JP2006322090A - バインダー繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 融点160〜230℃、重合度200〜500、ケン化度90〜99.9モル%、Naイオン含量3〜10000ppmのPVA系重合体(A)と、融点240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を10:90〜90:10の質量比で含み、繊維表面での前記重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度0.1〜15dtex、繊維中での個々の前記重合体(B)の単繊維繊度が0.001〜4 dtex、水中での前記重合体(A)の溶出量が10質量%以下で、且つ水中膨潤度70〜300%のバインダー繊維及びその製法。
【選択図】 なし
Description
しかし、エチレン変性ポリビニルアルコール系重合体を用いた従来の複合紡糸繊維や混合紡糸繊維を、湿式抄造用のバインダー繊維として用いた場合には、繊維を水性の抄紙用原料に分散させると、繊維を構成しているエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体が水に溶解してしまって、バインダー作用を十分に発揮しないまま、歩留りの低下を招き易く、バインダー繊維としての実用価値を有しないものであった。また、ある程度バインダー効果を発揮する場合であっても、湿式抄造紙などの湿式抄造物の機械的強度や耐水性が不足しがちで、特に水に曝されると強度が大幅に低下し易いものであった。
特に、本発明の目的は、湿式抄造によって紙、シート、不織布などの湿式抄造物を製造する際に、水性の抄造用原料中に良好に分散し、しかも高いバインダー効果を発揮して、強度および耐水性に優れ、しかも地合の良好な湿式抄造物を得ることのできる、バインダー繊維を提供することである。
そして、本発明の目的は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維の製造方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維を用いてなる、強度および耐水性に優れ、しかも良好な地合を有する湿式抄造物を提供することである。
そして、本発明者らは、それによって得られたバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造したところ、乾燥時および湿潤時のいずれにおいても高い強度を有していて、良好な親水性を有していながら耐水性に優れること、しかも斑がなく均一な地合を有する湿式抄造物が得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
(1)(i) 融点が160〜230℃の熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)が、複合または混合してなるバインダー繊維であって、
(ii) バインダー繊維を構成する熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmの熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体であり;
(iii) バインダー繊維における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10であり;
(iv) 繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上;
(v) バインダー繊維の単繊維繊度が0.1〜15dtex;
(vi) バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtex;
(vi) 水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で;且つ、
(vii) 水中膨潤度が70〜300%である;
ことを特徴とするバインダー繊維である。
(2) 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、炭素数4以下のオレフィンに由来する構造単位および/またはビニルエーテルに由来する構造単位を1〜20モル%の割合で有する熱可塑性の変性ポリビニルアルコール系重合体である前記(1)のバインダー繊維;
(3) 熱可塑性重合体(B)が、繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体およびポリアミド系重合体の少なくとも1種である前記(1)または(2)のバインダー繊維;および、
(4) 湿式抄造用のバインダー繊維である前記(1)〜(3)のいずれかのバインダー繊維;
である。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかのバインダー繊維の少なくとも1種を用いて製造した湿式抄造物である。
(6) 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)を用いて両重合体が複合または混合してなるバインダー繊維を製造する方法であって、
・融点が160〜230℃、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を、10:90〜90:10の質量比で用いて、溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後、延伸するかまたは延伸と熱処理を行って、繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度が0.1〜15dtex、および繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtexであるバインダー繊維を製造し;且つ、
・溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後の前記延伸および/または熱処理を、乾燥条件下に、110〜200℃の温度で0.5〜1800秒間行って、バインダー繊維の水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量を10質量%以下、および水中膨潤度を70〜300%にする;
ことを特徴とするバインダー繊維の製造方法である。
本発明のバインダー繊維は、溶融複合紡糸や溶融混合紡糸などの溶融紡糸によって、良好な繊維化工程性で、円滑に且つ簡単に製造することができる。
本発明の製造方法による場合は、前記した優れた特性を有するバインダー繊維を、円滑に製造することができる。特に、本発明の製造方法では、溶融紡糸されたバインダー繊維原糸を、特定の条件下で延伸および/または熱処理することで、水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で且つ水中膨潤度が70〜300%である本発明のバインダー繊維を円滑に得ることができる。
本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性PVA系重合体(A)は、融点が160〜230℃で、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオン含有量が3〜10000ppmの熱可塑性のポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体)である。
ここで、本明細書でいう熱可塑性PVA系重合体(A)の粘度平均重合度は、JIS K6726に従って測定される粘度平均重合度を意味する。すなわち、熱可塑性PVA系重合体(A)を再ケン化して精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から、式:P=([η]×103/8.29)(1/0.62)から求められる重合度Pをいう(以下、粘度平均重合度を単に「重合度」ということがある)。
熱可塑性PVA系重合体(A)のケン化度は、96〜99.98モル%であることが好ましく、97〜99.97モル%であることがより好ましく、97.5〜99.96モル%であることが更に好ましい。
熱可塑性PVA系重合体(A)の融点は、170〜227℃あることが好ましく、180〜220℃であることがより好ましい。
本明細書でいうPVA系重合体の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載するとおりである。
PVA系重合体におけるアルカリ金属イオンの含有量が、前記した3ppm未満であると、得られる繊維の水に対する親和性が不十分になり、一方10000ppmよりも多いと、溶融紡糸時にPVA系重合体の分解やゲル化が生じて繊維化工程性が不良になる。
熱可塑性PVA系重合体(A)におけるアルカリ金属イオンの含有量は、ナトリウムイオン換算で3〜8000ppmであることが好ましく、5〜6000ppmであることがより好ましく、5〜5000ppmであることが更に好ましい。
アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオンおよび/またはナトリウムイオンが挙げられ、そのうちでもナトリウムイオンであることが好ましい。
本明細書でいうPVA系重合体中のアルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めた値を意味し、その詳細は、以下の実施例に記載するとおりである。
熱可塑性PVA系重合体(A)は、前記した共重合性単量体の1種または2種以上に由来する構造単位(共重合単位)を有していることができる。
熱可塑性PVA系重合体(A)における前記した共重合性単量体に由来する共重合単位の含有割合は、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることが更に好ましい。
熱可塑性PVA系重合体(A)が共重合単位としてエチレン単位を有する場合は、エチレン単位の割合は、4〜15モル%、特に6〜13モル%であると、繊維物性が高くなるので好ましい。
また、ビニルエステル化合物の単独重合体または共重合体の製造に用いる重合開始剤としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤などを挙げることができる。
重合温度は特に制限されないが、一般に、0℃〜150℃の範囲が適当である。
ケン化反応は、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で行うことが好ましく、そのうちでもメタノール中で行うことが好ましい。メタノール中でケン化反応を行うに当たっては、含水率が0.001〜1質量%、更には0.003〜0.9質量%、特に0.005〜0.8質量%のメタノールを用いることが好ましい。
熱可塑性重合体(B)の融点は、80〜240℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。
本明細書でいう熱可塑性重合体(B)の融点は、DSC(示差走査熱量計)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温したときの、吸熱ピークのピークトップとして求められる温度を意味し、詳細な測定法については、以下の実施例に記載するとおりである。
バインダー繊維において、熱可塑性PVA系重合体(A)の含有割合が10質量%未満であると[熱可塑性重合体(B)の含有割合が90質量%を超えると]、湿式抄造に用いたときに、水性の抄紙用原料中でバインダー繊維が十分に分散、膨潤せず、それに伴って十分なバインダー作用を発揮できなくなり、得られる湿式抄造物の強度が低下する。一方、熱可塑性PVA系重合体(A)の含有割合が90質量%を超えると[熱可塑性重合体(B)の含有割合が10質量%未満であると]、バインダー繊維の補強作用を有する熱可塑性重合体(B)の割合が低下して繊維強度が低下し、それに伴ってバインダー繊維として用いたときに湿式抄造物の強度が低くなる。
本発明のバインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の含有割合は、20:80〜80:20の質量比、特に25:75〜75:25の質量比であることが好ましい。
また、混合紡糸繊維は、互いに均一に混ざり合わない2種以上の重合体を紡糸口金から紡出する以前の段階で混合して紡糸することによって形成される繊維であり、2種以上の重合体の1種または2種以上が繊維の長さ方向に途中で途切れながら互いに接合して1本の繊維を形成している繊維であり、繊維の横断面は一般に海島型の構造を有していることが多く、場合によって貼り合わせ型の構造をとることもある。
バインダー繊維における複合形態または混合形態は、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%以上である限りは、芯鞘型、海島型、貼り合わせ型(サイドバイサイド型、層状分割型、放射状分割型)、またはそれらの混在型のいずれであってもよい。
但し、本発明のバインダー繊維が、海島型の混合紡糸繊維である場合には、熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の粘度バランス、両重合体の使用比率によっては、海と島が逆転して、熱可塑性PVA系重合体(A)が島成分となってしまうことがあるので、熱可塑性PVA系重合体(A)が海成分となるように、粘度バランスおよび両重合体の使用比率を調整することが必要である。
バインダー繊維の単繊維繊度が0.1dtex未満であると、バインダー繊維を生産性良く製造することが困難になり、一方15dtexを超えると、繊維が太くなってバインダーとして用いたときに接着点が大きく減少し、バインダー繊維として機能を十分に発揮しなくなる。
バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001dtex未満であると、繊度が小さすぎて熱可塑性重合体(B)成分による繊維の補強作用が発揮されなくなり、バインダー繊維の強度が低下し、ひいてはそれを用いて得られる湿式抄造物の強度が低下する。一方、バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が4dtexを超えると、湿式抄造に用いたときに、湿式抄造物における凹凸が大きくなり、平滑で均一な地合の湿式抄造物が得られにくくなる。
バインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)の水中での溶出量が10質量%を超えると、バインダー繊維を用いて湿式抄造を行ったときに、バインダー繊維を構成している熱可塑性PVA系重合体が水性の抄造原液中に溶け出す割合が多くなって、十分なバインダー効果を発揮しなくなり、得られる湿式抄造物の強度が低下する。本発明のバインダー繊維では、水中での熱可塑性PVA系重合体の溶出量が8質量%以下であることが好ましい。
なお、本明細書における「バインダー繊維における水中でのPVA系重合体の溶出量」は、バインダー繊維を30℃の水中に20時間浸漬したときのPVA系重合体の溶出量をいい、その詳細な測定法は以下の実施例に記載するとおりである。
なお、本明細書における「バインダー繊維の水中膨潤度」は、バインダー繊維を30℃の水中に30分間浸漬したときの繊維の膨潤度をいい、その詳細な測定法は以下の実施例に記載するとおりである。
溶融紡糸に当たっては、熱可塑性PVA系重合体(A)の熱分解を防ぐために、熱可塑性PVA系重合体(A)の融点から融点+30℃の範囲の温度を採用するのがよく、一般的には200〜250℃の溶融温度が好ましく採用される。
溶融紡糸時に重合体の紡出量は、製造するバインダー繊維の単繊維繊度、紡糸口金における紡糸孔数、バインダー繊維における熱可塑性PVA系重合体(A)と熱可塑性重合体(B)の複合形態や混合形態、引き取り速度などに応じて調節することができる。
また、紡糸口金より紡出して得られた紡糸原糸は、一般に2〜6倍の延伸倍率で延伸することが好ましい。延伸は、紡糸に引き続いて行ってもよいし、または紡糸した糸を一旦巻き取った後に巻き戻しながら延伸を行ってもよい。
溶融紡糸後の延伸工程および/または熱処理工程における乾燥条件下での加熱は、120〜180℃の温度で、0.7〜1200秒間にわたって行うことが好ましく、135〜160℃の温度で、1.5〜600秒間にわたって行うことがより好ましい。
また、110〜200℃で乾燥下に加熱する場合であっても、その加熱時間が本発明における前記範囲から外れて短すぎると結晶サイズの成長が不十分になり、一方加熱時間が前記本発明の範囲から外れて長すぎると結晶サイズが過度に大きくなり、しかも繊維の加熱分解が生じてしまい、いずれの場合も、水中での溶解度が10%以下で且つ水中膨潤度が70〜300%である本発明のバインダー繊維を得ることはできない。
(i)溶融紡糸した繊維を、湿分が70%以下、好ましくは50%以下、更に好ましくは20%以下で、炉内温度が前記した110〜200℃の範囲にある乾燥した加熱炉内を、繊維の炉内での滞在時間が前記した0.5〜1800秒間になるようにして連続的に通過させながら延伸させた後、加熱炉から取り出す方法;
(ii)溶融紡糸した繊維を、湿分が70%以下、好ましく50%以下、更に好ましくは20%以下で、乾燥した室内を通過させ、その際に室内で温度110〜200℃の延伸ローラまたは加熱プレートに、繊維の延伸ローラまたは加熱プレートへの接触時間が前記した0.5〜1800秒間になるようにして接触させて延伸させた後、室から取り出す方法;
などを採用することができる。
そのうちでも、熱処理時間を必要十分にとれる点、生産性の向上の点から、上記(i)の方法が好ましく採用される。
そのうちでも、本発明のバインダー繊維は、湿式抄造物を製造する際のバインダー繊維として適しており、本発明のバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造することにより、強度、耐水性、地合に優れる湿式抄造物を得ることができる。
その際に、本発明のバインダー繊維の添加割合は、主体繊維の質量に対して5〜40質量%、特に10〜25質量%であることが好ましい。
水性の抄造用原料中での固形分濃度なども特に制限されず、従来既知の抄造技術に準じて調整すればよい。また、抄造装置や抄造条件なども、各々の状況に適したものを採用すればよい。
(i) 以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体を水に溶解して5%水溶液を調製し、それを基体上にキャストしてキャストフィルム(乾燥前の厚さ10μm)をつくり、該キャストフィルムを80℃で、減圧条件下で24時間乾燥して、乾燥した熱可塑性PVA系重合体フィルムを作製した。
(ii) 上記(i)で得られた乾燥後の熱可塑性PVA系重合体フィルムを用いて、DSC(示差走査熱量計)(メトラー社製「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップを熱可塑性PVA系重合体の融点(℃)とした。
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体の粘度平均重合度をJIS K6726に従って測定した。
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体のケン化度を、JIS K6726に準じて測定した。
以下の製造例または比較製造例で得られた熱可塑性PVA系重合体の一部を採取し、それを完全に灰化し、その灰化した試料を硝酸に溶解し、その溶液を用いて、原子吸光光度計(株式会社日立製作所製「Z−5300」)を使用して、ナトリウムイオンの含有量を測定した。
以下の製造例または比較製造例において、合成の途中段階で得られたエチレン/酢酸ビニル共重合体またはエチルビニルエーテル/酢酸ビニル共重合体(ビニルアルコール共重合体にケン化する前の酢酸ビニル共重合体)を測定用試料とし、その試料について1H−NMR(日本電子社製「JEOL GX−500」、500MHz)を使用して、80℃の条件下で測定して、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合(変性割合)(モル%)を求めた。エチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合は、合成の途中段階で得られた前記酢酸ビニル共重合体とそれをケン化して最終的に得られるPVA系重合体とで変わらないので、酢酸ビニル共重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合をもって、各製造例または比較製造例で最終的に得られた熱可塑性PVA系重合体におけるエチレンまたはエチルビニルエーテルの共重合割合とした。
熱可塑性重合体(B)(ポリプロピレン、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6またはポリエチレンテレフタレート)(ペレット状)を用いて、DSC(示差走査熱量計)(パーキンエルマー社製「TA3000」)を使用して、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度10℃/分で300℃まで昇温した後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、そのときの吸熱ピークのピークトップを熱可塑性重合体(B)の融点(℃)とした。
以下の製造例、比較製造例、実施例および比較例における紡糸工程で、紡糸によって100kgの繊維を連続生産する際に生じた断糸回数を数え、断糸回数が3回以内の場合は良好(○)、断糸回数が4〜7回の場合はやや不良(△)、断糸回数が8回以上の場合は不良(×)として評価した。
(i) 芯鞘型、海島型、放射状分割型の複合紡糸繊維のように、繊維の表面状態が点対称であるバインダー繊維では、繊維の任意の側面の5カ所を電子顕微鏡で写真撮影し、各写真について、熱可塑性PVA系重合体の占める面積割合(%)を求めて、5カ所の平均値を採って、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
(ii) サイドバイサイド型の複合繊維のように、繊維の表面状態が点対称でないものでは、繊維の横断面を写真撮影し、繊維の円周において熱可塑性PVA系重合体が占める比率(円周での長さ割合)を、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
(iii) 異形断面繊維のような、繊維の表面状態が非対称で且つ重合体の分布状態が不均一な繊維では、繊維の任意の側面の20カ所を電子顕微鏡で写真撮影し、各写真について、熱可塑性PVA系重合体の占める面積割合(%)を求めて、20カ所の平均値を採って、バインダー繊維表面における熱可塑性PVA系重合体の露出度(%)とした。
バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分(ポリプロピレン、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6またはポリエチレンテレフタレート)の繊維径から換算して求めた。
(i) 以下の実施例または比較例で得られたバインダー繊維から、バインダー繊維中の熱可塑性PVA系重合体の質量が1gとなる量のバインダー繊維を量り採り、それを30℃の水100ml中に完全に浸漬し、液温を30℃に保って20時間静置した。次いで、未溶解の繊維を分離除去し、上澄み液50mlを採取し、それを蒸発皿に入れて95℃に5時間放置して水分を蒸発乾固した後、皿ごと熱風乾燥機(稲葉屋冷熱産業社製)に入れて、95℃で5時間乾燥させ、乾燥後に皿に残った残留物の量W1(g)を量った。
(ii) 上記(i)の残留物には、PVA系重合体以外の無機物が含まれているので、上記(i)で得られた残留物を、600℃の焼成装置に入れて質量減少が最早生じなくなるまで完全に焼成し、焼成後の残分の量W2(g)を測定し、下記の数式により、水中での熱可塑性PVA系重合体の溶出量S(質量%)を求めた。
溶出量S(質量%)={(W1−W2)×100/50}×100
(i) 以下の実施例または比較例で得られたバインダー繊維から、バインダー繊維中の熱可塑性PVA系重合体の質量が1gとなる量のバインダー繊維を量り採り、それを30℃の水100ml中に完全に浸漬し、液温を30℃に保って30分間静置した。次いで、繊維分を濾取し、その繊維分を、サイズ=10cm×10cmの正方形の綿布の中央に載せて四隅を折畳んで包み、それを回転数3000rpmの遠心脱水機(コクサン社製)に入れて10分間遠心脱水して、繊維の表面に付着している水を除去した後、綿布から繊維分を取り出して、その重さWa(g)を測定した。
(ii) 上記(i)で重さWaを測定した繊維分を100℃の熱風乾燥機(稲葉屋冷熱産業社製)に入れて4時間乾燥し、その時の重さWb(g)を測定し、下記の式からバインダー繊維の水中膨潤度(%)を求めた。
バインダー繊維の水中膨潤度(%)={(Wa−Wb)/Wb}×100
(i)乾裂断長(DB):
以下の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、温度23℃、湿度50%RHの調温調湿室で24時間静置した後、湿式抄造シートの幅方向の中央部分から、湿式抄造シートの長さ方向(湿式抄造時のシートの移送方向)に沿って170mm、幅方向に15mmの細長い試験片を直ちに切り取り、その試験片の長さ方向の両端近傍を、2つの把持具を用いて把持長100mmで把持し、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)を使用して2つの把持具の間の間隔(当初100mm)を50mm/分の引張速度で徐々に増加させ、試験片が切断した時に試験片に加わっていた力(強力)DS(N)を読み取り、該強力DS(N)と、湿式抄造シートの坪量W(g/m2)から、下記の数式により、湿式抄造シートの乾裂断長(DB)を求めた。
湿式抄造シートの乾裂断長(DB)(N・m/g)={DS/(15×W)}×1000
以下の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、温度20℃の水中に浸漬して24時間吸水させた後、湿式抄造シートの幅方向の中央部分から、湿式抄造シートの長さ方向(湿式抄造時のシートの移送方向)に沿って170mm、幅方向に15mmの細長い試験片を直ちに切り取り、その試験片の長さ方向の両端近傍を、2つの把持具を用いて把持長100mmで把持し、上記(i)と同じように50mm/分の引張速度で引っ張り試験を行って、試験片が切断した時に試験片に加わっていた力(強力)WS(N)を読み取り、該強力WS(N)と、湿式抄造シートの坪量W(g/m2)から、下記の数式により、湿式抄造シートの湿裂断長(WB)を求めた。
湿式抄造シートの湿裂断長(WB)(N・m/g)={WS/(15×W)}×1000
下記の実施例または比較例で得られた湿式抄造シートを、白色蛍光灯(40型、36W)にかざし、白色蛍光灯と反対の側から湿式抄造シートを目視により観察して、湿式抄造シートに斑の存在が実質的に認められない場合は良好(○)、斑が少し認められた場合はやや不良(△)、斑が目立った場合は不良(×)として評価した。
(1) 撹拌機、窒素ガス導入口、エチレン導入口および重合開始剤添加口を備えた100リットルの加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後、30分間窒素ガスのバブリングにより系内を窒素置換し、次いで、反応槽の圧力が5.9kg/cm2となるようにエチレンを導入した。
(2) 2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)(重合開始剤)をメタノールに溶解した溶液(開始剤濃度2.8g/リットル)を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。
(3) 上記(1)の反応槽の内温を60℃に調整した後、上記(2)で調製した重合開始剤溶液170mlを反応槽に注入して重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽の圧力を5.9kg/cm2に維持するとともに、反応槽の内温を60℃に維持し、さらに上記(2)で調製した開始剤溶液を610ml/hrの割合で反応槽に連続的に添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%に達したので、反応槽を冷却して重合を停止した。
(5) 上記(4)で得られたエチレン変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液の一部を採取し、その溶液にn−ヘキサンを加えてエチレン変性ポリ酢酸ビニルを沈殿させ、沈殿をアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って、精製エチレン変性ポリ酢酸ビニルを得た。この精製エチレン変性ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、前記した方法でエチレンの共重合割合を測定したところ、エチレンの共重合割合は8.6モル%であった。
(7) 水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加して約2分後にゲル化物が生成したので、該ゲル化物を溶液中に入れたまま粉砕機で粉砕して更に60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。
(8) フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認した後、白色の固体状のエチレン変性PVA系重合体を濾別して回収し、それにメタノール1000gを加えて室温度3時間放置して洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水してエチレン変性PVA系重合体を回収し、それを乾燥機中で70℃に2日間放置して、乾燥したエチレン変性PVA系重合体を得た。
(10) 上記(8)で得られたエチレン変性PVA系重合体100質量部に、可塑剤(ソルビトール1モルにエチレンオキサイド2モルを付加した化合物)5質量部を添加して、230℃で溶融混合して変性PVA系重合体組成物を調製した。この組成物を単独で用いて、紡糸装置を用いて240℃で溶融紡糸し、紡糸原糸を引き続いてローラープレート方式で温度130℃、3倍に延伸した後、100m/分の速度で巻き取って、70dtex/24fの変性PVA系重合体のマルチフィラメントを製造した。その際の紡糸工程性を上記した方法で評価したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(1) 酢酸ビニルおよびエチレンを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の工程を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチレン変性PVA系重合体をそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれのエチレン変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数はいずれも0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(1) 酢酸ビニルのみを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するPVA系重合体を製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(1) 酢酸ビニルおよびエチルビニルエーテルを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチルビニルエーテル変性PVA系重合体を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエチルビニルエーテル変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチルビニルエーテル変性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)を製造したところ、紡糸によって100kgのマルチフィラメントを連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(1) 酢酸ビニルおよびエチレンを原料単量体として用いて、製造例1の(1)〜(8)と同様の操作を行って、下記の表1に示す融点、粘度平均重合度、ケン化度、ナトリウムイオン含有量を有するエチレン変性PVA系重合体をそれぞれ製造した。
(2) 上記(2)で得られたそれぞれのエチレン変性PVA系重合体を用いて、製造例1の(10)と同じ操作を行って、エチレン塑性PVA系重合体単独からなるマルチフィラメント(70dtex/24f)をそれぞれ製造した。
その結果、下記の表1に示すように、100kgのマルチフィラメントを連続生産したときに、比較製造例1および2ではエチレン変性PVA系重合体の粘度平均重合体が200〜500の範囲から外れているために8回以上の断糸が発生し、比較製造例3ではエチレン平均PVA系重合体のケン化度が90モル%未満であるために6回の断糸が発生し、比較製造例5および6ではエチレン変性PVA系重合体におけるナトリウムイオン含有量が3〜10000ppmの範囲から外れているために8回以上の断糸が発生した。
また、比較製造例4では、変性PVA系重合体の融点が156℃と低いために、紡出したマルチフィラメントの解舒性が不良で延伸を行うことができなかった。
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体を海成分として用い、ポリプロピレン(出光興産株式会社製「Y−2005GP」、融点161℃)を島成分として用い、島数が16個となるような溶融複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、該紡糸原糸を1段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度90℃)に導いて3倍に延伸し(1段目の熱風炉での糸の滞在時間6秒)、次に第1段目の熱風炉に隣接して設けた2段目の熱風炉(長さ3m、炉内温度140℃、炉内湿度0%)に導いて140℃で熱処理し(2段目の熱風炉での糸の滞在時間2.6秒)、70m/分で巻き取って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、その繊維表面におけるエチレン変性PVA系重合体の露出割合、複合紡糸繊維(バインダー繊維)中でのポリプロピレンよりなる個々の島の単繊維繊度、水中での変性PVA系重合体の溶出量および水中膨潤度を上記した方法で算出したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(1) 島成分として、ポリプロピレンの代わりに、イソフタル酸10モル%変性ポリエチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、融点225℃)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 島成分として、ポリプロピレンの代わりに、ナイロン6(宇部興産株式会社製「1011FK」、融点220℃)を用いた以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ナイロン6よりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体を鞘成分として用い、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを芯成分として用い、芯鞘型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、エチレン変性PVA系重合体を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする、円形の横断面を有する芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体と、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを用い、層状11分割型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、11層のうち、両方の表面層を含めた6層がエチレン変性PVA系重合体で、残りの5層がポリプロピレンよりなる、楕円形の横断面を有する層状貼り合せ型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 製造例1で製造したエチレン変性PVA系重合体と、実施例1で用いたのと同じポリプロピレンを用い、放射状18分割型の複合紡糸用口金を使用して、エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレン=50:50の質量比で供給して、240℃で口金から紡出した後(口金からの全紡出量24g/分)、紡糸に引き続いて、実施例1におけるのと同じ延伸および熱処理を行って、エチレン変性PVA系重合体とポリプロピレンが放射状に18層で交互に貼り合わさった、円形の横断面を有する層状貼り合せ型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 複合紡糸繊維の単繊維繊度が12.0dtexとなるようにした以外は、実施例1と同じ方法を採用して、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;288dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 複合紡糸繊維の単繊維繊度が0.7dtexとなるようにした以外は、実施例1と同じ方法を採用して、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;17dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 海成分(エチレン変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を50:50から70:30(実施例9)または30:70(実施例10)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの実施例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 海成分として、製造例1で得られたエチレン変性PVA系重合体の代わりに、製造例2で得られたエチレン変性PVA系重合体を用い、2段目の熱風炉の炉内温度を125℃に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好で全く問題がなかった。
(2) 上記(1)で得られた複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 海成分(エチレン変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を50:50から、95:5(比較例1)または5:95(比較例2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの比較例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 2段目の熱風炉の炉内温度を30℃(比較例3)または215℃(比較例4)に変更した以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数はいずれの比較例も0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
島成分として、ポリプロピレンの代わりに、ポリエチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、融点254℃)を用い、溶融複合紡糸温度を295℃とし、それ以外は実施例1と同様にして海島型の複合紡糸繊維の製造を行ったところ、紡糸中にエチレン変性PVA系重合体の熱分解が起こり、複合紡糸繊維を製造することができなかった。
(1) 単繊維繊度が10dtexの芯鞘型複合紡糸繊維を製造した以外は実施例4と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体を鞘成分とし、ポリプロピレンを芯成分とする、円形の横断面を有する芯鞘型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;240dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 島数を100個に変更し、海成分(変性PVA系重合体):島成分(ポリプロピレン)の質量比を85:15に変更し、得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度を0.5dtexに変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる100個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;12dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性及び延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度が0.09dtexになるようにし、それ以外は実施例1と同様の操作を採用して海島型の複合紡糸繊維を製造しようとしたが、繊維を安定に巻き取ることができず、繊維を実質的に生産することができなかった。
(1) 得られる複合紡糸繊維の単繊維繊度が16.0dtexになるようにした以外は、実施例1と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体よりなる海成分中に、ポリプロピレンよりなる16個の島が存在する、円形の横断面を有する海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;384dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) エチレン変性PVA系重合体:ポリプロピレンの質量比を30:70に変更した以外は、実施例5と同じ操作を行って、エチレン変性PVA系重合体層を両方の表面に有する、層状11分割型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント;72dtex/24f)を製造した。この溶融複合紡糸によって100kgの海島型の複合紡糸繊維(バインダー繊維;マルチフィラメント)を連続生産する際に生じた断糸回数は0回であり、紡糸工程性、連続ランニング性および延伸性は良好であった。
(2) 上記(1)で得られたそれぞれの複合紡糸繊維(バインダー繊維)について、実施例1の(2)と同様にして繊維物性などを測定した結果を下記の表2に示す。
(1) 上記の実施例1で得られたバインダー繊維(複合紡糸繊維)を繊維長3mmに切断して短繊維にし、この短繊維10質量部に、主体繊維としてPVA繊維(株式会社クラレ製「VPB103」、単繊維繊度1.2dtex、繊維長5mm、水不溶性)90質量部を混合し、該混合した繊維を水に均一に分散させて、固形分濃度0.2質量%の水性スラリーを調製した。
(2) 上記(1)で調製した水性スラリーを用いて、TAPPI式湿式抄造装置(熊谷理器株式会社製)を使用して湿式抄造し、次いで90℃のドラム型乾燥装置を用いて乾燥して、坪量10g/m2の湿式抄造シートを製造した。
(3) 上記(2)で得られた湿式抄造シートの乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)を上記した方法で測定するとともに、湿裂断長(WS)と乾裂断長(DS)の比(WS/DS)を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた湿式抄造シートの地合を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
(1) 実施例1で得られたバインダー繊維の代わりに、実施例2〜11、比較例1〜4、6〜7および9〜10で得られたバインダー繊維を繊維長3mmに切断したものをそれぞれ用いた以外は、実施例12と同様にして、坪量10g/m2の湿式抄造シートを製造した。
(2) 上記(2)で得られたそれぞれの湿式抄造シートの乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)を上記した方法で測定するとともに、湿裂断長(WS)と乾裂断長(DS)の比(WS/DS)を算出したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られたそれぞれの湿式抄造シートの地合を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
それに対して、比較例1および2のバインダー繊維は、熱可塑性PVA系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10の範囲から外れているために、該比較例1および2のバインダー繊維を用いて製造した比較例11および比較例12の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っており、該比較例1および2のバインダー繊維は十分なバインダー作用を示さない。
比較例4のバインダー繊維は水中膨潤度が70%よりも小さいことにより、該比較例4のバインダー繊維を用いて製造した比較例14の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っており、該比較例4のバインダー繊維はバインダー繊維として適さない。
比較例6のバインダー繊維は、鞘成分の単繊維繊度が4dtexを超えているため、該比較例6のバインダー繊維を用いて製造した比較例15の湿式抄造シートは、凹凸が大きく、地合に劣っている。
比較例7のバインダー繊維は、海成分の単繊維繊度が0.001dtex未満であるため、該比較例7のバインダー繊維を用いて製造した比較例16の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っている。
比較例9のバインダー繊維は、単繊維繊度が15dtexを超えているため、該比較例9のバインダー繊維を用いて製造した比較例17の湿式抄造シートは、凹凸が大きく、地合に劣っている。
比較例10のバインダー繊維は、繊維表面における熱可塑性PVA系重合体(A)の露出割合が30%よりも少ないために、該比較例10のバインダー繊維を用いて製造した比較例18の湿式抄造シートは、乾裂断長(DS)および湿裂断長(WS)の値が実施例12〜22で得られた湿式抄造シートに比べて大幅に低く、湿式抄造シートは強度が小さく、しかも耐湿性に劣っている。
本発明のバインダー繊維を用いて湿式抄造物を製造することにより、強度、耐水性および地合に優れる湿式抄造物を提供することができる。
Claims (6)
- (i) 融点が160〜230℃の熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)が、複合または混合してなるバインダー繊維であって、
(ii) バインダー繊維を構成する熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%、およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜10000ppmの熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体であり;
(iii) バインダー繊維における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A):熱可塑性重合体(B)の質量比が10:90〜90:10であり;
(iv) 繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上;
(v) バインダー繊維の単繊維繊度が0.1〜15dtex;
(vi) バインダー繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtex;
(vi) 水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量が10質量%以下で;且つ、
(vii) 水中膨潤度が70〜300%である;
ことを特徴とするバインダー繊維。 - 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)が、炭素数4以下のオレフィンに由来する構造単位および/またはビニルエーテルに由来する構造単位を1〜20モル%の割合で有する熱可塑性の変性ポリビニルアルコール系重合体である請求項1に記載のバインダー繊維。
- 熱可塑性重合体(B)が、繊維形成性のポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体およびポリアミド系重合体の少なくとも1種である請求項1または2に記載のバインダー繊維。
- 湿式抄造用のバインダー繊維である請求項1〜3のいずれか1項に記載のバインダー繊維。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー繊維の少なくとも1種を用いて製造した湿式抄造物。
- 熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)を用いて両重合体が複合または混合してなるバインダー繊維を製造する方法であって、
・融点が160〜230℃、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.9モル%およびナトリウムイオンに換算したアルカリ金属イオンの含有量が3〜100 00ppmである熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)と、融点が240℃以下の他の熱可塑性重合体(B)を、10:90〜90:10の質量比で用いて、溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後、延伸するかまたは延伸と熱処理を行って、繊維表面における熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の露出割合が30%以上、単繊維繊度が0.1〜15dtex、および繊維中での個々の熱可塑性重合体(B)成分の単繊維繊度が0.001〜4dtexであるバインダー繊維を製造し;且つ、
・溶融複合紡糸または溶融混合紡糸した後の前記延伸および/または熱処理を、乾燥条件下に、110〜200℃の温度で0.5〜1800秒間行って、バインダー繊維の水中での熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)の溶出量を10質量%以下、および水中膨潤度を70〜300%にする;
ことを特徴とするバインダー繊維の製造方法。
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