JP2004255845A - ガスバリアー性ポリイミドフィルムおよびそれを用いた金属積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弾性率が4GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が5〜22ppm/℃、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であるポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドフィルムであって、酸素透過率が5.0×10−15mol/m2・s・Pa以下であることを特徴とするガスバリアー性ポリイミドフィルム。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高寸法精度を持つポリイミドフィルムにバリアー層を設けることにより、酸素や水蒸気を通過させにくく、そのため高温下においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、高寸法精度を要求されるファインピッチ回路用基板に好適なガスバリアー性ポリイミドフィルム及びその金属積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブルプリント基板や半導体パッケージの高繊細化に伴い、それらに用いられるポリイミドフィルムへの要求事項も多くなっており、例えば金属との張り合わせによる寸法変化やカールを小さくすること、およびハンドリング性の高いことなどが挙げられ、ポリイミドフィルムの物性として金属並の熱膨張係数を有すること及び高弾性率であること、さらには吸水による寸法変化の小さいフィルムが要求され、それに応じたポリイミドフィルムが開発されてきた。
【0003】
例えば弾性率を高めるためパラフェニレンジアミンを使用したポリイミドフィルムが知られている(特許文献1〜3参照)。また高弾性を保持しつつ吸水による寸法変化を低減させるためパラフェニレンジアミンに加えビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用したポリイミドフィルムも知られている(特許文献4,5参照)。
【0004】
これらにより得られたポリイミドフィルムは、フィルム単体では寸法精度が高く、ファインピッチ基板を作成する工程での寸法変化も小さくなり、要求に見合ったものが得られつつある。一方でチップ実装時などの高温に暴露される工程でポリイミドフィルムを通過した酸素や水分により、ポリイミドフィルム上に積層された金属層が劣化され、結果的にポリイミドフィルムと金属層の剥離強度が著しく低下するといった問題がある。
【0005】
このような高温暴露による金属層とポリイミドフィルムの剥離強度の低下を抑えることを目的とし、ポリイミドフィルムに金属層を積層する面と反対側の面に金属や合金の薄膜を形成させた基板の例が知られている(特許文献6参照)。この方法によると確かに高温暴露による剥離強度の低下は無くなるが、金バリアー層として金属薄膜を形成させているため、ファインピッチ基板用途に必要とされる可撓性や絶縁性を損ねることになる。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−210629号公報
【特許文献2】特開昭64−16832号公報
【特許文献3】特開平1−131241号公報
【特許文献4】特開昭59−164328号公報
【特許文献5】特開昭61−111359号公報
【特許文献6】特開平6−29634号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高寸法安定であり、高温化においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、ファインピッチ回路用基板に好適なガスバリアー性ポリイミドフィルム及びその金属積層体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高寸法安定のポリイミドフィルムにガスバリアー性を持つSiOx膜を付与させ、酸素透過率を低下させることにより、可撓性や絶縁性を損ねることなく、高寸法精度を持ち、高温暴露時のポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下を防ぐことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のガスバリアー性ポリイミドフィルムは、弾性率が4GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が5〜22ppm/℃、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であるポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドフィルムであって、酸素透過率が5.0×10−15mol/m2・s・Pa以下であることを特徴とする。
【0011】
さらには上記ポリイミドフィルムにおいて、以下のことを特徴とするガスバリアー性ポリイミドフィルムである。
(1)水蒸気透過率が2.0g/m2・24h以下であること。
(2)ポリイミドフィルム上に形成されるSiOx層の厚さが10〜100nmであること。
(3)耐折回数(MIT)が20000回以上であること。
(4)ポリイミドフィルム単体では、水蒸気透過率が10g/m2・24h以上のポリイミドフィルムを使用すること。
【0012】
また本発明のガスバリアー性ポリイミドフィルムを用いた金属積層体は、ポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドにおいて、SiOx層が形成されている面とは反対の面にプラズマ処理を施し金属層が直接積層された金属積層体であることを特徴とする。
【0013】
さらには上記金属積層体において、以下のことを特徴とする金属積層体である。
(1)ポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドにおいて、SiOx層が形成されている面とは反対の面にプラズマ処理を施し接着剤を介して金属層が積層されていること。
(2)ポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドにおいて、SiOx層の上にプラズマ処理を施し金属層が直接積層されていること。
(3)ポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドにおいて、SiOx層の上にプラズマ処理を施し接着剤を介して金属層が積層されていること。
(4)150℃、240時間の加熱処理後のポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が初期剥離強度値の2分の1以上を保持すること。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のベースとなるポリイミドフィルムを製造するに際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液を得る。
【0015】
上記芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。この中でフィルムの引っ張り弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、ベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引っ張り弾性率が4.0GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が5〜22ppm/℃にすることが、ファインピッチ基板用として好ましい。
【0016】
上記芳香族酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジンー2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体などの酸無水物が挙げられる。この中でピロメリット酸の使用量を全芳香族酸無水物中50モル%以上使用すると得られるポリイミドフィルムの水蒸気透過率が10g/m2・24h以上になる。水蒸気透過率がこの値以上であるとポリイミドフィルムの吸水速度、脱水速度が速くなり、すなわちポリイミドフィルムのコンディショニングが容易となるので好ましい。水蒸気透過率がこの値以下になると吸水速度、脱水速度が遅くなり、すなわち有る条件下でのフィルム寸法がなかなか安定しなく、コンディショニングが困難となるので好ましくない。
【0017】
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0018】
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族テトラカルボン酸類成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法。
【0019】
(2)先に芳香族テトラカルボン酸類成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族テトラカルボン酸類成分と等量になるよう加えて重合する方法。
【0020】
(3)一方の芳香族ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して芳香族テトラカルボン酸類化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン化合物を添加し、続いて芳香族テトラカルボン酸類化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0021】
(4)芳香族テトラカルボン酸類化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、芳香族テトラカルボン酸類化合物を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0022】
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミド酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミド酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族テトラカルボン酸成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で芳香族テトラカルボン酸成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう調整する。
【0023】
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0024】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・s、好ましくは、100〜1000Pa・sのものが、安定した送液のために好ましく使用される。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0025】
次に、ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0026】
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作成しこれを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの線膨張係数を低く抑えることができるので好ましい。
【0027】
化学的に脱環化させる方法においては、まず上記ポリアミック酸溶液を調製する。
【0028】
なお、このポリアミック酸溶液は、必要に応じて、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびポリイミドフィラーなどの化学的に不活性な有機フィラーや無機フィラーを、30重量%未満濃度で含有することができる。
【0029】
ここで使用するポリアミック酸溶液は、予め重合したポリアミック酸溶液であっても、またフィラー粒子を含有させる際に順次重合したものであってもよい。
【0030】
上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤およびゲル化遅延剤などを含有することができる。
【0031】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
【0032】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
【0033】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、環化触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う。
【0034】
上記ポリアミック酸溶液は、スリット状口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0035】
上記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により制御される。
【0036】
上記ゲルフィルムは、支持体からの受熱および/または熱風や電気ヒータなどの熱源からの受熱により30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒などの揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0037】
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、通常回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸される。機械搬送方向への延伸倍率(MDX)は、140℃以下の温度で1.05〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍、さらに好ましくは1.1〜1.5倍で実施される。搬送方向に延伸されたゲルフィルムは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方法へ延伸される。この時フィルムの幅方向の延伸倍率(TDX)は、1.05〜1.7倍、好ましくは1.1〜1.5倍で実施される。
【0038】
上記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーターなどで15秒から10分加熱される。次いで、熱風および/または電気ヒーターなどにより、250〜500の温度で15秒から20分熱処理を行う。
【0039】
また走行速度を調整しポリイミドフィルムの厚みを調整するが、ポリイミドフィルムの厚みとしては3〜250μmが好ましい。これより薄くても厚くてもフィルムの製膜性が著しく悪化するので好ましくない。
【0040】
このようにして得られたポリイミドフィルムをさらに200〜500℃の温度でアニール処理を行うことが好ましい。そうすることによってフィルムの熱リラックスが起こり、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下に抑えることができる。200℃1時間の加熱収縮率が0.05%より大きくなると、チップ実装時の高温暴露による寸法精度が低下するので好ましくない。具体的には200〜500℃の炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行う。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、30秒〜5分の処理時間であることが好ましい。これより短いとフィルムに充分熱が伝わらず、また長いと過熱気味になり平面性を損なうので好ましくない。また走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、また張力が高いと得られたフィルムの走行方向の加熱収縮率が高くなるので好ましくない。
【0041】
本発明におけるポリイミドフィルムの片面に形成させるSiOx膜の作成法としては、スパッタ法が挙げられる。具体的には、酸化珪素または珪素をターゲットとして、アルゴン・酸素の混合ガスを放電ガスとして用いSiOx膜を形成する。この時の酸素の流入量によりxの数値が変化するが、xは1.0〜2.5の範囲に調整することが好ましい。この範囲よりxが低くなると基板全体の可撓性が低下し、またxがこの範囲より高くなると基板全体の酸素透過率並びに水蒸気透過率が高くなり、ひいてはガスバリアー性を低下させることになるので好ましくない。放電ガスの種類としては、ガスバリアー性を高める目的に合えば、窒素、水素、フッ素などを混合させても良い。
【0042】
その他SiOx膜の作成法として、真空蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等などにより作成することも、可能である。
【0043】
SiOx膜の厚さとしては、基板全体の酸素透過率が5.0×10−15mol/m2・s・Pa以下、水蒸気透過率が2.0g/m2・24h以下に保たれればよく、5〜100nmが好ましく、より好ましくは10〜50nmが好ましい。この範囲以下であれば、バリアー性付与させる効果が無く、この範囲以上だと可撓性を損ない、またコスト高になるので好ましくない。
【0044】
金属積層体を得る方法としては、まずポリイミドフィルムの接着性を高めるため、SiOxが形成された面とは反対の面にプラズマ処理を施し、その上に直接金属層を積層させる方法、またプラズマ処理面に接着剤を介して金属層を積層させる方法により所望の金属積層体を得る。この時のプラズマ処理は、ポリイミド表面を活性化させるのが目的であり、プラズマガス種としては、酸素、窒素、アルゴン、CF4などを単独あるいは混合で用いることができる。また直接金属層を積層させる方法としては、スパッタ法、めっき法が挙げられる。接着剤を介して金属積層体を得る時、使用する接着剤としてはエポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、アクリル系接着剤等、公知の接着剤を使用して良い。
【0045】
金属積層体を得るもう1つの方法としては、ポリイミドフィルム上に形成されたSiOxの上にプラズマ処理を施し、その上に直接金属層を積層させる方法、またプラズマ処理面に接着剤を介して金属層を積層させる方法により所望の金属積層体を得ることも可能である。
【0046】
このようにして得られる金属積層体は高温暴露でも著しく接着力が低下することなく、例えば150℃、240時間の加熱処理後においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が初期剥離強度の2分の1以上を保持することができ、なおかつ、高い寸法精度を持ち、ファインピッチ回路用基板に好適である。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみによって限定されるものではない。
【0048】
なお、実施例中のPPDはパラフェニレンジアミン、4,4’−ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ODAは3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、PMDAはピロメリット酸二無水物、BPDAは3,3’−4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、DMAcはN,N−ジメチルアセトアミドを、それぞれ表す。
【0049】
また、各種特性の評価、試験は、以下に説明する方法により行なった。
(1)弾性率
機器:RTM−250を使用し、引張速度:100mm/minの条件で測定した。
(2)線膨張係数
機器:TMA−50を使用し、測定温度範囲:50〜200℃、昇温速度:10℃/minの条件で測定した。
(3)加熱収縮率
25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L1)を測定し、続いて200℃60分間加熱した後再び25℃、60%RHに調整された部屋に2日間放置した後フィルム寸法(L2)を測定し、下記式計算により評価した。
【0050】
加熱収縮率 = −(L2−L1)/L1×100
(4)酸素透過率
23℃、絶乾下においてJIS K7126のB法に準拠して測定した。
(5)水蒸気透過率
40℃,90%RHにおいてJIS K7129のB法(赤外センサー法)にしたがって測定した。
(6)耐折回数(MIT)
JIS P 8115に準じた方法にて測定した。
(7)SiOx層厚
試料を超薄切片法により薄膜化し、サンプルの断面をTEM観察して、10万倍での写真によりSiOx膜層の厚みを求めた。TEM観察の装置としては透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA)を用い、測定条件は加速電圧100kVにて観察した。
(8)剥離強度
JIS−C−6471に基づき、90度引き剥がし法により評価した。引き剥がしは、フィルム側を固定し、銅側を上方に50mm/minで引っ張ることにより行った。
【0051】
[参考例1]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここにPPD3.116g(0.029モル)、4,4’−ODA23.076g(0.115モル)、BPDA12.715g(0.043モル)、PMDA21.994g(0.101モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0052】
このポリアミック酸溶液から15gを採って、マイナス5℃で冷却した後、無水酢酸1.5gとβ−ピコリン1.6gを混合することにより、ポリアミック酸のイミド化を行った。
【0053】
こうして得られたポリイミドポリマーを、90℃の回転ドラムに30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.1倍延伸した。次いで幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.3倍延伸した後、表1および表2に示す最高温度にて5分間加熱し、25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ18g/m2・24hであった。
【0054】
[参考例2]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここにPPD3.293g(0.030モル)、4,4’−ODA24.393g(0.122モル)、PMDA33.214g(0.152モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0055】
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ60g/m2・24hであった。
【0056】
[参考例3]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに3,4’−ODA13.117g(0.066モル)、4,4’−ODA16.032g(0.080モル)、PMDA31.751g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0057】
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ24g/m2・24hであった。
【0058】
[参考例4]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに4,4’−ODA29.149g(0.146モル)、PMDA31.751g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
【0059】
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ55g/m2・24hであった。
【0060】
[実施例1〜4]
参考例1で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によりポリイミドフィルム上にSiOx層を形成させた。スパッタ速度を変えることにより、SiOx層の厚みを調整し、10nm(実施例1)、20nm(実施例2)、50nm(実施例3)、100nm(実施例4)の4種を作成した。それぞれの特性結果を表1に示す。
【0061】
[実施例5]
参考例2で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によりポリイミドフィルム上に20nm厚のSiOx層を形成させた。これの特性を表1に示す。
【0062】
[実施例6]
参考例3で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によりポリイミドフィルム上に20nm厚のSiOx層を形成させた。これの特性を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
[比較例1]
参考例1で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によるSiOx層形成は行わなかった。これの特性結果を表2に示す。
【0065】
[比較例2〜3]
参考例1で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によりポリイミドフィルム上にそれぞれ3nm厚(比較例2)、150nm厚(比較例3)のSiOx層を形成させた。これらの特性を表2に示す。
【0066】
[比較例4]
参考例4で得たポリイミドフィルムを220℃に設定された炉の中で20N/mの張力をかけて1分間アニール処理を行った後、スパッタ法によりポリイミドフィルム上に20nm厚のSiOx層を形成させた。これの特性を表2に示す。
【0067】
[比較例5]
参考例1で得たポリイミドフィルムにアニール処理を行わず、スパッタ法によりポリイミドフィルム上に20nm厚のSiOx層を形成させた。これの特性を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
[剥離強度・寸法変化評価]
実施例1〜6及び比較例2〜5それぞれSiOx層を形成させた面と反対側の面に0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を施し、その上にスパッタ、めっき法で厚さ10μmの銅層を形成させた。比較例1については片面に前述の酸素プラズマ処理を施し、その上にスパッタ、めっき法で厚さ10μmの銅層を形成させた。これらをJIS−C−6471に基づき積層体の初期剥離強度を測定した。この後150℃、150時間加熱した後の積層体の剥離強度も測定した。結果を表3、表4に示す。尚比較例3は加熱時にクラックが生じた。
【0070】
またそれぞれ銅層を形成させる前の段階で加熱収縮率を寸法変化指標として評価した。併せて表3、表4に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
[比較例6]
実施例1で得たポリイミドフィルムのSiOx層が形成された面と反対側の面に前述の酸素プラズマ処理を施さずにスパッタ、めっき法により10μm厚の銅層を形成させて、初期剥離強度を測定したが、2.5N/cmと低い値であった。
【0074】
[実施例7]
実施例1で得たポリイミドフィルムのSiOx層が形成された面と同一面に前述の酸素プラズマ処理を施し、その上にスパッタ、めっき法により10μm厚の銅層を形成させて、初期剥離強度及び長期加熱後剥離強度(150℃、150h)を測定した。下記の通り長期加熱後の剥離強度が初期剥離強度の2分の1以上を保持した。
【0075】
初期剥離強度 :5.0N/cm
長期加熱後剥離強度:5.4N/cm
[実施例8]
実施例1で得たポリイミドフィルムのSiOx層が形成された面と反対側の面に前述の酸素プラズマ処理を施し、その上に接着剤としてパイララックス(デュポン製)を介して12μm厚銅を積層させ、180℃・4.0MPa・1時間プレスした。これの初期剥離強度及び長期加熱後剥離強度(150℃、150h)を測定した。下記の通り長期加熱後の剥離強度が初期剥離強度の2分の1以上を保持した。
【0076】
初期剥離強度 :9.0N/cm
長期加熱後剥離強度:6.5N/cm
[実施例9]
実施例1で得たポリイミドフィルムのSiOx層が形成された面と同一の面に前述の酸素プラズマ処理を施し、その上に接着剤としてパイララックス(デュポン製)を介して12μm厚銅を積層させ、180℃・4.0MPa・1時間プレスした。これの初期剥離強度及び長期加熱後剥離強度(150℃、150h)を測定した。下記の通り長期加熱後の剥離強度が初期剥離強度の2分の1以上を保持した。
【0077】
初期剥離強度 :7.5N/cm
長期加熱後剥離強度:6.0N/cm
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガスバリアー性ポリイミドフィルムは高寸法安定のポリイミドフィルムにガスバリアー性を持つSiOx層が形成されており、酸素や水蒸気を通過させにくく、そのため高温下においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、なおかつ寸法変化が小さく、可撓性を損ねることもなく、高寸法精度を要求されるファインピッチ回路用基板に好適に用いることができる。
Claims (10)
- 弾性率が4GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が5〜22ppm/℃、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であるポリイミドフィルムの片面にSiOx層が形成されたガスバリアー性ポリイミドフィルムであって、酸素透過率が5.0×10−15mol/m2・s・Pa以下であることを特徴とするガスバリアー性ポリイミドフィルム。
- 水蒸気透過率が2.0g/m2・24h以下であることを特徴とする請求項1記載のガスバリアー性ポリイミドフィルム。
- ポリイミドフィルム上に形成されるSiOx層の厚さが10〜100nmであることを特徴とする請求項2記載のガスバリアー性ポリイミドフィルム。
- 耐折回数(MIT)が20000回以上であることを特徴とする請求項3記載のガスバリアー性ポリイミドフィルム。
- ポリイミドフィルム単体では、水蒸気透過率が10g/m2・24h以上のポリイミドフィルムを使用することを特徴とする請求項4記載のガスバリアー性ポリイミドフィルム。
- 請求項1〜5いずれか記載のガスバリアー性ポリイミドフィルムの、SiOx層が形成されている面とは反対の面にプラズマ処理を施し、その面に金属層が直接積層された金属積層体。
- 請求項1〜5いずれか記載のガスバリアー性ポリイミドフィルムの、SiOx層が形成されている面とは反対の面にプラズマ処理を施し、その面に接着剤を介して金属層が積層された金属積層体。
- 請求項1〜5いずれか記載のガスバリアー性ポリイミドフィルムの、SiOx層の上にプラズマ処理を施し、その上に金属層が直接積層された金属積層体。
- 請求項1〜5いずれか記載のガスバリアー性ポリイミドにフィルムの、SiOx層の上にプラズマ処理を施し、その上に接着剤を介して金属層が積層された金属積層体。
- 150℃、240時間の加熱処理後のポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が初期剥離強度値の2分の1以上を保持する請求項6〜9いずれか記載の金属積層体。
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