JP2006322090A - バインダー繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水分の存在下に優れたバインダー作用を発揮して、強度、耐水性、地合などに優れる湿式抄造物を円滑に製造することができ、しかも溶融紡糸により簡単に製造できるバインダー繊維の提供。
【解決手段】 融点160〜230℃、重合度200〜500、ケン化度90〜99.9モル%、Naイオン含量3〜10000ppmのPVA系重合体(A)と、融点240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を10:90〜90:10の質量比で含み、繊維表面での前記重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度0.1〜15dtex、繊維中での個々の前記重合体(B)の単繊維繊度が0.001〜4 dtex、水中での前記重合体(A)の溶出量が10質量%以下で、且つ水中膨潤度70〜300%のバインダー繊維及びその製法。
【選択図】 なし

Description

本発明はバインダー繊維およびその製造方法、並びに該バインダー繊維を用いて製造した湿式抄造物に関する。より詳細には、本発明は、特定の熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体と他の熱可塑性重合体とが複合または混合してなるバインダー繊維、その製造方法および該バインダー繊維を用いて製造した湿式抄造物に関する。本発明のバインダー繊維は、湿式紡糸によらずに溶融紡糸によって簡単に製造でき、しかも湿潤下においても優れたバインダー特性を有するため、湿式抄造紙やシートなどの湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維として使用することにより、耐水性、力学的強度および地合に優れる湿式抄造物を製造することができる。
ポリビニルアルコール繊維は、従来から、湿式シートなどを製造する際のバインダー繊維として用いられている。ポリビニルアルコール繊維は、分子内に多数存在する水酸基により水との親和性が高く、水性の抄紙原料中で十分に分散する。しかも、含水状態で繊維が膨潤し、膨潤状態で熱を加えると樹脂が溶解し、更に乾燥されることで再度結晶化し、ネットワーク構造を形成することでバインダー効果を発現する。
ポリビニルアルコール繊維は、一般にポリビニルアルコールを溶解した紡糸原液を、該重合体に対して固化能を有する塩類の水溶液よりなる凝固浴に紡出させてゲル状の繊維構造体とした後に湿延伸し、加熱乾燥するという湿式ゲル紡糸法によって製造されている。
しかしながら、湿式ゲル紡糸法による場合は、製造装置が非常に大掛かりになり、しかも原液や凝固浴の温度管理や組成管理などを厳密に行う必要があり、安定して操業することが困難なことが多く、また高い生産技術が要求される。その上、湿式ゲル紡糸における凝固処理は基本的には一工程で行われるため、凝固性能の異なる2種類以上の重合体を同時に凝固可能な凝固浴組成を採用することは難しく、2種類以上の重合体成分からなる複合繊維や混合繊維の製造は困難である。また、たとえ2種類以上の重合体成分を1つの凝固浴で同時に凝固することが可能であったとしても、2種類以上の重合体成分からなる複合繊維の製造を実現するためには、複合する重合体成分の組み合わせや複合形態などに大きな制約を受けざるを得ず、溶融紡糸では比較的簡単に製造できる芯鞘型複合繊維や海島型複合繊維を湿式ゲル紡糸で製造することは困難な状況にある。
一方、溶融紡糸により製造される複合紡糸繊維や混合紡糸繊維において、例えば芯鞘型の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維では、鞘成分を接着性成分として機能する低融点の重合体から形成し、芯成分を高融点の重合体から形成して繊維に補強作用や染色性を付与することが広く行われている。例としては、鞘成分に低融点のポリエチレンを用い、芯成分に高融点のポリプロピレンやポリエステルを用いた芯鞘型複合紡糸繊維、鞘成分に低融点のイソフタル酸変性ポリエステルなどを用い、芯成分にそれよりも融点の高い通常のポリエステルを用いた芯鞘型複合紡糸繊維、海成分に低融点のポリエチレンを用い、島成分に高融点のポリプロピレンやポリエステルを用いた海島型の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維、海成分に低融点のイソフタル酸変性ポリエステルなどを用い、島成分にそれよりも融点の高い通常のポリエステルを用いた海島型の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維などが知られている。
近年、ポリビニルアルコール系重合体においても、溶融紡糸や溶融成形が可能なポリビニルアルコール系重合体を得ることを目的として、エチレン単位を共重合させて導入したエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体が開発され、このエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体と他の熱可塑性重合体を用いて溶融紡糸によって複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を製造することが既に行われている(特許文献1、2を参照)。
しかし、エチレン変性ポリビニルアルコール系重合体を用いた従来の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を、湿式抄造用のバインダー繊維として用いた場合には、繊維を水性の抄紙用原料に分散させると、繊維を構成しているエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体が水に溶解してしまって、バインダー作用を十分に発揮しないまま、歩留りの低下を招き易く、バインダー繊維としての実用価値を有しないものであった。また、ある程度バインダー効果を発揮する場合であっても、湿式抄造紙などの湿式抄造物の機械的強度や耐水性が不足しがちで、特に水に曝されると強度が大幅に低下し易いものであった。
特開2000−239926号公報 特開2001−214329号公報
本発明の目的は、湿式ゲル紡糸によらずに、溶融紡糸によって良好な繊維化工程性で円滑に簡単に製造することができ、しかもバインダー特性、耐水性、力学的特性などに優れる複数の熱可塑性重合体からなるバインダー繊維を提供することである。
特に、本発明の目的は、湿式抄造によって紙、シート、不織布などの湿式抄造物を製造する際に、水性の抄造用原料中に良好に分散し、しかも高いバインダー効果を発揮して、強度および耐水性に優れ、しかも地合の良好な湿式抄造物を得ることのできる、バインダー繊維を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維の製造方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維を用いてなる、強度および耐水性に優れ、しかも良好な地合を有する湿式抄造物を提供することである。
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた、その結果、特定の融点、重合度、ケン化度およびアルカリ金属イオン含有量を有する熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体と、他の熱可塑性重合体を特定の割合で用いて溶融複合紡糸または溶融混合紡糸を行って、熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体が特定の割合で繊維表面に露出している特定繊度の繊維(複合紡糸繊維または混合紡糸繊維)とし、それを特定の条件下で延伸又は延伸・熱処理すると、繊維表面に露出している熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体の水への溶解性が極めて低く、しかも水に対して適度な膨潤性能を有するバインダー繊維が、溶融紡糸時に断糸などのトラブルを生ずることなく、良好な繊維化工程性で円滑に得られることを見出した。
そして、本発明者らは、それによって得られたバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造したところ、乾燥時および湿潤時のいずれにおいても高い強度を有していて、良好な親水性を有していながら耐水性に優れること、しかも斑がなく均一な地合を有する湿式抄造物が得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)(i) 融点が160〜230℃の熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)が、複合または混合してなるバインダー繊維であって、
(ii) バインダー繊維を構成する熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmの熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体であり;
(iii) バインダー繊維における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10であり;
(iv) 繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上;
(v) バインダー繊維の単繊維繊度が0.1〜15dtex;
(vi) バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtex;
(vi) 水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で;且つ、
(vii) 水中膨潤度が70〜300%である;
ことを特徴とするバインダー繊維である。
そして、本発明は、
(2) 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、炭素数4以下のオレフィンに由来する構造単位および/またはビニルエーテルに由来する構造単位を1〜20モル%の割合で有する熱可塑性の変性ポリビニルアルコール系重合体である前記(1)のバインダー繊維;
(3) 熱可塑性重合体(B)が、繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体およびポリアミド系重合体の少なくとも1種である前記(1)または(2)のバインダー繊維;および、
(4) 湿式抄造用のバインダー繊維である前記(1)〜(3)のいずれかのバインダー繊維;
である。
また、本発明は、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかのバインダー繊維の少なくとも1種を用いて製造した湿式抄造物である。
そして、本発明は、
(6) 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)を用いて両重合体が複合または混合してなるバインダー繊維を製造する方法であって、
・融点が160〜230℃、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を、10:90〜90:10の質量比で用いて、溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後、延伸するかまたは延伸と熱処理を行って、繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度が0.1〜15dtex、および繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtexであるバインダー繊維を製造し;且つ、
・溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後の前記延伸および/または熱処理を、乾燥条件下に、110〜200℃の温度で0.5〜1800秒間行って、バインダー繊維の水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量を10質量%以下、および水中膨潤度を70〜300%にする;
ことを特徴とするバインダー繊維の製造方法である。
本発明のバインダー繊維は、水分の存在下で優れたバインダー特性を発揮する。そのため、本発明のバインダー繊維を、湿式抄造によって紙、シート、不織布などの湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維を用いた場合は、水性の抄造用原料中に良好に均一分散するとともに、強度および耐水性に優れ、しかも平坦で地合の良好な湿式抄造物を製造することができる。
本発明のバインダー繊維は、溶融複合紡糸や溶融混合紡糸などの溶融紡糸によって、良好な繊維化工程性で、円滑に且つ簡単に製造することができる。
本発明の製造方法による場合は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維を、円滑に製造することができる。特に、本発明の製造方法では、溶融紡糸されたバインダー繊維原糸を、特定の条件下で延伸および/または熱処理することで、水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で且つ水中膨潤度が70〜300%である本発明のバインダー繊維を円滑に得ることができる。
本発明のバインダー繊維は、熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)「以下「熱可塑性PVA系重合体(A)」という]と、他の熱可塑性重合体(B)が、複合または混合した繊維(すなわち複合紡糸繊維または混合紡糸繊維)である。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)は、融点が160〜230℃で、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオン含有量が3〜10000ppmの熱可塑性のポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体)である。
熱可塑性PVA系重合体(A)は、その粘度平均重合度が200〜500であることにより、溶融紡糸によって本発明のバインダー繊維を製造する際の繊維化工程性が良好になる。熱可塑性PVA系重合体(A)の粘度平均重合度が低過ぎると十分な曳糸性が得られず、一方高すぎると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルから重合体を吐出することが困難になる。熱可塑性PVA系重合体(A)の粘度平均重合度は230〜480であることが好ましく、250〜450であることがより好ましい。
ここで、本明細書でいう熱可塑性PVA系重合体(A)の粘度平均重合度は、JIS K6726に従って測定される粘度平均重合度を意味する。すなわち、熱可塑性PVA系重合体(A)を再ケン化して精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から、式:P=([η]×103/8.29)(1/0.62)から求められる重合度Pをいう(以下、粘度平均重合度を単に「重合度」ということがある)。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)のケン化度が90〜99.9モル%であることにより、本発明のバインダー繊維を良好な熱安定性で円滑に溶融紡糸により製造することができる。ビニルアルコール系重合体のケン化度が90モル%未満であると、熱安定性が悪く、溶融紡糸時に重合体の熱分解やゲル化を生じ、溶融紡糸を円滑に行うことができなくなる。一方、ビニルアルコール系重合体のケン化度が99.99モル%よりも高いビニルアルコール系重合体は、重合体自体を安定に製造することができず、また安定して繊維化することが困難である。
熱可塑性PVA系重合体(A)のケン化度は、96〜99.98モル%であることが好ましく、97〜99.97モル%であることがより好ましく、97.5〜99.96モル%であることが更に好ましい。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)の融点が160〜230℃であることにより、溶融紡糸時に良好な熱安定性を維持しながら、繊維強度に優れる本発明のバインダー繊維を製造することができる。PVA系重合体の融点が160℃未満であると、PVA系重合体の結晶性が低下して、得られる繊維の強度が低くなり、しかもPVA系重合体の熱安定性が低下して溶融紡糸による繊維化が困難になることがある。一方、PVA系重合体の融点が230℃よりも高いと、PVA系重合体の分解温度に近い温度で溶融紡糸を行うことが必要になり、それに伴って溶融紡糸時にPVA系重合体の分解が生じ、バインダー繊維を安定して製造することができなくなる。
熱可塑性PVA系重合体(A)の融点は、170〜227℃あることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましい。
本明細書でいうPVA系重合体の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載するとおりである。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)は、アルカリ金属イオンを、ナトリウムイオン換算で、熱可塑性PVA系重合体(A)の質量に対して3〜10000ppm[熱可塑性PVA系重合体(A)100質量部に対して0.0003〜1質量部]の割合で含有していることにより、溶融紡糸時に分解およびゲル化が生じず、しかも得られる繊維の水に対する親和性を高く維持することができる。
PVA系重合体におけるアルカリ金属イオンの含有量が、前記した3ppm未満であると、得られる繊維の水に対する親和性が不十分になり、一方10000ppmよりも多いと、溶融紡糸時にPVA系重合体の分解やゲル化が生じて繊維化工程性が不良になる。
熱可塑性PVA系重合体(A)におけるアルカリ金属イオンの含有量は、ナトリウムイオン換算で3〜8000ppmであることが好ましく、5〜6000ppmであることがより好ましく、5〜5000ppmであることが更に好ましい。
アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオンおよび/またはナトリウムイオンが挙げられ、そのうちでもナトリウムイオンであることが好ましい。
本明細書でいうPVA系重合体中のアルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めた値を意味し、その詳細は、以下の実施例に記載するとおりである。
熱可塑性PVA系重合体(A)は、前記した特性を備えている限りは、ビニルアルコール単位のみからなるPVA単独重合体であってもよいし、またはビニルアルコール単位と共重合性単量体に由来する構造単位(共重合単位)を有する変性PVA系重合体であってもよい。そのうちでも、溶融紡糸性、水との親和性、得られる繊維の物性などの観点から、共重合単位を有する変性PVA系重合体であることが好ましい。
熱可塑性PVA系重合体(A)(変性PVA系重合体)における共重合単位を形成する共重合性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類、(メタ)アクリル酸、その塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有ビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有α−オレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボキシル基(無水カルボン酸基)を有する単量体、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体、ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどのカチオン基を有する単量体などを挙げることができる。
熱可塑性PVA系重合体(A)は、前記した共重合性単量体の1種または2種以上に由来する構造単位(共重合単位)を有していることができる。
熱可塑性PVA系重合体(A)における前記した共重合性単量体に由来する共重合単位の含有割合は、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることが更に好ましい。
そのうちでも、熱可塑性PVA系重合体(A)は、共重合単位として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有ビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有α−オレフィン類に由来する共重合単位を有していることが、そのような共重合単位を有する変性ビニルアルコール系重合体の入手の容易性などの点から好ましい。
特に、変性ビニルアルコール系重合体の入手の容易性、溶融紡糸性などの点から、熱可塑性PVA系重合体(A)は、共重合単位として、エチレン、プロピレン、1−ブテンまたはイソブテンからなる炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類に由来する構造単位(共重合単位)を有することが好ましい。その場合に、炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する構造単位(共重合単位)の割合(2種以上の共重合単位を有する場合はその合計割合)は、0.1〜20モル%であることが好ましく、4〜15モル%であることがより好ましく、6〜13モル%であることが更に好ましい。
熱可塑性PVA系重合体(A)が共重合単位としてエチレン単位を有する場合は、エチレン単位の割合は、4〜15モル%、特に6〜13モル%であると、繊維物性が高くなるので好ましい。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)の製造方法は特に制限されない。例えば、ビニルエステル化合物を、必要に応じて上記した共重合性単量体の1種または2種以上と共に用いて、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法、好ましくは塊状重合法または溶液重合法により重合を行って、ビニルエステル化合物の単独重合体またはビニルエステル化合物と共重合性単量体との共重合体を製造した後、重合体中のビニルエステル化合物に由来するエステル結合をケン化して水酸基にすることによって製造することができる。
PVA系重合体の前駆体であるビニルエステル化合物の重合体の製造に当たっては、ビニルエステル化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、パーサティック酸ビニルなどを挙げることができ、そのうちでも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
ビニルエステル化合物を用いて溶液重合を行う際の溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが好ましく用いられる。
また、ビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体の製造に用いる重合開始剤としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤などを挙げることができる。
重合温度は特に制限されないが、一般に、0℃〜150℃の範囲が適当である。
上記で得られるビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体中のビニルエステル化合物に由来するエステル基を、アルカリ金属イオンを含有するアルカリ性物質、特に水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを用いてケン化処理し、それにより生成したビニルアルコール系重合体を洗浄液で洗浄して、ビニルアルコール系重合体中のアルカリ金属イオンの含有量を、3〜10000ppmにすることによって、本発明のバインダー繊維に用いる、アルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmである熱可塑性PVA系重合体(A)を得ることができる。
ビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体のケン化に当たっては、一般に、重合体中にビニルエステル化合物に由来する構造単位1モルに対して、アルカリ性物質(水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム)を0.004〜0.5モル、特に0.005〜0.5モルの割合で使用することが好ましい。アルカリ性物質は、ケン化反応の初期に一括して添加してもよいし、またはケン化反応の途中で逐次添加してもよい。
ケン化反応は、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で行うことが好ましく、そのうちでもメタノール中で行うことが好ましい。メタノール中でケン化反応を行うに当たっては、含水率が0.001〜1質量%、更には0.003〜0.9質量%、特に0.005〜0.8質量%のメタノールを用いることが好ましい。
ケン化の終了した重合体を、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などの洗浄液を用いて洗浄する。そのうちでも、メタノール、酢酸メチルおよび水を単独で用いて洗浄するか、これらの2種または3種の混合液を用いて洗浄することが好ましい。洗浄液の使用量を調整することによって、最終的に得られる熱可塑性PVA系重合体(A)中のアルカリ金属イオンの含有量を、3〜10000ppmに調整することができる。一般的には、ビニルアルコール系重合体100質量部に対して、洗浄液を300〜10000質量部、特に500〜5000質量部の割合で用いて洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄温度は、一般に5〜80℃、特に20〜70℃が好ましく、また洗浄時間は20分間〜10時間、特に1〜6時間が好ましく採用される。
熱可塑性PVA系重合体(A)におけるアルカリ金属イオンの含有量を上記した3〜10000ppmにするに当たっては、上記した方法以外に、アルカリ金属イオンの含有量が3ppmよりも少ないビニルアルコール系重合体を予め製造しておくか別途入手し、それに必要量のアルカリ金属イオンを添加する方法を採用してもよい。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などを重合反応時またはその後の工程で添加含有することができる。特に、熱可塑性PVA系重合体(A)中に熱安定剤として、ヒンダードフェノールなどの有機系安定剤、ヨウ化銅などのハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウムなどのハロゲン化アルカリ金属化合物を含有させると、溶融紡糸時に溶融温度に比較的長い時間にわたってさらされてもその安定性が良好に維持される。
さらに、本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)は、必要に応じて、平均粒径が0.01〜5μmの微粒子を0.05〜10質量%の割合で含有していてもよい。微粒子は重合工程またはその後の工程で添加することができる。微粒子の種類は特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を含有することができる。特に、平均粒径0.02〜1μmの無機微粒子を熱可塑性PVA系重合体(A)中に含有させると、紡糸性および延伸性が向上する。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性重合体(B)としては、融点が240℃以下の可塑性重合体であればいずれも使用可能である。熱可塑性重合体(B)の融点が240℃よりも高いと、バインダー繊維を製造するための溶融紡糸を240℃以上の温度で行うことが必要になり、その場合には溶融紡糸温度が熱可塑性PVA系重合体(A)の分解温度に極めて近いかまたは分解温度を超えることとなって、溶融紡糸時に熱可塑性PVA系重合体(A)の分解を生じ、目的とするバインダー繊維を円滑に製造できなくなる。
熱可塑性重合体(B)の融点は、80〜240℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。
本明細書でいう熱可塑性重合体(B)の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載するとおりである。
熱可塑性重合体(B)として用い得る熱可塑性重合体としては、融点が240℃以下のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、変性ポリビニルアルコール(例えばエチレン単位を25〜70モル%有するポリビニルアルコール)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、ジエン系、塩素系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系の熱可塑性エラストマー)などを挙げることができる。そのうちでも、熱可塑性重合体(B)としては、融点が240℃以下の繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体が好ましく用いられる。
融点が240℃以下のポリオレフィン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、またはプロピレン、エチレン、ブテン、メチルペンテンの1種または2種以上に由来する構造単位を有する共重合体などを挙げることができる。
融点が240℃以下のポリエステル系重合体の好ましい例としては、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位およびヘキサメチレンテレフタレート単位のうちの1種または2種以上の単位を主たる構造単位とし、これに少量の他の共重合単位を有する共重合ポリエステルなどを挙げることができる。
熱可塑性重合体(B)が、エチレンテレフタレート単位、トリメチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位およびヘキサメチレンテレフタレート単位のうちの1種または2種以上の単位を主たる構造単位とし、これに少量の他の共重合単位を有する共重合ポリエステルからなる場合は、他の共重合単位の割合は、20モル%以下であることが好ましい。その際の他の共重合単位としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、5−アルカリ金属スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸、またはこれらのエステル形成成分に由来する構造単位、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどに由来する構造単位などを挙げることができる。共重合ポリエステルは、前記した共重合単位の1種または2種以上を有していることができる。
熱可塑性重合体(B)がポリアミド系重合体である場合は、例えば、ナイロン6、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12などを挙げることができる。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性重合体(B)は、必要に応じて、無機微粒子、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤およびその他の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
本発明のバインダー繊維は、バインダー繊維の質量に基づいて熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)を10:90〜90:10の質量比で含有している。
バインダー繊維において、熱可塑性PVA系重合体(A)の含有割合が10質量%未満であると[熱可塑性重合体(B)の含有割合が90質量%を超えると]、湿式抄造に用いたときに、水性の抄紙用原料中でバインダー繊維が十分に分散、膨潤せず、それに伴って十分なバインダー作用を発揮できなくなり、得られる湿式抄造物の強度が低下する。一方、熱可塑性PVA系重合体(A)の含有割合が90質量%を超えると[熱可塑性重合体(B)の含有割合が10質量%未満であると]、バインダー繊維の補強作用を有する熱可塑性重合体(B)の割合が低下して繊維強度が低下し、それに伴ってバインダー繊維として用いたときに湿式抄造物の強度が低くなる。
本発明のバインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の含有割合は、20:80〜80:20の質量比、特に25:75〜75:25の質量比であることが好ましい。
本発明のバインダー繊維では、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%以上であることが必要であり、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80〜100%であることが更に好ましい。バインダー繊維の繊維表面での熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%未満であると、湿式抄造に用いたときに、水との親和性が低くなって水性の抄紙用原料中でバインダー繊維が均一に分散しなくなり、平坦な地合の良好な湿式抄造物が得られにくくなる。しかも、バインダー繊維が十分に膨潤せず、それに伴って十分なバインダー作用を発揮できなくなり、得られる湿式抄造物の強度が低下する。
本発明のバインダー繊維は、一般に、熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)が互いに複合した複合紡糸繊維であるか、または熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)が互いに非相溶状態で混合した混合紡糸繊維である。
周知のように、複合紡糸繊維は、2種以上の重合体の各々が繊維の長さ方向に途中で途切れることなく連続した状態で互いに接合して1本の繊維(複合繊維)を形成している繊維であり、一般に、その複合形態は繊維の横断面形状から見て、芯鞘型、海島型、貼り合わせ型(サイドバイサイド型、層状分割型、放射状分割型)またはそれらの混在型などに分けられる。
また、混合紡糸繊維は、互いに均一に混ざり合わない2種以上の重合体を紡糸口金から紡出する以前の段階で混合して紡糸することによって形成される繊維であり、2種以上の重合体の1種または2種以上が繊維の長さ方向に途中で途切れながら互いに接合して1本の繊維を形成している繊維であり、繊維の横断面は一般に海島型の構造を有していることが多く、場合によって貼り合わせ型の構造をとることもある。
本発明のバインダー繊維は、繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の含有割合が10:90〜90:10の質量比で、且つ繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%以上である限りは、いずれの複合紡糸繊維または混合紡糸繊維であってもよい。
バインダー繊維における複合形態または混合形態は、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%以上である限りは、芯鞘型、海島型、貼り合わせ型(サイドバイサイド型、層状分割型、放射状分割型)、またはそれらの混在型のいずれであってもよい。
そのうちでも、本発明のバインダー繊維は、熱可塑性PVA系重合体(A)を鞘成分とし、熱可塑性重合体(B)を芯成分とする芯鞘型の複合紡糸繊維であるか、或いは熱可塑性PVA系重合体(A)を海成分とし、熱可塑性重合体(B)を島成分とする海島型の複合紡糸繊維または混合紡糸繊維であるのが好ましい。そのような芯鞘型または海島型の複合形態または混合形態を有していることにより、バインダー繊維の繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が高くなり、水との親和性が高く、水分散性および水膨潤性に優れ、しかもバインダー効果に優れるものとなる。
本発明のバインダー繊維が、熱可塑性PVA系重合体(A)を海成分とし、熱可塑性重合体(B)を島成分とする海島型の複合紡糸繊維または混合紡糸繊維である場合には、島成分は、1種類の熱可塑性重合体(B)から形成されていてもよいし、または2種以上の熱可塑性重合体(B)から形成されていてもよい。島成分が2種以上の熱可塑性重合体(B)から形成されている場合は、複数の島が種類の異なる熱可塑性重合体から別々に形成されていてもよいし(例えば特定の島が熱可塑性重合体B1から形成され、他の島がそれとは種類の異なる熱可塑性重合体B2から形成されている場合)、複数の島が2種類以上の熱可塑性重合体の混合物から形成されていてもよい(例えば島のいずれもが熱可塑性重合体B1とB2の混合物から形成されている場合)。
但し、本発明のバインダー繊維が、海島型の混合紡糸繊維である場合には、熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の粘度バランス、両重合体の使用比率によっては、海と島が逆転して、熱可塑性PVA系重合体(A)が島成分となってしまうことがあるので、熱可塑性PVA系重合体(A)が海成分となるように、粘度バランスおよび両重合体の使用比率を調整することが必要である。
本発明のバインダー繊維の横断面形状は特に制限されず、丸型、偏平型、繭型、中空型、T型、三角形型、多葉型、V字型などのいずれの横断面形状であってもよい。
本発明のバインダー繊維は、その単繊維繊度が、0.1〜15dtexであることが必要であり、0.5〜13dtexであることが好ましく、1〜9dtexあることがより好ましい。
バインダー繊維の単繊維繊度が0.1dtex未満であると、バインダー繊維を生産性良く製造することが困難になり、一方15dtexを超えると、繊維が太くなってバインダーとして用いたときに接着点が大きく減少し、バインダー繊維として機能を十分に発揮しなくなる。
本発明のバインダー繊維においては、バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度[熱可塑性重合体(B)が島成分または芯成分の形態でバインダー繊維中に存在する場合は個々の島または芯の単繊維繊度、貼り合せ型の複合紡糸繊維などでは貼り合せ構造をなす個々の熱可塑性重合体(B)部分の単繊維繊度]が、0.001〜4dtexであることが必要であり、0.01〜1dtexであることが好ましく、0.04〜0.2dtexであることがより好ましい。
バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001dtex未満であると、繊度が小さすぎて熱可塑性重合体(B)成分による繊維の補強作用が発揮されなくなり、バインダー繊維の強度が低下し、ひいてはそれを用いて得られる湿式抄造物の強度が低下する。一方、バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が4dtexを超えると、湿式抄造に用いたときに、湿式抄造物における凹凸が大きくなり、平滑で均一な地合の湿式抄造物が得られにくくなる。
さらに、本発明のバインダー繊維は、水中での熱可塑性PVA系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で、且つ水中膨潤度が70〜300%であることが必要である。
バインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)の水中での溶出量が10質量%を超えると、バインダー繊維を用いて湿式抄造を行ったときに、バインダー繊維を構成している熱可塑性PVA系重合体が水性の抄造原液中に溶け出す割合が多くなって、十分なバインダー効果を発揮しなくなり、得られる湿式抄造物の強度が低下する。本発明のバインダー繊維では、水中での熱可塑性PVA系重合体の溶出量が8質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書における「バインダー繊維における水中でのPVA系重合体の溶出量」は、バインダー繊維を30℃の水中に20時間浸漬したときのPVA系重合体の溶出量をいい、その詳細な測定法は以下の実施例に記載するとおりである。
また、バインダー繊維の水中膨潤度が70%未満であると、バインダー繊維が十分に膨潤しないために、湿式抄造などに用いたときにその接着効果が十分に発揮されず、得られる湿式抄造物の強度低下などを生ずる。一方、バインダー繊維の水中膨潤度が300%を超えると、バインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体の水中溶解度が高くなってしまって湿式抄造などに用いたときに、バインダー繊維を形成しているPVA系重合体が水中に溶解して失われて十分なバインダー効果を発揮しなくなり、得られる湿式抄造物の強度などが低下する。本発明のバインダー繊維では、その水中膨潤度が90〜200%であることが好ましく、100〜180%であることがより好ましい。
なお、本明細書における「バインダー繊維の水中膨潤度」は、バインダー繊維を30℃の水中に30分間浸漬したときの繊維の膨潤度をいい、その詳細な測定法は以下の実施例に記載するとおりである。
本発明のバインダー繊維は、融点が160〜230℃、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmである上記した熱可塑性PVA系重合体(A)と、融点が240℃以下の熱可塑性重合体(B)を、10:90〜90:10の質量比で用いて、溶融紡糸(溶融複合紡糸または溶融混合紡糸)した後、延伸するかまたは延伸と熱処理を行って、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度が0.1〜15dtex、および繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtexであるバインダー繊維を製造し、その際に、溶融紡糸(溶融複合紡糸または溶融混合紡糸)によって紡出された繊維を、前記した延伸工程で、または熱処理工程で、或いは延伸工程と熱処理工程の両方で、乾燥条件下に、110〜200℃温度で、0.5〜1800秒間(110〜200℃での合計加熱時間)にわたって加熱する、本発明の製造方法によって円滑に得ることができる。
前記した本発明の製造方法において、溶融紡糸(溶融複合紡糸または溶融混合紡糸)は、溶融紡糸によって複合紡糸繊維または混合紡糸繊維を製造するために従来から採用されているのと同様の溶融紡糸装置および方法を採用して行うことができる。
溶融紡糸に当たっては、熱可塑性PVA系重合体(A)の熱分解を防ぐために、熱可塑性PVA系重合体(A)の融点から融点+30℃の範囲の温度を採用するのがよく、一般的には200〜250℃の溶融温度が好ましく採用される。
溶融紡糸時に重合体の紡出量は、製造するバインダー繊維の単繊維繊度、紡糸口金における紡糸孔数、バインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の複合形態や混合形態、引き取り速度などに応じて調節することができる。
また、紡糸口金より紡出して得られた紡糸原糸は、一般に2〜6倍の延伸倍率で延伸することが好ましい。延伸は、紡糸に引き続いて行ってもよいし、または紡糸した糸を一旦巻き取った後に巻き戻しながら延伸を行ってもよい。
本発明のバインダー繊維で用いている融点が160〜230℃の熱可塑性PVA系重合体は、融点を低くして溶融紡糸を可能にするために、分子量が200〜500と比較的小さく、場合によっては共重合成分などによって変性してその融点を更に低くしている。そのため、そのような熱可塑性PVA系重合体を用いてバインダー繊維を製造すると、繊維化の際に結晶化を促進するための通常の延伸配向を行っても、繊維表面の結晶が十分なサイズにまで成長せず、結果として繊維の水中膨潤度が大きくなり過ぎ、水中での溶解度が高くなり、湿式抄造などにおけるバインダー繊維として用いたときに、熱可塑性PVA系重合体が水中に溶解して失われ、バインダー効果を十分に発揮しないという問題を有する。
本発明者らは、溶融紡糸を円滑に行うことのできる、160〜230℃という比較的低い融点の熱可塑性PVA系重合体を使用して、水中での溶解度が低く、且つ水中膨潤度が大き過ぎずに適度な範囲にある、バインダー効果に優れるバインダー繊維を開発すべく検討を重ねた。そしてその結果、上記した熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)を用いて溶融紡糸(溶融複合紡糸または溶融混合紡糸)を行ってバインダー繊維を製造する際に、溶融紡糸後の延伸工程で、または熱処理工程で、或いは延伸工程と熱処理工程の両方で、紡出された繊維を上記した特定の条件下で乾燥条件下に加熱することで、水中での溶解度が10%以下で且つ水中膨潤度が70〜300%という適当な範囲にあり、バインダー効果に優れた本発明のバインダー繊維を得ることができた。
溶融紡糸後の延伸工程および/または熱処理工程における乾燥条件下での加熱は、120〜180℃の温度で、0.7〜1200秒間にわたって行うことが好ましく、135〜160℃の温度で、1.5〜600秒間にわたって行うことがより好ましい。
溶融紡糸後の加熱温度が上記した本発明の範囲から外れて110℃未満であると、繊維の水中での溶解度および水中膨潤度が大きすぎて本発明のバインダー繊維を得ることができない。また、溶融紡糸後の加熱温度が200℃を超えると、繊維表面での結晶サイズが大きくなり過ぎて、水中膨潤度が過度に小さくなったり、繊維の熱分解などが生じて、バインダー効果を有する繊維が得られない。
また、110〜200℃で乾燥下に加熱する場合であっても、その加熱時間が本発明における前記範囲から外れて短すぎると結晶サイズの成長が不十分になり、一方加熱時間が前記本発明の範囲から外れて長すぎると結晶サイズが過度に大きくなり、しかも繊維の加熱分解が生じてしまい、いずれの場合も、水中での溶解度が10%以下で且つ水中膨潤度が70〜300%である本発明のバインダー繊維を得ることはできない。
上記した本発明の製造方法の実施に当たっては、溶融紡糸した繊維の加熱方法として、
(i)溶融紡糸した繊維を、湿分が70%以下、好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下で、炉内温度が前記した110〜200℃の範囲にある乾燥した加熱炉内を、繊維の炉内での滞在時間が前記した0.5〜1800秒間になるようにして連続的に通過させながら延伸させた後、加熱炉から取り出す方法;
(ii)溶融紡糸した繊維を、湿分が70%以下、好ましく50%以下、更に好ましくは20%以下で、乾燥した室内を通過させ、その際に室内で温度110〜200℃の延伸ローラまたは加熱プレートに、繊維の延伸ローラまたは加熱プレートへの接触時間が前記した0.5〜1800秒間になるようにして接触させて延伸させた後、室から取り出す方法;
などを採用することができる。
そのうちでも、熱処理時間を必要十分にとれる点、生産性の向上の点から、上記(i)の方法が好ましく採用される。
本発明のバインダー繊維は、湿式抄造によって紙、シート、不織布などの湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維、乾式不織布を水流絡合さて湿熱乾燥させる際のバインダー繊維などとして有効に使用することができる。
そのうちでも、本発明のバインダー繊維は、湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維として適しており、本発明のバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造することにより、強度、耐水性、地合に優れる湿式抄造物を得ることができる。
本発明のバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造するに当たっては、例えば、本発明のバインダー繊維を一般に2〜15mm程度の短繊維に切断し、該短繊維を、主体繊維を分散させた水性の抄紙用原料に添加・混合し、それを抄造装置により抄造した後、通常80℃以上、好ましくは90〜120℃で加熱乾燥することによって、本発明のバインダー繊維で主体繊維同士が良好に接着され且つ本発明のバインダー繊維と主体繊維間の接着も良好になされた抄造物を得ることができる。
その際に、本発明のバインダー繊維の添加割合は、主体繊維の質量に対して5〜40質量%、特に10〜25質量%であることが好ましい。
湿式抄造物を製造する際の主体繊維の種類は特に制限されず、湿式抄造物の用途などに応じて適当な繊維を用いることができ、例えば、各種の天然パルプ、セルロース繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合体繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、全芳香族ポリエステル繊維、全芳香族ポリアミド繊維などを挙げることができる。
水性の抄造用原料中での固形分濃度なども特に制限されず、従来既知の抄造技術に準じて調整すればよい。また、抄造装置や抄造条件なども、各々の状況に適したものを採用すればよい。
以下に、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。なお、以下の製造例、比較製造例、実施例および比較例において、各種物性の測定及び評価は次のようにして行った。
(1)熱可塑性PVA系重合体の融点:
(i) 以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体を水に溶解して5%水溶液を調製し、それを基体上にキャストしてキャストフィルム(乾燥前の厚さ10μm)をつくり、該キャストフィルムを80℃で、減圧条件下で24時間乾燥して、乾燥した熱可塑性PVA系重合体フィルムを作製した。
(ii) 上記(i)で得られた乾燥後の熱可塑性PVA系重合体フィルムを用いて、DSC(示差走査熱量計)(メトラー社製「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップを熱可塑性PVA系重合体の融点(℃)とした。
(2)熱可塑性PVA系重合体の粘度平均重合度:
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体の粘度平均重合度をJIS K6726に従って測定した。
(3)熱可塑性PVA系重合体のケン化度:
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体のケン化度を、JIS K6726に準じて測定した。
(4)熱可塑性PVA系重合体におけるナトリウムイオンの含有量:
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体の一部を採取し、それを完全に灰化し、その灰化した試料を硝酸に溶解し、その溶液を用いて、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z−5300」)を使用して、ナトリウムイオンの含有量を測定した。
(5)熱可塑性PVA系重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合(変性割合):
以下の製造例または比較製造例において、合成の途中段階で得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体またはエチルビニルエーテル/酢酸ビニル共重合体(ビニルアルコール共重合体にケン化する前の酢酸ビニル共重合体)を測定用試料とし、その試料について1H−NMR(日本電子社製「JEOL GX−500」、500MHz)を使用して、80℃の条件下で測定して、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合(変性割合)(モル%)を求めた。エチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合は、合成の途中段階で得られた前記酢酸ビニル共重合体とそれをケン化して最終的に得られるPVA系重合体とで変わらないので、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合をもって、各製造例または比較製造例で最終的に得られた熱可塑性PVA系重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合とした。
(6)熱可塑性重合体(B)の融点:
熱可塑性重合体(B)(ポリプロピレン、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6またはポリエチレンテレフタレート)(ペレット状)を用いて、DSC(示差走査熱量計)(パーキンエルマー社製「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップを熱可塑性重合体(B)の融点(℃)とした。
(7)紡糸工程性:
以下の製造例、比較製造例、実施例および比較例における紡糸工程で、紡糸によって100kgの繊維を連続生産する際に生じた断糸回数を数え、断糸回数が3回以内の場合は良好(○)、断糸回数が4〜7回の場合はやや不良(△)、断糸回数が8回以上の場合は不良(×)として評価した。
(8)バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度:
(i) 芯鞘型、海島型、放射状分割型の複合紡糸繊維のように、繊維の表面状態が点対称であるバインダー繊維では、繊維の任意の側面の5カ所を電子顕微鏡で写真撮影し、各写真について、熱可塑性PVA系重合体の占める面積割合(%)を求めて、5カ所の平均値を採って、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
(ii) サイドバイサイド型の複合繊維のように、繊維の表面状態が点対称でないものでは、繊維の横断面を写真撮影し、繊維の円周において熱可塑性PVA系重合体が占める比率(円周での長さ割合)を、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
(iii) 異形断面繊維のような、繊維の表面状態が非対称で且つ重合体の分布状態が不均一な繊維では、繊維の任意の側面の20カ所を電子顕微鏡で写真撮影し、各写真について、熱可塑性PVA系重合体の占める面積割合(%)を求めて、20カ所の平均値を採って、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
(9)バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度:
バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分(ポリプロピレン、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6またはポリエチレンテレフタレート)の繊維径から換算して求めた。
(10)バインダー繊維における水中での熱可塑性PVA系重合体の溶出量:
(i) 以下の実施例または比較例で得られたバインダー繊維から、バインダー繊維中の熱可塑性PVA系重合体の質量が1gとなる量のバインダー繊維を量り採り、それを30℃の水100ml中に完全に浸漬し、液温を30℃に保って20時間静置した。次いで、未溶解の繊維を分離除去し、上澄み液50mlを採取し、それを蒸発皿に入れて95℃に5時間放置して水分を蒸発乾固した後、皿ごと熱風乾燥機(稲葉屋冷熱産業社製)に入れて、95℃で5時間乾燥させ、乾燥後に皿に残った残留物の量W1(g)を量った。
(ii) 上記(i)の残留物には、PVA系重合体以外の無機物が含まれているので、上記(i)で得られた残留物を、600℃の焼成装置に入れて質量減少が最早生じなくなるまで完全に焼成し、焼成後の残分の量W2(g)を測定し、下記の数式により、水中での熱可塑性PVA系重合体の溶出量S(質量%)を求めた。
溶出量S(質量%)={(W1−W2)×100/50}×100
(11)バインダー繊維の水中膨潤度:
(i) 以下の実施例または比較例で得られたバインダー繊維から、バインダー繊維中の熱可塑性PVA系重合体の質量が1gとなる量のバインダー繊維を量り採り、それを30℃の水100ml中に完全に浸漬し、液温を30℃に保って30分間静置した。次いで、繊維分を濾取し、その繊維分を、サイズ=10cm×10cmの正方形の綿布の中央に載せて四隅を折畳んで包み、それを回転数3000rpmの遠心脱水機(コクサン社製)に入れて10分間遠心脱水して、繊維の表面に付着している水を除去した後、綿布から繊維分を取り出して、その重さWa(g)を測定した。
(ii) 上記(i)で重さWaを測定した繊維分を100℃の熱風乾燥機(稲葉屋冷熱産業社製)に入れて4時間乾燥し、その時の重さWb(g)を測定し、下記の式からバインダー繊維の水中膨潤度(%)を求めた。
バインダー繊維の水中膨潤度(%)={(Wa−Wb)/Wb}×100
(12)湿式抄造シートの乾裂断長(DB)および湿裂断長(WB):
(i)乾裂断長(DB):
以下の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、温度23℃、湿度50%RHの調温調湿室で24時間静置した後、湿式抄造シートの幅方向の中央部分から、湿式抄造シートの長さ方向(湿式抄造時のシートの移送方向)に沿って170mm、幅方向に15mmの細長い試験片を直ちに切り取り、その試験片の長さ方向の両端近傍を、2つの把持具を用いて把持長100mmで把持し、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)を使用して2つの把持具の間の間隔(当初100mm)を50mm/分の引張速度で徐々に増加させ、試験片が切断した時に試験片に加わっていた力(強力)DS(N)を読み取り、該強力DS(N)と、湿式抄造シートの坪量W(g/m2)から、下記の数式により、湿式抄造シートの乾裂断長(DB)を求めた。
湿式抄造シートの乾裂断長(DB)(N・m/g)={DS/(15×W)}×1000
(ii)湿裂断長(WB):
以下の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、温度20℃の水中に浸漬して24時間吸水させた後、湿式抄造シートの幅方向の中央部分から、湿式抄造シートの長さ方向(湿式抄造時のシートの移送方向)に沿って170mm、幅方向に15mmの細長い試験片を直ちに切り取り、その試験片の長さ方向の両端近傍を、2つの把持具を用いて把持長100mmで把持し、上記(i)と同じように50mm/分の引張速度で引っ張り試験を行って、試験片が切断した時に試験片に加わっていた力(強力)WS(N)を読み取り、該強力WS(N)と、湿式抄造シートの坪量W(g/m2)から、下記の数式により、湿式抄造シートの湿裂断長(WB)を求めた。
湿式抄造シートの湿裂断長(WB)(N・m/g)={WS/(15×W)}×1000
(13)湿式抄造シートの地合:
下記の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、白色蛍光灯(40型、36W)にかざし、白色蛍光灯と反対の側から湿式抄造シートを目視により観察して、湿式抄造シートに斑の存在が実質的に認められない場合は良好(○)、斑が少し認められた場合はやや不良(△)、斑が目立った場合は不良(×)として評価した。
《製造例1》[エチレン変性PVA系重合体および該重合体の単独繊維の製造]
(1) 撹拌機、窒素ガス導入口、エチレン導入口および重合開始剤添加口を備えた100リットルの加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素ガスのバブリングにより系内を窒素置換し、次いで、反応槽の圧力が5.9kg/cm2となるようにエチレンを導入した。
(2) 2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)(重合開始剤)をメタノールに溶解した溶液(開始剤濃度2.8g/リットル)を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。
(3) 上記(1)の反応槽の内温を60℃に調整した後、上記(2)で調製した重合開始剤溶液170mlを反応槽に注入して重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽の圧力を5.9kg/cm2に維持するとともに、反応槽の内温を60℃に維持し、さらに上記(2)で調製した開始剤溶液を610ml/hrの割合で反応槽に連続的に添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%に達したので、反応槽を冷却して重合を停止した。
(4) 反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行い、次いで減圧下に未反応の酢酸ビニルを除去して、エチレンで変性したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
(5) 上記(4)で得られたエチレン変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液の一部を採取し、その溶液にn−ヘキサンを加えてエチレン変性ポリ酢酸ビニルを沈殿させ、沈殿をアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って、精製エチレン変性ポリ酢酸ビニルを得た。この精製エチレン変性ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、前記した方法でエチレンの共重合割合を測定したところ、エチレンの共重合割合は8.6モル%であった。
(6) 上記(4)で得られたエチレン変性ポリ酢酸ビニル溶液200g(溶液中のエチレン変性ポリ酢酸ビニル100g)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液46.5g(エチレン変性ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル由来の構造単位に対する水酸化ナトリウムのモル比=0.10)を添加してケン化を行った。
(7) 水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加して約2分後にゲル化物が生成したので、該ゲル化物を溶液中に入れたまま粉砕機で粉砕して更に60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。
(8) フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認した後、白色の固体状のエチレン変性PVA系重合体を濾別して回収し、それにメタノール1000gを加えて室温度3時間放置して洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水してエチレン変性PVA系重合体を回収し、それを乾燥機中で70℃に2日間放置して、乾燥したエチレン変性PVA系重合体を得た。
(9) 上記(8)で得られた乾燥したエチレン変性PVA系重合体の融点、粘度平均重合度、ケン化度およびナトリウムイオンの含有量を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(10) 上記(8)で得られたエチレン変性PVA系重合体100質量部に、可塑剤(ソルビトール1モルにエチレンオキサイド2モルを付加した化合物)5質量部を添加して、230℃で溶融混合して変性PVA系重合体組成物を調製した。この組成物を単独で用いて、紡糸装置を用いて240℃で溶融紡糸し、紡糸原糸を引き続いてローラープレート方式で温度130℃、3倍に延伸した後、100m/分の速度で巻き取って、70dtex/24fの変性PVA系重合体のマルチフィラメントを製造した。その際の紡糸工程性を上記した方法で評価したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
《製造例2〜3》[エチレン変性PVA系重合体および該重合体の単独繊維の製造]
(1) 酢酸ビニルおよびエチレンを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の工程を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチレン変性PVA系重合体をそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれのエチレン変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数はいずれも0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
《製造例4》[PVA系重合体の製造及び該重合体の単独繊維の製造]
(1) 酢酸ビニルのみを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するPVA系重合体を製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
《製造例5》[エチルビニルエーテル変性PVA系重合体および該重合体の単独繊維の製造]
(1) 酢酸ビニルおよびエチルビニルエーテルを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチルビニルエーテル変性PVA系重合体を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエチルビニルエーテル変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチルビニルエーテル変性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)を製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
《比較製造例1〜6》[エチレン変性PVA系重合体および該重合体の単独繊維の製造]
(1) 酢酸ビニルおよびエチレンを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチレン変性PVA系重合体をそれぞれ製造した。
(2) 上記(2)で得られたそれぞれのエチレン変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチレン塑性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造した。
その結果、下記の表1に示すように、100kgのマルチフィラメントを連続生産したときに、比較製造例1および2ではエチレン変性PVA系重合体の粘度平均重合体が200〜500の範囲から外れているために8回以上の断糸が発生し、比較製造例3ではエチレン平均PVA系重合体のケン化度が90モル%未満であるために6回の断糸が発生し、比較製造例5および6ではエチレン変性PVA系重合体におけるナトリウムイオン含有量が3〜10000ppmの範囲から外れているために8回以上の断糸が発生した。
また、比較製造例4では、変性PVA系重合体の融点が156℃と低いために、紡出したマルチフィラメントの解舒性が不良で延伸を行うことができなかった。
《実施例1》[バインダー繊維の製造]
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体を海成分として用い、ポリプロピレン(出光興産株式会社製「Y−2005GP」、融点161℃)を島成分として用い、島数が16個となるような溶融複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、該紡糸原糸を1段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度90℃)に導いて3倍に延伸し(1段目の熱風炉での糸の滞在時間6秒)、次に第1段目の熱風炉に隣接して設けた2段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度140℃、炉内湿度0%)に導いて140℃で熱処理し(2段目の熱風炉での糸の滞在時間2.6秒)、70m/分で巻き取って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、その繊維表面におけるエチレン変性PVA系重合体の露出割合、複合紡糸繊維(バインダー繊維)中でのポリプロピレンよりなる個々の島の単繊維繊度、水中での変性PVA系重合体の溶出量および水中膨潤度を上記した方法で算出したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《実施例2》[バインダー繊維の製造]
(1) 島成分として、ポリプロピレンの代わりに、イソフタル酸10モル%変性ポリエチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、融点225℃)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例3》[バインダー繊維の製造]
(1) 島成分として、ポリプロピレンの代わりに、ナイロン6(宇部興産株式会社製「1011FK」、融点220℃)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ナイロン6よりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例4》[バインダー繊維の製造]
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体を鞘成分として用い、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを芯成分として用い、芯鞘型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、エチレン変性PVA系重合体を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする、円形の横断面を有する芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例5》[バインダー繊維の製造]
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体と、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを用い、層状11分割型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、11層のうち、両方の表面層を含めた6層がエチレン変性PVA系重合体で、残りの5層がポリプロピレンよりなる、楕円形の横断面を有する層状貼り合せ型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例6》[バインダー繊維の製造]
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体と、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを用い、放射状18分割型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、エチレン変性PVA系重合体とポリプロピレンが放射状に18層で交互に貼り合わさった、円形の横断面を有する層状貼り合せ型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例7》[バインダー繊維の製造]
(1) 複合紡糸繊維の単繊維繊度が12.0dtexとなるようにした以外は、実施例1と同じ方法を採用して、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;288dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例8》[バインダー繊維の製造]
(1) 複合紡糸繊維の単繊維繊度が0.7dtexとなるようにした以外は、実施例1と同じ方法を採用して、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;17dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例9および10》[バインダー繊維の製造]
(1) 海成分(エチレン変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を50:50から70:30(実施例9)または30:70(実施例10)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの実施例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例11》[バインダー繊維の製造]
(1) 海成分として、製造例1で得られたエチレン変性PVA系重合体の代わりに、製造例2で得られたエチレン変性PVA系重合体を用い、2段目の熱風炉の炉内温度を125℃に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例1および2》[バインダー繊維の製造]
(1) 海成分(エチレン変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を50:50から、95:5(比較例1)または5:95(比較例2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの比較例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例3および4》[バインダー繊維の製造]
(1) 2段目の熱風炉の炉内温度を30℃(比較例3)または215℃(比較例4)に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの比較例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例5》[バインダー繊維の製造]
島成分として、ポリプロピレンの代わりに、ポリエチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、融点254℃)を用い、溶融複合紡糸温度を295℃とし、それ以外は実施例1と同様にして海島型の複合紡糸繊維の製造を行ったところ、紡糸中にエチレン変性PVA系重合体の熱分解が起こり、複合紡糸繊維を製造することができなかった。
《比較例6》[バインダー繊維の製造]
(1) 単繊維繊度が10dtexの芯鞘型複合紡糸繊維を製造した以外は実施例4と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする、円形の横断面を有する芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;240dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例7》[バインダー繊維の製造]
(1) 島数を100個に変更し、海成分(変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を85:15に変更し、得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度を0.5dtexに変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる100個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;12dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例8》[バインダー繊維の製造]
得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度が0.09dtexになるようにし、それ以外は実施例1と同様の操作を採用して海島型の複合紡糸繊維を製造しようとしたが、繊維を安定に巻き取ることができず、繊維を実質的に生産することができなかった。
《比較例9》[バインダー繊維の製造]
(1) 得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度が16.0dtexになるようにした以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;384dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《比較例10》[バインダー繊維の製造]
(1) エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレンの質量比を30:70に変更した以外は、実施例5と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体層を両方の表面に有する、層状11分割型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
《実施例12》[湿式抄造シートの製造]
(1) 上記の実施例1で得られたバインダー繊維(複合紡糸繊維)を繊維長3mmに切断して短繊維にし、この短繊維10質量部に、主体繊維としてPVA繊維(株式会社クラレ製「VPB103」、単繊維繊度1.2dtex、繊維長5mm、水不溶性)90質量部を混合し、該混合した繊維を水に均一に分散させて、固形分濃度0.2質量%の水性スラリーを調製した。
(2) 上記(1)で調製した水性スラリーを用いて、TAPPI式湿式抄造装置(熊谷理器株式会社製)を使用して湿式抄造し、次いで90℃のドラム型乾燥装置を用いて乾燥して、坪量10g/m2の湿式抄造シートを製造した。
(3) 上記(2)で得られた湿式抄造シートの乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)を上記した方法で測定するとともに、湿裂断長(WS)と乾裂断長(DS)の比(WS/DS)を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた湿式抄造シートの地合を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
《実施例13〜22および比較例11〜18》[湿式抄造シートの製造]
(1) 実施例1で得られたバインダー繊維の代わりに、実施例2〜11、比較例1〜4、6〜7および9〜10で得られたバインダー繊維を繊維長3mmに切断したものをそれぞれ用いた以外は、実施例12と同様にして、坪量10g/m2の湿式抄造シートを製造した。
(2) 上記(2)で得られたそれぞれの湿式抄造シートの乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)を上記した方法で測定するとともに、湿裂断長(WS)と乾裂断長(DS)の比(WS/DS)を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られたそれぞれの湿式抄造シートの地合を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
Figure 2006322090
Figure 2006322090
Figure 2006322090
上記の表1〜表3の結果、特に表2および表3の結果にみるように、本発明におけるすべての要件を満たす実施例1〜11のバインダー繊維を用いて得られた実施例12〜22の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値がいずれも高く、強度および耐湿性に優れており、しかも平坦で地合においても優れている。
それに対して、比較例1および2のバインダー繊維は、熱可塑性PVA系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10の範囲から外れているために、該比較例1および2のバインダー繊維を用いて製造した比較例11および比較例12の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っており、該比較例1および2のバインダー繊維は十分なバインダー作用を示さない。
また、比較例3のバインダー繊維は水中での熱可塑性PVA系重合体(A)の溶出量が10質量%を超え且つ水中膨潤度が300%を超えていることにより、該比較例3のバインダー繊維を用いて製造した比較例13の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っており、該比較例3のバインダー繊維はバインダー繊維として適さない。
比較例4のバインダー繊維は水中膨潤度が70%よりも小さいことにより、該比較例4のバインダー繊維を用いて製造した比較例14の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っており、該比較例4のバインダー繊維はバインダー繊維として適さない。
比較例5では、融点が240℃を超える熱可塑性重合体(B)を用いたため、溶融複合紡糸時に熱可塑性PVA系重合体(A)の熱分解が生じ、バインダー繊維(複合紡糸繊維)の製造ができなった。
比較例6のバインダー繊維は、鞘成分の単繊維繊度が4dtexを超えているため、該比較例6のバインダー繊維を用いて製造した比較例15の湿式抄造シートは、凹凸が大きく、地合に劣っている。
比較例7のバインダー繊維は、海成分の単繊維繊度が0.001dtex未満であるため、該比較例7のバインダー繊維を用いて製造した比較例16の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っている。
比較例8では、単繊維繊度が0.1dtex未満のバインダー繊維(複合紡糸繊維)を製造しようとしたため、安定して巻き取ることができず、バインダー繊維を実質的に生産することができなかった。
比較例9のバインダー繊維は、単繊維繊度が15dtexを超えているため、該比較例9のバインダー繊維を用いて製造した比較例17の湿式抄造シートは、凹凸が大きく、地合に劣っている。
比較例10のバインダー繊維は、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%よりも少ないために、該比較例10のバインダー繊維を用いて製造した比較例18の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っている。
本発明のバインダー繊維は、水分の存在下で優れたバインダー特性を発揮するため、湿式抄造によって紙、シート、不織布などの湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維として有効に使用することができる。
本発明のバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造することにより、強度、耐水性および地合に優れる湿式抄造物を提供することができる。

Claims (6)

  1. (i) 融点が160〜230℃の熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)が、複合または混合してなるバインダー繊維であって、
    (ii) バインダー繊維を構成する熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmの熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体であり;
    (iii) バインダー繊維における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10であり;
    (iv) 繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上;
    (v) バインダー繊維の単繊維繊度が0.1〜15dtex;
    (vi) バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtex;
    (vi) 水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で;且つ、
    (vii) 水中膨潤度が70〜300%である;
    ことを特徴とするバインダー繊維。
  2. 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、炭素数4以下のオレフィンに由来する構造単位および/またはビニルエーテルに由来する構造単位を1〜20モル%の割合で有する熱可塑性の変性ポリビニルアルコール系重合体である請求項1に記載のバインダー繊維。
  3. 熱可塑性重合体(B)が、繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体およびポリアミド系重合体の少なくとも1種である請求項1または2に記載のバインダー繊維。
  4. 湿式抄造用のバインダー繊維である請求項1〜3のいずれか1項に記載のバインダー繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー繊維の少なくとも1種を用いて製造した湿式抄造物。
  6. 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)を用いて両重合体が複合または混合してなるバインダー繊維を製造する方法であって、
    ・融点が160〜230℃、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜100 00ppmである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を、10:90〜90:10の質量比で用いて、溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後、延伸するかまたは延伸と熱処理を行って、繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度が0.1〜15dtex、および繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtexであるバインダー繊維を製造し;且つ、
    ・溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後の前記延伸および/または熱処理を、乾燥条件下に、110〜200℃の温度で0.5〜1800秒間行って、バインダー繊維の水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量を10質量%以下、および水中膨潤度を70〜300%にする;
    ことを特徴とするバインダー繊維の製造方法。
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