の様々なカルボキシル基の化学反応が可能である。また、これらの樹脂と官能基を持たない樹脂を共重合することも可能である。
分子鎖末端に官能基を導入する方法としては、たとえば、重合時に末端封止剤を用いて、官能基を導入することができる。たとえば、スチレンなどのリビングポリマーの末端は反応性の高いカルボアニオンであるため、炭酸ガス、エチレンオキシド、保護基で保護した官能基を有するハロゲン化アルキル誘導体などとほぼ定量的に反応し、樹脂鎖末端にカルボン酸基、水酸基、アミノ基、ビニルエーテル基などを導入することが可能である。また、官能基を有する重合開始剤を用いて、樹脂鎖末端に官能基を導入することも可能である。
また、ポリアルカノエート等のポリエステル系樹脂には、エステル化反応による官能基の導入が可能である。酸やアルカリの他にカルボジイミド類などの試薬を用いてエステル化反応をすることができる。また、カルボキシル基を塩化チオニルやアリルクロライドなどを用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。また、ジカルボン酸およびジオールを原料として合成されているポリエステル類については、使用する原料のジオール/ジカルボン酸のモル比率を1より多くすることにより、分子鎖の末端基をすべてヒドロキシル基にすることが可能である。
また、エステル交換反応により、末端をヒドロキシル基にすることが可能である。即ち、ポリエステル樹脂に対し、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を用いてエステル交換することにより、末端がヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂が得られる。
ヒドロキシル基を持つ化合物として、3つ以上ヒドロキシル基をもつ化合物を用いれば、3次元架橋構造の架橋点を形成する事が出来るので特に望ましい。例えば、ポリヒドロキシブチロラクトンやポリヒドロキシバリレートなどのヒドロキシアルカノエート類のエステル結合をペンタエリスリトールでエステル交換することにより、分子鎖の末端にヒドロキシル基が合計で4つ存在するポリエステルが得られる。
2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどの3価アルコール、ペンタエリスリトール、メチルグリコシド、ジグリセリンなどの4価アルコール、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのポリペンタエリスリトール、テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールなどのシクロアルカンポリオール、ポリビニルアルコールが挙げられる。また、アドニトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、タリトール、ズルシトールなどの糖アルコール、グルコース、マンノースグルコース、マンノース、フラクトース、ソルボース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、セルロースなどの糖類が挙げられる。多価フェノールとしてはピロガロール,ハイドロキノン,フロログルシンなどの単環多価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォンなどのビスフェノール類、フェノールとホルムアルデヒドの縮合物(ノボラック)などが挙げられる。
なお、末端部にカルボン酸を有する樹脂や未反応のヒドロキシル基を有する化合物は容易に精製除去可能である。
前駆体およびヒドロキシル基で修飾された前駆体にヒドロキシベンゾイックアシッドでエステル反応を行えば、ヒドロキシル基をフェノール性水酸基に変性することが可能である。
カルボキシル基が必要な場合は、ヒドロキシル基に対し、2官能以上カルボン酸を有する化合物を上述のエステル化反応により結合させれば、カルボキシル基に変性する事が可能である。特に酸無水物を用いれば、容易にカルボキシル基を有する前駆体を調製する事が可能である。酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸やこれらの誘導体を利用することが可能である。
(熱可逆性架橋部位の化学構造)
熱可逆性架橋部位は、加熱により開裂し、冷却により共有結合する2つの第1官能基および第2官能基より構成される。溶融加工温度より低温で固化している際には、第1官能基および第2官能基は共有結合により架橋を形成しており、溶融加工温度などの所定の温度以上では、熱可逆架橋部位は第1官能基および第2官能基に開裂する。架橋部位の結合反応および開裂反応は温度変化により可逆的に進行する。なお、第1官能基および第2官能基は、異なる官能基でも良いし同じ官能基でも良い。同一の2つの官能基が対称的に結合して架橋を形成する場合、同一の官能基を第1官能基および第2官能基として使用できる。
(1)ディールス−アルダー型反応
ディールス−アルダー[4+2]環化反応を利用する。共役ジエン及びジエノフィルを官能基として導入することにより、熱可逆反応で架橋した形状記憶性樹脂を得る。共役ジエンとしては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シクロペンタジエン環、1,3−ブタジエン、チオフェエン−1−オキサイド環、チオフェエン−1,1−ジオキサイド環、シクロペンタ−2,4−ジエノン環、2Hピラン環、シクロヘキサ−1,3−ジエン環、2Hピラン1−オキサイド環、1,2−ジヒドロピリジン環、2Hチオピラン−1,1−ジオキサイド環、シクロヘキサ−2,4−ジエノン環、ピラン−2−オン環およびこれらの置換体などを官能基として用いる。ジエノフィルとしては、共役ジエンと付加的に反応して環式化合物を与える不飽和化合物を用いる。例えば、ビニル基、アセチレン基、アリル基、ジアゾ基、ニトロ基およびこれらの置換体などを官能基として用いる。また、上記共役ジエンもジエノフィルとして作用する場合がある。
これらの中でも、例えば、シクロペンタジエンを架橋反応に用いることができ、Tdは150℃以上250℃以下である。ジシクロペンタジエンは共役ジエン及びジエノフィルの両作用を有する。シクロペンタジエンカルボン酸の2量体であるジシクロペンタジエンジカルボン酸は、市販のシクロペンタジエニルナトリウムから容易に得ることができる(参考:E.Rukcensteinら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.、第38巻、第818〜825頁、2000年刊)。このジシクロペンタジエンジカルボン酸は、ヒドロキシル基を有する前駆体、ヒドロキシル基で修飾された前駆体などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に架橋部位として導入される。
また、例えば、3−マレイミドプロピオン酸および3−フリルプロピオン酸を用いれば、Tdが80℃の熱可逆反応となる。ヒドロキシル基を有する前駆体、ヒドロキシル基で修飾された前駆体などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に容易に架橋部位を導入できる。
架橋部位の導入に利用する上記のエステル化反応については、酸およびアルカリ等の他にカルボジイミド類などの触媒を用いることも可能である。また、カルボキシル基を塩化チオニル又はアリルクロライド等を用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
ジエノフィルであるマレイミド誘導体は、一分子中に少なくとも2個以上のアミノ基を有するポリアミンから合成することができる。例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、トリス(2−アミノエチル)アミン等の脂肪族アミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフイド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、ビス−(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス−(4−アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス−(3−アミノフェニル)メチルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニラミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’・5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’・5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノフェニルメタン、3,3’−ジ−n−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)メタン、トリアミノベンゼン、トリアミノトルエン、トリアミノナフタレン、トリアミノジフェニル、トリアミノピリジン、トリアミノフェニルエーテル、トリアミノジフェニルメタン、トリアミノジフェニルスルホン、トリアミノベンゾフェノン、トリアミノフェニルオルソホスフェート、トリ(アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、テトラアミノベンゾフェノン、テトラアミノベンゼン、テトラアミノナフタレン、ジアミノベンジジン、テトラアミノフェニルエーテル、テトラアミノフェニルメタン、テトラアミノフェニルスルホン、ビス(ジアミノフェニル)ピリジン、メラミン、等の芳香族アミン、アニリンとホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる芳香族ポリアミン、芳香族ジアルデヒドと芳香族アミンとの反応生成物である4官能の芳香族ポリアミン、芳香族ジアルデヒドとホルムアルデヒドの混合物と芳香族アミンとから得られる芳香族ポリアミン、ビニルアニリン類の重合体、ポリアリルアミン、ポリリジン、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン等の脂肪族ポリアミン、キチン、キトサン等の天然アミノ多糖類が挙げられる。天然由来のアミノ化合物は環境問題の点から樹脂材料として好ましい。
これらの官能基、例えば、シクロペンタジエニル基同士のディールス−アルダー型反応は、以下の一般反応式(I)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2006342298
(2)ニトロソ2量体型反応
一般反応式(II)においては、冷却により2つのニトロソ基がニトロソ二量体を形成して架橋となる。この架橋のTdは110℃から150℃である。
例えば、4−ニトロソ−3,5−ベンジル酸の2量体(参考:米国特許第3,872,057号公報に、4−ニトロソ−3,5−ジクロロベンゾイルクロライドの2量体の合成方法が記載されている。)を用い、ヒドロキシル基を有する前駆体のヒドロキシル基、ヒドロキシル基で修飾された前駆体のヒドロキシル基などと反応する事により、ヒドロキシル基の存在している部位に容易に熱可逆的架橋部位を導入できる。また、酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
ニトロソ基の二量体化反応は、以下の一般反応式(II)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2006342298
(3)酸無水物エステル型反応(酸無水物基と水酸基の反応)
酸無水物およびヒドロキシル基を架橋反応に用いることができる。酸無水物としては、脂肪族無水カルボン酸および芳香族無水カルボン酸などを用いる。また、環状酸無水物基および非環状無水物基のいずれも用いることができるが、環状酸無水物基が好適に用いられる。環状酸無水物基は、例えば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基が挙げられ、非環状酸無水物基は、例えば、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基が挙げられる。中でも、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基、無水ピロメリット酸基、無水トリメリット酸基、ヘキサヒドロ無水フタル酸基、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基およびこれらの置換体などが、ヒドロキシル基と反応して架橋構造を形成する酸無水物として好ましい。
ヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を有する前駆体のヒドロキシル基、各種の反応によりヒドロキシル基が導入された前駆体などのヒドロキシル基を使用する。また、ジオール及びポリオール等のヒドロキシ化合物を架橋剤として用いても良い。更に、ジアミン及びポリアミンを架橋剤として用いることもできる。酸無水物として、例えば、無水ピロメリット酸のような酸無水物を2つ以上有するものを用いれば、ヒドロキシル基を有する前駆体、ヒドロキシル基で修飾された前駆体などに対し架橋剤として使用できる。
また、無水マレイン酸をビニル重合により不飽和化合物と共重合することにより2つ以上の無水マレイン酸を有する化合物が容易に得られる(参考:特開平11−106578号公報(特許文献8)、特開2000−34376号公報)。これも、ヒドロキシル基を有する前駆体、ヒドロキシル基で修飾された前駆体などに対する架橋剤として使用できる。
以上の様な酸無水物とヒドロキシル基とは、以下の一般反応式(III)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。一般反応式(III)においては、冷却により酸無水物基と水酸基とがエステルを形成して架橋となる。この架橋のTdは260℃である。
Figure 2006342298
(4)ウレタン型反応(イソシアネート基と活性水素の反応)
イソシアネートと活性水素とから熱可逆的な架橋部位を形成できる。例えば、多価イソシアネートを架橋剤として用い、前駆体およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応する。また、ヒドロキシル基、アミノ基およびフェノール性水酸基から選ばれた2つ以上の官能基を有する分子を架橋剤として加えることもできる。更に、開裂温度を所望の範囲とするために、触媒を添加することもできる。また、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。
また、多価イソシアネートを架橋剤として用い、前駆体およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応させる。ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。多価イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)およびその重合体、4,4’−ジフェニルメタンシイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(DPDI)、1,3−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4‘−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4“−トリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等を用いることができる。
また、開裂温度を調整するために、1、3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機化合物、アミン類、金属石鹸などを開裂触媒として用いても良い。
以上の官能基によるウレタン化反応は、以下の一般反応式(IV)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。一般反応式(IV)においては、冷却によりフェノール性水酸基とイソシアネート基とがウレタンを形成して架橋となる。この架橋のTdは120℃以上250℃以下であり、触媒により調整可能である。
Figure 2006342298
(5)アズラクトン−ヒドロキシアリール型反応(アズラクトン基とフェノール性水酸基の反応)
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基およびこれらの基より誘導される基が挙げられ、これらの基に結合するフェノール性のヒドロキシル基が、架橋構造を形成する基に含まれるアズラクトン構造と反応する。フェノール性のヒドロキシル基を有するものとしては、フェノール性のヒドロキシル基を有する前駆体、ヒドロキシルフェノール類で修飾された前駆体などを使用する。
アズラクトン構造としては、1,4−(4,4’−ジメチルアズラクチル)ブタン、ポリ(2−ビニル−4,4’−ジメチルアザラクトン)、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサン等の多価アズラクトンが好ましい。
また、アズラクトン−フェノール反応架橋のビスアズラクチルブタン等も使用でき、これらは、例えば、前記非特許文献1に記載されている。
これらの官能基は、以下の一般反応式(V)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。一般反応式(V)においては、冷却によりアズラクトン基とフェノール性水酸基とが共有結合を形成して架橋となる。この架橋のTdは100℃以上200℃以下である。
Figure 2006342298
(6)カルボキシル−アルケニルオキシ型反応
カルボキシル基を有するものとしては、カルボキシル基を有する前駆体、カルボキシル基で修飾された前駆体などを使用する。また、アルケニルオキシ構造としては、ビニルエーテル、アリルエーテル及びこれらの構造より誘導される構造が挙げられ、2以上のアルケニルオキシ構造を有するものも使用できる。
また、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート及びビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート等のアルケニルエーテル誘導体を架橋剤として用いることもできる。
これらの官能基は、以下の一般反応式(VI)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。一般反応式(VI)においては、冷却によりカルボキシル基とビニルエーテル基とがヘミアセタールエステルを形成して架橋となる(参考:特開平11−35675号公報(特許文献7)、特開昭60−179479号公報)。この架橋のTdは100℃以上250℃以下であり、架橋構造により調整可能である。
Figure 2006342298
(架橋剤)
以上で説明した様に、熱可逆的な架橋部位を形成し得る官能基を2つ以上分子中に有する化合物は架橋剤となり得る。
酸無水物基を有する架橋剤としては、例えば、ビス無水フタル酸化合物、ビス無水コハク酸化合物、ビス無水グルタル酸化合物、ビス無水マレイン酸化合物およびこれらの置換体が挙げられる。
水酸基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオールなどの3価アルコール、ペンタエリスリトール、メチルグリコシド、ジグリセリンなどの4価アルコール、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどのポリペンタエリスリトール、テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノールなどのシクロアルカンポリオール、ポリビニルアルコールが挙げられる。また、アドニトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、タリトール、ズルシトールなどの糖アルコール、グルコース、マンノースグルコース、マンノース、フラクトース、ソルボース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、セルロースなどの糖類が挙げられる。
カルボキシル基を有する架橋剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
ビニルエーテル基を有する架橋剤としては、例えば、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、2,2−ビス〔p−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、トリス[4−(ビニロキシ)ブチル]トリメリテートが挙げられる。
フェノール性水酸基を有する架橋剤としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ピロガロール,フロログルシンなどの単環多価フェノール、ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールスルフォンなどのビスフェノール類、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としては、2官能イソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のアリール脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。また、3官能イソシアネートの例としては、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4‘−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4“−トリイソシアネート、トリレンジイソシアネートの3量体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
アズラクトン基を有する架橋剤としては、例えば、ビスアズラクトンブタン、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサンが挙げられる。
ニトロソ基を有する架橋剤としては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエンが挙げられる。
(架橋構造の選択)
冷却により結合して架橋部位を形成し、加熱により開裂する可逆的な反応の形式としては上述のように、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型などを利用できる。
しかし、熱分解および加水分解樹脂などによる主鎖の劣化や、副反応により架橋部位が失活する化学反応は避けた方がよい場合がある。たとえば、ポリ乳酸やポリカーボネート等のポリエステル樹脂は、カルボン酸により加水分解が起こるため、酸無水物エステル型架橋は適さない。ポリビニルアルコールなど水酸基を多数有する樹脂は、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型と硬化反応を起こすため適さない。一方、ディールス−アルダー型は疎水性であるため加水分解しやすい樹脂にも適用でき、水分等による反応基の失活も起こらないため、様々な樹脂に適用できる。エステル結合を多く有する植物由来樹脂にも好適に使用できる。
(樹脂)
(植物由来樹脂材料)
上記架橋物の樹脂として、植物由来原料となる樹脂材料を利用すれば、環境調和性が高い樹脂となる。
この様な植物由来樹脂材料としては、バイオマス原料から人工的に合成可能なモノマー、オリゴマー及びポリマー;バイオマス原料から合成可能なモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体;主に天然で合成され入手できるモノマー、オリゴマー及びポリマー;主に天然で合成され入手できるモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体などを使用する。
人工合成オリゴマー及びポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(島津製作所製、商品名:「ラクティ」等)、ポリグリコール酸、ポリイプシロンカプロラクトン(ダイセル社製、商品名:「プラクセル」等)などのポリヒドロキシアルカノエート、ブチレンサクシネートの重合体であるポリアルキレンアルカノエート、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル類、ポリ−γ−グルタメート(味の素社製、商品名:「ポリグルタミン酸」など)等のポリアミノ酸類などを挙げることができる。
なお、これらの人工合成オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
また、天然合成オリゴマー及びポリマーとしては、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、ゲランガム、カルボキシル基含有セルロース、カルボキシル基含有デンプン、ペクチン酸、アルギン酸などの多糖類;微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート(ゼネカ社製、商品名:「バイオポール」等)などを挙げることができ、中でも、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート等が好ましい。
なお、天然合成オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
更に、天然合成オリゴマー及びポリマーの変性体としては、リグニン等を使用できる。リグニンは、木材中に20〜30%含有されるコニフェリルアルコール及びシナピルアルコールの脱水素重合体で、生分解される。
以上の様な生分解性樹脂材料の中でも、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマー、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体が、分子間の結合力が適度であるため熱可塑性に優れ、溶融時の粘度が著しく上昇することは無く、良好な成形加工性を有するため好ましい。
なかでも、ポリエステル類およびポリエステル類の変性体が好ましく、脂肪族ポリエステル類および脂肪族ポリエステル類の変性体が更に好ましい。また、ポリアミノ酸類およびポリアミノ酸類の変性体が好ましく、脂肪族ポリアミノ酸類および脂肪族ポリアミノ酸類の変性体が更に好ましい。また、ポリオール類およびポリオール類の変性体が好ましく、脂肪族ポリオール類および脂肪族ポリオール類の変性体が更に好ましい。
以上の植物由来樹脂材料のうちこれを利用した樹脂組成物のTg(またはTm)が40℃≦Tg(またはTm)≦200℃の範囲にあるものを用いることができる。例えば、ポリ乳酸はTgが50から60℃付近にあるため、好適に用いることが可能である。また、最終的な樹脂組成物のTg(またはTm)が上述の温度範囲に入っていればよいので、上述の植物由来樹脂から選ばれる2種類以上の樹脂をもとに、アロイや共重合体を形成してこれを用いることも可能である。例えば、ポリ乳酸にその他のポリヒドロキシアルカノエートやポリブチレンサクシネートなどをブレンドすることが可能である。
また、単独でのTgが40℃未満の樹脂であっても、高いTgを有する樹脂との共重合やブレンドによりTgの調節が可能である。またTgの高い樹脂であっても可塑剤の添加によりTgの調節が可能である。
また、樹脂の架橋構造によりTgの調節が可能である。例えば、前駆体の分子量を下げたり、前駆体の官能基の数を増やしたりすることで、架橋密度が上がり樹脂のTgを上げることができる。前駆体の分子量を上げたり、前駆体の官能基の数を減らしたりすることにより、架橋密度が下がり樹脂のTgを下げることができる。以上の方法で架橋物のTgを40℃以上200℃以下に調節することが可能である。
上記前駆体の数平均分子量(以下分子量と略す)は100〜1,000,000の範囲で用いる。好ましくは、1,000〜100,000で、さらに好ましくは2,000〜50,000である。前駆体の分子量が100未満であると、樹脂の機械的特性や加工性が劣る場合がある。また、1,000,000を超えると、架橋密度が低くなるため、形状記憶性に劣る場合がある。
また、形状記憶性や耐熱性の観点から、架橋構造としては、3次元架橋構造が好ましい。3次元架橋構造の架橋密度は、樹脂材料の官能基の数、各部材の混合比などを所定の値とすることで、所望の値とされる。3次元架橋構造の架橋密度は樹脂物100g当たりに含まれる3次元構造の架橋点のモル数で表される。すなわち原料1分子中の(官能基数−2)をその分子の架橋点モル数とした。
十分な形状記憶性を実現するために架橋密度は0.0001以上が好ましく、0.001以上がさらに好ましい。一方、架橋密度は1以下が好ましく、0.3以下が特に好ましい。架橋密度が0.0001未満であると網目構造を形成しなくなり、形状回復しにくくなる場合があるためである。また、1より大きいとTg以上で十分なゴム的性質を示さなくなり、変形できなくなるため、形状記憶性樹脂として機能しなくなる場合がある。
また、Td上下の温度における貯蔵剛性率G’(Pa)の比率(G’{Td}/G’{Td+20℃}およびTg(またはTm)上下の温度における貯蔵剛性率G’(Pa)の比率(G’{Tg(またはTm)}/G’{Tg(またはTm)+20℃})が1.0×101以上、好ましくは2.0×101以上であり、かつ(G’{Tg(またはTm)}/G’{Td+20℃})が1.0×107以下の範囲、好ましくは1.0×105以下の範囲にある架橋物を用いる。G’は、Tg以上の温度ではミクロブラウン運動に基づくエントロピー弾性のために低くなり、Td以上では架橋による分子の拘束が少なくなるため、更に低下する。TgおよびTd(または、上下の温度におけるG’の比率が変形しやすさの指標となる。この(G’{Tg}/G’{Tg+20℃})が1.0×101未満ではTg以上の温度域でも十分なゴム性を示さなくなり変形しにくくなり、(G’{Tg(またはTm)}/G’{Td+20℃})が1.0×107より大きいと網目構造を形成しなくなり、形状記憶性が失われる。
また、本発明の形状記憶性樹脂を得るに際して、所望の特性を損なわない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、補強材、着色剤、安定剤(ラジカル捕捉剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、防かび材、難燃剤などを、必要に応じて併用できる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、砂、粘土、鉱滓などを使用できる。有機フィラーとしては、ポリアミド繊維や植物繊維などの有機繊維を使用できる。補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維、針状無機物、繊維状フッ素樹脂などを使用できる。抗菌剤としては、銀イオン、銅イオン、これらを含有するゼオライトなどを使用できる。難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、燐系難燃剤、無機系難燃剤などを使用できる。
以上のような樹脂および樹脂組成物は、圧縮成形、トランスファー成形、鋳型鋳造、RIM成形などの一般的な熱硬化性樹脂の成形方法により、電化製品の筐体などの電気・電子機器用途等様々な成形体に加工できる。
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ法により測定し、標準ポリスチレンを用いて換算した。また、以下の方法で性能を評価した。
ガラス転移温度(Tg)、開裂温度(Td):セイコーインスツルメント社製DSC測定装置(商品名:DSC6000)をもちいて、昇温速度10℃/分で測定を行い、ガラス転移温度(Tg)を決定した。また、吸熱ピークを開裂温度(Td)とした。
貯蔵剛性率:厚さ1.8mmの試験片を用いて、東洋精機社製粘弾性測定装置(商品名:「レオログラフ・ソリッドS-1」、10Hz,昇温速度2℃/分)により測定した。
形状記憶性:2cm×5cm×1.0mmの成型体(第一形状)を作成し、Td+20℃(たとえば実施例1では170℃)で加熱し、成型体の中央を30°に折り曲げて5秒間変形後、その形状のままで100℃において1時間保持し、第二形状を得た。この温度における成型体の角度(A1)で評価した。20°≦A1≦30°を○、10°≦A1<20°を△、0°≦A1<10°を×とした。次にTg+20℃(たとえば実施例1では65℃)で成型体を逆方向に折り曲げて(−30°)5秒間変形後Tg以下の温度に冷却することにより第三形状を得た。この時の成型体の変形性を角度(A2)で評価した。−20°≦A2≦−30°を○、−10°≦A2<−20°を△、0°≦A2<−10°を×とした。再びTg+20℃(たとえば実施例1では65℃)に加熱し、回復性を角度(A3)で評価した。0°<A3≦10°を×、10°<A3≦20°を△、20°≦A3≦30°を○とした。更に成型体をTd+20℃で60秒間加熱し、回復性を角度(A4)で評価した。20°<A4≦30°を×、10°<A4≦20°を△、0°≦A4≦10°を○とした。
前駆体としてポリ乳酸を利用した実施例を以下に示す。ポリ乳酸は生分解性を有し、植物由来材料であるため、環境問題の面から好ましい材料である。ポリ乳酸に2段階形状記憶性付与するため、以下の材料設計を行った。まず、200℃以上でポリ乳酸の熱分解が起こるため、解離温度(Td)が50℃以上200℃以下の可逆架橋部位を選択した。この可逆反応としては、ディールス−アルダー型、カルボキシル−アルケニルオキシ型、ウレタン型等を利用できる。まず、共有結合性非可逆反応が可能なヒドロキシル基を導入したポリ乳酸に、共有結合性熱可逆反応が可能な多官能フランおよび多官能マレイミドを混合し、続いて多官能イソシアネートを加える。これにより、非可逆および可逆の3次元架橋をもつ樹脂を得た。この架橋樹脂の2段階形状記憶性と生分解性について検証した。
以下、ディールス−アルダー型であるフランーマレイミド結合をポリ乳酸に導入した実施例を示す。フランーマレイミド結合の解離温度は文献(非特許文献2)において80℃あるいは140℃と記載されているが、下記の実施例で示すように、解離温度は150℃であり、ポリ乳酸ベースの樹脂に対し好適な架橋部位となる。
[実施例1]
市販のポリ乳酸(「ラクティ」(商品名)、島津製作所製)2500g(0.0243モル)とペンタエリスリトール191g(1.41モル)を200℃で4.5時間溶融混合によりエステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解させ、過剰のメタノールに注ぎ再沈殿することで、末端ヒドロキシポリ乳酸[R1]を得た。(H-NMRによる分子量は、約3、200)
次に、2−フルフリルアルコール44.1g(0.45モル)とリジントリイソシアネート40.1g(0.15モル)を混合し80℃で7時間撹拌し3官能フラン化合物[R2]を得た。
ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに溶解したトリス(2−アミノエチル)アミン25mlを75℃に加熱後、DMF250mlに溶解したexo-3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物100gを1時間かけて滴下し、2時間撹拌した。さらに無水酢酸200ml、トリエチルアミン10ml、酢酸ニッケル1gを添加し、3時間撹拌した。撹拌後、水1000mlを加え、溶媒を60℃で減圧加熱後、クロロホルムに溶解し、水洗した。クロロホルムを減圧留去後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した。さらに窒素下トルエンで24時間還流後、再結晶により3官能マレイミド[R3](収率52%)を得た。
Figure 2006342298
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0027モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0036モル)(合計9.5g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0005モル)および[R3](モル0.0005)(合計 0.5g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[実施例2]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0025モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0034モル)(合計9g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0011モル)および[R3](モル0.0011)(合計 1g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[実施例3]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0022モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0030モル)(合計8g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0021モル)および[R3](0.0021モル)(合計 2g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[実施例4]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0017モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0022モル)(合計6g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0042モル)および[R3](0.0042モル)(合計 4g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[実施例5]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0014モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0019モル)(合計5g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0053モル)および[R3](0.0053モル)(合計 5g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[実施例6]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0011モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(0.0015モル)(合計4g)および共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.0063モル)および[R3](0.0063モル)(合計 6g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[比較例1]
共有結合性非可逆架橋部分の原料として[R1](0.0028モル)およびリジントリイソシアネート(協和発酵ケミカル(株))(モル)(合計10g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[比較例2]
共有結合性熱可逆架橋部分の原料として[R2](0.011モル)および[R3](0.011モル)(合計 10g)を量りとった。これらを160℃における溶融混合物を金型内で2時間加熱したのち、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[比較例3]
市販の熱可塑型形状記憶性樹脂(「ディアプレックス」(商品名)、三菱重工業(株)製)を金型内で250℃に加熱溶融・冷却固化して、評価用の成形物を製造した。
[比較例4]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(0.1モル)とポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(平均分子量650)(0.05モル)を65℃で3時間加熱混合した。これに、1,4−ブタンジオールを(0.05モル)加え、これらを160℃において溶融混合物し、2時間加熱することにより重合物を得た(R4)。R4(10g)を230℃の金型を用い圧縮成形し、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[比較例5]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(0.6モル)とポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(平均分子量650)(0.05モル)を65℃で3時間加熱混合した。これに、1,4−ブタンジオールを(0.55モル)加え、これらを160℃において溶融混合物し、2時間加熱することにより重合物を得た(R5)。R5(10g)を230℃の金型を用い圧縮成形し、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[比較例6]
R4(5g)およびR5(5g)秤取し、230℃の金型を用い圧縮成形し、室温まで冷却することにより架橋物を得た。
[形状記憶性]
上記、11例について形状記憶性、形状回復性、再成形性を評価した。(表1)
Figure 2006342298
Figure 2006342298
表1より明らかに、比較例1および3はTdが存在せず、比較例2はTg前後の弾性率の差が小さい。
表2の形状記憶性の評価結果をみると、実施例1〜6に示した材料は、何れも2段階の形状記憶性をしめした。実施例2〜4は、TgおよびTd前後での弾性率の差が充分大きいため第三形状の固定や第一形状の回復にも優れる結果となった。比較例1、3,4および5は、可逆架橋していないことから、第二形状を保持することは不可能であった。また、比較例2は非可逆架橋が存在しないため、Td以上での加熱により溶解した(このため、A2〜A4の評価はできなかった。)。比較例6はTgの異なるウレタン系形状記憶樹脂を混合したものであるが、低温側のTg1では第三形状を保持できたが、高温側のTg2では、第二形状を保持できなかった。したがって、非共有結合架橋のみによる形状記憶樹脂の場合、形状を固定する能力が異なる形状記憶温度を有する樹脂を単に混合しても、2段階の形状記憶を行うことはできない。
以上の実施例では、第三形状の固定にTgを用いているが、Tmを用いることもできる。例えば、ポリブチレンサクシネートはTmが約110℃であり、Tgが−30℃付近にある樹脂であり、ポリ乳酸に代えてポリブチレンサクシネートを使用すればTmでの第三形状の固定が可能となる。
このように優れた形状記憶性を備えた本発明品は、電子機器用部材等様々な成形体に使用することが出来る。例えば電子機器(パソコンや携帯電話等)の外装材、ねじ、締め付けピン、スイッチ、センサー、情報記録装置、OA機器等のローラー、ベルト等の部品、ソケット、パレット等の梱包材、冷暖房空調機の開閉弁、熱収縮チューブ等に使用することができる。他にも、バンパー、ハンドル、バックミラー等の自動車用部材、ギブス、おもちゃ、めがねフレーム、歯科矯正用ワイヤー、床ずれ防止寝具等の家庭用部材等として、各種分野に応用することが出来る。
従来の形状記憶性樹脂における形状記憶の原理を説明する概念図である。 従来の熱可逆的架橋構造を導入した形状記憶性樹脂における形状記憶と再成形の原理を説明する概念図である。 本発明の形状記憶性樹脂における形状記憶と再成形の原理を説明する概念図である。 本発明の形状記憶樹脂の応用例を説明する概念図である。

Claims (11)

  1. 冷却により共有結合し、加熱により開裂する共有結合性熱可逆性反応により架橋される部位、および共有結合性非可逆反応により架橋される部位をもつ樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)または結晶溶融温度(Tm)が40℃以上200℃以下の範囲にあり、前記熱可逆性反応の開裂温度(Td)が50℃以上300℃以下、Tg(またはTm)+10℃≦Tdの範囲にあることを特徴とする形状記憶性樹脂。
  2. 樹脂の架橋部位のうち、共有結合性熱可逆反応による架橋部位が占める割合は、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の形状記憶樹脂。
  3. 前記熱可逆性反応は、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型からなる群より選ばれる1種以上の形式であることを特徴とする請求項1または2に記載の形状記憶性樹脂。
  4. 前記樹脂は、生分解性を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の形状記憶性樹脂。
  5. 前記樹脂は、植物由来の樹脂を原料とする樹脂である請求項4に記載の形状記憶性樹脂。
  6. 前記樹脂は、ポリブチレンサクシネートまたはポリヒドロキシアルカノエートを原料とする樹脂である請求項5に記載の形状記憶性樹脂。
  7. 前記樹脂は、ポリブチレンサクシネートまたはポリヒドロキシアルカノエートを原料とし、前記熱可逆性反応がディールスアルダー型である請求項6に記載の形状記憶性樹脂。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の形状記憶性樹脂の架橋物からなることを特徴とする形状記憶性樹脂成形体。
  9. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の形状記憶性樹脂の前駆体を、共有結合性非可逆反応により架橋部位を形成するように架橋硬化して記憶すべき所定の第一形状に成形し、次に、得られた成形体に、Td以上の温度で変形を与え、可逆架橋形成温度(Ta)以下の温度に冷却して変形形状を固定することにより第二形状を記憶させたことを特徴とする形状記憶性樹脂成型体。
  10. 請求項9に記載の成形体に、Tg(またはTm)以上、Td未満の温度で変形を与え、Tg未満(または結晶化温度(Tc)以下)の温度において固定することにより第三形状を付与した形状記憶性樹脂成形体。
  11. 請求項10に記載の第三形状を付与した成形体を、Tg(またはTm)以上、Td未満の温度に加熱することにより、記憶させた元の第二形状に回復させ、Td以上、樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱することにより第一形状に回復させることを特徴とする形状記憶性樹脂成形体の使用方法。
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