以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1に、実施の形態に係るビーム照射装置の構成を示す。
図示の如く、ビーム照射装置は、DSP(Digital Signal Processor)制御回路10と、DAC(Digital AnalogConverter)20と、レーザ駆動回路30と、アクチュエータ駆動回路40と、ビーム照射ヘッド50と、PSD(Position Sensitive Detector)信号処理回路60と、ADC(Analog Digital Converter)70、PD(Photo Detector)信号処理回路80、受光部90を備えている。
DSP制御回路10は、レーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40を駆動制御するためのデジタル信号をDAC20に出力する。DAC20は、DSP制御回路10から入力されたデジタル信号をアナログ信号(制御信号)に変換してレーザ駆動回路30およびアクチュエータ駆動回路40に出力する。
レーザ駆動回路30は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内の半導体レーザ100を駆動する。アクチュエータ駆動回路40は、DAC20から入力された制御信号に応じて、ビーム照射ヘッド50内のレンズアクチュエータ300を駆動する。
ビーム照射ヘッド50は、前方空間に設定された目標領域にレーザ光をスキャンさせながら照射する。図示の如く、ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ100と、アパーチャ200と、レンズアクチュエータ300と、ビームスプリッタ400と、集光レンズ500と、PSD600を備えている。
半導体レーザ100から出射されたレーザ光は、アパーチャ200によって所望の形状に整形された後、レンズアクチュエータ300に支持された照射レンズに入射される。ここで、照射レンズは、同図のY−Z平面方向に変位可能となるよう、レンズアクチュエータ300によって支持されている。したがって、照射レンズを通過したレーザ光は、レンズアクチュエータ300の駆動に応じて、Y−Z平面方向に出射角度が変化する。これにより、目標領域におけるレーザ光のスキャンが行われる。
照射レンズを通過したレーザ光は、ビームスプリッタ400によってその一部が反射され、照射レーザ光(目標領域に照射されるレーザ光)から分離される。分離されたレーザ光(分離光)は、集光レンズ500を通してPSD600上に収束される。PSD600は、図1のX−Y平面に平行な受光面を有しており、この受光面上における分離光の収束位置に応じた電流を出力する。ここで、受光面上における分離光の収束位置と目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置は一対一に対応している。よって、PSD600から出力される電流は、目標領域上における前記照射レーザ光の照射位置に対応するものとなっている。なお、PSD600の構成および電流の出力動作については、図5、図6を参照しながら追って詳述する。
PSD600からの出力電流はPSD信号処理回路60に入力される。PSD信号処理回路60は、入力された電流から分離光の収束位置を表す電圧信号をADC70に出力する。ADC70は、入力された電圧信号をデジタル信号に変換してDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された電圧信号をもとに、受光面上における分離光の収束位置を検出する。
なお、DSP制御回路10には、レーザ光の照射位置を目標領域内においてスキャンさせるためのテーブル(スキャンテーブル)と、このテーブルに従ってレーザ光をスキャンさせたときの、受光面上における分離光の収束位置の軌道を示すテーブル(軌道テーブル)が配備されている。
DSP制御回路10は、レーザ光のスキャン動作時、スキャンテーブルを参照しながらアクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。
また、同時に、ADC70から入力された信号をもとに受光面上における分離光の収束位置を検出し、検出した位置と軌道テーブルにて規定された所期の収束位置とを比較して、検出位置が所期の収束位置に引き込まれるよう、アクチュエータ駆動回路40を制御するための信号をDAC20に出力する。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は、スキャンテーブルにて規定された軌道に沿うよう目標領域内をスキャンする。なお、サーボ動作の詳細は、図10を参照しながら追って詳述する。
さらに、DSP制御回路10は、レーザ光のスキャン動作時、半導体レーザ100がレーザ光をパルス(矩形)状に発光するための信号を、DAC20を介してレーザ駆動回路30に出力する。ここで、パルス状とは、半導体レーザ100の出力をゼロレベルから一定期間だけハイレベルにすることをいう。これにより、レーザ光は目標領域内にマトリックス状に設定された各ブロック(図7(a)参照)の位置にて、一定期間、発光される。
また、これと同時に、DSP制御回路10は、PSD信号処理回路60からの信号をもとに、PSD600の受光面上における分離光の収束位置を監視する。
受光部90は、照射されたレーザ光が障害物等によって反射された光を受光する。図示の如く、受光部90は、PD(Photo Detector)800と、集光レンズ900を備える。
障害物等からの反射光は、集光レンズ900を通してPD800上に収束される。PD800は、図1のX−Y平面に垂直な反射光受光面を有しており、この反射光受光面上における光量に応じた電流を出力する。なお、このPD800としては、従来のPDを使用することができる。
PD800からの出力電流は、PD信号処理回路80に入力される。PD信号処理回路80は、入力された電流から反射光の光量を表す電圧信号を生成し、これをADC70に出力する。ADC70は、入力された電圧信号をデジタル信号に変換し、これをDSP制御回路10に出力する。
DSP制御回路10は、入力された電圧信号をもとに、反射光受光面上における反射光の光量を検出する。そして、検出した光量を、そのときの照射レーザ光の照射位置に対応付けて、反射光量テーブル(後述)に格納する。
DSP制御回路10には、目標領域上における照射レーザ光の照射位置と、その位置における照射レーザ光の出射光量とを対応づけたテーブル(出射光量テーブル)が配備されている。ここで、照射位置は、目標領域内にマトリックス状に設定された各ブロック(図7(a)参照)の位置とされている。この出射光量テーブルには、全照射位置に対して出射光量のデフォルト値が初期設定されている。その後、後述する照射レーザ光のパワー調整処理にしたがって、各ブロック位置の出射光量が逐次更新される。
また、DSP制御回路10には、目標領域上における照射レーザ光の照射位置と、その位置に出射光量テーブルに従って照射レーザ光を照射したときに検出される反射光量とを対応づけたテーブル(反射光量テーブル)が配備されている。ここで、照射位置は、上記出射光量テーブルの場合と同様、目標領域内にマトリックス状に設定された各ブロック(図7(a)参照)の位置とされている。各照射位置は、PSD受光面上における上記分離光の収束位置をもとに検出される。この受光光量テーブルには、全照射位置に対して受光光量のデフォルト値が初期設定されている。その後、スキャン動作時に検出される各ブロック位置の受光光量にしたがって、各ブロック位置の受光光量が逐次更新される。
DSP制御回路10は、たとえば、レーザ光によるスキャン動作時等に、反射光量テーブルを参照しながら、後述の如くして、目標領域における照射レーザ光の光量の不均一性を検出し、この検出結果を、表示装置(図示しない)を介してユーザに報知し、あるいは、この検出結果に基づいて、目標領域における照射レーザ光の光量が均一となるように、半導体レーザ100から出射されるレーザ光の出力を制御するための信号をDAC20に出力する。
図2に、レンズアクチュエータ300の構成(分解斜視図)を示す。
同図を参照して、照射レンズ301は、レンズホルダー302中央の開口に装着される。レンズホルダー302には、4つの側面にそれぞれコイルが装着されており、各コイル内にヨーク303中央の突出部が図示矢印のように挿入される。各ヨーク303は、両側の舌片が一対のヨーク固定部材305の凹部に嵌入される。さらに、それぞれのヨーク固定部材305に、ヨーク303の舌片を挟むようにして磁石304が固着される。この状態にて、ヨーク固定部材305が磁石304とともにベース(図示せず)に装着される。
さらに、ベースには一対のワイヤー固定部材306が装着されており、このワイヤー固定部材306にワイヤー307を介してレンズホルダー302が弾性支持される。レンズホルダー302には四隅にワイヤー307を嵌入するための孔が設けられている。この孔にそれぞれワイヤー307を嵌入した後、ワイヤー307の両端をワイヤー固定部材306に固着する。これにより、レンズホルダー302がワイヤー307を介してワイヤー固定部材306に弾性支持される。
駆動時には、レンズホルダー302に装着されている各コイルに、上記アクチュエータ駆動回路40から駆動信号が供給される。これにより、電磁駆動力が発生し、照射レンズ301がレンズホルダーとともに2次元駆動される。
ここで、上記アクチュエータ駆動回路40から出力される水平方向(図1のy方向)の駆動信号(VCM駆動電流)は、図3に示すような矩形波、正弦波、のこぎり波、山形波などのいずれの波形であってもよい。
例えば、制御信号を矩形波とする場合、照射レンズ301は、駆動信号が−Iから+Iに、あるいは、+Iから−Iに切り替わることに応じて水平方向の駆動方向が反転する。この場合、アクチュエータ300の駆動パターンが単純となり、また、パルス間隔を調整することによって水平方向におけるレーザ光の移動ストロークを調整することができる。
また、制御信号を正弦波とする場合、照射レンズ301は、駆動信号が−Iから+Iに向かう期間において第1の水平方向に変位し、駆動信号が+Iから−Iに向かう期間において第1の水平方向とは反対の第2の水平方向に変位する。この場合、アクチュエータ300の追従性を良好にすることができる。また、正弦波の周期を調整することによって、水平方向におけるレーザ光の移動ストロークを調整することができる。
同様に、制御信号を山形波やのこぎり波とする場合にも、山形波のこぎり波の周期を調整することによって、水平方向におけるレーザ光の移動ストロークを調整することができる。
図4は、レンズアクチュエータ300を駆動して照射レンズ301を一方向に変位させたときの、照射レーザ光の出射角度とPSD受光面上における分離光(同図ではモニター光)の収束位置の関係(シミュレーション)を示すものである。同図に示す如く、分離光の変位量は照射レーザ光の出射角度に比例して増加する。なお、同図の特性にうねりが生じているのは、照射レンズを2次元駆動することによって、PSD受光面上の分離光に収差が生じるためである。
図5に、PSD600の構造を示す。なお、同図は、図1において、PSD600をY軸方向から見たときの構造を示すものである。
図示の如く、PSD600は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、図1のX方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、図1のY方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
受光面に分離光が収束されると、収束位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、分離光の収束位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における収束位置を検出することができる。
図6(a)は、PSD600の有効受光面を示す図である。また、図6(b)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとにPSD信号処理回路60にて生成される位置検出電圧と、有効受光面上における分離光の収束位置の関係を示す図である。なお、図6(a)では有効受光面を正方形としている。また、図6(b)では、有効受光面のセンター位置を基準位置(0位置)として、基準位置に対する収束位置のX方向およびY方向の変位量と出力電圧の関係を示している。
上記PSD信号処理回路60は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流をもとに、収束位置のX方向変位量に対応する電圧Xoutと、Y方向変位量に対応する電圧Youtを生成し、ADC70を介してDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された電圧XoutとYoutから収束位置のX方向変位量とY方向変位量を検出する。
図7を参照して、本実施の形態におけるスキャン動作について説明する。
同図(a)に示すように、ビーム照射装置の前方空間に設定された目標領域を横200×縦3のブロックに分割したとき、照射レーザ光は、全てのブロックを順番に照射するようにしてスキャンされる。照射レーザ光は、各ブロックに1回ずつ照射される。ここで、ブロックのスキャン順序は任意に設定できる。たとえば、同図(b)に示す如く、左上隅のブロック位置から順次、1ラインずつスキャンするように設定することもできる。なお、スキャン軌道(スキャン順序)は、上述の如く、DSP制御回路10内のスキャンテーブルによって規定される。
同図(b)のようにしてスキャンされる場合、PSD600の受光面上における分離光の収束位置は、同図(c)に示す軌道に沿って移動する。ここで、同図(c)の軌道は、同図(b)のスキャン軌道に対し、一対一に対応している。したがって、同図(c)の軌道上における収束位置から照射レーザ光のスキャン位置を識別することができる。なお、この場合、同図(c)の軌道は、上述の如く、DSP制御回路10内の軌道テーブルに従うこととなる。
なお、図7(b)のスキャン動作では、同図A、Bを除く中央の区間ではスキャン速度は略一定であるが、A、Bの区間、すなわち、アクチュエータ300の移動方向が変わる位置あたりの区間では、スキャンの速度が、徐々に加速しあるいは徐々に減速するように変化する。このため、A−B間をスキャンする際に、一定周期にてレーザ光をパルス発光させると、特にA、Bの区間において、レーザ光の発光位置が対応するブロックからずれてしまい、各ブロックにレーザ光を正しく照射できないとの問題が生じる。
そこで、本実施の形態では、図8に示すように、一つのパルス発光から次のパルス発光までの間のスキャン距離がA−B間において等しくなるよう、可変時間間隔にてパルス発光が行われる。これにより、各ブロックに1回ずつレーザ光が正しく照射される。
このとき、アクチュエータ駆動回路40からアクチュエータ300に入力される水平方向の駆動信号(水平方向VCM駆動電流)として、図8に示す正弦波を用いると、駆動信号に対するアクチュエータ300の追従性を高めることができ、安定したスキャン動作を実現することができる。
なお、図8に示す例では、水平方向VCM電流がIから−Iまで立ち下がる期間がパルス発射期間とされている。これに代えて、図9に示すように、水平方向VCM電流がIから−Iまで立ち下がる期間のうち、VCM電流の変化が略直線状となる中央の期間をパルス発射期間に設定するようにすることもできる。こうすると、図7(b)のA−B間において、アクチュエータ300のスキャン速度がほぼ一定となる。したがって、この場合には、レーザ光のパルス発光間隔は、図9に示すように、等時間間隔とすることができる。
なお、図8および図9において、各パルス発射期間は、目標領域の水平方向スキャン期間に対応する。また、正弦波が極小値から極大値に立ち上がるまでの期間は、照射レーザ光が目標領域の右端から左端に戻るまでの期間に相当する。
ところで、ビーム照射装置においては、図7(b)に示すスキャン軌道に沿って照射レーザ光がスキャンされるのが最も理想的である。しかし、通常は、アクチュエータ300に付加される外乱等によって、照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン軌道から外れてしまう。この場合、かかるスキャン位置の外れに応じて、有効受光面上における分離光の収束位置も同図(c)に示す軌道から外れることとなる。これを是正するため、DSP制御回路10は、分離光の収束位置と軌道テーブルとを比較しながら、照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン軌道に追従するよう、アクチュエータ駆動回路40を制御する。
図10は、有効受光面上における分離光のスポット軌道の一例を示すものである。かかる場合、DSP制御回路10は、上述の如く、分離光の収束位置を目標軌道に引き込むよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。
今、分離光の収束位置がP(x,y)にあり、このとき、目標軌道上にあるべき収束位置がP’(x',y')であるとする。ここで、目標軌道上の収束位置P’(x',y')は、DSP制御回路10内に設定された軌道テーブルから取得される。具体的には、照射レーザ光のスキャン位置に対応する収束位置が軌道テーブルから取得される。
このとき、DSP制御回路10は、P(x,y)とP’(x',y')をもとに、Ex=x−x’とEy=y−y’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。これにより、照射レーザ光のスキャン位置は、当該タイミングにおいてスキャン軌道上にあるべきスキャン位置方向に引き戻される。これに応じて、分離光の収束位置も、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')の方向に引き込まれる。かかるサーボ動作によって、照射レーザ光は所期のスキャン軌道に追従するようスキャンされる。
図11に、スキャン動作時のフローチャートを示す。
S100にてスキャン動作が開始されると、S102にて照射レーザ光の照射位置がホームポジションへ移動される。なお、ホームポジションは、たとえば、図6(b)に示すブロックのうち、左端で且つ上端のブロック位置に設定される。さらに、S104にて照射レーザ光に対する軌道サーボがONとされた後、S106にてスキャン動作が開始される。次に、S108にて、照射レーザ光が目標領域に照射される。このとき、目標領域からの反射光を受光することにより、当該ビーム照射装置を搭載した検出器において、障害物測定や距離測定等の処理が行われる。
しかる後、S110にてスキャン動作が終了したかが判別され、終了していなければ、S106に戻り、上述のスキャン動作が繰り返される。他方、スキャン動作が終了すれば、S112にて軌道サーボがOFFとされた後、S114にて半導体レーザがOFFとされる。
次に、反射光量を用いて行われる各種処理について説明する。
まず、反射光量テーブルの更新処理について説明する。この処理は、図11のスキャン動作の際に行われる。この処理は、DSP制御回路10にて行われる。
DSP制御回路10は、図11のフローチャートにおけるS106のスキャン動作、S108のレーザ光の発光動作に加えて、受光部90において、受光した光、すなわち、目標領域からの反射光の光量をブロック毎に測定する。そして、測定した反射光の光量を、反射光量テーブル上の各ブロック位置に格納する。
このようにして、目標領域上の全てのブロックについて反射光量の測定と格納が行われる。これにより、反射光量テーブルの更新が完了する。反射光量テーブルに対する更新は、目標領域がスキャンされる度に行われる。通常、反射光量は、障害物の位置に対応するブロックにて検出される。従って、反射光量テーブルには、障害物の位置に対応するブロックに対して反射光量に応じた値が格納され、その他のブロックには、ゼロまたはゼロに近い小さな値が格納される。
次に、汚れ検出処理について説明する。この処理は、反射光量テーブルの更新に並行して行われる。ここでは、反射光量テーブルの更新が所定回数繰り返される間に、一回の処理ルーチンが実行される。この処理は、DSP制御回路10にて行われる。
図12は、汚れ検出処理の手順を示すフローチャートである。
汚れ検出処理が開始されると、まず、S200にて、反射光量テーブルが更新されたかが判別される。ここで、反射光量テーブルが更新されると、S202にて、目標領域上に設定されたブロック群のうちの一つが参照ブロックとして設定される。そして、S204にて、当該参照ブロックの反射光量P0が反射光量テーブルから取得される。
次に、S206にて、当該参照ブロックの反射光量P0が閾値レベルPs以上であるかが判別される。このステップは、汚れの誤検出を回避するために準備されている。すなわち、上記の如く、当該参照ブロックに対応する位置に障害物等が存在しない場合、当該参照ブロックの位置では、反射光量は、受光されていないか、ゼロに近い小さなものとなる。このような不安定な反射光量をもとに汚れ検出を行うと、汚れ検出を適正に行えない惧れがある。この理由から、S206にてP0<Psと判別された場合には、以降の処理ステップが省略され、S202に戻って、次の参照ブロックが設定される。なお、閾値レベルPsは、目標領域からの反射光量を検出するに適切なレベルに設定される。
S206にてP0≧Psと判別されると、次に、S208にて、当該参照ブロックに隣接する各ブロックの反射光量が反射光量テーブルから取得される。たとえば、図13に示すように、参照ブロックに8つのブロックが隣接する場合には、これら8つのブロックの反射光量P1〜P8が取得される。そして、S210にて、これら取得された反射光量のうち閾値レベルPs以上のものが抽出される。このステップは、上記S206と同様、汚れの誤検出を回避するために準備されたものである。S210にて閾値レベルPs以上の反射光量を抽出できない場合は、S202に戻る。
しかる後、S210にて抽出された反射光量と参照ブロックの反射光量の割合Rkが、S212にて計算される。たとえば、図13の例において、参照ブロックに隣接する8つのブロックの反射光量P1〜P8が全て閾値レベルPs以上の場合、S212にて、P1/P0、P2/P0、P3/P0、P4/P0、P5/P0、P6/P0、P7/P0、P8/P0が算出される。すなわち、隣接ブロックの反射光量Pkと参照ブロックの反射光量P0の割合RkがRk=Pk/P0として算出される。
このようにして割合Rkが算出されると、次に、S214にて、各割合が閾値Rsと比較される。ここで、閾値Rsは、たとえば、0.5程度に設定される。そして、S216にて、参照ブロックに隣接するブロックのうち、割合Rkが閾値Rs以下であるブロックに、汚れの可能性を示す点数(以下、「汚れ点数」という)として1が加算される。なお、S212にて算出された何れの割合Rkも閾値Rs以下でない場合、S216はスキップされる。
しかして、汚れ点数の加算が終了すると、S218にて、目標領域上の全てのブロックが参照ブロックとして設定されたかが判別される。ここで、未だ参照ブロックに設定されていないブロックが残っていれば(S218:N)、S202に戻り、次のブロックが参照ブロックとして設定される。そして、この参照ブロックとこれに隣接するブロックの反射光量をもとに、上記と同様の処理が行われる。S202からS216までの処理は、目標領域上の全てのブロックが参照ブロックとして設定されるまで繰り返し行われる。
目標領域上の全てのブロックが参照ブロックとして設定されると、次に、S220にて、反射光量テーブルの更新回数が設定値Nsに到達したかが判別される。ここで、更新回数がNsに到達していなければ、S200に戻り、反射光量テーブルが更新されるのを待つ。そして、反射光量テーブルが更新されると、更新後の反射光量テーブルについて、S202からS218の処理が行われる。S200からS218までの処理は、反射光量テーブルの更新回数がNsに到達するまで繰り返し行われる。これにより、汚れ点数が各ブロックに加算されていく。
しかして、反射光量テーブルの更新回数がNsに到達すると(S220:Y)、全ブロックの汚れ点数をもとに、参照値Drが設定される。ここで、参照値Drは、たとえば、全ブロックの汚れ点数の平均値、汚れ点数の最大値と最小値の平均値、あるいは、汚れ点数の最大値に一定の比率を乗じた値とすることができる。この場合、汚れ点数の最大値または平均値が一定の値を越えない場合には、参照値Drとしてデフォルト値を設定するようにしても良い。あるいは、このように、全ブロックの汚れ点数をもとに参照値Drを設定せずに、デフォルト値として設定された参照値Drを用いるようにしても良い。この場合、S222はスキップされる。
このようにして参照値Drが設定されると、次に、S224にて、各ブロックの汚れ点数が参照値Drと比較される。そして、S226にて、汚れ点数が参照値Dr以上のブロックが、汚れているブロック(以下、「汚れブロック」という)に設定される。同時に、S228にて、表示部(図示せず)に、出射窓700が汚れていることが表示される。これにより、汚れ検出ルーチンが終了する。なお、このS228における表示に代えて、音声にて出射窓700の汚れを出力するようにしてもよい。
図12の処理ルーチンでは、S216からS226の処理ステップが準備されているが、これらの処理ステップを省略することもできる。すなわち、S214にて、参照ブロックに隣接するブロックのうち、割合Rkが閾値Rs以下であるブロックがあれば、直ちに、反射光量Pkに対応するブロックを汚れブロックと判定し、汚れの報知を行うようにすることもできる。しかし、この場合は、上記に比べ、障害物位置近傍のブロックを汚れブロックと誤判定する確率が高まる。かかる誤検出を抑制するには、上記のように、S216からS226の処理ステップを実行し、一定期間に蓄積された汚れ点数をもとに、そのブロックの汚れを判定するのが好ましい。
図14は、レーザ光の出射光量を補正する際の処理手順を示す。この処理は、図12に示す処理にて汚れブロックが検出されたことに応じて行われる。この処理は、DSP制御回路10にて行われる。
図12に示す処理にて汚れブロックが検出された後、図11のフローチャートが実行されると、上記の如く、目標領域からの反射光の光量がブロック毎に測定され、その光量値が反射光量テーブル上の各ブロック位置に格納される。
S300にて、反射光量テーブルが更新されたと判別されると、S302にて、図12に示す処理にて検出された汚れブロックの反射光量Pr-dが反射光量テーブルから取得される。また、S304にて、全ブロックの反射光量の最大値Pr-maxが反射光量テーブルから取得される。さらに、S306にて、汚れブロックの現在のレーザ出射光量Pe-oldが出射光量テーブルから取得される。
次に、S306にて、Pe-new=(Pr-max/Pr-d)*Pe-oldが演算される。そして、算出されたPe-newが、当該汚れブロックの新たなレーザ出射光量として、出射光量テーブルに設定される(S310)。しかる後、S312にて、全ての汚れブロックについて出射光量テーブルが更新されたかが判別される。ここで、出射更新テーブルを更新すべき汚れブロックが残っていれば、S302に戻り、次の汚れブロックに対するレーザ出射光量の更新処理が行われる。このようにして、全ての汚れブロックについて出射光量テーブルの更新がなされると(S312)、当該補正処理が終了される。その後は、更新後の出射光量テーブルを参照しながら、各ブロックに照射レーザ光が照射される。これにより、汚れブロックに対する照射レーザ光の強度が高められ、目標領域における照射レーザ光の強度の均一化が図られる。
以上のように、本実施の形態によれば、簡単な処理にて確実に、目標領域における照射レーザ光の不均一性を検出することができる。さらに、その結果に基づいて、照射レーザ光の出力を適正に調節することができる。よって、不所望な汚れ等がビーム照射装置の出射窓に付着した場合にも、安定したスキャン動作を実現することができる。
また、本実施の形態によれば、上記のとおり、通常のスキャン動作を行いながら、照射レーザ光の不均一性を検出できるので、円滑なスキャン動作を実現できる。さらに、本実施の形態によれば、ビーム照射装置に通常配備される構成部品以外に特別な構成部品が必要ないから、ビーム照射装置の構成を簡素にすることできる。
さらに、本実施の形態によれば、ビーム照射ヘッド50と受光部90が光学的に完全に分離されているため、出射窓700によって内部に反射された照射レーザ光が受光部90に漏れることはなく、もって、上記特許文献1のように漏れ光によるノイズの影響を受けることはない。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は、かかる実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能であることは言うまでもない。
たとえば、上記実施の形態では、図10を参照して説明したように、分離光の収束位置P(x,y)を、当該タイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(x',y')に引き込むようにしてサーボを掛けるようにしたが、この他のサーボ処理にて、分離光の収束位置を目標軌道上に引き込むようにすることもできる。たとえば、図15に示すように、当該タイミングよりΔTだけ経過したタイミングにおいて目標軌道上にあるべき収束位置P’(xa',ya')に引き込むようにすることもできる。この場合、DSP制御回路10は、P(x,y)とP’(xa',ya')をもとに、Ex=x−xa’とEy=y−ya’を演算し、演算結果をもとに、Ex=0、Ey=0になるよう、アクチュエータ駆動回路40にサーボ信号を供給する。こうすると、照射レーザ光のスキャン位置を次に予定されているスキャン位置に円滑に引き込むことができ、効率的なスキャン動作を実現することができる。
なお、上記において、想定し得ない大きさの振動や外乱がビーム照射装置に加わった場合には、サーボ外れが生じて照射レーザ光のスキャン位置が所期のスキャン位置から大きく外れる場合が起こり得る。このような場合には、たとえば、図7(b)のスキャン形態では、スキャン位置をサーボ外れが生じたときにスキャン途中であったラインの先頭位置に戻し、この位置から以降のスキャン処理を継続するようにすれば良い。
また、振動や外乱を予測する、いわゆる外乱オブザーバを併せて適用すれば、照射レーザ光の軌道追従をより円滑に行うことができる。この場合、想定し得ない大きさの振動や外乱がビーム照射装置に加わったような場合にも、サーボ外れの発生を効果的に抑制することができる。
さらに、上記実施の形態では、レンズアクチュエータ300を用いて照射レーザ光をスキャンさせるようにしたが、これに代えて、ポリゴンミラーを用いたスキャン機構を用いることもできる。
図16に、ポリゴンミラーを用いた場合の構成を示す。なお、図中、上記図1と同一の構成には同一の番号が付されている。
ビーム照射ヘッド50は、半導体レーザ100と、レンズ501と、ポリゴンミラー502と、モータ503を備えている。レンズ501は、半導体レーザ101から出射されたレーザ光をほぼ平行光に変換する。ポリゴンミラー502は、断面多角形となっており、且つ、各側面にミラー面が形成されている。モータ503は、モータ駆動回路41からの駆動信号に応じて、ポリゴンミラー102中心の回転軸を回転させる。
ポリゴンミラー502を回転させながらレーザ光をその側面に照射すると、各側面に対するレーザ光の入射角度が変化する。これにより、ポリゴンミラー502の側面によって反射されたレーザ光(照射レーザ光)はポリゴンミラーの回転方向にスキャンされる。
ここで、ポリゴンミラー502は、レーザ光の入射位置が一つのミラー面から次のミラー面へと移ることによって、水平方向のスキャン軌道が、目標領域上において、上下方向に1ブロック分だけシフトするように、回転軸に対する各ミラー面の傾き角が調整されている。また、ミラー面の傾き角は、水平方向のスキャン軌道が最下段のブロック位置にあるときに、レーザ光の入射位置が次のミラー面に移ると、これに応じて、水平方向のスキャン軌道が、最下段のブロック位置から最上段のブロック位置へとシフトするようにも調整されている。
ポリゴンミラー502のミラー面の傾き角がこのように調整されていることにより、照射レーザ光は、ポリゴンミラー502の回転に応じて、たとえば、図7(b)に示す軌道に従ってスキャンされる。
なお、図16の構成例では、図1におけるビームスプリッタ400と、集光レンズ500と、PSD600が省略されている。これは、ポリゴンミラー503の回転位置からレーザ光の照射位置を検出できるためである。すなわち、図16の構成例では、モータ503から回転検出回路61に対して、回転同期信号が出力される。回転検出回路61は、入力された回転同期信号をもとに、ポリゴンミラー503の回転位置を逐次検出し、検出結果をDSP制御回路10に出力する。DSP制御回路10は、入力された回転位置信号をもとに、目標領域上における照射レーザ光の照射位置を検出する。
図16の構成例における照射レーザ光のスキャン動作は、上記図1の構成の場合と同様にして行われる。ただし、図16の構成例の場合、ポリゴンミラー502は、一方向に単調に回転駆動されるのみである。なお、ポリゴンミラー502が一定速度で回転する場合、水平方向のスキャン速度も一定であるから、照射レーザ光のパルス発光は、図9に示す場合と同様、一定パルス間隔で行われる。なお、ポリゴンミラー502の回転速度が不安定である場合には、レーザ光の発光タイミングを、ポリゴンミラー502の回転位置に応じて制御するようにしても良い。この他、反射光量テーブルの更新処理、汚れブロックの検出処理および出射光量テーブルの更新処理も、上記実施の形態の場合と同様にして行われる。
なお、上記実施の形態では、レーザ光の光量の差は、出射窓の汚れによるものとして説明したが、このほか、光量差が生じる原因として、出射窓についた傷やひび割れによるものもある。
本実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義等は、本実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。