JP2006335716A - 歯科用修復材組成物 - Google Patents

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靖和 細美
Hideyuki Ueki
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Abstract

【解決課題】
伸びなどの操作性がよく、しかも垂れ性が改善された歯科用修復材組成物を提供すること。
【解決手段】
本発明の歯科用修復材組成物は、重合性単量体と、該重合性単量体に分散された充填材とを含む歯牙の修復に用いられるペースト状の組成物であって、該充填材が、中心部分から放射状に多数の針状の構成要素が延びた構造を有する多空隙質略球状粒子を含有し、該多空隙質略球状粒子の表面がカップリング材で表面処理されていることを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、歯牙を修復するためのペースト状の歯科用修復材組成物の関する。更に詳しくは、例えば、歯冠用硬質レジン等の歯科補綴分野で使用される材料、コンポジットレジン等の歯科保存分野で使用されるレジン系の修復材組成物として好適に使用される操作性のよい歯科用修復材組成物に関する。
近年、歯科用修復材組成物には理工学特性、審美性、操作性の向上のために様々な形状や特性を持った充填材が使用されるようになってきた。このような充填材の形状は、不定形、球状等多岐にわたり、さらにその粒径も数nmから数十μmと多岐に渡っている。また
、このような充填材として、無機系充填材、有機と無機との複合体などが使用されている。
上記のような充填材を用いた歯科用修復材組成物においては、配合する充填材の形状、材質、粒径などにより発現する特性が異なり、口腔内環境にも耐え得るよう性能、および、ペーストの操作性などの必要な特性が発現するように、使用する充填材が選択される。
歯科用修復材組成物に必要とされる特性について、ペースト操作性を例にして説明すると、歯冠用修復材のように口腔内外で歯牙を修復する場合には、ペーストを用いて先ず歯牙形態を忠実に復元する必要がある。このような歯牙形態を復元するペーストの築盛工程で、ペーストが垂れると歯牙の形態を復元することが非常に困難になる。従って、ここで使用する歯科用修復材組成物は、垂れが生じにくいペーストであることが必要になる。ペーストの垂れを防止する手段としては充填材の有効性が高く、ペースト中の充填材の含有量を増やしてペーストを硬くすれば垂れは発生しにくくなる。ところが一般に充填材を配合してペーストを硬くすると、ペーストの伸びが低下する傾向がある。
伸びの低下したペーストを用いて築盛を行うと、築盛したペーストに切れが発生しやすくなり、このようにペーストの切れた部分には新たにペーストを築盛して切れ目を埋める必要がある。こうしてペーストを継ぎ足す際には気泡を巻き込む危険性が高くなるために、歯科用修復材組成物の垂れを防止するために単純に充填材を配合してペーストを硬くしたのでは、ペーストの垂れ防止効果と操作性とが両立しない。
ところで、特許文献1(特開平11-228127号公報)には、雲丹状の形態を有する粒子が
開示されている。さらに、特許文献2(特開2004-115325号公報)には、この雲丹状の酸
化亜鉛を歯科セメントに配合することができる旨の記載がある。
特許文献1に記載の粒子はアルミノシリケート粒子であり、この特許文献1にはこのようなアルミノシリケート粒子を充填材として使用することが開示されている。特に特許文献1では、雲丹状の形態を有するアルミノシリケート粒子を、その形態を利用して、例えば研磨剤、吸着剤、洗浄剤ビルダー、濾過剤、充填材などとして使用することが示されているが、このような用途において、雲丹状のアルミノシリケート粒子はそのまま使用されている。
また、特許文献2には、酸化亜鉛系の雲丹状粒子が開示されており、このような雲丹状粒子を歯科セメントの分野において使用することが開示されている〔段落〔0020〕参照〕。
しかしながら、上記の特許文献1および2には、これらの特許文献に記載されている所謂雲丹状の形態を有する粒子はそのまま使用されているが、これらの雲丹状の形態を有する粒子を歯科用の組成物として使用する際の具体的な態様は記載されていない。
本発明者は、歯科の分野で使用される修復材について、種々検討を重ねてきたが、歯科用修復材組成物においては、上述のようにその操作性(伸び)と垂れとの問題に解決することが必要であるとの知見を得ている。
そして、上記の特許文献に開示されている雲丹状粒子を用いて歯科用修復材組成物を調製したところ、得られた歯科用修復材組成物の操作性および垂れの問題が改善される傾向があることを見出した。
しかしながら、上記の雲丹状粒子を単独で使用したのでは、操作性および垂れの問題に対する改善効果は僅かであり、上記の雲丹状粒子を単独で使用したのでは所望の特性を有する歯科用修復材組成物を得ることはできない。
そこで、こうした雲丹状粒子を含有する歯科用修復材組成物中における雲丹状粒子の状態について検討した結果、この雲丹状粒子の歯科用修復材組成物中における分散状態に問題があり、この雲丹状粒子を添加した効果が充分に発現していないとの見解を得た。
従って、上記特許文献1および2に記載されているような雲丹状の粒子を歯科用修復材組成物に添加して、組成物の操作性および垂れを防止するためには、これら雲丹状の粒子が良好な分散状態を形成可能なように分散させる必要がある。
そして、特許文献1および2には、歯科用修復材組成物に、上記の雲丹状粒子を使用する際に、具体的にどのようにすれば、得られる歯科用修復材組成物の特性を改善できるかという点に関しては記載されていない。
特開平11-228127号公報 特開2004-115325号公報
本発明は、ペーストの伸び(流動性)と垂れ難さ(形態保持性)とを併せ有する歯科用修復材組成物を提供することを目的としている。
本発明の歯科用修復材組成物は、重合性単量体と、該重合性単量体に分散された充填材とを含む歯牙の修復に用いられるペースト状の組成物であって、該充填材が、中心部分から放射状に多数の針状の構成要素が延びた構造を有する多空隙質略球状粒子を含有し、該多空隙質略球状粒子の表面がカップリング材で表面処理されていることを特徴としている。
本発明で充填材として使用する多空隙質略球状粒子は、中心部分から放射状に多数の針状の構成要素が延びた構造を有しており、この多空隙質略球状粒子の外見は、概略雲丹状の形態を有する。本発明では、このような外観を有する多空隙質略球状粒子を、カップリング材を用いて表面処理して使用する。
本発明の歯科用修復材組成物は、ペーストの伸びが非常によく、しかも、ペーストの伸びがよいにも拘わらず、ペーストが垂れ難く、本発明の歯科用修復材組成物は、ペースト
の特性として相反する流動性および形態保持性の両特性が共に優れている。
次に本発明の歯科用修復材組成物について具体的に説明する。
本発明において、特に限定しない場合、粒子径は、平均粒子径((長径+短径)/2)を意味するものとする。
本発明の歯科用修復材組成物は、充填材として多空隙質略球状粒子を含有する。
本発明で充填材として使用される多空隙質略球状粒子は、たとえば特開平11-228127号
公報および特開2004-115325号公報に記載されているように、その中心部分から外側に向
かって放射状に形成された多数の針状の構成要素を有する。本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、その形状によって本発明の歯科用修復材組成物に流動性と形態保持性を賦与するものであり、このような多空隙質略球状粒子は、無機材料、有機材料、金属材料、有機材料と無機材料とが複合した複合材料など、その形成原料に特に制限はないが、一般には無機材料から形成されている。本発明の多空隙質略球状粒子を形成する無機材料としては、例えば、周期律第I、II、III、IV族元素あるいは遷移金属の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩および珪酸塩ならびにこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。さらに詳しくは、多空隙質略球状粒子は、二酸化珪素、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、バリウムガラス等のガラス、石英、硫酸バリウム、ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化チタン、バリウム含有化合物、マグネシウム含有化合物、スズ酸化物、その他のセラミックス、シリケ−ト系無機酸化物、酸化亜鉛系粒子等から形成されているものであることが好ましい。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子がシリケ−ト系無機酸化物である場合には、シリケ−ト系無機酸化物としては、例えば、シリカ/アルミナ系複合化合物、シリカ/酸化ナトリウム複合化合物、シリカ/アルミナ/酸化ナトリウム複合化合物、水ガラスなどを挙げることができる。
さらに本発明で使用する多空隙質略球状粒子が酸化亜鉛系粒子である場合には、例えば炭酸イオンおよび/または炭酸水素イオン、アンモニウムイオンを含む水溶液(I)と、
亜鉛イオンを含む水溶液(II)との混合物から得られる生成物を300℃以上の温度で焼成することにより得られる酸化亜鉛粉末を挙げることができる。
本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、上記のような成分からなり、通常後述のような成分の結晶から形成されているが、多空隙質略球状粒子が、非結晶、ガラス質、アモルファス、準結晶、繊維、あるいは、巨大分子であっても良い。
上記のような成分からなる多空隙質略球状粒子には、多数の針状の構成要素を有し、この針状の構成要素が、中心部分から外側に向かって放射状に形成された形態を有する。従って、通常の場合、この多空隙質略球状粒子の中心部分には放射状に形成された多数の針状の構成要素の一端部を収束するコア部を有している。この多空隙質略球状粒子のコア部の形状は略球状、擬球状、不定形、棒状などである。このコア部の直径は、通常は0.01〜90μm、好ましくは0.01〜40μm、さらに好ましくは0.01〜5μmである
。また、この多空隙質略球状粒子の粒子径に対するコア部の粒子径の比率(多空隙質略球状粒子の粒子径/コア部の粒子径)は、通常は1.1〜100、より好ましくは1.1〜50、さらに好ましくは1.1〜10である。
本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、上記のようなコア部から外方向に放射状に多数の針状の構成要素が伸びており、一つの多空隙質略球状粒子におけるこの針状の構成要素の本数は、通常は100本以上、好ましくは200本以上、特に好ましくは300本
以上である。
このような針状の構成要素の長径は、通常は0.5〜10μm、好ましくは0.5〜5
μm、特に好ましくは通常は0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μm、更に好まし
くは0.05〜1μmである。
また、この針状の構造要素のアスペクト比は、通常は10〜800、好ましくは30〜500、特に好ましくは50〜200の範囲内にある。
上記のような多空隙質略球状粒子(一次粒子)の平均粒子径は、通常は0.5〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは0.5〜10μmの範囲内にある。こ
のような構造を有する多空隙質略球状粒子を充填材として歯科用修復材組成物に配合すると、本発明の歯科用修復材組成物は、理工学特性が向上することは勿論、特にペーストの伸び(流動性)が良好になり、しかもペーストが垂れ難く(形態保持性)なり、大変操作性の良好なペーストを形成することが可能になる。
上記のような多空隙質略球状粒子は、電子顕微鏡を用いて観察される外観が、概略雲丹(ウニ)状の形態を有している。
典型的には、本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、典型的なウニ状形態であるムラサキウニ様形態を示すものが多く、全体が略球状である。また、針状の構成要素の短径が若干太めであるか長径が短めである場合には、パイプウニ様形態を有しているものもある。
本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、針状の構成要素が均一であれば略球体状の形態になるが、針状の構成要素が、不定形あるいは不均一である場合には、多空隙質略球状粒子の全体の形状が、略球体にならずに、押しつぶされた球体、あるいはラグビーボールのように引き伸ばされた形態になることもある。このような場合に、多空隙質略球状粒子の扁平率(長径/短径)は、通常は10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは2以下である。
上記のような多空隙質略球状粒子において、中心部にあるコア部に対して、針状の構成要素は、その一端が、ファンデルワールス力、接着成分による粘着力、結晶構造のイオン結合力あるいは共有結合力などによって接合している。即ち、針状構造要素が一次粒子であり、略球状粒子が二次粒子となることがある。その場合には、極微弱な応力、温度あるいはpH値の変化によって、こうした集合状態が解除されるものであっても良い。さらに、針状の構造要素同士(若しくはコアと)が結晶構造のようなイオン結合あるいは共有結合等にて、強固に結合していても良い。その場合においては、多空隙質略球状粒子状態の集合状態を形成する結合を解除すべく、粒子に応力を負荷した際に針状の構造要素自体がしばしば折れるほど強固であっても良い。
本発明で使用される多空隙質略球状粒子は、前記の通り、多数の針状の構造要素を有する多空隙質構造、多くの場合雲丹状の構造を有しており、高い比表面積を有する。本発明で使用する多空隙質略球状粒子の比表面積は、通常は5〜100m2/g、好ましくは5〜80m2/g、さらに好ましくは5〜70m2/gの範囲内にある。また、この多空隙質略球状粒子の嵩密度は、通常は0.05〜5.0g/ml、好ましくは0.05〜1g/ml、さらに好ましくは0.05〜0.5g/mlの範囲内にある。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子は、好適にはアルミノシリケート粒子あるいは酸化亜鉛粒子であり、この多空隙質略球状粒子がアルミノシリケート粒子である場合には、次式で示されるアルミノシリケートで表される組成を有する。
aM2O・bAl23・cSiO2・dRmn・yH2
ただし、上記式において、MはNaおよび/またはKであり、RはNa、K、Caおよ
びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子であり、AはCO3、SO4、NO3、OH、FおよびClからなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子または基であり、aは1〜6、bは2〜8、cは2〜12、dは0〜4、mは1〜2、nは1〜3、yは0〜
32を示す。
上記式で表されるアルミノシリケートにおいて、Mが、Na、Kであることが好ましく、従って、MがNaおよびKである場合、上記式においてaM2Oは、a1Na2O・a22
(但し、a1+a2=a)で表わされる。
また、上記式で表されるアルミノシリケートにおいて、Rは、好ましくはNaであり、Aは、好ましくはCO3またはNO3ある。
また、フルオロアルミノシリケートなどのようにフッ素を画乳する素材は、フッ素徐放材として好適である。
このような組成を有するアルミノシリケート粒子は、上述のように針状の構成要素を含む概略雲丹状の構造を有しており、この針状の構成要素部分が、針状結晶、板状結晶形態または柱状結晶の結晶形態を有している。ここで針状結晶形態である場合には、太さが500nm以下で、アスペクト比(長さ/太さ)で2.0以上の結晶であることが好ましく、また板状結晶形態である場合には、厚さが300nm以下で、アスペクト比(板状径/厚さ)で2.0以上のものが好ましく、柱状結晶形態である場合には、太さが50nm以上で、アスペクト比(長さ/太さ)で1.0以上2.0未満のものが好ましい。
このようなアルミノシリケートは、製造条件によって、針状結晶の集合体、板状結晶の集合体または柱状結晶の集合体となる。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子が上記アルミノシリケート粒子である場合には、その結晶が球状の集合体、テトラポッド状の集合体、塊状の集合体を形成している。また、これらの二次集合体であってもよい。
また、アルミノシリケート粒子の多孔性は、歯科用修復材組成物であるペーストの垂れおよび伸びを制御するために重要であり、多空隙質略球状粒子内の空隙率が5〜95体積%が好ましく、10〜90体積%がより好ましく、20〜90体積%がさらに好ましく、30〜90体積%が特に好ましい。なお、本発明において、多空隙質略球状粒子の空隙率の測定方法は粒子の断面形状から算出される。
多空隙質略球状粒子がアルミノシリケートの球状結晶の集合体である場合、主たるX線回折ピークが、d=0.365±0.015nmの範囲にあることが好ましい。ここで、「主たるX線回折ピーク」とは、最強のピークあるいは最も強い回折ピーク強度に対し20%以上の回折強度を示すピークをいう。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子がアルミノシリケートから形成されている場合、この多空隙質略球状粒子が多孔質であるとの観点から、X線回折パターンが、JCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards) No.20−379、20−743
、25−776、25−1499、25−1500、30−1170、31−1272、34−176、35−479、35−653、38−513、38−514、38−515および45−1373からなる群より選ばれる1種以上のカンクリナイト様のX線回折パターンを有していることが好ましい。特に、針状結晶形態、板状結晶形態または柱状結晶形態のいずれかの形態を有する多空隙質略球状粒子は、カンクリナイト様のX線回折パターンJCPDS No.38−513を示し、概略組成が、aが2〜3、bが3、cが6、
dが1〜2、RがNa、mが1,nが1〜2である。
また、本発明において多空隙質略球状粒子の平均粒径は、0.1〜500μmの範囲内
にあることが好ましく、さらに1〜100μmの範囲内にあることが特に好ましい。
また、本発明で使用する多空隙質略球状粒子として、酸化亜鉛の場合では、具体的には、10本以上の針状粒子の片端が集合してウニ状粒子を形成しているものである。ウニ状粒子の粒子径は、概ね0.5〜60μmであることが好ましい。ウニ状粒子を構成する針
状粒子の長さは、通常0.25〜30μm程度、直径は通常0.01〜1μm程度であることが好ましい。
上記のような多空隙質略球状粒子がアルミノシリケート粒子である場合には、例えば、Al化合物とSi化合物とを、CO3 2-、SO4 2-、NO3 -、Cl-等の存在下、アルカリ溶液中で反応させる方法等により製造することができる。
ここで使用されるAl化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウ
ム、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができまた、Si化合物としては、例えば、ケ
イ砂、ケイ石、水ガラス、ケイ酸ナトリウム等を挙げることができる。さらに、このようなAl化合物およびSi化合物の両者の原料として、例えば、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、マイカ、タルク等の粘土鉱物およびムライト等のアルミノケイ酸塩鉱物を用いることもできる。
また、反応液中に含有されるCO3 2-の原料としては、炭酸ガス、炭酸ナトリウム、炭
酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができ、SO4 2-の原料としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウムカ
リウム等を挙げることができ、NO3-の原料としては、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等を挙げることができCl-の原料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を挙
げることができる。
反応溶液であるアルカリ溶液には、アルカリ原料として、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムカリウム等の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等を使用することができる。さらに、必要に応じて、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等の炭酸水素塩等を使用してもよい。
アルミノシリケートからなる多空隙質略球状粒子は、前記の各種化合物を所定の割合で配合し混合して得ることができる。配合の割合については、得られる所望のアルミノシリケート粒子の組成により、適宜決定される。特に、原料の配合比率は、各原料をaM2O、bAl23、cSiO2、dRmAnで表示した場合(例えば、KOHはK2O、NaOHは
Na2Oと換算する)、b/c=0.01〜10、a/c=0.01〜100およびd/
c=0.01〜100の範囲であることが望ましい。
また、反応液中の前記組成で表されるアルミノシリケートからなる多空隙質略球状粒子の固形分濃度は、0.1〜50重量%であることが望ましい。
また、アルミノシリケートからなる多空隙質略球状粒子を製造する際の反応温度は、粒子の結晶性を高め、粒子の形態を安定化させる観点および反応容器への化学的、耐圧的負荷を低減させる観点から、好ましくは15〜300℃、より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃である。また、反応時間は、結晶化反応を完全に行わせる観点から、2時間以上、好ましくは8時間以上であることが望ましい。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子が酸化亜鉛系粒子である場合には、炭酸イオン及び/または炭酸水素イオン、アンモニウムイオンを含む水溶液(I)と、亜鉛イオンを含む水溶液(II)とを混合して得られる生成物を300℃以上の温度で焼成することにより製造することができる。
ここで使用する水溶液(I)は、炭酸イオン及び/または炭酸水素イオンと、アンモニウムイオンとを含むものである。これらイオンの発生源は特に限定されないが、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる1種以上が好適である。
またここで使用される水溶液(II)は、亜鉛イオンを含有するものであり、このような水溶液(II)における亜鉛イオンの供給源としては、例えば、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。このうち、塩化亜鉛が好適である。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子を生成させるためには、水溶液(I)に水溶液(II)を徐々に滴下することによって、水酸化イオンと炭酸イオンと亜鉛イオンとの生成物(以下「ウニ状生成物」という)を生成させる。このようなウニ状生成物は、微細な核物質が形成した後、球状化が阻害され、針状晶が成長したものであると考えられる。
水溶液(I)に水溶液(II)を滴下して酸化亜鉛系の多空隙質略球状粒子を製造するに際しては、水溶液(I)における炭酸イオンと炭酸水素イオンとの合計濃度(以下単に「水溶液(I)の濃度」という)よりも、水溶液(II)における亜鉛イオン濃度(以下単に「水溶液(II)の濃度」という)を低く設定し、さらに、水溶液(II)のpH値を2〜7に設定することが望ましい。このような条件下であれば、好適な形態のウニ状生成物を得ることができる。酸化亜鉛系の多空隙質略球状粒子を製造する際に水溶液(II)の濃度が、水溶液(I)の濃度以上である場合は、急激な中和反応が生じてしまうため、ウニ状の生成物を得られにくい。好適な濃度条件は、水溶液(I)の濃度に対する水溶液(II)の濃度が60%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。
また、水溶液(II)のpH値が2〜7、好ましくは2〜6の範囲内に設定することにより好適な形状のウニ状の生成物を得ることができる。pH値が7より高い場合は、水溶液(II)自体に沈殿物が生じやすくなる。なお、水溶液(I)のpH値は、通常6〜8程度である。
酸化亜鉛系の多空隙質略球状粒子を製造する際には、水溶液(I)の温度を通常は15〜45℃、好ましくは20〜45℃の範囲内に設定する。水溶液(I)の温度がこのような範囲内であれば、より確実にウニ状生成物を得ることができる。他方、水溶液(II)の温度は、水溶液(I)の温度より低く設定しておくことが望ましい。
水溶液(I)に対する水溶液(II)の混合量は、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンの総モル数より、亜鉛イオンの総モル数が小さくなるように設定することが望ましい。
上記のようにして水溶液(I)と水溶液(II)との混合によってウニ状生成物が生成するので、これを水溶液から分離して、300℃以上の温度で焼成することにより、ウニ状生成物が、脱水、脱炭酸が生じ、本発明で使用する酸化亜鉛系の多空隙質略球状粒子を得ることができる。焼成温度は通常は300℃以上であり、好ましくは300℃〜600℃である。
焼成工程については、特別な雰囲気を必要とせず、通常の焼成装置を使用して大気中、開放系で行えばよい。なお、低次酸化物の合成を目的とする場合には、非酸化性雰囲気で
焼成する。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子は、上記のようにして合成したものであってもよいし、例えば、花王株式会社からルナモスTMの商品名で供給されている多空隙質略球状粒子(例えば、SP−PA、SP−PBなど)を使用することもできる。
本発明では、上記のような多空隙質略球状粒子をそのまま使用するのではなく、その表面をカップリング材を用いて表面処理して使用する。
本発明で使用することができるカップリング材としては、シランカップリング材、ジルコニウムカップリング材、チタンカップリング材を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
本発明において、使用されるカップリング材の具体的な例としては、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネート、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング材、または相当するジルコニウムカップリング材、チタニウムカップリング材、および、アルミネートカップリング材等を挙げることができる。
上記のようなカップリング材を用いた表面処理方法としては、
(a)ボールミル、V−ブレンダー、ヘンシェルミキサー等を使用して表面処理材単独で用いて処理する方法、
(b)表面処理材をエタノ−ル水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した有機溶剤含有の水溶液で希釈し、多空隙質略球状粒子に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(乾式法)、
(c)エタノール、トルエン、キシレン等の有機溶媒、加水分解を促進するために適当量の水あるいは酸性水を加えた有機溶媒に、水に多空隙質略球状粒子を添加して加えて、スラリーを形成し、このスラリーに上記の表面処理材を加えて室温〜還流温度で数分間〜数時間処理し、溶媒をデカンテーションあるいはエバポレーション等の方法で除去した後、50℃〜150℃で数時間熱処理する方法(湿式、スラリ−法)、
(d)高温の多空隙質略球状粒子に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレー法)
を挙げることができる。
また、(e)後述する重合性単量体(A)に表面処理剤を直接添加し、多空隙質略球状粒子を配合する方法(インテグラルブレンド法)も利用できる。
本発明で使用する多空隙質略球状粒子は、例えば上記のようにしてカップリング材で表面処理されたものであり、使用するカップリング材の量は、多空隙質略球状粒子の比表面積等から最適値を決定することができる。多空隙質略球状粒子100重量部に対して、カップリング材を通常は0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部の範囲内の量で使用する。このような量でカップリング材を使用することにより、歯科用修復材組成物中における多空隙質略球状粒子の親和性が非常によくなり、ペースト状である本発明の歯科用修復材組成物の操作性および垂れ防止性が均衡がとれる。
即ち、本発明の歯科用修復材組成物に上記のような表面処理された多空隙質略球状粒子を添加すると、得られた歯科用修復材組成物に大変優れた付形性を発現させることができる。このような付形性に及ぼす多空隙質略球状粒子の作用効果についての理由は定かではないが、ペーストをスパチュラ等で築盛する際のスパチュラ操作時には、ペーストに外力
が加わるため多空隙質略球状粒子が流動してペーストが伸び、ペーストからスパチュラを離して外力を無くすと、多空隙質略球状粒子を形成する針状の構成要素があたかもスパイクの様な働きをしてペーストの流動を停止させるためと推察する。
本発明の歯科用修復材組成物には、上記のような表面処理された多空隙質略球状粒子(B)と、重合性単量体(A)とを含有する。
本発明の歯科用修復材組成物を構成する重合性単量体(A)としては、(i)単官能重
合性単量体、(ii)二官能重合性単量体、(iii)三官能重合性単量体、(iv)四官能以
上の重合性単量体などが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物が特に好ましい。下記に具体的に例示する。
(i)単官能重合性単量体
(i)単官能重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシートリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を挙げることができる。さらに、本発明では重合性単量体(A)として、ポリエステル鎖と重合性基を1個結合
させた重合性単量体、(メタ)アクリレート基1個とポリカーボネート基とを有する重合性単量体も使用できる。
また、本発明では重合性単量体(A)として、酸性基含有重合性単量体も用いることが
でき、そのような酸性基含有重合性単量体としては、例えば、リン酸基含有重合性単量体、ピロリン酸基含有重合性単量体、チオリン酸基含有重合性単量体、カルボン酸基含有重合性単量体、スルホン酸基含有重合性単量体等を挙げることができる。
これらの酸性基含有重合性単量体の内、リン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、(8−(メタ)アクリロイルオキシ)オクチル−3−ホスホノプロピネート等の重合性単量体を挙げることができる。
また、ピロリン酸基含有重合性単量体としては、ピロリン酸ジ〔2−(メタ)アクリロ
イルオキシエチル〕、ピロリン酸ジ〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ジ〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ジ〔12−(メタ)アクリロイルオキシドデシル〕等の重合性単量体を挙げることができる。
さらに、チオリン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンチオホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンチオホスフェート等の重合性単量体を挙げることができる。
本発明で重合性単量体(A)として使用するカルボン酸基含有重合性単量体としては、
(メタ)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸およびこれらの酸無水物、6−(メタ)アクリロイルアミノヘキシルカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルアミノヘキシルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の重合性単量体を挙げることができる。
また、スルホン酸基含有重合性単量体としては、2−(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、4−(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸、10−(メタ)アクリルアミドデシルスルホン酸等の重合性単量体を挙げることができる。
これらの(i)単官能重合性単量体のなかでは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく使用できる。
(ii)二官能重合性単量体
(ii)二官能性重合性単量体としては、芳香族系重合性化合物として、
2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロイルオキシートリエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようにこれらの(メタ)アクリレートに対応する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ジイソシアネートメチルベンゼンあるいは4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネートのよう
な芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加から得られるジアダクト等が挙げられる。
また、脂肪族系化合物としてエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどエチレングリコール系またはプロピレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、
またはエトキシ化シクロヘキサンジ(メタ)アクリレートのような環状、直鎖状、分岐状の脂肪族化合物と、エチレングリコールまたはプロピレングリコールとが結合したジ(メタ)アクリレート化合物、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンチルジメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族系ジ(メタ)アクリレート化合物、あるいは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようにこれらの(メタ)アクリレートに対応する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるアダクト、
ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)フォスフェート等が挙げられる。また、(メタ)アクリレート基2個とポリエステル基を有する化合物、例えばプラクセル200シリーズ(ポリカプロラクトンジオ−ル、ダイセル化学工業(株)製)に(メタ)アクリレート基を2個結合させた重合性単量体も使用できる。更に、(メタ)アクリレート基2個とポリカーボネート基を有する化合物、例えば、プラクセルCD(ポリカーボネートジオール)に(メタ)アクリレート基を2個結合させた重合性単量体も利用可能である。
上記のような(ii)二官能重合性単量体のなかでは、2,2−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようにこれらの(メタ)アクリレートに対応する水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加から得られるアダクト、あるいは、 ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)フォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく使用できる。
(iii)三官能重合性単量体
(iii)三官能重合性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリメチロールプロパンエーテルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(ポリプロピレングリコールトリメチロールプロパンエーテルトリ(メタ)アクリレート)、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。また、上記以外の(メタ)アクリレート基3個とポリエステル基を有する化合物、例えばプラクセル300シリーズ(ポリカプロラクトンジオ−ル、ダイセル化学工業(株)製)に(メタ)アクリレート基を3個結合させた重合性単量体も使用できる。(メタ)アクリレート基3個とポリカーボネート基を有する重合性単量体も使用できる。
(iii)三官能重合性単量体のなかでは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリ
レート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートが好ましく使用できる。(メタ)アクリレート基3個とポリエステル基を有する重合性単量体、(メタ)アクリレート基3個とポリカーボネート基を有する重合性単量体も好ましく使用できる。
(iv)四官能以上の重合性単量体
(iv)四官能以上の重合性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート化合物、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシナネートの間に脂肪族を有するジイソシアネート化合物;
ジイソシアネートメチルベンゼンあるいは4,4,−ジフェニルメタンジイソシアネー
トのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物と、グリシドールジ(メタ)アクリレートとの付加から得られるアダクト;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特公平7−80736号公報に記載されているポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレート系化合物も使用できる。また、(メタ)アクリレート基4個以上とポリエステル基を有する重合性単量体、(メタ)アクリレート基4個以上とポリカーボネート基を有する重合性単量体も使用できる。
上記(iv)四官能以上の重合性単量体のなかでは、ジ(トリメチロールプロパン)テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、上記ポリエチレン性不飽和カルバモイルイソシアヌレ−ト系化合物が好ましく使用できる。
本発明の歯科用修復材組成物には、充填材(B)が含有されており、この充填材(B)の少なくとも一部が上記の表面処理された多空隙質略球状粒子である。
本発明の歯科用修復材組成物には、上記重合性単量体100重量部に対して、通常は、5〜900重量部、好ましくは10〜800重量部の範囲内の量の充填材が含有されている。そして、このように本発明の歯科用修復材組成物中に含有される充填材(B)の少な
くとも一部、好ましくは充填材(B)の合計量100重量部に対して、通常は0.05〜
10重量部、好ましくは0.1〜7重量部の範囲内の量の充填材が、上記表面処理された多空隙質略球状粒子である。
上記のような範囲内の量で表面処理された多空隙質略球状粒子を含有することにより、ペースト状である本発明の歯科用修復材組成物が、良好な操作性を有し、かつ垂れるのを防止することができる。
本発明の歯科用修復材組成物を構成する充填材(B)として配合されている上記多空隙
質略球状粒子以外の充填材(B1)としては、無機系の充填材(B1A)、有機系の充填材(B1B)、更には有機系と無機系の充填材が一体となった複合充填材(B1C)を挙げることができる。
本発明の歯科用修復材組成物に配合することができる無機系の充填材(B1A)は、通
常は真球状、略球状体、板状、針状、棒状、繊維状等様々な形態の無機充填材を使用することができるが、本発明では特に略球状もしくは不定形が好ましい(ただし、雲丹状のものを除く)。
このような無機充填材(B1A)としては、例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金
属及びそれらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、珪酸塩、及びこれらの混合物、複合塩等が挙げられる。より詳しくは、二酸化珪素、ストロンチウムガラス、ランタンガラス、バリウムガラス等のガラス粉末、石英粉末、硫酸バリウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化チタン粉末、バリウム塩粉末、ガラスビーズ、ガラス繊維、フッ化バリウム粉末、鉛塩粉末、タルクを含有するガラス粉末、コロイダルシリカ、シリカゲル、ジルコニウム酸化物粉末、スズ酸化物粉末、その他のセラミックス粉末、シリケ−ト系無機酸化物等である。無機充填材はそのまま歯科用修復材組成物として使用することもできるが、多量の無機充填材の容易に充填し、本発明の歯科用修復材組成物により得られる硬化物の機械的性能を向上させるために無機充填材は表面処理材で疎水化されているものであることが好ましい。
ここで使用される表面処理材としては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランシリルイソシアネ−ト、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン等のシランカップリング剤、または相当するジルコニウムカップリング剤、チタニウムカップリング剤等を挙げることができる。
また、本発明において使用される無機充填材(B1A)は、以下に示すようなポリシロキ
サンで表面処理することができる。本発明で無機充填材(B1A)の表面処理に使用される
ポリシロキサンとは、分子内の−Si−O−結合が網状に連鎖した分子構造を有する化合物を意味し、さらに本発明においては「ポリシロキサン」の語は、ケイ素原子の一結合手が酸素原子の代わりに有機基と結合したオルガノポリシロキサンをも包含するものである。
本発明におけるポリシロキサンは、シラノール基を有するシラン化合物を脱水縮合した化合物であり、さらに詳細に説明すると、本発明におけるポリシロキサンは加水分解によりシラノール基を生成するシラン化合物を加水分解、あるいは、部分加水分解することによって得られるシラノール化合物のシラノール基を分子間で脱水縮合することによって得られる化合物である。
本発明において、無機充填材(B1A)の表面を上記のようなポリシロキサンで被覆する
には次の(1)、(2)の方法が可能である。
(1)シラン化合物の加水分解性基を加水分解して得られたシラノール化合物を用いて
無機充填材(B1A)を被覆し、その後、シロキサン化合物の分子間のシラノール基を脱水
縮合する方法。
具体的には、例えば次の方法が例示される。すなわち、水と混和する有機溶剤、例えばメタノール、エタノール、tert-ブタノールに、シラン化合物およびこのシラン化合物を
加水分解あるいは部分加水分解するのに必要な水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、加水分解生成物を含有する有機溶剤溶液を作製する。その後この溶液を無機充填材(B1A
)に加え、有機溶剤を加熱もしくは減圧操作により除去することにより、表面に加水分解生成物が付着した無機充填材(B1A)が得られる。これに必要に応じて酸または塩基を加
え加熱処理し、シラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより被覆された無機充填材(B1A)を得ることができる。ここでシラノール基が脱水縮合し、ポリ
シロキサンを形成している分子構造は、無機充填材(B1A)の被覆層の赤外線吸収スペク
トルにて確認することができる。
また、シラン化合物に過剰の水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、その後、水層から加水分解生成物を水と混和しない有機溶剤、例えば酢酸エチル、エチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等により抽出する。この加水分解生成物を含有する有機溶剤溶液を無機充填材(B1A)に加え、有機溶剤を加熱もしくは減圧操作により除去することによ
り、表面に加水分解生成物が付着した無機充填材(B1A)が得られる。これに必要に応じ
て酸または塩基を加え加熱処理し、シラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより表面処理された無機充填材(B1A)を得ることができる。
(2)シラン化合物を加水分解し、予め分子間でシラノール基を脱水縮合して高分子量化しておき、これを無機充填材(B1A)に被覆する方法。
具体的には、例えば次の方法が挙げられる。すなわち、シラン化合物に所定量の水を加えて酸触媒の存在下に加水分解し、副生するアルコールを留去していくとシラン化合物は縮合し、このシラン化合物のオリゴマーが生成する。このオリゴマーを無機充填材(B1A
)に加え、無機充填材(B1A)表面に付着させ、必要に応じて酸または塩基を加えて加熱
処理し、オリゴマーのシラノールの脱水縮合反応を進めることによりポリシロキサンにより表面処理された無機充填材(B1A)を得ることができる。
上記のような反応で使用されるポリシロキサンの原料となるシラン化合物としては、加水分解によりシラノール基が生成し、この生成したシラノール基が分子間で脱水縮合することでポリシロキサンを生成し得る化合物を使用することができる。このような化合物の中でも下記式(I)で表されるシラン化合物が好ましく用いられる。
[(R1 O)l(X)m]4-n‐Si‐R2 n・・・(I)
上記式(I)において、R1 は炭素数8以下の有機基、Xはハロゲン、R2 は炭素数6以下の有機基、lおよびmは0または1でかつl+m=1を満たす整数、nは0または1の整数を表す。
上記式(I)において、R1O基およびX基は加水分解によりシラノール基を生成し得る官能基または原子であり、具体的にはR1 としては、メチル基、エチル基、2−クロロエチル基、アリル基、アミノエチル基、プロピル基、イソペンチル基、ヘキシル基、2−メトキシエチル基、フェニル基、m−ニトロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基を挙げ
ることができる。また、Xとしては、塩素原子、臭素原子を挙げることができる。これらの中では、R1 としてはメチル基あるいはエチル基が好ましく、Xとしては塩素が好ましい。
上記式(I)おいて、R2は炭素数6以下の有機基であることが好ましい。具体的には、
具体的にはR2としては、メチル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、エチル基、ビニ
ル基、1,2−ジブロモビニル基、1,2−ジクロロエチル基、2−シアノエチル基、ジエチルアミノエチル基、2−アミノエチルアミノエチル基、2−(2−アミノエチルチオエチル)基、プロピル基、イソプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アミノプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を挙げることができる。子らに中でも特にメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。
上記式(I)で示す化合物の内で、n=0のシラン化合物の例としては、テトラメトキ
シシラン、テトラエトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン、ジエトキシジクロロシラン、テトラフェノキシシラン、テトラクロロシラン等を挙げることができる。これらの化合物の中では、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
さらに上記式(I)で表される化合物において、n=1の化合物の例としては、メチル
トリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン等が挙げられ、特にメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシランを挙げることができる。これらの化合物は単独もしくは組み合わせて使用することができる。
本発明で使用する無機充填材(B1A)を上記のようなポリシロキサンで表面処理する際
には、無機充填材(B1A)100重量部に対し、上記のようなポリシロキサンを通常は2
0重量部以上、より好ましくは50重量部以上の量で使用する。一方、上記のようなポリシロキサンの使用量の上限に対しては特に制限はないものの、無機充填材(B1A)100
重量部に対し、上記ポリシロキサンが500重量部を超えて使用しても、その効果が飽和してさらなる効果の増大がないことから、500重量部を上限として考えることが望ましい。
本発明で使用する表面処理された無機充填材(B1A)の構造は、無機充填材(B1A)の表面全体をポリシロキサンが被覆した状態であればよく、一個の無機充填材(B1A)を核と
しその表面をポリシロキサンでコートした単一核型の構造、および、単一核型が凝集した構造、即ち、ポリシロキサンの凝集体中に無機充填材(B1A)が分散した構造等いずれの
構造でも構わない。無機充填材(B1A)を被覆するポリシロキサン層の厚さは、平均して
ポリシロキサンの厚さは、通常は0.1〜100μmの範囲内にあり、好ましくは1〜5
0μmの範囲内にある。なお、本発明で充填材として使用される有機充填材、複合充填材
についても同様に表面処理することも可能である。
このような表面処理材を用いた無機充填材(B1A)の表面処理方法としては、
(a)ボールミル、V−ブレンダー、ヘンシェルミキサー等で表面処理剤単独で用いて処理する方法、
(b)表面処理剤を、エタノール水溶液等の有機溶剤と水とが均一に混合した有機溶剤含有の水溶液で希釈した希釈液を無機充填材に添加して混合した後、50℃〜150℃で数分間〜数時間熱処理する方法(乾式法)、
(c)エタノール、トルエン、キシレン等の有機溶媒、さらにこれらに加水分解を促進するために適当量の水あるいは酸性水を加えた有機溶媒、あるいは水に、上記の無機充填材を添加してスラリー状を調製し、このスラリーに、上記の表面処理材を加えて室温〜還
流温度で数分間〜数時間処理し、溶媒をデカンテーションあるいはエバポレーション等公知の方法で除去した後、50℃〜150℃で数時間熱処理する方法(湿式、スラリー法)、
(d)高温の無機充填材に表面処理剤をそのまま、または上記の水溶液を直接噴霧する方法(スプレー法)を挙げることができる。また、(e)上記の重合性単量体(A)に表面処理剤を直接添加し、無機充填材を配合する方法(インテグラルブレンド法)も利用できる。
もちろん、市販品が既に表面処理されている無機系の充填材はそのまま使用しても良いし、上記の方法等で更に表面処理を追加しても良い。
無機充填材に対する表面処理剤の量は、無機充填材の比表面積等から最適値を決定すれば良いが、平均粒子径が0.1μm以上の無機充填材の場合、一般的には無機充填材粉末
100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量部であり、0.1〜10重量部が特に好ましい。また、無機充填材の平均粒子径は、得られる歯科用修復材組成物の性能を勘案して適宜選択すれば良いが、一般には0.001〜100μmの範囲であり、好ましくは0.001〜30μm、更に好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.001〜5μmである。粒子径がより好ましい範囲にあると、硬化体表面が光沢であり、更に対合する歯または歯科材料を傷めにくい等の性能が付与できる。なお、歯科用修復材組成物の色調や機械的特性を損なわない範囲で炭素繊維やポリマ−型繊維を使用しても良い。
本発明で充填材(B)として使用される有機系の充填材(B1B)としては、具体的に
は(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体や共重合体、(メタ)スチレンやα−メチルスチレン等のスチレン系モノマーとブタジエンの共重合体、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体、アクリルニトリルとブタジエンとスチレンの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーの共重合体、酢酸ビニルとアルキル(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーと分子内に少なくとも一個の水酸基を有する(メタ)アクリレートとの共重合体、スチレン/アルキル(メタ)アクリレート/ブタジエン共重合体等のエラストマー粉末が好ましい。これらは単独あるいは二種類以上の粉末を組み合わせて使用してもよい。これらの有機系充填材を使用すると本発明の歯科用修復材組成物から得られる硬化体が柔軟になるため、その種類や添加量を適宜選択すれば靱性を付与でき、口腔内での割れやチッピングを防止することができる。有機系充填材の平均粒子径は、歯科用修復材組成物の性能を勘案して適宜選択すれば良く、一般には0.001〜100μm、好ましくは0.1〜
100μm、更に好ましくは0.01〜50μmの範囲内にある。
また、本発明の歯科用修復材組成物に充填材(B)として配合される複合充填材(B1C)は、無機系充填材と有機系充填材とが一体となった充填材であり、このような複合充填材(B1C)は、上記の重合性単量体(A)と、無機充填材(B1A)、及び後述する重合開始剤(C)をペースト化した後、硬化させ、更に後粉体化した充填材であることが好ましい。
このような複合充填材(B1C)の製造法としては特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合、バルク重合等の公知の方法が採用できるが、なかでも下記に示す加温、加圧下でのバルク重合が、短時間で製造でき、しかも溶媒が不要であることから好ましく利用できる。
こうした複合充填材(B1C)の具体的な製造方法としては、上記の重合性単量体(A)とベンゾイルパーオキサイド等の熱重合開始剤(C)及び無機充填材(B1A)からなるペーストを、万能攪拌機、バンバリーミキサー、二軸ロール、ニーダー等を用いて製造し、
このペーストを加熱圧縮成型機等にて0.1〜300kgf/cm2の圧力下、60〜200℃で、数分間〜数時間熱硬化させた後、硬化物を所望の平均粒子径や粒度分布になるまでボールミルやジェットミル等の粉砕機で粉砕する方法を挙げることができる。
ここで、複合充填材(B1C)の製造に用いられる重合性単量体(A)としては上記の三
官能以上の重合性単量体を主成分とする重合性単量体が好ましい。この複合充填材(B1C)の製造に用いられる無機充填材(B1A)としては、平均粒径が10μm以下、特に1μm以下の無機酸化物粉体が好ましく、ナノサイズの無機酸化物、特に、平均粒径が0.0
01〜0.1μmの範囲のアエロジルと呼ばれるコロイダルシリカが好ましく使用される
。また、重合性単量体(A)100重量部に対して無機充填材(B1A)の使用量は、通常は1〜900重量部、好ましくは20〜700重量部、更に好ましくは70〜500重量部、特に好ましくは70〜300重量部である。また、複合充填材(B1C)の製造に用
いられる重合開始剤(C)の量は、重合性単量体(A)100重量部に対して0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.01〜3重量部である。なお、複合充填材(B1C)は、そのまま使用しても良いし、歯科用修復材組成物の熱安定性向上するため、(B1C)中に存在する過酸化物を還元剤あるいは加熱することで減少させて用いても良い。加熱する場合、チッソ原子、エーテル結合、芳香族環を持った重合性単量体(A)を含むと黄変等が発生する虞があるため、重合性単量体(A)中のこれら重合性単量体の含有率は50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下に設定することが好ましい。また、上記重合性単量体(A)との親和性を向上させるために(B1C)は、表面処理材で表面処理してされていることが好ましく、この場合に使用される表面処理材としては、前掲のカップリング材を用いることができる。
さらに、複合充填材(B1C)を形成する重合性単量体(A)として、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を持つ重合性単量体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基を持つ重合性単量体、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレート等の水酸基を持つ重合性単量体等を使用した場合には、複合充填材(B1C)の
粒子の表面に存在することがある上記官能基に由来する水素結合あるいは共有結合に対して反応性を有する官能基を持つ重合性単量体で処理して使用しても良い。また、複合充填材(B1C)が、上記のような官能基を持たない場合でも、複合体に残存する二重結合ある
いは過酸化物等を重合性単量体などを用いて除去して使用することが好ましい。
多空隙質略球状粒子を含む充填材の組み合わせは本発明の歯科用修復材組成物の硬化対の特性である理工学的、審美学的特性を発揮し、更に付形性に優れるペーストであれば制限はないが、多空隙質略球状粒子と無機充填材(B1A)との組み合わせ、多空隙質略球状
粒子と複合充填材(B1C)との組み合わせ、更に多空隙質略球状粒子と有機充填材(B1B)との組み合わせ、多空隙質略球状粒子と無機充填材(B1A)及び複合充填材(B1C)との組み合わせ、多空隙質略球状粒子と有機充填材(B1B)及び複合充填材(B1C)との組み合わせ、多空隙質略球状粒子と無機系充填材(B1A)及び有機充填材(B1B)との組み合わせ、多空隙質略球状粒子と無機充填材(B1A)、有機充填材(B1B)および複合充填材(B1C)
との組み合わせが好ましい。
本発明の歯科用修復材組成物に、充填材(B)として多空隙質略球状粒子と無機充填材
(B1A)の組み合わせる場合は、多空隙質略球状粒子と無機充填材100重量部あたり、
多空隙質略球状粒子が0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜7重量部、更に好ましくは0.05〜5重量部の量になるように組み合わせる。
また、本発明の歯科用修復材組成物に、充填材(B)として、多空隙質略球状粒子と複
合充填材(B1C)との組み合わせる場合は、多空隙質略球状粒子と複合充填材100重量
部あたり、多空隙質略球状粒子が0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜3重量部である。
さらに本発明の歯科用修復材組成物が、充填材(B)として、多空隙質略球状粒子と無
機充填材(B1A)及び複合充填材(B1C)とを組み合わせる場合は、多空隙質略球状粒子と無機充填材(B1A)及び複合充填材(B1C)100重量部あたり、多空隙質略球状粒子0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜3重量部である。そして、無機充填材(B1A)及び複合充填材(B1C)との組成比は制限ないが、無機充填材対複合充填材が1〜99対99〜1重量部、好ましくは5〜95対95〜5重量部、更に好ましくは10〜90対90〜10重量部の範囲内の割合になるように用いる。
本発明の歯科用修復材組成物において、充填材(B)として、多空隙質略球状粒子と有
機充填材(B1B)とを組み合わせる場合は、多空隙質略球状粒子と有機充填材(B1B)1
00重量部あたり、多空隙質略球状粒子を、0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜3重量部の範囲内の量で用いる。
さらに、本発明の歯科用修復材組成物において、充填材(B)として、多空隙質略球状
粒子と有機充填材(B1B)及び無機充填材(B1A)とを組み合わせる場合は、多空隙質略
球状粒子と有機充填材(B1B)及び無機充填材(B1A)100重量部あたり、多空隙質略
球状粒子0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜3重量部である。そして、有機充填材(B1B)及び無機充填材(B1A)の組成比は制
限ないが、有機充填材(B1B)対無機充填材(B1A)が、1〜99対99〜1重量部、好
ましくは5〜95対95〜5重量部、更に好ましくは10〜90対90〜10重量部の範囲内になる量で使用する。
また、本発明の歯科用修復材組成物が、充填材(B)として、多空隙質略球状粒子と有
機充填材(B1B)、無機充填材(B1A)、更に複合充填材(B1C)とを組み合わせる場合は
、多空隙質略球状粒子と有機充填材(B1B)、無機充填材(B1A)、更に複合充填材(B1C
)の合計100重量部あたり、多空隙質略球状粒子0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、更に好ましくは0.05〜3重量部である。そして、有機系充填材及び無機充填材更に複合充填材の組成比は制限ないが、有機充填材(B1B)対無機充填材(B1A)対複合充填材(B1C)(重量比、合計量100)が1〜10対90〜10対9〜80
、好ましくは1〜5対90〜3対9〜82、更に好ましくは1〜3対90〜1対9〜86重量部の範囲内の量になるような量で使用する。
そして、重合性単量体(A)と多空隙質略球状粒子を含む充填材(B)を含有する本発明の歯科用修復材組成物において、充填材(B)の配合量は、重合性単量体(A)100
重量部に対して、5〜900重量部、好ましくは100〜850重量部、更に好ましくは100〜800重量部の範囲内にある。
また、本発明の歯科用修復材組成物は、充填材(B)として、上記表面処理された多空
隙質略球状粒子だけを含有するものであってもよく、この場合には重合性単量体(A)100重量部に対し、多空隙質略球状粒子を0.05〜10重量部の範囲内の量で使用する。
このような充填材(B)を含有する本発明の歯科用修復材組成物は、非常に操作性がよ
く、即ち伸びがよく、しかも垂れないという本質的に相反する特性に優れる。
本発明の歯科用修復材組成物には、上記重合性単量体(A)、多空隙質略球状粒子を含む充填材(B)の他に、(C)重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明の歯科用修復材組成物に配合される重合開始剤(C)としては、光重合開始剤(
C1)、熱重合開始剤(C2)、レドックス開始剤(C3)等公知の重合開始剤が使用可能である。
本発明の歯科用修復材組成物に配合される光重合開始剤(C1)としては、光増感剤単独、または、光増感剤と光重合促進剤との組み合わせが使用できる。
ここで使用される光増感剤としては、ベンジル、カンファーキノン等のα−ジケトン化合物、α−ナフチル、p,p'-ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルフォスフィンオキシド等の紫外光あるいは可視光で励起され重合を開始する公知の化合物類であり、これらは1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。このなかで、カンファーキノン、ジフェニルトリメチルベンゾイルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシドまたはその誘導体が特に好ましく使用される。
また、光重合開始剤(C1)を使用する際には、光重合促進剤を併用することが好ましく、ここで使用される光重合促進剤の例としては、
p−トルエンスルフィン酸またはそのアルカリ金属;
N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸、p−N,N−ジエチルアミノ安
息香酸、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸メチル、p−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブ
トキシエチル、p−N,N−ジエチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、p−N,N−ジメ
チルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジエチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−ジメチルアミノフェネチルアルコール、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、N−
エチルエタノールアミン等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン類;
上記第三級アミンまたは第二級アミンと、クエン酸、リンゴ酸、2−ヒドロキシプロパン酸との組み合わせ;
5−ブチルアミノバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類;
ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物を挙げることができる。これらの光重合促進剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。特に本発明では、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n−ブトキシエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンもしくはN,N−ジメチルアミノエチルメ
タクリレート等の重合性基を有する脂肪族系第三級アミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン類が好ましく用いられる。特に本発明の歯科用修復材組成物の硬化を速やかに完結させようとする場合には、光増感剤と光重合促進剤との組み合わせが好ましく、
カンファーキノンと、
(1)p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−n
−ブトキシエチル等の芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物またはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等の重合性基を有する脂肪族系第
三級アミンまたはN−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンのアルカリ金属塩等の第二級アミン類との組み合わせ;
(2)アシルホスフィンオキシドとの組み合わせ;
(3)アシルホスフィンオキサイドとp−トルエンスルフィン酸またはアルカリ金属塩との組み合わせ;
(4)芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物とアシルホスフィンオキシドまたはアシルホスフィンオキサイドとの組み合わせ;
(5)芳香族に直接窒素原子が結合した第三級芳香族アミンのエステル化合物とp−トルエンスルフィン酸のアルカリ金属塩との組み合わせ等が好ましく用いられる。重合促進剤の配合量は光硬化性能が促進されれば限定されないが、通常、光重合開始剤100重量部に対して1〜200重量部の範囲内の量で使用される。
本発明で反応開始剤(C)として使用可能な熱重合開始剤(C2)としては有機過酸化
物、ジアゾ系化合物等が好ましく使用できる。重合を短時間で効率良く行いたい場合には、80℃での分解半減期が10時間以下である化合物が好ましい。例えば、熱重合開始剤(C2)である有機過酸化物としては、
アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;
ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル類;
アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化スルホネート類が挙げられる。
また、熱重合開始剤(C2)として使用されるジアゾ系化合物としては、2,2’−ア
ゾビスイソブチロニトリル、4, 4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾ
ビス(4−メトキシ−2,4−ジメトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等を挙げることができる。特にベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。
さらに、重合開始剤(C)としては、ベンゾイルペルオキサイド等の有機過酸化物とN,
N−ジメチル−p−トルイジン等第三級アミン等の還元剤とを組み合わせ、常温付近で重合を開始するレドックス開始剤(C3)も使用可能である。
なお、光重合開始剤(C1)、熱重合開始剤(C2)、レドックス開始剤(C3)それぞれを組み合わせて使用しても何ら問題はない。
本発明において使用される重合開始剤(C)の組成比は、歯科用修復材組成物硬化体の機械的特性および硬化前後の色調を勘案して適宜決定すれば良いが、一般的には重合性単量体(A)100重量部に対して重合開始剤(C)は0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.01〜3重量部の範囲内の量で使用される。
本発明の修復材組成物には、さらに、安定剤、紫外線吸収剤、有機系や無機系等の顔料、染料、粘度調整剤、表面張力抑制剤、湿潤助剤、骨材、上記に記載以外の重合性単量体やポリマ−等工業的に良く知られた他の成分を添加しても良い。
上記のような組成を有する本発明の歯科用修復材組成物は、例えば、ガラス板に直径0.1mm、高さ1mm程度に歯科用修復材組成物しても、このペーストは通常は30秒以上その形態を維持する自己形態保持性を有しており、垂れが生じてその形態が崩れることはない。
本発明の歯科用修復材組成物は、歯牙の修復に用いられるペースト状の組成物であり、歯科用補綴材料や歯科用充填材料として使用することができることは勿論、歯科用接着剤、歯科用レジンセメント、レジンモディファイドグラスアイオノマー、義歯床、窩洞ライナー、窩洞用コ−ト材、知覚過敏症抑制材、デンタルマニキュア、フィシャーシーラント
等充填材入り歯科材料等にも適用することができる。
次に本発明の歯科用修復材組成物について実施例で具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
〔製造例1〕
TMPT複合充填材の製造
100gのトリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMPT」と略記する)、80gのコロイダルシリカ(一次粒子の平均粒径:0.016μm、日本アエロジル(
株)製R972)をニーダー(BENCH KNEADEAR、Irie Shokai Co.LTD製)で混練してペースト化した後、0.5gのベンゾイルペ−オキサイドを添加して更に混練した。このペーストを、金型温度120℃の加熱圧縮成型機にて5〜10MPaの圧力下で10分間加熱重
合した。この硬化物をITOH製遊星ボールミルLA-PO1(材質:アルミナ)にて30分間乾式粉砕し、#280メッシュの篩で分級して通過した複合充填材粉体を採取した。この複合材充填材(TMPTフィラー)の平均粒径は20μmであった。
〔製造例2〕
表面処理バリウムガラス充填材の調製
100gのバリウムガラス(GM8235、平均粒径1μm、ショット社製)を100mlのエタノ−ル入れ、3gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及び0.5gの精製水を添加した。2時間環流した後、エバポレ−タで溶媒を除去し、得られた粉体を窒素気流雰囲気下、80℃で24時間減圧乾燥して表面処理化バリウムガラス(m-BA)を製造した。
〔製造例3〕
表面処理した多空隙質略球状粒子の製造
100gの多空隙質略球状粒子(SP−PA、一次粒子径0.1×1.0μm、二次粒
子径2〜4μm、花王株式会社製)を500mlのエタノ−ル入れ、3gのγ−メタクリロ
キシプロピルトリメトキシシラン及び0.5gの精製水を添加した。2時間環流した後、エバポレーターで溶媒を除去し、得られた粉体を窒素気流雰囲気下、80℃で24時間減圧乾燥して表面処理された多空隙質略球状粒子(m−SP-PA)を製造した。
〔実施例1〕
ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン(UDMA)/トリ
エチレングリコールジメタクリレート/カンファーキノン/N,N-ジメチル安息香酸2-n-ブトキシエチル=74.60/24.90/0.25/0.25(重量部)の組成を有する光重合型モノマー組成物4.0gを遮光下、乳鉢に入れた。
この乳鉢にさらに、1.5gのコロイダルシリカRM50(平均一次粒子径0.04μm、表面処理化コロイダルシルカ、日本アエロジル(株))及び上記製造例3で調製した0.3gの表面処理多空隙質略球状粒子(m-SP−PA)を添加して混練してペースト状に
した。そして、更にこの乳鉢に製造例1で調製したTMPTフィラー4.2gを加えて混練して更に練り込みペースト化し、減圧下脱泡して気泡を除去してペースト状の本発明の歯科用修復材組成物を得た。
得られたペーストをガラス板上で、直径0.1mm、高さ1mm程度に築盛して立たせて、30秒間でペーストが垂れるか否かを観察したところ、殆ど垂れないことが分かった。また、スパチュラを使用してペースト硬さを触感で、また薄く伸ばしてペーストが切れるか否か(ペースト伸び)を観察した。ペースト硬さは操作に問題はなく、また、ペーストは切れることはなく伸びも良好であった。
〔比較例1〕
実施例1の光重合型モノマー組成物4.0gを遮光下、乳鉢に入れた。
この乳鉢に、1.8gのコロイダルシリカRM50(平均一次粒子径0.04μm、表面
処理化コロイダルシルカ、日本アエロジル(株))及び製造例1で調製したTMPTフィラー4.2gを入れて混練して更に練り込みペースト化し、減圧脱泡して歯科用ペーストを得た。
この歯科用ペーストを用いて、実施例1と同様に評価を行った。
ペーストの硬さと伸びは良好であったが、ペーストが垂れることが分かった。
〔実施例2〕
2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(2.6E)/トリエチレングリコールジメタクリレート/カンファーキノン/N,N-ジメチル安息香酸2-n-ブトキシエチル=74.60/24.90/0.25/0.25(重量部)の光重合型モノマー組成物4.0gを遮光下、乳鉢に入れた。そこに、0.12gの表面処理化コロイダルシリカR812(平均一次粒子径0.007μm、表面処理化コロイダルシルカ、日
本アエロジル(株))及び製造例3で調製した表面処理多空隙質略球状粒子(m-SP−PA)0.3gを加えて混練してペースト状にした。さらに、このペーストに製造例2で調製した表面処理バリウムガラス5.58gのm-BAを加えて混練して、更に練り込みペースト化した後、脱泡してペーストから気泡を除去してペースト状の本発明の歯科用修復材組成物を得た。
得られたペースト状の歯科用修復材組成物について実施例1と同様に評価を行った。
ペーストの硬さと伸びは良好であったが、ペーストの垂れは殆ど認められなかった。
〔比較例2〕
実施例2の光重合型モノマー組成物4.0gを遮光下、乳鉢に入れた。この乳鉢に表面処理化コロイダルシリカR812を0.12g及び製造例2で調製した表面処理バリウム
ガラス(m-BA)5.55gを混練してペースト化した後、脱泡してペーストから気泡を除去して歯科用ペーストを得た。
得られた歯科用ペーストについて実施例1と同様に評価を行った。
ペーストの硬さと伸びは良好であったが、ペーストが垂れることが分かった。
〔比較例3〕
実施例1において、表面処理多空隙質略球状粒子(m-SA−PA)の代わりに、製造例1で原料として使用された多空隙質略球状粒子(SA-PA.花王株式会社製)をそのまま使用した以外は同様にして歯科用ペーストを調製した。
得られた歯科用ペーストは、多空隙質略球状粒子の分散状態にムラがあるためか、伸び性に関しては実施例1の歯科用修復材組成物よりも劣っていた。また、この歯科用ペーストについて、実施例1と同様に垂れ性を評価した結果、一部に僅かに垂れが発生することがわかった。

Claims (10)

  1. 重合性単量体と、該重合性単量体に分散された充填材とを含む歯牙の修復に用いられるペースト状の組成物であって、該充填材が、中心部分から放射状に多数の針状の構成要素が延びた構造を有する多空隙質略球状粒子を含有し、該多空隙質略球状粒子の表面がカップリング材で表面処理されていることを特徴とする歯科用修復材組成物。
  2. 上記歯科用修復材組成物中に分散されている充填材の量が、該歯科用修復材組成物に含有される重合性単量体100重量部に対し、5〜900重量部の範囲内にあり、該充填材100重量部中に表面処理された多空隙質略球状粒子を0.05〜10重量部の範囲内の量で含有されることを特徴とする請求項第1項記載の歯科用修復材組成物。
  3. 上記多空隙質略球状粒子の表面処理するカップリング材の量が、多空隙質略球状粒子100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項
    または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  4. 上記歯科用修復材組成物中に充填材として含有される多空隙質略球状粒子およびその他の充填材の内無機充填材が、共にカップリング材で表面処理されていることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  5. 上記歯科用修復材組成物が、自己形態保持性を有するペースト状であることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  6. 上記針状の構造要素の長径が0.5〜10μmの範囲内にあり、該針状の構造要素の短
    径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ針状の構成要素のアスペクト比が、10〜8
    00の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  7. 上記多空隙質略球状粒子の平均粒子径が、0.5〜100μmであることを特徴とする
    請求項第1項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  8. 上記多空隙質略球状粒子が雲丹状の形状を有し、該雲丹状の多空隙質略球状粒子の表面がシランカップリング材を含む表面処理剤で処理されていることを特徴とする請求項第1
    項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  9. 上記歯科用修復材組成物が、該歯科用修復材組成物中に含有される重合性単量体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の量の重合開始剤を含有することを特徴とする請求項第1項または第2項記載の歯科用修復材組成物。
  10. 上記歯科用修復材組成物が、光重合性であることを特徴とする請求項第1項または第9項記載の歯科用修復材組成物。
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