JP2006328383A - 油脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジアシルグリセロール含量が高く、トランス不飽和脂肪酸の生成が抑制され、かつ植物ステロール等の原料油脂由来の成分が残存した油脂を効率的に得ること。
【解決手段】アシル基供与性物質とアシル基受容性物質を反応させた後、未反応物質及び副生成物質を蒸留により分離し、該蒸留留分を反応原料の一部として再使用するジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法であって、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15質量%とするジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジアシルグリセロール含量の高い油脂の製造方法に関する。
ジアシルグリセロールを高濃度に含む油脂は、体内への蓄積性が少ない等の生理作用を有することが知られており(特許文献1参照)、食用油として広く使用されている。ジアシルグリセロールの製造方法は、脂肪酸とグリセリンを原料とし、化学法又は酵素法によりエステル化反応することによる方法(特許文献2参照)、油脂とグリセリンを原料とし、化学法又は酵素法によりグリセロリシスを行う方法等が公知である(特許文献3、4参照)。
そして、当該方法により製造されるジアシルグリセロール高含有油脂の中には、脂肪酸、モノアシルグリセロール、有臭成分等の不純物が含まれている。ジアシルグリセロール高含有油脂を食用油として使用できるようにするためには、これらを低減する事により風味を良好にすることが必要である。
ジアシルグリセロール高含有油脂の製造法の中には、反応終了後の油脂を精製する際に、回収されたモノアシルグリセロールを次の反応原料として添加する技術がある(特許文献5参照)。この技術は、食用油としての不純物を高真空条件で留去した際に回収されるモノアシルグリセロールを次の反応系に添加し、脂肪酸相へのグリセリンの溶解度を高くすることによりエステル化反応の速度を向上させることを目的とするものである。また、油脂とグリセリンを原料とし、化学法によるグリセロリシスを行う際に、反応系内に残存するグリセリンとモノアシルグリセロールを水蒸気蒸留又は分子蒸留で回収し、次の反応に再利用するという技術がある(特許文献3参照)。この技術は、油脂を一旦脂肪酸に分解した後にエステル化するという工程が不要であるため経済的である。更に、ジアシルグリセロール製品に植物ステロール等の微量成分を残存させることを目的とし、油脂の部分加水分解の後に、蒸留を行わずにエステル化反応を行う技術がある(特許文献6参照)。この技術は、植物ステロール等の微量成分を残存させる点では優れているが、生成するジアシルグリセロールの濃度は低く、また、未反応物や副生物の回収再使用については考慮されていない。
特開平10−176181号公報 特開平1−71495号公報 国際公開第03/29392号パンフレット 特開昭63−133992号公報 特開平8−294394号公報 特開平11−123097号公報
近年、環境問題に対して社会の要請が高まってきており、高品質の製品の製造と、環境負荷の低減とを両立させ得る製造技術が強く望まれている。環境負荷を低減するためには製造工程から排出される廃棄物量を少なくすることが効果的である。ジアシルグリセロール高含有油脂の製造において除去された物質のうち、再利用できるものについてはこれを廃棄物として排出せず、回収再使用する技術が望まれている。
前述の従来技術において、ジアシルグリセロール高含有油脂を製造する場合、食用油としては好ましくない成分である脂肪酸、モノアシルグリセロール、有臭成分等を除去することが必要である。しかし、これらの成分の除去操作を行うと、原料油脂中に存在するトコフェロール、植物ステロール等の生体に有用な成分等も除去されてしまう。また、前述のように、ジアシルグリセロール高含有油脂の製造時、反応系内に残存するグリセリンとモノアシルグリセロールを水蒸気蒸留又は分子蒸留で回収し、次の反応に再利用するという技術が提案されている。しかし、高真空が必要な分子蒸留を行うために油脂由来の有用成分は除去されてしまう点、熱履歴が大きいために生体にとって好ましくないトランス不飽和脂肪酸の生成が促進されてしまう点が未解決である。更に、前述の油脂の部分加水分解の後に、蒸留を行わずにエステル化反応を行う技術では、廃棄物量が多いため環境への負荷が大きく経済的にも不利である。また、未反応物や副生物を回収再使用をするとしても、部分分解であり分解率が低いため製品のジアシルグリセロールの濃度が低く反応後の未反応物や副生物量が多く、回収分量が多くなり効率が良いとは言えない。
ジアシルグリセロールは、トリアシルグリセロールと比べ疎水性が弱いため、脂肪酸、モノアシルグリセロールとの親和性が高く、これらを除去しにくいという性質を有している。そこで不純物を除去し、ジアシルグリセロールの純度及び食用油としての精製度を高めるためには厳しい条件で行うことが好ましいが、一方で、高熱履歴によるトランス不飽和脂肪酸の生成、不均化反応による純度の低下、原料油脂由来の生体に有用な成分の除去等の好ましくない面が発現する。
従って、本発明の目的は、ジアシルグリセロール高含有油脂において、ジアシルグリセロールの純度及び食用油としての精製度を高めつつ、原料油脂中の生体に有用な成分を油脂製品に残存させたジアシルグリセロール高含有油脂を環境負荷が小さく経済的に効率良く製造する方法を提供することにある。
そこで本発明者は、ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法について種々検討してきたところ、反応後の蒸留条件を特定の範囲に設定し、更に蒸留により回収された留分を再利用することにより、トランス不飽和脂肪酸の生成を抑制し、かつ原料油脂由来の植物ステロール等の有用成分を残存させると共に、ジアシルグリセロール含量も高めることができることを見出した。
すなわち、本発明は、アシル基供与性物質とアシル基受容性物質を反応させた後、未反応物質及び副生成物質を蒸留により分離し、該蒸留留分を反応原料の一部として再使用するジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法であって、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15質量%とするジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、ジアシルグリセロール含量が高く、トランス不飽和脂肪酸の生成が抑制され、かつ植物ステロール等の原料油脂由来の成分が残存した油脂を効率的に得ることができる。
本発明方法に用いる原料であるアシル基供与性物質としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、あまに油等の植物油や牛脂、魚油等の動物油等のトリアシルグリセロール、またこれら油脂を加水分解して得られた脂肪酸、又はこれら脂肪酸の低級アルコールエステルが挙げられる。これらの中でも生理効果、製品が白濁せず外観が良好となる点から、不飽和脂肪酸含有量が高い植物油又はこれを加水分解して得られた脂肪酸が好ましく、中でも菜種油、大豆油又はこれらを加水分解して得られた脂肪酸がより好ましい。アシル基供与性物質は、単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用しても良い。アシル基供与性物質全体中の不飽和脂肪酸含有量は60質量%(以下、単に「%」で示す)以上、特に70%以上、更に80%以上となることが好ましい。不飽和脂肪酸中のモノエン酸は10〜80%、更に15〜70%であることが好ましく、ジエン酸は10〜80%、更に15〜60%であることが好ましく、トリエン酸は0.2〜70%、更に0.5〜60%であることが好ましい。これらの不飽和脂肪酸含有量は、アシル基供与性物質を2種以上使用する場合は、それらの合計量中の含有量である。アシル基受容性物質としては、グリセリンが挙げられる。
ジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法としては、アシル基供与性物質として上記油脂を加水分解して得られた脂肪酸、又はこれら脂肪酸と低級アルコールとのエステルと、アシル基受容性物質であるグリセリンを原料として、化学法又は酵素法によるエステル化反応による方法;又は、アシル基供与性物質として上記油脂とアシル基受容性物質であるグリセリンを原料として、化学法又は酵素法によるグリセロリシスを行う方法が挙げられる。中でも、脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応による方法が、製品の脂肪酸組成を調整できる点、ジアシルグリセロールの純度を高くする点から好ましい。更に、酵素法によりエステル化反応を行うことがトランス不飽和脂肪酸の生成抑制の点、製品の脂肪酸組成を調整できる点、ジアシルグリセロールの純度を高くする点から好ましい。また、原料油脂と近い脂肪酸組成の製品を得る場合は、油脂とグリセリンとのグリセロリシスによる方法が、製造工程を簡略化できる点から好ましい。なお、反応時間を短縮でき生産性が向上できる点からは、化学法によるグリセロリシスによる方法が好ましく、トランス不飽和脂肪酸の生成抑制の点からは、酵素法によるグリセロリシスによる方法が好ましい。
本発明において、油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分をろ過や遠心分離等により除去し、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、アルカリを添加混合した後、水洗することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤をろ過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。更に、減圧下で水蒸気と接触させることにより脱臭を行うことが好ましい。この際、熱履歴を極力低くすることがトランス不飽和脂肪酸生成抑制の点から好ましく、脱臭工程の際の温度は300℃以下、特に270℃以下にコントロールすることが好ましい。また、脱臭の時間も10時間以下、特に5時間以下とすることが好ましい。
本発明に使用する原料油脂全体中のトランス不飽和脂肪酸含有量は1.5%以下であることが好ましく、更に1%以下、特に0.5%以下であることが、最終製品中のトランス不飽和脂肪酸含有量を低減させる点からより好ましい。ここで、トランス不飽和脂肪酸含有量は、油脂を2種以上使用する場合は、それらの合計量中の含有量である。なお、原料油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸の含有量の測定は、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f-96(GLC法)により行うことができる。
脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応によりジアシルグリセロール高含有油脂を製造する場合は、エステル化反応に先立ち、原料油脂の加水分解を行う。原料油脂の加水分解は、高圧分解法、又は酵素分解法のいずれでも良く、両者を組み合わせて行っても良い。原料油脂を熱履歴の低い酵素分解法により加水分解することが、トランス不飽和脂肪酸含量を極力低減する点から好ましい。また、高圧分解法を用いて加水分解する場合は、原料油脂の30%以上を高圧分解法により加水分解することが、得られる脂肪酸の色相、又はグリセリドの風味、及び色相を高品質なものとする点から好ましい。更に、原料油脂の35〜95%、特に40〜90%を高圧分析法により加水分解することが、トランス不飽和脂肪酸を低減しつつ、かつ風味、及び色相を高品質なものとする点から好ましい。
また、原料油脂の加水分解は、原料中の構成脂肪酸のトランス不飽和脂肪酸含有量が既に高いものは、得られる脂肪酸、又は油脂中のトランス不飽和脂肪酸含有量を極力増加させない点から酵素分解法により加水分解することが好ましく、原料中構成脂肪酸のトランス不飽和脂肪酸含有量が低いものについては、高圧分解法により加水分解することが、工程の効率化、風味、色相の点から好ましい。高圧分解法により加水分解するものとしては、原料油脂の構成脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸含量が1%以下、更に0.8%以下、特に0.5%以下であることが好ましい。
更に、原料油脂の構成脂肪酸の不飽和度が高いものほど、加熱によるトランス化が起こり易いため、不飽和度の高い脂肪酸を多く含む油脂は、酵素分解法により加水分解することが好ましい。特に、不飽和度が1であるオレイン酸は、加熱によってはほとんどトランス化が起こらず、不飽和度が2以上となるとトランス化が顕著となる。よって、不飽和度が2以上の構成脂肪酸を40%以上、更に50%以上、特に60%以上含む原料油脂は、酵素分解法により加水分解することが好ましい。また、不飽和度が高度になるほどトランス化が顕著となるため、不飽和度が3以上の構成脂肪酸を10%以上含む原料油脂は、酵素分解法により加水分解することが好ましい。
高圧分解法は、通常220〜270℃の高圧熱水を用い、原料油脂を2〜6時間かけて加水分解することが好ましい。温度は、トランス不飽和脂肪酸の生成を抑制する点からは低い方が好ましく、反応時間を短縮し高圧反応の装置をコンパクトとする点からは高いほうが好ましい。高圧熱水の温度は、より好ましくは225〜265℃、更に230〜260℃、特に235〜255℃とすることが好ましい。また、時間は同様の点から2〜5時間、更に2〜4時間とすることが好ましい。
酵素分解法において使用する油脂分解用酵素としては、リパーゼが好ましい。リパーゼは、動物由来、植物由来のものはもとより、微生物由来の市販リパーゼを使用することもできる。
加水分解は、分解率100%まで行う必要はなく、最適な分解率を選択することができる。ここで加水分解の分解率とは、分解油の酸価/ケン化価をいう。分解率は、加水分解工程の負荷を低減する点から、高圧分解法の場合は67〜98%が好ましく、より好ましくは75〜96%、更に80〜95%、特に83〜95%、殊更90〜94%が好ましく、酵素分解法の場合は、50〜98%が好ましく、より好ましくは67〜96%、更に75〜94%、特に80〜92%、殊更85〜90%が好ましい。上記範囲の分解率とすることにより、加水分解工程の装置の大きさを適度なものとすることができ、エステル化反応時間が短縮化でき、熱による品質劣化やトランス不飽和脂肪酸の増加を抑制することができ、また、最終製品のジアシルグリセロールの純度を高く保つことができる。また、分解率を大きくすることが、製品のジアシルグリセロールの濃度を高くする点、反応後の蒸留により回収される留分量が低減でき、回収再使用の負荷を小さくすることができる点から好ましい。
加水分解で得た脂肪酸は、このまま使用しても良く、蒸留による精製、ウインタリング等により脂肪酸組成の調整等を行った後に使用しても良い。
脂肪酸とグリセリンをエステル化する方法、又は油脂とグリセリンをグリセロリシスする方法は、化学合成法、酵素法のいずれでも可能であるが、最終油脂製品中のトランス不飽和脂肪酸含有量を増加させないという点から、酵素法によるのが好ましい。
エステル化反応又はグリセロリシスに用いる酵素としては、リパーゼを用いることが好ましいが、特にジアシルグリセロール等の機能性油脂の製造を目的とする場合、選択的にジアシルグリセロールを合成しやすいリゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等が挙げられる。
また、エステル化反応又はグリセロリシスに用いる酵素は、固定化されたものを用いることが、コストの点から好ましい。
エステル化反応又はグリセロリシスを酵素法で行う場合、反応温度は、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から0〜100℃、更に20〜80℃、特に30〜80℃とすることが好ましい。
エステル化反応又はグリセロリシスを化学法で行う場合、反応温度は、反応速度を向上する点、トランス不飽和脂肪酸の生成を抑制する点から100〜300℃、更に150〜250℃が好ましい。また、触媒として水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ、又は有機酸等の酸やその塩を使用することが、反応速度を向上する点、反応油の色相を良くする点から好ましい。
酵素法でエステル化反応を行う場合、反応時に減圧による脱水を行うことが、反応油のジアシルグリセロール含量を高くする点から好ましい。化学法でエステル化反応を行う場合、反応時に同伴気体を流通させることによる脱水を行うことが、反応油のジアシルグリセロール含量を高くする点から好ましい。
エステル化反応又はグリセロリシスを行う場合の原料の仕込み量は、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比を0.2〜10、更に0.3〜8、特に0.5〜6、殊更0.5〜4とすることが、反応油の組成が最適になる点(反応油中の脂肪酸及びグリセリンの残存量、並びにモノアシルグリセロール又はトリアシルグリセロールの生成量が抑制され、蒸留負荷が低減すると共にジアシルグリセロール高含有となり、生産効率が高くなる点)から好ましい。以下、このグリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比を「FA/GLY」と表す。FA/GLYは下式で表される。
FA/GLY=(脂肪酸のモル数+脂肪酸の低級アルコールエステルのモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数×2+トリアシルグリセロールのモル数×3)/(グリセリンのモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数+トリアシルグリセロールのモル数)
FA/GLYは、反応形態によって適宜選択できる。例えば、酵素を用いるエステル化反応又はグリセロリシスの場合は、反応油の組成が最適になる点から1〜3、更に1.5〜2.5が好ましい。化学法でのエステル化反応又はグリセロリシスの場合は、反応油の組成が最適になる点から0.3〜3、更に0.4〜2.2が好ましい。
エステル化反応を行った後の反応油中には、ジアシルグリセロールと共に、未反応物として脂肪酸及びグリセリン、副生成物としてトリアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールが存在する。
グリセロリシスを行った後の反応油中には、ジアシルグリセロールと共に、未反応物としてグリセリン及びトリアシルグリセロール、副生成物としてモノアシルグリセロールが存在する。
エステル化反応を行った後、又はグリセロリシスを行った後の反応油中のモノアシルグリセロール含量は、製品中のジアシルグリセロール含量を高くする点、蒸留負荷を低減する点、反応効率を高くする点から2〜60%であることが好ましく、更に3〜50%、特に5〜50%、殊更10〜50%であることが好ましい。また、エステル化反応を行った後、又はグリセロリシスを行った後の反応油中のジアシルグリセロール含量は、製品中のジアシルグリセロール含量を高くする点、蒸留負荷を低減する点、反応効率を高くする点から10〜90%であることが好ましく、更に20〜80%、特に30〜70%、殊更30〜60%であることが好ましい。
本発明においては、蒸留操作により脂肪酸、グリセリン、モノアシルグリセロールを回収し、再利用する。
本発明においては、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15%の範囲とすることが、原料油脂由来の植物ステロールを油脂中に残存させる点、ジアシルグリセロール含量を高くする点から必要であるが、好ましくは0.5〜10%、更に0.5〜8%、特に1〜8%、殊更1.3〜8%とすることが好ましい。回収される留分の量は、反応油の組成によって異なるが、反応油中のジアシルグリセロールとトリアシルグリセロール以外の成分に対して、0.5〜1.5倍、更に0.6〜1.4倍、特に0.6〜1.2倍とすることが、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15%の範囲とする点、ジアシルグリセロールの収量を増加させる点、過剰な留分の量がリサイクルすることを避ける点から好ましい。また、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が、反応油中のモノアシルグリセロール含量に対して0.03〜0.8とすることが、原料油脂由来の植物ステロールを油脂中に残存させる点、製品中のジアシルグリセロール含量を高くする点から好ましく、更に0.05〜0.6、特に0.1〜0.5とすることが好ましい。
蒸留の条件は、圧力は2〜300Paであることが好ましく、更に3〜200Pa、特に3〜100Paであることが、設備コストや運転コストを小さくする点、蒸留能力を上げる点、蒸留温度を最適に選定できる点、熱履歴によるトランス不飽和脂肪酸の増加や熱劣化を抑制する点から好ましい。温度は180〜280℃、更に190〜260℃、特に200〜250℃であることが、トランス不飽和脂肪酸の増加を抑制する点から好ましい。滞留時間は0.2〜30分、更に0.2〜20分、特に0.2〜10分であることが、トランス不飽和脂肪酸の増加を抑制する点から好ましい。ここで、滞留時間とは、油脂が蒸留温度に達している間の平均滞留時間をいう。
本発明において、蒸留の条件については、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が0.5〜15%となるように上述の圧力、温度等を調節することが好ましい。また、当該範囲に調節するその他の手段としては、フィード流量や、薄膜蒸発装置を使用する場合には液膜厚み等も挙げられる。例えば、通常の蒸留条件で蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が0.5%未満である場合、(1)圧力を高くする(真空度を下げる)、(2)温度を低くする、(3)フィード流量を大きくする、(4)薄膜蒸発装置を使用する場合には液膜厚みを厚くする等から選択される1又は2以上の手段を組み合わせることが好ましい。より具体的には、通常の蒸留条件で蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が0.05〜0.4%の場合、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15%とするためには、圧力を通常の1.1〜20倍、及び/又は温度を5〜50℃下げる、及び/又はフィード流量を1.1〜10倍等とすることが好ましい。
本発明においては、上記蒸留操作を安定化させる等の目的で、上記蒸留に先立ち、反応油を低真空度及び/又は低温で、前蒸留しても良い。また、反応油中にグリセリン量が多く、2液相に分離する場合は、上記蒸留に先立ち、液分離操作によりグリセリン相を分離することが好ましい。これらの回収分は、反応原料の一部として再使用することもできる。
通常の精製工程における未反応物質及び副生成物質を除去する条件は、圧力1〜500Pa、温度200〜300℃、滞留時間1〜10時間であるが、熱履歴が過剰となり、未反応物質等を回収して次の反応に再利用すると、トランス不飽和脂肪酸の生成量が増大するため好ましくない。
また、油脂になるべく熱履歴を与えない蒸留方法として、圧力を0.01〜1Paと高真空とする分子蒸留法がある。この場合は、温度は150〜200℃前後と比較的低温で実施できるが、高真空が必要なため真空設備の設備負荷が大きくなり、処理能力も低下するうえ、原料油脂由来の植物ステロール等の生体に有用な微量成分も除去されてしまうため好ましくない。
蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15%の範囲とする蒸留条件は、各成分の蒸気圧曲線をもとに設定することができる。ここで蒸気圧曲線とは、物質の各温度での蒸気圧を示す曲線である。蒸留工程終了時点(連続蒸留の場合は蒸留工程出口)での蒸留残渣(蒸留後の油脂)の温度と圧力が、モノアシルグリセロールの蒸気圧曲線とジアシルグリセロールの蒸気圧曲線の間になるよう設定することが好ましい。ある操作圧力で蒸留する場合は、蒸留工程終了時点(連続蒸留の場合は蒸留工程出口)での蒸留残渣(蒸留後の油脂)の温度が、その圧力におけるモノアシルグリセロールの蒸発温度よりも高く、その圧力におけるジアシルグリセロールの蒸発温度よりも低くなるように、加熱量をコントロールすることが好ましい。また、各成分の蒸気圧曲線及び気液平衡関係推算式を用いて使用する蒸留装置の形式に応じた蒸留計算を行い、蒸留条件を設定することもできる。
本発明において使用する蒸留装置は、バッチ単蒸留装置、バッチ精留装置、連続精留装置、フラッシュ蒸発装置、薄膜式蒸発装置等が挙げられる。上記の蒸留条件を達成するため、薄膜式蒸発装置が好ましい。薄膜式蒸発装置とは、蒸留原料を薄膜状にして加熱し、留分を蒸発させる形式の蒸発装置である。薄膜式蒸発装置としては、薄膜を形成する方法によって、遠心式薄膜蒸留装置、流下膜式蒸留装置、ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped film distillation)等が挙げられる。この中でも、局部的な過熱を防ぎ油脂の熱劣化等をさけるために、ワイプトフィルム蒸発装置を用いることが好ましい。ワイプトフィルム蒸発装置とは、筒状の蒸発面の内側に蒸留原料を薄膜状に流し、ワイパーで薄膜攪拌を行い、外部から加熱し、留分を蒸発させる装置である。ワイプトフィルム蒸発装置は、内部凝縮器にて留分の凝縮を行う形式のものが、排気抵抗を下げ真空装置のコストを下げられる点、蒸発能力が大きい点から好ましい。ワイプトフィルム蒸発装置としては、UIC GmbH社製「短行程蒸留(Short path distillation)装置」、神鋼パンテック社製「ワイプレン」、日立製作所製「コントロ」などが挙げられる。
本発明においては、蒸留回収された留分を、次の反応原料の一部として再使用する。回収された留分の組成は、反応油の組成によって異なるが、モノアシルグリセロールが5〜80%、脂肪酸が0.5〜60%、グリセリンが0.5〜30%程度であることが好ましい。回収された留分の当該組成により、次の反応に必要な原料の量を決定する。その後の反応条件は、前回のものと同じであることが好ましい。
本発明においては、蒸留回収された留分を、次の反応原料の一部として再使用するリサイクル回数を2回以上とすることが、トランス不飽和脂肪酸の生成が抑制され、かつ植物ステロール等の原料油脂由来の成分が残存した油脂を効率的に得る点、廃棄物量を低減できる点から好ましい。また、次の反応原料の一部とするのは、蒸留回収された留分の全部でも一部でも良い。蒸留回収された留分の一部を次の反応原料の一部とする場合は、蒸留回収された留分の50%以上100%未満、更に60%以上100%未満、特に70%以上100%未満とすることが好ましい。蒸留回収された留分を、次の反応原料の一部として再使用するによって、廃棄物量が大きく低減でき、環境負荷が小さな製造プロセスとすることができる。再使用を行わない場合に比べて、廃棄物量を1〜100%低減することが好ましく、更に5〜90%、特に20〜80%低減することが好ましい。
更に、脂肪酸とグリセリンのエステル化反応、又は油脂とグリセリンのグリセロリシスにより製造されたジアシルグリセロール高含有油脂を複数回分混合して油脂製品を製造する場合は、本発明の方法により製造されたジアシルグリセロール高含有油脂を50%以上、更に60%以上、特に70%以上、殊更80〜100%含むことが、トランス不飽和脂肪酸の生成が抑制され、かつ植物ステロール等の原料油脂由来の成分が残存した油脂を効率的に得る点から好ましい。
蒸留後のジアシルグリセロール高含有油脂は、次いで、公知の方法による蒸留、脱色、脱臭等を行い、残存している脂肪酸、モノアシルグリセロール、着色成分、臭い成分等を除去、又は分解し、精製することが好ましい。また、蒸留後又は前記精製後のジアシルグリセロール高含有油脂からジアシルグリセロールを蒸留し、蒸留残渣としてトリアシルグリセロールや高沸点成分を除去することにより、ジアシルグリセロール濃度を更に高めたジアシルグリセロール高含有油脂を得る事もできる。このとき蒸留残渣として回収したトリアシルグリセロール等は、そのまま、又は、精製処理を行った後、反応原料の一部として再使用することが、原料の有効利用の点から好ましい。
本発明の方法により製造されたジアシルグリセロール高含有油脂は、ジアシルグリセロールを40%以上含有することが好ましく、より好ましくは50%以上、更に60%以上、特に65〜100%、殊更80〜98%含有することが、食用油として利用した場合に体内への蓄積性が少ない等の生理機能を有する点から好ましい。また、モノアシルグリセロールを0.05〜7%含有することが好ましく、より好ましくは0.07〜6%、更に0.08〜4%、特に0.1〜3%、殊更0.2〜2%含有することが、食用油脂として風味、加熱時の発煙抑制、油脂の生産性の点から好ましい。更に、植物ステロールを0.1〜1%含有することが好ましく、更に0.12〜0.9%、特に0.15〜0.8%含有することが食用油脂として外観、生理効果、保存安定性の点から好ましい。
〔分析方法〕
(i)グリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.5mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成の分析を行なった。
(ii)構成脂肪酸組成
ガラス製サンプル瓶に、サンプル約10mgと0.5mol/L水酸化ナトリウム−メタノール溶液を0.6mL加え、密栓し、70℃で30分間加熱した。これに三フッ化ホウ素−メタノール試薬(三ふっ化ほう素メタノール錯体メタノール溶液、和光純薬工業(株))を0.6mL加え、密栓し、70℃で10分間加熱した。これに塩化ナトリウム飽和水溶液1mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層を硫酸ナトリウム(無水)で脱水し、脂肪酸メチルエステルを調製した。これを、GLCに供して分析を行った。
(iii)植物ステロール
(i)のグリセリド組成と同じ方法で、分析を行った。
実施例1(酵素法エステル化)
〔初回〕 大豆油を温度240℃、反応時間3時間にて高圧分解し、ウインタリングを行い大豆脂肪酸を得た。得られた大豆脂肪酸のグリセリド組成、及び脂肪酸組成を表1、及び表2に示した。この大豆脂肪酸1005gとグリセリン157g(FA/GLY=2)を、固定化リパーゼ(ノボザイムズ社 Lipozyme RM IM)50gを用いて、温度50℃、圧力400Pa、反応時間4時間にてエステル化反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油aを得た。
この反応油a881gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(神鋼パンテック社 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paであった。回収留分a’が留去された油脂A613gを得た。
〔リサイクル1回〕 回収留分a’239gと大豆脂肪酸871gとグリセリン123g(FA/GLY=2)を固定化リパーゼ(同上)50gを用いて、温度50℃、圧力400Pa、反応時間3時間にてエステル化反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油bを得た。
この反応油b906gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paであった。回収留分b’が留去された油脂B631gを得た。
〔リサイクル2回〕 回収留分b’220gと大豆脂肪酸808gとグリセリン130g(FA/GLY=2)を固定化リパーゼ(同上)50gを用いて、温度50℃、圧力400Pa、反応時間3時間にてエステル化反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油cを得た。
この反応油c909gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paであった。留分が留去された油脂C639gを得た。
各段階における蒸留原料の組成、及び蒸留後の組成の結果を表3に示した。
比較例1
実施例1に記載したのと同じ方法により留分をリサイクル使用する操作を行い、反応油d(実施例1の操作における反応油cに相当)を得た。
この反応油d946gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度240℃、圧力3.3Pa、フィード流量は実施例1の0.8倍とした。留分が留去された油脂D538gを得た。結果を表3に示した。
Figure 2006328383
Figure 2006328383
Figure 2006328383
実施例2(化学法グリセロリシス)
〔初回〕 原料として未脱臭大豆油を用いた。用いた大豆油のグリセリド組成、及び構成脂肪酸組成を表4、及び表5に示した。この大豆油500gとグリセリン79g(FA/GLY=1.2)に、触媒として水酸化カルシウム0.058gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1時間にてグリセロリシス反応を行い、100℃以下に冷却後、リン酸を0.069g添加して触媒を中和し、反応油eを得た。
この反応油e565gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(神鋼パンテック社 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分e’が留去された油脂E314gを得た。
〔リサイクル1回〕 回収留分e’206gと大豆油342gとグリセリン32g(FA/GLY=1.2)に、触媒として水酸化カルシウム0.058gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1時間にてグリセロリシス反応を行い、100℃以下に冷却後、リン酸を0.069g添加して触媒を中和し、反応油fを得た。
この反応油f568gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分f’が留去された油脂F311gを得た。
〔リサイクル2回〕 回収留分f’220gと大豆油329gとグリセリン30g(FA/GLY=1.2)に、触媒として水酸化カルシウム0.058gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1時間にてグリセロリシス反応を行い、100℃以下に冷却後リン酸を0.069g添加して触媒を中和し、反応油gを得た。
この反応油g569gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。留分が留去された油脂G297gを得た。
各段階における蒸留原料の組成、及び蒸留後の組成の結果を表6に示した。
比較例2
実施例2に記載したのと同じ方法により留分をリサイクル使用する操作を行い、反応油h(実施例2の操作における反応油gに相当)を得た。
この反応油h454gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力1.3Paとした。留分が留去された油脂H212gを得た。結果を表6に示した。
Figure 2006328383
Figure 2006328383
Figure 2006328383
実施例3(化学法エステル化)
〔初回〕 表1、及び表2に示した大豆脂肪酸400gとグリセリン101g(FA/GLY=2)に、触媒として水酸化カルシウム0.050gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1.5時間にてエステル化反応を行い、100℃以下に冷却後、リン酸を0.059g添加して触媒を中和し、反応油iを得た。
この反応油i452gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(神鋼パンテック社 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分i’が留去された油脂I278gを得た。
〔リサイクル1回〕 回収留分i’146gと大豆脂肪酸286gとグリセリン63g(FA/GLY=2)に、触媒として水酸化カルシウム0.050gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1.5時間にてエステル化反応を行い、100℃以下に冷却後リン酸を0.059g添加して触媒を中和し、反応油jを得た。
この反応油j463gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分j’が留去された油脂J246gを得た。
〔リサイクル2回〕 回収留分j’185gと大豆脂肪酸259gとグリセリン49g(FA/GLY=2)に、触媒として水酸化カルシウム0.050gを添加し、温度235℃、常圧、反応時間1.5時間にてエステル化反応を行い、100℃以下に冷却後リン酸を0.059g添加して触媒を中和し、反応油kを得た。
この反応油k464gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。留分が留去された油脂K249gを得た。
各段階における蒸留原料の組成、及び蒸留後の組成の結果を表7に示した。
比較例3
実施例3に記載したのと同じ方法により留分をリサイクル使用する操作を行い、反応油l(実施例3の操作における反応油kに相当)を得た。
この反応油l448gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力1.3Paとした。留分が留去された油脂L271gを得た。結果を表7に示した。
Figure 2006328383
実施例4(酵素法グリセロリシス)
〔初回〕 表4、及び表5に示した大豆油510gとグリセリン80g(FA/GLY=1.2)と水18gを、触媒としてリパーゼAY(天野エンザイム製)をイオン交換樹脂に固定した固定化酵素を30g用い、温度40℃、常圧、反応時間24時間にてグリセロリシス反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油mを得た。
この反応油m462gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(神鋼パンテック社 2−03型、内径5cm、伝熱面積0.03m2)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分m’が留去された油脂M243gを得た。
〔リサイクル1回〕 回収留分m’176gと大豆油344gとグリセリン77g(FA/GLY=1.2)と水18gを、触媒としてリパーゼAY(天野エンザイム製)をイオン交換樹脂に固定した固定化酵素を30g用い、温度40℃、常圧、反応時間24時間にてグリセロリシス反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油nを得た。
この反応油n481gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。回収留分n’が留去された油脂N218gを得た。
〔リサイクル2回〕 回収留分n’176gと大豆油342gとグリセリン80g(FA/GLY=1.2)と水18gを、触媒としてリパーゼAY(天野エンザイム製)をイオン交換樹脂に固定した固定化酵素を30g用い、温度40℃、常圧、反応時間24時間にてグリセロリシス反応を行い、固定化酵素を分離し、反応油oを得た。
この反応油o468gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力3.3Paとした。留分が留去された油脂O249gを得た。
各段階における蒸留原料の組成、及び蒸留後の組成の結果を表8に示した。
比較例4
実施例4に記載したのと同じ方法により留分をリサイクル使用する操作を行い、反応油p(実施例4の操作における反応油oに相当)を得た。
この反応油p480gを蒸留原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置(同上)を用いて蒸留を行った。操作条件は、加熱ヒーター温度230℃、圧力1.3Paとした。留分が留去された油脂P209gを得た。結果を表8に示した。
Figure 2006328383
酵素法又は化学法による脂肪酸とグリセリンのエステル化反応、並びに酵素法又は化学法による油脂とグリセリンのグリセロリシスのいずれの場合においても、最初の反応油を蒸留して得られた油脂(初回)に比べて、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が0.5〜15%となる条件で蒸留を行った留分をリサイクルして行った場合は、蒸留後の油脂中の植物ステロール含量が増加することが分かった。蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロールが0.5%未満となる条件で蒸留を行った場合は、蒸留後の油脂中の植物ステロール量は少なく、またこの場合にリサイクルを行っても、植物ステロール含量は増加しないことが分かった。

Claims (8)

  1. アシル基供与性物質とアシル基受容性物質を反応させた後、未反応物質及び副生成物質を蒸留により分離し、該蒸留留分を反応原料の一部として再使用するジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法であって、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜15質量%とするジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  2. 蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量を0.5〜10質量%とする請求項1記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  3. 反応油中のモノアシルグリセロール含量が2〜60質量%であり、蒸留後の油脂中のモノアシルグリセロール含量が、反応油中のモノアシルグリセロール含量に対して0.03〜0.8である請求項1又は2に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  4. アシル基供与性物質がトリアシルグリセロール、脂肪酸、又は脂肪酸の低級アルコールエステルであり、アシル基受容性物質がグリセリンである請求項1〜3のいずれか1項に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  5. 該蒸留留分を反応原料の一部として再使用するリサイクル回数が2回以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  6. 圧力2〜300Pa、温度180〜280℃、滞留時間0.2〜30分の蒸留条件で蒸留を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  7. 蒸留を薄膜式蒸発装置にて行う請求項1〜6のいずれか1項に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のジアシルグリセロール高含有油脂の製造方法を用いて得られる、ジアシルグリセロール40質量%以上、モノアシルグリセロール0.05〜7質量%及び植物ステロール0.1〜1質量%を含有する油脂。
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