JP2006335598A - フラーレンの高純度化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フラーレン混合物中の不純物である酸化フラーレンを低減できる簡便で実用的なフラーレンの高純度化方法を提供する。
【解決手段】 酸化フラーレンを含むフラーレン混合物に、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物を作用させ、酸化フラーレンの含有率を低減させる。また、フラーレン混合物を有機溶媒に溶解させるのが好ましい。更に、有機リン化合物は、トリアルキルホスフィンであるのが好ましく、特に、トリアルキルホスフィンは、3つのアルキル基が同一のものであるのが好ましい。また、フラーレン混合物に有機リン化合物を作用させる際の温度は、−10℃〜50℃の範囲にあるのが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フラーレン混合物に含まれる不純物である酸化フラーレンを低減させてフラーレンを高純度化する方法に関する。
1985年に発見されたフラーレン(Fullerene)は、60個あるいはそれ以上の炭素原子が球状に結合した第3の炭素同素体である(例えば、特許文献1参照)。C60(フラーレンC60)、C70(フラーレンC70)に代表されるフラーレンは、その特異な分子形状(分子構造)から電子材料部品、ダイヤモンドコーティング、電池材料、塗料、断熱材、潤滑材、医薬品、又は化粧品等の新規機能材料として高く注目されている。
フラーレンの製造方法としては、(1)グラファイト等炭素質材料からなる電極を原料としてこの電極間にアーク放電によって原料を蒸発させる方法(アーク放電法)、(2)炭素質原料に高電流を流して原料を蒸発させる方法(抵抗加熱法)、(3)高エネルギー密度のパルスレーザー照射によって炭素質原料を蒸発させる方法(レーザー蒸発法)、(4)ベンゼン等の有機物を不完全燃焼させる方法(燃焼法)等が知られている。例えば、特許文献2には、炭素化合物を燃焼させてフラーレンを含む煤状物質を製造する方法が提案され、現在ではベンゼン等の芳香族炭化水素と酸素含有ガスを反応炉に導き、減圧下で不完全燃焼させてフラーレンを含む煤状物質を製造する方法も提案されている。
燃焼法等によって製造したフラーレンを含む煤状物質には、C60、C70、及び炭素数70を超える高次フラーレン(C76、C78、C82、C84、C90、C96、C120等)のいずれか2以上を有するフラーレン混合物と、煤残留物(例えば、アセナフチレン、フルオレン、フェナントレン、ピレン、ベンゾ[b]フルオレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、トリフェニレン、ベンゾピレン等の多環状芳香族炭化水素、グラファイト構造を有する炭素、グラファイト構造を骨格とする炭化水素、及びカーボンブラック等の炭素系高分子のいずれか1又は2以上)が含まれている。煤状物質にフラーレンが可溶な溶媒を接触させて、溶媒にフラーレンを溶解させ、溶媒に不溶な煤残留物を除去して、フラーレン混合物を得る溶媒抽出法も知られている。更に、煤残留物を除去したフラーレン混合物をクロマトグラフィ等によって、特定の分子量を持つフラーレン単体に分離することもできる。
フラーレン混合物(前記したフラーレン単体も含む)には、通常不純物として、フラーレンに1つ以上の酸素原子が導入された酸化フラーレンが含まれている。酸化フラーレンが含まれると、フラーレンの酸化還元電位に影響を与える等、フラーレン混合物の品質が低下する原因にもなる。そこで、酸化フラーレンの含有率を低減させるフラーレンの高純度化方法が必要とされてきた。例えば、酸化フラーレンに中性アルミナを接触させ、フラーレンと酸素原子との結合を切断し、対応するフラーレンを得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、酸化フラーレンであるC70一酸化物にトリフェニルホスフィンを作用(反応)させて、C70一酸化物から酸素原子を取り除き、対応するフラーレンであるC70を得る方法も知られている(例えば、非特許文献2参照)。
特許第2802324号公報 特表平6−507879号公報 カスレーン M. クリーガン(Kathleen M. Creegan )、外8名、「シンセシス アンド キャラクタリゼーション オブ C60O、ザ ファースト フラーレン エポキサイド(Synthesis and characterization of C60O, the first fullerene epoxide )」、ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)、(米国)、1992年、114巻、p.1103−1105 アモス B. スミス III(Amos B. Smith, III)、外9名、「シンセシス アンド キャラクタリゼーション オブ ザ ファースト C70O エポキサイズ。ユーティリゼイション オブ 3He NMR イン アナリシス オブ フラーレン デリバティブズ(Synthesis and Characterization of the First C70O Epoxides. Utilization of 3He NMR in Analysis of Fullerene Derivatives)」、ザ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(The Journal of Organic Chemistry)、(米国)、1996年、61巻、p.1904−1905
しかしながら、非特許文献1の方法をフラーレン混合物中の酸化フラーレン削減に適用した場合には、大量のアルミナを使用するばかりか、アルミナを系中から取り除くための工程を必要とし、コストがかかると共に、作業工程が複雑となるという問題があった。また、非特許文献2の方法では、トリフェニルホスフィンに代表されるリン原子上にアリール基のみを有するトリアリールホスフィンと酸化フラーレンとの反応が非常に遅いという問題があった。このように、フラーレン混合物中の酸化フラーレンを低減するための簡便で実用的な方法は、これまで知られていない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フラーレン混合物中の不純物である酸化フラーレンを低減できる簡便で実用的なフラーレンの高純度化方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係るフラーレンの高純度化方法は、フラーレン及び酸化フラーレンを含むフラーレン混合物に、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物を作用(反応)させ、前記酸化フラーレンの含有率を低減させる。
本発明で使用するフラーレン混合物は、例えば、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96等の特定の分子量を持つフラーレン単体、これらフラーレンの混合物、又はフラーレンが1つ以上含有されている煤状物質等に、不純物として酸化フラーレンが含まれたものである。また、フラーレン混合物として、酸化フラーレンを含んだ、フラーレン誘導体(水素化フラーレン又はフッ素化フラーレン等)、金属原子又は水素分子等を内包した内包フラーレン、フラーレン類似の炭素クラスター(単層又は多層カーボンナノチューブやカーボンナノホーン等)、又はそれらとフラーレンとの混合物を適用することも可能である。
ここで、酸化フラーレンとしては、フラーレンの骨格(フラーレンに由来する骨格も含む)を有し、なおかつ1つ以上の酸素原子を有するものであれば、特に限定されず、例えば、C60一酸化物、C60二酸化物、C60三酸化物、C70一酸化物、C70二酸化物、C70三酸化物等がある。
本発明で使用する3価の有機リン化合物は、一般に(1)式の形で表され、少なくとも1つの置換基、例えばR1 がアルキル基であることが必須である。一般にアルキル基はCn(2n+1)で表現され、R1 は、鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、又はオクチル基等)、及び環状アルキル基(例えば、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基等)のいずれも用いることができる。なお、有機リン化合物のアルキル基の水素原子の一部又は全部が、芳香族環(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、フェニル基、トシル基、ナフチル基、又はピリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、又はプロポキシ基等)、又はホスフィニル基(例えば、ジアルキルホスフィニル基又はジアリールホスフィニル基等)の置換基で置換されてもよい。
Figure 2006335598
有機リン化合物の他の2つの置換基であるR2 及びR3 は、特に限定されないが、例えば、R2 及びR3 が共にアルキル基であるトリアルキルホスフィン、R2 がアルキル基でR3 が水素原子であるジアルキルホスフィン、R2 及びR3 が共に水素原子であるモノアルキルホスフィン、R2 がアルキル基でR3 がハロゲン原子であるジアルキルハロホスフィン、R2 及びR3 が共にハロゲン原子であるアルキルジハロホスフィン、R2 がアルキル基でR3 がアルコキシ基であるジアルキルアルコキシホスフィン、R2 及びR3 が共にアルコキシ基であるアルキルジアルコキシホスフィン、R2 及びR3 が共にハロゲン原子であるアルキルジハロホスフィン、R2 がアルキル基でR3 がアリール基であるジアルキルアリールホスフィン、又は、R2 及びR3 が共にアリール基であるアルキルジアリールホスフィン等が使用できる。
本発明では、酸化フラーレンに含まれる酸素と、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物とが反応して、有機リン化合物が酸化フラーレン中の酸素と結合して酸化されると共に、酸化フラーレンの酸素が還元されて切断され、酸化フラーレンがその対応するフラーレンとなる。
フラーレン混合物中の酸化フラーレンの含有率は特に限定されないが、フラーレン混合物に対する酸化フラーレンの割合が0. 01〜1倍モル量(0.01〜1等量)の際に本発明を適用すると好適である。また、有機リン化合物は、酸化フラーレンを低減するのに必要かつ十分な量であることが肝要であり、具体的には、酸化フラーレンに含まれる酸素原子のモル量に対し、1〜3倍モル量(1〜3等量)の有機リン化合物を用いるのが好ましい。更に、本発明を実施する雰囲気は、酸素によりフラーレン混合物が酸化され酸化フラーレンとなる副反応を抑制するため、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で実施するのが望ましい。
本発明に係るフラーレンの高純度化方法において、前記フラーレン混合物を有機溶媒に溶解させるのが好ましい。
使用する有機溶媒としては、フラーレンが可溶である溶媒、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素等があり、それらは環式及び非環式のいずれでもよく、また、これらの溶媒を単独又は2種類以上を任意の割合で用いてもよい。
ここで、芳香族炭化水素は、分子内に少なくとも1つのベンゼン核を有する炭化水素化合物であり、例えば、アルキルベンゼン類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、シメン等)、アルキルナフタレン類(例えば、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン等)、テトラリン等がある。
また、脂肪族炭化水素は、環式及び非環式のいずれも使用できる。環式の脂肪族炭化水素としては、単環式脂肪族炭化水素(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)と、その誘導体(例えば、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等)と、多環式脂肪族炭化水素(例えば、デカリン等)とがある。非環式の脂肪族炭化水素としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン等がある。
更に、塩素化炭化水素としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等がある。
また、有機溶媒として、炭素数6以上のケトン、炭素数6以上のエステル類、炭素数6以上のエーテル類、及び二硫化炭素等のいずれか1又は2以上を使用してもよい。
ここで、工業的観点から、これらの有機溶媒の中でも常温液体で沸点が100〜300℃、中でも120〜250℃のものが、フラーレンの溶媒として好適である。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチシレン、1−メチルナフタレン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素を用いることが好ましく、1種単独としても、あるいは2種以上の混合溶媒としても使用することができる。
本発明に係るフラーレンの高純度化方法において、前記有機リン化合物は、トリアルキルホスフィンであるのが好ましく、特に、前記トリアルキルホスフィンは、3つの前記アルキル基が同一のものであるのが好ましい。
トリアルキルホスフィンとしては、リン原子上の3つの置換基がすべて異なるもの、2つの置換基が同一のもの、3つの置換基が全て同一のものが存在するが、入手の容易さから、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリsec−ブチルホスフィン、トリtert−ブチルホスフィン、トリn−ヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の3つの置換基が全て同一のものが適している。
本発明に係るフラーレンの高純度化方法において、前記フラーレン混合物に前記有機リン化合物を作用させる際の温度は、−10℃〜50℃の範囲にあるのが好ましい。
フラーレン混合物に有機リン化合物を作用させる際の温度が、−10℃未満の場合には、反応速度が遅くなり、50℃を超えると別の不純物が副生する。
請求項1〜5に記載のフラーレンの高純度化方法においては、フラーレン及び酸化フラーレンを含むフラーレン混合物に、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物を作用させるので、酸化フラーレンに含まれる酸素と有機リン化合物とが結合して、酸化フラーレンが対応するフラーレンとなり、容易に酸化フラーレンの含有率を低減させることができる。
特に、請求項2記載のフラーレンの高純度化方法においては、フラーレン混合物を有機溶媒に溶解させるので、フラーレンと有機リン化合物とを効果的に接触させることが可能であると共に、有機溶媒中で反応させるので、取り扱い易い。
請求項3記載のフラーレンの高純度化方法においては、有機リン化合物が、トリアルキルホスフィンであるので、工業的に広く用いられ価格が安く、更に化学的に安定で酸化フラーレンとの反応効率がよい。
請求項4記載のフラーレンの高純度化方法においては、トリアルキルホスフィンが、3つのアルキル基が同一のものであるので、容易に入手できる。
請求項5記載のフラーレンの高純度化方法においては、フラーレン混合物に有機リン化合物を作用させる際の温度が−10℃〜50℃の範囲にあるので、温度管理が容易であると共に、不純物の副生を抑えることができる。
本発明の一実施の形態に係るフラーレンの高純度化方法は、フラーレン及び酸化フラーレンを含むフラーレン混合物に、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物を作用(反応)させて、酸化フラーレンの含有率を低減させるものである。以下、詳しく説明する。
使用するフラーレン混合物として、例えば、燃焼法によって製造したフラーレンを含む煤状物質を溶媒抽出法によって煤残留物を除去したものを使用する。このフラーレン混合物には、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96、及びC120等のいずれか1又は2以上のフラーレンと、フラーレンの骨格(フラーレンに由来する骨格も含む)を有し、なおかつ1つ以上の酸素原子を有する酸化フラーレンとが含まれている。酸化フラーレンとしては、例えば、C60一酸化物、C60二酸化物、C60三酸化物、C70一酸化物、C70二酸化物、C70三酸化物等があるが、これらに限定されない。
フラーレン混合物を、有機溶媒の一例である1,2,4−トリメチルベンゼン(以下、TMBともいう)に溶解させ、窒素雰囲気下で−10℃〜50℃、例えば、25℃に保持しながら攪拌する。更に、この溶液に有機リン化合物として3つのアルキル基が同一であるトリn−ブチルホスフィンをフラーレン混合物に含まれる酸化フラーレンの酸素のモル数に対して1〜3等量、例えば、2等量(2倍モル量)添加した。この混合溶液中では、酸化フラーレンとトリn−ブチルホスフィンとが接触して、酸化フラーレンが還元されて、対応するフラーレンに変換される。すなわち、トリn−ブチルホスフィンが酸化フラーレンの酸素と結合して酸化されると共に、酸化フラーレンの酸素が切断され、となる。例えば、C60一酸化物、C60二酸化物、及びC60三酸化物は、C60となり、C70一酸化物、C70二酸化物、及びC70三酸化物は、C70となる。
混合溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等によって所定時間毎に分析し、混合溶液中の酸化フラーレンの量を測定する。ここで、混合溶液中の酸化フラーレンが消失、すなわち、混合溶液中の実質的に全ての酸化フラーレンがフラーレンに変換されていることを確認する。これによって、フラーレンを含む溶液が得られる。また、フラーレンを含む溶液には、フラーレンの他に、過剰な有機リン化合物及び有機リン化合物の酸化物等の有機リン化合物に由来する物質(有機リン化合物由来物質)が含まれている。
従って、フラーレンを含む溶液からフラーレンを単離するためには、有機リン化合物由来物質を除去する必要がある。ここで、有機リン化合物由来物質が、使用するTMBに不溶である場合には、例えば、濾過又はデカンテーション等により、TMBに不溶な有機リン化合物由来物質を除去し、TMBに溶解しているフラーレンを分離することができる。また、有機リン化合物由来物質が、TMBに可溶である場合には、例えば、晶析等によりフラーレンを固体として析出させ、更に濾過又はデカンテーション等により、固体のフラーレンを分離することができる。
実施例として、97質量%のC60と3質量%のC60一酸化物とを含むフラーレン混合物2.0gを、150mLのTMBに溶解させ、窒素雰囲気下25℃で攪拌しながら、トリn−ブチルホスフィン34mg(C60一酸化物に対して2等量)を添加した。HPLCによってこの混合溶液中の成分を逐次分析し、1時間後に酸化フラーレンが消失したことを確認した。混合溶液を吸引濾過して、混合溶液中の不溶物を濾別し、濾液としてフラーレンを含む溶液を得た。得られた溶液を40℃で攪拌しながら2−プロパノール600mLを3時間かけて滴下してC60を含む固体を析出(晶析)させた。析出した結晶を濾別し、100℃で10時間乾燥させ、1. 9gの結晶を得た。この結晶をHPLCにより分析したところ、純度が100質量%のC60であった。また、プラズマ発光分析により、有機リン化合物に由来するリンの残存量は10ppm以下であり、溶液中の有機リン化合物由来物質が効果的に除去されていることが確認できた。
比較例として、97質量%のC60と3質量%のC60一酸化物とを含むフラーレン混合物2.0gを、150mLのTMBに溶解させ、窒素雰囲気下25℃で攪拌しながら、リン原子上にアリール基のみを有し、アルキル基を有さないトリフェニルホスフィン43mg(C60一酸化物に対して2等量)を添加した。しかしながら、4時間後においても、C60一酸化物の減少は確認されなかった。更に、この混合溶液を100℃で加熱し3時間攪拌したが、混合溶液中のC60とC60一酸化物との質量比は、98. 0/2. 0であり、高純度のC60を得ることはできなかった。
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記した実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明のフラーレンの高純度化方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態のフラーレンの高純度化方法において、同一のアルキル基を3つ有するトリアルキルホスフィンであるトリn−ブチルホスフィンを使用したが、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物であればよい。
また、前記実施の形態では、フラーレン混合物として、溶媒抽出法によって煤状物質から煤残留物を除去したフラーレン混合物や、C60及びC60一酸化物を含むフラーレン混合物を使用したが、フラーレン及び酸化フラーレンを含むものであればよく、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C86、C88、C90、C92、C94、C96等の特定の分子量を持つフラーレン単体、これらフラーレンの混合物、及びフラーレンが1つ以上含有されている煤状物質のいずれか1又は2以上と、不純物として酸化フラーレンとが含まれたものが使用できる。
更に、有機溶媒としては、TMBの他に、フラーレンが可溶である芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は塩素化炭化水素等が使用でき、それらは環式及び非環式のいずれでもよく、また、これらの溶媒を単独又は2種類以上を任意の割合で用いてもよい。

Claims (5)

  1. フラーレン及び酸化フラーレンを含むフラーレン混合物に、1つ以上のアルキル基を有する3価の有機リン化合物を作用させ、前記酸化フラーレンの含有率を低減させることを特徴とするフラーレンの高純度化方法。
  2. 請求項1記載のフラーレンの高純度化方法において、前記フラーレン混合物を有機溶媒に溶解させることを特徴とするフラーレンの高純度化方法。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載のフラーレンの高純度化方法において、前記有機リン化合物は、トリアルキルホスフィンであることを特徴とするフラーレンの高純度化方法。
  4. 請求項3記載のフラーレンの高純度化方法において、前記トリアルキルホスフィンは、3つの前記アルキル基が同一のものであることを特徴とするフラーレンの高純度化方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレンの高純度化方法において、前記フラーレン混合物に前記有機リン化合物を作用させる際の温度は、−10℃〜50℃の範囲にあることを特徴とするフラーレンの高純度化方法。
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Werner et al. Rylene-and diaza-rylene-derived cobalt clusters for solid-state pyrolysis towards undoped and N-doped carbon nanoparticles