以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の実施形態に係る車両の車室1内には、図1に示すように、フロントシート(不図示)の後方にリヤシート2が備えられ、その後方にラゲッジスペース3(以後、荷室3という)が設けられている。また、荷室3の後端部には、該荷室3への荷物積み下ろしのため、たとえば、リフトゲートのような後部開閉体(不図示)により開閉される開口部が設けられている。
図2に示すように、前記リヤシート2が配置される車室フロア1aは、荷室フロア1bよりも低い位置に形成されて緩やかな傾斜を有し、該荷室フロア1bに急斜面1cを介して接続されている。
そして、リヤシート2は、左右のシートバック4,4と、シートクッション5,5と、シートバック4,4を急斜面上1cに支持するシートバック支持機構10…10と、シートクッション5,5を車室フロア1aに支持するシートクッション支持機構20…20とを有している。
各シートバック支持機構10は、図2、図3(図2、図3においては左右のシートのうちの左側のシートの左側の機構についてのみ図示しているが、右側の機構はこれと左右対称の構成とされ、右側のシートは左側のシートと同構成とされている。以下、後述するシートクッション支持機構20及び連動機構30について同じ)に示すように、シートバック4の下部側方において急斜面1cに固定されたブラケット11と、荷室フロア1bより低い位置において、該ブラケット11の上部とシートバック4の下部とにわたって挿通された回動軸12とを有し、シートバック4を、図2に示す起立状態と図6に示す前倒状態との間で回動可能に支持している。なお、シートバック4の外皮材の内側には、骨格材としてのシートバックフレーム4aと、その下部に固着されると共に、前記回動軸12が挿通され、かつ十分な剛性を有するプレート材からなるブラケット4bとが備えられている。
シートクッション支持機構20は、図2に示すように、シートクッション5の前側部下方において車室フロア1aに固定された左右一対のブラケット21と、一端がシートクッション5の骨格をなすシートクッションフレーム5aに連結ピン22により回動可能にヒンジ結合され、他端が枢支ピン23によって前記ブラケット21に枢動可能に支持された連動リンク24とを有すると共に、連結ピン22の位置が、シートバック4が起立状態にあるときには、枢支ピン23の位置よりも車両後方高位置となり、シートバック4が前倒状態にあるときは、枢支ピン23の位置よりも車両前方位置となるよう構成されており(図6参照)、シートクッション5を、図2に示す上方位置と図6に示す下方位置との間で移動可能に支持している。
ここで、本実施の形態においては、図1〜図3に示すように、シートクッション5,5を、前記シートバック4を起立状態から前倒状態へ回動させる前倒操作に連動して上方位置から下方位置に移動させ、前倒状態から起立状態へ回動させる起立操作に連動して下方位置から上方位置に移動させる連動機構30…30が備えられている。
連動機構30は、図2、図3に示すように、一端が、シートクッション5のシートクッションフレーム5aに該シートクッション5の側部で結合され、他端がシートバック4の下側部に回動可能に連結された回動リンク31を有している。この回動リンク31とシートバック4との連結部32は、図4にもあわせて示すように、回動リンク31におけるシートバック4側の端部に設けられた孔31aと、シートバック4の下側部において前記回動軸12の上方近傍で該回動軸12に対して離間して設けられた孔33と、これらの孔31a,33にわたって挿通された回動ピン34とを有する。なお、シートバック4のブラケット4bと回動リンク31との間には、ワッシャ35が介設されている。なお、回動ピン34には、孔31a,33に挿通後、両端がかしめられて大径部が形成され、抜け防止処置が施されている。また、この大径部間の長さは、回動リンク31,ワッシャ35、ブラケット4bが、該大径部によりしめつけられないように、回動リンク31とブラケット4bとの間に隙間が生じる長さとされている。
その場合に、シートバック4側の孔33は、前記回動軸12を中心として所定角度θの範囲で延びる円弧状長孔とされている。なお、この所定角度θは本実施の形態においては略30度に設定されている。
なお、前記連結部32の回動ピン34は、図5に示すように構成してもよい。すなわち、この例における連結部32′の回動ピン34′は、一端に予め大径部が形成されたピン34a′と、その他端にねじ込まれるボルト34b′とで構成されており、これによれば、かしめ作業等が不要となる。
次に、第1の実施の形態の作用について説明する。
まず、シートバック4を起立状態から前倒状態へ前倒させる場合について説明する。まず、シートバック4を、図3に実線で示す起立状態から回動させて前倒させていくと、長孔33が同時に移動することとなるが、このとき、起立状態から仮想線で示す所定角度θ前倒した状態となるまでの間は、回動ピン34は長孔32の後端縁33aに当接しない。したがって、回動ピン34は、長孔33内での位置が変化するだけで、絶対位置が変化しない、つまり、回動リンク31の位置も変化することがなく、シートクッション5が移動することもない。
そして、起立状態から前倒方向に仮想線で示す所定角度θ回動させた状態になると、回動ピン34が長孔33の後端縁33aに当接し、さらに、シートバック4を前倒させると、回動ピン34が、長孔33の後端縁33aにより前方に押され、回動軸12を中心として回動しながら、前方へ移動することとなる。したがって、この回動ピン34によって一端が支持されている回動リンク31と、該回動リンク31に結合されているシートクッションフレーム5aと、該シートクッションフレーム5aに載置固定されているシートクッション5とが一体となって前方へ押し出される。また、これにより、図2に示すシートクッション支持機構20の連動リンク24が枢支ピン23を中心として前下方向へ回動し始めると共に、シートクッション5の前端部が連結ピン22を中心として、前下方向へ回動をはじめることとなる。
そして、さらにシートバック4が前倒方向へ回動されると、図6に示すように、連動機構30の回動ピン33がさらに前方へ移動すると共に、回動リンク31及びシートクッションフレーム5aが前方へ押し出されて、連動リンク24が枢支ピン23を中心として前下方向へ回動し、この結果、連結ピン22部分においてシートクッションフレーム5aと連動リンク24とが折れ曲り、シートクッション5が、車室フロア1aに沿って、前部が、後部に比較して大きく沈み込むこととなる。したがって、前部の厚みが後部に比較して大きいシートクッション5の上面が、平坦面となり、シートクッション5の上面に重ねて倒置されたシートバック4の背面も平坦面となり、この結果、シートクッション5の前部の厚みが、後部に比較して大きい場合であっても、シートクッション5上に倒置されたシートバック4の背面を後方の荷室フロア1bに連なるほぼ同一高さの平坦面とすることが出来るようになって、車両内部のスペースを最大限にかつ多目的に利用することができるようになる。
次に、シートバック4を、逆に、前倒状態から起立状態へ起こす場合について説明する。すなわち、まず、シートバック4を、図6、図7に実線で示す前倒状態から起立方向へ回動させていくと、同時に、長孔33が起立方向に回動することとなるが、このとき、前倒状態から仮想線で示す所定角度θ起した状態となるまでの間は、回動ピン34は長孔33の前端縁33bに当接しない。したがって、この間は、回動ピン34は、長孔33内での位置が変化するだけで、絶対位置が変化することがないので、回動リンク31の位置も変化することがなく、シートクッション5が連動して引き上げられることがない。つまり、図8に示すように、シートバック4が前倒状態から起立方向へ所定角度θ起こされるまでの間は、シートクッション5の重量が加わらず、起立操作に要する力が軽減されることとなる。
そして、シートバック4が所定角度θ起こされると、図7に示すように、回動ピン34が前記円弧状長孔33の前端縁33bに当接し、以後、シートバック4が起こされるに連れて、回動リンク31、シートクッションフレーム5a、連動リンク24が前倒時とは逆の動きを生じ、シートクッション5が上方位置に連動して移動させられることとなる。
その場合に、シートバック4が所定角度θ引き起こされると、その後の起立操作中、シートバック4とシートクッション5とが連動移動するようになり、その両方の重量が加わることとなるが、この時点では、図8に示すように、起立操作に要する力は前倒状態のときよりも減少している。なお、これは、前述したように、シートバック4の起立操作に要する力は、シートクッション5に連結されたシートバック4が下端部の回動軸12を中心として重力により前倒方向に回動しようとするのに抗して、該シートバック4を起立方向に回動させるのに要する力であるが、重力によるシートバック4の回動力は、該シートバック4が下端部で支持されているので引き起こされるにつれて小さくなることによる。
したがって、シートバック4を前倒状態から起立状態まで起す全期間を通して、起立操作に要する力が、孔33が長孔とされていない場合において起立操作に要する最も大きな力(前倒状態のとき)よりも大きく軽減されることとなる。
加えて、連動機構30の連結部32の孔33を円弧状長孔とするだけで、容易に、前述の作用効果が得られることとなる。
なお、本第1の実施の形態ではシートバック4に円弧状長孔33を設け、回動リンク31に回動ピン34を設けたが、この逆に、シートバック4に回動ピンを設け、回動リンク31に円弧状長孔を設けてもよい。
なお、第1の実施の形態においては、シートバック4,4の各回動軸12上には、該シートバック4,4を前倒方向に付勢する図示しないつるまきばねが設けられていると共に、図1に示すように、車体側壁内面1dから突出して設けられたストライカ40に係合することにより、前記つるまきばねの付勢力に抗してシートバック4,4を起立状態に保持するためのロック部50,50が各シートバック4,4の外側部に設けられている。また、荷室3における後部開閉体近傍の車体側壁内面1dには、このロック部50とストライカ40との係合を解除するための操作部60が設けられている。なお、前記ストライカ40は、車幅方向に進退可能に支持されていると共に、図示しないバネにより車内側に突出するように付勢されている。次に、これらの構成について説明する。
まず、操作部60とロック部50とを連結するレリーズケーブル70について説明すると、該レリーズケーブル70は、図9、図10に示すように、可撓性部材からなるアウタチューブ71と、該アウタチューブ71内に挿通されたインナケーブル72とからなり、その一端はロック部50へ導かれ、他端は、適宜の曲率半径を維持するため、図1に示すように、一旦シートバック4にそって下降して車室フロア1a面で車両前方へ導かれた後、操作部60へ導かれている。
ロック部50は、図9に示すように、前記レリーズケーブル70の一端を固定するためのブラケット51と、レリーズケーブル70のインナケーブル71が連結されると共に支軸52を中心として揺動可能とされたレバー53と、操作ピン54が立設されていると共に、支軸55を中心として回動可能とされ、かつスプリング(不図示)によってア方向に付勢されたカム56と、ストライカ40を係止するための切欠57aが設けられているとともに、支軸58を中心として回動可能とされ、かつねじりスプリング(不図示)によってイ方向へ付勢されたカム57とを有しており、操作部60が操作されることによりレリーズケーブル70を介してレバー53が矢印ウ方向へ揺動されると、操作ピン54が長孔53aに沿って移動することにより、カム56が支軸55を中心としてスプリングの付勢力(不図示)に抗してア方向に回転し、これにより、カム57に設けられた係止凸部57aとカム56に設けられた係止凹部56aとの当接係止状態が解除されてカム57が回転可能となり、該カム57が、ねじりスプリング(不図示)の付勢力によって支軸58を中心として矢印イ方向へ回転し、切欠57aに挿入係止されていたストライカ40が開放されるようになっている。つまり、ロック部50とストライカ40との係合が解除され、シートバック4が自由に前倒可能な状態となる。
一方、この前倒可能な状態において、ロック部50のカム57をストライカ40に対して押しつけると、カム57が反イ方向へ回転すると共に、カム57の係止凸部57bによってカム56が反ア方向へ押圧回転される。そして、この結果、係止凸部57bがカム56の係止凹部56aに当接係止されるとともに、ストライカ40がカム57の切欠57aに挿入係止され、シートバック4が起立状態で固定保持されることとなる。
操作部60は、図10(操作部60を分解した状態を示す)に示すように、車両前方(図上右側)より導かれるレリーズケーブル70のインナケーブル72端部が連結されると共に操作者によって操作されることにより支点61aを中心として回動可能なレリーズノブ61と、これらを隠蔽するとともにレリーズケーブル70のアウタチューブ71の端部を固定保持するためのケーブル保持部62aを有する操作部カバー62とを有する。
次いで、この操作部60の組立てについて説明すると、まず、レリーズノブ61の支点61aが設けられた支柱部61bを、操作部カバー62に設けられた貫通穴62bに貫通させた後、支柱部61bの先端に設けられた係止穴61cにレリーズケーブル70のインナケーブル72端部に設けられたピン73を係止させるとともに、アウタチューブ71の端部を操作部カバー62に設けられたケーブル保持部62aに係止させる。そして、支点61aに操作部カバー62に設けられた突起62cを嵌合させ、レリーズノブ61が支点61aのまわりに回動自在となるようにしたのち、車体に組付ける。
このような構成によれば、操作者によりレリーズノブ61がカ方向へ支点61aを中心として回動されると、ケーブル70と係止孔61cとの連結部がキ方向へ支点61aを中心として回動される。これにより、レリーズケーブル70のインナケーブル72端部がク方向へ牽引される。
なお、操作部60は、図11に示すように構成してもよい。すなわち、この他の例においては、操作部80は、車両前方より導かれるレリーズケーブル70のインナケーブル72端部が連結される連結ブラケット83と、操作者により操作され、連結ブラケット83を押圧することで該ブラケット83を回動させるレリーズノブ81と、これらの部品を隠蔽するとともにレリーズケーブル70のアウタチューブ71の端部を固定保持するためのケーブル保持部82aを有する操作部カバー82とを有している。
また、この他の例に係る操作部80の組立てについて説明すると、まず、レリーズノブ81の支点81aが設けられた支柱部81bを、操作部カバー82に設けられた貫通穴82bに貫通させるとともに、連結ブラケット83の係止長穴83aとレリーズノブ81の支柱部81bの先端部に設けられた突起81cとを嵌合させる。そして、レリーズノブ81の支点81aに、操作部カバー82に設けられた突起82cを嵌合させて、レリーズノブ81が支点81aを中心として回動自在となるようにすると共に、連結ブラケット83の支点83bに、操作部カバー82に設けられた突起82dを嵌合させ、連結ブラケット83が支点83bを中心として回動自在となるようにしたのち、車体に組付ける。
この他の例に係る操作部80によれば、操作者によりレリーズノブ81が矢印サ方向へ支点81aを中心として回動されると、レリーズノブ81の突起81cが矢印シ方向へ回動し、該突起81cに係止長穴83aによって連結されている連結ブラケット83が矢印ス方向へ支点83bを中心として回動される。これにより、レリーズケーブル70のインナケーブル72端部が、矢印セ方向へ牽引される。
以上の構成によれば、車両の荷室3の後端部に開口する後部開閉体近傍の両側壁内面1dに配設された操作部60(80)のレリーズノブ61(81)を操作するだけで、シートバック4を前倒させ、該シートバック4の設置スペース及び荷室フロア1dからなるほぼ平坦な広い荷物設置空間を作り出すことが出来るようになる。また、前倒操作の操作性も向上することとなる。
その場合に、このようにシートバック4がつるまきばねにより前倒方向に付勢されていると、シートバック4の起立操作に際して、つるまきばねの付勢力に対抗するために起立操作に要する力が大きくなるが、本実施の形態によれば、シートバック4の起立操作の初期においてシートクッション5の連動移動が阻止されるので、前述した効果が最大限に発揮されることとなる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態との相違点はほぼ連動機構のみであるため、該連動機構を中心に説明する。なお、説明においてその他のものへの言及が必要な場合、第1の実施の形態と同一の符号を用いる(後述する第3、第4の実施の形態についても同様)。
すなわち、第2の実施の形態に係る連動機構110は、一端がシートクッション5のシートクッションフレーム5aに該シートクッション5の側部で結合され、他端がシートバック4の側部に連結機構111を介して連結された回動リンク112を有している。連結機構111は、図13にもあわせて示すように、一端が回動リンク112の前記他端に固定され、他端にストッパナット113,113が設けられた円弧状に湾曲する軸状部材114と、シートバック4の側部の回動軸12の上方近傍で該回動軸12に対して離間して設けられた孔115と、該孔115に一端が回動可能に挿通されると共にボルト116が螺合され、かつ前記軸状部材114が挿通される貫通孔117aが備えられた回動ピン117とを有している。
その場合に、前記軸状部材114は、図14に示すように、シートバック4が前倒状態のときに、前記回動軸12を中心として所定角度θの範囲で延びる円弧状とされている。
次に、第2の実施の形態の作用について説明する。まず、前倒操作時について図12を用いて説明すると、シートバック4を起立状態から前倒方向に回動させると、回動ピン117が回動軸12を中心として前方に回動すると共に、これに伴って、軸状部材114、回動リンク112、シートクッションフレーム5a、連動リンク24の位置も変位し、これにより、該シートクッション5が下方位置に連動して移動することとなる。なお、回動リンク112、シートクッションフレーム5a、連動リンク24等の動きの詳細は、第1の実施の形態と類似するものであり、その説明は省略する(後述する第3、第4の実施の形態についても同様)。
他方、起立操作時について図14を用いて説明すると、シートバック4を前倒状態から起立方向に回動させると、前記回動ピン117の移動軌跡は、前記回動軸12を中心とする円弧状となるが、前記軸状部材114は、前記回動軸12を中心として所定角度の範囲で延びる円弧状とされているので、前記回動ピン117は、前記ストッパナット113に当接するまで軸状部材114に沿って移動することとなる。したがって、回動ピン117がストッパナット113に当接するまでの間は、シートクッション5の重量が加わらず、起立操作に要する力が軽減されることとなる。
そして、シートバック4が所定角度θまで起こされて回動ピン117がストッパナット113に当接すると、以後、シートバック4が起こされるに連れて、回動ピン117によってストッパナット113が後方に押されてその位置が変位し、これに伴って、軸状部材114、回動リンク112、シートクッションフレーム5a、シートクッション連動リンク24の位置も変位し、これにより、該シートクッション5が上方位置に連動して移動することとなる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
すなわち、図15に示すように、第3の実施の形態に係る連動機構120は、一端がシートクッション5のシートクッションフレーム5aに該シートクッション5の側部で結合され、他端がシートバック4の側部に連結機構121を介して連結された回動リンク122を有している。連結機構121は、該リンク122の他端側に一端が連結ピン123により回動可能に連結されると共に他端が回動軸12の上方位置において回動ピン124によりシートバック4の側部に回動可能に連結された連結リンク125と、シートバック4の側部に固定され、前記連結リンク125の回動範囲を制限する一対のストッパ126,126とを有している。
その場合に、前記連結リンク125に設けられて前記回動ピン124が挿通される孔125aは、図16に示すように、シートバック4の前倒状態において、回動軸12を中心とする円の略半径方向に延びる長孔とされていると共に、ストッパ126,126は、連結リンク125の回動範囲が前記回動軸12を中心として所定角度θの範囲となるように配置されている。
次に、第3の実施の形態の作用について説明する。まず、前倒操作時について図15を用いて説明すると、シートバック4を起立状態から前倒方向に回動させると、ストッパ126及び回動ピン124が回動軸12を中心として前方に回動すると共に、これに伴って、連結リンク125、回動リンク122、シートクッションフレーム5a、シートクッション連動リンク24の位置も変位し、これにより、シートクッション5が下方位置に連動して移動することとなる。
他方、起立操作時について図16を用いて説明すると、シートバック4を前倒状態から起立方向に回動させても、所定角度θ起こされるまでの間は、回動ピン124が前記長孔125a内を移動しながら連結リンク125が連結ピン123との連結部を中心として回動するだけで、回動リンク122は移動せず、この結果、シートクッション5が連動して引き上げられるのが阻止されることとなる。したがって、シートバック4が前倒状態から所定角度θ起こされるまでの間は、シートクッション5の重量が加わらず、起立操作に要する力が軽減されることとなる。
そして、シートバック4が所定角度θまで起こされて連結リンク125が前記ストッパ126に当接すると、以後、シートバック4が起こされるに連れて、連結リンク125がストッパ126により押されることにより連結ピン123が回動軸12を中心として起立方向へ回動してその位置が変化すると共に、これに伴って、回動リンク121、シートクッションフレーム5a、連動リンク24の位置も変位し、これにより、シートクッション5が上方位置に連動して移動させられることとなる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
すなわち、第4の実施の形態においては、図17に示すように、連動機構130は、一端が、シートクッション5のシートクッションフレーム5aに略上下方向にスライド可能に連結され、他端がシートバック4の側部に回動ピン131により回動可能に連結された回動リンク132を有している。
その場合に、シートクッション5のシートクッションフレーム5aと回動リンク132との連結部133は、シートクッションフレーム5aの後端部に設けられた円弧状長孔134と、回動リンク132の前端部に立設され、円弧状長孔134に挿通される2つの連結ピン135,135とにより構成されている。
その場合に、この長孔134は、図18に示すように、シートバック4を前倒状態から起立状態へ回動させたときの回動ピン131の軌跡と平行に延びる円弧状とされていると共に、上端位置が、シートバック4が前倒状態から所定角度θ起こされたときに、上側の連結ピン135が長孔134の上端縁134aに当接する位置に設定されている。
次に、第4の実施の形態の作用について説明する。まず、前倒操作時について図17を用いて説明すると、シートバック4を起立状態から前倒方向に回動させると、回動ピン131が回動軸12を中心として前方に回動すると共に、これに伴って、回動リンク131、シートクッションフレーム5a、連動リンク24の位置も変位し、これにより、該シートクッション5が下方位置に連動して移動することとなる。
他方、起立操作時について図18を用いて説明すると、シートバック4を前倒状態から起立方向に回動させた場合、該シートバック4が所定角度θ起こされるまでの間は、回動リンク132が移動しても連結ピン135,135は前記円弧状長孔134内を移動するので、シートクッション5が連動して引き上げられるのが阻止されることとなる。したがって、所定角度θ起こされるまでの間は、シートクッション5の重量が加わらず、起立操作に要する力が軽減されることとなる。
そして、シートバック4が所定角度θまで起こされて上側の連結ピン135が前記円弧状長孔134の上端縁134aに当接すると、以後、シートバック4が引き起こされるに連れて、回動リンク132が後方に移動すると共に、これに伴って、シートクッションフレーム5a、連動リンク24の位置も変化し、これにより、シートクッション5が上方位置に連動して移動させられることとなる。
なお、上記第1〜第4の実施の形態においては、起立操作に際して、シートバック4を直接起す場合について説明したが、例えば、図19に示す第5の実施の形態のように、シートバック4の背面側でシートバックフレーム4aの上端部に紐等の引き具141を設け、該引き具141を後方に略水平に引くことにより起すようにしてもよく、これによれば、車両の狭い空間内で、前方からシートバックを押し上げたり、後方からシートバック4を引き上げたりすることなく、例えば車外から引き具141を引くだけで容易にシートバック4を起立させることができるようになる。
また、図20に示す第6の実施の形態のように、シートバックフレーム4のフレーム4aの上端部に、棒状部材151を、車幅方向に延びる回動軸152を中心として回動可能なように設けると共に、該棒状部材151の先端に紐等の引き具153を取り付け、かつ、該棒状部材151が仮想線で示すようにほぼ鉛直に引き起こされた状態でそれ以上の回動を規制するストッパ154を設けてもよい。
これによれば、図21に示すように、棒状部材がない場合よりも、含み角がαからβに大きくなって力点が上方に移動し、後方への引き力がシートバック4を起す際の回動力として有効に変換されるようになる。したがって、シートバック4の起立操作時における引き力が小さくなり、一層容易にシートバック4を起立させることができるようになる。なお、棒状部材に代えて、例えば板状の部材でもよい。
なお、前述した各実施の形態においては、シートバック支持機構、シートクッション支持機構、連結機構の各部材の寸法によっては、シートバック4の前倒時に、シートクッション5が、自重により、図面に示す下方位置よりもさらに下方まで移動することが考えられるが、このような場合は、シートクッション5の最下方位置を規制する規制手段を設ければよい。この規制手段としては、例えば、車室フロア1aに載置され、シートクッション5の下面や、回動リンクの下端部を支えるストッパ等が考えられる。
最後に、特許請求の範囲の構成要素と、前記各実施の形態の構成要素との対応について説明しておく。すなわち、まず、請求項1におけるシートバックは、第1〜第4の実施の形態のシートバック4に対応し、シートクッションはシートクッション5に対応し、連動機構は、各実施の形態の連動機構30,110,120,130に対応し、連動阻止手段は、連結部32に対応し、第2の実施の形態においては連結機構111に対応し、第3の実施の形態においては連結機構121に対応し、第4の実施の形態においては連結部133に対応する。また、請求項2は、第1の実施の形態に対応するもので、リンク部材は回動リンク31に対応し、連結部は連結部32に対応し、ピン部材は回動ピン34に対応し、孔は孔32に対応する。また、請求項3,4の引き具は第5、第6の実施の形態の引き具141,153に対応し、請求項4の棒状部材は棒状部材151に対応し、ストッパはストッパ154に対応する。