JP2006316371A - 付着油剤の均斉化装置及びこれを用いた合成繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ガラス転移温度以下では疵付きやすいマルチフィラメントに対しても、糸条にダメージを与えることなく、付着した油剤を均斉化でき装置とこれを用いた合成繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】 油剤が付着した状態で走行するマルチフィラメント糸条Yに対して圧縮気体を吹き付けるための気体吹出孔7が穿設された糸条通過孔5を備えると共に、該糸条通過孔5が設けられた気体吹出部材2の接糸面が中心線平均粗さRaで0.5〜5μmに仕上げられた表面粗さを有し、かつその孔径D(mm)が「0.15×de1/2≦D≦0.6×de1/2(ただし、de(dtex)はマルチフィラメント糸条の全繊度である)」という関係式を満足することを特徴とする付着油剤の均斉化装置とこれを用いた合成繊維の製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】 油剤が付着した状態で走行するマルチフィラメント糸条Yに対して圧縮気体を吹き付けるための気体吹出孔7が穿設された糸条通過孔5を備えると共に、該糸条通過孔5が設けられた気体吹出部材2の接糸面が中心線平均粗さRaで0.5〜5μmに仕上げられた表面粗さを有し、かつその孔径D(mm)が「0.15×de1/2≦D≦0.6×de1/2(ただし、de(dtex)はマルチフィラメント糸条の全繊度である)」という関係式を満足することを特徴とする付着油剤の均斉化装置とこれを用いた合成繊維の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ポリエステル、ポリアミドなどからなる合成繊維、特に産業資材用途に適した高強力・高弾性のポリポリエステル繊維に対して付着させた油剤を均斉化するための装置とこれを用いた合成繊維の製造方法に関する。
ポリエステル繊維は、高強力・高タフネスであり、耐候性、寸法安定性にも優れており、衣料用途のみならず産業資材用途でも広く使用されている。このようなポリエステル、ナイロン等からなる合成繊維を製造するに際して、走行糸条に油剤を付与することが、一般的に行われている。何故ならば、この油剤付与は、糸条の集束性、平滑性、制電性等を向上させ、紡糸・延伸工程での糸切れや毛羽を抑制したり、撚糸、捲縮、製織、製編、染色等の後加工を行う上での製品品位の向上や加工トラブルを未然に防いだりする上で極めて重要であるからである。
特に、合成繊維の紡糸工程あるいは熱延伸工程などの製糸工程における糸切れや毛羽の発生要因の一つとして、油剤の付着斑に起因する走行糸条の張力変動が挙げられる。そこで、従来より製糸工程において、前述のような問題の発生を防ぐために、油剤の付着斑を防止しようとする技術が提案されてきた。例えば、フィラメント・カウント(単繊維数)が大きいマルチフィラメント糸条に対して、紡出されて未だ集束されずに開繊状態のままで油剤を付与するための技術が実開昭60−117871号公報や特開平10−280224号公報に提案されている。すなわち、この提案されている従来技術は、糸条を構成するフィラメント(単繊維)群を集束することなく、接糸幅の広いガイドに接触させて糸条の開繊状態を維持して油膜が形成された油剤付与面に接触させることが提案されている。
しかしながら、この従来の油剤の付与技術では、走行糸条を集束するために、走行するマルチフィラメントの糸道を一定位置に積極的に規制することが行われない。このため、糸道規制が十分にできずに糸揺れが生じ、糸条の開繊状態を常に一定の状態(定常状態)に維持することができず、この故に、走行糸条への油剤の均一付与が難しい。
そこで、糸条に既に付与された油剤を、均斉に糸条全体に分散させる技術、例えば、圧縮空気や水蒸気を噴出させて走行糸条へ吹き付けるためのノズルを用い、このノズル中へ走行糸条を導いて、圧縮空気や水蒸気を吹き付けことによって油剤の付着斑を解消しようとする技術を用いることが行われている。これらの従来技術は、ガラス転移温度以下にまで既に冷却された合成繊維に対して行われている。
しかしながら、合成繊維、特に、ポリエステル繊維では、ガラス転移温度以下においては非常に脆く疵付きやすいため、ガラス転移温度より低い温度のマルチフィラメントに圧縮空気や水蒸気を吹き付ける工程において走行糸条とノズルとの物理的な接触によりフィラメント表面に疵が付き糸品位や工程調子を著しく低下させる可能性があり、シビアな糸道の管理が必要となっている。
本発明の目的は、以上に述べた従来技術が有する問題を解消し、ガラス転移温度以下では疵付きやすいマルチフィラメントに対しても、糸条にダメージを与えることなく、付着した油剤を均斉化でき装置を提供することにある。また、この装置を用いることによって、糸条を高倍率かつ高速で延伸しなどの過酷な処理を施しても毛羽や断糸の発生が少なく高品質の繊維が安定して得られる合成繊維の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討をかさねた結果、圧縮気体を走行糸条に吹き付けて付着油剤を均斉化する付着油剤の均斉化装置に設ける糸条通過孔の形状やその接糸面の仕上げ加工方法を工夫することによって、産業資材用途の高弾性ポリエステルであっても、例え高速で延伸しても疵を付けることなく製糸性の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本発明で言う「接糸面」とは、「糸条が接触する可能性がある面」のことを指すものであって、「定常的に糸条と接触する面」を指すものではない。
なお、本発明で言う「接糸面」とは、「糸条が接触する可能性がある面」のことを指すものであって、「定常的に糸条と接触する面」を指すものではない。
ここに、前記目的を達成するための請求項1に記載の発明として、油剤が付着した状態で走行するマルチフィラメント糸条に対して圧縮気体を吹き付けるための気体吹出孔が穿設された糸条通過孔を備えると共に、該糸条通過孔が設けられた気体吹出部材の接糸面が中心線平均粗さRaで0.5〜5μmに仕上げられた表面粗さを有し、かつその孔径D(mm)が「0.15×de1/2≦D≦0.6×de1/2(ただし、de(dtex)はマルチフィラメント糸条の全繊度である)」という関係式を満足することを特徴とする付着油剤の均斉化装置が提供される。
その際、前記付着油剤の均斉化装置は、一対の前記気体吹出孔が走行糸条を間に挟んでその吹出方向が互いに重なるように対向した状態で設けられていることが好ましい。
その際、前記付着油剤の均斉化装置は、一対の前記気体吹出孔が走行糸条を間に挟んでその吹出方向が互いに重なるように対向した状態で設けられていることが好ましい。
また、前記付着油剤の均斉化装置は、走行する前記マルチフィラメント糸条を扁平化する扁平化手段を備えていることが好ましい。
そして、前記付着油剤の均斉化装置は、前記扁平化手段によって扁平化された糸条に対して、前記一対の気体吹出孔を複数組設け、これら複数組中の何れか一組の圧縮気体の吹出方向が走行糸条の扁平面に対して垂直となるように設けると共に、その他の組は扁平面に対して面対象となるように配置することが好ましい。
そして、前記付着油剤の均斉化装置は、前記扁平化手段によって扁平化された糸条に対して、前記一対の気体吹出孔を複数組設け、これら複数組中の何れか一組の圧縮気体の吹出方向が走行糸条の扁平面に対して垂直となるように設けると共に、その他の組は扁平面に対して面対象となるように配置することが好ましい。
更に、前記目的は、紡糸工程で油剤が付与された未延伸のマルチフィラメント糸条をいったん巻取ることなくそのまま延伸するための直接紡糸延伸工程において請求項1〜4に記載の付着油剤の均斉化装置を用いることを特徴とする本発明の合成繊維の製造方法によって達成される。
本発明の方法によれば、糸条に疵をつけることなく油剤を十分均一にマルチフィラメント全体に分散させることにより、高倍率で延伸しても毛羽や断糸を抑えることができる。このため、例えばタイヤコード、ベルトなどのゴム補強用繊維を製造する産業資材用途の合成繊維、特にポリエステル繊維を良好な工程調子の下で高品位に製造する上で極めて有用である。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる付着油剤の均斉化装置の一実施形態を模式的に例示した説明図であって、図1(A)は図1(B)におけるB−B’方向の矢視正断面図、図1(B)は図1(A)におけるA−A’方向の矢視側断面図をそれぞれ表す。なお、図1では、1錘のマルチフィラメント糸条Yを処理する例を示したが、当然のことながら1錘に限定されること無く、2錘以上の複錘であっても良い。
図1は、本発明に係わる付着油剤の均斉化装置の一実施形態を模式的に例示した説明図であって、図1(A)は図1(B)におけるB−B’方向の矢視正断面図、図1(B)は図1(A)におけるA−A’方向の矢視側断面図をそれぞれ表す。なお、図1では、1錘のマルチフィラメント糸条Yを処理する例を示したが、当然のことながら1錘に限定されること無く、2錘以上の複錘であっても良い。
ここで、図1に例示した均斉化装置の実施形態例について、更に詳細に説明すると、本発明に係わる均斉化装置の本体部1には、糸条通過孔5を穿設した円筒状の気体吹出部材2が設けられており、この気体吹出部材2には図示したように6個の気体吹出孔7が穿設されており、ここから圧縮気体が糸条通過孔5へ吹出される。このとき、図1の実施形態例では。前記圧縮気体は、本体部1に設けられた気体供給口8から均圧室6へ供給され、次いで、この均圧室6から6個の前記気体吹出孔7へ供給されるようになっている。
その際、この6個の気体吹出孔7から圧縮空気あるいは加熱水蒸気などの圧縮気体が走行するマルチフィラメント糸条Yに対して吹き付けられ、吹き付けられた圧縮気体の作用によって糸条Yに付着した油剤が拡散して均斉化される。このように、本発明の付着油剤の均斉化装置では、圧縮気体を糸条Yに吹き付けることによって糸条Yに付着した油剤を糸条全体に均斉化することを特徴とする。
しかしながら、単に圧縮機体を走行糸条Yに吹き付けるだけでは、糸条Yが糸条通過孔5の接糸面に接触して損傷を受けてしまう。そこで、本発明の均斉化装置では、糸条通過孔5の接糸面に対して、中心線平均粗さRaで表現して、0.5〜5μmに仕上げられた表面粗さを持たせる。何故ならば、この範囲の表面粗さに接糸面を仕上げることによって、走行糸条Yがこの接糸面に接触しても、摩擦係数が小さいため、擦過損傷を受けがたいからである。したがって、圧縮気体が吹き付けられることなどにより走行糸条Yが振動して接糸面に接触したとしても、この接糸面は既に述べた表面粗さに仕上げられているから、糸条Yとの接触摩擦が極めて小さくなって、擦過損傷を受け難いのである。
しかしながら、糸条Yに付着した油剤を圧縮気体の作用によって均斉化しながらも、圧縮気体による均斉化効果を維持しつつ、前記接糸面に糸条Yが接触する機会をできるだけ少なくすることが慣用である。そこで、本発明においては、糸条通過孔5の孔径D(mm)を「0.15×de1/2≦D≦0.6×de1/2 … (1)」という関係式を満足するように設定する。ただし、前記式(1)において、de(dtex)は本発明の均斉化装置で処理する1錘のマルチフィラメント糸条の全繊度である。
前記式(1)の意味するところを簡単に説明すると、通常、フィラメント(単繊維)群の集合体であるマルチフィラメント糸条Yを円柱とみなして、その相当直径をD’と仮定すると、このD’はマルチフィラメント糸条Yの全繊度deの平方根(d1/2)に比例することは周知である。そこで、当然のことながら全繊度によって異なるマルチフィラメント糸条Yの相当直径D’(mm)に対して、糸条通過孔5の孔径D(mm)をどのように設定すればよいかを前記式(1)で定義したのである。
すなわち、前記式(1)の「D≧0.15×de1/2」の意味は、マルチフィラメント糸条Yの相当直径D’(mm)に対して、糸条通過孔5の孔径D(mm)をどの程度まで小さくできるのか、その許容直径を定義したものであって、Dが「0.15×de1/2」よりも小さくなると、糸条Yが接糸面に接触して損傷を受け易いことを本発明者は実験によって見出したのである。したがって、「D≧0.15×de1/2」という関係を満足する必要がある。また、「D≦0.6×de1/2」では、油剤の付着斑の解消効果はそれほど向上せず、また、吹出す気体の量も多くしなければならないため、逆に吹出した気体の乱れが顕著になって走行する糸条Yの糸揺れが生じて好ましくない。
なお、本発明では、図1に例示した均斉化装置1の実施形態のように、連続走行する糸条Yを前記糸条通過孔5へと導糸するために均斉化装置1本体を半割構造とし半割面3を平滑に仕上げてメタルタッチだけで空気漏れを面状シールできるように相互に圧接させるような装置構成としてもよい。また、図示したように半割面の一部又は全面にシール材4を設けるようにしてもよい。
このように、均斉化装置1を半割構造とすることによって、導糸時に電磁弁を操作するなどして、均斉化装置への圧縮気体の供給を一旦停止した後、半割構造を開放した状態で糸条通過孔5中へ導糸を行った後、半割構造を平滑なシール平面同士のメタルタッチ若しくは面状シール材4などを介して締め付ける、連続走行する糸条Yであっても切断した糸端を糸条通過孔5の一方端側から他方端へと通す作業が必要と無くなる。また、当然のことながら、周知の交絡付与ノズルのように導糸用スリット(図示せず)を設けて、この導糸用スリットから糸条Yを糸条通過孔5中へ導くようにしてもよい。
本発明の均斉化装置では、前記気体吹出孔7に関し、これらを2個で一対の前記気体吹出孔7の組を構成し、この一対の気体吹出孔7が走行糸条Yを間に挟んでその吹出方向が互いに重なるように対向した状態で設けることが好ましい。何故ならば、一対の気体吹出孔7の圧縮気体の吹出方向が互いに重なる場合には、吹出された圧縮気体は互いに走行糸条Yを挟んで衝突して拡散するからである。したがって、互いに衝突して拡散する圧縮気体の力を利用することによって、糸条Yに付着した油剤を均斉化することができる。
以上に述べたように、本発明の付着油剤を均斉化する装置を用いれば、油剤の均斉化に大きな効果がある。しかしながら、更に油剤の均斉化効果を向上させるためには、マルチフィラメント糸条Yを構成するフィラメント群が団子状に密着した塊を形成していたのでは、吹き付け気体による油剤の拡散効果が減らされてしまう。
そこで、本発明においては、フィラメント群が団子状に密着した塊を形成して走行させずに、横一列に扁平状態とし、フィラメント群ができるだけバラけた状態で走行させる(図1に示した例は、この扁平状態で走行している糸条である)。そうすると、各フィラメントに対して、吹き付けられた圧縮空気の衝突による拡散効果がより大きくなる。ただし、マルチフィラメント糸条Yを構成するフィラメント群を扁平させたため、フィラメント群の集合形態に異方性を生じてしまうので、走行糸条Yに圧縮気体を吹き付ける方向が問題となる。
すなわち、扁平形態を得たマルチフィラメント糸条に対しては、前述の一対の気体吹出孔7を1組として、これらの組を複数組設け、これら複数組中の何れか一組の圧縮気体の吹出方向が走行糸条Yの扁平面に対して垂直となるようにすることが好ましい。更にこのとき、走行糸条Yの扁平面に対して垂直となるように設けた組の気体吹出孔7については、扁平面に対して面対象となるように設けることが好ましい。
何故ならば、気体吹出孔7をこのような配置にすることによって、走行糸条Yに吹き付けられる圧縮気体をバランスさせることができ、糸条Yの走行安定性を確保でき、糸条通過孔5の接糸面との接触機会も低減できるからである。なお、前記式(1)では、このような扁平したマルチフィラメント糸条Yを含んだ形で定式化したものであって、「D≦0.6×de1/2」という条件は、このような扁平状態のマルチフィラメント糸条Yであっても、糸条通過孔5の接糸面と接触する機会を低減できる好ましい条件のことである。
以上に述べたように、本発明の付着油剤の均斉化装置では、フィラメント群が横方向へ配列した扁平形態を採る糸条に対して、油剤の付着斑を均斉化する上で大きな効力を発揮する。したがって、団子状態のフィラメント群を横方向へ扁平状に配列させるための手段が必要になる。本発明においては、このような扁平化手段(図1には示さず)としては、後述する延伸ローラ、開繊ローラ、あるいは開繊ガイドなどを例示することができる。
特に、延伸ローラを扁平化手段として用いる場合は、一対の延伸ローラ(通常、加熱ローラとされる)にそれぞれ糸条Yを巻回して糸条Yを確実にグリップしながら、これら一対の延伸ローラ間で速度差を付与して、必要に応じてヒータによって走行糸条Yを加熱しながら延伸する。したがって、走行糸条Yには延伸のためのストレッチ張力が付与され、その上、延伸ローラに押付けられた状態でローラ上を糸条Yが走行する。このため、開繊ローラあるいは開繊ガイドなどの糸条Yを横方向へ配列させるための扁平化手段を用いることなく、延伸ローラ上に糸条Yを通すだけで扁平化が可能である。
以上に説明してきたように、本発明の付着油剤の均一化装置は、例えば紡糸工程などてマルチフィラメント糸条Yに付与された油剤の付着斑を解消する上で大きな効果を発揮する。したがって、前述の付着油剤の均斉化装置を紡糸工程で油剤が付与された未延伸のマルチフィラメント糸条をいったん巻取ることなくそのまま延伸するための直接紡糸延伸工程において使用することによって、品質に優れた糸条を得ることができる。何故ならば、本発明に係わる付着油剤の均斉化装置によれば、マルチフィラメント糸条Yの油剤の付着斑を好適に解消して均斉化できるために、糸条Yの集束性、平滑性、制電性等を向上させることができ、紡糸・延伸工程での糸切れや毛羽を抑制できるからである。したがって、当然のことながら、製品品位の向上や加工トラブルを未然に防ぐことができる。
以下、本発明の付着油剤の均斉化装置を産業用資材用途に用いるポリエステルの直接紡糸延伸工程に適用した実施形態について説明する。
なお、本発明で用いられるポリエステルは、本発明の目的を損なわない範囲内で第三成分を配合、あるいは共重合したものであっても良い。その際、高強力・高弾性繊維を得るためには、例えば固相重合のような手法を用いて固有粘度を0.6以上とすることがこのましいのは言うまでも無い。
図2は、本発明の付着油剤の均斉化装置を好適に使用できるポリエステルの直接紡糸延伸工程を例示した模式説明図である。
なお、本発明で用いられるポリエステルは、本発明の目的を損なわない範囲内で第三成分を配合、あるいは共重合したものであっても良い。その際、高強力・高弾性繊維を得るためには、例えば固相重合のような手法を用いて固有粘度を0.6以上とすることがこのましいのは言うまでも無い。
図2は、本発明の付着油剤の均斉化装置を好適に使用できるポリエステルの直接紡糸延伸工程を例示した模式説明図である。
以上に述べた製糸工程において、溶融した高分子重合体(以下、“ポリマー”と称する)から製品糸条は下記のようにして製造される。すなわち、まず図示しない溶融押出機などを使用して前記ポリエステルなどの熱可塑性ポリマーを定法により溶融し、ギヤポンプ等の計量供給手段によってスピンブロックのパックドームに装着された紡糸パックへ送る。ついで、この紡糸パックに設けられた紡糸口金のポリマー吐出孔群から溶融したポリマーを定量吐出する。そして、冷却紡糸筒から冷却風を紡出された糸条Yに対して吹き付け、ガラス転移温度以下に一旦冷却する。
その後、冷却された糸条Yは、ローラ式あるいはガイド式の紡糸油剤付与装置で紡糸油剤が付与された後、引取りローラにより所定の速度で引き取られる。ついで、このようにして溶融紡糸された糸条Yは、一対の加熱ローラからなる延伸ローラを多段に配置した延伸工程へと供される。
その際、前記延伸ローラ群に導かれた糸条Yは、糸条Yが各延伸ローラに接触する時間が十分に確保されるように、これらの延伸ローラ群に数ターン〜20ターン巻回される。そして、このようにして、延伸ローラ群によって加熱された糸条Yは、各段の延伸ローラ間でそれぞれ所定の延伸倍率に延伸処理あるいは必要に応じて弛緩処理が施される。更に、このようにして、延伸ローラ群で延伸された糸条Yは、最終的に第2交絡付与装置によって交絡処理を受けた後、巻取機にて巻き取られる。
ここで、前記製糸工程の例では、本発明の付着油剤の均斉化装置1は、引取ローラ11と第1段目の延伸ローラ12との間の位置に、延伸工程における処理剤付与装置として設けられている。何故ならば、延伸工程では引取りローラと第1延伸ローラの間で10%未満のプリストレッチをかける。このプリストレッチはフィラメント数、全繊度に応じて、ローラに押付けられた糸条Yがローラ上での走行状態を最も均一に横方向へ扁平形態を保ちながら引きそろえられる条件に設定することが必要である。なお、プリストレッチを全く付与しない場合は、未延伸糸のフィラメント相互の配列の均一性を維持することが困難になるため、延伸の安定性の確保が困難になるので好ましくない。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、最大延伸倍率、未延伸糸単糸強伸度、延伸糸の強伸度、チーズ表面毛羽は次のように評価した。
1.最大延伸倍率(MDR)
吐出糸条を所定の速度で引き取った後、延伸第1ローラーと延伸第2ローラーの間で第1段延伸を行った後、延伸第3ローラーの速度を徐々に速めていき、破断した時点の延伸倍率(「第3ローラー速度/引き取り速度」)を最大延伸倍率とした。
2.単繊維間斑
単繊維(フィラメント)毎に強力を測定し、n=20の平均とバラツキσから、「(σ/平均)×100」(%)を算出した。
3.毛羽個数
赤外線センサータイプの毛羽検出装置を用いて200m/分の速度で糸条10000mの毛羽の発生回数を測定した。
4.接糸面の中心線平均粗さ
面粗さ計(接触式)を用いて粗さ曲線を求め、JIS B0601-1994「表面粗さ一定義及び表示」に基づいて平均粗さRaを算出した。
吐出糸条を所定の速度で引き取った後、延伸第1ローラーと延伸第2ローラーの間で第1段延伸を行った後、延伸第3ローラーの速度を徐々に速めていき、破断した時点の延伸倍率(「第3ローラー速度/引き取り速度」)を最大延伸倍率とした。
2.単繊維間斑
単繊維(フィラメント)毎に強力を測定し、n=20の平均とバラツキσから、「(σ/平均)×100」(%)を算出した。
3.毛羽個数
赤外線センサータイプの毛羽検出装置を用いて200m/分の速度で糸条10000mの毛羽の発生回数を測定した。
4.接糸面の中心線平均粗さ
面粗さ計(接触式)を用いて粗さ曲線を求め、JIS B0601-1994「表面粗さ一定義及び表示」に基づいて平均粗さRaを算出した。
[実施例1〜3、比較例1〜3]
固有粘度0.74のポリエステルチップを300℃で溶融して紡糸口金を装着したパックに導入してろ過した後、孔径が0.5mmφの吐出孔を有する口金より溶融ポリマーを吐出させた。その吐出糸条を300〜400℃に熱せられた加熱域を300mm通過したのち、走行糸条の外周円筒より円筒内に吹出す20〜28℃の整流された冷却風で冷却固化し引取りローラにて引き取った。引き続き一旦巻取ることなく、表1中にあるような種々の条件にて引取りローラから延伸第1ローラ間で図1に示した「付着油剤の均一化装置」を使用して圧縮空気で吹き付け処理を行った。このとき、圧力が0.2MPaの圧縮空気を、図1に示したように、孔径dがφ1.0mmの6個の気体吹出孔から吹き付けた。その後、第1延伸ローラから第2延伸ローラを経て第3延伸ローラまで2段延伸を行い、熱セットを行った後巻き取り、全繊度が1100dtexの延伸糸を得た。
固有粘度0.74のポリエステルチップを300℃で溶融して紡糸口金を装着したパックに導入してろ過した後、孔径が0.5mmφの吐出孔を有する口金より溶融ポリマーを吐出させた。その吐出糸条を300〜400℃に熱せられた加熱域を300mm通過したのち、走行糸条の外周円筒より円筒内に吹出す20〜28℃の整流された冷却風で冷却固化し引取りローラにて引き取った。引き続き一旦巻取ることなく、表1中にあるような種々の条件にて引取りローラから延伸第1ローラ間で図1に示した「付着油剤の均一化装置」を使用して圧縮空気で吹き付け処理を行った。このとき、圧力が0.2MPaの圧縮空気を、図1に示したように、孔径dがφ1.0mmの6個の気体吹出孔から吹き付けた。その後、第1延伸ローラから第2延伸ローラを経て第3延伸ローラまで2段延伸を行い、熱セットを行った後巻き取り、全繊度が1100dtexの延伸糸を得た。
本発明によれば、糸導孔径が未延伸糸全繊度dの平方根(√d)の0.15倍以上とする事で延伸性を向上する事ができる。それ以下の場合、糸条と金属ノズルとの接触機会が増える為に延伸性を阻害してしまう。また、糸条通過孔の接糸面の中心線平均粗さRaを0.5〜5μmの範囲にすることで延伸性を向上することができる。しかしながら、0.5μm以下では糸条と糸条通過孔の接糸面との間の摩擦が大きくなり、5.0μm以上になってもやはり摩擦が大きくなって十分な効果が得られない。
[比較例4]
図2に示した3個の気体吹付孔を有する付着油剤の均斉化装置と表1に示した条件以外は、実施例1〜3と同様の条件で実験を行った。その結果、糸条の走行状態が不安定となって糸バラけが大きくなり、糸条通過孔の接糸面との接触機会が増えてしまって、毛羽の発生が多くなると共に、単繊維間斑も増大する。
図2に示した3個の気体吹付孔を有する付着油剤の均斉化装置と表1に示した条件以外は、実施例1〜3と同様の条件で実験を行った。その結果、糸条の走行状態が不安定となって糸バラけが大きくなり、糸条通過孔の接糸面との接触機会が増えてしまって、毛羽の発生が多くなると共に、単繊維間斑も増大する。
1:付着油剤の均斉化装置本体部
2:気体吹出部材
3:半割面
5:糸条通過孔
6:均圧室
7:気体吹出孔
8:気体供給口
D:糸条通過孔の孔径
d:気体吹出孔の孔径
Y:マルチフィラメント糸条
2:気体吹出部材
3:半割面
5:糸条通過孔
6:均圧室
7:気体吹出孔
8:気体供給口
D:糸条通過孔の孔径
d:気体吹出孔の孔径
Y:マルチフィラメント糸条
Claims (5)
- 油剤が付着した状態で走行するマルチフィラメント糸条に対して圧縮気体を吹き付けるための気体吹出孔が穿設された糸条通過孔を備えると共に、該糸条通過孔が設けられた気体吹出部材の接糸面が中心線平均粗さRaで0.5〜5μmに仕上げられた表面粗さを有し、かつその孔径D(mm)が下記式(1)を満足することを特徴とする付着油剤の均斉化装置。
0.15×de1/2≦D≦0.6×de1/2 … (1)
ただし、de(dtex)はマルチフィラメント糸条の全繊度である。 - 一対の前記気体吹出孔が走行糸条を間に挟んでその吹出方向が互いに重なるように対向した状態で設けられた請求項1に記載の付着油剤の均斉化装置。
- 走行する前記マルチフィラメント糸条を扁平化する扁平化手段を備えた請求項1又は2に記載の付着油剤の均斉化装置。
- 前記扁平化手段によって扁平化された糸条に対して、前記一対の気体吹出孔を複数組設け、これら複数組中の何れか一組の圧縮気体の吹出方向が走行糸条の扁平面に対して垂直となるように設けると共に、その他の組は扁平面に対して面対象となるように配置することを特徴とする請求項3に記載の付着油剤の均斉化装置。
- 紡糸工程で油剤が付与された未延伸のマルチフィラメント糸条をいったん巻取ることなくそのまま延伸するための直接紡糸延伸工程において請求項1〜4に記載の付着油剤の均斉化装置を用いることを特徴とする合成繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005138439A JP2006316371A (ja) | 2005-05-11 | 2005-05-11 | 付着油剤の均斉化装置及びこれを用いた合成繊維の製造方法 |
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DE102011011235A1 (de) | 2010-02-15 | 2011-08-18 | Tmt Machinery, Inc. | Öldiffusor und Spinnwickler |
-
2005
- 2005-05-11 JP JP2005138439A patent/JP2006316371A/ja active Pending
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CN102162147A (zh) * | 2010-02-15 | 2011-08-24 | 日本Tmt机械株式会社 | 油剂扩散装置及纺丝卷绕机 |
DE102011011235B4 (de) * | 2010-02-15 | 2020-08-27 | Tmt Machinery, Inc. | Öldiffusor und Spinnwickler |
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