JP2006326090A - 蒸煮装置および蒸煮方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 簡易な構成で、蒸煮中の食材の撹拌を可能とし、これにより食味の優れた煮物を調理することができる蒸煮装置の提供。
【解決手段】 液物食材2が収容される処理槽3、処理槽3内へ蒸気供給する給蒸手段4、蒸気供給により加圧された処理槽3内から大気圧との差圧を利用して蒸気を導出する排蒸手段5、処理槽3内を真空引きして減圧する減圧手段6、処理槽3内の圧力を計測する圧力センサ8、処理槽3内の食材温度を計測する温度センサ9を備える。圧力センサ8や温度センサ9の出力に基づき各手段を制御して、給蒸手段4による処理槽3内への蒸気供給を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、処理槽3内の一時的な減圧を行う。これにより、煮汁を沸騰させ、液物食材2を撹拌できる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、蒸気を用いて食材を加熱調理する蒸煮装置および蒸煮方法に関するものである。
下記特許文献1に開示されるように、食材が入れられたメッシュ状のバスケットを蒸煮釜内に収容し、この蒸煮釜内へ蒸気を供給することで、食材を蒸し煮(蒸煮)して調理できる蒸煮装置が知られている。
特開平9−266856号公報
従来の蒸煮装置では、密閉され加圧または減圧された蒸煮釜内へ、継続的に蒸気を供給することで食材の加熱がなされていた。従って、このような加熱工程中、食材の撹拌を行うことはできなかった。食材の撹拌をなさずに加熱調理することは、食味の点から好ましくなかった。この発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、蒸煮中の食材の撹拌を可能とし、これにより食味の優れた煮物などを調理できる蒸煮装置および蒸煮方法を提供することにある。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、食材が収容される処理槽と、この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記処理槽内への蒸気供給中、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内を一時的に減圧する手段とを備えることを特徴とする蒸煮装置である。
請求項1に記載の発明によれば、処理槽内へ蒸気を供給して食材を加熱中、処理槽内の圧力を一時的に下げることによって、食材の液体分を沸騰させ、それによって食材の撹拌を図ることができる。従って、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。しかも、機械を用いて撹拌する訳ではないので、特別な装置が不要である。
請求項2に記載の発明は、液物食材が収容される処理槽と、この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記処理槽内から空気または蒸気を導出する排蒸手段と、前記給蒸手段および前記排蒸手段の一方または双方を制御して、前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給とそれによる前記処理槽内の加圧を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記排蒸手段による前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段とを備えることを特徴とする蒸煮装置である。
請求項2に記載の発明によれば、処理槽内へ蒸気を供給して食材を加圧蒸煮中、大気圧との差圧を利用して処理槽内から蒸気を導出することで、処理槽内の圧力を一時的に下げることができる。この際、食材の温度相当の飽和蒸気圧力以下にまで減圧することによって、食材の液体分を沸騰させ、それによって液物食材の撹拌を図ることができる。従って、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。しかも、機械を用いて撹拌する訳ではないので、特別な装置が不要である。
請求項3に記載の発明は、液物食材が収容される処理槽と、この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、前記処理槽内を減圧する減圧手段と、前記給蒸手段および前記減圧手段の一方または双方を制御して、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧下において前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記減圧手段による前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段とを備えることを特徴とする蒸煮装置である。
請求項3に記載の発明によれば、処理槽内を減圧しつつ処理槽内へ蒸気供給して食材を減圧蒸煮中、処理槽内の蒸気を吸引および/または凝縮させることで、処理槽内の圧力を一時的に下げることができる。この際、食材の温度相当の飽和蒸気圧力以下にまで減圧することによって、食材の液体分を沸騰させ、それによって液物食材の撹拌を図ることができる。従って、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。しかも、機械を用いて撹拌する訳ではないので、特別な装置が不要である。
請求項4に記載の発明は、液物食材が収容される処理槽と、この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、この給蒸手段による蒸気供給により加圧された前記処理槽内から、大気圧との差圧を利用して蒸気を導出する排蒸手段と、前記処理槽内の蒸気を吸引および/または凝縮させて前記処理槽内を減圧する減圧手段と、前記処理槽内の圧力を計測する圧力センサと、前記処理槽内の食材温度を計測する温度センサと、前記圧力センサまたは前記温度センサの出力に基づき前記各手段を制御して、前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段とを備えることを特徴とする蒸煮装置である。
請求項4に記載の発明によれば、給蒸手段により処理槽内へ蒸気を供給して食材を加圧蒸煮、または減圧手段を併用して処理槽内を減圧しつつ、給蒸手段により処理槽内へ蒸気供給して食材を減圧蒸煮することができる。そして、加圧蒸煮中には排蒸手段および/または減圧手段を用いて、また減圧蒸煮中には減圧手段を用いて、処理槽内から蒸気を導出することで、処理槽内の圧力を一時的に下げることができる。この際、食材の温度相当の飽和蒸気圧力以下にまで減圧することによって、食材の液体分を沸騰させ、それによって液物食材の撹拌を図ることができる。ここで、処理槽内の圧力は、圧力センサに基づき把握することができ、液物食材の品温は、温度センサに基づき把握することができ、制御は容易で確実である。そして、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。しかも、機械を用いて撹拌する訳ではないので、特別な装置が不要である。
請求項5に記載の発明は、液物食材を処理槽内に収容し、この処理槽内へ蒸気供給して前記液物食材を加熱中、前記液物食材が沸騰する圧力まで、前記処理槽内を短時間だけ減圧することを特徴とする蒸煮方法である。
請求項5に記載の発明によれば、処理槽内へ蒸気を供給して液物食材を加熱中、処理槽内の圧力を短時間だけ下げることによって、その間に液物食材を沸騰させ、それによって液物食材の撹拌を図ることができる。従って、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。
さらに、請求項6に記載の発明は、液物食材を処理槽内に収容し、この処理槽内へ蒸気供給して前記液物食材を加熱中、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内を一時的に減圧することを特徴とする蒸煮方法である。
請求項6に記載の発明によれば、処理槽内へ蒸気を供給して液物食材を加熱中、処理槽内の圧力を一時的に下げることによって、その間に液物食材を沸騰させ、それによって液物食材の撹拌を図ることができる。従って、煮物調理においても、煮汁の撹拌により、優れた食味に仕上げることができる。
この発明の蒸煮装置および蒸煮方法によれば、簡易な構成で、蒸煮中の食材の撹拌を可能とし、これにより食味の優れた煮物などを調理することができる。
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の蒸煮装置および蒸煮方法は、少なくとも一部に液状物を含んだ液物食材(食品を含む)の加熱調理に用いられ、特に、具材を煮汁と一緒に煮込む煮物類のように、固形分と液体分とからなる液物食材の加熱調理に好適に用いられる。
本実施形態の蒸煮装置および蒸煮方法は、処理槽内に液物食材を収容した状態で、処理槽内へ蒸気を供給して、液物食材を加熱するものである。その際、処理槽内へ供給する蒸気により、処理槽内を大気圧より高圧としつつ液物食材を加熱(加圧蒸煮)してもよいし、逆に、処理槽内の蒸気を吸引して外部へ排出したり、処理槽内の蒸気を凝縮させたりして、処理槽内を大気圧より低圧としつつ液物食材を加熱(減圧蒸煮)してもよい。
処理槽内への蒸気供給による液物食材の加熱工程中には、短時間だけ処理槽内の圧力を一時的に下げることで、液物食材内の液体分を沸騰させ、それにより液物食材の撹拌がなされる。この減圧は、一時的に処理槽内への蒸気供給を中止した状態で、処理槽外へ蒸気を吸引排出し、あるいはそれに代えてまたはそれに加えて、処理槽内の蒸気を凝縮させて行われる。また、加圧蒸煮の場合には、大気圧との差圧を利用して処理槽外へ蒸気を導出することによっても行うことができる。
液物食材を撹拌させるための処理槽内の一時的な減圧は、液物食材の液体分が沸騰する圧力までなされる。具体的には、液物食材の温度相当の飽和蒸気圧力以下にまで、処理槽内を減圧することで、液物食材を沸騰させることができる。つまり、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、処理槽内を減圧すればよい。
ところで、従来は通常、煮物などの液物食材は、大気圧下において加熱調理される。大気圧下において開放状態の鍋で液物食材を加熱すると、やがて沸騰を生じるが、これは、100℃よりも高温の熱源によって加熱されるために、食材の一部または全部が飽和蒸気温度(100℃)またはそれを超える温度になるからである。ところが、蒸煮装置のように飽和蒸気環境下に食材をおいて加熱する場合、蒸気温度に比べて低温の食材に対し、周りの蒸気が凝縮することによって伝熱が行われる。そのため、通常、蒸煮装置内の食材は、常に飽和蒸気温度以下となり、沸騰がなされることはない。ところが、本発明の蒸煮装置においては、蒸煮中に、敢えて一時的に処理槽内を減圧することで、液物食材に沸騰を生じさせ、液物食材の撹拌が図られる。
液物食材を撹拌させるための処理槽内の一時的な減圧は、どの程度の圧力または温度まで、どの程度の時間だけ行うかは適宜に設定される。この際、液物食材が沸騰を起こす程度の圧力または温度まで減圧することは必須である。また、減圧後の飽和蒸気温度と食材温度との温度差が大きい場合には、激しく沸騰して吹きこぼれが生じるおそれがあるので、前記温度差があまりに大きくならないよう設定される。そして、減圧下における保持時間としては、減圧後の飽和蒸気温度まで食材温度が下がって沸騰しなくなる程の時間を保持する必要はない。
液物食材を撹拌させるための処理槽内の一時的な減圧は、処理槽内への蒸気供給による液物食材の加熱中、一または複数回なされる。このような蒸煮後には、処理槽内は大気圧まで復圧される。但し、処理槽内を減圧して液物食材を真空冷却してから、処理槽内を大気圧まで復圧するようにしてもよい。
本実施形態の蒸煮装置は、処理槽に、給蒸手段、排蒸手段、減圧手段、復圧手段、および制御手段などが備えられて構成される。
処理槽は、液物食材を収容して必要により密閉可能な容器である。処理槽には、加熱調理したい液物食材を入れた容器が収容される。この容器は、典型的には上方にのみ開口した容器とされ、その上部開口には吹きこぼれを防止するために、蒸気は通すが水は通さない性質を有した透湿防水性素材のシートで蓋をしてもよい。このような容器の処理槽内への収容は、処理槽内に設けた棚などに直接に置いてもよいし、処理槽に出し入れ可能なワゴンを介して行ってもよい。いずれの場合も、容器が載せられる棚はメッシュ状にされるなどして、蒸気が容器の全周囲に行き渡るようにするのがよい。
給蒸手段は、処理槽内へボイラからの蒸気を供給する手段である。この際、衛生面を考慮して、一般的なボイラ(一次ボイラ)からの蒸気を利用して、別のボイラ(二次ボイラ)にて純水または軟水を蒸気変換し、この二次ボイラからの清浄蒸気を処理槽内へ供給するのがよい。
排蒸手段は、処理槽の空気や蒸気を、処理槽内から外部へ導出する手段である。典型的には、処理槽の内外を連通する配管からなる排蒸ラインと、この排蒸ラインの中途に設けられて前記連通の有無やその度合いを調整する排蒸弁とからなる。従って、特に給蒸手段による蒸気供給により処理槽内が加圧された状態では、排蒸手段による処理槽外への蒸気の排出は、前記排蒸弁を開けるだけで、処理槽内圧力と大気圧との差圧を利用して自然に行うことができる。
減圧手段は、処理槽内の空気や蒸気を外部へ吸引排気し、あるいは処理槽内の蒸気を凝縮させることで、処理槽内を減圧する手段である。この減圧手段は、典型的には、処理槽内を減圧する真空ポンプおよび/またはエゼクタを備えて構成される。また、真空ポンプを用いる場合には、真空ポンプの手前に熱交換器を備えておくことで、蒸気を凝縮させて減圧能力を高めることができる。この減圧手段は、その減圧能力が調整可能なものが好ましい。
復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内を復圧する手段である。具体的には、減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。
制御手段は、前記給蒸手段、前記排蒸手段、前記減圧手段、および前記復圧手段を制御して、処理槽内の液物食材を加熱し、その後、所望により真空冷却する手段である。液物食材の調理のためには、典型的には予熱および空気排除工程の後、蒸煮工程(加熱工程)がなされる。これら制御は、処理槽内の圧力を計測する圧力センサを利用してなされる。但し、処理槽内の圧力は、温度と所定の関係を有するので、圧力センサに代えて温度センサを用いることも可能である。また、本実施形態では、処理槽内に収容した液物食材の温度を計測する温度センサも利用して制御がなされる。さらに、前記各手段を作動させる時間を調整して、処理槽内を所望の圧力または温度に調整することもできる。
予熱および空気排除工程は、給蒸手段により処理槽内へ蒸気供給して、処理槽内の空気を処理槽外へ排蒸手段を介して排出すると共に、液物食材を予熱する工程である。また、減圧手段による減圧後に給蒸手段による蒸気供給や、給蒸手段による蒸気供給後に排蒸手段による空気排除を、それぞれ所望回数行ってもよい。
蒸煮工程は、空気排除された処理槽内へ給蒸手段により蒸気供給して、食材を加熱する工程である。この際、前述したように、処理槽内へ供給する蒸気により、処理槽内を大気圧より高圧としつつ液物食材を加圧蒸煮してもよいし、逆に、減圧手段により処理槽内を大気圧より低圧としつつ液物食材を減圧蒸煮してもよい。そして、本発明においては、この蒸煮工程中に、液物食材の撹拌処理が一または複数回行われる。
この撹拌処理は、一時的に処理槽内への蒸気供給を中止した状態で、処理槽内を短時間だけ減圧して、液物食材内の液体分を沸騰させることで、液物食材の撹拌を行うものである。減圧蒸煮の場合には、減圧手段により処理槽内の蒸気を外部へ真空引きして減圧することにより短時間の減圧を行うことができる。また、加圧蒸煮の場合には、排蒸手段により処理槽内の圧力を開放することにより短時間の減圧を行うことができ、さらに所望により、減圧手段による減圧を併用してもよい。撹拌処理度には、再び処理槽内へ蒸気供給を行い、液物食材の蒸煮がなされる。
このような撹拌処理を伴う蒸煮工程の終了後には、処理槽内を大気圧まで復圧して、一連の処理を完了する。但し、所望により、減圧手段により処理槽内を減圧保持して、液物食材の冷却を図る真空冷却工程を行ってもよい。
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の蒸煮装置の一実施例を示す概略構造図である。この図に示すように、本実施例の蒸煮装置は、上方にのみ開口した容器1に入れられた液物食材2を収容する処理槽3と、処理槽3内へ蒸気を供給する給蒸手段4と、処理槽3内から空気や蒸気を外部へ導出する排蒸手段5と、処理槽3内を真空引きして減圧する減圧手段6と、減圧下の処理槽3内へ外気を導入して復圧する復圧手段7と、処理槽3内の圧力を計測する圧力センサ8と、処理槽3内の食材温度を計測する温度センサ9とを主要部として備える。温度センサ9は、食材温度を非接触で検出するものでもよいが、図示例では液物食材2に差し込まれて食材温度を検出するものである。
本実施例の処理槽3は、中空ボックス状の処理槽本体10にドア11が開閉可能に設けられており、耐圧性を有する構造とされている。ドアは11、開き戸、引き戸、または上下方向に可動するシャッター式のいずれでもよい。ところで、前記容器1に入れられた液物食材2の処理槽3への出し入れは、本実施例ではワゴン12を介してなされる。ワゴン12は、底部にキャスター13,13…を有する。
給蒸手段4は、処理槽3内へ蒸気を供給(給蒸)する手段である。本実施例の給蒸手段4は、一次ボイラ(不図示)と二次ボイラ(リボイラ)14とを備え、一次ボイラからの蒸気を熱源として、二次ボイラ14にて軟水を蒸気に変え、このようにして生成された清浄蒸気を処理槽3内へ供給する。
具体的には、二次ボイラ14は、ステンレス製の熱交換器15であり、給水管16からの軟水を加熱して蒸気に変換する。軟水を加熱するために、二次ボイラ14には、給蒸管17を介して一次ボイラからの蒸気が供給される。このようにして一次ボイラから供給された蒸気は、二次ボイラ14のステンレス配管内へ供給される軟水を加熱する。これにより、二次ボイラ14にて、軟水により清浄蒸気が生成される。
二次ボイラ14にて生成された清浄蒸気は、蒸気供給用配管としての給蒸ライン18を介して、処理槽3内へ供給される。給蒸ライン18の中途には、処理槽給蒸弁19が設けられている。この処理槽給蒸弁19は、処理槽3内への給蒸の有無と、給蒸する場合の蒸気量を調整可能な構成であり、典型的には比例制御弁から構成される。この処理槽給蒸弁19を調整することで、処理槽3内の圧力、ひいては温度を調整することができる。但し、処理槽内3の圧力調整は、処理槽給蒸弁19だけでなく減圧手段6を制御することによっても、行うことができる。
排蒸手段5は、処理槽3内から空気または蒸気を外部へ導出する手段である。具体的には、蒸気排出用配管としての排蒸ライン20からなり、この排蒸ライン20を介して処理槽3内の空気や蒸気が処理槽3外へ導出される。本実施例では、処理槽3の上部から、第一排蒸弁21と逆止弁22を介して蒸気などが排出可能とされる一方、処理槽3の下部からも第二排蒸弁23を介して排出可能とされている。これら各排蒸弁21,23は、比例制御弁などの開度調整可能な弁から構成するのがよく、この開度を調整することで、処理槽3の内外の連通度合いが調整される。
減圧手段6は、本実施例では、蒸気エゼクタ24と熱交換器25と真空ポンプ26とを組み合わせて構成される。この場合、蒸気エゼクタ24は、処理槽3に吸入口27が接続されており、この蒸気エゼクタ24の出口28には、熱交換器25と逆止弁29を介して真空ポンプ26が接続される。従って、真空ポンプ26を作動させつつ、蒸気エゼクタ24の入口30から出口28へ向けて蒸気を噴射させることで、吸入口27が接続された処理槽3内の空気を吸引排出し、処理槽3内を減圧することができる。この際、真空ポンプ26の手前に熱交換器25を設けることで、蒸気を冷却および凝縮させることができ、効率的な減圧が可能とされる。
このようなことを達成するために、蒸気エゼクタ24の入口30には、エゼクタ給蒸弁31を介して、前記二次ボイラ14からの蒸気が供給可能とされる。つまり、本実施例では、二次ボイラ14からの蒸気は、蒸気エゼクタ24の入口30への給蒸と、処理槽3内への給蒸の双方に利用される。この切換えは、エゼクタ給蒸弁31や処理槽給蒸弁19の開閉にて行うことができる。但し、一次ボイラ(不図示)だけを用いて、そのボイラの蒸気をエゼクタ24や処理槽3への供給に利用可能である。また、処理槽3へは二次ボイラ14からの清浄蒸気を供給し、エゼクタ24へは一次ボイラからの蒸気を供給するようにしてもよい。
また、上述したように、蒸気エゼクタ24の出口28には、熱交換器25と逆止弁29を介して、水封式真空ポンプ26が接続される。この真空ポンプ26には、封水給水弁32を介して水が供給され、真空ポンプ26からの排水は、排水口(不図示)へ排出される。また、熱交換器25にも、熱交給水弁33を介して冷却用の水が供給され、排水口へ排水される。真空ポンプ26へ給水用の封水給水弁32は、真空ポンプ26に連動して開かれる。
ところで、減圧手段は、その減圧能力が調整可能なものが好ましい。そのためには、エゼクタ給蒸弁31の開度を調整して、蒸気エゼクタ24の能力を制御すればよい。あるいは、インバータを用いて、真空ポンプ26の回転数を制御してもよい。また、熱交給水弁33の開度を調整して、熱交換器25への給水量を調整したり、その給水温度を調整したりしてもよい。
復圧手段7は、処理槽3内の真空状態を解除可能に、処理槽3内へ外気を導入する手段である。本実施例では、処理槽3は、外気導入弁34とフィルター35とを介して、外気に連通可能とされている。従って、外気導入弁34を開くと、処理槽3内は大気圧下に開放され、フィルター35を介して処理槽3内へ外気を導入して、処理槽3内を復圧可能である。外気導入弁34の開き具合によって、処理槽3内を徐々に昇圧することもできる。
また、蒸煮装置には、給蒸手段4、排蒸手段5、減圧手段6、復圧手段7などを制御する制御手段36が備えられている。この制御手段36は、それが把握する時間の他、処理槽内圧力を検出する圧力センサ8や、食材温度を検出する温度センサ9からの検出信号などに基づいて、前記各手段4〜7を制御する制御器である。具体的には、処理槽給蒸弁19、各排蒸弁21,23、真空ポンプ26、エゼクタ給蒸弁31、封水給水弁32、熱交給水弁33、外気導入弁34、圧力センサ8および温度センサ9は、制御器36に接続されている。そして、この制御器36は、所定の手順(プログラム)に基づき、後述するように、処理槽3内の液物食材2の蒸煮を行う。
図2は、本実施例の蒸煮装置の運転中における処理槽3内の圧力変化の一例を示す図である。本実施例の蒸煮装置は、具材と煮汁とからなる煮物類などの加熱調理に好適に用いられる。具体的には、上方へ開口した金属製容器1内に、具材となる固形分と、煮汁となる液体分とを一緒に入れた後、その容器1を処理槽3内へ収容して、煮物を調理する。そのために、通常、予熱および空気排除工程の後、蒸煮工程を行う。
予熱および空気排除工程では、各排蒸弁21,23のみを開いた状態で、さらに処理槽給蒸弁19も開いて、処理槽3内へ蒸気を供給し、所定時間経過後に処理槽給蒸弁19を閉じて、処理槽3内の空気を排蒸ライン20を介して処理槽3外へ排出する。この際、予め処理槽3内を減圧手段6により減圧してから、その減圧下の処理槽3内へ給蒸手段4によって、蒸気を供給するようにしてもよい。
本実施例の蒸煮工程は、給蒸手段4による処理槽3内への蒸気供給と、それによる処理槽3内の加圧を伴うものである。言い換えれば、処理槽3内を大気圧よりも高圧にするように、処理槽3内へ蒸気を供給して、液物食材2を加圧蒸煮する。具体的には、エゼクタ給蒸弁31、外気導入弁34、および各排蒸弁21,23を閉じた状態で、処理槽給蒸弁19を開いて、処理槽3内へ蒸気を供給する。この際、上述したように、処理槽3内へ供給される蒸気は、二次ボイラ14にて軟水から生成された清浄蒸気である。従って、安全で安心の加熱調理を実現することができる。また、容器1の全周囲に清浄蒸気を行き渡らせることで、短時間で均一な加熱調理がなされる。
蒸煮工程では、処理槽給蒸弁19の開度を調整して、処理槽3内への蒸気供給量を調整することにより、処理槽3内の圧力ひいては温度が調整される。具体的には、制御器36は、圧力センサ8の出力に基づき、処理槽給蒸弁19の開度を調整する。このようにして処理槽3内の圧力を調整することで、処理槽3内の飽和蒸気温度が調整される。本実施例では図2に示すように、所望圧力P1まで処理槽3内を昇圧した後、その所望圧力P1にて所望時間だけ保持される。
本実施例では、この所望圧力P1を大気圧より高くすることで、液物食材2を加圧蒸煮しているが、大気圧より低く設定することで、液物食材2を減圧蒸煮することもできる。この場合、減圧手段6を作動させて処理槽3内を減圧しつつ、給蒸手段4により処理槽3内へ蒸気供給すればよい。
蒸煮工程中には、図2に示すように処理槽3内を一時的に設定圧力P2まで減圧して、液物食材2を沸騰させることで液物食材2の撹拌を図る撹拌処理が少なくとも一回は行われる。この撹拌処理中には、処理槽給蒸弁19が一時的に閉められ、処理槽3内への蒸気供給が一時的に中止される。そして、その状態で処理槽3内を設定圧力まで短時間だけ減圧される。加圧蒸煮中の減圧は、各排蒸弁21,23を開いて、処理槽3内の圧力を開放すればよい。また、減圧蒸煮中には、減圧手段6を作動させて処理槽3内を減圧すればよい。具体的には、エゼクタ給蒸弁31や封水給水弁32および熱交給水弁33を開いた状態で、真空ポンプ26を作動させればよい。
撹拌処理のための処理槽3内の減圧は、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力までなされる。そのために、本実施例では、まず温度センサ9により食材温度が検出され、この食材温度相当の飽和蒸気圧力以下にまで減圧される。これにより、処理槽3内の液物食材2の液体分(煮汁)を沸騰させ、これにより液物食材2全体を撹拌することができる。たとえば、120℃蒸煮中に100℃相当の圧力まで減圧するが、これら温度は適宜変更可能なことは言うまでもない。
このように、本実施例によれば、撹拌装置のような特別の装置を用いることなく、蒸煮中の食材2を撹拌することができる。ところで、液物食材2が入れられた容器1内へ外部から空気を導入して撹拌を図ってもよい。この場合、容器1内への空気の導入は、ポンプなどを用いて強制的に吹き込んでもよいが、処理槽3内が減圧下にある場合には、処理槽3の内外の圧力差に基づき、自然に空気を送り込むことが可能である。
この場合、中途部に開閉弁(不図示)を設けた管路からなる空気導入ライン(不図示)を、処理槽の3内外を連通するように設ければよい。そして、この空気導入ラインは、一端部がフィルター(不図示)を介して大気圧下に開放されており、他端部は前記容器1内に開放される。これにより、前記減圧手段6による前記処理槽3内の減圧下で、前記開閉弁を開くことにより、処理槽3の内外の圧力差により、フィルターを介した空気が容器1内に導入される。空気導入ラインを介した前記容器1内への空気導入は、前記容器1の底部から行うのがよい。これにより、液物食材2内に気泡が上昇することで、液物食材2を撹拌することができる。但し、空気を入れた場合の伝熱障害などを考慮すれば、空気を導入せずに処理槽3内を減圧するだけで撹拌するのが望ましい。
このような撹拌処理を伴う蒸煮工程の終了後には、処理槽給蒸弁19を閉じて、処理槽3内を大気圧まで復圧して全工程を終了する。この復圧は、加圧蒸煮の場合には、各排蒸弁21,23を開けばよいし、減圧蒸煮の場合には、外気導入弁34を開けばよい。
本発明の蒸煮装置および蒸煮方法は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、蒸煮工程中における撹拌処理は、加圧蒸煮の場合には、排蒸手段5による処理槽3内の圧力開放だけでなく、所望により減圧手段6による処理槽3内の減圧をも併用することができる。また、処理槽3内の減圧速度を遅くすることで、吹きこぼれを防止することができる。
本発明の蒸煮装置の一実施例を示す概略構造図である。 図1の蒸煮装置の運転中における処理槽内の圧力変化の一例を示す図である。
符号の説明
1 容器
2 液物食材
3 処理槽
4 給蒸手段
5 排蒸手段
6 減圧手段
7 復圧手段
8 圧力センサ
9 温度センサ
36 制御手段(制御器)

Claims (6)

  1. 食材が収容される処理槽と、
    この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、
    前記処理槽内への蒸気供給中、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内を一時的に減圧する手段と
    を備えることを特徴とする蒸煮装置。
  2. 液物食材が収容される処理槽と、
    この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、
    前記処理槽内から空気または蒸気を導出する排蒸手段と、
    前記給蒸手段および前記排蒸手段の一方または双方を制御して、前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給とそれによる前記処理槽内の加圧を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記排蒸手段による前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段と
    を備えることを特徴とする蒸煮装置。
  3. 液物食材が収容される処理槽と、
    この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、
    前記処理槽内を減圧する減圧手段と、
    前記給蒸手段および前記減圧手段の一方または双方を制御して、前記減圧手段による前記処理槽内の減圧下において前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記減圧手段による前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段と
    を備えることを特徴とする蒸煮装置。
  4. 液物食材が収容される処理槽と、
    この処理槽内へ蒸気供給する給蒸手段と、
    この給蒸手段による蒸気供給により加圧された前記処理槽内から、大気圧との差圧を利用して蒸気を導出する排蒸手段と、
    前記処理槽内の蒸気を吸引および/または凝縮させて前記処理槽内を減圧する減圧手段と、
    前記処理槽内の圧力を計測する圧力センサと、
    前記処理槽内の食材温度を計測する温度センサと、
    前記圧力センサまたは前記温度センサの出力に基づき前記各手段を制御して、前記給蒸手段による前記処理槽内への蒸気供給を行うとともに、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内の一時的な減圧を行う制御手段と
    を備えることを特徴とする蒸煮装置。
  5. 液物食材を処理槽内に収容し、この処理槽内へ蒸気供給して前記液物食材を加熱中、前記液物食材が沸騰する圧力まで、前記処理槽内を短時間だけ減圧する
    ことを特徴とする蒸煮方法。
  6. 液物食材を処理槽内に収容し、この処理槽内へ蒸気供給して前記液物食材を加熱中、食材温度よりも低い飽和蒸気温度が得られる圧力まで、前記処理槽内を一時的に減圧する
    ことを特徴とする蒸煮方法。
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