JP5709018B2 - 金属積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリイミドフィルムに金属層が積層された金属積層体に関するものである。
フレキシブルプリント基板や半導体パッケージの高繊細化に伴い、それらに用いられるポリイミドフィルムへの要求事項も多くなっており、例えば金属との張り合わせによる寸法変化やカールを小さくすること、およびハンドリング性の高いことなどが挙げられ、ポリイミドフィルムの物性としては、金属並の熱膨張係数を有すること、および高弾性率であること、さらには吸水による寸法変化が小さいことなどが要求され、それに応じたポリイミドフィルムが開発されてきた。
これらの要求に応える技術としては、例えば、弾性率を高めるためにパラフェニレンジアミンを使用したポリイミドフィルム(例えば、特許文献1〜3参照)が知られている。また、高弾性を保持しつつ吸水による寸法変化を低減させるためパラフェニレンジアミンに加えビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用したポリイミドフィルム(例えば、特許文献4、5参照)も知られている。
これらにより得られた従来のポリイミドフィルムは、フィルム単体では寸法精度が高く、ファインピッチ基板を作成する工程での寸法変化も小さくなり、要求に見合ったものが得られつつある。
その一方で、回路の小型化に伴い、配線ピッチが短くなり金属層とポリイミドフィルムの剥離強度が一層重要となっている。また、チップ実装時などの高温に暴露される工程でポリイミドフィルムを通過した酸素や水分により、ポリイミドフィルム上に積層された金属層が劣化され、結果的にポリイミドフィルムと金属層の剥離強度が著しく低下するといった問題がある。
このような、高温暴露による金属層とポリイミドフィルムの剥離強度の低下を抑えることを目的とし、ポリイミドフィルムに金属層を積層する面と反対側の面に金属や合金の薄膜を形成させた基板(例えば、特許文献6〜7参照)が知られている。しかしながら、この方法によると、確かに高温暴露による剥離強度の低下は無くなるが、バリアー層として金属薄膜を形成させているため、ファインピッチ基板用途に必要とされる可撓性や絶縁性を損ねることになり、この点がさらに問題となっていた。
また、剥離強度を改善する方法として、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を重合する際に、モノマーとしてカルボニル基等の官能基を側鎖に持つジアミンや酸二無水物を用いてポリアミック酸重合時に官能基を導入して剥離強度を向上させる方法や、アミノシロキサンを重合に用いる方法(例えば、特許文献8〜9参照)等があるが、これらの技術では重合性が悪くて分子量が増加せず、フィルムの物性が著しく低下する等の問題を有していた。
特開昭60−210629号公報 特開昭64−16832号公報 特開平1−131241号公報 特開昭59−164328号公報 特開昭61−111359号公報 特開平6−237056号公報 特開平6−29634号公報 特開平5−10576号公報 特開平5−310934号公報
本発明の目的は、水の接触角が小さく、高寸法安定性で酸素や水蒸気を通過させにくく、そのため常温での金属層とポリイミドフィルムの剥離強度が高く、高温下においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、高寸法精度を要求されるファインピッチ回路用基板に好適なポリイミドフィルムを用いた金属積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
また、本発明の金属積層体は、ポリアミック酸にアミノ官能基シロキサンを0.1〜1重量%添加して製膜した後、表面処理を行ってフィルム表面にSiO 層を形成して製造されたポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、金属層が積層されている金属積層体であって、ポリイミドフィルムの水への接触角が10°以下である金属積層体である。
本発明によれば、以下に説明するとおり、水の接触角が小さく、高寸法安定性で酸素や水蒸気を通過させにくく、そのため常温での金属層とポリイミドフィルムの剥離強度が高く、高温下においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、高寸法精度を要求されるファインピッチ回路用基板に好適なポリイミドフィルムおよびそれを用いた金属積層体を得ることができる。
本発明に用いるポリイミドフィルムは、高寸法安定のポリイミドフィルムにガスバリアー性を持つSiO層が形成されており、酸素や水蒸気を通過させにくく、そのため高温下においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度の低下が小さく、なおかつ寸法変化が小さく、可撓性を損ねることもないことから、高寸法精度を要求されるファインピッチ回路用基板に好適に用いることができる。
本発明に用いるポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
本発明に用いるポリイミドフィルムを製造するに際しては、まず芳香族ジアミン成分と酸無水物成分とを有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液を得る。
上記芳香族ジアミン類の具体例としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメトキシベンチジン、1,4−ビス(3メチル−5アミノフェニル)ベンゼンおよびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。この中でフィルムの引っ張り弾性率を高くする効果のあるパラフェニレンジアミン、ベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミンの量を調整し、最終的に得られるポリイミドフィルムの引っ張り弾性率が4.0GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が5〜22ppm/℃にすることが、ファインピッチ基板用ポリイミドフィルムとして好ましい。
上記芳香族酸無水物成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体などの酸無水物が挙げられる。
また、本発明において、ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族テトラカルボン酸類成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法、
(2)先に芳香族テトラカルボン酸類成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族テトラカルボン酸類成分と等量になるよう加えて重合する方法、
(3)一方の芳香族ジアミン化合物を溶媒中に入れ、反応成分に対して芳香族テトラカルボン酸類化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン化合物を添加し、続いて芳香族テトラカルボン酸類化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法、
(4)芳香族テトラカルボン酸類化合物を溶媒中に入れ、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、芳香族テトラカルボン酸類化合物を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法、
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミド酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族テトラカルボン酸成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で芳香族テトラカルボン酸成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう調整する方法、等の方法から適宜選択することができる。
重合方法は、その他公知の方法を用いてもよい。
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・s、好ましくは、100〜1000Pa・sのものが、安定した送液のために好ましく使用される。また、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
ポリアミック酸溶液は、必要に応じて、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムおよびポリイミドフィラーなどの化学的に不活性な有機フィラーや無機フィラーを、30重量%未満濃度で含有することができる。ここで使用するポリアミック酸溶液は、予め重合したポリアミック酸溶液であっても、またフィラー粒子を含有させる際に順次重合したものであってもよい。
上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤およびゲル化遅延剤などを含有することができる。
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャ溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環ストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミック酸化させてゲルフィルムを作成しこれを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの線膨張係数を低く抑えることができるので好ましい。
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、環化触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行うことが好ましい。
上記ポリアミック酸溶液は、好ましくは、スリット状の口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
上記支持体は、好ましくは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により液体または気体の熱媒によりおよび/または電気ヒーターなどの輻射熱により制御されることが好ましい。
上記ゲルフィルムは、好ましくは、支持体からの受熱および/または熱風や電気ヒーターなどの熱源からの受熱により、30〜200℃、より好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒などの揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、通常、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸される。機械搬送方向への延伸倍率(MDX)は、好ましくは、140℃以下の温度で1.05〜1.9倍、より好ましくは1.1〜1.6倍、さらに好ましくは1.1〜1.5倍で実施される。搬送方向に延伸されたゲルフィルムは、好ましくは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方法へ延伸される。この時フィルムの幅方向の延伸倍率(TDX)は、好ましくは、1.05〜1.7倍、より好ましくは1.1〜1.5倍で実施される。
上記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、好ましくは、熱風、赤外ヒーターなどで15秒から10分加熱される。次いで、好ましくは、熱風および/または電気ヒーターなどにより、250〜500の温度で15秒から20分熱処理を行う。
また、好ましくは、走行速度を調整しポリイミドフィルムの厚みを調整するが、ポリイミドフィルムの厚みとしては3〜250μmが好ましい。
本発明は、ポリアミック酸にアミノ官能基シロキサンを0.1〜1重量%添加して製膜した後、表面処理を行ってフィルム表面にSiO層を形成するポリイミドフィルムの製造方法である。
本発明において、ポリイミドフィルムの表面に形成させるSiO膜の作成法としては、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸にアミノ官能基シロキサンを0.1〜1重量%(対固形分換算)添加して製膜する。本発明において、好ましくは、ポリアミック酸とアミノ官能基シロキサンの表面自由エネルギーの差を利用し、ポリイミドフィルムの表面へアミノ官能基シロキサンを析出させる。
ここで、本発明に用いられるアミノ官能基シロキサンの具体例としては、例えば、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサン、アミノ官能性シロキサン(7量体)、アミノ官能性シロキサン(9量体)ジメチルシリコーンオイル等挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いることができる。
これらアミノ官能基シロキサンの添加量は、ポリアミック酸の固形分に対して0.1〜1重量%であり、特に0.4〜0.7重量%が好ましい。ポリアミック酸の固形分に対して、0.1重量%未満では、フィルム表面のシロキサン濃度が低い為、シロキサンを酸化させてもSiO2層の密度が向上しない為、充分な効果が得られず酸素透過率が低下しない。また、0.1重量%未満では、150℃、240時間の加熱処理後のポリイミドと金属層との剥離強度が低下する。1重量%を超えるとフィルム中のシロキサン濃度の向上により、ガラス転移温度の低下、CTEや弾性率及び耐折回数が低下して、ポリイミドフィルムの信頼性が低下する。
本発明に用いるポリイミドフィルムは、製膜した後、表面処理を行ってフィルム表面にSiO層を形成する。
表面処理は、酸素プラズマ処理またはUVオゾン処理等の処理が好ましい。
UVオゾン処理の条件としては混合ガスとしてオゾン、酸素、窒素を用い185nm及び254nmを主な波長とする紫外線を照射してオゾン及び活性酸素を発生させて、オゾン及び活性酸素を含有する混合ガスをフィルム表面に吹きつけることができれば特に制限されないが、使用する紫外線ランプは185nm及び254nmを放射する低圧水銀灯が好ましく、紫外線ランプの出力としては、25W(ワット)、40W、56W、350W等各種のランプを選択できるが、表面処理には高出力のものが、生産スピードを上げることができるので好ましい。
また、処理時間としては350Wのランプを用いた際は3秒〜5秒、さたに好もしくは5秒〜8秒間の処理が好ましい。
次に酸素プラズマ処理の条件としては、グロー放電等の公知の方法を採用することができるが、ポリイミドフィルムの酸素プラズマ表面処理を好ましく実施するには、内部電極型低温プラズマ発生装置中で、電極間に少なくとも1,000ボルト以上の放電電圧を与えてグロー放電を行い、ポリイミドフィルム表面を低温プラズマ雰囲気と接触させることがこのましい。
上記酸素プラズマ処理のためのプラズマ用ガスとしては、酸素と共にヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、空気、亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、水蒸気、水素、亜硫酸ガス、シアン化水素などが例示され、これらは単独または二種以上のものを混合して使用することができる。本発明では、特に、含酸素無機ガスの使用が好ましく、より好ましくは二酸化炭素と水蒸気である。
装置内におけるガス雰囲気の圧力は0.001〜10トールの範囲が好ましく、更に好ましくは0.1〜1.0トールである。0.001トール未満であったり、10トール以上であると放電が不安定となり好ましくない。
このようにしてSiO層を形成したポリイミドフィルムをさらに200〜500℃の温度でアニール処理を行うことが好ましい。そうすることによってフィルムの熱リラックスが起こり、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下に抑えることができる。200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であると、チップ実装時の高温暴露による寸法精度が高いので好ましい。具体的には200〜500℃の炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行う。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントロールすることになり、30秒〜5分の処理時間であることが好ましい。30秒〜5分の処理時間であるとフィルムに充分熱が伝わり、平面性がよいので好ましい。また走行時のフィルム張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。走行時のフィルム張力が10〜50N/mであると、フィルムの走行性が良く、得られたフィルムの走行方向の加熱収縮率が低いので好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの水の接触角が10°以下である。水の接触角が10°より大きいと接着剤を介して金属層が直接積層されている基板においても接着強度が低くなる。本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの水の接触角は、好ましくは、5〜8°である。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの水蒸気透過率が2.0×10−15mol/m・s・Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.5g/m・24h以下である。水蒸気透過率が2.0g/m・24hを超えると、長期加熱後の剥離強度が低下するので、好ましくない。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの酸素透過率が、5.0×10−15mol/m・s・Pa以下であることが好ましい。酸素透過率が5.0×10−15mol/m・s・Paを超えると、長期加熱後の剥離強度が低下するため好ましくない。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの弾性率が4GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が0〜22ppm/℃であるであることが好ましい。ポリイミドフィルムの弾性率が4GPa以上、50〜200℃の線膨張係数が0〜22ppm/℃であると、ファインピッチ基板用ポリイミドフィルムとして、特に、好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、ポリイミドフィルムの耐折回数(MIT)が100000回以上、特に130000回以上であることが好ましい。また、200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であることが、好ましい。200℃1時間の加熱収縮率が0.05%以下であると、チップ実装時の高温暴露による寸法精度が良く、特に、好ましい。
本発明の金属積層体は、ポリアミック酸にアミノ官能基シロキサンを0.1〜1重量%添加して製膜した後、表面処理を行ってフィルム表面にSiO層を形成するポリイミドフィルムの製造方法であり、ポリイミドフィルムの水への接触角が10°以下であるポリイミドフィルムの製造方法で製造されたポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に金属層が積層されている金属積層体である。本発明の金属積層体を得る方法としては、スパッタ法、めっき法が挙げられる。
本発明の金属積層体は、好ましくは、ポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、直接、金属層が積層されている。
本発明の金属積層体は、好ましくは、ポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、接着剤を介して、金属層が積層されている。接着剤を介して金属積層体を得る時に使用する接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、アクリル系接着剤などの公知の接着剤を使用して良い。
本発明の金属積層体は、150℃、240時間の加熱処理後のポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が、初期剥離強度値の2分の1以上を保持していることが好ましい。
このようにして得られる本発明の金属積層体は、高温暴露でも著しく接着力が低下することなく、例えば150℃、240時間の加熱処理後においてもポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が初期剥離強度の2分の1以上を保持することができ、なおかつ、高い寸法精度を持ち、ファインピッチ回路用基板に好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみによって限定されるものではない。
なお、実施例中のPPDはパラフェニレンジアミン、4,4’−ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ODAは3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、PMDAはピロメリット酸二無水物、BPDAは3,3’−4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、DMAcはN,N−ジメチルアセトアミドを、それぞれ表す。
また、各種特性の評価、試験、処理は以下に説明する方法により行なった。
(1)弾性率
機器:株式会社製オリエンテック RTM−250を使用し、引張速度:100mm/minの条件で測定した。
(2)線膨張係数
機器:株式会社島津製作所 TMA−50を使用し、測定温度範囲:50〜200℃、昇温速度:10℃/minの条件で測定した。
(3)酸素透過率
23℃、絶乾下においてJIS K7126のB法で測定した。
(4)水蒸気透過率
40℃,90%RHにおいてJIS K7129のB法(赤外センサー法)にしたがって測定した。
(5)耐折回数(MIT)
JIS P 8115に記載された方法で測定した。
(6)水接触角
フィルム表面を除電装置(井内盛栄堂 静電気除去装置 SF−1000)を使用して除電した後、水(超純水)で各n=5回測定した接触角の平均を求めた。接触角の測定は協和界面科学社製Face Model CA-Xを用いて測定を行った。この値が小さいということは水濡れ性が良く接着力が一般に高い。
(7)剥離強度
実施例1〜6及び比較例1〜7のそれぞれのフィルム上にスパッタ、めっき法で厚さ10μmの銅層を形成させた。これらをJIS−C−6471に基づき、90度引き剥がし法により積層体の初期剥離強度を測定した。引き剥がしは、フィルム側を固定し、銅側を上方に50mm/minで引っ張ることにより行った。この後150℃、150時間加熱した後の積層体の剥離強度も測定した。なお、測定はポリアミック酸粒延時に支持体と接していた面:D面と空気と接していたA面の両方について実施した。
(8)ガラス転移温度
ガラス転移温度はSIIナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用い、JIS-K7244-4 プラスチック−動的機械特性の試験方法−第4部:引張振動−非共振法に準じて測定し、解析はE’’(損失弾性率)の値を採用した。
(9)酸素プラズマ処理
0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で実施した。
[参考例1]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここにPPD3.116g(0.029モル)、4,4’−ODA23.076g(0.115モル)、BPDA12.715g(0.043モル)、PMDA21.994g(0.101モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
このポリアミック酸溶液から15gを採って、マイナス5℃で冷却した後、無水酢酸1.5gとβ−ピコリン1.6gを混合することにより、ポリアミック酸のイミド化を行った。
こうして得られたポリイミドポリマーを、90℃の回転ドラムに30秒流延させた後、得られたゲルフィルムを100℃で5分間加熱しながら、走行方向に1.1倍延伸した。次いで、幅方向両端部を把持して、270℃で2分間加熱しながら幅方向に1.3倍延伸した後、400℃にて5分間加熱し、25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ18g/m・24hであった。
[参考例2]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここにPPD3.293g(0.030モル)、4,4’−ODA24.393g(0.122モル)、PMDA33.214g(0.152モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ60g/m・24hであった。
[参考例3]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに3,4’−ODA13.117g(0.066モル)、4,4’−ODA16.032g(0.080モル)、PMDA31.751g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ24g/m・24hであった。
[参考例4]
500mlのセパルブルフラスコにDMAc239.1gを入れ、ここに4,4’−ODA29.149g(0.146モル)、PMDA31.751g(0.146モル)を投入し、常温常圧中で5時間攪拌させ、均一になるまで撹拌して30℃での粘度が3500poiseのポリアミック酸溶液を得た。
あとは、参考例1と同じ要領にてイミド化、延伸、加熱し25μm厚みのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの水蒸気透過率を測定したところ55g/m・24hであった。
[実施例1〜3]
参考例1で記載の方法で得たポリアミック酸に、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサンをポリアミック酸固形分に対し0.4重量%、(実施例1)、0.7重量%、(実施例2)、1.0重量%(実施例3)、1.0重量%添加し、参考例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムに、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行い、SiO層を形成させたポリイミドフィルムを得た。それぞれの特性を表1に示す。
[実施例4]
参考例2記載の方法で得たポリアミック酸に、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサンをポリアミック酸固形分に対0.6重量%添加し、参考例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムに、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行い、SiO層を形成させたポリイミドフィルムを得た。それぞれの特性を表1に示す。
[実施例5]
参考例3記載の方法で得たポリアミック酸に、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサンをポリアミック酸固形分に対0.6重量%添加し、参考例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムに、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行い、SiO層を形成させたポリイミドフィルムを得た。それぞれの特性を表1に示す。
Figure 0005709018
[比較例1]
参考例1で記載の方法で得たポリイミドフィルムに対し、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行った。それぞれの特性を表2に示す。
[比較例2]
参考例1で記載の方法で得たポリアミック酸に、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサンをポリアミック酸固形分に対し0.08重量%添加し、参考例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムに、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行い、SiO層を形成させたポリイミドフィルムを得た。それぞれの特性を表2に示す。
[比較例3]
参考例1で記載の方法で得たポリアミック酸に、ジアミノプロピルテトラメチルジシロキサンをポリアミック酸固形分に対し1.4重量%、(比較例3)添加し、参考例1と同様の方法でポリイミドフィルムを得た。
このポリイミドフィルムに、0.1torr圧力下、電力13kW、処理時間10秒の条件で酸素プラズマ処理を行わなかった。それぞれの特性を表2に示す。
[比較例4]
実施例2で記載の方法で得たポリイミドフィルムに酸素プラズマ処理を行わなかった。それぞれの特性を表2に示す。
[比較例5]
実施例4で記載の方法で得たポリイミドフィルムに酸素プラズマ処理を行わなかった。それぞれの特性を表2に示す。
[比較例6]
実施例5で記載の方法で得たポリイミドフィルムに酸素プラズマ処理を行わなかった。それぞれの特性を表2に示す。
Figure 0005709018

Claims (7)

  1. ポリアミック酸にアミノ官能基シロキサンを0.1〜1重量%添加して製膜した後、表面処理を行ってフィルム表面にSiO 層を形成して製造されたポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、金属層が積層されている金属積層体であって、ポリイミドフィルムの水への接触角が10°以下である金属積層体。
  2. ポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、直接、金属層が積層されている請求項に記載の金属積層体。
  3. ポリイミドフィルムのSiO層が形成されている面に、接着剤を介して、金属層が積層されている請求項に記載の金属積層体。
  4. 150℃、240時間の加熱処理後のポリイミドフィルムと金属層との剥離強度が、初期剥離強度値の2分の1以上を保持している請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属積層体。
  5. ポリイミドフィルムの水蒸気透過率が、2.0×10 −15 mol/m ・s・Pa以下、および/または、ポリイミドフィルムの酸素透過率が、5.0×10 −15 mol/m ・s・Pa以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属積層体。
  6. ポリイミドフィルムの表面処理を、酸素プラズマ処理、または、UVオゾン処理により行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属積層体。
  7. ポリイミドフィルムの弾性率が4GPa以上、ポリイミドフィルムの50〜200℃の線膨張係数が0〜22ppm/℃である請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属積層体。
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