JP2006321596A - トラバース装置の駆動構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 トラバースガイドの駆動源の複数錘での共通化による簡素化と、全錘を停止させずに特定の錘のメンテナンスを可能にすることとを両立させる。
【解決手段】 複数錘のトラバース装置6を共通のトラバース駆動軸15で駆動する構成であって、それぞれの錘のトラバース装置6と前記トラバース駆動軸15との間で動力を断接するベルトクラッチ62を錘ごとに設ける。また、このベルトクラッチ62を錘ごとに手動で断接操作することが可能な操作レバー53を、それぞれの錘に設ける。
【選択図】 図2

Description

本発明は、複数錘のユニットを有する繊維機械において、各錘の糸を綾振りさせるために設けられたトラバース装置の駆動構造に関する。
この種のトラバース装置の駆動構造は、例えば特許文献1に開示される。この特許文献1の構成では、トラバースガイドをトラバースロッドに取着するとともに、このトラバースロッドをモータやシリンダ等の正逆運動部材に連結することで、複数錘の糸を同時に綾振りさせるように構成している。
この構成は、1つの正逆運動部材で全錘をトラバース駆動することができ、駆動源の構成を簡素化できる点で有利である。
特公平2−34865号公報(第3図等)
しかしながら、トラバースガイドは高速で往復運動を繰り返すために高負荷が加わりやすく、いずれかの錘でトラバースガイドが破損して綾振不能になったり、あるいはトラバースガイドが摩耗あるいは変形してパッケージの巻き形状の不良の原因になったりすることが多い。
トラバースガイドに不具合が生じた場合は、当該トラバースガイドを修理又は交換することになるが、特許文献1のように全錘のトラバースガイドがトラバースロッドで連結されている構成では、修理・交換のために、そのトラバースロッドを停止させざるを得ない。即ち、1錘のトラバースガイドのメンテナンスのために全錘のトラバースを停止させなければならず、稼動効率を低下させてしまう。
本発明は以上の点に鑑みてされたものであり、その目的は、トラバースガイドの駆動源の複数錘での共通化による簡素化と、全錘を停止させずに特定の錘をメンテナンスできることとを両立させることにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
◆本発明の観点によれば、複数錘のトラバース装置を共通のトラバース駆動軸で駆動する構成であって、それぞれの錘のトラバース装置と前記トラバース駆動軸との間で動力を断接する動力断接手段を錘ごとに設けた、トラバース装置の駆動構造が提供される。
これにより、トラバース装置の駆動力の供給源を複数錘で共通化することにより駆動機構の簡素化を図れる。また一方で、特定の錘のトラバース装置に不具合が生じてメンテナンスが必要になっても、動力断接手段を断状態に切り換えることでその特定の錘のトラバース装置だけを停止させることができ、他の錘の稼働を継続しながらメンテナンス作業を行うことができる。
◆前記のトラバース装置の駆動構造においては、前記動力断接手段を錘ごとに手動で断接操作することが可能な操作部材をそれぞれの錘に設けることが好ましい。
これにより、各錘ごとに操作部材によって動力断接手段を断接操作することで、各錘ごとのトラバース装置の駆動/停止を容易に切り換えることができ、メンテナンス作業性を向上させることができる。
◆前記のトラバース装置の駆動構造においては、以下のように構成することが好ましい。前記操作部材は、その上部に手を掛けて操作することが可能に構成されている。また、この操作部材の上端位置は前記トラバース駆動軸よりも高い位置にある。
これにより、手を差し込み易い位置に操作部材の手を掛ける部分が配置されるので、操作部材を容易に操作でき、操作性を向上させることができる。
◆前記のトラバース装置の駆動構造においては、前記動力断接手段は無端状のベルトを備え、当該動力断接手段が接状態とされたときは、前記トラバース駆動軸の動力は前記ベルトを介して前記トラバース装置へ伝達されることが好ましい。
これにより、動力断接手段をベルトを用いた簡素な構成とすることができる。また、いったん断状態とされた動力断接手段を再び接状態へ切り換えるとき、常時駆動しているトラバース駆動軸にベルトが接触し始めるのであるが、その際にベルトが滑るので、トラバース装置への駆動力の急激な伝達が緩衝されて、トラバース装置の故障を低減することができる。
◆前記のトラバース装置の駆動構造においては、前記動力断接手段が断状態とされるとき、その錘のトラバース装置の本体からの離脱が許容されるように構成されていることが好ましい。
これにより、トラバース装置を本体側から取り外すことで当該トラバース装置に極めて容易にアクセスできるようになるので、メンテナンス性が顕著に向上される。
◆前記のトラバース装置の駆動構造においては、以下のように構成することが好ましい。前記動力断接手段は無端状のベルトを備えるとともに、トラバース装置の本体からの離脱時にはこのベルトも本体側から離脱するように構成する。また、前記動力断接手段は、前記ベルトを前記トラバース駆動軸から離間させつつ当該トラバース駆動軸の一側に位置させる断状態と、前記ベルトを前記トラバース駆動軸の他側に回り込むように湾曲させることでその外周面を前記トラバース駆動軸の外周面に巻き付かせる接状態との間で、切換可能に構成されている。
なお、「トラバース駆動軸の外周面」とは、トラバース駆動軸そのものの外周面の場合のほか、トラバース駆動軸と一体的に回転するよう固定された別部材の外周面の場合も含む。
これにより、トラバース駆動軸にベルトの外周側を巻き付かせることで接状態とし、当該巻付きの解除により断状態とする構成であるから、ベルトの内側でなく外側にトラバース駆動軸が配置されることとなり、トラバース装置の本体側からの離脱の際にベルトが引っ掛かって邪魔になることがない。従って、トラバース装置の本体側からの離脱を容易に行うことができる。
◆前記のトラバース装置の駆動構造は、例えば、仮撚加工機の巻取部においてボビンに供給される糸を綾振るトラバース装置を駆動する場合に適用することができる。
これにより、上記のような有用な効果を発揮する構成を仮撚加工機の巻取部で使用することができる。
以下、図面を参照しつつ、トラバース装置の駆動構造の一実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る延伸仮撚加工機の全体側面図である。
図1において、延伸仮撚加工機100は、給糸パッケージ101を保持する給糸部1Aと、この給糸部1Aの給糸パッケージ101から解舒されて供給される糸2に延伸仮撚加工処理を施す加工処理部1Bと、加工処理された糸2を巻き取ってパッケージ17を形成する巻取部1Cと、を主要な構成として備えている。
また、延伸仮撚加工機100は、上述した給糸部1Aと加工処理部1Bと巻取部1Cとを有する加工処理ユニット(錘)を複数備えている。これらの複数の錘は、図1の紙面に対して垂直な方向に並べて設けられている。なお、給糸部1Aおよび巻取部1Cは、設置スペースを小さくするために2〜4錘分を上下に重ねて配置されている。
各錘の給糸部1Aには、給糸パッケージ101を保持するペグ201が設けられ、各ペグ201は複数錘で共通のクリールスタンド202に取り付けられている。
各錘の加工処理部1Bは、糸2の流れに沿って順に、第1フィードローラ110と、1次ヒータ102と、冷却器103と、仮撚装置104と、第2フィードローラ111と、2次ヒータ105と、第3フィードローラ112と、を備えている。
第1〜第3のフィードローラ110〜112は糸2を送るためのものであり、第2フィードローラ111の糸送り速度は第1フィードローラ110のそれよりも速くなるように、また、第3フィードローラ112の糸送り速度は第2フィードローラ111のそれよりも遅くなるように、各糸送り速度が設定されている。このため、第1フィードローラ110と第2フィードローラ111との間で糸2は延伸される一方、第2フィードローラ111と第3フィードローラ112との間で糸2は弛緩される。
第1フィードローラ110と第2フィードローラ111との間で延伸された糸2には仮撚装置104にて撚が付与される。より具体的には、第1フィードローラ110と仮撚装置104との間で糸2が加撚される。延伸されつつ加撚された糸2は、1次ヒータ102で熱セットされた後、冷却器103(冷却プレート)で冷却される。加撚および熱セットされた糸2は、仮撚装置104を通過した後、第2フィードローラ111に至るまでに解撚される。このようにして延伸仮撚加工された糸2は、2次ヒータ105で弛緩熱処理され、巻取部1Cで巻き取られてパッケージ17を形成する。
巻取部1Cは、2次ヒータ105を備えたセンター機枠の片側に設けられている。巻取部1Cの片側(2次ヒータ105が設けられている側でない片側)には、作業員が巻取部1Cや仮撚装置104等を保守管理するための作業空間である作業用通路120が設けられている。この作業用通路120は、例えば、巻取部1Cで満巻となったパッケージの回収作業や、巻取部1Cのトラバース装置(後述)のメンテナンス作業の際に用いられる。
次に、図2及び図3を参照して、巻取部1Cの構成について説明する。図2は延伸仮撚加工機の巻取部により糸の巻取りが開始される様子を示す側面模式図、図3は図2の状態から糸が巻き取られて形成されたパッケージを玉揚する様子を示す側面模式図である。
図2には図1の破線で囲った部分に相当する構成(1錘分の巻取部1C)が拡大図として示され、この図2において巻取部1Cは、延伸仮撚加工処理が施された糸2をボビン3に巻き取るとともに、所定長巻き取られて満巻になると、仕上がり後のパッケージ17(図3)を玉揚するように構成されている。
この巻取部1Cは、図示しない前記センター機枠に取り付けられた基体90に巻取装置50と自動玉揚装置60とを備えて構成されており、巻取装置50及び自動玉揚装置60は、それぞれの錘(巻取部1C)ごとに個別に備えられている。この自動玉揚装置60は、満巻となったパッケージ17を図3に示すように巻取装置50から取り外し、新たな空のボビン3を巻取装置50に装着し、その新たな空のボビン3に糸2を装着して、糸2を巻取装置50にて連続して巻き取れるようにする機能を有している。
前記基体90は、図略のセンター機枠に固着された本体側の第1フレーム91と、この第1フレーム91に対し脱着可能に固定された第2フレーム92と、を備えている。そして、2つのフレーム91・92のうち少なくとも第2フレーム92は各錘ごとに設けられており、巻取部1Cを構成する各種部品は、この第1フレーム91と第2フレーム92の2つのフレームに振り分けて配置されている。
巻取装置50は、糸2を巻き取るボビン3を回転自在に挟持するクレードル(ボビン支持部材)40と、糸2を巻き取るために前記ボビン3あるいはボビン3の外周に巻成された糸層の外周面に接触して一定方向に回転させる接触ローラ5と、前記ボビン3側へ供給される糸2を綾振るトラバース装置6と、を主要な構成として備えている。以下、巻取装置50の構成について詳述する。
クレードル40は、左右一対のクレードルアーム4・4からなり(ただし図面では一側のみ図示)、それぞれのクレードルアーム4の先端側にボビンホルダ11が取り付けられている。ボビン3は、このボビンホルダ11を介して、クレードル40に対し回転自在に支持(挟持)される。また、ボビンホルダ11は、ボビン3を挟持する状態と、ボビン3の脱着のために挟持を解除する状態との間で、切換可能に構成されている。
上記クレードルアーム4・4の基端部は、基体90を構成する第2フレーム92に対して支軸12を介して枢支され、この結果、クレードル40が揺動自在とされている。また、左右のクレードルアーム4・4の先端部同士はクロスメンバ14によって連結されている。
また、クレードルアーム4には図示しない付勢バネが連結されており、巻取過程の初期には、このクレードルアーム4を後述の接触ローラ5へ近づく方向へ付勢するようにしている。なお、巻取りがある程度進んだ後は、巻太った糸層の自重で接触ローラ5に対する接圧が過大になるのを防止するために、接触ローラ5から離れる方向(糸層の自重をキャンセルする方向)のバネ力をクレードルアーム4に作用させることもできるようになっている。更に、前記クレードル40に対しては、後述するクレードルリフティング部7の駆動伝達アーム72が連結されている。
接触ローラ5は第1フレーム91側に支持されており、前記ボビン3(あるいは、そのボビン3に巻き取られて形成されている糸層)の周面に接触しながら駆動されることで、当該ボビン3を回転させ、これによりボビン3に糸2を巻き取ることができるように構成されている。この接触ローラ5は、複数の錘に跨るようにして延在して配置される、複数の錘で共通のローラ駆動軸13に固定されている。
トラバース装置6は、ボビン3側に供給される糸2を綾振るためのものであって、前記接触ローラ5とボビン3との接触位置のすぐ上流側(糸2の送られる方向における上流側)に設けられている。このトラバース装置6は、第2フレーム92側に固着されたカムボックス41を備え、このカムボックス41の内部に、円柱状の綾振ドラム42と、この綾振ドラム42の周面に形成された図略のカム溝に係合しつつ左右スライド移動自在に設けられた摺動体43と、が収容されている。綾振ドラム42は、カムボックス41に回転自在に支持されている。また、前記摺動体43にはトラバースガイド44が連結されて、このトラバースガイド44が糸2に係合しつつ左右に往復移動することで、糸2を綾振りできるようになっている。
また、上記トラバース装置6を駆動するためにトラバース駆動軸15が配置され、このトラバース駆動軸15は複数の錘に跨るようにして延在して配置され、複数の錘で共通とされている。このトラバース駆動軸15は、(第2フレーム92側に配置された)綾振ドラム42の軸心と異なる位置に配置されるとともに、第1フレーム91に回転自在に取り付けられている。このトラバース駆動軸15の軸方向一端には、駆動力発生源としての図略の電動モータの出力軸が連結されている。
前記綾振ドラム42にはカム軸45が軸線を一致させつつ固定されており、このカム軸45はカムボックス41の一側の側面から図2の紙面手前に向かって突出されるとともに、その突出部分には入力プーリ46が固着される。また、カムボックス41の一側(前記入力プーリ46が設置されている側)で、カムボックス41の外側には、プーリ支持アーム47が備えられている。このプーリ支持アーム47の基端は、前記第2フレーム92に対し支軸48を介して回動自在に支持されている。この支軸48は、前記入力プーリ46のほぼ直下方の位置に設置されている。
前記プーリ支持アーム47の基端には第1アイドラプーリ51が回転自在に支持され、また、プーリ支持アーム47の先端には第2アイドラプーリ52が回転自在に支持される。上記第1アイドラプーリ51は、前記支軸48と軸線を一致させるように配置される。
そして、前記入力プーリ46、第1アイドラプーリ51、第2アイドラプーリ52、及びトラバース駆動軸15の四者に、無端状で可撓性を有する巻掛け伝動体としての伝動ベルト(ベルト)49が巻回される。この伝動ベルト49は、その内周面を前記入力プーリ46、第1アイドラプーリ51及び第2アイドラプーリ52に巻き掛けるとともに、その外周面を前記トラバース駆動軸15に巻き掛かるように接触させている。
言い換えれば、伝動ベルト49の上側の略半分は、前記トラバース駆動軸15よりも作業用通路120側に位置させるとともに、下側の略半分は、トラバース駆動軸15の反作業用通路側に回り込むように湾曲させるように、入力プーリ46、第1アイドラプーリ51、及び第2アイドラプーリ52の位置を設定している。この結果、前記トラバース駆動軸15の外周面に伝動ベルト49の外周面が巻き掛かるように接触することになる。
この結果、トラバース駆動軸15の駆動力を伝動ベルト49及び入力プーリ46を介して綾振ドラム42に図2のように伝達して、トラバース装置6を駆動し、トラバースガイド44を左右往復駆動できるようになっている。
また、基体90を構成する前記第2フレーム92には、操作レバー(操作部材)53が各錘ごとに揺動自在に備えられている。この操作レバー53は長手方向を略上下方向に向けて配置され、その上下方向中途部が、前記第2フレーム92に対し支軸54を介して回動自在に支持されている。この操作レバー53は、その上部側に手を掛けて操作することができるように構成されており、当該操作レバー53の上端部が前記トラバース駆動軸15よりも高く位置するように、前記支軸54から上方へ延設させた構成となっている。
前記操作レバー53の下端部には、棒状の引張リンク55の基端が回動自在に連結される。また、この引張リンク55は、前記プーリ支持アーム47の適宜箇所に設けられた回動軸56に設けられた孔57に挿通され、回動軸56に対して引張リンク55が摺動自在とされている。この引張リンク55の先端には、当該引張リンク55が上記孔57から抜けるのを防止するための規制ピン58が固着されている。
また更に、前記引張リンク55の基端と前記回動軸56との間には、コイルバネ状のテンションバネ59が弾設される。このテンションバネ59は押し縮められた状態で引張リンク55の外周に配置されており、前記回動軸56に対し、前記引張リンク55の基端から離れる方向の付勢力(言い換えれば、前記プーリ支持アーム47を支軸48まわりに図2における反時計方向へ回動させる付勢力)を常時作用させている。こうすることで、伝動ベルト49に適宜の張力を付与し、伝動ベルト49を介した動力の伝達を確実なものにしている。
カムボックス41の側面の適宜位置には第1フック81が設けられて、この第1フック81は前記操作レバー53に対し係脱自在とされており、前記テンションバネ59のバネ力に抗して前記操作レバー53を図2で示した操作位置(接続位置)に保持できるようになっている。また、第2フレーム92には更に第2フック82が設けられて、この第2フック82は、図2の接続位置から図4の操作位置(遮断位置)へ切り換えられた操作レバー53に対し係合できるようになっている。即ち、2つのフック81・82は、操作レバー53の操作位置保持手段としての役割を果たす。
これら、カム軸45、入力プーリ46、プーリ支持アーム47、第1アイドラプーリ51、第2アイドラプーリ52、伝動ベルト49、操作レバー53等により、トラバース駆動軸15の動力をトラバース装置6に対して断接するベルトクラッチ(動力断接手段)62が構成される。このベルトクラッチ62は、各錘の巻取部1Cごとに設けられている。
また自動玉揚装置60は、前記クレードル40を錘ごとに個別に回動させる駆動部としてのクレードルリフティング部7と、空のボビン3を複数ストックしておくためのストッカ10と、巻取装置50に導かれた糸2の端部を吸引保持し、その糸端を前記クレードル40に挟持された空のボビン3に掛ける糸掛け手段(図示せず)と、を主要な構成として備えている。この自動玉揚装置60は、前記ストッカ10を除いて、前記基体90のうち第2フレーム92側に取り付けられている。
そして、前記クレードルリフティング部7は、玉揚げ時に図3に示すようにクレードル40を回動させるように構成されている。このクレードルリフティング部7は、駆動用カム71と、前記クレードル40を構成する一方のクレードルアーム4上の適宜位置と前記駆動用カム71とを連結する駆動伝達アーム72と、を備えている。駆動用カム71の近傍位置には玉揚駆動軸16が配置され、この玉揚駆動軸16と前記駆動用カム71とが、適宜のクラッチ機構によって連結されている。
玉揚駆動軸16は前記ローラ駆動軸13やトラバース駆動軸15と同様に、複数の錘に跨るようにして延在して配置され、複数の錘で共通とされている。そして、玉揚駆動軸16からの動力は前記クラッチ機構によって、各錘ごとにクレードルリフティング部7に対して適宜断接されるようになっている。玉揚駆動軸16は、第1フレーム91側に取り付けられている。
以上の構成による糸2の巻取り及び玉揚について説明する。まず巻取過程から説明すると、図2の状態では、クレードル40にセットされたボビン3の外周面には予め糸2が掛けられており、クレードルアーム4に取り付けられた図示しない付勢バネによって、ボビン3は接触ローラ5に接触する。ボビン3は、ローラ駆動軸13からの駆動力により常時一定の速度で回転している接触ローラ5に対し、前記付勢バネのバネ力をもって、或いはボビン3に既に巻き取られた糸層の自重をもって圧接されることで回転駆動され、糸2をボビン3の外周面へ巻き取っていく。
これと同時に、トラバース駆動軸15の動力が伝動ベルト49によって入力プーリ46へ伝達されるので、綾振ドラム42は回転し、ボビン3側へ供給されて巻き取られる糸2をトラバースガイド44によって綾振る。なお、巻取りが進むにつれて発生する巻太りは、クレードル40のクレードルアーム4が前記付勢バネに抗して上昇回動することで吸収される。
この巻取過程においては、クレードルリフティング部7の前記クラッチ機構は断状態とされており、玉揚駆動軸16の動力はクレードルリフティング部7へ入力されない。
糸2がボビン3に所定長巻き取られてパッケージ(満巻パッケージ)17が形成された状態が図3に示され、この状態になると巻取過程から玉揚過程へ移行し、自動玉揚装置60は、パッケージ17に繋がる糸2を図示しないカッタによって切断し、給糸パッケージ101から供給される糸2の端を図略の吸引ノズル(糸吸引手段)によって吸引保持する。
また、これとほぼ同時に、前記クレードルリフティング部7のクラッチ機構を接状態にして、駆動用カム71と玉揚駆動軸16とを連結させる。するとクレードル40は、駆動伝達アーム72によって押し上げられるようにして若干回動し、パッケージ17が若干持ち上げられて接触ローラ5との接触を解除する。
その後、ボビンホルダ11が挟持状態から挟持解除状態へ切り換えられる。挟持が解除されたボビン3は、一対のクレードルアーム4・4の互いに対向する面にそれぞれ凹状に形成された払出し路9によってガイドされながら自重で転がり、第2フレーム92の作業用通路120に近い側に形成されている待機凹部8で静止する。こうして満巻状態のパッケージ17が待機位置Qまで払い出され、この待機位置Qのパッケージ17は作業員によって回収されて次工程へ送られる。
上記のパッケージ17の払出し後は、クレードル40がクレードルリフティング部7によって更に上昇され、そのボビンホルダ11が、上方のストッカ10において待機されている空のボビン3に相当する位置(受取位置R)まで到達し、ボビンホルダ11を再び挟持状態にして空のボビン3を保持する。
こうして新しいボビン3の供給をストッカ10から受けたクレードル40は、クレードルリフティング部7の駆動用カム71が更に回転することによって下降され、ボビン3の外周面に接触ローラ5が接触する。この結果、新しいボビン3が回転を始める。そして、図略の吸引手段により保持されていた糸2の糸端は、図示しない糸掛け装置(糸掛け手段)によって、回転するボビン3に掛けられる。こうして再び糸2の巻取りが開始される。
次に、ベルトクラッチ62の切換について説明する。このベルトクラッチ62は、前述の巻取りや玉揚を行う通常時においては、ベルトクラッチ62は図2や図3に示す状態(接状態)とされ、トラバース駆動軸15の動力を伝動ベルト49を介して綾振ドラム42へ伝達している。
しかしながら、トラバース装置6は、高速で巻き取られる糸2を綾振るために高速での往復運動を常時繰り返すので、トラバース装置6を構成する各種部材(特に、前記摺動体43やトラバースガイド44)の負担は大きい。従って、トラバース装置6においては、摺動体43等の各種部材が破損して綾振が不可能になったり、トラバースガイド44が損耗等により変形してパッケージ17の形状不良等の原因となることが少なくない。従って、延伸仮撚加工機100を運用するにあたっては、各錘のトラバース装置6に対してメンテナンスを頻繁に行うことが必要になってくる。
この点、本実施形態では、その不具合を起こした錘における前記操作レバー53を操作して前記ベルトクラッチ62を断状態(トラバース駆動軸15からトラバース装置6へ動力が伝達されない状態)に切り換えることで、トラバース装置6への動力の伝達を当該錘についてだけ断ち、トラバース装置6を特定の錘だけ停止させてメンテナンス作業が行えるようになっている。
以下、操作レバー53によるベルトクラッチ62の切換操作とメンテナンス作業について説明する。図4は、メンテナンスのために操作レバーが遮断位置へ操作されてベルトクラッチが断状態とされた様子を示す側面模式図である。図5は、図4の状態からトラバース装置を本体側から離脱させる様子を示す説明図である。
即ち、巻取りや玉揚を行う通常時では操作レバー53は略起立姿勢(接続位置)となっており、この状態で第1フック81に係合されて止められている。この状態からトラバース装置6を停止させるには、操作レバー53の上部を手で掴んで第1フック81から外し、図4のように作業用通路120からみて奥側に倒すように傾斜させ、遮断位置とする。なお、上述したように操作レバー53はトラバース駆動軸15よりも高い位置まで上方に延出されているから、作業員は作業用通路120側から手を差し込むことで操作レバー53の前記上方延出部分に容易に手を掛けることができ、操作が容易とされている。
操作レバー53を上記のように遮断位置まで傾倒操作すると、当該操作レバー53の下端部が引張リンク55を引っ張り、やがて規制ピン58が回動軸56に接当するので、回動軸56が引張リンク55によって引っ張られる。
すると、図4に示すようにプーリ支持アーム47が時計回りに回動し、第2アイドラプーリ52が円弧軌跡を描いて移動して、入力プーリ46、第1アイドラプーリ51、第2アイドラプーリ52の三者が、略上下方向の同一直線上にほぼ並んだ状態となる。このように、揺動自在なプーリ支持アーム47を含むプーリ位置切換機構によって第2アイドラプーリ52の位置が変更される結果、伝動ベルト49はトラバース駆動軸15への巻き掛かりを解除してトラバース駆動軸15から離間し、略上下方向に真っ直ぐで細長い状態になる。
なお、操作レバー53を遮断位置とした後は、操作レバー53を第2フック82に係合させて、当該遮断位置から操作レバー53が不意に移動しないようにする。このようにしてベルトクラッチ62の断状態が実現され、トラバース装置6はトラバース駆動軸15からの動力が断たれて停止する。
なお、この断状態では前記テンションバネ59による伝動ベルト49への張力付与が行われないので、伝動ベルト49が弛緩し、伝動ベルト49自体の腰力によってトラバース駆動軸15側に膨らんで当該トラバース駆動軸15に接触してしまうおそれがある。本実施形態ではこれを防止するために、プーリ支持アーム47の第2アイドラプーリ52の近傍位置に規制突起61を設けており、図4のようにベルトクラッチ62が断状態とされたときは、この規制突起61が伝動ベルト49の外周面に当接することによって伝動ベルト49のトラバース駆動軸15側への膨らみを防止して、トラバース駆動軸15からの動力伝達を確実に遮断するようにしている。
また本実施形態では、図4の断状態において、伝動ベルト49の全体がトラバース駆動軸15よりも作業用通路120側に位置している。また前述したように、前記巻取部1Cを構成する各種装置のうち、巻取装置50のトラバース装置6やクレードル40、自動玉揚装置60等は、前述の基体90のうち第2フレーム92側に固定されている。即ち、第2フレーム92側で一種のアッセンブリが構成されている。一方、本体側の第1フレーム91には巻取装置50の接触ローラ5が取り付けられるとともに、前記ローラ駆動軸13やトラバース駆動軸15、玉揚駆動軸16等が配置される。
従って、操作レバー53を切り換えて図4の断状態とした後は、第2フレーム92と第1フレーム91とを連結している図示しない適宜の連結手段の連結を解除し、その後に第2フレーム92を図5の太線矢印方向に持ち上げることで、トラバース装置6や自動玉揚装置60、クレードル40等の構成部品を錘ごとに取り外して作業用通路120側に容易に引き出すことができるようになっている。
この結果、巻取部1Cのトラバース装置6や自動玉揚装置60等に対するメンテナンス作業が極めて容易になる。また、第1フレーム91側の構成部品(例えば接触ローラ5等)についても、第2フレーム92を取り外すことで広い作業空間を確保できることから、メンテナンス性を向上することができる。
あるいは、第2フレーム92にトラバース装置6や自動玉揚装置60等を取り付けた第2フレーム側のアッセンブリを予めスペアとして用意しておき、トラバース装置6等に不具合が生じた錘については、第2フレーム92側のアッセンブリごとスペアと交換するようにしても良い。この場合、不具合が生じた錘を短時間で復旧させることができ、稼働効率を更に向上させることができる。
トラバース装置6に対してメンテナンスを行い、不具合を解消できた場合、今度は再び第2フレーム92を第1フレーム91に取り付けて、操作レバー53を図4の遮断位置から図2の接続位置へ切り換える。するとプーリ支持アーム47がテンションバネ59によって押されるので図4から図2の位置へ反時計回りに回動し、伝動ベルト49がトラバース駆動軸15に巻き付いて接状態となり、再びトラバース装置6が駆動される。なおこの際、伝動ベルト49は、常時回転しているトラバース駆動軸15に巻き付く際に当該トラバース駆動軸15との間で若干滑り、また、トラバース駆動軸15によって駆動され始めた伝動ベルト49が入力プーリ46を駆動する際に、当該入力プーリ46との間で若干滑ることになる。この伝動ベルト49の滑りにより動力伝達が緩衝されるので、トラバース装置6の緩やかな駆動開始が行われ、トラバース装置6の構成部品の故障等を低減することができる。
以上に示すように、本実施形態では、複数錘の巻取部1Cのトラバース装置6を共通のトラバース駆動軸15で駆動する構成であって、それぞれの錘のトラバース装置6とトラバース駆動軸15との間で動力を断接する動力断接手段としてのベルトクラッチ62を錘ごとに設けた構成となっている。
従って、トラバース装置6の駆動力の供給源を複数錘で共有することにより駆動機構の簡素化を図れるのと同時に、特定の錘のトラバース装置6に不具合が生じてメンテナンスが必要になっても、ベルトクラッチ62を断状態にすることでその特定の錘だけを停止させることができ、稼働効率を向上させることができる。
また本実施形態では、ベルトクラッチ62を錘ごとに手動で操作することが可能な操作レバー53をそれぞれの錘に設けている。従って、各錘ごとに操作レバー53によってベルトクラッチ62を断接操作することで、各錘ごとのトラバース装置6の駆動/停止を容易に切り換えることができ、メンテナンス作業性を向上させることができる。
更に、本実施形態では、前記操作レバー53は、その上部に手を掛けて操作することが可能に構成されている。また、この操作レバー53の上端位置は、前記トラバース駆動軸15よりも高い位置にあるように配置されている。従って、手を差し込み易い位置に操作レバー53があるので、容易に手を掛けて操作でき、操作性を向上させることができる。この効果は特に、図1のように複数錘分の巻取部1Cが上下に配置され、巻取部1C(トラバース装置)の上や下に更に巻取部1C(トラバース装置)がある場合に有効である。
また本実施形態では、動力断接手段(ベルトクラッチ62)は無端状の伝動ベルト49を備え、当該ベルトクラッチ62が接状態とされたときは、トラバース駆動軸15の動力はこの伝動ベルト49を介して前記トラバース装置6へ伝達される。従って、いったん断状態とされたベルトクラッチ62を再び接状態へ切り換えるとき、常時駆動しているトラバース駆動軸15に伝動ベルト49が接触し始める際に、伝動ベルト49がトラバース駆動軸15や入力プーリ46との間で若干滑ることになる。この伝動ベルト49の滑りによる緩衝作用によって、トラバース装置6への駆動力の急激な伝達が回避され、トラバース装置6の故障を低減することができる。
更に本実施形態では、前記ベルトクラッチ62が断状態とされるとき、その錘のトラバース装置6を図5に示すように本体から離脱させ得るように構成されている。従って、トラバース装置6を本体側から取り外すことで当該トラバース装置6に極めて容易にアクセスして修理等を行うことができ、メンテナンス性が顕著に向上される。
また本実施形態では、トラバース装置6を図5に示すように本体側から離脱させるときは、ベルトクラッチ62を構成する伝動ベルト49もトラバース装置6とともに本体から離脱するように構成している。そして、このベルトクラッチ62は、前記伝動ベルト49をトラバース駆動軸15から離間させつつその全体を当該トラバース駆動軸15の一側(作業用通路120側)に位置させる断状態(図4)と、伝動ベルト49の下側の略半分をトラバース駆動軸15の他側(作業用通路120から遠い側)に回り込むように湾曲させることでその外周面をトラバース駆動軸15の外周面に巻き付かせる接状態(図2・図3)との間で、切換可能に構成されている。従って、トラバース駆動軸15に伝動ベルト49の外周側を巻き付かせることで接状態とし、巻付き解除により断状態とする構成であるから、伝動ベルト49の内側でなく外側にトラバース駆動軸15が配置されることとなり、トラバース装置6の本体側からの離脱が一層容易になる。
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態は例えば以下のように変更して実施することができる。
(1)動力断接手段としては上記の実施形態ではベルトクラッチ62を用いたが、それに限定されず、例えば摩擦車を用いたクラッチに変更することもできる。
(2)また、操作部材としてもレバー状の部材(操作レバー53)に限定されず、ペダルやボタン等様々な形態の操作部材に変更することができる。
(3)動力断接手段が断状態とされたときは、少なくともトラバース装置6が本体側から離脱できれば良く、それ以外に何を本体側から離脱させるかは任意である。例えば接触ローラ5も同時に離脱させるように構成したり、自動玉揚装置60は離脱せずに本体側に残るように構成することもできる。
(4)上記の実施形態では延伸仮撚加工機の巻取部1Cに適用されたトラバース装置6の駆動構造を例示したが、共通の駆動源で複数錘のトラバースガイドを駆動する他の繊維機械に適用しても構わない。
本発明の一実施形態に係る延伸仮撚加工機の全体側面図。 延伸仮撚加工機の巻取部により糸の巻取りが開始される様子を示す側面模式図。 図2の状態から糸が巻き取られて形成されたパッケージを玉揚する様子を示す側面模式図。 メンテナンスのために操作レバーが遮断位置へ操作されてベルトクラッチが断状態とされた様子を示す側面模式図。 図4の状態からトラバース装置を本体側から離脱させる様子を示す説明図。
符号の説明
1C 延伸仮撚加工機の各錘の巻取部
3 ボビン
6 トラバース装置
15 トラバース駆動軸
49 伝動ベルト(ベルト)
53 操作レバー
62 ベルトクラッチ(動力断接手段)
100 延伸仮撚加工機(繊維機械)

Claims (7)

  1. 複数錘のトラバース装置を共通のトラバース駆動軸で駆動する構成であって、それぞれの錘のトラバース装置と前記トラバース駆動軸との間で動力を断接する動力断接手段を錘ごとに設けたことを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  2. 請求項1に記載のトラバース装置の駆動構造であって、
    前記動力断接手段を錘ごとに手動で断接操作することが可能な操作部材をそれぞれの錘に設けたことを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のトラバース装置の駆動構造であって、
    前記操作部材は、その上部に手を掛けて操作することが可能なレバー部材に構成されており、
    また、この操作部材の上端位置は前記トラバース駆動軸よりも高い位置にあることを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  4. 請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のトラバース装置の駆動構造であって、
    前記動力断接手段は無端状のベルトを備え、当該動力断接手段が接状態とされたときは、前記トラバース駆動軸の動力は前記ベルトを介して前記トラバース装置へ伝達されることを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  5. 請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のトラバース装置の駆動構造であって、
    前記動力断接手段が断状態とされるとき、その錘のトラバース装置の本体からの離脱が許容されるように構成されていることを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  6. 請求項5に記載のトラバース装置の駆動構造であって、
    前記動力断接手段は無端状のベルトを備えるとともに、トラバース装置の本体からの離脱時にはこのベルトも本体側から離脱するように構成し、
    また、前記動力断接手段は、前記ベルトを前記トラバース駆動軸から離間させつつ当該トラバース駆動軸の一側に位置させる断状態と、前記ベルトを前記トラバース駆動軸の他側に回り込むように湾曲させることでその外周面を前記トラバース駆動軸の外周面に巻き付かせる接状態との間で、切換可能に構成されていることを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
  7. 請求項1から請求項6までの何れか一項に記載のトラバース装置の駆動構造であって、仮撚加工機の巻取部においてボビンに供給される糸を綾振るトラバース装置を駆動することを特徴とする、トラバース装置の駆動構造。
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