JP2006328189A - 光半導体用樹脂組成物および光半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】硬化物の透明性に優れ、紫外線の照射による透明性の低下が少なく、また熱劣化の主たる原因である酸化による着色が抑制された光半導体用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、前記光半導体用樹脂組成物を構成する各原料成分を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行ったことを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、前記光半導体用樹脂組成物を構成する各原料成分を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行ったことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は半導体素子の外周部を樹脂封止するために用いられる光半導体用樹脂組成物およびそれを用いた光半導体装置に係り、特に実装後の光半導体用樹脂組成物が透明でかつ熱や紫外線による劣化が抑制された光半導体用樹脂組成物に関する。
従来、バックライト、表示板、ディスプレイ、各種インジケーター等に使用されている発光ダイオード(LED)等の光半導体素子は、透明な樹脂組成物による封止が一般的であり、このような樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤とし、これに硬化物として酸無水物を配合したものが、耐熱性、機械的強度、電気特性等が良好で、かつ透明性に優れることから多用されている。
しかしながら、近年、発光効率の良い青色や白色等の短波長を発光するLEDが実用化され、それに伴い、次のような問題が生じている。すなわち、上記のような青色や白色等の短波長の光を発光する素子においては、副次的に紫外光を発光する。一方、従来の樹脂組成物に使用されているビスフェノールA型エポキシ樹脂はベンゼン環を含んでいる。不飽和結合をもつベンゼン環等は紫外線を吸収しやすいため、光半導体素子から発生する紫外線により樹脂が劣化し、着色により透明性が低下する。また、酸無水物も紫外線吸収をする不飽和結合をもつため、透明性低下の要因となっている。
このような透明性の低下を解消する為に、潜在性触媒を用いてエポキシ樹脂を熱カチオン重合させることにより酸無水物の使用を不要とし、樹脂中の不飽和結合の割合を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この潜在性触媒を用いた樹脂組成物は、酸無水物硬化の樹脂組成物に比べ耐紫外線性は良好となるものの、耐熱性が低く熱劣化により着色するため、酸無水物硬化の樹脂組成物に比べて透明性の低下が激しい。
また、一般に熱劣化による着色は酸化によるものであるため、不活性雰囲気下で樹脂硬化を行えばある程度着色を抑えることが可能である。しかし、実際の製造工程において不活性雰囲気環境を作るのは手間やコストの面から容易でなく、大気中で硬化させることが好ましい。
特開2003−73452号公報
上述したように、紫外光を発光するLEDが実用化されるに伴い、紫外線によって透明性が損なわれることのない耐紫外線性に優れた光半導体用樹脂組成物が提案されている。しかしながら、このような光半導体用樹脂組成物においては主として酸化を原因とする熱劣化により着色し、透明性が大きく低下するという課題がある。
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたものであって、硬化物の透明性に優れ、紫外線の照射による透明性の低下が少なく、また主として酸化を原因とする熱劣化による着色が抑制された光半導体用樹脂組成物を提供することを目的としている。また、本発明はこのような光半導体用樹脂組成物を用いて製造される信頼性に優れた光半導体装置を提供することを目的としている。
本発明者等は、光半導体用樹脂組成物の硬化物の熱劣化による透明性の低下を抑制する方法を種々検討した結果、光半導体用樹脂組成物を硬化させる前にあらかじめその酸素濃度を減じておくことが有効であることを見いだし、またこのようなことと共に、光半導体用樹脂組成物の主たる成分であるエポキシ樹脂成分として特定の特性を有するエポキシ樹脂成分を用いることにより、透明性に優れかつ紫外線の照射による透明性の低下が抑制された硬化物を得られることを見いだし本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の光半導体用樹脂組成物は、光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、前記光半導体用樹脂組成物を構成する各原料成分を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行ったことを特徴とする。
また本発明の光半導体用樹脂組成物は、光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、酸素吸着作用をもつ化合物を含有させたことを特徴とする。
本発明の光半導体用樹脂組成物は、その硬化物の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上であることが好ましい。また、本発明の光半導体用樹脂組成物は、その硬化物に大気中で150℃、300時間の熱処理を行った後、その光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上であることが好ましい。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子を光半導体用樹脂組成物で封止してなる光半導体装置であって、この光半導体用樹脂組成物として上述したような酸素濃度を減じるために真空脱気が行われたもの、あるいは、酸素吸着作用をもつ化合物が含有されたものを用いることを特徴とする。
本発明では、光半導体用樹脂組成物の主たる成分であるエポキシ樹脂成分として特定の波長における光透過率が特定の値以上であるものを用いると共に、このエポキシ樹脂成分を含む各原料成分を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行い、または、各原料成分に酸素吸着作用をもつ化合物を含有させて、光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じることで、その硬化物の透明性を向上させると共に、紫外線の照射や主として酸化を原因とする熱劣化による着色を抑制することが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の光半導体用樹脂組成物に用いられる各原料成分について説明する。本発明の光半導体用樹脂組成物の主たる成分であるエポキシ樹脂成分は、光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分である。
本発明では、主たる成分であるエポキシ樹脂成分として、このような光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を用いることにより、光半導体用樹脂組成物の硬化物を透明で耐紫外線性に優れたものとすることができる。すなわち、光半導体用樹脂組成物におけるエポキシ樹脂成分の光透過率が上記光透過率の範囲外となる場合、その硬化物の透明性が十分でなくなるおそれがあり、さらにその硬化物に紫外線等が照射された場合の透明性が十分でなくなるおそれがある。
ここで、エポキシ樹脂成分とは、エポキシ樹脂成分が1種類のエポキシ樹脂のみからなる場合にはそのエポキシ樹脂自体を指し、2種類以上のエポキシ樹脂からなる場合にはそれらの混合物のことを指す。すなわち、エポキシ樹脂成分の光透過率、粘度は、エポキシ樹脂成分が2種類以上のエポキシ樹脂からなる場合には、それらの混合物について測定を行う。
また、光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分とは、厚み1mmのエポキシ樹脂成分について分光光度計を用いて波長400nmの光透過率を測定したときに、その光透過率が80%以上となるエポキシ樹脂成分のことをいう。光透過率の測定は、例えばエポキシ樹脂成分が常温で固体の場合には適当な温度に加熱して成形したものを用いて行い、またエポキシ樹脂成分が液状の場合にはエポキシ樹脂成分自体の厚みが1mmとなるような適当なセルに入れて行うことができる。光透過率の測定に用いる機器としては、例えば分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いることができる。
本発明では、このようなエポキシ樹脂成分として脂環式エポキシ樹脂が好適に用いられる。エポキシ樹脂成分として脂環式エポキシ樹脂を用いることで、光半導体用樹脂組成物の硬化物の透明性、耐紫外性を良好なものとすることができる。ここで、脂環式エポキシ樹脂とは、環状の脂肪族基およびエポキシ基を有する化合物よりなる樹脂のことをいう。
このような脂環式エポキシ樹脂の中でも、エポキシ樹脂成分の光透過率を上記範囲内とし、また光半導体用樹脂組成物の硬化物の透明性、耐紫外性を良好なものにするものとして、下記一般式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂が好適に用いられる。下記一般式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂としては、市販されているものを用いることができ、このようなものとして例えばセロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量200、光透過率99%)が挙げられる。
また、上記一般式(1)で示される脂環式エポキシ樹脂と共に、下記一般式(2)で示される脂環式エポキシ樹脂を併用することもできる。下記一般式(2)で示されるエポキシ樹脂としては、市販されているものを用いることができ、このようなものとして例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量184、光透過率88.4%)が挙げられる。
また、本発明におけるエポキシ樹脂成分には、エポキシ樹脂成分の光透過率が上記範囲内となる範囲において、上記一般式(1)あるいは(2)で示されるような脂環式エポキシ樹脂に加えて、または、これらに代えて他のエポキシ樹脂を用いることができる。
他のエポキシ樹脂としては具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート等の多官能複素環式エポキシ樹脂、あるいはこれらを水素化したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。ただし、不飽和結合を多く含むエポキシ樹脂を用いると耐紫外線性が低下するため、耐紫外線性を害しない程度において用いることが好ましい。
本発明の光半導体用樹脂組成物には、上述したようなエポキシ樹脂成分に加えて、硬化促進剤成分として有機アルミニウム化合物および水酸基を有する有機ケイ素化合物(以下、単に有機ケイ素化合物と呼ぶ。)が含有されていることが好ましい。
有機アルミニウム化合物としては例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、イソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のアルコキシ化合物、トリアセトキシアルミニウム、トリステアラートアルミニウム、トリブチラートアルミニウム等のアシロオキシ化合物、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムtert−ブチレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリスヘキサフルオロアセチルアセトナートアルミニウム、トリスエチルアセトアセテートアルミニウムトリス(n−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(iso−プロピルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、トリスサリチルアルデヒドアルミニウム、トリス(2−エトキシカルボニルフェノラート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)等のキレート化合物が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でもアルコキシ化合物、キレート化合物が好ましく、キレート化合物がより好ましい。
また、このような有機アルミニウム化合物とともに使用する有機ケイ素化合物は、少なくとも1つのケイ素原子に直接結合した少なくとも1つの水酸基を有することを特徴とするものである。このような有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3)で示されるオルガノシランまたは下記一般式(4)で示されるポリシロキサン化合物が挙げられる。
これらの例として具体的には、ジフェニルジシラノール、ジフェニルメチルシラノール、トリメチルシラノール、トリフェニルシラノール等のアルキルシラノール化合物などが挙げられる。上記の有機ケイ素化合物は1種のみで用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらの硬化促進剤は、エポキシ樹脂成分100重量部あたり、有機アルミニウム化合物が0.005重量部以上、10重量部以下、有機ケイ素化合物が0.01重量部以上、20重量部以下の範囲で含有させることが好ましい。
有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物のいずれか一方でも含有量が前記範囲に満たないと、エポキシ樹脂成分の硬化が不十分となり、また接着性が十分に発現しないおそれがある。また、逆に有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物のいずれか一方でも前記範囲を超えて含有された場合には、反応が加速して極度の発熱または発火のおそれがある。含有量のより好ましい範囲は、有機アルミニウム化合物が0.01重量部以上、5重量部以下、有機ケイ素化合物が0.01重量部以上、10重量部以下である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で前記有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物以外の硬化促進剤を併用することができる。併用する硬化促進剤としては、一般的にエポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられるものが挙げられ、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等の有機ホスフィン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4、5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
本発明の光半導体用樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂成分、硬化促進剤成分に加えて、無機充填材、反応希釈剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を、本発明の趣旨に反しない範囲で必要に応じて含有させることができる。
無機充填材としては、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、アルミナ等が挙げられる。無機充填材の形状は球状でも破砕状でもよいが、透明性の観点からは微細な球状のものが好ましい。
また、カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤や、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
本発明の光半導体用樹脂組成物を成形材料として調製するにあたっては、上述したようなエポキシ樹脂成分、硬化促進剤成分に加えて、必要に応じて無機充填材、反応希釈剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を配合した後、ミキサー等によって十分に攪拌混合する。
本発明では、このような各原料成分を混合する際に、あるいは、混合した後に、真空脱気することにより酸素濃度が減じられた光半導体用樹脂組成物とする。また、このような真空脱気を行う代わりに、あるいは、真空脱気を行うと共に、酸素吸着作用をもつ化合物を含有させることにより、酸素濃度が減じられた光半導体用樹脂組成物とする。
このような真空脱気は、主として酸化を原因とする熱劣化による硬化物の着色を抑制するために極めて重要なプロセスとなる。このような真空脱気の条件は40℃以下の温度において、0.2気圧以下で3分以上、好ましくは0.1気圧以下で3分以上である。このような条件を満たさない場合、光半導体用樹脂組成物中に存在する酸素の除去が不十分となり充分な酸化防止効果を得られず、主として酸化を原因とする熱劣化による硬化物の着色を十分に抑制できないおそれがある。
本発明では、このようにして真空脱気を行った光半導体用樹脂組成物の真空を破る際、大気中で真空を破ってもよいが、窒素ガス等の不活性ガスをパージして真空を破るようにすることが好ましい。このように窒素ガスをパージして真空を破ることで、一旦、真空脱気されて酸素濃度が低下した光半導体用樹脂組成物に再び酸素が溶存してしまうことを抑制することができる。
このような真空脱気を行う場合において、光半導体用樹脂組成物の原料成分中に40℃以下で固体のもの、例えば40℃以下で固体のエポキシ樹脂等が存在する場合、そのような40℃以下で固体の原料成分を単体で溶融させた状態で、あるいは、そのような40℃以下で固体の原料成分と他の40℃以下で固体の原料成分とを混合溶融した状態で、上記真空脱気と同様の条件であらかじめ予備的な真空脱気を行うことが好ましい。そして、このような予備的な真空脱気が行われた原料成分と他の原料成分とを配合し、上述したように真空脱気しながら混合し、あるいは、混合した後に真空脱気を行う。このように予備的な真空脱気を行うことで、単に各原料成分全体を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行う場合には除去しきれない酸素についても、有効に除去することが可能となる。
また上述したように、このような真空脱気に代えて、あるいは、真空脱気と共に、光半導体用樹脂組成物組成物に酸素吸着作用をもつ化合物を含有させて、光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を低下させてもよい。
酸素吸着作用をもつ化合物としては、例えば鉄粉を主要な成分として用い、酸化促進物質として塩化ナトリウムなどのハロゲン化金属、および水分などを使用した形態のものが挙げられ、例えば特開昭56−2845号公報、特開昭56−130222号公報および特開昭58−128145号公報等において提案されているものを使用することができる。
また、酸素吸着作用をもつ化合物として、例えば特開昭59−29033号公報および特許第2658640号公報(1997年)に示されるような有機化合物であるL−アスコルビン酸、D−iso−アスコルビン酸、あるいは、これらのナトリウム塩などのアスコルビン酸やその塩を主剤とするものを使用することができる。
さらに、酸素吸着作用をもつ化合物として、例えば特開2000−50849号公報に示されるようなカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、クレゾールあるいはピロガロールなどから選択される低分子フェノール化合物を主剤とするものを使用することができる。また、酸素吸着作用をもつ化合物として、例えば特開平11−12115号公報に示されるような酸素欠陥を有する二酸化チタンや、その後の特開2003−225560に示されるようなニッケル原子を必須成分とする化合物あるいはニッケル原子を必須成分とする金属を含有する二酸化チタンを還元して得られるものを使用することができる。
本発明においては酸素吸着作用を有する化合物であれば特に限定されることなく使用することができ、上述したような公知の酸素吸着作用をもつ化合物を単独あるいは併用して用いることができる。また、本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、上述したような公知の酸素吸着作用をもつ化合物に一般に用いられる添加物等を用いることができる。
本発明においては、光半導体素子を封止するために用いられ、光透過率が高いものであることが好ましいことから、特に光半導体用樹脂組成物中で酸素吸着作用を有する化合物が固体で存在する場合、その粒径が平均で10μm以下、最大で45um以下であることが好ましい。また、酸素吸着作用を有する化合物を含有させる割合は、上述したような真空脱気を行わない場合において、光半導体用樹脂組成物全体の0.01重量%以上とすることが好ましい。また、酸素吸着作用を有する化合物を含有させる割合は、光半導体用樹脂組成物全体の2重量%以下とすることが好ましい。
上述したような真空脱気を行わない場合において、酸素吸着作用を有する化合物を含有させる割合が光半導体用樹脂組成物全体の0.01重量%未満では、充分に酸素を除去できないおそれがある。また、酸素吸着作用を有する化合物を含有させる割合が光半導体用樹脂組成物全体の2重量%を超えると、流動性が劣り良好な成形性が得られなくなり、また発光効率も劣るおそれがあるため好ましくない。
このような酸素吸着作用をもつ化合物は、例えば光半導体用樹脂組成物の原料成分であるエポキシ樹脂成分、硬化促進剤成分等と共に配合して用いることができる。また、上述したように、本発明では、酸素濃度を減じるためにこのような酸素吸着作用をもつ化合物を含有させると共に、混合する際、あるいは、混合した後に真空脱気を行ってもよい。
本発明の光半導体用樹脂組成物では、上述したような真空脱気する方法あるいは酸素吸着作用をもつ化合物を含有させる方法を用いることにより、その硬化物の熱劣化の主たる原因である酸化を抑制し、着色による透明性の低下を抑制することができる。また、本発明ではこのような方法と併せて、光半導体用樹脂組成物の主たる成分であるエポキシ樹脂成分として、特定の波長における光透過率が特定の値以上であるものを用いることにより、その硬化物の透明性を向上させる共に、紫外線の照射による透明性の低下も抑制することができる。
本発明では上述したような構成とすることで、例えば光半導体用樹脂組成物の硬化物の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を80%以上とし、透明性に優れたものとすることができる。
また、本発明では上述したような構成とすることで、例えば光半導体用樹脂組成物の硬化物に大気中で150℃、300時間の熱処理を行った場合に、その光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を80%以上とすることが可能となる。
さらに、本発明では上述したような構成とすることで、例えば光半導体用樹脂組成物の硬化物に、350nm以下の波長をフィルターカットした水銀灯を用いて、波長365nm、照度30mW/cm2で100時間の照射を行ったときに、その硬化物の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を80%以上とすることができ、耐紫外線性に優れたものとすることができる。
なお、上述した光半導体用樹脂組成物の硬化物についての各光透過率の測定は、例えば分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いて行うことができる。
本発明の光半導体装置は、このように調製された光半導体用樹脂組成物で光半導体素子を封止することにより製造されるものである。封止される光半導体素子としては、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトコンダクタ等が例示されるが、紫外発光素子のように紫外光を発光するものに用いた場合に特に顕著な効果が得られる。光半導体素子の封止方法は特に限定されるものではなく、低圧トランスファー法をはじめ、射出成形、圧縮成形、注型等により行うことができる。本発明では光半導体素子を封止する際に上述したような光半導体用樹脂組成物を用いることで、光半導体用樹脂組成物(硬化物)の紫外線および熱による劣化による光束減衰を抑制し、長寿命なものとすることができる。
(実施例1〜7、比較例1〜3)
表1に示すような配合割合で各原料成分を配合し、実施例1〜7の光半導体用樹脂組成物を製造した。酸素吸着作用をもつ化合物を配合しなかった実施例1〜4、6、7については、混合を行った後、常温かつ表1に示すような条件で真空脱気を行い酸素濃度を低下させた光半導体用樹脂組成物を製造した。また、酸素吸着作用をもつ化合物としての酸素吸着剤を配合した実施例5については、混合のみを行い、その後の真空脱気は行わずに酸素濃度を低下させた光半導体用樹脂組成物を製造した。
表1に示すような配合割合で各原料成分を配合し、実施例1〜7の光半導体用樹脂組成物を製造した。酸素吸着作用をもつ化合物を配合しなかった実施例1〜4、6、7については、混合を行った後、常温かつ表1に示すような条件で真空脱気を行い酸素濃度を低下させた光半導体用樹脂組成物を製造した。また、酸素吸着作用をもつ化合物としての酸素吸着剤を配合した実施例5については、混合のみを行い、その後の真空脱気は行わずに酸素濃度を低下させた光半導体用樹脂組成物を製造した。
一方、表2に示すような配合割合で各原料成分を配合し、比較例1〜3の光半導体用樹脂組成物を製造した。比較例1〜3の光半導体用樹脂組成物は、真空脱気を行わず、また酸素吸着作用をもつ化合物の添加も行わず、本発明の範囲外となるものである。
なお、表1、2中、エポキシ樹脂成分の透過率は分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いて、光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を測定した。なお、エポキシ樹脂成分が複数のエポキシ樹脂からなるものについては、これら複数のエポキシ樹脂からなる混合物について光透過率を測定した。
また、光半導体用樹脂組成物の製造に用いた原料成分は以下に示す通りである。以下の原料成分において、エポキシ樹脂の光透過率は分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いて光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を測定したものである。
*1 セロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量200、光透過率99%)
*2 EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量184、光透過率88.4%)
*3 EPICRON−1055(大日本インキ化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量477、光透過率88.2%)
*4 リカシッドTH(新日本理化(株)製 商品名)
*5 エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製 商品名)
*6 水酸基を有する有機ケイ素化合物 SH6018(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 商品名)
*7 ニッケル複合二酸化チタン粉末(平均粒径5μm、最大粒径35μm)
*2 EHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量184、光透過率88.4%)
*3 EPICRON−1055(大日本インキ化学工業(株)製 商品名、エポキシ当量477、光透過率88.2%)
*4 リカシッドTH(新日本理化(株)製 商品名)
*5 エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製 商品名)
*6 水酸基を有する有機ケイ素化合物 SH6018(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 商品名)
*7 ニッケル複合二酸化チタン粉末(平均粒径5μm、最大粒径35μm)
次に、実施例および比較例の光半導体用樹脂組成物について、硬化物の光透過率および熱処理後の硬化物の光透過率を測定した。結果を表1、2にそれぞれ示す。なお、光透過率および熱処理後の光透過率の測定は以下のようにして行った。
(光透過率)
実施例および比較例の光半導体用樹脂組成物を、大気中、120℃、2hおよび150℃、3hのキュア時間で成形し、厚み1mmの板状の成形物(以下、透明性評価用試験片と呼ぶ。)を得た。この透明性評価用試験片の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いて測定した。
実施例および比較例の光半導体用樹脂組成物を、大気中、120℃、2hおよび150℃、3hのキュア時間で成形し、厚み1mmの板状の成形物(以下、透明性評価用試験片と呼ぶ。)を得た。この透明性評価用試験片の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率を分光光度計V−530(日本分光社製 商品名)を用いて測定した。
(熱処理後の光透過率)
上記透明性評価用試験片に対して、大気中で150℃、300時間の熱処理を行った後、この透明性評価用試験片について熱処理前の透明性評価用試験片と同様に光透過率の測定を行った。また、別途、実施例1、比較例1の光半導体用樹脂組成物からなる透明性評価用試験片について、100時間の熱処理ごとに光透過率の測定を行い、その結果を図1に示した。
上記透明性評価用試験片に対して、大気中で150℃、300時間の熱処理を行った後、この透明性評価用試験片について熱処理前の透明性評価用試験片と同様に光透過率の測定を行った。また、別途、実施例1、比較例1の光半導体用樹脂組成物からなる透明性評価用試験片について、100時間の熱処理ごとに光透過率の測定を行い、その結果を図1に示した。
表1、2および図1の結果から明らかなように、実施例の光半導体用樹脂組成物は、特定の波長における光透過率が特定の値以上であるエポキシ樹脂成分を用いると共に、真空脱気を行い、あるいは、酸素吸着剤を添加して酸素濃度を低下させることで、硬化物の光透過率を向上できると共に、主として酸化を原因とする熱劣化による着色を抑制し、長期間にわたって高い透明性を維持できることが認められた。
Claims (5)
- 光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、
前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、前記光半導体用樹脂組成物を構成する各原料成分を混合する際あるいは混合した後に真空脱気を行ったことを特徴とする光半導体用樹脂組成物。 - 光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上のエポキシ樹脂成分を主たる成分とする光半導体用樹脂組成物であって、
前記光半導体用樹脂組成物中の酸素濃度を減じるために、酸素吸着作用をもつ化合物を含有させたことを特徴とする光半導体用樹脂組成物。 - 前記光半導体用樹脂組成物の硬化物の光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の光半導体用樹脂組成物。
- 前記光半導体用樹脂組成物の硬化物に大気中で150℃、300時間の熱処理を行った後、その光路長1mmにおける波長400nmの光透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光半導体用樹脂組成物。
- 光半導体素子を光半導体用樹脂組成物で封止してなる光半導体装置であって、前記光半導体用樹脂組成物として請求項1乃至4のいずれか1項記載の光半導体用樹脂組成物を用いたことを特徴とする光半導体装置。
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