JP2006335483A - 糸のトラバース装置、及びそれを備える繊維機械 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 糸を巻き取る巻取ボビン2に糸を綾振るために、糸ガイド6aを備えたアーム6を往復回動させるアーム駆動部7を備えるトラバース装置3であって、2つのヨーク14a・14bのそれぞれに永久磁石16a・16bが設けられ、前記エアギャップ15を2列に分列する中央ヨーク14mが設けられ、前記2列のエアギャップ15a・15bのそれぞれには、径方向を向き、互いに逆向きである磁力線17a・17bが永久磁石16a・16bによって形成されており、前記電気コイル12の一部が、前記中央ヨーク14mを取り巻くようにして前記2列のエアギャップ15a・15bのそれぞれに内挿されている。
【選択図】 図1
Description
ここで、トラバース装置の技術分野では(ディスクドライブのヘッド位置決めの分野と異なり)、近年の糸の高速巻取の傾向に伴い、高速で連続的に往復反転を繰り返すニーズが強くなってきている。特許文献3の段落番号0027で、糸ガイドの往復運動幅の終端点における滞在時間の短縮(換言すれば、鋭い反転)が綾巻きボビンの密度の均一化を生じせしめるとしているように、パッケージの品質向上のためには、反転に抗する慣性力(イナーシャ)をできる限り低減することが重要な課題となっている。
また、別の観点から言えば、上記特許文献2の駆動構成では、前記アームの駆動トルクは、特許文献2の図9に示すように、前記電気コイルのうち、前記アームの回動軸に近い側のコイル辺に作用する電磁力Fによるトルクと、該回動軸から遠い側に位置するコイル辺に作用する電磁力Fによるトルクとのトルク差によって得られるものであるから、大きな駆動トルクを期待することは困難である。
ここで、上記技術分野では、上述の如くイナーシャをできる限り低減させることに加えて、同様の理由で、アームを旋回させる駆動トルクをできる限り増大させることも重要な課題となっている。従って、この観点からみても、上記特許文献2の構成は合理的とは言えない。
また、上記のように左右を繋ぐコイル辺が長い形状のコイルとなっているので、その旋回のために要するスペースも大きくなり、糸ガイドの駆動部のコンパクト化という面で改善の余地が残されていた。
また、前記磁界を発生させる前記磁石が、前記電気コイルの外周側に配置されているので、この意味でも上記の駆動トルクに寄与しない部分の長さを短くできる。
また、前記アームの駆動トルクが、前記電気コイルのうち、前記アームの回動軸に近い側のコイル辺に作用する電磁力Fによるトルクと、該回動軸から遠い側に位置するコイル辺に作用する電磁力Fによるトルクとが重畳された合計トルクによって得られるものであるから、上記特許文献2の構成に比べて、極めて大きな駆動トルクを得ることができる。
また、前記中央ヨークと、その両側に前記エアギャップを隔てて配置される前記磁石及び前記ヨークと、によって、前記エアギャップ内に強力な磁界が生じるように前記磁界の磁束経路が発散することなく形成されている。言い換えれば、当該磁界の磁束密度の高密度化が、前記中央ヨークと、その両側に配置される2つの前記ヨークによって図られている。
以上により、前記アームのイナーシャが低減され、かつ、強力な磁界が前記電気コイルに作用するので、前記アームの反転時における立ち上がり加速度を向上できる。これにより、前記巻取ボビンの端部における糸の滞在時間を、その他の範囲における滞在時間に近づけられるので、巻取パッケージの端部に局所的に巻き太りが生じたり、巻取パッケージの密度が不均一となるのを抑制できる。
また、前記電気コイルの中心軸が前記中央ヨークの長手方向に沿うように構成されており、さらに前記径方向に2列に形成された前記エアギャップのそれぞれにおいて前記電気コイルに前記駆動トルクを発生させているので、特許文献3の構成と比べて、発生する駆動トルクの大きさが同一である場合においても、前記駆動トルクに寄与しない部分の長さを短くでき、また前記アーム駆動部をよりコンパクトとできる。
あるいは、前記アームの反転に際して必要とする大きな前記駆動トルクを前記2つのアーム駆動部に分担できるので、前記アームの反転時において前記電気コイルに流される電流を低減できるから、前記電気コイルの発熱を抑制できる。
また、前記電気コイルが、前記2つのアーム駆動部のそれぞれに別個独立して設けられているので、特許文献3と比較して、前記電気コイルのうち前記駆動トルクに寄与しない部分の長さを短くできる。従って、前記アーム駆動部を追加するに際して、前記アームが余計な重量増加を伴わないので、前記アームの反転時における立ち上がり加速度を確実に向上できる。
従って、例えば前記回動中心が軸及び軸受より構成されている場合は、その軸及び軸受の摩耗を低減できる。
図2は、図1におけるA−A’断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットを示す正面模式図である。
また、電気コイル12がコイル支持体13を介してアーム軸9に固定されており、電気コイル12とアーム6とが一体的に揺動するよう構成されている。電気コイル12の形状に関しては後述する。
なお、アーム6の先端に備えられている糸ガイド6aは、アーム6の回動中心であるアーム軸9から見て、巻取ボビン2および圧接ローラ8側に配置されている。
なお、上記所定の円弧角とは、アーム6に要求される綾振り角度より若干大きい角度のことである。また、ヨーク14bは、トラバース装置3のケース10の一部をなすよう構成されている。
これにより、内周側のエアギャップ15a内には、アーム軸9側から放射状に延びる磁力線17aが形成されることとなり、外周側のエアギャップ15b内には、アーム軸9へ向かう磁力線17bが形成されることとなる。言い換えれば、前記2列のエアギャップ15a・15bのそれぞれには、径方向を向き、互いに逆向きである磁界(磁力線17a・17b)が上記の永久磁石16a・16bによって形成されている。
なお、第1実施形態においては、永久磁石16a及び永久磁石16bを、双方ともN極が中央ヨーク14mに対向するよう着磁したが、これに限らず双方ともS極が中央ヨーク14mに対向するよう着磁しても良い。この場合でも、前記2列のエアギャップ15a・15b内に、径方向を向き、互いに逆向きである磁界が形成されている、ということができる。
なお、ヨーク14s・14tは、トラバース装置3のケース10に固定されるよう構成されている。
この電気コイル12には、図2に示すように、可撓性の給電線12wを介して適宜の電流が供給されており、アーム6の往復回動範囲や回動速度などは、この電圧により制御されることとなる。
一方、電気コイル12の一部であって前記電気コイル辺12u・12dを互いに接続している残りの2つの辺である電気コイル辺12f・12rが通る空間には、微弱な磁界しか形成されていないので、ほとんど電磁力を生じない。
このように、本実施形態における電気コイル12には、電磁力が発生する辺(電気コイル辺12u・12d)と、ほとんど電磁力が発生せず、単にアーム6のイナーシャを増加させるだけの辺(電気コイル辺12f・12r)を、それぞれ一対、含んでいる。
従って、両磁力線17a・17bを同方向に形成した場合、即ち大きさが等しく方向が平行で逆向きの一対の電磁力により生じる偶力によってアームを揺動させる場合と比較して、電気コイル辺12uと電気コイル辺12dとを離隔させる必要がないので、電気コイル12のうち、ほとんど電磁力を発生せず、単にアーム6のイナーシャを増加させるだけの辺(電気コイル辺12f・12r)の長さをより短くできる。
言い換えれば、この電気コイル12のうち、アーム6を回動させる駆動トルクに寄与しない部分の長さ(電気コイル辺12f・12r)を大幅に短くできる。
また、前記アーム6の駆動トルクが、前記電気コイル12のうち、当該アーム6のアーム軸9に近い側の電気コイル辺12uに作用する電磁力によるトルクと、当該アーム6のアーム軸9から遠い側の電気コイル辺12dに作用する電磁力によるトルクとが重畳された合計トルクによって得られるものであるから、上記特許文献2の構成に比べて、極めて大きな駆動トルクを得ることができる。
また、前記中央ヨーク14mと、その両側に前記エアギャップ15a・15bを隔てて配置される前記永久磁石16a・16bおよび前記ヨーク14a・14bと、によって前記エアギャップ15a・15b内に強力な磁界が生じるように前記磁力線17a・17bの磁束経路が発散することなく形成されている。言い換えれば、当該磁力線17a・17bの磁束密度の高密度化が、中央ヨーク14mと、その両側に配置される2つのヨーク14a・14bによって図られている。
前述の通り前記アーム6のイナーシャが低減され、そのうえ、強力な磁界(磁力線17a・17b)が前記電気コイル12に作用するので、当該アーム6の反転時における立ち上がり加速度を向上できる。
これにより、上記電気コイル12のコイルインダクタンスが低減されるので、電気コイル12に流れる電流の変化を妨げようとする逆起電力を抑制できる。従って、アーム6の反転の際に電気コイル12を流れる電流を急峻に変化させることができるので、立ち上がり加速度を向上できる。
なお、上記の比透磁率が低い材料としてアルミニウムを採用することもできる。これら銅やアルミニウムは安価かつ加工しやすい材料なので、電気コイル12のコイルインダクタンスを安価かつ容易に低減できることとなる。
この制御部19の入力側は、前述のロータリーエンコーダ11へ適宜の信号線により接続されており、ロータリーエンコーダ11で検出されたアーム6の回動角度の信号を受信できるよう構成されている。また、制御部19の出力側は、アーム駆動部7の電気コイル12へ可撓性の給電線12wにより接続されており、適宜の電流を電気コイル12に供給できるよう構成されている。
このように、制御部19が、上記の受信結果に基づくフィードバック制御により、電気コイル12に適宜の電流を供給できるので、アーム6の往復回動における回動角度や回動速度等を自在に制御できるよう構成されている。
前記エアギャップ15aには図2において下向きの磁界(磁力線17a)が形成されているので、フレミングの法則により、電気コイル辺12uには紙面に対して垂直に入る向きの電磁力が発生する。なお、図2において、紙面に垂直方向に入るベクトルはX印の付いた○で示されている。
また、前記のエアギャップ15bには上向きの磁界(磁力線17b)が形成されているので、電気コイル辺12dにも同様に、紙面に対して垂直に入る向きの電磁力が発生する。
従って、前記駆動トルクに全く寄与せず単にアーム6のイナーシャを増加させるだけの電気コイル辺12fと電気コイル辺12rの長さを大幅に短くできるので、電気コイル12を軽量、かつコンパクトとできる。また、それに伴いアーム6のイナーシャを低減できるので、アーム6の反転時における立ち上がり加速度を向上できる。
第2に、アーム駆動部7内に、ヨーク14a・14b・14s・14t及び中央ヨーク14mから成る好適な磁気回路が形成されているので、電気コイル12のうちアーム6の駆動トルクに寄与する部分(電気コイル辺12u・12d)に強い磁力線17a・17bを生じさせることができる。
第3に、電気コイル12の中心を貫通する中央ヨーク14mが、この中央ヨーク14mより低い比誘電率の材料で覆われているので、電気コイル12のコイルインダクタンスが低減されている。これによって、電気コイル12を流れる電流を急峻に変化させることができる。
以上の効果より、アーム6の反転時(トラバースターン時)における立ち上がり加速度を向上できる。従って、アーム6が高速で連続的に往復反転を繰り返すよう回動しても、巻取ボビン2の端部における糸1の滞在時間を、その他の範囲における滞在時間に近づけられるので、巻取パッケージの端部に局所的に巻き太りが生じたり、巻取パッケージの密度が不均一となるのを防止できる。
この2つのアーム駆動部7a・7bは、アーム6の回動中心であるアーム軸9の軸心に関して対称となるように、かつ、両者がアーム6の長手方向に沿って並ぶように配置されている。
あるいは、アーム6の反転に際して必要とする大きな駆動トルクを前記2つのアーム駆動部7a及び7bに分担できるので、アーム6の反転時において電気コイル12に流される電流を低減できるから、電気コイル12の発熱を抑制できる。
また、電気コイル12が、前記2つのアーム駆動部7a及び7bにそれぞれ別個独立して設けられているので、特許文献3と比較して、電気コイル12のうちアーム6の駆動トルクに寄与しない部分の長さを短くできる。従って、アーム駆動部を追加するに際して、前記アーム6が余計な重量増加を伴わないので、アーム6の反転時における立ち上がり加速度を確実に向上できる。
従って、アーム駆動部が一つの場合(例えば第1実施形態)に比べて、アーム軸9を回転自在に支持する部分(例えば、軸受9a・9b)の摩耗を低減できる。
2 巻取ボビン
3 トラバース装置
6 アーム
7 アーム駆動部
9 アーム軸
12 電気コイル
14a・14b ヨーク
14m 中央ヨーク
15a・15b エアギャップ
16a・16b 永久磁石
17a・17b 磁力線
18 スリーブ
19 制御部
40 巻取部
101 自動ワインダ(繊維機械)
Claims (9)
- 糸を巻き取る巻取ボビンに糸を綾振るために、糸ガイドを備えたアームを往復回動させるアーム駆動部を備える糸のトラバース装置であって、
前記アーム駆動部は、
前記アームに設けられる電気コイルと、
前記アームの回動中心に対して円弧状に形成され、かつ前記円弧の径方向に互いに離隔して配置される2つのヨークと、
前記2つのヨークに挟まれ、内部に磁界が形成されているエアギャップと、
を備え、前記電気コイルの一部が前記エアギャップに内挿される形式のものであって、
前記2つのヨークのそれぞれに磁石が設けられ、
前記エアギャップを前記径方向に2列に分列する中央ヨークが設けられ、
前記2列のエアギャップのそれぞれには、前記径方向を向き、互いに逆向きである磁界が前記磁石によって形成されており、
前記電気コイルの一部が、前記中央ヨークを取り巻くようにして前記2列のエアギャップのそれぞれに内挿されていることを特徴とする、糸のトラバース装置。 - 前記2つのヨークと前記中央ヨークが互いに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の糸のトラバース装置。
- 前記中央ヨークが、この中央ヨークの材料よりも低い比透磁率の材料で覆われていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糸のトラバース装置。
- 前記中央ヨークを覆う前記材料は、銅またはアルミニウムであることを特徴とする、請求項3に記載の糸のトラバース装置。
- 前記アーム駆動部が、前記アームの回動中心に対して周方向に2つ設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の糸のトラバース装置。
- 前記2つのアーム駆動部が、前記アームの回動中心に関して対称に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の糸のトラバース装置。
- 前記2つのアーム駆動部が、前記アームの長手方向に沿う方向に並べて配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の糸のトラバース装置。
- 前記2つのアーム駆動部が、前記アームの長手方向に対して直交する方向に並べて配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の糸のトラバース装置。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の前記糸のトラバース装置を備えることを特徴とする、繊維機械。
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