JP2006301411A - 偏光ビームスプリッタ及び光学系 - Google Patents

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孝 小幡
Noboru Amamiya
昇 雨宮
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Abstract

【課題】 色収差の小さい偏光ビームスプリッタを提供する。
【解決手段】 高屈折物質としてH5、低屈折物質としてSiOを合計9層積層し、総膜厚1037nmの多層薄膜を形成した。この多層薄膜の分光透過率は図に示すようなものであり、波長450nm〜650nmの範囲で20以上の消光比が得られている。この多層薄膜を偏光ビームスプリッタの薄膜として使用したところ、反射光に問題となるような色収差は発生しなかった。
【選択図】 図1

Description

本発明は、偏光ビームスプリッタ及びそれを使用した光学系に関するものである。
光学顕微鏡を使用して、被観察物の表面状態を観察したり、表面上のある点から他の点までの距離を観察したりする光学系においては、従来から、偏光ビームスプリッタを用いることにより照明光を直線偏光にし、同時に被観察物から反射した光(結像光)を照明光と偏光面が90°異なる直線偏光に変えるλ/4板を用いることにより、落射照明に起因するフレアー光が観察光学系に到達しない工夫がなされてきた。これらの光学系においては偏光ビームスプリッタは、結像光がこの偏光ビームスプリッタを透過するように配置するのが普通であった。
近年、高さ測定の需要の高まりとともに、長さ測定光学系とは別に高さ測定光学系を用いること多くなってきている。その際、対物レンズを共通化して高さ測定と長さ測定を同時にする必要があるため、長さ測定光学系のほうは、被観察物で反射された光が偏光ビームスプリッタで反射されるような構成にすることが必須になってきている。
ところが、被観察物で反射された光が偏光ビームスプリッタで反射されるような構成にすると、結像面に結像する被観察物の像に色収差(色ずれ)が発生することが分かった。すなわち、色によって結像する位置が異なり、全体として像のボケが発生する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、色収差の小さい光学系、及びこれに用いるのに適当な偏光ビームスプリッタを提供することを課題とする。
前記課題を解決するための第1の手段は、多層薄膜により偏光ビームスプリット機能を持たせた偏光ビームスプリッタであって、前記多層薄膜の総膜厚が1.2μm以下、かつ、層数が10層以下であって、消光比が20以上であることを特徴とする偏光ビームスプリッタである。
前述のような色収差が発生する原因は良く分かっていなかったが、本発明者は、この原因の究明に尽力した結果、偏光ビームスプリッタにビームスプリット機能を持たせている多層薄膜に原因があることを突きとめた。すなわち、多層薄膜で反射される光のうち、赤色光は主に多層薄膜の表面側で反射され、緑色光は、表面側から基板側に行くに従って強く反射されるようになり、青色光は主に基板側で反射されることを発見した。
通常の偏光ビームスプリッタに使用される多層薄膜の層数は40層を超え、厚さも5μm程度である。よって、光が多層薄膜に入射角45°で入射し、反射角45°で反射される場合、光の波長によって、主に反射される位置が異なり、この位置の違いが、結像位置の違いとなって現れるのが色収差の原因である。
この知見から、多層薄膜の厚さを薄くすることにより、色収差を小さくできることを着想した。従来、積層数が少なく膜厚が薄い多層膜を使用した偏光ビームスプリッタは存在したが、消光比が4以下であり、偏光ビームスプリッタとしての性能が悪かった。そこで、総膜厚が1.2μm以下、かつ、層数が10層以下であって、消光比が20以上の偏光ビームスプリッタを開発して使用することにより、色収差を問題の無い程度まで低減することができた。
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、偏光ビームスプリット機能に寄与する前記多層薄膜のうち、最表面の薄膜と、最も基板側にある薄膜の光学的膜厚が、使用する波長の0.5倍以上であることを特徴とするものである。
薄膜の光学的膜厚(厚さと屈折率の積)を使用波長の1/4で割って正規化したものは、通常、インデックスと呼ばれているが、従来の偏光ビームスプリッタに使用される薄膜のインデックスは1以上2未満とされていた。本手段においては、多層薄膜のうち、最表面の薄膜と、最も基板側にある薄膜のインデックスを2以上とすることにより、すなわち、光学的膜厚を、使用する光の波長の0.5倍以上とすることにより、層数が少なく、総膜厚が薄くても、20以上の消光比を得ている。
前記課題を解決するための第3の手段は、照明光により被観察物を照明し、前記被観察物の像を結像面に結像させる光学系であって、前記第1の手段又は第2の手段である偏光ビームスプリッタを有し、前記照明光は前記偏光ビームスプリッタの前記多層薄膜を透過し、前記被観察物からの反射光は前記偏光ビームスプリッタの前記多層薄膜で反射するように構成された光学系である。
本手段においては、被観察物からの反射光が偏光ビームスプリッタの前記多層薄膜で反射するように構成されているが、偏光ビームスプリッタとして前記第1の手段又は第2の手段のものを使用しているので、色収差を小さく抑えることができる。
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第3の手段であって、前記偏光ビームスプリッタが、前記被観察物からの反射光が平行光束とならない位置に配置されていることを特徴とするものである。
本手段で使用している偏光ビームスプリッタは総膜厚が薄いので、反射光が平行とならない位置においても、それにより色収差や他の歪、収差が小さく抑えられる。よって、設計上の自由度が向上する。
本発明によれば、色収差の小さい光学系、及びこれに用いるのに適当な偏光ビームスプリッタを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。表1に示すような膜厚構成を有する多層薄膜をビームスプリット材として用いた偏光ビームスプリッタを製造した。表中H5と示されているのは、チタンとランタンの化合物を主成分とする高屈折物質であり、メルク社の商品名である。成膜は蒸着により行った。表から分かるように、この多層薄膜の層数は9層であり、総膜厚は1037nmである。特に、最表層と最も基板側の層に高屈折物質を配置し、そのインデックス値を2以上とすることにより、積層数を少なくすることによる消光比の悪化を防止している。
(表1)
Figure 2006301411
この偏光ビームスプリッタの分光透過率を図1、図2に示す。図1は、波長435nmの光が入射角45°で入射し、正反射する場合の分光透過率である。以下の図において、TpはP偏光の透過率、TsはS偏光の透過率で、この比が消光比となる。波長450nm〜650nmの範囲で20以上の消光比が得られている。図2は、波長435nmの光が、入射角45°±3.7°で分散して入射し、正反射する場合の分光透過率で、実際の使用状態に近い。この場合も、波長450nm〜650nmの範囲で20以上の消光比が得られている。この偏光ビームスプリッタを後に述べるような長さ測定用光学系に使用したところ、問題となるような色ずれは発生しなかった。
比較例として、表2に、従来用いられていた偏光ビームスプリッタの多層膜の膜構成を示す。40層からなり、総膜厚も4517nmとなっている。なお、表2中でQWOTとされているのは光学的膜厚を使用波長の1/4で割って正規化したインデックス、Thickとされているのが実際の膜厚である。図3に、この偏光ビームスプリッタの分光透過率を示す。図3は、波長435nmの光が入射角45°で入射し、正反射する場合の分光透過率である。このように、消光比は、本発明の実施の形態の偏光ビームスプリッタに比べて優れているが、この偏光ビームスプリッタを後に述べるような長さ測定用光学系に使用したところ、波長456nmの光と、波長650nmの光とでは、左右に1μm程度の色ずれが発生し、長さ測定精度が悪化した。
(表2)
Figure 2006301411
以下、本発明の実施の形態の1例である偏光ビームスプリッタを用いた光学系の例を説明する。図3は、被観察物の高さ方向位置を測定すると共に、被観察物の表面画像を撮像し、撮像された画像から、被観察物のある点と他の点の長さを求める装置の光学系を示す図である。
高さ測定用照明光は、偏光ビームスプリッタ1で反射され、ニッポウディスク2に形成されたピンホールを通過して、さらに第2対物レンズ3、ハーフミラー4、第1対物レンズ5、λ/4板6を透過し、被観察物7の表面に集光される。被観察物7で反射された光は、照明光の光路を逆にたどって偏光ビームスプリッタ1に達するが、λ/4板6を2度通過することにより、高さ測定用照明光と位相が90°ずれているので、偏光ビームスプリッタ1を透過して結像レンズ8でカメラ9の撮像面に結像する。
ニッポウディスク2のピンホールと被観察物7とが共役な位置にあれば、ニッポウディスク2のピンホールを通過した光が被観察物7で反射されて再びニッポウディスク2のピンホールを通過するので光の強度が最大となる。よって、光学系全体を上下に動かして、光の強度を測定し、回帰分析等を使用して光の強度が最大となる位置を求めることにより、被観察物7の高さを測定することができる。この技術は周知のものであり、例えば米国特許4,927,254号に詳細に記載されていること、及び本発明と直接関係がないことを考慮して詳しい説明を省略する。なお、この光学系においては、光路切り換えミラー10が設けられており、以上述べた高さ測定時は、待避位置にあって光学系中には挿入されていない。
長さ測定を行うときは、光路切り換えミラー10を光学系中に挿入し、光路を長さ測定装置側に切り換える。長さ測定装置には、オートフォーカス系が設けられている。レーザ光源21から放出されたレーザビームは、レンズ22により平行光に変えられ、その半分がナイフエッジ23で遮光され、残りがレンズ24、25を通って、ハーフミラー4で反射され、第1対物レンズ5によって被観察物7面に集光される。被観察物7で反射された光は、照射ビームの光路を逆にたどってナイフエッジ23に達し、ナイフエッジ23の反射面で上方に反射された光が、受光センサ26で受光される。受光センサ26は、2つの受光素子を有し、光学系に対して被観察物7が所定の位置にあるとき、2つの受光素子が受ける受光量が同じとなるようにされている。よって、2つの受光素子が受ける受光量が同じとなるように光学系を上下させることにより、長さ測定装置の焦点合わせを行うことができる。このオートフォーカス系機構も周知のものであり、かつ、本発明と直接の関係がないので、詳しい説明を省略する。
長さ測定用照明光(落射照明用照明光)は、偏光ビームスプリッタ31を透過し、光路切り換えミラー10で反射され、第2対物レンズ3、ハーフミラー4、第1対物レンズ5、λ/4板6を通って、被観察物7の表面を落射照明する。被観察物7の表面で反射された光は、長さ測定用照明光の光路を逆にたどって偏光ビームスプリッタ31に到達する。その間、λ/4板6を2回通過するので、反射光の位相は長さ測定用照明光の位相と90°ずれ、反射光は偏光ビームスプリッタ31で反射されてレンズ32、ズーム光学系33をとおり、結像レンズ34により、カメラ35の撮像面に、被観察物7の表面の像を結ぶ。この像の寸法を測定することにより、被観察物7の表面のある点と他の点との距離を測定する。
このような長さ測定装置においては、偏光ビームスプリッタ31において撮像に使用される光が反射されるような光学系となっており、かつ、偏光ビームスプリッタ31は、光が平行光となっている位置には入れられていないが、この実施の形態においては、偏光ビームスプリッタ31として本発明の実施の形態である偏光ビームスプリッタを使用しているので、像の色ずれを小さくすることができる。
本発明の実施の形態の1例である偏光ビームスプリッタの分光透過率を示す図である。 本発明の実施の形態の1例である偏光ビームスプリッタの分光透過率を示す図である。 従来の偏光ビームスプリッタの分光透過率を示す図である。 被観察物の高さ方向位置を測定すると共に、被観察物の表面画像を撮像し、撮像された画像から、被観察物のある点と他の点の長さを求める装置の光学系を示す図である。
符号の説明
1…偏光ビームスプリッタ、2…ニッポウディスク、3…第2対物レンズ、4…ハーフミラー、5…第1対物レンズ、6…λ/4板、7…被観察物、8…結像レンズ、9…カメラ、10…光路切り換えミラー、21…レーザ光源、22…レンズ、23…ナイフエッジ、24…レンズ、25…レンズ、26…受光センサ、31…偏光ビームスプリッタ、32…レンズ、33…ズーム光学系、34…結像レンズ、35…カメラ

Claims (4)

  1. 多層薄膜により偏光ビームスプリット機能を持たせた偏光ビームスプリッタであって、前記多層薄膜の総膜厚が1.2μm以下、かつ、層数が10層以下であって、消光比が20以上であることを特徴とする偏光ビームスプリッタ。
  2. 偏光ビームスプリット機能に寄与する前記多層薄膜のうち、最表面の薄膜と、最も基板側にある薄膜の光学的膜厚が、使用する光の波長の0.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の偏光ビームスプリッタ。
  3. 照明光により被観察物を照明し、前記被観察物の像を結像面に結像させる光学系であって、請求項1又は請求項2に記載の偏光ビームスプリッタを有し、前記照明光は前記偏光ビームスプリッタの前記多層薄膜を透過し、前記被観察物からの反射光は前記偏光ビームスプリッタの前記多層薄膜で反射するように構成された光学系。
  4. 前記偏光ビームスプリッタが、前記被観察物からの反射光が平行光束とならない位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光学系。

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