JP2019147860A - エステル交換油脂の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的に、ジアシルグリセロールは、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応の方法により製造される。これらの製造法は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド等の化学触媒を用いた化学法と、リパーゼ等の酵素を用いた酵素法に大別される(例えば、特許文献1)。なかでも、ナトリウム系触媒を用いたグリセロリシス法は、反応性が高いという利点がある。
従って、本発明は、副生成物の生成を抑えながら、ジアシルグリセロールに富むエステル交換油脂を製造する方法を提供することに関する。
本明細書において、「油脂」と「油」とは同義であり、油脂(油)を構成する物質にはトリアシルグリセロールのみならずモノアシルグリセロールやジアシルグリセロールも含まれる。すなわち、油脂(油)は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。
具体的な油脂としては、トリアシルグリセロールを主体とするものであり、例えば、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、大豆油、オリーブ油、米油、紅花油、綿実油、胡麻油、あまに油等の植物性油脂を挙げることができる。油脂中のトリアシルグリセロールの含有量は、90〜99.5質量%、更に93〜99質量%であるのが好ましい。
油脂は、エステル交換油の乳化特性、取り扱いのし易さの点から、油脂を構成する脂肪酸中の不飽和脂肪酸が70質量%以上と多い油脂が好ましい。好ましい不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるが、得られるエステル交換油脂の利用性の観点から、油脂を構成する脂肪酸中のリノレン酸が4質量%以上、更に6質量%以上と多い油脂が好ましい。
油脂は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる水酸化カルシウムは、反応触媒として用いられるものであればよい。グリセリンと油脂とのグリセロリシス反応の触媒に水酸化カルシウムを用いることで、副生成物であるグリシドール脂肪酸エステルの生成が大きく抑えられる。
水酸化カルシウムの使用量は、反応性の点から、原料の油脂に対して0.03質量%以上、また、グリシドール脂肪酸エステル低減の点から、1質量%以下が好ましい。より好ましくは、原料の油脂に対して0.05〜0.5質量%である。
グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、下式で表される。
FA/GLY=(脂肪酸のモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数×2+トリアシルグリセロールのモル数×3)/(グリセリンのモル数+モノアシルグリセロールのモル数+ジアシルグリセロールのモル数+トリアシルグリセロールのモル数)
グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は、モノアシルグリセロール生成抑制の点から、2.1以上、好ましくは2.2以上である。また、ジアシルグリセロール生成の点から、2.7以下、好ましくは2.6以下である。
また、反応は、通常、減圧下でも常圧でもよい。減圧下で行う場合の圧力は、限定されないが400Pa以上が好ましい。また、常圧で行う場合、得られるエステル交換油脂の酸化を抑制するため、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
グリセロリシス反応終了後は、水酸化カルシウムを中和、濾過等により除去するのが好ましい。
一方、本発明の方法によれば、グリシドール脂肪酸エステルの生成を抑えることができる。
グリシドール脂肪酸エステルは、ドイツ脂質科学会標準法C−III 18(09)(DGF Standard Methods 2009 (14. Supplement),C−III 18(09),”Ester−bound 3−chloropropane−1,2−diol(3−MCPD esters) and glycidol(glycidyl esters)”)記載の方法にて測定することができる。本測定方法は、3−クロロプロパン−1,2−ジオールエステル(MCPDエステル)並びにグリシドール及びそのエステルの測定方法である。本発明においては、グリシドールのエステルを定量するため、当該標準法7.1記載のオプションA(”7.1 Option A:Determination of the sum of ester−bound 3−MCPD and glycidol”)の方法を用いる。測定方法の詳細は実施例に記載した。
グリシドール脂肪酸エステルとMCPDエステルとは異なる物質ではあるが、本明細書においては、上記測定方法にて得られた値をもってグリシドール脂肪酸エステル含有量とする。
また、同様の点から、エステル交換油脂におけるモノアシルグリセロールは少ないことが好ましく、その含有量は、10質量%以下、更に7質量%以下が好ましい。
(i)グリセリド組成の測定
遠心分離が可能な試験管に反応生成物のサンプルを約3g採取し、3000r/minで10分間遠心分離を行い、沈降した触媒を除去した。次いで、ガラス製サンプル瓶に、上層を約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.5mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成の分析を行った。
フタ付試験管に油脂サンプル約100mgを計量し、内標(3−MCPD−d5/t−ブチルメチルエーテル)50μL、t−ブチルメチルエーテル/酢酸エチル混合溶液(体積比8:2)500μL、及び0.5Nナトリウムメトキシド1mLを添加して攪拌した後、10分間静置した。ヘキサン3mL、3.3%酢酸/20%塩化ナトリウム水溶液3mLを添加し攪拌した後、上層を除去した。更にヘキサン3mLを添加し攪拌した後、上層を除去した。フェニルボロン酸1g/95%アセトン4mL混合液を250μL添加して攪拌した後、密栓し、80℃で20分間加熱した。これにヘキサン3mLを加え攪拌した後、上層をガスクロマトグラフ−質量分析計(GC−MS)に供して、グリシドール脂肪酸エステルの定量を行った。
グリセロリシス反応の原料となる脱臭菜種油974g及びグリセリン25.3gを、攪拌羽根(90mm×24mm)を取り付けた2L4ツ口フラスコに入れた。グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]は2.4であった。
次に、400r/minで攪拌しながら、70℃、400Paの条件で30分間減圧脱水した。次に、常圧に戻し、触媒として水酸化カルシウム1.0gを添加した。次に、8000Paの減圧下で、温度140℃の条件にてグリセロリシス反応を行った。
反応開始から300分でジアシルグリセロール含量が平衡に達した後、100℃以下に冷却し、中和剤(75%リン酸水溶液)を1.26g添加して、触媒を中和して反応生成物を得た。
表1に反応条件及び得られた反応生成物の分析値を示した。
温度を170℃とし、反応時間が240分であった以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応を行い、反応生成物を得た。
表1に反応条件及び得られた反応生成物の分析値を示した。
触媒量を0.25g、温度を250℃とし、反応時間が60分、中和剤の添加量が0.32gであった以外は、実施例1と同様にグリセロリシス反応を行い、反応生成物を得た。
表1に反応条件及び得られた反応生成物の分析値を示した。
実施例1と同様の原料に対し、常圧で触媒としてナトリウムメチラート0.73gを添加した後、70℃、400Paの条件で30分間減圧脱水した。その後、8000Paの減圧下で、温度140℃の条件にてグリセロリシス反応を行った。反応開始から120分でジアシルグリセロール含量が平衡に達した後、100℃以下に冷却し、中和剤(50%クエン酸水溶液)を2.3g添加して、触媒を中和して反応生成物を得た。
表1に反応条件及び得られた反応生成物の分析値を示した。
実施例1と同様の原料に対し、常圧で触媒として33%水酸化ナトリウム1.5gを添加した後、70℃、400Paの条件で30分間減圧脱水した。その後、8000Paの減圧下で、温度140℃の条件にてグリセロリシス反応を行った。反応開始から60分でジアシルグリセロール含量が平衡に達した後、100℃以下に冷却し、中和剤(50%クエン酸水溶液)を1.9g添加して、触媒を中和して反応生成物を得た。
表1に反応条件及び得られた反応生成物の分析値を示した。
これに対して、ナトリウムメチラート又は水酸化ナトリウムを触媒としてグリセロリシス反応を行った比較例1及び2では、グリシドール脂肪酸エステルの副生成が多くなることが判った。
Claims (3)
- 水酸化カルシウムの存在下、グリセリンと油脂とを、グリセリン基のモル数に対する脂肪酸基のモル数の比[FA/GLY]を2.1以上として、60分以上反応させる工程を含む、エステル交換油脂の製造方法。
- 反応温度が120℃以上、200℃以下である請求項1記載の製造方法。
- 水酸化カルシウムの使用量が原料の油脂に対して0.03質量%以上、1質量%以下である請求項1又は2記載の製造方法。
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