以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の後席用エアバッグ装置Mは、図1・2に示すように、リヤハッチゲートRGを備えた車両Vに搭載されるものである。そして、後席用エアバッグ装置Mは、リヤハッチゲートRGに設けられたリヤウインドRW、リヤウインドRWの前方側で隣接するように配置される左右のサイドウインドとしてのクォータウインドSW、及び、リヤウインドRWとクォータウインドSWとの間のリヤピラー部RP、の車内側Iを覆い可能なエアバッグ20を備えて構成されている(図2〜4参照)。この車両Vには、ピラーガーニッシュ6に車内側を覆われた中間ピラー部CPが、リヤピラー部RPの前方側に配置されている。
なお、本明細書では、前後・左右・上下の方向は、直進時の車両Vの前後・左右・上下の方向を基準として、それらの方向と一致させて記載している。
そして、後席用エアバッグ装置Mは、エアバッグ20の他に、エアバッグ20に膨張用ガスGを供給するインフレーター10と、開き可能として、折り畳んだエアバッグ20の車内側Iを覆うエアバッグカバー15(図2・3参照)と、エアバッグ20の展開膨張時の案内を行う二本のガイドレール9と、を備えて構成されている。なお、実施形態の場合、エアバッグカバー15は、合成樹脂製のルーフヘッドライニング4の下縁4a側から構成されている。
二本のガイドレール9・9は、実施形態の場合、図1・4に示すように、ステンレス鋼等の剛性を有した金属パイプから形成されて、それぞれ、リヤピラーガーニッシュ5に覆われて、左右のリヤピラー部RPの形成方向である上下方向に沿って、配設されている。なお、各ガイドレール9は、上下の端部9a・9bをリヤピラー部RPの上下付近におけるボディ1側のインナパネル2の部位に、固定されるように、車外側方向に屈曲させており、端部9a・9b間をリヤピラー部RPに沿う上下方向に配置されたレール部9cとして、このレール部9cに、エアバッグ20から延びる環状のガイド部材39を、巻き掛けている。
なお、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うリヤピラーガーニッシュ5は、合成樹脂製として、ボディ1側のインナパネル2に取り付けられ、リヤウインドRW側の上下方向に沿う縁には、図4に示すように、ガイド部材39の移動時に、ガイド部材39に押されることにより車内側Iに開いて、ガイド部材39の移動を許容する扉部5aが、配設されている。
インフレーター10は、図1に示すように、リヤウインドRWの上縁側における左右方向の中央付近に配設されている。具体的には、インフレーター10は、取付ブラケット11に保持されて、取付ブラケット11が、リヤウインドRWの上縁側におけるリヤルーフレール部RRのインナパネル2にボルト12止めされることにより、リヤウインドRWの上方側に搭載されている。
エアバッグ20は、図1〜3に示すように、リヤウインドRWの上縁側から、左右のリヤピラー部RPの上方を経て、左右のクォータウインドSWの上縁側のエリアにかけて、折り畳まれて、エアバッグカバー15に覆われて収納されている。そして、エアバッグ20は、後席8の後方におけるリヤウインドRWの車内側Iを覆うリヤ用バッグ部27と、リヤウインドRWの前方側における後席8の側方に位置する左右のクォータウインドSWの車内側Iをそれぞれ覆うサイド用バッグ部40(40L・40R)と、を有して構成されている。なお、後席8は、座部8aと背もたれ部8bとを有し、背もたれ部8bの上端には、ヘッドレスト8cが配設されている。
さらに、エアバッグ20は、図1・5に示すように、リヤ用バッグ部27の上部側における左右方向の中央部位に、膨張用ガスGを流入させる流入口部26を配設させている。流入口部26は、リヤ用バッグ部27から上方に延びて、左右方向に沿うように(実施形態では左方側)に屈曲されたL字状の筒形状に形成されている。
そして、このエアバッグ20は、図5〜9に示すように、流入口部26、リヤ用バッグ部27、及び、左右のサイド用バッグ部40L・40Rの外周壁を構成するエアバッグ本体21と、エアバッグ本体21内の上縁側に配置されて流入口部26から流入する膨張用ガスGを、リヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとに供給するインナチューブ55と、を備えて構成されている。
エアバッグ本体21は、その袋状の形状を構成する本体バッグ部22が、車内側布22aと車外側布22bとの二枚の同形状とした布材の所定部位相互を縫合して、形成されている。なお、実施形態の場合、エアバッグ本体21は、本体バッグ部22におけるリヤ用バッグ部27の上縁27a側に、リヤ用バッグ部27を車両Vのボディ1側に取り付けるための取付部38を構成する取付布23を、縫合させて構成されている。
なお、車内側・車外側布22a・22b、取付布23、及び、インナチューブ55を形成するチューブ用布56は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
また、車内側・車外側布22a・22bには、リヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dにおける下縁27b付近に、左右方向に延びる帯状の舌片22cを備えている。これらの舌片22cは、先端側を、リヤ用バッグ部27の左右方向の中央側となる元部側に、折り返して、その元部側に縫合し、環状のガイド部材39を形成している(図4参照)。
さらに、車内側・車外側布22a・22bには、左右のガイド部材39付近のリヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとの間に、それぞれ、エアバッグ20の下縁側から上方へ延びて、リヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとを分離させる凹部53が、配設されている。
そして、リヤ用バッグ部27は、平らに展開させた形状を、下辺を上辺より長くした左右対称形の略台形形状とし、膨張用ガスGを流入させるエリアとして、車内側・車外側布22a・22b相互を離すように膨張するガス流入部(膨張部)28と、膨張用ガスGを流入させずに膨らまない非流入部35と、から構成されている。なお、ガス流入部28と非流入部35との境界部位は、車内側・車外側布22a・22b相互を、縫合糸24を利用して縫合することにより、形成されている。
ガス流入部28は、棒状に膨張する五つのセル部29・30・31・32・33から構成されて、左右方向に延びる横セル部29・30が、リヤ用バッグ部27の上縁27aと下縁27bとにそれぞれ配設され、略上下方向に延びる縦セル部31・32が、リヤ用バッグ部27の左縁27cと右縁27dとにそれぞれ配設されている。そして、下横セル部30の左右方向の中央付近から上方に延びるように、中央縦セル部33が、配設されている。中央縦セル部33の上端部33aは、上横セル部29と連通せずに、手前(下方側)で閉塞されている。なお、実施形態の各セル部29・30・31・32・33は、膨張完了時の内径寸法を相互に略等しくするように、構成されている。
また、上・下横セル部29・30は、リヤウインドRWの周縁の上縁付近と下縁付近とに配置されるように構成されている。実施形態の場合、リヤ用バッグ部27の展開膨張完了時、下横セル部30は、ヘッドレスト8cの後方側に配置されることとなる。さらに、左右の左・右縦セル部31・32は、上下の端部31a・31b・32a・32bを、上・下横セル部29・30の左右方向の端部29a・29b・30a・30bに対して、交差させて連通させるとともに、上端部31a・31b相互の離隔距離より下端部31b・32b相互の左右方向の離隔距離を大きくするように、下開きの形状として、リヤウインドRWの周縁におけるリヤピラー部RPの左右の縁付近に配置されるように、構成されて、リヤ用バッグ部27は、展開膨張完了時、リヤウインドRWの車内側Iの略全域を覆うことができるように、構成されている。
非流入部35は、ガス流入部28の外周縁に配置される周縁部36と、上・下の横セル部29・30間で、かつ、左右の縦セル部31・32間のエリアにおける中央縦セル部33を除いた部位の板状部37と、リヤ用バッグ部27の上縁27aにおける取付布23からなる取付部38と、から構成されている。取付部38には、リヤウインドRWの上縁周縁におけるリヤルーフレール部RRのボディ1側のインナパネル2に対して、取付部38をボルト18止めするための複数(実施形態では四個)の取付孔38aが形成されている。
なお、取付部38の取付時には、図2に示すように、取付孔38aの周縁に、板金製の当板17が取り付けられて、当板17ごと、インナパネル2にボルト18止めされることとなる。
また、取付部38は、リヤ用バッグ部27の上縁27a側に設ける必要が生じ、そして、エアバッグ本体21が二枚の車内側・車外側布22a・22b相互を重ねて縫合して形成するものの、布22a・22bが流入口部26の部位を形成することから、流入口部26と前後方向で重なって配置される取付部38は、後付けの取付布23を本体バッグ部22に縫合するようにして、形成されている。
さらに、リヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dの下縁27b付近には、既述したように、上下方向に沿って貫通する孔39aを内周側に設けた環状のガイド部材39・39が、配設されている。
なお、ガイド部材39・39におけるリヤ用バッグ部27との連結位置やその長さ寸法L0(図11参照)は、エアバッグ20の展開膨張完了時に、左右のサイド用バッグ部40L・40Rにおける後述するピラーカバー部40fとリヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dとの車内空間を狭めるような車内外方向での重なりを防止可能に、設定されている。実施形態の場合、エアバッグ20の展開膨張完了時、リヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dが、リヤピラー部RPのリヤウインドRW側の縁に略一致する状態として、ピラーカバー部40fの後端、すなわち、サイド用バッグ部40の後縁40dと、車内側方向に重ならない状態で、略接触する状態に、ガイド部材39・39におけるリヤ用バッグ部27との連結位置やその長さ寸法L0が、ガイドレール9の配置位置に対応して、設定されている。
左右のサイド用バッグ部40(40L・40R)は、それぞれ、平らに展開させた形状を、略長方形状とし、膨張用ガスGを流入させるエリアとして、車内側・車外側布22a・22b相互を離すように膨張するガス流入部(膨張部)41と、膨張用ガスGを流入させずに膨らまない非流入部48と、から構成されている。このガス流入部41と非流入部48との境界部位も、リヤ用バッグ部27と同様に、車内側・車外側布22a・22b相互を、縫合糸24を利用して縫合することにより、形成されている。
ガス流入部41は、棒状に膨張する五つのセル部42・43・44・45・46から構成されて、前後方向に延びる横セル部42・43が、サイド用バッグ部40の上縁40aと下縁40bとにそれぞれ配設され、上下方向に延びる三つの縦セル部44・45・46が、前後方向に並設されている。なお、サイド用バッグ部40は、車両Vへの搭載時には、上縁40aが、クォータウインドSWの上縁側で、前後方向に沿って配置されることから、展開膨張完了時の上・下横セル部42・43は、車両Vの前後方向に沿って配設されることとなり、また、各縦セル部44・45・46も、クォータウインドSWやリヤピラー部RPの車内側Iに沿うように、上下方向に沿って、配置されることとなる。
そして、上・下横セル部42・43は、クォータウインドSWの周縁の上縁付近と下縁付近とに配置されるように構成されている。また、前端側の前端縦セル部44は、上下の端部44a・44bを、上・下横セル部42・43の前端部42a・43aと交差させるように連通させている。さらに、前後方向の中間位置に位置する中央縦セル部45は、上下の端部45a・45bを、上・下横セル部42・43に連通させているものの、後端側の後端縦セル部46は、下端部46bを下横セル部43の後端部43bと連通させて、上端部46aを、上横セル部42に連通させていない。
この後端縦セル部46は、ピラーカバー部40fとして、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うことができるように、構成されており、サイド用バッグ部40は、展開膨張完了時、リヤピラー部RPとリヤピラー部RPの前方のクォータウインドSWとの車内側Iを覆うことができるように、構成されている。すなわち、サイド用バッグ部40は、ピラーカバー部40fとしての後端縦セル部46の前方側の各セル部42・43・44・45の部位を、クォータウインドSWを覆うウインドカバー部40eとして、構成している。
非流入部48は、ガス流入部41の外周縁に配置される周縁部49と、各縦セル部44・45・46を区画するように上下方向に配設される区画部50・51と、サイド用バッグ部40の上縁40aの取付部52と、から構成されている。
周縁部49は、サイド用バッグ部40の後縁40d(図5・9参照)側において、後端縦セル部46をリヤ用バッグ部27から凹部53を開けて離すように、形成されるとともに、上横セル部42の後端部42bに対して、後端縦セル部46の上端部46aを分離させて上端部46aの上縁を囲むように、湾曲部49aを備えて構成されている。
取付部52には、クォータウインドSWの上縁周縁におけるルーフサイドレール部RSのボディ1側のインナパネル2に対して、取付部52をボルト18止めするための複数(実施形態では二個)の取付孔52aが形成されている。この取付部52も、リヤ用バッグ部27の取付部38と同様に、図3に示すように、取付孔52aの周縁に、板金製の当板17が取り付けられて、当板17ごと、インナパネル2にボルト18止めされることとなる。
区画部50は、上下の横セル部42・43の間において前端縦セル部44と中央縦セル部45とを区画するように、上下方向に線状に延びたI字形状に形成されている。区画部51は、下横セル部43の上方に位置して、中央縦セル部45と後端縦セル部46とを区画するように、上下方向に線状に延びるI字形状に形成されている。この区画部51は、上端51aを、周縁部49における湾曲部49aの前端と上横セル部42の後端部42bの下縁49bとに連結されるように配設されている。
そして、左右の各サイド用バッグ部40(40L・40R)では、図5・9に示すように、上横セル部42の後端部42bの部位が、リヤ用バッグ部27の上横セル部29の左右両端部29a・29bと連通して、膨張用ガスGをサイド用バッグ部40へ流入させるためのガス流路41aを、構成している。なお、ガス流路41aの下方には、既述したように、リヤ用バッグ部27とサイド用バッグ部40L・40Rとを分離させるための凹部53が、配設されている。
さらに、エアバッグ本体21を平らに展開させた際、上・下横セル部42・43が、前端部42a・43aをリヤ用バッグ部27の下横セル部30から離れる方向に、角度θ分、屈曲させて、上横セル部42の後端部42bにおけるガス流路41aが、リヤ用バッグ部27の上横セル部29の左右両端部29a・29bに連通されている。このように屈曲角度θを設ける理由は、次のようである。すなわち、車両Vでは、リヤウインドRWが、図3に示すように、下縁側を上縁側より車外側Oとなる後方に変位させて配設され、クォータウインドSWが、図14に示すように、下縁側を上縁側より車外側Oに変位させて配設されている。そして、エアバッグ本体21が、二枚の同形状の布材22a・22b相互を重ねて縫合して製造するものである。そのため、エアバッグ本体21から構成されるエアバッグ20が、取付部38・52をウインドRW・SWの上縁側に沿わせるように取り付けて、車両Vに搭載した後、各ウインドRW・SWを覆うように展開膨張する際、この屈曲角度θがあれば、屈曲角度θのない場合に比べて(上横セル部29・42が一直線の直列状に連結されている場合に比べて)、各リヤ用・サイド用バッグ部27・40を、ウインドRW・SWに沿って、展開膨張を完了させ易いからである。ちなみに、屈曲角度θのない場合(上横セル部29・42が一直線の直列状に連結されている場合)では、リヤ用バッグ部27やサイド用バッグ部40が、ウインドRW・SWに沿い難く、下縁27b・40b側をウインドRW・SWから離した車内側Iの位置に配置させて、各バッグ部27・40の下縁27b・40b側を、車内側Iに突出させるような展開膨張を招き易い。
インナチューブ55は、図5〜7・9・10に示すように、エアバッグ本体21の流入口部26内に配設される流入用筒部58と、リヤ用バッグ部27の上縁27aにおける上横セル部29内に配設されるリヤ用筒部59と、左右のサイド用バッグ部40の上縁40aにおける上横セル部42内にそれぞれ配設されるサイド用筒部60(60L・60R)と、を備えて構成されている。
なお、実施形態のインナチューブ55は、チューブ用布56を二つ折りして、外周縁相互を、縫合糸57を使用して、縫合することにより、形成されている。
そして、実施形態のインナチューブ55は、各筒部58・59・60の形状や外径寸法が、各筒部58・59・60の配設される流入口部26や上横セル部29・42の形状や内径寸法と略等しく設定されている。そのため、流入用筒部58は、流入口部26と同様に、L字状に屈曲して形成され、また、リヤ用筒部59は、左右方向の略中央で流入用筒部58と略直交して連通している。さらに、左右のサイド用筒部60は、リヤ用筒部59の左右両端付近から、屈曲角度θを設けて、屈曲されて、配設されている。
さらに、リヤ用筒部59と左右のサイド用筒部60(60L・60R)とには、膨張用ガスGを吐出させるためのガス吐出口59a・60a・60bが形成されている。これらのガス吐出口59a・60a・60bは、円形に開口されて、左右のサイド用バッグ部40L・40Rの展開膨張の開始遅れを防止可能に、リヤ用筒部59の二つのガス吐出口59aが、それぞれ、リヤ用筒部59における左右方向の中央付近からサイド用筒部60側に離れた位置の周壁に配置され、左右のサイド用筒部60のガス吐出口60a・60bの内の開口面積を広くしたガス吐出口60aが、各サイド用筒部60の前端付近に配置されている。なお、サイド用筒部60は、前端を閉塞させており、ガス吐出口60aは、その閉塞された前端近傍の周壁に配設されている。また、ガス吐出口60bも、サイド用筒部60の周壁に開口されている。
そして、各ガス吐出口59a・60a・60bの配置位置は、インナチューブ55がエアバッグ本体21内の所定位置に配置された際に、各ガス吐出口59aが、それぞれ、左右の縦セル部31・32の上端部31a・32aの位置に配置され、各ガス吐出口60aが、前端縦セル部44の上端部44aの位置に配置され、各ガス吐出口60bが、中央縦セル部45の上端部45aの位置に配置されるように、構成されている。
特に、サイド用筒部60のガス吐出口60a・60bは、その開口の軸心CF・CBを、配置された縦セル部44・45における車両Vへの搭載時のサイド用バッグ部40の上下方向に沿う方向に一致させて、下向きに開口するように、配設されている。
実施形態の場合、ガス吐出口59aの内径寸法D1は、50mm、ガス吐出口60aの内径寸法D2は、32mm、ガス吐出口60bの内径寸法D3は、25mmとしている。
このエアバッグ20の製造は、先ず、インナチューブ55を製造する。インナチューブ55の製造は、図10に示すように、チューブ用布56を平らに展開して、ガス吐出口59a・60a・60bを設けた後に、その周縁を補強するために、縫合糸57によって縫合し、その後、二つ折りし、縫合糸57を使用して、二つ折りした外周縁相互を縫合することにより、形成する。また、車内側・車外側布22a・22bを重ねて、縫合糸24を使用して、所定部位を縫合すれば、本体バッグ部22を形成することができる。そして、重ねた舌片22cを折り返して、先端側を元部側に縫合して環状に形成し、リヤ用バッグ部27の下縁27b付近の左右両縁27c・27dにガイド部材39を形成して、リヤ用バッグ部27の上縁27a側に、取付布23を取り付ければ、エアバッグ本体21を製造することができ、ついで、インナチューブ55をエアバッグ本体21内に挿入させて配置させれば、エアバッグ20を製造することができる。
なお、インナチューブ55は、車内側・車外側布22a・22bを重ねて縫合する前に、予め、所定位置に配置させておき、布22a・22b相互を縫合して、本体バッグ部22を製造してもよい。
このように製造したエアバッグ20は、折り畳んだ後、折り崩れを防止するラッピング材で包み、ついで、取付ブラケット11に保持させた状態のインフレーター10を、クランプ13を利用して、流入口部26(実際には、流入用筒部58)に挿入して接続させ、当板17を所定の取付孔38a・52aの周縁に取り付けて、エアバッグ組付体を形成しておき、その組付体を、各ボルト12・18を利用して車両Vに取り付ける。そして、インフレーター10に所定の作動信号入力用のリード線を結線するとともに、各ガイド部材39をガイドレール9のレール部9cの上端部9a側に外装させて、各ガイドレール9を所定のインナパネル2の位置に固定し、さらに、ルーフヘッドライニング4とリヤピラーガーニッシュ5を車両Vに取り付ければ、後席用エアバッグ装置Mを、車両Vに搭載することができる。
また、実施形態の場合のエアバッグ20の折り畳みについて述べると、図11に示すように、リヤ用バッグ部27の部位では、リヤ用バッグ部27を平らに展開させて、下縁27bを上縁27aに接近させるように、左右方向に沿う折目C1を付けて、蛇腹折りする(図11参照)。また、左右の各サイド用バッグ部40の部位では、各サイド用バッグ部40を平らに展開させて、まず、区画部51に上下方向に沿う折目C2を付けるようにして、ピラーカバー部40fを、ウインドカバー部40eの中央縦セル部45の車内側Iに載せるように、折り返す。ついで、下縁40bを、上縁40aに接近させるように、車外側Oに向けるように巻くロール折りを行えば(図3参照)、エアバッグ20の折り畳みを完了させることができ、エアバッグ20の折り畳みが完了したならば、既述したように、折り崩れ防止用のラッピング材でエアバッグ20を包んでおく。
そして、実施形態の後席用エアバッグ装置Mを車両Vへ搭載した後、車両Vが後突や側突された際には、所定の電気信号がインフレーター10に入力されて、インフレーター10が膨張用ガスGを吐出することとなる。そして、エアバッグ20が、インナチューブ55を介在させて、流入口部26から膨張用ガスGを流入させれば、リヤ用バッグ部27が展開膨張するとともに、ガス流路41aから流入させた膨張用ガスGにより、左右の各サイド用バッグ部40(40L・40R)が展開膨張し、リヤ用バッグ部27と左右の各サイド用バッグ部40L・40Rとが、図12に示すように、共に、リヤウインドRWやクォータウインドSWの上縁側の収納部位から、下方へ突出して、展開膨張することとなる。
その際、リヤ用バッグ部27とサイド用バッグ部40とは、上縁側のガス流路41aの直下付近まで、相互に、凹部53で分離されていることから、相互に、他方側への折りの解消の影響を与えずに、すなわち、干渉し合うことなく、自由に展開膨張することができて、円滑に、リヤウインドRWとクォータウインドSWとを覆うように、展開膨張することができる。
したがって、実施形態の後席用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ20におけるリヤウインドRWとクォータウインドSWとを覆う各バッグ部27・40が、相互に干渉せずに折りを解消できて、円滑に展開膨張することができる。
そして、実施形態のエアバッグ20では、リヤ用バッグ部27が、蛇腹折りされて、下縁27b側を上縁27a側に接近させるように折り畳まれ、左右のサイド用バッグ部40が、下縁40b側を車外側Oに向けるように巻き付けるロール折りにより、下縁40b側を上縁40a側に接近させるように折り畳まれて、リヤウインドRWの上縁側から左右のクォータウインドSWの上縁側にかけて、収納されている。
このように折り畳まれて収納されたエアバッグ20では、膨張用ガスGを流入させて展開する際、リヤ用バッグ部27では、蛇腹折りであることから、蛇腹折りの折り重ね方向に略沿って、リヤ用バッグ部27の下縁27bが、迅速に下方側へ展開し、そして、リヤ用バッグ部27は、展開膨張を完了させることができる(図2の二点鎖線参照)。また、サイド用バッグ部40では、ロール折りの巻きを解きつつ、サイド用バッグ部40の下縁40b側が、下方へ展開し(図3の二点鎖線参照)、その際、仮に、乗員の頭部と接触することとなっても、サイド用バッグ部40のロール折りが、サイド用バッグ部の下縁40b側を車外側Oに巻くロール折りであることから、その巻きの解きを規制することなく、乗員と接触しつつ、折りを解消できて、サイド用バッグ部40は、円滑に、展開を完了させて、膨張することができる。
勿論、リヤ用バッグ部27とサイド用バッグ部40とは、上縁40a側のガス流路41aの直下付近まで、相互に、凹部53で分離されていることから、同じ折り畳み方としていても、相互に、他方側への折りの解消の影響を与えずに、すなわち、干渉し合うことなく、自由に展開膨張することができて、円滑に、リヤウインドRWとクォータウインドSWとを覆うように、展開膨張することができる。
なお、リヤ用バッグ部27とサイド用バッグ部40との折り畳みは、既述したように、リア用バッグ部27を蛇腹折りし、サイド用バッグ部40をロール折りする他、搭載する車両に応じて、適宜、変更することができ、さらに、既述したように、同じ折り畳み方でもよい。
そして、実施形態では、左右のリヤピラー部RPに、それぞれ、ピラーガーニッシュ5に覆われるようにして、ガイドレール9が、上下方向に沿って配設されるとともに、リヤ用バッグ部27の展開膨張時に、リヤ用バッグ部27の左右の下縁27b付近がリヤピラー部RPに沿って下降移動可能に、リヤ用バッグ部27の左右の下縁27b付近に、ガイドレール9に対して摺動可能に係合するガイド部材39が、配設されている。さらに、ピラーガーニッシュ5には、ガイド部材39の下降移動時に開き可能な扉部5aが、設けられている。
そのため、実施形態では、図12・13に示すように、リヤ用バッグ部27の展開膨張時、左右のサイド用バッグ部40L・40R側に位置する左右の部位31・32が、その下降移動を、ガイドレール9・9によって案内されつつ規制されることから、ガス流路41aの下方で凹部53を介在させて、リヤ用バッグ部27とサイド用バッグ部40L・40Rとが分離されていても、展開膨張時の両者の不必要な接触を、安定して、防止することができる。さらに、ピラーガーニッシュ5には、ガイド部材39の下降移動時に開く扉部5aが配設されており、ガイド部材39の下降移動を妨げず、かつ、エアバッグ装置Mの非作動時には、扉部5aが閉じており、ピラーガーニッシュ5の意匠性を低下させない。
また、実施形態では、エアバッグ20の左右のサイド用バッグ部40L・40Rが、それぞれ、クォータウインドSWの車内側Iを覆うウインドカバー部40eと、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うピラーカバー部40fと、を備えて構成されている。そのため、サイド用バッグ部40の展開膨張完了時、サイド用バッグ部40は、ウインドカバー部40eがクォータウインドSWの車内側Iを覆う他、ピラーカバー部40fがリヤピラー部RPの車内側Iを覆うことから、リヤピラー部RPからの乗員の保護を図ることもできる。
さらに、実施形態の場合、エアバッグ20の展開膨張完了時に、左右のサイド用バッグ部40L・40Rにおけるピラーカバー部40fとリヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dとの車内外方向での重なりを防止可能に、ガイドレール9が、剛性を有して形成されるとともに、ガイド部材39におけるリヤ用バッグ部27との連結位置と長さ寸法L0とが、設定されている。
そのため、サイド用バッグ部40におけるリヤピラー部RPを覆うピラーカバー部40fが、リヤウインドRWに接近して展開膨張する構成としても、リヤ用バッグ部27のリヤピラー部RP側の部位となる左・右縦セル部31・32が、ガイドレール9とガイド部材39とによって、ぶれることなく、安定して、下降移動できるため、車内空間を狭めるような、ピラーカバー部40fとリヤ用バッグ部27の左右の縁27c・27dとの車内外方向での重なりを、的確に防止できる。その結果、エアバッグ20のリヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとが、両者の間に凹部53を配設させていても、展開膨張完了には、後席に着座した乗員の周囲で、リヤウインドRW、その前方のリヤピラー部RP、及び、リヤピラー部RPの前方のクォータウインドSW、を連続的に覆うことが可能となる。
さらに、実施形態の場合、エアバッグ20のリヤ用バッグ部27は、蛇腹折りして、下縁27b側を上縁27a側に接近させるように折り畳み、エアバッグ20の左右のサイド用バッグ部40L・40Rは、ピラーカバー部40fの上端部46aとガス流路41aとの間まで、凹部53を延設させて構成されるとともに、ピラーカバー部40fをウインドカバー部40eの車内側Iに重なるように折った後、下縁40b側を車外側Oに向けるように巻き付けるロール折りを行って、下縁40b側を上縁40a側に接近させるように折り畳んでいる。
そのため、エアバッグ20の展開膨張時、蛇腹折りされたリヤ用バッグ部27は、図2・12〜14の二点鎖線に示すように、リヤ用バッグ部27の下縁27bが、左右両縁27c・27dに設けたガイド部材39のガイドレール9による案内により、蛇腹折りの折り重ね方向に略沿って、円滑、かつ、迅速に下方側へ展開膨張し、そして、膨張を完了させることができる。
また、サイド用バッグ部40は、図12・13に示すように、ピラーカバー部40fを折り返した状態で、ロール折りの巻きを解きつつ、サイド用バッグ部40の下縁40b側が、下方へ展開して、ウインドカバー部40eが、クォータウインドSWの車内側Iを覆うように膨張を完了させるとともに、ピラーカバー部40fが、ウインドカバー部40eの車内側Iに折り返されていた位置から折りを解消して、リヤピラー部RPの車内側Iに配置されて、膨張を完了させることとなる。そして、ピラーカバー部40fが、リヤピラー部RPを覆うように、クォータウインドSWから展開してきても、リヤ用バッグ部27が、左右の縁27c・27dを、ガイドレール9に係合させているガイド部材39によって、位置規制されており、車内空間を狭めるような車内外方向で重なることを防止して、ピラーカバー部40fが、リヤ用バッグ部27との隙間を極力無くして、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うことが可能となる。
したがって、エアバッグ20のリヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとが、展開膨張完了には、後席8に着座した乗員の周囲で、リヤウインドRW、その前方のリヤピラー部RP、及び、リヤピラー部RPの前方のクォータウインドSW、を、一層、安定して、隙間無く、連続的に覆うことが可能となる。
なお、後席用エアバッグ装置Mの作動時のおけるエアバッグ20内の膨張用ガスGの流れを詳しく説明すると、まず、インフレーター10からの膨張用ガスGは、エアバッグ本体21の流入口部26に位置するインナチューブ55の流入用筒部58に流入して、リヤ用筒部59に流れる。そして、リヤ用筒部59では、二つのガス吐出口59a・59aが、それぞれ、流入用筒部58と略直交方向で連結された部位から離れるようにずれたサイド用筒部40L・40R側の周壁に、配置されていることから、膨張用ガスGは、流入用筒部58から略直交方向にリヤ用筒部59に流入して、屈曲しつつ左右に分岐され、そして、左右に分岐された状態の直進状態でリヤ用筒部49を経て左右のサイド用筒部60L・60Rに流れることとなる。すなわち、膨張用ガスGは、リヤ用筒部59では、流入用筒部58付近からリヤ用筒部59を膨らませつつ、リヤ用筒部59に沿った直進状態を維持して流れることから、リヤ用筒部59のガス吐出口59aから膨張用ガスGが流出されるものの、そのガス吐出口59aから流出せずに通過する膨張用ガスGも多い。そして、そのガス吐出口59aを通過した膨張用ガスGは、直進状態を維持した状態で、インナチューブ55の先端側に流れ、左右のサイド用筒部60L・60Rの前端付近に配置されたガス吐出口60aから、十分な量として迅速に流出されることとなる。
その結果、膨張用ガスGを流入させたエアバッグ20は、リヤ用筒部59と同時に上横セル部29が膨らむとともに、ガス吐出口59a・59aから流出される膨張用ガスGによって、左右の縦セル部31・32が膨らんで、リヤ用バッグ部27が展開膨張し始めれば、時間差を少なくして、サイド用筒部60L・60Rと同時に上横セル部42が膨らむとともに、ガス吐出口60a・60bから流出される膨張用ガスGによって、前端・中央縦セル部44・45が膨らんで、左右のサイド用バッグ部40L・40Rも展開膨張し始めることとなる。そして、時間差を少なくして、リヤ用バッグ部27と左右のサイド用バッグ部40L・40Rとが、展開膨張を完了させることとなる。
そしてさらに、リヤ用バッグ部27は、展開膨張時、図5・12・13・14に示すように、リヤウインドRWの上縁側で、エアバッグカバー15であるルーフヘッドライニング4の下縁4aを車内側Iに押し開いて、車内側Iへ突出し、その際、蛇腹折りを解消しつつ、インナチューブ55のリヤ用筒部59と同時に上横セル部29が膨らむとともに、ガス吐出口59a・59aから流出される膨張用ガスGにより、下縁27bを展開完了位置まで配置させるように、ガイド部材39を介在させて、ガイドレール9に案内されつつ、左右の縦セル部31・32が、展開しつつ下端部31b・32bまで膨らみ、ついで、下横セル部30が、左右両端部30a・30b付近から中央に向かうように、膨らみ、そして、中央縦セル部33が膨張する。そして、中央縦セル部33の全域が膨張すれば、リヤ用バッグ部27は、展開膨張を完了させて、リヤウインドRWの車内側Iを覆うこととなる。
また、左右のサイド用バッグ部40では、展開膨張時、図5・12・13に示すように、クォータウインドSWの上縁側で、エアバッグカバー15であるルーフヘッドライニング4の下縁4aを車内側Iに押し開いて、車内側Iへ突出し、その際、まず、ロール折りを解消しつつ、インナチューブ55のサイド用筒部60と同時に上横セル部42が膨らむとともに、ガス吐出口60a・60bから流出される膨張用ガスGにより、下縁40bを展開完了位置まで配置させるように、前端・中央縦セル部44・45が下端部44b・45bまで膨らみ、そして、下横セル部42も膨張し、車内側Iへ折り返していた後端縦セル部46(ピラーカバー部40f)の折りを解消させ、ついで、後端縦セル部46が、下端部46bから上端部46a側へ向かうように膨張する。そして、後端縦セル部46の全域が膨張すれば、サイド用バッグ部40は、展開膨張を完了させて、前端・中央縦セル部44・45付近(ウインドカバー部40e)が、リヤピラー部RPの近傍から中間ピラー部CP付近までのクォータウインドSWの車内側Iを覆い、後端縦セル部46(ピラーカバー部40f)が、リヤピラー部RPにおけるピラーガーニッシュ5の車内側Iを覆うこととなる。
そして、実施形態のエアバッグ20では、左右のサイド用バッグ部40の前端側に配置されるセル部44が、展開膨張完了時におけるサイド用筒部60の部位からサイド用バッグ部40の下縁40b側まで上下方向に沿って延びる縦セル部44として、構成され、かつ、サイド用筒部60の前端側のガス吐出口60aが、軸心CFを上下方向に沿わせて、前端縦セル部44の上端44aで下向きに開口させて配設されている。
そのため、インナチューブ55の先端側であるサイド用筒部60の前端側のガス吐出口60aから、膨張用ガスGが吐出されれば、上下方向に沿って配設された縦セル部44の下端部44bまで、膨張用ガスGが流れ、そして、そのガス吐出口60aが、軸心CFを上下方向に沿わせて、縦セル部44の上端部44aで下向きに開口させているため、縦セル部44は、その下端部44bを、サイド用バッグ部40の展開膨張完了位置まで、迅速に配置させることができる。その結果、サイド用バッグ部40は、縦セル部44が下端部44bを所定位置に配置させる際に、その縦セル部44に引っ張られる状態となって、全体の下縁40b側を、大きく揺動させることなく、展開膨張完了位置付近まで、迅速かつ容易に、展開させることができて、後席8に着座した乗員が、クォータウインドSWに、接近していても、円滑に、乗員頭部とクォータウインドSWとの間に、サイド用バッグ部40を配置させることができる。