JP2006312703A - 電子材料用接着剤シート - Google Patents

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Abstract

【課題】耐サーマルサイクル性および絶縁信頼性に優れた電子材料用接着剤シートを提供すること。
【解決手段】酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Pa以下であることを特徴とする電子材料用接着剤シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子材料用接着剤シートに関する。さらに詳しくは、各種の電子材料、特に半導体集積回路を実装し、パッケージ化する際に用いられる半導体集積回路接続用基板を構成する接着剤シートに関する。
近年、電子技術の進歩に伴い、電子情報端末の小型化、軽量化、高機能化がますます求められている。半導体集積回路(IC)パッケージにおいては、多ピン化、小型化の手段としてBGA方式、LGA方式、PGA方式等が実用化されてきた。中でもBGA方式は多ピン化、軽量化、薄型化に優れたパッケージである。
図1にBGA方式の例を示す。IC1を接続するために絶縁体層3と、導体パターン5と接着剤層4とからなる配線基板層、金バンプ2、ソルダーレジスト7を有し、IC1を接続した半導体集積回路接続用基板の外部接続部としてICのピン数にほぼ対応する半田ボール8を格子状(グリッドアレイ)に有している。また、封止樹脂シート6によりICが封止されている。絶縁体層および導体パターンからなる配線基板層としては、TAB(Tape Automated Bonding)テープやフレキシブルプリント基板がよく用いられる。
このようなICパッケージにおいて、封止樹脂シートや接着剤に要求される特性としては、(a)易加工性、(b)耐リフロー性、(c)低温−高温温度サイクル時における、導体パターンとIC、絶縁体層等の部材間で発生する応力緩和性(耐サーマルサイクル性)、(d)絶縁性等が挙げられる。
中でも、耐リフロー性、耐サーマルサイクル性が重要である。耐リフロー性が低い場合には、半田浴浸漬、不活性ガスの飽和蒸気による加熱(ペーパーフェイズ法)や赤外線リフロー等、ICパッケージ全体が高温に加熱される実装方法において、部材間での界面剥離が生じ、ICパッケージの信頼性を低下する。これは、部材に吸収されていた水分が、加熱時に爆発的に水蒸気化、膨張することに起因すると考えられ、封止樹脂シートや接着剤に対しても、リフロー時に発生する水蒸気が侵入できない程度に硬く、高温接着力の高いことが求められる。また、特に近年、環境負荷物質の低減への取り組みとして、外部端子接続に使用される半田の鉛フリー化が進められている。鉛フリー半田は、従来の鉛系半田より融点が高く、そのためリフロー温度が、従来の鉛系半田と比べると約30℃高く、250〜260℃となる。それに伴い、ICパッケージを構成する部材に対しても高耐リフロー性が要求される。
耐サーマルサイクル性は、重要な高温信頼性の一つである。ICパッケージの構成部材のうち、ICの線膨張係数は5ppm/℃程度であり、配線基板層は、ポリイミドフィルムベースの場合20〜30ppm/℃、導体パターンは、銅箔の場合14〜18ppm/℃である。ICパッケージの温度は、動作停止時は室温レベルであるが、駆動時にはICの発熱により100℃を超える。そのため、ICパッケージは低温−高温の温度サイクルに晒されることとなり、その際、部材間には線膨張係数の差に伴う応力が発生する。従ってこれらを封止する樹脂シートや接着剤には、この温度サイクル時に発生する応力を緩和することが求められる。
また、IC等の素子、電子部品等を実装する多層配線基板においても、ICと多層配線基板との間や、多層配線基板内の導体層と絶縁体層との間の線膨張係数差に起因する熱履歴に対する応力緩和性は重要であり、先述の耐サーマルサイクル性が求められる。
これまでに、接着性、耐リフロー性、電気特性に優れる点で、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体やアクリルゴム、エポキシ樹脂、硬化剤等からなる接着剤が多く提案されている。なかでも耐サーマルサイクル性に優れた接着剤として、アクリルゴム等を用いた接着剤組成物が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
特開平3−181580号公報(1〜4頁) 特開2001−49221号公報([0008]〜[0027]段落)
近年、半導体装置、配線基板等の電子材料に関して、高密度化、大電流化がますます進んでいる。このような高密度、大電流対応ICや、高い使用環境温度に晒される車載用途においては、150℃以上、場合によっては175℃での信頼性対応が求められてきている。公知の接着剤組成物は、そのような高温条件においては、酸素による導体パターンの金属やICのアクティブ面の高温酸化や腐食が起こり、界面剥離や回路絶縁不良等の不具合が生じるという課題がある。
そこで本発明の目的は、従来の接着剤組成物の課題を解決し、耐サーマルサイクル性および絶縁信頼性に優れた電子材料用接着剤シートを提供することにある。
すなわち本発明は、酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Pa以下であることを特徴とする電子材料用接着剤シートである。
本発明によれば、耐サーマルサイクル性、絶縁信頼性に優れた電子材料用接着剤シートを得ることができる。
本発明における電子材料用接着剤シート(以下、接着剤シートと称する)とは、半導体素子を封止する封止樹脂シート、半導体パッケージにおける放熱板や補強板と配線基板(インターポーザー)間の層間接着剤、多層配線基板の層間接着剤、回路基板上に実装された部品を封止する封止樹脂シート等に用いられる接着剤シートであり、被着体の形状および材料は特に限定されない。
本発明の接着剤シートは、酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Pa以下であることを特徴とする。酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Paを超えると、導体パターンの金属やICのアクティブ面で、高温酸化による剥離等の不具合を生じ、耐サーマルサイクル性に劣る。また酸化腐食により回路パターンの絶縁信頼性が低下する。
酸素透過率は、例えば(株)東洋精機製作所製のガス透過率測定装置(機器名、MT−C3)を用いて測定できる。本発明における酸素透過率は、温度25℃、相対湿度0%における値をいう。
本発明の接着剤シートは、酸素透過率を1.0×10−13mol/m・s・Pa以下とするために、少なくとも1層のガスバリア層と、少なくとも1層の接着剤層とを有することが好ましい。ガスバリア層を有することで、酸素透過率を低減し、耐サーマルサイクル性、絶縁信頼性を向上させることができる。ガスバリア層は、接着剤シートの内層にあってもよく、表層にあってもよい。内層にガスバリア層を有する場合は、例えば、接着剤層上にガスバリア層を形成した後、その上に接着剤層を積層することにより作製される。本手順を複数回繰り返すことで、ガスバリア層を複数層形成しても構わない。ガスバリア層を複数形成する場合、2種以上のガスバリア層を組み合わせても良い。また、積層する接着剤層の種類は同種だけでなく、2種以上の異なる接着剤層を組み合わせても良い。あるいは、有機絶縁フィルム上にガスバリア層を形成した後、その有機絶縁フィルムの片面あるいは両面に接着剤層を積層することも可能である。
ガスバリア層の少なくとも1層が、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物および金属からなる群から選ばれる少なくとも一種からなると、酸素透過率を低減することができるため好ましい。
無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金、酸化カルシウム、酸化銀、酸化マンガン、酸化白金等が挙げられる。無機窒化物としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等が挙げられ、無機酸化窒化物としては、酸化窒化ケイ素等が挙げられる。金属としては、アルミニウム、銀、スズ、ニッケル、チタン、ケイ素等が挙げられる。中でもコスト、酸素透過率に優れる点で酸化ケイ素、酸化アルミニウムが好ましい。本発明においては、酸素透過率を低減するために、上記のガスバリア層を複数層積層しても良く、その組み合わせは異種、同種を問わない。
無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物および金属からなる群から選ばれる少なくとも一種からなるガスバリア層の形成方法としては、真空蒸着法、酸化反応蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ化学気相成長法等、公知の方法が用いられ、特に限定されるものではない。
真空蒸着法は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物あるいは金属を加熱して、ガスバリア層を形成する対象面へ蒸着し、薄膜層を形成する方法である。酸化反応蒸着法は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物あるいは金属を原料とし、酸素ガスを導入し、酸化させてから、蒸着する方法である。スパッタリング法は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物あるいは金属をターゲット原料とし、不活性ガス、酸素ガスを導入して、スパッタリングすることにより蒸着する方法である。イオンプレーティング法は、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物あるいは金属を、プラズマビームにより加熱し、蒸着する方法である。プラズマ化学気相成長法(Plasma Chemical Vapor Deposition法、以下、プラズマCVD法と称する)は、有機ケイ素化合物等のモノマーガスを酸素ガスと共に供給し、プラズマ照射することにより、蒸着薄膜を形成する方法である。これらのガスバリア層の形成方法のうち、生産性、コストを考慮すると、スパッタリング法、プラズマCVD法が好ましい。
スパッタリング法を用いて酸化ケイ素からなるガスバリア層を形成する場合、酸化ケイ素またはケイ素をターゲットとして、アルゴン・酸素の混合ガスを放電ガスとして用い、酸化ケイ素膜すなわちSiOx膜を形成する。また、酸化アルミニウムからなるガスバリア層を形成する場合、酸化アルミニウムまたはアルミニウムをターゲットとし、同様に酸化アルミニウム膜すなわちAlOx膜を形成する。放電ガスに用いる酸素の流入量によりxの値は変化するが、その範囲は、SiOxでは1.0〜2.0、AlOxでは0.5〜1.5の範囲に調整することが好ましい。この範囲であると無機酸化膜として安定で、酸素透過率も低くすることができ、好適である。また、放電ガスには、窒素、水素、フッ素等を混合しても良い。
プラズマCVD法を用いて酸化ケイ素からなるガスバリア層を形成する場合、有機ケイ素化合物等を蒸着用モノマーガスとして用いる。有機ケイ素化合物の例としては、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等のジシロキサン化合物、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。モノマーガスと酸素ガス、およびキャリアーガスとして不活性ガスを混合する。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、キセノン等が挙げられる。これらの混合ガスを、ガスバリア層を形成する対象面上に真空チャンバー内で吹き付けながら、プラズマを照射することで酸化ケイ素薄膜を蒸着形成する。
また、ガスバリア層の少なくとも1層が、酸素透過率が低く、かつ耐熱性に優れた層であることが好ましい。酸素透過率が低く、耐熱性に優れた層を形成する材料としては、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、脂肪族ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が例示される。
なかでも、耐熱性の点から、ガラス転移点が200℃以上であるフィルムが特に好ましく、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム等が例示される。その上で酸素透過率の点から、酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Pa以下であるフィルムが更に好ましく、アラミドフィルム等が例示される。また、フィルムは単層であっても、積層フィルムでも良く、同種、異種を問わない。
ガスバリア層のガラス転移点は、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製 DMS6100)を用いて測定できる。本発明におけるガラス転移点は、引っ張りモードで周波数1Hz、昇温速度5℃/分、温度測定範囲−70〜400℃において測定した値をいう。また、本発明において、ガラス転移点が200℃以上であるとは、この測定温度範囲においてガラス転移点を持たないものも含めると定義する。
本発明において、ガスバリア層の膜厚は、本発明の電子材料用接着剤シートの酸素透過率を達成できれば特に限定されず、適宜設定されるが、ガスバリア層が、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物および金属からなる群から選ばれる少なくとも一種からなる場合は、その膜厚は5〜5000nmであることが好ましい。膜厚が5nm以上であれば、ガスバリア効果が高く、5000nm以下であれば、接着剤シートとしての可とう性を損なわず、被着体への接着に適する。膜厚は、ロールtoロールにより連続的にガスバリア層を形成する場合には、搬送速度により調整することができる。また、ガスバリア層形成時に供給する原料ガスや酸素ガス等の量を調整することでも調整可能である。
また、ガスバリア層がフィルムである場合は、膜厚は100μm以下であることが好ましい。100μm以下であれば、接着剤シートとしての可とう性を損なわず、被着体への接着に適する。
本発明の接着剤シートの接着剤層を構成する接着剤組成物は特に限定されないが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、シアン酸エステル樹脂等、公知のものが例示される。
接着性、耐熱性、絶縁信頼性等の観点から、本発明の接着剤層には、熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂をそれぞれ少なくとも1種類含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は接着性、可撓性、熱応力の緩和、低吸水性による絶縁性の向上等の機能を有する。また、熱硬化樹脂だけでは、固いが脆い接着剤膜になり得るが、そこに熱可塑性樹脂を加えることで靱性が加わり、優れた接着剤が得られる。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、接着性、可撓性、熱応力の緩和効果の点から、NBR、SEBS、炭素数1〜8の側鎖を有するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルとアクリロニトリルを共重合成分とする共重合体(アクリルゴム)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ尿素樹脂等、公知のものが例示される。また、熱可塑性樹脂は、1種類でも複数種用いても良い。これらの熱可塑性樹脂は後述の熱硬化性樹脂との反応が可能な官能基を有していてもよい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基、シラノール基等である。これらの官能基によりエポキシ樹脂との結合が強固になり、耐熱性が向上するので好ましい。
ポリアミド樹脂としては、炭素数が36であるジカルボン酸(いわゆるダイマー酸)を必須成分として含むものが好適である。ダイマー酸を含むポリアミド樹脂は、常法によるダイマー酸とジアミンの重縮合により得られるが、この際にダイマー酸以外のアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸を共重合成分として含有してもよい。ジアミンはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン等の公知のものが使用でき、吸湿性、溶解性の点から2種以上の混合でもよい。
熱可塑性樹脂として、接着性、耐熱性、耐薬品性等のバランスから好ましいものとして、カルボキシル基を有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR−C)、スチレン−ブタジエン−エチレン樹脂(SEBS−C)、エポキシ基やカルボキシル基、水酸基を有するアクリルゴムが挙げられる。ここで「C」はカルボキシル基を有するという意味である。
NBR−Cとしては、例えばアクリロニトリルとブタジエンを約10/90〜50/50のモル比で共重合させた共重合ゴムの末端基をカルボキシル化したもの、あるいはアクリロニトリル、ブタジエンとアクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有重合性単量体の三元系共重合ゴム等が挙げられる。具体的には、PNR−1H(日本合成ゴム(株)製)、“ニポール”1072J、“ニポール”DN612、“ニポール”DN631(以上日本ゼオン(株)製)、”ハイカー”CTBN(BFグッドリッチ社製)等がある。また、SEBS−Cとしては、MX−073(旭化成(株)製)が例示できる。
カルボキシル基含有アクリルゴムとしては、SG−280DR、SG−70L、WS−023B(以上ナガセケムテックス(株)製)、エポキシ基含有アクリルゴムとしては、SG−P3、SG−80H(以上ナガセケムテックス(株)製)、“ニポール”AR−51(日本ゼオン(株)製)、水酸基等含有アクリルゴムとしては、XF−1834(トウペ(株)製)等が例示できる。
なかでも、ジエン結合を主鎖に含まないため高温酸化劣化しにくいことから、エポキシ基やカルボキシル基、水酸基を有するアクリルゴムが特に好ましく用いられる。
熱硬化性樹脂は、耐熱性、高温での絶縁性、耐薬品性、接着剤層の強度等のバランスを実現するために好ましく用いられる。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、シアン酸エステル樹脂等公知のものが例示される。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものなら特に制限されないが、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエンジフェノール等のジグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化クレゾールノボラック、エポキシ化トリスフェニロールメタン、エポキシ化テトラフェニロールエタン、エポキシ化メタキシレンジアミン、シクロヘキサンエポキサイド等の脂環式エポキシ等が挙げられる。具体的には、YD−128(東都化成(株)製)、“エピコート”828、“エピコート”1001、“エピコート”180(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)等が例示できる。さらに、難燃性付与のために、ハロゲン化エポキシ樹脂、特に臭素化エポキシ樹脂を用いることも有効である。この際、臭素化エポキシ樹脂のみでは難燃性の付与はできるものの、接着剤の耐熱性の低下が大きくなるため、非臭素化エポキシ樹脂との混合系とすることがさらに有効である。臭素化エポキシ樹脂の例としては、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAの共重合型エポキシ樹脂、あるいは“BREN”−S(日本化薬(株)製)等の臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの臭素化エポキシ樹脂は臭素含有量およびエポキシ当量を考慮して2種類以上混合しても良い。
フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等の公知のフェノール樹脂がいずれも使用できる。たとえば、フェノール、クレゾール、p−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、p−フェニルフェノール等のアルキル置換フェノール、テルペン、ジシクロペンタジエン等の環状アルキル変性フェノール、ニトロ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基等のヘテロ原子を含む官能基を有するもの、ナフタレン、アントラセン等の骨格を有するもの、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、レゾルシノール、ピロガロール等の多官能性フェノールからなる樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂の合計含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して5〜400重量部が好ましく、より好ましくは50〜200重量部である。含有量が5重量部以上であると、高温での弾性率向上効果が得られ、接着剤シートの耐熱性を向上させることができる。含有量が400重量部以下であると、接着剤シートの可撓性が保持され、応力緩和効果と耐熱性のバランスが取れ、好ましい。
本発明の接着剤シートを構成する接着剤層に熱硬化性樹脂の硬化剤および硬化促進剤を含有することは何等制限されない。たとえば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン化合物、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィンおよびトリ(ノニルフェニル)ホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が使用できる。これらを単独または2種以上混合しても良い。含有量は接着剤組成物全体の0.1〜50重量%であると好ましい。
また、硬化剤として、シランカップリング剤を併用することもできる。シランカップリング剤は、ケイ素に有機マトリックスと親和もしくは結合可能な有機官能基と、無機材料と結合可能な加水分解基を有する。有機官能基としては、アルキル基、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリロキシ基、メルカプトキシ基等があり、一般的には炭素数1〜6のアルキレン基を介してケイ素原子と結合している。なかでも有機官能基としてエポキシ基、アミノ基を有しているものは反応性がよく、接着剤の耐リフロー性に優れるため、好ましい。具体的には、有機官能基がアミノ基の場合、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリス(β−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−4,5−ジヒドロキシイミダゾールプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。有機官能基がエポキシ基の場合、β−3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
以上の成分以外に、膜強度を向上させ、接着強度、耐熱性を向上させる目的で無機粒子を含有しても良い。無機粒子の含有量は、接着剤組成物全体の5〜60重量%であることが好ましい。5重量%以上であると、膜強度向上効果が得られ、60重量%以下であると、接着強度を損なわずに、膜強度向上効果が高い。
無機粒子の種類については、特に耐リフロー性の点より、半田リフロー時の250〜260℃といった温度で分解が生じないものが好ましい。具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、タルク等の金属酸化物、アルミニウム、金、銀、ニッケル、鉄等の金属微粒子、あるいはカーボンブラック、ガラスが挙げられる。これらを単独または2種以上混合して用いても良い。
中でも熱分解温度が300℃を大きく超える点、接着剤シートの流動性を調整しやすい点、粒径の安定性の点からシリカが特に好ましい。粒子形状、結晶性は特に制限されず、破砕系、球状、鱗片状等が用いられるが、塗料への分散性が良く、接着剤組成物の接着強度・膜強度等に優れ、かつ熱膨張係数の低下効果が大きいことから、溶融球状シリカが好ましく用いられる。この溶融シリカの製造方法は、必ずしも溶融状態を経る必要はなく、例えば結晶性シリカを溶融する方法および各種原料から合成する方法等が挙げられる。
無機粒子の粒径については、特に限定されないが、分散性および塗工性、耐リフロー性等の観点から、平均粒径は、0.01〜2μmであることが好ましい。平均粒径が0.01μm以上であると、接着剤製造工程中、接着剤塗料における粒子凝集を生じることなく、均一な分散状態とすることが可能で、膜強度を向上させ、接着強度、耐熱性を向上させることができる。平均粒径が2μm以下であると、接着剤組成分中の粒子分散も良く、被着体への埋まり込み不良も生じず、膜強度向上効果に優れる。
なお、無機粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、動的光散乱式粒径分布測定装置等を用いて測定することができる。また、硬化後の接着剤層断面のTEM(透過型電子顕微鏡)観察により、接着剤層中に含有する粒子径を調べることもできる。
また、これらの無機粒子に耐熱性、接着強度等の向上のため、シランカップリング剤等を用いて、表面処理を施しても良い。
本発明において接着剤層の厚みは、被着体の凹凸への埋まり込み、接着強度、耐リフロー性、耐サーマルサイクル性等との関係で適宜選択でき、特に制限されないが、10〜500μmが好ましい。さらに、酸素透過率を容易に1.0×10−13mol/m・s・Pa以下とすることができ、耐サーマルサイクル性、被着体の凹凸への埋まり込み性に優れることから、40〜500μmがより好ましい。
本発明の接着剤シートは、接着剤層の保護のために、片面または両面に保護層を有してもよい。保護層の材料は、被着体へ接着剤シートを貼り合わせるまでに接着剤シートの形態および機能を損なわず、また必要に応じ接着剤シートから剥離できれば特に限定されない。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等のプラスチックフィルム、これらにシリコーン、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂あるいは含フッ素化合物等の離型剤のコーティング処理を施したフィルム、あるいはこれらのフィルムをラミネートした紙やこれらフィルムの積層体、離型性のある樹脂を含浸あるいはコーティング処理した紙等が挙げられる。また、サンドマット加工フィルムも挙げられる。これはフィルム表面を微粒子吹きつけ等により、微小の凹凸を付けたもので、離型性を凹凸レベルにより調節できる。これらの中で、離型性の調節にが容易なシリコーンあるいは含フッ素化合物等の離型処理を施したフィルムが好ましく用いられる。さらに好ましくは、前述の離型処理が施されたポリエステルフィルムが耐熱性の点で優れている。
保護層を有する場合、保護層と接着剤層との接着力は1〜200N/mであることが好ましく、より好ましくは3〜150N/mである。1N/m以上であれば、保護層が脱落せず、加工に適する。200N/m以下であれば、接着剤シートの実使用時に必要に応じ剥離でき、好適である。また、特に接着剤シートの両面に保護フィルムを有する場合は、それぞれの保護フィルムの接着剤層に対する剥離力をF1、F2(F1>F2)としたとき、F1−F2は好ましくは5N/m以上、さらに好ましくは10N/m以上である。なお、剥離力の測定は、剥離角度90°、剥離速度300mm/分にて行う。
保護層は、加工時に視認性が良いように顔料等による着色が施されていても良い。例えば、接着剤シートの両面に保護層を有する場合、先に剥離する側の保護フィルムのみに着色したフィルムを用いると、剥離するフィルムが簡便に認識できるため、誤使用を避けることができる。
また、本発明の接着剤シートは、シート表層が接着剤層である場合、IC、導体パターンや絶縁体層等の被着体へ貼り合わる際の気泡の噛み込みを防止するため、接着剤シートの片面あるいは両面を粗面化して、接着剤シートの粘着性を低減しても構わない。ここでいう粘着性とは、いわゆる接着剤シート表面のべたつきである。粘着性が高い場合、接着剤シートを被着体へ貼る際に気泡を噛み込みやすくなる。一旦噛み込んだ気泡は逃げ道が無く、そのまま残留気泡として残り、その後の信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。この方法によれば、被着体への接点が分散されることにより粘着性が低減される。接着剤の粗面化の方法は、特に限定されるものではないが、次の例が挙げられる。
接着剤組成物が溶解された塗液をフィルム上に塗布、乾燥し、半硬化状態の接着剤シートを作製する際、接着剤組成物が塗布されるフィルムの表面形状に凹凸があれば、その凹凸が接着剤シート表面に転写され、粗面化できる。例えばエンボス加工やサンドマット加工されたフィルムであれば良い。また、作製された接着剤シートの保護層に凹凸のあるフィルムを用い、ラミネートすれば同様に凹凸が接着剤シート表面に転写される。ただし、フィルム表面の凹凸に接着剤が埋まり込むことより、実際の使用の際、フィルムを剥がしにくくなることがある。このため、特に本発明で好ましく用いられるフィルムは、シリコーンあるいは含フッ素化合物等の離型処理を施したフィルムである。その他にも、接着剤シートを凹凸のあるゴムロール等で粗面化することもできる。
また、本発明の接着剤シートに、低粘着な接着剤層を薄く積層して粘着性を下げる手法と粗面化を組み合わせることで、より低粘着な接着剤シートにすることもできる。低粘着な接着剤層の具体的な例としては、無機粒子を増量した接着剤層、もしくは薄厚の接着剤シートに加熱エージングを行うことで粘着性をコントロールした接着剤層等が挙げられる。
次に、本発明の接着剤シートおよびこれを用いてIC封止を行ったICパッケージの製造方法の例について説明する。
(1)電子材料用接着剤シートの作製:接着剤組成物を溶剤に溶解した接着剤溶液を、離型処理を行ったポリエステルフィルム(保護フィルムA)上に塗布、乾燥することで半硬化、すなわちBステージ状態の接着剤層を得る。接着剤層の膜厚は10〜100μmとなるように塗布することが好ましい。乾燥条件は通常、100〜200℃、1〜5分である。溶剤は特に限定されないが、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロドリン等の非プロトン系極性溶剤単独あるいは混合物が好適である。
塗布、乾燥した接着剤層上に、さらに高い離型性を有するポリエステルあるいはポリオレフィン系の保護フィルム(保護フィルムB)をラミネートしながらロールに巻き取り、Bステージ状態(半硬化)の接着剤シート(以下、接着剤シートAと称する)を得る。場合によってはラミネート後に、例えば40〜100℃で1〜200時間程度エージングして硬化度を調整してもよい。次に得られた接着剤シートAの保護フィルムBを剥がしながら、接着剤表面上に、先述の方法により、ガスバリア層を形成する。これにより得られた接着剤シート(以下、接着剤シートBと称する)は、図2に示された構造を有する。
次に先程用いた接着剤溶液を用い、保護フィルムB上に塗布、乾燥を行いBステージ状態の接着剤層を得る。その上に先に作製した接着剤シートBのガスバリア層面をラミネートしながらロールに巻き取り、保護フィルムA/接着剤層/ガスバリア層/接着剤層/保護フィルムBとなる積層構造を持つ接着剤シート(以下、接着剤シートCと称する)が得られる。図3に接着剤シートCの構造を示す。
(2)半導体集積回路接続用基板(パターン付きTABテープ)の作製:ポリイミドフィルム上に接着剤層および保護フィルム層を積層した3層構造のTAB用テープを、下記(a)〜(d)の工程により加工する。(a)スプロケットおよびデバイス孔の穿孔、(b)銅箔との熱ラミネート、(c)銅箔エッチングによるパターン作製、(d)スズまたは金メッキ処理を施す。以上のようにして、パターン付きTABテープを得る。
(3)半導体装置の作製:(2)で得られたパターン付きTABテープのインナーリード部を、ICの金バンプに熱圧着(インナーリードボンディング)し、ICを搭載する。次いで、(1)で得られた接着剤シートCを真空圧着機等により、IC封止部分に圧着する。圧着後、最後に熱風オーブン内で接着剤シートCの加熱硬化のため、80〜200℃で15〜180分程度のポストキュアを行う。以上より半導体装置を得る。図1に半導体装置の一態様の断面図を示す。
また、特にピン数の多いICパッケージにおいては、TABテープに補強、放熱、電磁的シールドを目的とする金属板、いわゆるスティフナーあるいはヒートスプレッダーを積層しても良く、図4に示されるような構造を取る。IC1を接続するために絶縁体層3と、導体パターン5と接着剤層4からなる配線基板層、金バンプ2、ソルダーレジスト7、半田ボール8を有している。また、封止樹脂シート6によりICが封止されている。さらにスティフナーが接着剤シート13により絶縁体層3へ接着されている。本発明の接着剤シートは、図4の封止樹脂シート6や接着剤シート13に使用することができる。特に、TABテープにスティフナーあるいはヒートスプレッダーを接着するために、本発明の電子材料用接着剤シートを用いることは、接着性、耐リフロー性、耐サーマルサイクル性の点からも好適である。
本発明の接着剤シートは、多層配線基板の層間接着剤として用いることも可能で、酸素透過性が低く、多層配線基板内の銅箔の酸化を防ぐことができるため、絶縁信頼性に優れた特性を示す。多層配線基板の製造方法の例を以下に示す。
(1)少なくとも片面に導体パターンを有するフィルム基板の少なくとも片面に、本発明の電子材料用接着剤シートをラミネーターにより仮圧着する。さらに、片面に導体層を有するフィルム基板の導体層を外側にして、先程の接着剤シートの上へ加熱圧着し、ポストキュアを行い、積層一体化する。
(2)工程(1)で得られた積層基板に少なくとも片側からレーザー加工を施すことでビアホールを形成した後、無電解メッキおよび電解メッキを行い、導電処理を施し、層間を導通させる。
(3)工程(2)で得られた積層基板の導体層をエッチングにより所定パターンに配線加工する。以上の工程を順次行うことで、任意の積層数を持つ多層配線基板が得られる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。まず、実施例および比較例で用いた評価方法について説明する。
<1>評価用パターンテープの作製
TAB用接着剤付きテープ(東レ(株)製、商品名#7100)に18μm厚の電解銅箔を、140℃、0.3MPa、0.3m/分の条件でロールラミネートした。続いてエアオーブン中で、80℃で3時間、100℃で5時間、150℃で5時間の順次加熱キュア処理を行い、銅箔付きTAB用テープを作製した。得られた銅箔付きTAB用テープの銅箔面に、常法によりフォトレジスト膜を形成し、エッチング、レジスト剥離を行い、導体幅25μm、導体間距離25μmのくし形状導体パターンを有する評価用パターンテープを作製した。
<2>接着強度
上記<1>で作製した評価用パターンテープの導体パターン上に本発明の接着剤シートを130℃、0.5MPa、0.3m/分の条件でロールラミネートした。その後、エアオーブン中で、100℃で1時間、160℃で2時間の順次ポストキュアを行い、評価用サンプルを作製した。接着剤シート側から5mm幅にスリットした後、接着剤シートを90°方向に50mm/分の速度で剥離し、その際の接着強度を測定した。接着強度は、加工性、ハンドリング性、装置の信頼性の観点より、5N/cm以上であることが好ましい。
<3>耐リフロー性
上記<2>の方法で作製したポストキュア済み評価用サンプルを30mm角に切断したものを20個片準備した。そのサンプルを125℃で12時間加熱乾燥した後に30℃、70%RHの条件下、168時間吸湿させた後、最高温度250℃、10秒または最高温度260℃、10秒のIRリフローにかけ、その剥離状態を超音波短傷機により観察した。各リフロー温度における試験で剥離が生じたサンプルが20個片中何個あるかを調べ、その割合を不良率とした。
<4>酸素透過率
保護層を剥がした接着剤シートを、エアオーブン中で、100℃で1時間、160℃で2時間の順次ポストキュアを行った。ポストキュアしたサンプルを温度25℃、相対湿度0%において、JIS K7126 A法に準拠して酸素透過率を測定した。測定装置は、(株)東洋精機製作所製のガス透過率測定装置(機器名、MT−C3)を用いた。
<5>サーマルサイクル試験
上記<2>の方法で作製したポストキュア済み評価用サンプルを30mm角に切断したものを20個片準備した。そのサンプルをサーマルサイクル試験機(タバイエスペック(株)製、PL−3型)に投入し、−65℃〜175℃でのサーマルサイクル試験を行った。最低温度、最高温度をそれぞれ30分間保持するサイクルとし、計500サイクル行った後の、サンプルにおける層間剥離の有無を評価した。剥離が生じたサンプルが20個片中何個あるかを調べ、その割合を不良率とした。
<6>高温高湿絶縁信頼性
上記<2>の方法で作製したポストキュア済み評価用サンプルを用いて、恒温恒湿槽(タバイエスペック(株)製、TPC−211D型)中で、130℃、85%RHの条件下、100Vの電圧を連続的に印加した状態において、抵抗値を測定し、1×10−8以下になるまでに有した時間を測定した。なお、測定は500時間まで行った。
<7>高温絶縁信頼性
上記<2>の方法で作製したポストキュア済み評価用サンプルを用いて、175℃オーブン内で100Vの電圧を連続的に印加した状態において、抵抗値を測定し、1×10−8以下になるのに有した時間を測定した。なお、測定は250時間まで行った。
参考例1(ポリアミド樹脂の合成)
酸として、ダイマー酸PRIPOL1009(ユニケマ社製)およびアジピン酸、アミンとして、ヘキサメチレンジアミンを用い、酸/アミン比を等量で、酸/アミン反応物、1%以下のリン酸触媒を加え、140℃で1時間、205℃で1.5時間撹拌加熱を行った。2kPaの真空下で、0.5時間保持、放冷し、重量平均分子量20000、酸価10のポリアミド樹脂を得た。
実施例1〜6
下記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂およびその他添加剤を、それぞれ表1に示した組成比となるように配合し、濃度28重量%となるようにDMF(ジメチルホルムアミド)/モノクロルベンゼン/MIBK(メチルエチルイソブチルケトン)等量混合溶媒に40℃で撹拌、溶解して接着剤溶液を作製した。
A.熱可塑性樹脂
NBR−C(日本ゼオン(株)製、商品名ニポール1072)
エポキシ基含有アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、商品名SG−P3)
カルボキシル基含有アクリルゴム(ナガセケムテックス(株)製、商品名SG−70L)
参考例で作製したポリアミド樹脂
B.エポキシ樹脂
o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート180)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート828)
ノボラック型臭素化エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名BREN−S)
C.無機粒子
球状シリカ((株)トクヤマ製、商品名SE−1、平均粒径0.7μm)
球状シリカ((株)アドマテックス製、商品名SO−C1、平均粒径0.2μm)
水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名ハイジライト43M、平均粒径0.6μm)
D.フェノール樹脂
フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業(株)製、商品名PSM4261)
アルキルフェノール樹脂(日立化成工業(株)製、商品名ヒタノール2410)
E.添加剤
4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名キュアゾールC11Z)
イミダゾリウムトリメリテート(四国化成工業(株)製、商品名キュアゾール2PZ−CNS)。
これらの接着剤溶液をバーコータで、表面がシリコーン処理された厚さ75μmのポリエステルフィルム(ニッパ(株)製、商品名V2、以下、ポリエステルフィルム1という)上に、50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、100℃で1分間および150℃で5分間乾燥し、その上にポリエステルフィルム1より剥離力が低いポリエステルフィルム(ニッパ(株)製、商品名HSP、以下、ポリエステルフィルム2という)をラミネートしながらロールに巻き取り、Bステージ状(半硬化)の厚さ50μmの接着剤層を有する接着剤シート(以下、接着剤シート1という)を作製した。ここで用いたポリエステルフィルムは、日東電工(株)31Bテープによる剥離試験により剥離力を測定したところ、ポリエステルフィルム1は4N/m、ポリエステルフィルム2は1.5N/mであった。次に接着剤シート1のポリエステルフィルム2を剥がしながら、スパッタリング法を用い、接着剤層上に厚さ100nmの酸化ケイ素からなるガスバリア層を形成した。これにより得られた接着剤シート(以下、接着剤シート2という)は、図2に示された構造を有する。次に先程用いた接着剤溶液を、ポリエステルフィルム2上に50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、100℃で1分間および150℃で5分間乾燥した。その上に先に作製した接着剤シート2のガスバリア層が貼り合わされるように、ラミネートしながらロールに巻き取り、ポリエステルフィルム1/接着剤層50μm/ガスバリア層100nm/接着剤層50μm/ポリエステルフィルム2となる積層構造を持つ接着剤シート3を作製した。得られた接着剤シート3の評価結果を表1に示す。
実施例7、8
ガスバリア層として厚さ100nmの酸化アルミニウム膜をスパッタリング法で形成し、表2に記載の接着剤組成を用いた以外は実施例1と同様の方法で接着剤シートを作製した。得られた接着剤シートの評価結果を表2に示す。
実施例9
蒸着用モノマーガスとしてヘキサメチルジシロキサンを用いたプラズマCVD法により、厚さ100nmの酸化ケイ素膜をガスバリア層として形成した以外は実施例3と同様の方法で接着剤シートを作製した。得られた接着剤シートの評価結果を表2に示す。
実施例10〜12
表2に記載の接着剤組成とした以外は実施例1と同様に接着剤溶液を作製した。その接着剤溶液をバーコータで、表面がシリコーン処理された厚さ75μmのポリエステルフィルム1上に、50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、100℃で1分間および150℃で5分間乾燥し、その上にアラミドフィルム(東レ(株)製、商品名ミクトロン、ガラス転移点270℃、フィルム厚み4μm)を、ラミネートロール温度80℃にてラミネートしながらロールに巻き取り、Bステージ状(半硬化)の厚さ50μmの接着剤層を有する接着剤シート(以下、接着剤シート4という)を作製した。これにより得られた接着剤シート4は、図2に示された構造を有する。
次に先程用いた接着剤溶液を、ポリエステルフィルム2上に50μmの乾燥厚さとなるように塗布し、100℃で1分間および150℃で5分間乾燥した。その上に先に作製した接着剤シート4のアラミドフィルム面が貼り合わされるように、ラミネートロール温度80℃にてラミネートしながらロールに巻き取り、ポリエステルフィルム1/接着剤層50μm/アラミドフィルム/接着剤層50μm/ポリエステルフィルム2となる積層構造を持つ接着剤シート(以下、接着剤シート5という)を作製した。得られた接着剤シート5の評価結果を表2に示す。
実施例13
アラミドフィルムをポリイミドフィルム(東レデュポン(株)製、商品名カプトン100H、フィルム厚み25μm)に換えた以外は、実施例11と同様の方法で接着剤シートを作製した。得られた接着剤シートの評価結果を表3に示す。
なお、本実施例で使用したポリイミドフィルムは、動的粘弾性測定装置での測定における弾性率変化の変曲点が見られなかった。
実施例14
アラミドフィルムをポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名テオネックスQ51、ガラス転移点121℃、フィルム厚み25μm)に換えた以外は、実施例11と同様の方法で接着剤シートを作製した。得られた接着剤シートの評価結果を表3に示す。
比較例1〜3
表3に記載の接着剤組成を用い、ガスバリア層を形成しない点以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルム1/接着剤層100μm/ポリエステルフィルム2の積層構造を有する接着剤シートを作製した。得られた接着剤シートの評価結果を表3に示す。
Figure 2006312703
Figure 2006312703
Figure 2006312703
表1〜3の実施例および比較例の結果から明らかなように、本発明により耐サーマルサイクル性および絶縁信頼性に優れた電子材料用接着剤シートが得られる。
BGA型半導体装置の一態様を示す断面図。 本発明の電子材料用接着剤シートの一態様を示す断面図。 本発明の電子材料用接着剤シートの一態様を示す断面図。 本発明の半導体装置用接着剤シートを用いて加工したBGA型半導体装置の一態様を示す断面図。
符号の説明
1 IC
2 金バンプ
3 絶縁体層
4 接着剤層
5 導体パターン
6 封止樹脂シート
7 ソルダーレジスト
8 半田ボール
9 ガスバリア層
10 接着剤層
11 保護層
12 スティフナー
13 接着剤シート

Claims (4)

  1. 酸素透過率が1.0×10−13mol/m・s・Pa以下であることを特徴とする電子材料用接着剤シート。
  2. 少なくとも1層のガスバリア層と、少なくとも1層の接着剤層とを有することを特徴とする請求項1記載の電子材料用接着剤シート。
  3. ガスバリア層の少なくとも1層が、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物および金属からなる群から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項2記載の電子材料用接着剤シート。
  4. ガスバリア層の少なくとも1層のガラス転移点が200℃以上であることを特徴とする請求項2記載の電子材料用接着剤シート。
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