JP2006315134A - 放電加工用Cu−W系合金電極材 - Google Patents

放電加工用Cu−W系合金電極材 Download PDF

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Abstract

【課題】 短納期加工への対応、即ち、電極消耗率が小さく、一層の高速加工を可能にする放電加工用電極材とその製造方法とを提供すること。
【解決手段】 放電加工用Cu−W系合金電極材は、25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記式Iの複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成している。
【選択図】 図2

Description

この発明は、Cu−W系合金よりなる放電加工用電極に関し、詳しくは、型彫り放電加工用の電極材や、穴あけ加工用のパイプ形状電極材として利用でき、特に、より速い加工速度および長寿命が要求される分野の放電加工用Cu−W系合金電極材とその製造方法に関する。
放電加工とは、電極材料(以下、単に「電極」とも云う)と被削材との間に放電現象を起こし、その際に発する高熱と衝撃波で互いを溶融、除去することを繰返すことで被削材を切削する方法である。従って、理想的な放電加工とは、電極自体の消耗を抑える為に電極自身の溶融量を抑え、かつ被削材の加工量を増やす為に被削材の溶融量が多い条件で進むことである。
この条件に適した電極材料特性としては、被削材よりも熱伝導率や電気伝導率が高く、かつ融点が高いことが求められる。実用材料としては、熱伝導率や電気伝導率が高いAgやCuと融点が実用金属の中で最も高いWを組合わせたAg−W合金やCu−W合金がある。一般的な使用には、高価なAg−W合金を避けてCu−W合金が多く用いられている。
しかしながら、Cu−W合金を電極に用いると電極の消耗に関しては優れているものの、加工速度は決して速くは無い。加工速度を上げるには一回当たりの放電のエネルギーを高くし、また単位時間あたりの放電回数を増やす必要があるが、このような条件を設定して放電加工を実施すると集中放電といわれる異常放電を生じ、高い加工精度が得られず加工速度が低下する問題がある。
つまり、放電加工は加工面に対して均等に分散放電を起こすことで初めて面の加工が進行するが、放電に偏りがあると、放電が集中した個所では加工はされるが、そうでない個所では加工が進まない為、加工面全体としては局部的に穴があくだけで加工が進行しないという問題がある。
この問題を改善する為に、このCu−W系合金にBaO等の仕事関数の低い、即ち、電子放出特性に優れたアルカリ土類金属元素酸化物を添加することで、分散放電を促し加工速度を高めた材料が知られている(特許文献1、参照)。
しかし、近年特に、短納期加工の重視に伴い、電極消耗率が少く且つ、一層の高速加工をと云う新たな要求に対して、上記の特許文献1に示される単一の添加物を含有するCu−W系合金の電極でも応えられないという問題が生じている。
特公昭35−8046号公報 特開平6−13494公報
従って、本発明の技術的課題は、短納期加工への対応、即ち、電極消耗率が小さく、一層の高速加工を可能にする放電加工用Cu−W系電極材とその製造方法とを提供することにある。
上記の課題に対し、本発明は、Cu−W系合金中でBaOよりさらに電子放出特性に優れる周期表2族に属するアルカリ土類金属元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上を当該電極材の合金組織中にタングステン酸塩「(2族元素)WO」の形態で分散相を形成させるという新たな着想によって、本発明をなしたものである。
即ち、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材は、25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記式Iの複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする。
また、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材は、25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期律表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、周期表の1族元素のK、Rb、Csの内から少なくとも1種類以上の粉末を式、(Y)WO(但し、式中のYは1族元素、以下式IIと呼ぶ)により0.02mol%〜0.15mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記1族元素を固溶した前記式Iで示す複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする。
また、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材は、25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下、式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、周期表の3族元素のSc、Yの内から少なくとも1種類以上の粉末を式、(X)(Z)WO(但し、式中のXは前記2族元素、Zは3族元素、以下、式IIと呼ぶ)により0.03mol%〜0.45mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記式Iで示す複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成しており、前記3族元素が前記式IIで示す前記2族元素を含む複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする。
ここで、本発明において、溶浸とは、例えば、特許文献2に記載されているように、WまたはMoの多孔質焼結体を作製し、その空孔部にCuを溶浸する事でCu−W系もしくはCu−Mo系合金を得ることを呼ぶ。
また、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材は、前記いずれか1つの放電加工用Cu−W系合金電極材において、更にFe、Ni、Coの内から選ばれる少なくとも1種類以上を、合計で5mol%以下含有することを特徴とする。
一方、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材の製造方法は、前記いずれか1つの放電加工用Cu−W系合金電極材と同等の電極材を得る製造方法であって、前記複合タングステン酸塩の代替粉末として前記周期表の1族元素、2族元素、3族元素の各単体タングステン酸塩粉末、周期表の1族元素、2族元素、3族元素の単体もしくは複数からなる酸化物粉末、炭酸塩粉末、水酸化物粉末、硼化物粉末の内から選ばれる任意の粉末と前記銅(Cu)粉とタングステン粉(W)からなる混合粉末を焼結する時の条件、または、前記代替粉末の何れかと前記タングステン(W)の混合粉末からなる多孔質焼結体を作製しその空孔部に銅(Cu)を溶浸する時の条件を、水素還元雰囲気中で加熱速度1.5℃/分以下で、1250℃〜1300℃で1h保持後、冷却速度0.5℃/分以下で除熱処理することを特徴とする。
本発明による放電加工用電極材は、電子放出特性に優れ、かつCu−W系合金中で安定に存在できる複合タングステン酸塩相を均一分散せしめることにより、異常放電が起こりにくく電極消耗率を損なうことなく加工速度を著しく向上することができる。
これにより、金型等の被加工物の加工時間の短縮が可能となり、また加工能率の向上に伴い、高価な加工機の導入数やメンテナンス等の付帯費用の削減が可能となり、産業上極めて有用な電極材である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)まず、周期表の2族(IIa族)のアルカリ土類金属元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上含有について説明する。
含有する電子放出物質は、その物質の大きさが細かくなるほどその放電特性の向上が阻害されてくるので、放電加工用の電極材に適した大きさを維持しなければならない。これを実現するには、単に電子放出物質は電子放出特性が優れていることだけではなく、Cu−W系合金中で安定相として存在することが求められる。
XRD、WDX、SEMや顕微鏡による合金組織観察を行った結果、従来用いられている電子放出物質である周期表の2族に属するアルカリ土類金属やその酸化物はCu−W系合金中では不安定相であることが判明し、焼結過程でWと化学反応を起こして電子放出物質相の大きさや分散の調整が難しい。その点、電子放出物質である周期表の2族に属するアルカリ土類金属元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上を含有する複合タングステン酸塩は、周期表の2族に属するアルカリ土類金属元素単体からなる各タングステン酸塩よりも電子放出特性が優れており、かつCu−W系合金中で安定な分散相として存在できる形態のため、放電を効率的に生じさせると云う本発明の課題を達成することが出来る。
(2)次に、周期表の2族元素の複合タングステン酸塩からなる分散相の存在量について説明する。
放電加工特性の向上、特に加工速度の向上の効果が現れるのは、周期表の2族元素の複合タングステン酸塩からなる分散相の含有量が0.1mol%以上から認められる。ただし加工特性のばらつき度合いも考慮すると、その働きをより確実なものとするには0.3mol%以上の含有量が好ましい。
また、この含有量が多いほど加工速度は向上するが、3.0mol%を超えると、体積比換算すると全体積の約2割を超えてしまうことになり、これ以上体積占有率が上がることは電極の消耗量が急激に増えることにつながり、本来持っている電極消耗率が低いというCu−W系合金の特徴を損なってしまう。したがって、この観点から3.0mol%を超える含有量は適さない。
複合タングステン酸塩を構成する2族元素の組合わせについては、どのような比率でも単体のタングステン酸塩よりも放電加工特性が向上する効果が得られる。そのため複合タングステン酸塩からなる分散相の含有量が上述の範囲内であればその比率は任意でよい。本発明の実施例の中で最も高い放電加工特性の向上効果が得られた好ましいモル比はBa:Sr:Ca=5:4:1である。
(3)次に、周期表の2族元素の複合タングステン酸塩からなる分散相に周期表の1族(Ia族)元素を固溶添加について説明する。
周期表の1族元素、その酸化物もしくはタングステン酸塩自体の電子放出特性は一般に周期表の2族元素のそれと比較して同等以下で劣るものがほとんどである。
しかし、本発明では、周期表の2族元素のタングステン酸塩の形態の分散相に周期表の1族元素のタングステン酸塩を固溶添加することで相乗効果が生まれ、更に加工速度を向上できることを見出した。
この効果が得られる周期表の1族元素はCs、Rb、Kであり、Na、Liではほとんど効果が認められなかった。これは、それら元素の第一イオン化エネルギー(電子を一個放出してイオンになるエネルギー)が周期表2族のアルカリ土類金属元素のCa、Sr、Baの中で最も第一イオン化エネルギーが小さいBaの第一イオン化エネルギーよりも小さいことが影響していると考えられる(第一イオン化エネルギー:Cs<Rb<K<Ba)。
なお、選択される各1族元素の比率は任意でよく、入手価格の観点で選択すればよいが、上述の意味から第一イオン化エネルギーのより小さい元素の添加比率が高いほうが望ましい。
また、その固溶添加量が多いほど加工速度は優れるが、その固溶限界についてXRDの測定で検出した物質相を同定した結果、モル量で周期表の2族元素のタングステン酸塩の含有量の5%を超えると、周期表の1族元素のタングステン酸塩からなる第2の分散相を生成することが判明した。
よって、この第2の分散相を生成しないよう、周期表の1族元素のタングステン酸塩の固溶添加量を周期表の2族元素のタングステン酸塩の含有量の5%に相当する0.02mol%〜0.15mol%に限定した。これを超える量を添加すると、固溶しきれない分が周期表のIa族元素のタングステン酸塩からなる第2の分散相を生成するが、この相の融点は1000℃以下と銅の融点よりも低いため、放電加工時の電極消耗量の増大をもたらし、本来持っている電極消耗率が低いというCu−W合金の特徴を損なってしまう。従って、この観点からこれを超える添加は適さない。
(4)次に、周期表の3族(IIIa族)元素を含む複合タングステン酸塩からなる分散相の存在量について説明する。
周期表の3族元素、その酸化物もしくはタングステン酸塩自体の電子放出特性は周期表2族元素のそれと比較して劣るものがほとんどである。
しかし、本発明では、複数の2族元素を含む複合タングステン酸塩に、3族元素を含む複合タングステン酸塩を添加することで更に加工速度を向上できることを見出した。
XRDの測定で検出した物質相を同定した結果、2族元素を含むタングステン酸塩を含むCu−W系合金中に3族元素を添加すると、3族元素は組成式「(2族元素)(3族元素)WO」で表される複合タングステン酸塩からなる安定分散相を生成することが判明した。この相の微量が複数の2族元素を含む複合タングステン酸塩からなる分散相と共存することで更に加工速度が向上する。その存在量はモル比で複数の2族元素を含む複合タングステン酸塩相の含有量の10%〜15%が効果的であった。上記の量より少ない場合は、特性向上効果が小さく、逆に多く添加しても特性向上効果が小さくなることに加え、焼結性が著しく悪化し電極材料の緻密化を妨げるので、これを超える含有量は適さない。よって、組成式「(2族元素)(3族元素)WO」で表される複合タングステン酸塩からなる分散相の含有量を周期表の2族元素のタングステン酸塩の含有量の10%〜15%に相当する0.03mol%〜0.4mol%に限定した。
なお、周期表3族元素の添加効果は、周期表の周期番号が小さい元素ほど大きい傾向があり、周期番号が大きいランタノイドについては添加による明瞭な特性向上は認められない。
(5)次にCuの含有量について説明する。
放電加工用途としては一般に50〜60mol%位の電極材が多い。この量は体積比で換算するとCu:W≒1:1であり、焼結性がよく作製しやすいことと安定した放電特性とを兼備えているからと考えられる。一方で焼結性は損なうがCuの含有量は少ない方が加工速度は向上する傾向がある。しかし、焼結助剤として働く鉄族元素のFe、Co、Niを微量添加すれば、Cuを25mol%まで減らすことは可能であることを見出した。
一般的なCu−W系合金の製造は粉末冶金法(粉末混合・焼結法、または、溶浸法)で行われ、具体的にはCuの融点以上、望ましくは1300℃前後の温度で溶融したCuがW粉末の粒子間に毛細管力で引き込まれ満たされて緻密化が進行する。しかし、CuとWはお互いに固溶度を持たないので、表面酸化等で活性度が低いと互いの濡れ性が悪く、均質な緻密化が進まないために密度むらを生じて変形したり、巣と呼ばれる細かい空洞欠陥を残しやすいという問題がある。特にCuの含有量が少ない場合や、電子放出物質の含有量が多いとその傾向が強くなる。
上記の問題点の解消には前述のFe、Ni、Coの鉄族元素を微量添加することが効果的である。しかし、これらの元素はCuの熱伝導率や電気伝導率を著しく低下させてしまい、放電加工特性をも落とす。
従って、基本的にこれら鉄族元素は添加しないが、例えば、被加工物への形状転写精度が求められる精密加工用の電極や、加工液がパイプ側面部から漏れないことが求められる穴あけ加工用のパイプ電極の場合、十分に緻密化させた密度の高い電極材料が必要とされるため、焼結性改善の目的で、Fe、Ni、Coの内、1種類もしくは複数を、合計で5mol%以下に抑えて添加することが好ましい。
しかし、本発明の特性を得るには5mol%を超えてはならない。
(6)次に、本発明のCu−W系合金材料の製造方法について説明する。
Cu−W系合金中に安定相として存在する各構成物質の粉末、即ち、Cu粉、W粉、および放電特性を向上させる働きのある複合タングステン酸塩粉を原料に、公知のCu−W系合金の製法である粉末冶金法(粉末混合・焼結法、または、溶浸法)にて本発明の電極材が得られる。
つまり、本発明の放電加工用Cu−W系合金電極材(請求項1〜3)に用いられる複合タングステン酸塩粉は市販のものをそのまま利用できるが、本発明の製造方法(請求項5)に示すとおり、製造条件、即ち加熱速度、最高温度および保持時間、除熱(冷却)速度を制御することで、他の形態の添加粉末からも本発明のCu−W系合金中に複合タングステン酸塩からなる分散相を生成させる事を新たに見出した。
この生成反応の基本メカニズムは、焼結の過程で熱分解させて周期表の1族元素、2族元素、3族元素の酸化物を生成させ、さらにWと反応を生じさせてタングステン酸塩を生成させるものである。またこの際、液相となっている銅を介して、1族元素、2族元素、3族元素が溶解・拡散・再析出を繰返して複合化も同時進行されるものである。
このメカニズムより、他の形態の添加粉末としては、周期表の1族元素、2族元素、3族元素の各単体タングステン酸塩粉末、または周期表の1族元素、2族元素、3族元素の単体もしくは複数からなる酸化物粉末、炭酸塩粉末、水酸化物粉末、や硼化物粉末等が挙げられる。
また、上記以外にも、焼結温度以下の温度で熱分解してこれら周期表の1族元素、2族元素、3族元素の酸化物を生成する化合物であって、分解生成した酸化物以外の他方の生成物がCu−W系合金中に残留しない物質であれば、本発明に用いることができる。
より詳細な方法について説明すると、これらの代替粉末を用いた場合でも、公知のCu−W系合金の製造で用いられる粉末冶金法と同様に、粉末混合、バインダー混合、プレス法もしくは押出法等で成型を行った後、水素雰囲気下で加熱脱脂を行い、その後、水素雰囲気下で焼結を行うが、本発明の電極材を作製するためには、加熱速度を1.5℃/分以下に制御する必要がある。その理由は、上述のタングステン酸塩粉末以外の物質は各々の熱分解温度に達したところで酸化物と分解生成ガスを生成し出すが、このガスが成型体を壊さないようスムーズに除去するためである。
最高温度は1250℃〜1300℃に設定し、1時間保持する。これはCu−W系合金の十分な緻密化を進めるのに必要な温度と時間である。この時、入手しやすいこれらの代替粉末から熱分解で生成した各々の酸化物とWとが化学反応を起こし、タングステン酸塩の生成や複合化する反応が活発になる。従って、この時の温度は高いほど、保持時間は長いほど良いわけであるが、Cuの融点である1083℃より遥かに高い温度の為、Cuの蒸発も激しくなり組成が変わってしまうので、緻密化が十分進んだ直後に速やかに冷却するのが望ましい。
しかし、これでは求める複合タングステン酸塩相の形成が不十分で、また形成したとしてもその量は少なく、かつ大きさも小さく、放電特性の向上に寄与しない。放電特性の向上効果を得るには、求める複合タングステン酸塩相はある程度の量と大きさが必要で、その大きさは添加形態として最初から複合タングステン酸塩粉を用いた場合のCu−W系合金材と同様、光学顕微鏡による組織観察でその複合タングステン酸塩相を十分認識できる大きさである1μm以上であることが望ましい。
そこで、冷却速度を0.5℃/分以下で除熱(冷却)する事で、Cuの蒸発損失を抑えつつ、求める複合タングステン酸塩相の形成・成長を助長させ、配合時に最初から複合タングステン酸塩粉を用いた場合と同様、目的の電極材料を得ることができる。
なお、上記は粉末混合・焼結法を例にとったが、溶浸法でも同様に、銅粉を除く他の配合成分からなる多孔質焼結体を製作し、次に、この空孔部に銅を溶浸させる際の温度を上記のとおり制御することで、配合時に最初から複合タングステン酸塩粉を用いた場合と同様、目的の電極材料を得ることができる。
ここで、溶浸法とは、例えば、特許文献2に記載されているように、WまたはMoの多孔質焼結体を作製し、その空孔部にCuを溶浸する事でCu−W系もしくはCu−Mo系合金を得る方法のことである。
(具体例)
次に、本発明の具体例について説明する。
市販の電解Cu粉、Fsss粒度で1.2μmのW粉、放電特性向上用の添加剤である各種市販試薬を、それぞれ下記表1に示すNo.1〜No.20の組成で配合し、アトライターで24時間湿式混合・乾燥後、300MPaの圧力でプレス成型した。これを水素雰囲気下の炉で1.5℃/分で昇温、1250℃〜1300℃の温度で1h保持、0.3℃/分〜1.5℃/分で冷却して焼結材料を得た。この後、XRD、WDX、EDX、顕微鏡等による合金組織調査を行い、添加した電子放出向上物質が本発明の狙いとする複合タングステン酸塩相の形態で分散し形成していることを、図1、図2にその一例を示すように、確認した上で、これら焼結材料に機械加工を施し、2.5mm×8mm×L20mmの直方体形状の放電加工用電極に仕上げた。
ここで、図1(b)のピークデータから(Ba,Sr,Ca)WOが合金中にW相、Cu相と共に独立した相として存在していることが分かる。なお、図1(a)は比較用のCu−W単純合金のXRD分析結果を示す図である。また、図2は、(Ba,Sr,Ca)WOを含有するCu−W合金研磨面のSEM像とEPMA分析結果(いずれも3000倍で観察)を示す図である。図2を参照すると、白矢印が(Ba,Sr,Ca)WO相であり、1μm以上の大きさで合金中に分散していることがわかる。その他の粒状物質はW相である。
前述した電極を陰極とし、三菱電機社製型彫り放電加工機VX−20を用いて、WC−14%Coの組成からなる超硬合金(JIS B4053に規程の使用分類記号でZ20に該当)を被加工物として2.5mm×8mmの面で油中型彫り放電加工を行った。
それぞれ放電加工時間を60分と固定して、加工前後の質量減から単位時間当たりの加工体積、電極消耗体積を求め、加工速度〔単位:mm3/分〕(加工体積÷加工時間)と電極消耗率〔単位:%〕(電極消耗体積÷加工体積×100)を算出し、電子放出物質無添加品である表1のNo.18の値を基準の「1」としたときの相対値で加工性能を比較した。
なお、加工条件は、放電電流=29A、パルスOn−Time=128μs、デューティーファクター=33.3%である。
下記表2に、各種電極材料の焼結条件、分散相の形態、放電加工実験結果を記載した。
A;酸化物で添加と、B;炭酸塩で添加は、請求項5の実施例に該当する。
表1,2において、電子放出向上物質を添加していないNo.18を基準にすると、本発明品は電極消耗率を損なうことなく加工速度が大きく向上することがわかる。また、アルカリ土類金属酸化物を添加したNo.17(特許文献1に相当)と本発明品とを比較した場合でも、本発明品の方が電極消耗率を大きく損なうことなく加工速度が上回っており、特性改善効果が得られていることが分かる。
更に、複数の2族元素含む複合タングステン酸塩からなる分散相に,1族元素が固溶する事で、固溶していない場合と比べ、電極消耗率を大きく損なうことなく加工速度が約15%向上しており、放電加工特性の向上効果が得られていることが分かる。(No.3とNo.9、10、11との比較)。特にCs固溶による効果が大きい。
また、複数の2族元素含む複合タングステン酸塩からなる分散相の他に3族元素も含む複合タングステン酸塩からなる分散相も共存形成することで、電極消耗率を損なうことなく加工速度が約10%向上しており、放電加工特性の向上効果が得られていることが分かる(No.3とNo.12、13、14との比較から)。特にSc含有による効果が大きいことが分かる。
以上説明の通り、本発明に係る放電加工用Cu−W系電極は、各種被加工材の放電加工に適用でき、放電加工用Cu−W系電極の製造方法は、この放電加工用電極の製造に適用される。
(a)は比較用のCu−W単純合金のXRD分析結果を示す図である。(b)は(Ba,Sr,Ca)WOを含有するCu−W系合金のXRD分析結果を示す図である。 (Ba,Sr,Ca)WOを含有するCu−W系合金研磨面のSEM像とEPMA分析結果(いずれも3000倍で観察)を示す図である。

Claims (5)

  1. 25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記式Iの複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする放電加工用Cu−W系合金電極材。
  2. 25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期律表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、周期表の1族元素のK、Rb、Csの内から少なくとも1種類以上の粉末を式、(Y)WO(但し、式中のYは1族元素、以下式IIと呼ぶ)により0.02mol%〜0.15mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記1族元素を固溶した前記式Iで示す複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする放電加工用Cu−W系合金電極材。
  3. 25〜60mol%の銅(Cu)粉末と、周期表の2族元素Ca、Sr、Baの内から少なくとも2種類以上の粉末を式、(X)WO(但し、式中のXは2族元素、以下、式Iと呼ぶ)により0.3mol%〜3.0mol%と、周期表の3族元素のSc、Yの内から少なくとも1種類以上の粉末を式、(X)(Z)WO(但し、式中のXは前記2族元素、Zは3族元素、以下、式IIと呼ぶ)により0.03mol%〜0.45mol%と、残部がタングステン(W)粉末とからなる混合粉末を焼結したものからなるか、または、前記銅(Cu)粉末を除いた前記混合粉末からなる多孔質焼結体を作製して、その空孔部に25〜60mol%の銅(Cu)を溶浸したものからなる合金材料であって、
    前記合金材料の組織は、前記2族元素が前記式Iで示す複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成しており、前記3族元素が前記式IIで示す前記2族元素を含む複合タングステン酸塩の形態で分散相を形成していることを特徴とする放電加工用Cu−W系合金電極材。
  4. 請求項1〜3の内のいずれか1つに記載の放電加工用Cu−W系合金電極材において、更にFe、Ni、Coの内から選ばれる少なくとも1種類以上を、合計で5mol%以下含有することを特徴とする放電加工用Cu−W系合金電極材。
  5. 請求項1〜4の内のいずれか1つに記載の放電加工用Cu−W系合金電極材と同等の電極材を得る製造方法であって、前記複合タングステン酸塩の代替粉末として前記周期表の1族元素、2族元素、3族元素の各単体タングステン酸塩粉末、周期表の1族元素、2族元素、3族元素の単体もしくは複数からなる酸化物粉末、炭酸塩粉末、水酸化物粉末、硼化物粉末の内から選ばれる任意の粉末と前記銅(Cu)粉とタングステン粉(W)からなる混合粉末を焼結する時の条件、または、前記代替粉末の何れかと前記タングステン(W)の混合粉末からなる多孔質焼結体を作製しその空孔部に銅(Cu)を溶浸する時の条件を、水素還元雰囲気中で加熱速度1.5℃/分以下で、1250℃〜1300℃で1時間保持後、冷却速度0.5℃/分以下で除熱処理することを特徴とする放電加工用Cu−W系合金電極材の製造方法。
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