JP2006341538A - 熱硬化性プラスチック材料の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱硬化性プラスチック材料をマイクロ波によって誘電加熱することで硬化させて所定の形状に成形する成形方法であって、複数用意された母型11A内に調合した熱硬化性プラスチック材料を注入し、同複数の母型11Aに対してマイクロ波を照射し誘電加熱する。その際に1つの母型11Bをダミーとして内部に温度センサ20を配設し、この温度センサ20の検出した温度情報に基づいてマイクロ波の照射量を経時的に制御する。
【選択図】 図4
Description
ところが、このように熱硬化性プラスチック材料を外部からの伝導熱で加熱する場合には、材料中で対流現象が生じやすくどうしても加熱ムラが生じてしまう。単に硬化させるだけであれば大きな問題はないが、特にレンズ、フィルター、計器カバー等の透明なプラスチックで光が透過することを前提とした光学的な要素のあるプラスチック製品では透過率や屈折率等について極力均一になることを求められる。そのため、従来からそのようなプラスチック製品では伝導熱で加熱する成形方法では対流を生じさせないように数十時間をかけて非常にゆっくりと加熱処理を行っている。
しかし、このように長時間をかけて製品を得る場合では容易に量産化に対応できず、製品当たりのプラント稼働時間が長くなることから高コスト化も招来していた。
更に、同じ条件でマイクロ波を照射したとしても物体の組成によって温度履歴が異なるため、熱硬化性プラスチック材料の調合条件によってマイクロ波の照射条件も区々とならざるを得ない。このようなことから、マイクロ波による誘電加熱において、正確に温度を測定し、その温度に基づいてマイクロ波の照射量を調節する技術が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、マイクロ波による誘電加熱効果によって熱硬化性プラスチック材料を硬化させる際に、正確に温度を測定しマイクロ波の照射量を調節する熱硬化性プラスチック材料の成形方法を提供することにある。
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記温度センサは保護部材に包囲され、同温度センサ自身は熱硬化性プラスチック材料と直接接することがないことをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項2に記載の発明の構成に加え、前記保護部材は当該熱硬化性プラスチック材料又は当該熱硬化性プラスチック材料に類似する材料によって成形されていることをその要旨とする。
また、請求項4の発明では請求項2又は3に記載の発明の構成に加え、前記母型は複数の型枠と同型枠を連結する連結部材とによって内部に熱硬化性プラスチック材料が充填されるキャビティが形成され、同連結部材には熱硬化性プラスチック材料を充填するための充填口が開口されるとともに、同充填口から同キャビティ内に熱硬化性プラスチック材料が充填された後に前記保護部材を同充填口から同キャビティ内に挿入することで同保護部材の基部寄りで同充填口を塞ぐようにしたことをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかの発明の構成に加え、前記温度センサの検出する温度情報に基づいて、第1の時間帯においては第1の基準温度以上に温度が上昇しないようにマイクロ波の照射量を制御するとともに、第1の基準温度より高い第2の基準温度を設定し、同第1の時間帯経過後第2の時間帯においては同第2の基準温度以上に温度が上昇しないようにマイクロ波の照射量を制御するようにしたことをその要旨とする。
ここに、温度センサは直接熱硬化性プラスチック材料中に浸漬するようにしてもよいが、温度センサを保護部材によって包囲して温度センサ自身は熱硬化性プラスチック材料と直接接することがないように保護部材によって包囲するようにしてもよい。例えば、温度センサを比較的融点の高い熱可塑性プラスチック製薄膜(例えばナイロン製薄膜)で包囲したり、硬質の鞘部材に挿入し、この鞘部材を熱硬化性プラスチック材料中に浸漬させるようにしてもよい。このようにすれば温度センサは熱硬化性プラスチック材料が硬化しても容易に取り出すことができ、何度も使い回すことが可能となる。
母型は複数の型枠と同型枠を連結する連結部材とによって内部に熱硬化性プラスチック材料が充填されるキャビティが形成されことが多い。例えば、レンズの製造においては第1及び第2の型枠を連結部材としてのガスケットで連結し、内部に熱硬化性プラスチック材料が充填されるキャビティが形成される。このような連結部材には熱硬化性プラスチック材料を充填するための充填口が開口されるが、その際に充填口からキャビティ内に熱硬化性プラスチック材料が充填された後に前記保護部材を充填口からキャビティ内に挿入して保護部材の基部寄りで充填口を塞ぐようにすることが好ましい。これによって保護部材は温度センサを保護するのみならず熱硬化性プラスチック材料をキャビティ内に封入する蓋の役割も果たすこととなり、作業効率の向上と部品の削減を図ることが可能となる。
つまり、所定の第1の時間帯において第1の基準温度を設定し、第1の基準温度をオーバーしないように加熱制御する。加熱制御はマイクロ波発生装置の出力を下げたり入切することで実行可能である。第1の時間帯を経過し、第2の時間帯においては第1の基準温度より高い第2の基準温度を設定し、その第2の基準温度をオーバーしないように加熱制御する。このように段階的にある時間帯において一定の温度を維持させながら全体として徐々に昇温するような制御が製品の品質上好ましい。この時間帯は比較的細かく設定することが製品の品質向上の点から好ましい。
まず、成形に使用される母型11の構成について説明する。
図1に示すように、プラスチックレンズ用の母型11は第1の型枠12、第2の型枠13及び連結部材としてのガスケット14から構成されている。第1の型枠12及び第2の型枠13は表裏とも同じ曲率の球面から構成されたメニスカス形状のガラス製の円形板状体とされている。
第1の型枠12の裏面は成形されるプラスチックレンズの前面(物体側)を成形するための曲面とされ、第2の型枠13の表面は成形されるプラスチックレンズの裏面(眼球側)を成形するための曲面とされている。ガスケット14はEVA(ethylene-vinyl acetate copolymer)製の可撓性リング体であって、図2及び図3に示すように、ガスケット14内周には径方向の断面において内方に突起した形状の支持突条15が形成されている。ガスケット14には内外を連通させる充填口16が開口されている。
熱硬化性プラスチック材料Mが充填された母型11は基本的に製品としてプラスチックレンズを成形するための製品用母型11Aと、温度履歴を測定するためのダミー母型11Bとに分かれる。本実施の形態では複数の製品用母型11Aに対し1つのダミー母型11Bが用意される。図2に示すように製品用母型11Aの充填口16には栓19が取り付けられ、図3に示すようにダミー母型11Bには試験管形状のセンサ保護管20が取り付けられる。センサ保護管20は熱硬化性プラスチック材料中に進出し、装着状態でその下端がほぼ上下方向の中央位置に配置される。このように用意された母型11A,Bは図5に示すようにトレイ21にセットされる。
センサ保護管20は本実施の形態ではプラスチックレンズと同じ組成の熱硬化性プラスチック材料を使用して形成されている。センサ保護管20は例えば次のように形成される。まず、図7に示すようなベース板22に表面にフッ素樹脂加工を施した先細りの複数の棒体23を立設させたセンサ保護管製作器24を用意する。図8(a)に示すように、熱硬化性プラスチック材料を入れた浸漬槽Pに反転させたベース板22を棒体23先端が下向きとなるように同製作器24を下降させ熱硬化性プラスチック材料に浸漬させていく。そして、図8(b)に示すように、ベース板22を所定位置で保持した後、図8(c)に示すように再び上昇させる。すると、棒体23外周に熱硬化性プラスチック材料の被膜が形成されることとなる。この状態で加熱炉中で加熱硬化させて棒体23から取り外すことで薄いプラスチック製のセンサ保護管20を得る。
本実施の形態で使用される成形装置25はコラム26と、同コラム26内に配置されたベルトコンベア27を備えている。ベルトコンベア27はサーボモータ28によって回転駆動され所定の速度でトレイ21を搬送する。コラム26内にはマイクロ波を照射するマイクロ波発生装置29が内蔵されている。同装置29から発振されたマイクロ波はベルトコンベア27と重複して設置された導波管30内に発生する。ベルトコンベア27上に載置されたトレイ21は導波管30中でマイクロ波の照射を受けながらゆっくりと下流に搬送される。
導波管30の入口寄りには第1の光センサ32が配設され、出口寄りには第2の光センサ33が配設されている。トレイ22の後端のドグ34が干渉することで第1の光センサ32はトレイ22の導波管30内への進入を検出し、第2の光センサ33はトレイ22の導波管30からの退出を検出する。
コラム26上部には光ファイバー式温度計の装置本体35が配設されている。装置本体35から光ファイバー37が延出されており、その先端にはセンサ本体38が接続されている。図3に示すように、光ファイバー37及びセンサ本体38はコラム26の図示しないスリットを介して導波管30に導かれダミー母型11Bのセンサ保護管20内に挿入されている。コラム26上部には制御盤39が配設されている。制御盤39は成形装置25のメイン電源スイッチが配設されるとともに、制御盤35においてマイクロ波発生装置29の基本設定やベルトコンベア27用のサーボモータ28の基本設定等を行うことが可能となっている。
成形装置25は制御盤39に内蔵されたコントローラ41によって制御されている。コントローラ41は図示しないメモリやマイクロプロセッサ(MPU)等から構成されている。図6に示すように、コントローラ41には前記第1及び第2の光センサ32,33、装置本体35、サーボモータ28、マイクロ波発生装置29等がそれぞれ接続されている。また、タイマ42が接続されている。コントローラ41は第1の光センサ32の検出信号に基づいてトレイ21が導波管30内に完全に進入したことを検出し、マイクロ波発生装置29の駆動を開始させる。また、コントローラ41は第2の光センサ33の検出信号に基づいてトレイ21が導波管30から退出する位置にあることを検出する。また、コントローラ41はセンサ本体38の検出する温度データに基づいてマイクロ波発生装置29の駆動を経時的に制御する。また、タイマ42によって制御に伴う時間の計測を行う。
まず、ステップS1においてコントローラ21はサーボモータ28を駆動開始させてベルトコンベア27を回転させる。ベルトコンベア27の回転に伴ってトレイ22が搬送されてコラム26内の導波管30に進入していく。ステップS2においてコントローラ21は第1の光センサ32の入力の有無を判断し、入力ありと判断するとトレイ22が導波管30内へ進入したとして、ステップS3においてマイクロ波発生装置29をオン状態とする。この時、コントローラ21は装置29に比較的低い出力でマイクロ波を発振させる。これは熱硬化性プラスチック材料Mの温度が低い段階での急激な誘電加熱による製品への悪影響を防止するためである。
次いで、ステップS4においてコントローラ21は光ファイバー式温度計の装置本体35からのセンサ本体38によって検出された温度が50℃に達したかどうかを判断する。ここで、温度が50℃に達するまでは前記出力条件でマイクロ波が発振される。一方、温度が50℃に達したと判断するとステップS5においてコントローラ21はタイマ42による時間計測を開始するとともに、マイクロ波発生装置29の前記出力をわずかにアップさせる。この温度が50℃に達したときの時間計測開始時を「加熱スタートタイム」とする。
このように、ステップS6〜S10では温度が50℃に達してから少なくとも加熱スタートタイムから60分以内においては80℃を限界温度として加熱されることとなる。
コントローラ21はステップS12において温度が100℃の基準温度に達したかどうかを判断し、達していなければステップS11においてアップされた出力でマイクロ波の発振を維持させる。一方、温度が100℃に達したと判断するとステップS13において温度が80℃に達してから60分(つまり加熱スタートタイムから120分)が経過したかどうかを判断する。この時、60分経過していないと判断するとステップS14において一旦マイクロ波発生装置29をオフ状態とする。これによって第2のステージにおいて100℃以上に材料Mの温度が上昇することが防止される。そして、コントローラ21はステップS15において温度が100℃以下に下がったかどうかを判断し、温度が下がらなければそのままステップS15のルーチンを繰り返し、温度が下がった場合には再びステップS16でマイクロ波発生装置29をオン状態とし、処理はステップS12に戻る。
このように、ステップS12〜S16では温度が一旦80℃に達してから少なくとも60分以内においては100℃を上限温度として加熱されることとなる。
これに対し、ステップS13において120分が経過したと判断した場合には、ステップS17においてオン状態にあるマイクロ波発生装置29の出力をアップさせる。
・続く第3のステージでは更にアップされた出力で120分経過後130分以内においては110℃以下に保つように制御される。
・続く第4のステージでは更にアップされた出力で130分経過後140分以内においては120℃以下に保つように制御される。
・続く第5のステージでは更にアップされた出力で140分経過後180分以内においては130℃以下に保つように制御される。これらの詳しい処理は省略する。
そして、トータルとして180分が経過したと判断した場合には、コントローラ21はステップS18においてマイクロ波発生装置29をオフ状態として、加熱処理を終了させる。ここに、180分経過に伴ってトレイ21は第2の光センサ33と干渉する位置に搬送される。コントローラ21はステップS19において第2の光センサ33の入力の有無を判断し、入力ありと判断するとトレイ22が導波管30から退出する位置にあると判断し、ステップS20において数秒後にサーボモータ28の駆動を停止させる。
(1)製品用母型11Aとダミー母型11Bとはまったく同じ母型で充填されるプラスチック材料も同じであるため、加熱条件として両者はまったく同じといえる。更に、センサ本体38はダミー母型11B内部に挿入されて内部の温度を検出するようになっている。これらの点から非常に正確に温度データを得ることができ最適な条件での加熱制御に極めて貢献する。
(2)センサ本体38はセンサ保護管20によって直接熱硬化性プラスチック材料Mに接触することがないので、材料Mが熱硬化した後にセンサ本体38だけを取り出すことができるため、センサ本体38を使い回すことができ経済的である。また、センサ保護管20はダミー母型11Bの充填口16を塞ぐ栓の役割もするのでこの点でも栓を別部材で用意しなくてよく経済的である。
(3)温度が低い段階ではマイクロ波発生装置29の出力を低めに設定し、温度上昇とともに出力を上げていくようにしているため、急激な誘電加熱による製品への影響(内部対流や変色等)を防止することが可能である。
・上記制御ルーチンは一例であって他の制御方法であっても構わない。例えば上記では温度上昇とともに出力も大きくしていったが、出力は常に大きくする必要はない。つまり、出力を変えずに加熱時間と加熱温度だけで制御するようにしてもよい。また、すべてのステージで出力をアップさせていかなくともよい。
・上記ではトータルの加熱時間を180分に設定したがこれは適宜変更可能である。
・上記ではマイクロ波発生装置29の入り切りによって基準温度を維持するように制御していたが、入り切りではなく出力の大小でも構わない。
・上記では導波管型のマイクロ波発生装置29を使用したが、その他のマイクロ波発生装置でもよい。例えば、超音波併用型のマイクロ波発生装置であればマイクロ波との相乗効果が期待される。
・ガスケット14の素材は上記のEVA以外でもよい。母型11A,11Bの形状やガスケット14の形状については上記は一例である。
・トレイ21の搬送はベルトコンベア27以外の手段(例えばローラコンベア)であってもよい。
上記成形装置25は発明と関連ある部分を取り出したもの。前後に他のシステムを接続することも自由である。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
Claims (5)
- 熱硬化性プラスチック材料をマイクロ波によって誘電加熱することで硬化させて所定の形状に成形する成形方法であって、
複数用意された母型内に調合した熱硬化性プラスチック材料を注入し、同複数の母型に対してマイクロ波を照射し誘電加熱するとともに、少なくとも1つの母型内には熱硬化性プラスチック材料の温度を検出するための温度センサを配設し、同温度センサの検出した温度情報に基づいてマイクロ波の照射量を経時的に制御するようにしたことを特徴とする熱硬化性プラスチック材料の成形方法。 - 前記温度センサは保護部材に包囲され、同温度センサ自身は熱硬化性プラスチック材料と直接接することがないことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性プラスチック材料の成形方法。
- 前記保護部材は当該熱硬化性プラスチック材料又は当該熱硬化性プラスチック材料に類似する材料によって成形されていることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性プラスチック材料の成形方法。
- 前記母型は複数の型枠と同型枠を連結する連結部材とによって内部に熱硬化性プラスチック材料が充填されるキャビティが形成され、同連結部材には熱硬化性プラスチック材料を充填するための充填口が開口されるとともに、同充填口から同キャビティ内に熱硬化性プラスチック材料が充填された後に前記保護部材を同充填口から同キャビティ内に挿入することで同保護部材の基部寄りで同充填口を塞ぐことを特徴とする請求項2又は3に記載の熱硬化性プラスチック材料の成形方法。
- 前記温度センサの検出する温度情報に基づいて、第1の時間帯においては第1の基準温度以上に温度が上昇しないようにマイクロ波の照射量を制御するとともに、第1の基準温度より高い第2の基準温度を設定し、同第1の時間帯経過後第2の時間帯においては同第2の基準温度以上に温度が上昇しないようにマイクロ波の照射量を制御するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性プラスチック材料の成形方法。
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